説明

ローラツールの着脱機構

【課題】ローラが用いられて行われる作業の自動化を図るための構成において、ローラの交換を簡易的に行うことができ、高い汎用性を得ることができるローラツールの着脱機構を提供する。
【解決手段】ツール本体11にローラ12を支持するローラツール10は、交換台30に対する着座面となる突部下面21と、突部下面21とは反対側を向く面である突部上面22とを有し、交換台30は、突部下面21が接触する面である座面41と、座面41に対向する面である天井面42とを有し、交換台30に着座した状態のローラツール10が、所定の支持機構との関係における近接移動を、座面41による支持によって受けることで、ローラツール10の支持機構に対する取付けが行われ、交換台30に着座した状態のローラツール10の、支持機構との関係における離間移動が、天井面42によって規制されることで、ローラツール10の支持機構からの取外しが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)の成形品の製造過程においてシート状の材料の積層作業に用いられるローラを交換するための、ローラツールの着脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等のFRPの成形品(以下「FRP成形品」という。)は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた材料であって未硬化状態のものであるプリプレグの積層体が型によって所定の形状に成形され硬化されることで製造される。このようなFRP成形品の製造過程では、シート状の材料であるプリプレグの積層作業が行われる。
【0003】
プリプレグの積層作業は、複数枚のプリプレグが成形用の型に順に貼り付けられることにより行われる。このため、プリプレグの積層作業においては、FRP成形品における形状不良や気泡・ピンホール等の発生を防止する観点から、プリプレグを型(の成形面)に沿わせることやプリプレグの層間から空気を除去すること(脱泡すること)が重要である。なお、プリプレグの層間から空気を除去することに関しては、真空バックや真空ポンプ等を用いて硬化前のプリプレグ積層体内から気泡等の原因となる空気を吸引して除去するというバキュームバック成形法が知られている。
【0004】
従来、FRP成形品が例えば曲面部の多い自動車部品である場合のように製品の形状が比較的複雑な曲面形状である場合や、製品が比較的小型のものである場合等においては、プリプレグの積層作業が手作業(手貼り)で行われている。一方で、人件費の削減等を図るため、プリプレグの積層作業について自動化を図ることも行われている。プリプレグの積層作業の自動化に際しては、従来、プリプレグを型に沿わせたり脱泡したりするためのローラがロボット等の自動装置によって操作される構成が採用されている。
【0005】
こうしたロボット等の自動装置によってローラが操作される従来の構成(以下「従来構成」という。)については、FRP成形品が自動車部品等のような比較的複雑な曲面形状を有する部品(以下「複雑形状部品」という。)である場合に、適用が困難である。つまり、FRP成形品が複雑形状部品である場合に手作業で行われていたプリプレグの積層作業については、従来構成によって自動化を図ることは困難である。これは次のような理由による。
【0006】
すなわち、FRP成形品が複雑形状部品である場合、ローラによるプリプレグの積層作業の自動化を図るうえでは、部品における様々な形状部分に対応してプリプレグを型に沿わせたりするため、径や長さ(幅)の異なる複数種類のローラが必要となる。そこで、複雑形状部品についてのプリプレグの積層作業の自動化のためには、ローラの交換を頻繁に行うことが必要とされる。
【0007】
しかし、従来構成においては、ローラの移動について必要とされる位置精度の確保等のために設備が巨大であることから、ローラの交換作業が大変な作業であり非常に長い時間を必要とする。具体的には、従来構成におけるローラの交換作業としては、例えば、ロボット等の自動装置を含む設備が止められ、巨大な設備に対応して大型であるヘッド部分(ロボット等に対するローラの支持部分)の交換等が行われる。このため、従来構成においては、ローラの交換を頻繁に行うことが困難である。
【0008】
また、従来構成においては、ヘッド部分が専用部品により構成されることから、十分な汎用性が得られなかった。このように、従来構成によれば、対応可能なFRP成形品の形状についての自由度が小さく、適用範囲が狭い。
【0009】
特許文献1には、FRP成形層の脱泡装置についての技術が開示されている。特許文献1の装置によれば、脱泡用のローラがFRP成形層に押し付けられた状態で往復動させられることで、FRP成形層が脱泡させられる。しかし、特許文献1に開示されているような装置によれば、作業の自動化は図られるものの、装置構成が大がかりであり、また、ローラを支持するための構成も複雑で汎用性に乏しい。このため、特許文献1の装置についても、FRP成形品が複雑形状部品である場合の適用が困難であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平3−12498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ローラが用いられて行われる作業の自動化を図るための構成において、ローラの交換を簡易的に行うことができ、高い汎用性を得ることができるローラツールの着脱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、ツール本体にローラを支持するローラツールと、該ローラツールを支持する所定の支持機構との、互いに所定の向きで対向した状態での近接離間する方向の移動動作によって、前記ローラツールの前記支持機構に対する取付けおよび前記ローラツールの前記支持機構からの取外しが行われるローラツールの着脱機構であって、前記支持機構に支持された状態で前記近接離間する方向とは異なる所定の方向に所定の姿勢で移動するローラツールを受け入れて着座させる交換台を備え、前記ローラツールは、前記ツール本体に、前記所定の方向に沿う面であり前記交換台に対する着座面となる第一の作用面と、前記所定の方向に沿う面であり前記第一の作用面とは反対側を向く面である第二の作用面とを有し、前記交換台は、前記ローラツールが前記交換台に着座した状態で前記第一の作用面が接触する面である第一の受け面と、該第一の受け面に対向する面であり前記ローラツールが前記交換台に着座した状態で前記第二の作用面に対向する面である第二の受け面とを有し、前記交換台に着座した状態の前記ローラツールが、前記支持機構との関係における前記近接離間する方向のうち近接する方向の移動動作にともなう移動を、前記第一の作用面が接触する前記第一の受け面による支持によって受けることで、前記ローラツールの前記支持機構に対する取付けが行われ、前記支持機構に支持されるとともに前記交換台に着座した状態の前記ローラツールの、前記支持機構との関係における前記近接離間する方向のうち離間する方向の移動動作にともなう移動が、前記第二の作用面の前記第二の受け面に対する接触によって規制されることで、前記ローラツールの前記支持機構からの取外しが行われるものである。
【0014】
請求項2においては、前記第一の受け面は、該第一の受け面が前記第二の受け面に近接離間する方向に所定の範囲で移動可能であるとともに前記第一の受け面が前記第二の受け面に近接する方向に付勢された状態で設けられる移動部材によって形成されるものであり、前記交換台に着座する前記ローラツールを、前記移動部材による付勢作用により、前記第一の受け面と前記第二の受け面とで挟み込むものである。
