説明

ローラフォロア及びこれを備えた真空搬送装置

【課題】耐磨耗性及び耐衝撃性の向上が可能な、ローラフォロア及びそれを備えた真空搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送ローラ(ローラフォロア)1と、ディスクメディアDを取り付ける台車(搬送部)4を備え、ディスクメディアDを真空環境中で搬送する真空搬送装置であって、搬送ローラ1及び台車4を、マルテンサイト系ステンレス鋼によって形成し、ショットピーニングを用いることにより、搬送ローラ1の外周面及び台車4のレール(被案内面)4aに、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上、表面祖度が1.6Raμm以下、厚さが10μm〜100μmの範囲内となっている搬送ローラ側硬化層SRを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送部の被案内面に筒状体の外周面を接触させて回転することにより、搬送部を案内するローラフォロアと、これを備えた真空搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスク装置等を製造する設備の一部として、例えば、ガスプラズマの放電領域に、基板が固定された搬送部を通過させることにより、基板に膜を形成する構成のインライン真空成膜装置が用いられている。この装置は、被処理品となる基板を真空環境中で搬送する真空搬送装置を備えており、この真空搬送装置は、基板等の被処理品が固定された搬送部を、搬送ローラで案内する構成となっている。
【0003】
このような真空搬送装置としては、例えば、図5に示すようものがある。
この真空搬送装置は、ディスクメディアD(基板)の搬送装置であり、ディスクメディアDを固定する台車(搬送部)4の下部にレール(被案内面)4aが固定され、搬送ローラ1を、このレール4aに外周面を接触させて回転することにより、台車4を案内する。
この台車4が、駆動装置(図示せず)によって、例えば、図1の紙面の右から左に送られる場合、まず、2個あるうちの右側の搬送ローラ1aにレール4aが接触することで、右側の搬送ローラ1aが回転を開始する。次に、左側に移動した台車のレールが、さらに左側の搬送ローラ1bと接触することで、左側の搬送ローラ1bが回転を開始する。
【0004】
この真空搬送装置が備える搬送ローラとしては、図6に示すような軸受タイプのものや、図7に示すようなローラフォロアタイプのものがある。これらの搬送ローラとしては、従来、ステンレス鋼(主にSUS440C)によって形成され、焼き入れ・焼き戻し処理が施されたものが使用されている。なお、本明細書においては、軸受タイプ及びローラフォロアタイプの両者を併せて、「ローラフォロア」と記載する。
また、このようなローラフォロアを回転自在に支持する転がり軸受としては、従来、ステンレス鋼(主にSUS440C)によって形成され、フッ素系グリースで潤滑されたものが使用されている。
【0005】
ところで、ハードディスク装置等は、表面に微細な粒子(異物)が付着することで機能が損なわれる。そのため、近年、これらの装置の小型化および集積化が進むにつれて、製品としての歩留まりを向上させるために、清浄度の高い環境で製造することが求められている。
したがって、ローラフォロアの回転時に潤滑剤が飛散することによる汚染を防止するため、ローラフォロアの外周面には潤滑剤を塗布せず、ローラフォロアと搬送部は無潤滑の状態で接触している場合が多い。
【0006】
また、これらの製品を製造する設備のメンテナンスに係る費用を低減すること(例えば、メンテナンスフリーにするか、メンテナンス周期を長くすること)が、製品の製造コストの低減に繋がる。そのため、ハードディスク装置等の製造コストを低減することを目的として、前述の真空処理装置および真空搬送装置の耐久性を向上することが要求されている。
この要求に応えるための技術として、本出願人は、互いに対向するローラの軸方向端面と側板の片側面とのうちの、少なくとも一方の面に、多数の小凹部を形成する等の処理を施すことを提案した(下記の特許文献1を参照)。
【0007】
また、本出願人は、外輪のフランジに対する摺接部及びフランジの外輪に対する摺接部の表面に、該表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を表面に噴射して得られた硬質層を備えることを提案した(下記の特許文献2を参照)。
これらの提案によれば、台車の進行速度と搬送ローラの回転速度が同じになった時点で搬送ローラの回転が安定する(図5参照)。このため、この安定回転となった後の耐久性の向上に一定の効果がある。また、真空搬送装置の発塵低減に一定の効果がある。
【特許文献1】特開2006−105191号公報
【特許文献2】特開2006−189132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、真空搬送装置は、ディスクメディア等の被処理品を真空環境中で搬送する構成であり、潤滑剤が飛散することによる汚染を防止するため、ローラフォロアと搬送部が、無潤滑の状態で接触している場合が多い。そのため、ローラフォロア及び搬送部をステンレス鋼によって形成する場合が多いが、ステンレス鋼によって形成されたローラフォロア及び搬送部は、表面硬度がHv660程度であり、耐摩耗性が十分ではなく、磨耗粉により真空環境が汚染されるおそれがある。耐摩耗性を向上させるために、高速度鋼等の硬度の高い材料を用いる方法も考えられるが、このような材料は、ステンレス鋼等と比較して高価である。
また、ローラフォロアと搬送部が、無潤滑の状態で接触している場合が多いため、両者の間に磨耗が生じやすく、磨耗粉により真空環境が汚染されるおそれがある。
【0009】
また、上述した提案を含め、従来の真空搬送装置では、ローラフォロアと搬送部の接触開始時に、ローラフォロアに搬送部からの衝撃力が加わるおそれがあり、ローラフォロアの外周面に磨耗や剥離が生じるおそれがある。ローラフォロアの表面硬度を向上させる方法としては、ローラフォロアの外周面に、バナジウムカーバイト被膜等をCVD等で生成する方法があるが、上記のような衝撃力が加わるケースでは効果が乏しく、生成された被膜が剥離するおそれがある。
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、耐磨耗性及び耐衝撃性の向上が可能な、ローラフォロア及びそれを備えた真空搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより、前記搬送部を案内するローラフォロアであって、
少なくとも前記外周面は、金属粒子または非金属粒子を衝突させることにより形成された硬化層を有し、
前記金属粒子または非金属粒子は、球状または略球状であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によると、外周面が有する硬化層を、有球状または略球状の金属粒子または非金属粒子を外周面に衝突させることにより形成しているため、外周面に硬化層を有していないローラフォロアと比較して、外周面の表面硬度が上昇するとともに、外周面の表面圧縮残留応力が増大する。上昇した表面硬度の値は、例えば、ビッカース硬さでHv520以上であり、増大した表面圧縮残留応力の値は、例えば、絶対値で50MPa〜1500MPaの範囲内である。
