説明

ローラの製造方法

【課題】連続的に長期間の繰り返し塗工を行った場合にも、安定して均一な膜が形成できる塗工方法を提供する。
【解決手段】軸体とその周囲に形成した導電性弾性層とを有する導電性基層ローラに対し全周に亘って間隙を形成するように配置されたリング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出し、導電性基層ローラ上に少なくとも1層以上の表面層を形成するローラの製造方法であって、該リング塗布ヘッドと該導電性基層ローラを長手方向に相対移動させずに、前記リング塗布ヘッドの吐出口と前記導電性基層ローラとの間隙に塗布液を充填しながら/もしくは充填した後、前記導電性基層ローラと前記リング塗布ヘッドを相対的に軸回転させる工程と、該導電性基層ローラの長手方向に該リング塗布ヘッドを相対移動させながら、前記リング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出させて該表面層を形成する工程、を有することを特徴とするローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いるローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられるローラの製造方法として、特許文献1には、リング状の塗布ヘッドを利用してローラ基底層の表面に樹脂被覆層の材料となる塗布液を吐出することで表面層を均一的に形成することを可能とする塗工方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、この方法によれば、塗布ムラや液ダレ、液切れなどによって不均一な表面層となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−150266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決し、長期間の繰り返し塗工を行った場合にも、安定して均一な膜が形成できる塗工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、特定の塗工工程を行うことで解決できることを見出し、ついに本発明に至った。
【0007】
すなわち、軸体とその周囲に形成した導電性弾性層とを有する導電性基層ローラに対し全周に亘って間隙を形成するように配置されたリング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出し、導電性基層ローラ上に少なくとも1層以上の表面層を形成するローラの製造方法であって、該リング塗布ヘッドと該導電性基層ローラを長手方向に相対移動させずに、前記リング塗布ヘッドの吐出口と前記導電性基層ローラとの間隙に塗布液を充填しながら/もしくは充填した後、前記導電性基層ローラと前記リング塗布ヘッドを相対的に軸回転させる工程と、該導電性基層ローラの長手方向に該リング塗布ヘッドを相対移動させながら、前記リング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出させて該表面層を形成する工程、を有することを特徴とするローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、連続生産しても安定的な塗工を行うことが出来、均一な膜層を有するローラを安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の塗工方法の概要を示す図である。
【図2】本発明の塗工方法の工程を示す図である。
【図3】本発明の塗工方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を帯電ローラの一態様で本発明のローラの製造方法を更に詳細に説明する。しかしながら本発明はこれに限られるものではない。
【0011】
帯電ローラの具体的な構成の断面図を図1に示す。なお、(a)は帯電ローラの横断面を示し、(b)は縦断面を示したものである。
【0012】
帯電ローラは、導電性支持体1とその外周に形成された導電性弾性層2と、該導電性弾性層2の外周を被覆する表面層3とを有する構成である。以下、特に断らない限り、導電性支持体と導電性弾性層を合わせて「導電性基層ローラ」という。
【0013】
本態様で使用する導電性支持体1を構成する材料としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケルの如き金属等が使用できる。
【0014】