【0015】
請求項3においては、前記交換台は、前記ツール本体に接触することで前記交換台に着座する前記ローラツールの前記所定の方向の移動を規制する壁部を有し、該壁部は、少なくとも前記ツール本体が接触する部分に磁力を作用させる磁石を有し、前記交換台に着座する前記ローラツールを、前記ツール本体に作用する前記磁石の磁力によって前記壁部に吸着させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、ローラが用いられて行われる作業の自動化を図るための構成において、ローラの交換を簡易的に行うことができ、高い汎用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る着脱機構の構成を示す斜視図。
【図2】ローラツールの構成を示す側面図。
【図3】同じく正面図。
【図4】着脱ヘッドに対するローラツールの着脱構成を示す図。
【図5】交換台の構成を示す側面図。
【図6】同じく正面図。
【図7】着脱ヘッドに対するローラツールの着脱に際しての動作態様の説明図。
【図8】同じく着脱ヘッドにローラツールが取り付けられた状態を示す図。
【図9】同じくローラツールが交換台から取り出された状態を示す図。
【図10】本発明の一実施形態に係る着脱機構の使用態様の一例を示す側面図。
【図11】同じく正面図。
【図12】同じく平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ローラが用いられて行われる作業の自動化を図るに際し、ロボット等の自動装置に取り付けられる交換部分であるローラツールと、交換前あるいは交換後のローラツールがセットされる交換台とを備える構成において、自動装置に対するローラツールの着脱(取付けおよび取外し)を、ローラツールと交換台との間における単純な動きによって実現しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本実施の形態では、ローラが用いられて行われる作業を、FRP成形品の製造過程におけるプリプレグの積層作業とする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るローラツールの着脱機構(以下単に「着脱機構」とする。)は、ローラ12を支持するローラツール10を、ロボット等の自動装置によって移動可能に設けられる所定の支持機構に対して着脱するためのものである。本実施形態では、ローラツール10の着脱の対象となる所定の支持機構として、着脱ヘッド1が用いられる(図4参照)。
【0020】
図11に示すように、着脱ヘッド1は、所定のロボット2に支持された状態で設けられる。ロボット2は、様々な位置および角度に姿勢制御されるフレキシブルなロボットアーム(多関節ロボット)として構成される。したがって、着脱ヘッド1は、ロボット2の動作によってロボット2の可動範囲において三次元方向に移動可能に設けられる。つまり、着脱ヘッド1は、ローラ12を支持する部品としてのローラツール10を、ロボット2に対して着脱するためにロボット2側に設けられる機構である。
【0021】
そして、本実施形態の着脱機構においては、ローラツール10と、ローラツール10を支持する着脱ヘッド1との、互いに所定の向きで対向した状態での近接離間する方向(以下「近接離間方向」という。)の移動動作によって、ローラツール10の着脱ヘッド1に対する取付けおよびローラツール10の着脱ヘッド1からの取外しが行われる。
【0022】
すなわち、本実施形態では、所定の姿勢で支持された状態のローラツール10に対する、ロボット2の動作による着脱ヘッド1の所定の側からの直線的な近接動作により、ローラツール10が着脱ヘッド1に取り付けられる。また、着脱ヘッド1に支持された状態(取り付けられている状態)のローラツール10に対する、ロボット2の動作による着脱ヘッド1の直線的な離間動作により、ローラツール10が着脱ヘッド1から取り外される。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の着脱機構は、交換台30を備える。交換台30は、着脱ヘッド1に取り付けられるローラツール10、または着脱ヘッド1から取り外されるローラツール10をセットするためのものである。着脱ヘッド1に支持された状態で近接離間方向とは異なる所定の方向に所定の姿勢で移動するローラツール10を受け入れて着座させる。そして、前述したような着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が、交換台30が用いられて行われる。以下、本実施形態に係る着脱機構について、具体的に説明する。
【0024】
図1〜図3に示すように、ローラツール10は、ツール本体11にローラ12を支持する。ツール本体11は、全体として略矩形板状(略直方体状)の外形を有する基部13を含む。ツール本体11において、ローラ12は、基部13の一側(図2において下側)の端面部(以下「下側端面部」という。)13a側において支持される。
【0025】
なお、以下の説明では、ローラツール10においてツール本体11の基部13に対してローラ12が支持される側(図1において下側)を下側、その反対側(同上側)を上側とする上下方向を、ローラツール10についての上下方向とする。また、基部13の平面視形状(上面視形状)における長手方向(図2における左右方向)および短手方向(図3における左右方向)を、それぞれ本実施形態のローラツール10についての長手方向(以下「ツール長手方向」という。)および短手方向(以下「ツール短手方向」という。)とする。したがって、ツール短手方向は、前記のとおり略矩形板状の外形を有する基部13の板厚方向に対応する。
【0026】
ローラ12は、所定の径および長さ(幅)を有し、ツール本体11の下側端面部13aの面方向に平行な所定の方向(本実施形態ではツール長手方向)を回転軸方向として回転自在に支持される。ローラ12は、下側端面部13aから下側に突き出すように設けられる一対のアーム14によって支持される。
【0027】
アーム14は、基部13において、ツール長手方向の両端側にて、ツール短手方向の略中央位置に設けられる。アーム14は、柱状の部材であるアーム部材14aが、基部13におけるツール長手方向の両側側面において、下側端面部13aから下方に突き出るように支持されることで構成される。アーム部材14aは、基部13におけるツール長手方向の両側側面にて下方が開放するように形成される嵌合溝13bに嵌合した状態で留め具14bによって固定されることで、基部13に支持される。
【0028】
このように構成される一対のアーム14は、ツール長手方向に対向した状態でローラ12を支持する。アーム14に対するローラ12の支持には、一方のアーム14(図2において右側のアーム14)側からローラ12の回転軸方向に挿入され、他方のアーム14(同左側のアーム14)との間で架け渡される支持ピン15が用いられる。
【0029】
このようにツール本体11にローラ12を支持するローラツール10は、着脱ヘッド1に対する着脱のため、着脱溝16を有する。着脱溝16は、ツール本体11の基部13における比較的上部において、基部13の側面(板面含む)に沿って下側端面部13aの面方向に平行な方向となるように形成される。本実施形態では、着脱溝16は、基部13においてツール長手方向およびツール短手方向それぞれの両側の面に形成され、基部13の全周にわたって連続するように形成されている。つまり、着脱溝16は、基部13の平面視形状である長方形状に沿う溝部として形成される。
【0030】