なお、「外周面が有する硬化層を形成する」方法としては、例えば、ショットピーニングによる方法がある。
【0012】
ショットピーニングは、粒径0.05mm〜0.6mm程度の金属やセラミックスの投射材を金属材料の表面に投射して、金属材料の表面に微小なディンプルを形成することにより、金属材料の表面を、ハンマー等で叩いた(ピーニング)場合と同様な組織状態とする工法である。
ここで、ショットピーニングの具体的な条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。
噴射圧:0.1MPa以上0.6MPa以下(より好ましくは0.2MPa以上0.5MPa以下)
噴射速度:30m/s以上90m/s以下
噴射量:200g/min以上800g/min以下
【0013】
ショットピーニングを行うことにより、金属疲労欠陥の発生源となる引張残留応力を取り除き、圧縮残留応力を高めることが可能となるため、繰り返し荷重に対する金属疲労強度を大幅に増加させることが可能となる。また、金属材料の表面への衝撃に対する抵抗が増大するため、表面の強固さが生じる。また、生成された表面硬化層が母材を保護するため、摩擦に対して強化される。
また、ショットピーニングを行うことにより、ローラフォロアの硬度が、外周面(硬化層の表面)からローラフォロアの心部へ向かうにつれて徐々に減少し、硬化層と非硬化層との境界において、元の硬度となる。すなわち、外周面から硬度が緩やかな傾斜的に減少して、元の硬度となるように連続して変化しているため、硬度に明確な境界が形成されることがなく、後述するTD処理によって形成された被膜と比較して、硬化層の剥離を抑制することが可能となる。
以上により、ローラフォロアの耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0014】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記硬化層は、当該硬化層の表面近傍の温度を、前記外周面が鉄系金属で構成されている場合は前記鉄系金属のA3変態点を越えた温度とし、前記外周面が非鉄系金属で構成されている場合は前記非鉄系金属の再結晶温度以上として形成されることを特徴とするものである。
本発明によると、硬化層の表面近傍の温度を、外周面が鉄系金属で構成されている場合は、その鉄系金属のA3変態点を越えた温度とし、外周面が非鉄系金属で構成されている場合は、その非鉄系金属の再結晶温度以上とすることにより、硬化層を形成している。
【0015】
このため、請求項1に記載のローラフォロアと比較して、更に、硬化層の表面硬度が上昇するとともに、表面圧縮残留応力が増大する。
なお、「硬化層の表面近傍の温度を、外周面が鉄系金属で構成されている場合は、その鉄系金属のA3変態点を越えた温度とし、外周面が非鉄系金属で構成されている場合は、その非鉄系金属の再結晶温度以上とする」方法としては、例えば、WPC処理による方法がある。
【0016】
WPC処理は、金属材料の表面に投射材を高速で投射して、表面近傍の温度を局部的に再結晶温度まで高めることにより、熱処理効果、鍛錬効果の加工強化を瞬時に繰り返し、金属材料の表面層の残留オーステナイトのマルテンサイト化や、再結晶、組織の微細化を行う工法である。上述したショットピーニングとの相違点としては、ショットピーニングに用いられるものよりも、投射材の粒径が小さい点が挙げられ、これにより、例えば、200m/sec程度の高い噴射速度が得られる。
ここで、WPC処理の具体的な条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。
投射材:平均粒径50μm程度のスチールショット
噴射圧:0.5MPa程度
噴射速度:210m/sec程度
【0017】
WPC処理、すなわち、ショットピーニングよりも衝突速度の速い処理を行うことにより、金属材料の表面組織が動くため、表面温度の上昇が助長され、表面近傍の温度が金属材料のA3変態点を越え、表面近傍における急熱と急冷が瞬時に繰り返される。その結果、熱処理効果、鍛錬効果、ピーニング効果等の加工強化が行われる。なお、ローラフォロアが鉄系金属である場合には、比熱が小さく温度上昇部の面積が小さいため、温度上昇及び温度下降が早い。これに対し、ローラフォロアが非鉄系金属である場合には、A3変態点温度域で溶体化、再結晶化、微細化等が行われる。
以上により、請求項1に記載のローラフォロアと比較して、更に、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0018】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上であり、且つ表面祖度が1.6Raμm以下であることを特徴とするものである。
本発明によると、硬化層が、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上であり、且つ表面祖度が1.6Raμm以下であるため、請求項1または請求項2に記載のローラフォロアと比較して、更に、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0019】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記硬化層の少なくとも前記被案内面と接触する部分が研削処理され、
前記研削処理後の硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上であり、且つ表面祖度が1.6Raμm以下であることを特徴とするものである。
本発明によると、研削処理により、表面祖度の大きい硬化層の表面が研削されるため、研削処理後の硬化層を、表面祖度を1.6Raμm以下とすることが容易となる。
【0020】
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1から4のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記硬化層または前記研削処理後の硬化層の厚さを、10μm〜100μmの範囲内としたことを特徴とするものである。
本発明によると、硬化層または研削処理後の硬化層の厚さを、10μm〜100μmの範囲内としているため、硬化層または研削処理後の硬化層の厚み内で生じるクラックを抑制することが可能となるとともに、硬化層の境界における剥離を抑制することが可能となる。
【0021】
ここで、硬化層または研削処理後の硬化層の厚さを、10μm〜100μmの範囲内とした理由は、硬化層または研削処理後の硬化層の厚さが100μmを超えている場合、搬送部とローラフォロアとの衝突によってローラフォロアの硬化層内に生じる応力の及ぶ範囲が、硬化層の厚み内だけとなり、硬化層にクラックが発生しやすくなるためである。一方、硬化層または研削処理後の硬化層の厚さが10μm未満である場合、硬化層内における硬度の勾配が著しく急となり、後述するTD処理によって形成された被膜と変わらなくなるため、硬化層と母材との境界が明確となり、硬化層の剥離が生じやすくなるためである。
【0022】