本態様では、上記導電性支持体1の外周に導電性弾性層2を成形する。導電性弾性層2は、通常、導電剤と高分子弾性体とを混合して成形される。高分子弾性体としては、導電性ローラの弾性層として公知の材料であれば特に限定せず用いることができるが、例えば、以下のものが使用可能である。エピクロルヒドリンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)の如き熱可塑性エラストマー。
【0015】
高分子弾性体としては特にエピクロルヒドリンゴムが好適である。エピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来るので、高分子弾性体として好適である。なお、エピクロルヒドリンゴムとして、以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適である。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0016】
高分子弾性体がエピクロルヒドリンゴムを主成分とする場合、必要に応じてその他の一般的なゴム及びエラストマーを含有してもよい。
【0017】
導電剤としては、イオン導電剤又は電子導電剤を用いることができる。導電性弾性層の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが好ましい。イオン導電剤が高分子弾性体の中に均一に分散し、導電性弾性層の電気抵抗を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
【0018】
この他にも導電性弾性層2には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤の如き配合剤を加えることもできる。
【0019】
導電性弾性層2の成形方法としては、上記の導電性弾性層2の原料を密閉型ミキサーで混合して、例えば、押出し成形、射出成形、圧縮成形の如き公知の方法により成型するのが好ましい。また、導電性弾性層は、導電性支持体1の上に直接成形してもよいし、予めチューブ形状に成形した導電性弾性層2を導電性支持体1上に被覆させてもよい。なお、導電性弾性層2の作製後に表面を研磨して形状を整えることも好ましい。
【0020】
<接着剤>
導電性弾性層は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を用いることができる。
【0021】
<表面層>
本態様では、導電性弾性層2を作製した後に、その被覆層として少なくとも1層以上の表面層3を形成する。表面層3に用いる結着材料としては、樹脂、エラストマーが好ましい。
【0022】
樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブタジエン−オレフィン共重合体(SEBC)、オレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)など。エラストマーとしては、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーが挙げられる。合成ゴムとしては、天然ゴム(加硫処理など)、EPDM、SBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、IR、BR、NBR、CRなどが挙げられる。
【0023】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなど。
【0024】
これらの結着材料は、単独または2種以上混合してもよく、共重合体であってもよい。
【0025】
本態様では、表面層3には、導電性微粒子を添加して導電性を付加する。導電性微粒子としては、上記導電性弾性層において挙げた電子導電剤を用いることができ、一種類または二種類以上組み合わせて用いることが出来る。
【0026】
本発明に係る表面層の形成方法は、リング塗布ヘッドにより塗布液として調製した表面層材料を導電性基層ローラの周囲に吐出しておこなうリング塗布法である。例えば、結着材料を溶解して微粒子を分散させた塗布液を作製し、これをリング塗布法で形成する。
【0027】
<リング塗工>
本発明のリング塗布方法は、以下の(1)〜(4)の工程を有しており、本発明の特徴は(3)の工程を有することにある。
【0028】
(1)導電性基層ローラを保持部材により保持する工程。
【0029】
前記のような方法で得られた導電性基層ローラ11を図2−1のように垂直状態に保持する。
【0030】
(2)リング塗布ヘッドを導電性基層ローラの塗工開始位置に配置する工程。
【0031】