ローラツール10は、着脱溝16の部分が挟まれることで支持され、着脱ヘッド1に取り付けられる。すなわち、ローラツール10は、着脱溝16の部分が挟まれた状態となることで、着脱ヘッド1に取り付けられた状態となり、着脱溝16の部分が挟まれた状態から解放されることで、着脱ヘッド1から取り外される。
【0031】
具体的には、図4(a)、(b)に示すように、着脱ヘッド1は、ローラツール10に対して上側から被さるようにして、ローラツール10に装着される。このため、着脱ヘッド1は、一側に開口部1aを有するキャップ状の構成を備え、開口部1aを介して外部と連通する空間部分である支持空間1bを有する。つまり、着脱ヘッド1は、支持空間1bが開口部1aを介して開放された状態でロボット2に支持される。そして、ローラツール10は、着脱ヘッド1に対して、開口部1aを介して支持空間1b内に一部が挿入された状態(嵌合した状態)で支持される。
【0032】
着脱ヘッド1は、支持空間1b内に挿入された状態のローラツール10を支持するため、ストッパ機構を有する。つまり、このストッパ機構は、ローラツール10の着脱溝16の部分を挟むことで、ローラツール10を着脱ヘッド1に対して支持させる。着脱ヘッド1が有するストッパ機構は、着脱溝16の部分においてツール本体11(基部13)をツール長手方向両側から挟むための一対のストッパ3により構成される。
【0033】
図4(a)に示すように、ストッパ3は、例えば球状の部材により構成され、支持空間1bに対してツール長手方向の両側に対向した状態で設けられる。ストッパ3は、バネ等の弾性部材による弾性力等によってローラツール10を挟む方向(一対のストッパ3同士が近接する方向)に付勢された状態で、ローラツール10を挟む方向を含むツール長手方向に移動可能に設けられる(矢印A参照)。ストッパ3は、支持空間1bの内部、あるいは支持空間1bおよび支持空間1bを形成する壁状部分の内部に形成される空間を含む所定の空間部分を移動範囲とする。このように、着脱ヘッド1が有するストッパ機構は、一対のストッパ3がツール長手方向に移動するスライド式のストッパ機構として構成される。
【0034】
着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱は、次のような態様で行われる。すなわち、着脱ヘッド1に対するローラツール10の取付けに際しては、図4(a)に示すように、所定の姿勢で支持された状態のローラツール10に対して、上側から着脱ヘッド1が開口部1a側を向けて近接する方向に移動する(矢印B1参照)。この着脱ヘッド1のローラツール10に対する近接移動により、ローラツール10の上側の部分が、開口部1aを介して支持空間1b内に挿入される。
【0035】
ローラツール10の支持空間1bに対する挿入に際しては、ストッパ機構を構成する一対のストッパ3が付勢力に抗して広がる(一対のストッパ3同士が離間する方向に移動する)ことで、ローラツール10の支持空間1b内への進入が許容される。このため、ストッパ3は、着脱ヘッド1のローラツール10に対する近接動作のみによってローラツール10が支持空間1b内に挿入される作用が得られる形状に形成される。ここで、ローラツール10においては、一対のストッパ3間にローラツール10を円滑に入り込ませるため、基部13の上端部に面取形状部13cが形成されている。
【0036】
そして、図4(b)に示すように、ローラツール10は、着脱ヘッド1の移動により、着脱溝16の部分が一対のストッパ3によって挟まれた状態となるまで、支持空間1b内に挿入される。言い換えると、ローラツール10の進入によって広げられた一対のストッパ3が着脱溝16の部分において付勢力により戻って着脱溝16(のツール長手方向両側の部分)に嵌った状態となるまで、ローラツール10が支持空間1b内に挿入される。これにより、ローラツール10は、ストッパ3によって着脱溝16の部分が挟まれた状態、つまり着脱ヘッド1に取り付けられた状態となる。
【0037】
また、着脱ヘッド1からのローラツール10の取外しに際しては、図4(b)に示すように、着脱ヘッド1に取り付けられた状態のローラツール10に対して、着脱ヘッド1が離間する方向に移動する(矢印B2参照)。この着脱ヘッド1のローラツール10からの離間移動により、支持空間1b内に挿入されているローラツール10が相対的に引き出される。
【0038】
ローラツール10が支持空間1b内から引き出される際には、ストッパ機構を構成する一対のストッパ3が付勢力に抗して広がることで、ローラツール10の支持空間1bからの退出が許容される。このため、ストッパ3および着脱溝16は、着脱ヘッド1のローラツール10に対する離間動作のみによってローラツール10が支持空間1b内から引き出される作用が得られる形状に形成される。
【0039】
そして、図4(a)に示すように、ローラツール10は、着脱ヘッド1の移動により、支持空間1b内から相対的に引き出され、着脱溝16の部分が一対のストッパ3によって挟まれた状態から解放された状態となる。言い換えると、ローラツール10の退出によって広げられた一対のストッパ3が互いの間に空間(支持空間1b)を介した状態となることで付勢力により戻った状態となる作用をともなって、ローラツール10が支持空間1b内から引き出される。これにより、ローラツール10は、着脱ヘッド1から取り外された状態となる。
【0040】
このようにして着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が行われる本実施形態においては、着脱ヘッド1とローラツール10との間における、ローラツール10の着脱ヘッド1に対する着脱のための近接離間方向の移動動作について、互いに所定の向きで対向した状態とは、ローラツール10の上側(ローラ12側の反対側)と、着脱ヘッド1の開口部1a側とが対向した状態である(図4(a)、(b)参照)。また、本実施形態において、着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が行われる移動動作の方向である近接離間方向は、上下方向に対応する。
【0041】
なお、着脱ヘッド1とローラツール10との間の着脱のための構成は、本実施形態に限定されない。すなわち、着脱ヘッド1が有するストッパ機構としては、一対のストッパ3により、着脱ヘッド1とローラツール10との間の近接離間方向の移動動作によるローラツール10の支持空間1bに対する抜き差しが許容されるとともに、着脱溝16による支持について、少なくともローラツール10がその自重によって脱落しない程度の保持力が得られる構成であればよい。
【0042】
したがって、ストッパ3の形状については、球状のほか、着脱溝16の形状に沿う棒状(円柱状)等であってもよい。また、ストッパ3が設けられる位置については、支持空間1bに対してツール長手方向の両側に設けられる代わりに、あるいはこれに加えて、支持空間1bに対してツール短手方向の両側に設けられてもよい。つまりこの場合、ストッパ機構によるローラツール10の支持に、着脱溝16のツール短手方向両側の部分が用いられる。さらに、着脱ヘッド1が有するストッパ機構は、例えば、着脱溝16の部分に対する係止部(突部)を有する板バネにより構成されてもよい。
【0043】
また、ローラツール10は、ツール本体11において、着脱ヘッド1に対する着脱に用いられる突起部(以下「着脱用突部」という。)20を有する。着脱用突部20は、ローラツール10が交換台30との関係において着脱ヘッド1に対する着脱に用いられる作用を受けるための部分である。つまり、ローラツール10は、着脱用突部20により、着脱ヘッド1に対する着脱に際して、交換台30との関係で相互作用する。
【0044】