なお、TD処理とは、拡散処理による表面処理方法である。ここでいう拡散処理とは、金属の表面に特定の元素を拡散浸透させて表面層を得る方法であり、浸炭や窒素、浸クロム、浸ボロン等がこれに属する。TD処理では、高温に保持された溶融塩浴中に鉄鋼・超硬合金等の材料を浸漬保持することにより、塩浴中に分散している炭化物形成元素の原子、あるいはイオンが母材に含まれているC原子と結合し、母材表面に炭化物が形成される。その後、形成された炭化物表面でのC原子と炭化物形成元素の反応、及び炭化物層への母材中のC原子の供給が持続されることによって、表面層の成長が行われる。
【0023】
このようなTD処理によって形成される炭化物層には、バナジウムカーバイト(VC)、ニオビウムカーバイト(Nb−C)、クロムカーバイト(Cr−C)等があり、特に、バナジウムカーバイトは、硬度、耐摩耗性、耐焼き付き性に優れている。しかしながら、TD処理によって形成される炭化物層は、硬化層と母材との境界が明確となるため、硬化層の剥離が生じやすくなる。
【0024】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した発明であって、少なくとも前記外周面は、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されていることを特徴とするものである。
本発明によると、少なくとも外周面を、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成しているため、防錆油等を用いることなく、外周面の防錆が可能となる。
【0025】
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1から6のうちいずれか1項に記載したローラフォロアと、当該ローラフォロアの外周面と接触する被案内面を備えた搬送部と、を備え、真空環境中で用いられる真空搬送装置であって、
少なくとも前記被案内面は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した前記硬化層または前記研削処理後の硬化層と同様の硬化層または研削処理後の硬化層を有していることを特徴とするものである。
【0026】
本発明によると、ローラフォロアの外周面と接触する被案内面が、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した硬化層または研削処理後の硬化層と同様の、硬化層または研削処理後の硬化層を有している。
このため、被案内面に生じる磨耗や剥離を抑制することが可能となり、搬送部の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0027】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した発明であって、少なくとも前記被案内面は、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されていることを特徴とするものである。
本発明によると、少なくとも被案内面を、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成しているため、防錆油等を用いることなく、被案内面の防錆が可能となる。
【0028】
次に、請求項9に記載した発明は、請求項7または8に記載した発明であって、前記外周面及び前記被案内面のうち少なくとも一方は、前記被案内面の前記外周面に対する、前記搬送部の案内方向と直交または略直交する方向への変位を抑制する変位抑制手段を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、外周面と被案内面との搬送部の案内方向と直交または略直交する方向への変位を抑制する変位抑制手段により、搬送部がローラフォロアから外れることが抑制されるため、搬送部が円滑に案内され、真空搬送装置の作動性を向上させることが可能となる。
【0029】
次に、請求項10に記載した発明は、請求項9に記載した発明であって、前記変位抑制手段は、前記外周面に形成され、且つ前記搬送部の案内方向から見て前記被案内面へ向けて突出する凸状部と、前記被案内面に形成され、且つ前記搬送部の案内方向から見て前記凸状部と対向する凹状部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、ローラフォロアの外周面に形成された凸状部と、搬送部の被案内面に形成された凹状部との簡易な構成によって、変位抑制手段を形成することが可能となり、搬送部がローラフォロアから外れることを抑制することが可能となる。
【0030】
次に、請求項11に記載した発明は、請求項10に記載した発明であって、前記凸状部は、前記搬送部の案内方向から見てアール状または略アール状に形成されており、
前記凹状部は、前記搬送部の案内方向から見てV字状に形成されていることを特徴とするものである。
本発明によると、凸状部がアール状または略アール状に形成されており、凹状部がV字状に形成されているため、凸状部と凹状部が嵌合した状態においては、請求項11に記載の真空搬送装置と比較して、良好な自動調心性が発揮され、真空搬送装置を円滑に作動させることが可能となる。
【0031】
次に、請求項12に記載した発明は、請求項7から11のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記外周面を固定軸に対して回転自在に支持する転がり軸受を備え、
前記転がり軸受の軌道面に、真空用潤滑剤によって形成された潤滑被膜を形成し、
前記潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内としたことを特徴とするものである。
本発明によると、転がり軸受の軌道面に形成した潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内としたため、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となるとともに、転がり軸受の作動性を向上させることが可能となる。
【0032】
ここで、潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内とした理由は、被膜厚さが10g/mを超えている場合、真空用潤滑剤のガス放出量が増加してしまい、真空環境を汚染してしまうおそれがあるためである。一方、被膜厚さが1g/m未満である場合、転がり軸受の回転性能が低下してしまい、真空搬送装置の作動性が低下するとともに、転がり軸受に潤滑不良が発生しやすくなるためである。
このように、本発明によれば、アウトガス性能及び転がり軸受の耐久性能を向上させることが可能となる。
なお、本発明の真空搬送装置は、ローラフォロアが転がり軸受に外嵌される場合と、転がり軸受の外輪の外周面がローラフォロアをなす場合がある。
【0033】
次に、請求項13に記載した発明は、請求項12に記載した発明であって、前記潤滑被膜は、以下の(1)〜(3)のうちいずれか一つであることを特徴とするものである。
(1) 官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2) 官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3) アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