スリット状吐出口13を有するリング塗布ヘッド14を導電性基層ローラ11に対し所定の位置(塗工開始位置)に配置する。塗工開始位置は、導電性基層ローラを保持する部材上に設定することができる。前記リング塗布ヘッド14の内部は図3の如く、導電性基層ローラ11に対し全周に渡って間隙を形成するように配置されている。また、全周に渡って開口されたスリット状の吐出口13と、リング塗布ヘッド14の外部にある塗布液供給手段(シリンジポンプ 不図示)により塗布液をリング塗布ヘッド14に供給する一箇所以上の供給口15を有している。導電性基層ローラに対して全周に渡って形成された間隙は、液ダレの防止の観点から0.5mm以下が望ましい。また、リング塗布ヘッドは周方向に均一な液吐出をおこなう理由から、その内部において塗布液を合流させ、周方向に分配するための塗布液分配室16を一箇所以上、塗布液絞り部17を一箇所以上有していることが望ましい。
【0032】
(3)リング塗布ヘッドと導電性基層ローラの間隙に充填される塗布液の液面高さを均一とするために、リング塗布ヘッドと導電性基層ローラを相対的に軸回転させる工程。
【0033】
前記リング塗布ヘッド14と導電性基層ローラ11の間隙に塗布液を充填した後、(もしくは塗布液を充填しながらでもよい)、リング塗布ヘッド14と導電性基層ローラ11を相対的に軸回転させる。この工程により、例えリング塗布ヘッドのスリット状吐出口13からの塗布液の吐出が不均一であっても、周方向で均一な塗布液を導電性基層ローラ11上に形成することができる。本発明者等は以下のように理由を考える。塗布液の膜厚は、塗布液吐出量やリング塗布ヘッド14と導電性基層ローラ11の軸長手方向の相対移動速度のほかに液の表面張力も大きく作用している。特に周方向均一性は、初期の塗布液充填時の液面状態に大きく影響し、充填時の液面高さが導電性基層ローラ11に対して均一であれば、吐出が多少不安定であっても、表面張力による液の回り込み効果によって、塗膜を均一化できる。このような知見にもとづき、リング塗布ヘッドと導電性基層ローラを相対的に軸回転することにより、塗布開始位置における塗布液充填時に、塗布液の周方向の液面高さを均一とすることができることを見出した。このようなリング塗布ヘッドと基層ローラの間での軸回転により液面高さを均一にする場合、塗布液の粘度、軸回転速度、軸回転の総回転数などの条件は、導電性基層ローラの径、表面層の膜厚などにより、それぞれ適宜選択することができる。また、相対的な軸回転は、リング塗布ヘッド14、導電性基層ローラ11、またはその両方で行っても良いが、塗布液に対して遠心力による負荷がかからないという点で、導電性基層ローラ11を回転させて行うことが望ましい。
【0034】
(4)導電性基層ローラの長手方向にリング塗布ヘッドを相対移動させながら、塗布液を塗工する工程。
【0035】
導電性基層ローラ11の長手方向に前記塗布ヘッド14と前記軸体を相対移動させながら、前記塗布ヘッドの吐出口13から塗布液を吐出し、塗膜(未硬化表面層)を形成する。このとき、相対移動速度、塗布液の吐出量、吐出速度は表面層3の膜厚、塗布液の物性により、それぞれ適宜選択することができる。また、導電性基層ローラの長手方向にリング塗布ヘッドを相対移動させて塗布している際は、導電性基層ローラとリング塗布ヘッドを相対的に軸回転させないことが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
(導電性基層ローラの作製)
次の各材料を加え、50℃に調節した密閉型ミキサーで10分間混練した。
・エピクロルヒドリンゴム三元共重合体(エチレンオキサイド/エピクロルヒドリン/アリルグリシジルエーテル=56mol%/40mol%/4mol%) 100質量部
・炭酸カルシウム 50質量部
・ステアリン酸亜鉛 1質量部
・脂肪族ポリエステル系可塑剤 5質量部
・2−メルカプトベンズイミダゾール 0.5質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・四級アンモニウム塩 2質量部
・カーボンブラック(平均粒径50nm、体積抵抗:0.1Ω・cm) 5質量部
これに、ジベンゾチアジルスルフィド(加硫促進剤)1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド0.5質量部及び硫黄1質量部を加えて、更に20℃に冷却したオープンロールで5分間混練して、エピクロルヒドリンゴム混練物を得た。
【0038】
ついで、上記エピクロルヒドリンゴム混練物を押出し機にて、外径13.5mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断した。この成形物を蒸気加硫缶を使用して、温度160℃の水蒸気中で40分間一次加硫し、導電性弾性層用ゴム一次加硫チューブを得た。
【0039】
次に、直径6mm、長さ256mmの鋼製円柱(表面はニッケルメッキ)の中央部231mmに熱硬化性接着剤(メタロックU−20 東洋化学研究所製)を塗布し、80℃で10分間乾燥して得た導電性支持体を、前記ゴム一次加硫チューブに挿入した。その後、150℃の電気オーブンの中で1時間加熱処理して、未研磨のローラを得た。