本実施形態では、着脱用突部20は、ツール本体11において、基部13のツール短手方向両側の面(両側の板面)から外方へ突出するブロック状の部分として構成される。着脱用突部20は、基部13における比較的下部において、ツール長手方向の略中央位置に設けられる。ローラツール10に設けられる一対の着脱用突部20は、互いにツール長手方向およびツール短手方向について対称に構成される。
【0045】
着脱用突部20は、互いに平行な略水平面として形成される下面(以下「突部下面」という。)21と上面(以下「突部上面」という。)22とを有する。つまり、突部下面21は下側を向く面であり、突部上面22は上側を向く面であって、これらは互いに反対側を向いている。本実施形態では、突部下面21および突部上面22は、いずれもツール長手方向を長手方向とする長方形状である。また、突部下面21と突部上面22との関係において、ツール長手方向の寸法については互いに略同じであり、ツール短手方向の寸法については突部上面22の方が突部下面21よりも大きい(図3参照)。ただし、突部下面21および突部上面22について、その形状や相対的な大きさ等は特に限定されない。
【0046】
また、前記のとおり対称に構成される一対の着脱用突部20については、それぞれが有する突部下面21および突部上面22は、互いに同じ高さに位置する。つまり、一方の突部下面21と他方の突部下面21との上下方向における位置は同じであり、一方の突部上面22と他方の突部上面22との上下方向における位置は同じである。また、基部13の板面に設けられる突起部分としての着脱用突部20は、基部13に対して所定の形状を有する部材(基部13とは別部材)が取り付けられることで形成される部分であっても、基部13として一体的に形成される部分であってもよい。
【0047】
続いて、交換台30について説明する。図1、図5、および図6に示すように、交換台30は、矩形板状の部分である土台部31と、土台部31上に設けられる一対の支持部32とを備える。支持部32は、全体として壁状に構成される部分であり、一対の支持部32は、土台部31上において所定の間隔を隔てた状態で互いに略平行に配された状態で設けられる。
【0048】
なお、以下の説明では、交換台30において土台部31に対して支持部32が設けられる側(図1において上側)を上側、その反対側(同下側)を下側とする上下方向を、交換台30についての上下方向とする。
【0049】
支持部32は、枠部33と、支持台部34とを有する。枠部33は、四角形の枠形状のうち一辺側が開口したような形状、つまり略横U字状(略コ字状)の形状を有する。支持台部34は、枠部33に対して上下方向の中間部において水平方向に配される台状の部分である。支持部32は、枠部33と支持台部34とによって、略E字状に構成される。
【0050】
枠部33は、互いに略平行に配される上辺部33aおよび下辺部33bと、これらの一側(図5において右側)の端部間において上下方向に配される縦辺部33cとを有する。枠部33は、上辺部33a、下辺部33b、および縦辺部33cにより、前記のとおり略横U字状の形状を有する。上辺部33a、下辺部33b、および縦辺部33cは、いずれも前記のとおり壁状に構成される支持部32における壁厚に対応する幅を有する直線状の部分である。
【0051】
支持台部34は、枠部33に対して、上辺部33aと下辺部33bとの間において、これら上辺部33aおよび下辺部33bと略平行に配された状態で設けられる。前記のとおり枠部33とともに略E字状を構成する支持台部34は、枠部33を構成する各辺部と同様に、壁状に構成される支持部32における壁厚に対応する幅を有する直線状の部分である。
【0052】
支持台部34は、枠部33を構成する下辺部33bの上側において、支柱35によって支持される。支柱35は、枠部33を構成する下辺部33bの上面33dに立った状態で設けられる。本実施形態では、支持台部34は、二本の支柱35により、長手方向(図5における左右方向)の両側の端部が支持される。
【0053】
このように枠部33と支持台部34とを有する支持部32は、枠部33が略横U字状となる姿勢、つまり枠部33の下辺部33bが、土台部31の上面31aに沿うような姿勢で、土台部31に対して支持される。そして、支持部32は、枠部33の下辺部33bが土台部31の上面31a側に固定されることで、土台部31に対して支持される。枠部33の下辺部33bは、ボルト等の締結具や溶接等によって土台部31に固定される。
【0054】
また、交換台30を構成する一対の支持部32は、土台部31上において両者が同じ方向を向くように設けられる。つまり、前記のとおり土台部31上において略平行に配される一対の支持部32は、枠部33の開口側(図5において左側)が同じ方向を向く姿勢で土台部31に対して固定される。なお、以下の説明では、交換台30において枠部33の開口側(図5において左側)を前側、その反対側(同右側)を後側とする前後方向を、交換台30についての前後方向とする。
【0055】
以上のような構成を備える交換台30は、着脱ヘッド1に支持された状態でロボット2の動作によって水平方向に移動するローラツール10を、前側から受け入れて着座させる。具体的には、本実施形態では、交換台30は、ローラツール10の着脱用突部20の部分を枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に受け入れることで、ローラツール10を着座させる。
【0056】
すなわち、交換台30は、一方の支持部32における枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に、ローラツール10が有する一方の着脱用突部20を受け入れ、他方の支持部32における枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に、ローラツール10が有する他方の着脱用突部20を受け入れる。このため、ローラツール10は、交換台30を構成する一対の支持部32の間において、着脱用突部20の部分によって架け渡された状態で支持される。
【0057】
したがって、交換台30において、一対の支持部32間に隔てられる所定の間隔は、ローラツール10のツール本体11を構成する基部13の厚さ寸法(ツール短手方向の寸法)よりも大きい寸法に設定される。なお、支持台部34においては、枠部33の上辺部33aと支持台部34との間にローラツール10の着脱用突部20の部分を円滑に入り込ませるため、前端部に前側にかけて下る斜面部34aが形成されている。
【0058】
このように、交換台30は、ツール長手方向に沿うように水平方向に移動するローラツール10を前側から受け入れて着座させる。そして、交換台30に着座した状態のローラツール10は、着脱用突部20の部分が、支持台部34に支持された状態となる。つまり、ローラツール10は、着脱用突部20の突部下面21を、支持台部34の上面部において略水平面として形成される座面41に接触させた状態で支持される。
【0059】
しがたって、本実施形態の着脱機構において、交換台30に受け入れられて着座するに際して着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10が移動する方向について、近接離間方向とは異なる所定の方向は、交換台30における前後方向に対応する方向(図1、矢印C1参照)である。また、同じく交換台30に受け入れられて着座するに際して着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10が移動する姿勢について、所定の姿勢は、ツール長手方向が交換台30の前後方向に沿うとともに、ローラツール10の上下方向が交換台30の上下方向に対応するような姿勢である。なお、以下の説明では、図1において矢印C1で示すように、交換台30に着座するローラツール10が交換台30に対して移動する方向(近接離間方向とは異なる所定の方向)を便宜上「ツールスライド方向」という。