本発明によると、フッ素油やフッ素系グリースによって潤滑被膜を形成した転がり軸受と比較して、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となるとともに、転がり軸受の作動性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、外周面及び被案内面が有する硬化層の表面硬度が上昇するとともに、表面圧縮残留応力が増大するため、ローラフォロア及びそれを備えた真空搬送装置の、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第一実施形態の構成を説明する。なお、図5から図7と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図1は、本実施形態の真空搬送装置の構成を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の部分断面図である。
【0036】
図1中に示すように、本実施形態の真空搬送装置は、被処理品であるディスクメディアDを真空環境中で搬送する装置であり、搬送ローラ(ローラフォロア)1と、転がり軸受2と、真空搬送装置内の壁から水平に延びる回転軸3と、ディスクメディアDを取り付ける台車(搬送部)4を備えている。
搬送ローラ1は、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されており、転がり軸受2を介して、回転軸3に対して回転自在に支持されている。なお、本実施形態では、搬送ローラ1を、マルテンサイト系ステンレス鋼によって形成した場合について説明するが、これに限定されるものではなく、搬送ローラ1を、析出硬化系ステンレス鋼によって形成してもよい。
【0037】
また、搬送ローラ1は、その外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された硬化層Sを有している。なお、以下の説明では、搬送ローラ1の外周面に形成された硬化層Sを、「搬送ローラ側硬化層SR」と記載する。
本実施形態では、搬送ローラ1の外周面に搬送ローラ側硬化層SRを形成する方法の一例として、粒径0.05mm〜0.6mm程度の、球状に形成された金属の投射材を外周面に投射して、搬送ローラ1の外周面に微小なディンプルを形成する、ショットピーニングを用いる。
【0038】
そして、このようなショットピーニングを用いることにより、搬送ローラ側硬化層SRの表面硬度は、ビッカース硬さでHv700以上となっており、搬送ローラ側硬化層SRの表面祖度は、1.6Raμm以下となっている。
また、搬送ローラ側硬化層SRの厚さは、10μm〜100μmの範囲内となっている。
転がり軸受2は、外輪21と、内輪22と、複数の転動体23を備えている。
【0039】
外輪21は、例えば、SUS440C等のステンレス鋼によって形成され、外周面に搬送ローラ1が外嵌されており、内周面に外輪側転動体軌道面21aが形成されている。
内輪22は、外輪21と同様、SUS440C等のステンレス鋼によって形成され、外周面に外輪側転動体軌道面21aと対向する内輪側転動体軌道面22aが形成されており、内周面に固定軸3が固定されている。
【0040】
外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aには、それぞれ、フッ素グリースよりもガス放出量が少ない真空用潤滑剤によって形成された、図示しない潤滑被膜(DFO潤滑被膜)が形成されている。
この潤滑被膜は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜によって構成されており、その被膜厚さは、1g/m〜10g/mの範囲内となっている。
【0041】
各転動体23は、鋼球によって形成されており、外輪側転動体軌道面21aと内輪側転動体軌道面22aによって形成される転動体軌道路内に、転動自在に装填され、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aと摺接している。なお、本実施形態では、転動体23として鋼球を用いた場合、すなわち、転がり軸受2が玉軸受である場合について説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、転動体として円筒ころ等のころを用いた場合、すなわち、転がり軸受がころ軸受である場合についても適用可能である。
【0042】
各転動体23の外周面、すなわち、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aと摺接する面には、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aと同様の潤滑被膜が形成されており、その被膜厚さは、1g/m〜10g/mの範囲内となっている。
台車4は、搬送ローラ1と同様、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されており、その側面には、ディスクメディアDを取り付けられ、その下部には、レール(被案内面)4aが固定されている。なお、本実施形態では、台車4を、搬送ローラ1と同様、マルテンサイト系ステンレス鋼によって形成した場合について説明する。
【0043】
レール4aは、搬送ローラ1の外周面と同様、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上、表面祖度が1.6Raμm以下、厚さが10μm〜100μmの範囲内となっている硬化層Sを有している。なお、以下の説明では、レール4aに形成された硬化層Sを、「台車側硬化層SF」と記載する。
【0044】
レール4aに台車側硬化層SFを形成する方法としては、搬送ローラ1の外周面と同様、粒径0.05mm〜0.6mm程度の、球状に形成された金属の投射材を外周面に投射して、搬送ローラ1の外周面に微小なディンプルを形成する、ショットピーニングを用いる。
以上により、搬送ローラ1は、レール4aに外周面を接触させて回転することにより、台車4を、図1中に双方向矢印で示す案内方向へ案内する構成となっている。
【0045】
次に、上記の構成を備えた真空搬送装置の作用・効果等を説明する。
被処理品であるディスクメディアDを、真空環境中で図1(a)の紙面における右から左に搬送する際には、駆動装置(図示せず)によって台車4が移動すると、まず、2個あるうちの右側の搬送ローラ1aに、レール4aが接触する。
搬送ローラ1aにレール4aが接触すると、搬送ローラ1aが時計回りの反対方向へ回転を開始し、回転しながら台車4を左側の搬送ローラ1bへ案内する。そして、左側に移動した台車のレール4aが、さらに左側の搬送ローラ1bと接触することで、左側の搬送ローラ1bが時計回りの反対方向へ回転を開始し、回転しながら台車4を左側へ案内する。
【0046】
このとき、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aには、それぞれ、フッ素グリースよりもガス放出量が少ない真空用潤滑剤によって形成され、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜が構成されており、その被膜厚さは、1g/m〜10g/mの範囲内となっている。