【0040】
この未研磨のローラにおいてゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、中央部から両脇90mm位置を直径12.00mm、中央部を直径12.15mmのクラウン形状として導電性基層ローラ1を得た。
【0041】
(塗布液の作製)
次に導電性基層ローラ1に塗布する塗布液1を作製した。
【0042】
次の各材料を用い、ガラス瓶を容器として混合溶液を作製した。
・カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液 100質量部
・メチルイソブチルケトン 150質量部
・カーボンブラック粒子(平均粒径27nm 体積低効率0.2Ω・cm) 35質量部
・酸化チタン(平均粒径15nm、縦:横=3:1、体積低効率5.2×1010Ω・cm) 20質量部
・変性ジメチルシリコーンオイル 0.08質量部
これに、分散メディアとして、ガラスビーズ(平均粒径:0.8mm)を充填率75%になるように充填し、ペイントシェーカー分散機を用いて15時間分散した。分散溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体1:1の混合物を、NCO/OH=1.0となるように添加し、塗布液1を作製した。このときの塗布液1の粘度は23mP・sであった。なお、粘度はデジタルビストロン粘度計(芝浦システム株式会社製)を用いて行った。
【0043】
(表面層の形成)
導電性基層ローラ1の両端を保持部材によって、導電性基層ローラ1が垂直状態になるように保持した。保持部材には外径がφ8.5mmのステンレス製部材を用いた。
【0044】
次に図2のように導電性基層ローラのゴム部端面に対して全周に亘って0.35mm乃至0.4mmの間隙を形成するようにリング塗布ヘッドを配置した。リング塗布ヘッドのスリット状の吐出口は0.1mmとした。リング塗布ヘッドの吐出口の位置が導電性基層ローラ上端面に来るようにリング塗布ヘッドを移動させた。そこで、リング塗布ヘッドから塗布液1を0.02ml吐出し、その後、導電性基層ローラ1を保持部材と一緒に30rpmで4秒間回転させた。導電性基層ローラ1の回転を停止した後、リング塗布ヘッドを鉛直下向き(ローラの長手方向)に移動させながら、塗布液1をシリンジポンプから吐出し、導電性基層ローラ1に塗膜(未硬化薄膜層)を形成した。
【0045】
その後、30分以上常温で風乾し、続いて、熱風循環乾燥機中で温度160℃にて1時間乾燥し、塗膜を硬化・乾燥させ、表面層を有する帯電ローラ1を作製した。
【0046】
<表面層の膜厚測定>
作製した帯電ローラにおいて、形成された表面層の膜厚は、ビデオマイクロ(キーエンス社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−500)を用いて、以下の箇所を測定した。
すなわち、軸方向を等間隔で5ヵ所(中央部、中央から±90mm位置、両端部から10mm位置)、かつ周方向に等間隔に3ヵ所の合計15ヵ所を測定した。
【0047】
<塗工評価1>
塗工時のリング塗布ヘッドの移動速度(塗工速度)と狙い膜厚を以下の条件になるように、塗工速度と液吐出量を調整し、各10本ずつ連続で塗工を行った。
【0048】
【表1】

【0049】
各条件で作製した帯電ローラの膜厚を上記の方法で測定し下記の要領で評価した。
A:膜厚の値が帯電ローラ全数で狙い膜厚の±10%以内であった。
B:膜厚の値が狙い膜厚の±10%を越えるものも発生したが、全数で±20%以内であった。C:膜厚の値が狙い膜厚の±20%を越えるものが発生した。
評価結果は表1に示す。
【0050】
<塗工評価2>
塗工速度を50mm/sとし、表面層平均膜厚が13μmとなるように、塗布液の吐出量を調整し、200本連続で塗工を行い、5本置きに計40本の帯電ローラにおいて膜厚を測定した。評価は<塗工評価1>と同様に行った。
【0051】
また、塗工した帯電ローラ200本において目視での外観評価を下記の要領で行った。
A:全ての帯電ローラにおいて、目視での塗工ムラが見られなかった。
B:帯電ローラ全周に渡って塗工が行われているものの、若干の光沢ムラが発生していた。
C:帯電ローラにはっきりとした塗工ムラが確認された。
評価結果は表1に示す。
【0052】
[実施例2]
導電性基層ローラ1を回転させる代わりに、リング塗布ヘッドを回転させた以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1>、<塗工評価2>を行った。
【0053】
[実施例3]
リング塗布ヘッドをローラの長手方向に移動させる塗布工程時に導電性基層ローラを30rpmで軸回転させ続けた以外は実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1>、<塗工評価2>を行った。