【0060】
そして、本実施形態の着脱機構においては、ローラツール10がツール本体11に着脱用突部20を備えることによって有する突部下面21が、ツールスライド方向に沿う面であり交換台30に対する着座面となる第一の作用面として機能する。また、同じくローラツール10がツール本体11に着脱用突部20を備えることによって有する突部上面22が、ツールスライド方向に沿う面であり第一の作用面としての突部下面21とは反対側を向く面である第二の作用面として機能する。
【0061】
また、本実施形態の着脱機構においては、交換台30が支持部32を構成する支持台部34において有する座面41が、ローラツール10が交換台30に着座した状態で突部下面21が接触する面である第一の受け面として機能する。また、交換台30は、枠部33の下面部において略水平面として形成される天井面42を有する。このように交換台30が支持部32を構成する枠部33において有する天井面42が、第一の受け面としての座面41に対向する面でありローラツール10が交換台30に着座した状態で突部上面22に対向する面である第二の受け面として機能する。
【0062】
また、本実施形態の着脱機構においては、交換台30において座面41を形成する支持台部34が、座面41が天井面42に近接離間する方向(上下方向)に所定の移動範囲で移動可能な移動部材として構成される。そして、このように移動部材として構成される支持台部34は、座面41が天井面42に近接する方向(上方向)に付勢された状態で設けられる。
【0063】
具体的には、支持台部34は、前述したように支柱35によって支持された状態で、上下方向に移動可能に設けられる。したがって、支柱35は、支持台部34の上下方向の移動を許容するため、上端側の一部および下端側の一部の少なくともいずれかが支持部32を構成する部分に対して出没可能に構成される。すなわち、支柱35の上端部の場合については、支柱35が支持台部34の下面34bに対して出没可能に構成され、支柱35の下端部の場合については、支柱35が枠部33を構成する下辺部33bの上面33dに対して出没可能に構成される。
【0064】
そして、支柱35によって上下方向に移動可能に設けられる支持台部34は、コイルスプリング36によって上方向に付勢された状態で支持される。コイルスプリング36は、支柱35を支持体として、枠部33の下辺部33bと支持台部34との間に設けられる。つまり、コイルスプリング36は、支柱35を貫通させるとともに、枠部33を構成する下辺部33bの上面33dと支持台部34の下面34bとにより挟まれた状態で設けられる。
【0065】
このように上方に向けて付勢された状態で支持される支持台部34については、その付勢力に抗する下方向への移動が、ストッパ37によって規制される。ストッパ37は、枠部33を構成する下辺部33bの上面33dに立った状態で設けられる柱状の部分である。本実施形態では、ストッパ37は、前後方向において二本の支柱35の間における中間の位置に設けられる。ストッパ37は、下辺部33bの上面33dから所定の高さ位置に、支持台部34の下方向への移動を規制した状態で支持台部34の下面34bに接触する当接面37aを形成する。
【0066】
このように、コイルスプリング36によって上方向に付勢されるとともに、下方向への移動がストッパ37によって規制される支持台部34についての上下方向における所定の移動範囲は次のとおりである。すなわち、上側については、支持台部34がコイルスプリング36の付勢力によってストッパ37から離れた状態で支持される位置から、下側については、支持台部34の移動がストッパ37によって規制される位置(支持台部34の下面34bがストッパ37の当接面37aに接触する位置)までの移動範囲である。
【0067】
このように、本実施形態の着脱機構においては、ローラツール10が交換台30に着座した状態で突部下面21が接触する面である座面41が、上下方向に所定の移動範囲で移動可能であるとともに下方向に付勢された状態で設けられる移動部材としての支持台部34によって形成される。そして、かかる構成により、交換台30に着座するローラツール10が、支持台部34による付勢作用により、座面41と天井面42とで挟み込まれる。
【0068】
すなわち、ローラツール10の着脱用突部20が枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に受け入れられた状態において、支持台部34がコイルスプリング36による上方向への付勢力を受けることで、着脱用突部20の部分が上辺部33aと支持台部34とで挟まれる。このため、交換台30がローラツール10を待機している状態(自然状態)、つまり支持台部34がコイルスプリング36の付勢力によってストッパ37から離れた状態で支持されている状態においては、座面41と天井面42との間の間隔(上下方向の寸法)は、着脱用突部20における突部下面21と突部上面22との間の間隔(上下方向の寸法)よりも小さい。
【0069】
そして、枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に着脱用突部20が入り込むことで、支持台部34がコイルスプリング36による付勢力に抗して下向きに移動する。つまり、ローラツール10は、着脱用突部20の部分が枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に挟まれた状態でスライドしながら、交換台30に着座した状態となる。ここで、枠部33の上辺部33aと支持台部34との間において、着脱用突部20が入り込むための間隔(上下方向の寸法)は、支持台部34の前端部に形成される斜面部34aにより確保される。
【0070】
また、本実施形態の着脱機構においては、交換台30の支持部32を構成する枠部33の縦辺部33cが、ツール本体11に接触することで交換台30に着座するローラツール10のツールスライド方向の移動を規制する壁部として機能する。すなわち、枠部33の上辺部33aと支持台部34との間に受け入れられたツール本体11の一部である着脱用突部20が、縦辺部33cの前側の面である縦壁面33eに接触することで、ローラツール10のツールスライド方向における後方向への移動が規制される。言い換えると、交換台30に着座するローラツール10は、着脱用突部20の部分が縦辺部33c(縦壁面33e)に接触させられることで、ツールスライド方向について位置決めされる。
【0071】
このようにローラツール10の移動を規制する壁部として機能する枠部33の縦辺部33cには、磁石38が設けられる。磁石38は、縦辺部33cにおいて、少なくともツール本体11が接触する部分に磁力を作用させるように設けられる。
【0072】
本実施形態では、磁石38は、円板状の形状を有し、縦辺部33cの内部に埋め込まれるとともに、一側の端面が縦壁面33eにおいて露出した状態で設けられる。縦壁面33eにおいて磁石38が露出する部分は、交換台30に着座するローラツール10の着脱用突部20が接触する部分に対応する。
【0073】
このように、本実施形態の着脱機構においては、交換台30が、ツール本体11に接触することでローラツール10の後方への移動を規制する壁部として、枠部33の縦辺部33cを有する。また、縦辺部33cは、少なくともツール本体11が接触する部分に磁力を作用させる磁石38を有する。そして、かかる構成により、交換台30に着座するローラツール10が、ツール本体11に作用する磁石38の磁力によって縦辺部33cに吸着させられる。