このため、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となるとともに、転がり軸受2の作動性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、搬送ローラ1は、その外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された搬送ローラ側硬化層SRを有しており、この搬送ローラ側硬化層SRは、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上、表面祖度が1.6Raμm以下、厚さが10μm〜100μmの範囲内となっている。
このため、外周面に硬化層を有していない搬送ローラと比較して、外周面の表面硬度が上昇するとともに、外周面の表面圧縮残留応力が増大しており、搬送ローラ1の耐磨耗性及び耐衝撃性が向上している。
【0048】
また、レール4aは、その外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された台車側硬化層SFを有しており、この台車側硬化層SFは、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上、表面祖度が1.6Raμm以下、厚さが10μm〜100μmの範囲内となっている。
このため、レールに硬化層を有していない台車と比較して、レール4aの表面硬度が上昇するとともに、レール4aの表面圧縮残留応力が増大しており、台車4の耐磨耗性及び耐衝撃性が向上している。
【0049】
したがって、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1が、その外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された、搬送ローラ側硬化層SRを有しているため、外周面に硬化層を有していない搬送ローラ1と比較して、外周面の表面硬度が上昇するとともに、外周面の表面圧縮残留応力が増大する。
このため、搬送ローラ1の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となり、真空搬送装置の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0050】
その結果、真空搬送装置及びそれを備える設備のメンテナンスに係る費用を低減することが可能となり、ハードディスク装置等、真空搬送装置を備える設備によって製造される製品の製造コストを低減することが可能となる。
また、搬送ローラ1の外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させることによって、搬送ローラ側硬化層SRを形成することにより、ステンレス鋼等と比較して高価な材料である高速度鋼等を用いることなく、搬送ローラ1の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となり、真空搬送装置の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1の外周面に形成されている搬送ローラ側硬化層SRが、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上となっており、表面祖度が1.6Raμm以下となっている。
その結果、硬化層が、表面硬度がビッカース硬さでHv700未満となっており、表面祖度が1.6Raμmを超えている搬送ローラと比較して、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1の外周面に形成されている搬送ローラ側硬化層SRの厚さが、10μm〜100μmの範囲内となっている。
その結果、硬化層の厚さが、10μm未満となっている搬送ローラや、100μmを超えている搬送ローラと比較して、硬化層の境界における剥離を抑制することが可能となり、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1が、マルテンサイト系ステンレス鋼によって形成されているため、防錆油等を用いることなく、搬送ローラ1の防錆が可能となっている。
その結果、搬送ローラ1のメンテナンスに係る費用を低減することが可能となり、真空搬送装置のメンテナンスに係る費用を低減することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、レール4aが、球状または略球状の金属粒子を衝突させることにより形成された台車側硬化層SFを有しているため、外周面に硬化層を有していない台車4と比較して、レール4aの表面硬度が上昇するとともに、レール4aの表面圧縮残留応力が増大する。
その結果、台車4の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となり、真空搬送装置の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、レール4aに、球状または略球状の金属粒子を衝突させて台車側硬化層SFを形成することにより、ステンレス鋼等と比較して高価な材料である高速度鋼等を用いることなく、台車4の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となり、真空搬送装置の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、レール4aに形成されている台車側硬化層SFが、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上となっており、表面祖度が1.6Raμm以下となっている。
【0056】
その結果、硬化層が、表面硬度がビッカース硬さでHv700未満となっており、表面祖度が1.6Raμmを超えている台車と比較して、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、レール4aに形成されている台車側硬化層SFの厚さが、10μm〜100μmの範囲内となっている。
【0057】
その結果、硬化層の厚さが、10μm未満となっている台車や、100μmを超えている台車と比較して、硬化層の境界における剥離を抑制することが可能となり、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、台車4が、マルテンサイト系ステンレス鋼によって形成されているため、防錆油等を用いることなく、台車4の防錆が可能となっている。
【0058】
その結果、台車4のメンテナンスに係る費用を低減することが可能となり、真空搬送装置のメンテナンスに係る費用を低減することが可能となる。
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aには、真空用潤滑剤によって形成された潤滑被膜が構成されており、その被膜厚さは、1g/m〜10g/mの範囲内となっている。
【0059】
このため、潤滑被膜の被膜厚さが10g/mを超えている転がり軸受と比較して、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となる。
その結果、真空環境の汚染を抑制することが可能となり、清浄度の高い環境でディスクメディアDを処理することが可能となるため、歩留まりを向上させることが可能となる。