【0054】
[実施例4]
塗布液1に、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(平均粒径8.0μm、体積低効率:1.0×1015Ω・cm)9質量部(バインダー100質量部に対して30重量部相当量)を添加した後、更に1時間分散して塗布液2を得た。
【0055】
塗布液1を塗布液2に変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1>、<塗工評価2>を行った。
【0056】
なお、帯電ローラを目視で観察したところ、塗布液に含有した粒子による塗工ムラは観察されなかった。
【0057】
[実施例5]
塗布液1のメチルイソブチルケトンの量を180質量部とした(塗布液3)以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1>、<塗工評価2>を行った。
なお、塗布液3の粘度は7mP・sであった。
【0058】
[実施例6]
塗布液1のメチルイソブチルケトンの量を120質量部とした(塗布液4)以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1>、<塗工評価2>を行った。
なお、塗布液4の粘度は45mP・sであった。
【0059】
[実施例7]
実施例1において、保持部材の外径を11.90mmとした。また、塗工開始位置を保持部材とし、その位置で液充填を行った。その後、保持部材を導電性基層ローラ1と一緒に30rpmで4秒間回転させ、回転停止後、保持部材と導電性基層ローラ1上に連続的に塗工を行った。それ以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、<塗工評価1><塗工評価2>を行った。
【0060】
[比較例1]
液充填時の回転動作を行わずに塗工した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。
【0061】
[比較例2]
液充填時の回転動作を行わずに塗工した以外は、実施例3と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。
【0062】
[比較例3]
液充填時の回転動作を行わずに塗工した以外は、実施例4と同様に帯電ローラを作製し、評価を行った。
【0063】
なお、帯電ローラを目視で観察したところ、塗布液に含有した粒子による塗工ムラが観察された。
【0064】
【表2】

【符号の説明】
【0065】
1:導電性支持体
2:導電性弾性層
3:表面層
11:導電性基層ローラ
12:保持部材
13:スリット状吐出口
14:リング塗布ヘッド
15:供給口
16:塗布液分配室
17:塗布液絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体とその周囲に形成した導電性弾性層とを有する導電性基層ローラに対し全周に亘って間隙を形成するように配置されたリング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出し、導電性基層ローラ上に少なくとも1層以上の表面層を形成するローラの製造方法であって、
該リング塗布ヘッドと該導電性基層ローラを長手方向に相対移動させずに、前記リング塗布ヘッドの吐出口と前記導電性基層ローラとの間隙に塗布液を充填しながら/もしくは充填した後、前記導電性基層ローラと前記リング塗布ヘッドを相対的に軸回転させる工程と、
該導電性基層ローラの長手方向に該リング塗布ヘッドを相対移動させながら、前記リング塗布ヘッドの吐出口から塗布液を吐出させて該表面層を形成する工程、
を有することを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
前記導電性基層ローラと前記リング塗布ヘッドを相対的に軸回転させる工程が、前記導電性基層ローラを回転させることによって行う請求項1に記載のローラの製造方法。
【請求項3】
前記導電性基層ローラに対し前記リング塗布ヘッドを長手方向に相対移動させて前記塗布液を塗布している際には、前記導電性基層ローラと前記リング塗布ヘッドを相対的に軸回転させない請求項1または2に記載のローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−8192(P2012−8192A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141506(P2010−141506)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】