【0074】
すなわち、前述したようにツール本体11の一部である着脱用突部20の部分が縦辺部33cの縦壁面33eに接触するローラツール10は、縦辺部33cにおいてツール本体11が接触する部分に磁力を作用させるように設けられる磁石38によって、縦辺部33cに引き付けられて固定される。したがって、枠部33の縦辺部33cに磁石38を備える構成においては、磁石38によるツール本体11の吸着について相当程度(例えばロボット2の動作によるローラツール10を支持した状態の着脱ヘッド1の移動を妨げない程度)の吸着力が得られるように、ツール本体11を構成する材料や磁石38の大きさ等が設定される。
【0075】
以上の構成を備える本実施形態の着脱機構による、着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱(取付けおよび取外し)に際しての動作態様について、図7〜図9を用いて説明する。
【0076】
まず、着脱ヘッド1にローラツール10が取り付けられる場合の動作について説明する。図7に示すように、交換台30にセットされた状態のローラツール10に対して、ロボット2の動作によって移動する着脱ヘッド1が、上側から開口部1aを下側に向けて下降する(矢印X1参照)。
【0077】
交換台30にセットされた状態のローラツール10に対する着脱ヘッド1の下降により、ローラツール10の上側の部分が着脱ヘッド1の支持空間1b内に挿入される。これにより、図8に示すように、ローラツール10が、ストッパ3によって着脱溝16の部分が挟まれた状態、つまり着脱ヘッド1に取り付けられた状態となる。したがって、ローラツール10が交換台30にセットされた状態においては、着脱溝16の部分を含むツール本体11の上側の部分が、少なくとも着脱ヘッド1のストッパ機構が着脱溝16に作用する程度に、枠部33(の上辺部33a)よりも上側に突出する。
【0078】
このように交換台30にセットされた状態のローラツール10が着脱ヘッド1に取り付けられる際には、着脱ヘッド1のストッパ機構がローラツール10に作用すること(ローラツール10の上端部が一対のストッパ3間に入り込むこと)にともなってローラツール10に作用する下向きの荷重が、突部下面21が接触する座面41によって受けられる。言い換えると、一対のストッパ3がローラツール10に作用し始めてから着脱溝16に嵌った状態となるまでの着脱ヘッド1の下降(矢印X2参照)にともなってローラツール10に作用する荷重が、着脱用突部20(の突部下面21)を介して支持台部34(により形成される座面41)によって支持される。
【0079】
すなわち、交換台30にセットされた状態のローラツール10に対して下降する着脱ヘッド1のストッパ機構が作用することによるローラツール10の下側への移動が、突部下面21に接触することで着脱用突部20の部分を支持する座面41によって規制される。なお、前述したように支持台部34が上下方向に移動可能に設けられる構成においては、座面41による荷重の支持は、実質的には、支持台部34がストッパ37によって支持されることにより行われる。
【0080】
このように、ローラツール10の着脱ヘッド1に対する取付けは、交換台30に着座した状態のローラツール10が、着脱ヘッド1との関係における近接離間方向のうち近接する方向(下方向)の移動動作にともなう移動を、突部下面21が接触する座面41による支持によって受けることで行われる。
【0081】
そして、ローラツール10が着脱ヘッド1に取り付けられた後は、図9に示すように、ローラツール10を支持した状態の着脱ヘッド1が、ロボット2の動作によって前側(図9において左側)に向けて水平方向に横移動する(矢印X3参照)。これにより、着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10は、交換台30において着脱用突部20の部分が支持されていた状態から解放され、ロボット2の動作にならって移動する状態となる。かかる状態において、ロボット2が操作されることにより、ローラツール10において支持されるローラ12が用いられて、FRP成形品の製造過程におけるプリプレグの積層作業が行われる。
【0082】
次に、着脱ヘッド1からローラツール10が取り外される場合の動作について説明する。着脱ヘッド1からのローラツール10の取外しに際しては、着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10が、交換台30に着座した状態とされる。すなわち、図9に示すように、ローラツール10を交換台30に対して所定の姿勢で支持した状態の着脱ヘッド1が、ロボット2の動作によって交換台30に対して後側(図9において右側)に向けて水平方向に横移動する(矢印Y1参照)。これにより、図8に示すように、着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10は、着脱用突部20の部分を交換台30における枠部33の上辺部33aと支持台部34との間においてスライドさせる態様で、交換台30に着座させられる。
【0083】
この際、着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10は、ツールスライド方向における後方向へ移動することによって交換台30に着座した状態となるように、ロボット2の動作によって、交換台30に対する上下方向における位置が調整される(図1、矢印C2参照)。そして、交換台30に対して所定の姿勢とされた状態のローラツール10が、ツールスライド方向における後方向へ移動により、交換台30に着座させられる。
【0084】
また、本実施形態では、交換台30において着座させるローラツール10を支持する面である座面41を形成する部材である支持台部34が、コイルスプリング36により付勢された状態で移動可能に構成されている。このため、交換台30に着座するローラツール10は、着脱用突部20の部分が枠部33の上辺部33aと支持台部34とによって挟み込まれた状態でスライド移動する。つまり、ローラツール10は、交換台30への着座に際して、突部下面21が座面41に接触するとともに突部上面22が天井面42に接触した状態でスライド移動する。このように支持台部34が付勢された状態で移動可能に設けられる構成においては、交換台30に着座した状態のローラツール10は、天井面42を基準面として、上下方向について位置決めされる。
【0085】
また、本実施形態では、交換台30において、ローラツール10が有する着脱用突部20の部分を枠部33の縦辺部33cに吸着させるための磁石38が設けられている。このため、交換台30に着座した状態のローラツール10は、縦辺部33cの縦壁面33eに対して吸着され、この縦壁面33eを基準として、前後方向について位置決めされる。
【0086】
図8に示すように、着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10が交換台30に着座した状態から、ロボット2の動作によって、着脱ヘッド1が上昇させられる(矢印Y2参照)。かかる着脱ヘッド1の上昇により、支持空間1b内に挿入されているローラツール10が相対的に引き出される。これにより、ローラツール10は、着脱溝16の部分が一対のストッパ3によって挟まれた状態から解放され、図7に示すように、着脱ヘッド1から取り外された状態となる。
【0087】