また、潤滑被膜の被膜厚さが1g/m未満となっている転がり軸受と比較して、転がり軸受2の作動性を向上させることが可能となるため、真空搬送装置の作動性を向上させることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに形成された潤滑被膜が、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜によって構成されている。
このため、フッ素油やフッ素系グリースによって潤滑被膜を形成した転がり軸受と比較して、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となるとともに、転がり軸受2の作動性を向上させることが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ1の外周面に搬送ローラ側硬化層SRを形成する方法として、搬送ローラ1の外周面に、球状または略球状の金属粒子を衝突させたが、これに限定されるものではなく、搬送ローラ1の外周面に、球状または略球状の非金属粒子を衝突させてもよい。この場合、非金属粒子としては、例えば、ガラスビーズ等を用いる。これは、レール4aに関しても、同様である。
【0062】
また、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ側硬化層SRを、表面硬度をビッカース硬さでHv700以上とし、表面祖度を1.6Raμm以下としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、搬送ローラ側硬化層SRを、表面硬度をビッカース硬さでHv700未満としてよく、また、表面祖度が1.6Raμmを越えていてもよい。もっとも、本実施形態の真空搬送装置のように、搬送ローラ側硬化層SRを、表面硬度をビッカース硬さでHv700以上とし、表面祖度を1.6Raμm以下とすることが、搬送ローラ側硬化層SRの、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となるため、好適である。これは、台車側硬化層SFに関しても、同様である。
【0063】
なお、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼は、ショットピーニングを行う前の硬度はビッカース硬さでHv660程度であるが、ショットピーニングを行うことにより、その硬度はビッカース硬さでHv760程度まで向上する。また、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼は、ショットピーニングを行う前の硬度はビッカース硬さでHv400程度であるが、ショットピーニングを行うことにより、その硬度はビッカース硬さでHv520程度まで向上する。
【0064】
さらに、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ側硬化層SRの厚さを、10μm〜100μmの範囲内としたが、これに限定されるものではなく、搬送ローラ側硬化層SRの厚さを、10μm未満としてもよく、また、100μmを超えていてもよい。もっとも、本実施形態の真空搬送装置のように、搬送ローラ側硬化層SRの厚さを、10μm〜100μmの範囲内とすることが、硬化層の境界における剥離を抑制することが可能となり、耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となるため、好適である。これは、台車側硬化層SFに関しても、同様である。
【0065】
また、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ1を、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成したが、これに限定されるものではなく、ステンレス鋼以外の材料を用いて、形成してもよい。もっとも、本実施形態の真空搬送装置のように、搬送ローラ1を、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成することが、防錆油等を用いることなく、搬送ローラ1の外周面の防錆が可能となるため、好適である。また、搬送ローラ1を、ステンレス鋼等の鉄系金属ではなく、セラミックス等の非鉄系金属の材料を用いて形成してもよい。これは、台車4に関しても、同様である。
【0066】
また、本実施形態の真空搬送装置では、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに形成された潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、潤滑被膜の被膜厚さが10g/mを超えていてもよく、1g/m未満であってもよい。もっとも、本実施形態の真空搬送装置のように、潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内とすることが、真空環境の汚染を抑制することが可能となるとともに、転がり軸受2の作動性を向上させることが可能となるため、好適である。
【0067】
また、本実施形態の真空搬送装置では、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに形成された潤滑被膜を、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜によって構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、潤滑被膜を、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜によって構成してもよく、また、アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜によって構成してもよい。要は、上記の三種類の潤滑被膜のうち、いずれか一つによって、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに形成された潤滑被膜を構成すればよい。
【0068】
また、本実施形態の真空搬送装置では、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに形成された潤滑被膜を、上記の三種類の潤滑被膜のうち、いずれか一つによって構成したが、これに限定されるものではない。もっとも、本実施形態の真空搬送装置のように、潤滑被膜を、上記の三種類の潤滑被膜のうち、いずれか一つによって構成することが、フッ素油やフッ素系グリースによって潤滑被膜を形成した転がり軸受と比較して、真空環境中において発生するアウトガスを抑制することが可能となるとともに、転がり軸受2の作動性を向上させることが可能となるため、好適である。
【0069】
また、本実施形態の真空搬送装置では、各転動体23の外周面、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aのそれぞれに、潤滑被膜を形成したが、これに限定されるものではなく、少なくとも、外輪側転動体軌道面21a及び内輪側転動体軌道面22aに潤滑被膜を形成すればよい。
また、本実施形態の真空搬送装置では、転がり軸受2の外輪21の外周面に搬送ローラ1が外嵌されている構成としたが、これに限定されるものではなく、図6に示すような、外輪21の外周面が搬送ローラの外周面を形成している真空搬送装置についても、適用可能である。この場合、外輪21の外周面に、硬化層を形成する。
【0070】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
まず、本実施形態の構成を説明する。
本実施形態の構成は、搬送ローラ側硬化層及び台車側硬化層の構成を除き、上述した第一の実施形態と同様の構成であるため、図面は省略する。
【0071】
各硬化層は、その表面近傍の温度を、搬送ローラ及び台車を形成する材料、すなわち、マルテンサイト系ステンレス鋼のA3変態点を越えた温度とすることにより、形成されている。
本実施形態では、各硬化層の表面近傍の温度を、マルテンサイト系ステンレス鋼のA3変態点を越えた温度とする方法の一例として、平均粒径50μm程度のスチールショットを投射材とし、このスチールショットを、0.5MPa程度の噴射圧と210m/sec程度の噴射速度で、搬送ローラの外周面及び台車のレールへ向けて投射する、WPC処理を用いる。
【0072】
WPC処理を用いて形成した硬化層は、ショットピーニングを用いて形成した硬化層と比較して、組織がより微細化して緻密になっている。
また、WPC処理は、投射材の粒径が、ショットピーニングと比較して小さいため、表面祖度の変化が小さくなっている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0073】
次に、上記の構成を備えた真空搬送装置の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、各硬化層以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
被処理品を、真空環境中で搬送する際には、駆動装置によって台車が移動すると、搬送ローラにレールが接触し、搬送ローラが回転しながら台車を案内方向へ案内する。
このとき、WPC処理により、各硬化層は、その表面近傍の温度を、搬送ローラ及び台車を形成する材料、すなわち、マルテンサイト系ステンレス鋼のA3変態点を越えた温度として形成されている。
【0074】
このため、上述した第一実施形態の真空搬送装置が備える搬送ローラ及び台車と比較して、各硬化層の組織が、より微細化して緻密になっているとともに、表面祖度の変化が小さくなっている。
したがって、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラの外周面及びレールに形成された硬化層が、その表面近傍の温度を、マルテンサイト系ステンレス鋼のA3変態点を越えた温度として形成されている。
【0075】
このため、上述した第一実施形態の真空搬送装置が備える搬送ローラ及び台車と比較して、各硬化層の組織が、より微細化して緻密になっているとともに、表面祖度の変化が小さくなっている。
その結果、上述した第一実施形態の真空搬送装置が備える搬送ローラ及び台車と比較して、搬送ローラ及び台車の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となり、真空搬送装置の耐磨耗性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。
その他の作用・効果は、上述した第一実施形態と同様である。
【0076】
なお、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ及び台車を、マルテンサイト系ステンレス鋼、すなわち、鉄系金属によって形成しているため、各硬化層の表面近傍の温度を、搬送ローラ及び台車を形成する材料のA3変態点を越えた温度として、各硬化層を形成している。しかしながら、搬送ローラ及び台車を、鉄系金属ではなく、セラミックス等の非鉄系金属の材料を用いて形成した場合は、各硬化層の表面近傍の温度を、その非鉄系金属の再結晶温度以上として形成する。
【0077】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
まず、本実施形態の構成を説明する。
本実施形態の構成は、搬送ローラ側硬化層及び台車側硬化層の構成を除き、上述した第一の実施形態と同様の構成であるため、図面は省略する。
各硬化層は研削処理されており、研削処理後の各硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上となっており、表面祖度が1.6Raμm以下となっている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0078】
次に、上記の構成を備えた真空搬送装置の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、各硬化層以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
被処理品を、真空環境中で搬送する際には、駆動装置によって台車が移動すると、搬送ローラにレールが接触し、搬送ローラが回転しながら台車を案内方向へ案内する。
このとき、各硬化層は研削処理されており、研削処理後の各硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上となっており、表面祖度が1.6Raμm以下となっている。
【0079】
このため、研削処理により、表面祖度の大きい硬化層の表面が研削されており、研削処理後の硬化層を、表面祖度を1.6Raμm以下とすることが容易となっている。
したがって、本実施形態の真空搬送装置であれば、各硬化層が研削処理されており、研削処理後の各硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上となっており、表面祖度が1.6Raμm以下となっている。
【0080】
このため、表面祖度の大きい硬化層の表面が、研削処理により研削され、研削処理後の硬化層を、表面祖度を1.6Raμm以下とすることが容易となっている。
その結果、上述した第一実施形態の真空搬送装置が備える搬送ローラ及び台車と比較して、各硬化層を容易に形成することが可能となり、真空搬送装置の製造が容易となるため、製造コストを低減することが可能となる。
その他の作用・効果は、上述した第一実施形態と同様である。
【0081】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図2を参照して、本実施形態の構成を説明する。なお、上述した第一の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図2中に示すように、本実施形態の真空搬送装置は、レール4aの、搬送ローラ1の外周面に対する、台車4の案内方向と直交または略直交する方向への変位を抑制する変位抑制手段5を備えている。
【0082】
変位抑制手段5は、搬送ローラ1の外周面に形成された凸状部5aと、レール4aに形成された凹状部5bを備えている。
凸状部5aは、搬送ローラ1の外周面の全体に亘って、台車4の案内方向から見て、レール4aへ向けて突出する形状に形成されている。
凹状部5bは、レール4aの外周面の全体に亘って、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと対向する形状に形成されており、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0083】