このように着脱ヘッド1に支持された状態のローラツール10が着脱ヘッド1から取り外される際には、着脱ヘッド1のストッパ機構が着脱溝16から外れること(ローラツール10の着脱溝16よりも上側の部分が下側に向けて一対のストッパ3間に入り込むこと)にともなってローラツール10に作用する上向きの荷重が、突部上面22が天井面42に接触することによって受けられる。言い換えると、着脱溝16に嵌っている状態の一対のストッパ3が外れる際に着脱ヘッド1の上昇(矢印Y2参照)にともなってローラツール10に作用する荷重が、着脱用突部20(の突部上面22)を介して枠部33の上辺部33a(により形成される天井面42)によって支持される。
【0088】
すなわち、ストッパ機構によってローラツール10の着脱溝16の部分を挟んだ状態の着脱ヘッド1が上昇することにともなうローラツール10の上側への移動が、ローラツール10が交換台30に着座した状態とされることにより、突部上面22を介して着脱用突部20が接触する天井面42によって規制される。
【0089】
このように、ローラツール10の着脱ヘッド1からの取外しは、着脱ヘッド1に支持されるとともに交換台30に着座した状態のローラツール10の、着脱ヘッド1との関係における近接離間方向のうち離間する方向(上方向)の移動動作にともなう移動が、突部上面22の天井面42に対する接触によって規制されることで行われる。
【0090】
そして、図7に示すように、着脱ヘッド1の上昇(矢印X3参照)によってローラツール10が着脱ヘッド1から取り外された後は、着脱ヘッド1がローラツール10を支持していない状態、つまりローラツール10を支持可能な状態となる。したがって、かかる状態において、ロボット2が操作されることにより、他の交換台30等に支持されるローラツール10が、前述したような動作によって着脱ヘッド1に取り付けられる。以上のように、本実施形態の着脱機構においては、ロボット2により移動させられる着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が、交換台30が用いられて行われる。
【0091】
本実施形態に係る着脱機構の使用態様の一例について、図10〜図12を用いて説明する。本例は、着脱ヘッド1によってローラツール10を支持した状態のロボット2が操作されることによってツール本体11に支持されるローラ12が用いられてFRP成形品の製造過程におけるプリプレグの積層作業が行われる構成において、六個のローラツール10が交換部品として用いられる場合の例である(図11参照)。
【0092】
図11および図12に示すように、本例では、交換部品であるローラツール10として、ローラ12の径および長さ(幅)が異なる六個の(六種類の)ローラツール10A、10B、10C、10D、10E、10Fが用いられる。六個のローラツール10は、それぞれ共通の構成を有する交換台30とセットで用いられる。つまり、本例においては、実際にロボット2に支持されてプリプレグの積層作業に用いられているローラツール10(図11においてはローラツール10A)用の交換台30と、ロボット2に支持されて作業に用いられることを待機する他の五個のローラツール10それぞれがセットされている(着座している)五個の交換台30との計六個の交換台30が用いられる。
【0093】
図10〜図12に示すように、本例では、六個の交換台30は、所定の設置台50上において、同じ方向を向いた状態で一列に配置される。具体的には、設置台50は、矩形状の(短冊形の)板状部材であり、六個の交換台30は、設置台50の長手方向に沿って一列に配置される。そして、六個の交換台30は、前側(ローラツール10を受け入れる側)が設置台50における短手方向の一側(図12において下側)を向くように設けられる。
【0094】
交換台30は、その土台部31がボルト等の締結具や溶接等によって設置台50の上面部に形成される設置面50aに対して固定されることで、設置台50上に固定される。このように六個の交換台30が設置される設置台50は、ロボット2の周辺に設けられる作業台等の、ロボット2の可動範囲に含まれる(ロボット2の動作によって着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が行われる)所定の場所に固定された状態で設けられる。作業台等に対する設置台50の固定には、設置台50を貫通する複数のボルト51が用いられる。
【0095】
また、本実施形態に係る着脱機構においては、ローラツール10においてローラ12を支持する部分のツール長手方向の寸法が交換台30の前後方向の寸法よりも大きい場合であっても、交換台30は、対応することができる(そのローラツール10を着座させることができる)。すなわち、本実施形態に係る着脱機構を構成する交換台30においては、ローラツール10を支持する部分である一対の支持部32が、所定の間隔を隔てた状態で互いに略平行に配される壁状の部分として構成される。そして、これら一対の支持部32の間において、ローラツール10が着脱用突部20の部分によって架け渡された状態で支持される。
【0096】
このため、ローラツール10が交換台30に着座した状態で一対の支持部32の間に位置するローラ12を支持する部分については、そのツール長手方向の寸法が交換台30の前後方向の寸法によって制限されない。つまり、ローラ12を支持する部分のツール長手方向の寸法が交換台30の前後方向の寸法よりも大きいローラツール10であっても、交換台30に対する着座がローラ12を支持する部分によって妨げられない。
【0097】
したがって、例えば図12においてローラツール10D、10E、10Fとして示されるように、交換台30の前後方向の寸法よりも大きい長さ(幅)を有するローラ12に対応して構成されるローラツール10であっても、本実施形態の交換台30によれば対応可能である。
【0098】
以上のような構成により、FRP成形品の製造過程におけるプリプレグの積層作業において、ロボット2に支持されるローラツール10が、ロボット2の動作により、着脱ヘッド1に対する着脱をともなって交換される。つまり、プリプレグの積層作業において、異なる種類のローラ12を支持するローラツール10の交換により、FRP成形品における形状の異なる場所に応じて適したローラ12が選択されて用いられる。
【0099】
着脱ヘッド1によってロボット2に支持されるローラツール10の交換について、図11に示すようにロボット2に支持された状態のローラツール10Aが他のローラツール10であるローラツール10Bに交換される場合を例に説明する。この場合、図11に示すように、まず、ロボット2に支持されているローラツール10Aが、ローラツール10A用の交換台30(30A)が用いられて、着脱ヘッド1から取り外される。
【0100】
すなわち、ロボット2の動作により、ローラツール10Aが交換台30Aに着座させられる(図9矢印Y1、図8参照)。そして、ローラツール10Aが交換台30Aに着座した状態から、ロボット2の動作により、着脱ヘッド1が上昇させられる(図8矢印Y2参照)。これにより、ローラツール10Aが着脱ヘッド1から取り外される(図7矢印Y3参照)。着脱ヘッド1から取り外されたローラツール10Aは、そのままの状態で交換台30Aに着座した状態となる(図7参照)。
【0101】
次いで、ローラツール10B用の交換台30(30B)にセットされているローラツール10Bが、交換台30Bが用いられて、着脱ヘッド1に取り付けられる。すなわち、着脱ヘッド1からローラツール10Aを取り外したロボット2は、交換台30Bにセットされているローラツール10Bに対して、上側から着脱ヘッド1を下降させる(図7矢印X1参照)。これにより、ローラツール10Bが着脱ヘッド1に取り付けられる(図8矢印X2参照)。そして、ロボット2の動作により、ローラツール10Bが交換台30Bから取り出され(図9矢印X3参照)、ローラツール10Bにおいて支持されるローラ12が用いられて、プリプレグの積層作業が続行される。
【0102】
以上説明した本実施形態に係る着脱機構によれば、ローラ12が用いられて行われる作業の自動化を図るための構成において、ローラ12の交換を簡易的に行うことができ、高い汎用性を得ることができる。
【0103】
すなわち、ローラ12を支持するとともに着脱ヘッド1によってロボット2に支持される交換部品としてのローラツール10が、交換台30が用いられることで、ロボット2の単純な動作によって着脱ヘッド1に対して容易に着脱できる。具体的には、ローラツール10の着脱ヘッド1に対する着脱に際しては、主に次の二つの直線的な動作、つまり上下方向の動作(図1、矢印C2参照)、およびツールスライド方向に沿う水平方向の動作(同図、矢印C1参照)が用いられる。そして、本実施形態の着脱機構によれば、着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱が、交換台30との関係において一側から(上側から)簡易に(数秒程度で)行われる。
【0104】
これにより、本実施形態のようにローラツール10を支持するロボット2によってプリプレグの積層作業の自動化が図られる場合において、ローラ12の交換、つまりローラツール10の交換を簡易的に行うことができる。したがって、本実施形態の着脱機構は、FRP成形品が例えば自動車部品等のような複雑形状部品である場合のように、ローラ12の交換が頻繁に行われることが必要とされる場合であっても、容易に適用できる。
【0105】
また、本実施形態の着脱機構においては、交換台30を構成する支持台部34がコイルスプリング36により付勢された状態で移動可能に構成されることから、交換台30に着座した状態のローラツール10が上下方向について位置決めされる。これにより、交換台30に着座した状態のローラツール10について枠部33(の上辺部33a)よりも上側への突出量が常に一定となることから、ロボット2の動作による着脱ヘッド1に対するローラツール10の取付けについての精度の向上を図ることができる。
【0106】
また、交換台30において枠部33(の上辺部33a)との間にローラツール10の着脱用突部20を支持する部分である支持台部34が付勢された状態で移動可能に構成されることで、着脱用突部20の上下方向の寸法について対応できる寸法の範囲が広がる。これにより、ローラツール10の形状についての汎用性を向上させることができる。
【0107】
加えて、本実施形態の着脱機構においては、交換台30において枠部33の縦辺部33cに磁石38が設けられることで、着座するローラツール10が磁石38によって吸着されて前後方向について位置決めされる。これにより、交換台30に着座した状態のローラツール10についての前後方向における位置が常に一定となることから、ロボット2の動作による着脱ヘッド1に対するローラツール10の取付けについての精度の向上を図ることができる。
【0108】
なお、本実施形態の着脱機構においては、着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱に際し、ロボット2に設けられる着脱ヘッド1側の動作のみが用いられる構成であるが、これに限定されず、着脱ヘッド1とローラツール10との間の相対的な移動動作が用いられればよい。つまり、着脱ヘッド1に対するローラツール10の着脱に際しては、ローラツール10を着座させた状態の交換台30が移動する構成等によってローラツール10側の動作が用いられてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、ローラが用いられて行われる作業が、FRP成形品の製造過程におけるプリプレグの積層作業であるが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。つまり、本発明は、交換が必要とされるローラが用いられて行われる種々の作業に適用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 着脱ヘッド(支持機構)
10 ローラツール
11 ツール本体
12 ローラ
20 着脱用突部
21 突部上面(第一の作用面)
22 突部下面(第二の作用面)
30 交換台
33c 縦辺部(壁部)
34 支持台部(移動部材)
36 コイルスプリング
38 磁石
41 座面(第一の受け面)
42 天井面(第二の受け面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツール本体にローラを支持するローラツールと、該ローラツールを支持する所定の支持機構との、互いに所定の向きで対向した状態での近接離間する方向の移動動作によって、前記ローラツールの前記支持機構に対する取付けおよび前記ローラツールの前記支持機構からの取外しが行われるローラツールの着脱機構であって、
前記支持機構に支持された状態で前記近接離間する方向とは異なる所定の方向に所定の姿勢で移動するローラツールを受け入れて着座させる交換台を備え、
前記ローラツールは、前記ツール本体に、前記所定の方向に沿う面であり前記交換台に対する着座面となる第一の作用面と、前記所定の方向に沿う面であり前記第一の作用面とは反対側を向く面である第二の作用面とを有し、
前記交換台は、前記ローラツールが前記交換台に着座した状態で前記第一の作用面が接触する面である第一の受け面と、該第一の受け面に対向する面であり前記ローラツールが前記交換台に着座した状態で前記第二の作用面に対向する面である第二の受け面とを有し、
前記交換台に着座した状態の前記ローラツールが、前記支持機構との関係における前記近接離間する方向のうち近接する方向の移動動作にともなう移動を、前記第一の作用面が接触する前記第一の受け面による支持によって受けることで、前記ローラツールの前記支持機構に対する取付けが行われ、
前記支持機構に支持されるとともに前記交換台に着座した状態の前記ローラツールの、前記支持機構との関係における前記近接離間する方向のうち離間する方向の移動動作にともなう移動が、前記第二の作用面の前記第二の受け面に対する接触によって規制されることで、前記ローラツールの前記支持機構からの取外しが行われることを特徴とするローラツールの着脱機構。
【請求項2】
前記第一の受け面は、該第一の受け面が前記第二の受け面に近接離間する方向に所定の範囲で移動可能であるとともに前記第一の受け面が前記第二の受け面に近接する方向に付勢された状態で設けられる移動部材によって形成されるものであり、
前記交換台に着座する前記ローラツールを、前記移動部材による付勢作用により、前記第一の受け面と前記第二の受け面とで挟み込むことを特徴とする請求項1に記載のローラツールの着脱機構。
【請求項3】
前記交換台は、前記ツール本体に接触することで前記交換台に着座する前記ローラツールの前記所定の方向の移動を規制する壁部を有し、
該壁部は、少なくとも前記ツール本体が接触する部分に磁力を作用させる磁石を有し、
前記交換台に着座する前記ローラツールを、前記ツール本体に作用する前記磁石の磁力によって前記壁部に吸着させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のローラツールの着脱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−194691(P2010−194691A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44699(P2009−44699)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】