次に、上記の構成を備えた真空搬送装置の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、変位抑制手段5以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
被処理品を、真空環境中で搬送する際には、駆動装置によって台車4が移動すると、搬送ローラ1にレール4aが接触し、搬送ローラ1が回転しながら台車4を案内方向へ案内する。
【0084】
このとき、変位抑制手段5が備える凸状部5aは、レール4aへ向けて突出する形状に形成されており、凹状部5bは、凸状部5aと対向する形状に形成されており、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
このため、レール4aが、搬送ローラ1の外周面に対して、台車4の案内方向と直交または略直交する方向への変位が抑制され、台車4が、搬送ローラ1から外れることが抑制されている。
【0085】
したがって、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1の外周面に形成された凸状部5aが、レール4aへ向けて突出する形状に形成されており、レール4aに形成された凹状部5bが、凸状部5aと対向する形状に形成されて、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
このため、凸状部5aと凹状部5bを備えた変位抑制手段5により、レール4aの、搬送ローラ1の外周面に対する、台車4の案内方向と直交または略直交する方向への変位が抑制される。
その結果、台車4が、搬送ローラ1から外れることが抑制されるため、台車4を円滑に案内することが可能となり、真空搬送装置の作動性を向上させることが可能となる。
【0086】
また、搬送ローラ1の外周面に形成された凸状部5aと、レール4aに形成された凹状部5bとの簡易な構成によって、変位抑制手段を形成することが可能となり、台車4が、搬送ローラ1から外れることを抑制することが可能となる。
その他の作用・効果は、上述した第一実施形態と同様である。
なお、本実施形態の真空搬送装置では、搬送ローラ1の外周面に凸状部5aを形成し、レール4aに凹状部5bを形成したが、これに限定されるものではなく、搬送ローラ1の外周面に凹状部5bを形成し、レール4aに凸状部5aを形成してもよい。
【0087】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図3を参照して、本実施形態の構成を説明する。なお、上述した第四の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図3中に示すように、本実施形態の真空搬送装置は、凸状部5a及び凹状部5bの構成を除き、上述した第四の実施形態と同様の構成となっている。
【0088】
凸状部5aは、搬送ローラ1の外周面の全体に亘って、台車4の案内方向から見て、レール4aへ向けて突出するアール状または略アール状に形成されている。
凹状部5bは、レール4aの外周面の全体に亘って、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと対向するV字状に形成されており、その一部が、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
その他の構成は、上述した第四実施形態と同様である。
【0089】
次に、上記の構成を備えた真空搬送装置の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、変位抑制手段5以外の構成については、上述した第四実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
被処理品を、真空環境中で搬送する際には、駆動装置によって台車4が移動すると、搬送ローラ1にレール4aが接触し、搬送ローラ1が回転しながら台車4を案内方向へ案内する。
このとき、変位抑制手段5が備える凸状部5aは、レール4aへ向けて突出するアール状または略アール状に形成されており、凹状部5bは、凸状部5aと対向するV字状に形成されて、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
【0090】
このため、レール4aが、搬送ローラ1の外周面に対して、台車4の案内方向と直交または略直交する方向への変位が抑制され、台車4が、搬送ローラ1から外れることが抑制されている。
したがって、本実施形態の真空搬送装置であれば、搬送ローラ1の外周面に形成された凸状部5aが、レール4aへ向けて突出するアール状または略アール状に形成されており、レール4aに形成された凹状部5bが、凸状部5aと対向するV字状に形成されて、台車4の案内方向から見て、凸状部5aと嵌合している。
【0091】
このため、凸状部5aと凹状部5bを備えた変位抑制手段5により、レール4aの、搬送ローラ1の外周面に対する、台車4の案内方向と直交または略直交する方向への変位が抑制される。
その結果、台車4が、搬送ローラ1から外れることが抑制されるため、台車4を円滑に案内することが可能となり、真空搬送装置の作動性を向上させることが可能となる。
【0092】
また、本実施形態の真空搬送装置であれば、凸状部5aがアール状または略アール状に形成されており、凹状部5bが凸状部5aと対向するV字状に形成されているため、上述した第四実施形態のものと比較して、良好な自動調心性が発揮され、真空搬送装置を円滑に作動させることが可能となる。
このように、良好な自動調心性が発揮される構成としては、例えば、搬送ローラ1の外周面に二子山状の凸R形状の全周突起が形成され、この突起に対応する形状の全長V字の突起がローラ4aに形成されている構成等が考えられるが、本実施形態の構成であれば、前述の構成と比較して、簡易な構成によって、変位抑制手段を形成することが可能となる。
その他の作用・効果は、上述した第四実施形態と同様である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を、本発明者等が行った実験の結果を伴って詳細に説明する。
なお、下記の実験例1〜3は、上述した第一実施形態と同様の構成を有する真空搬送装置を用い、搬送ローラ外周面の走行後の面祖度を、最大高さRmaxについて測定し、総サイクル数との関係を検証した。なお、搬送ローラ上を台車一台が通過したときを、1サイクルとした。
【0094】
実験例1〜3に共通の実験条件は、以下に示す各条件である。
搬送ローラ外径:直線円筒
搬送ローラ型式:外筒を有する
材質:SUS440C(搬送ローラ及び台車)
レール:平面
試料の表面:ショットピーニング処理、WPC処理または未処理
温度:常温
圧力:1×10−4Pa
【0095】
また、各実験例に固有の条件は、
実験例1:ショットピーニング処理
実験例2:WPC処理
実験例3:未処理
そして、上記の条件下において実験を行った結果を、図4に示す。なお、図4中の縦軸は、面祖度の最大高さ(μm)を示し、横軸は、総サイクル回数を示している。
【0096】
図4中に示されているように、硬化層を有している実験例1及び2は、硬化層を有していない実験例3と比較して、面祖度の最大高さが1/2以下となっており、耐摩耗性が向上していることが確認された。
また、WPC処理によって硬化層を形成した実験例2は、ショットピーニング処理によって硬化層を形成した実験例1と比較して、常に面祖度の最大高さが低くなっており、更に耐摩耗性が向上していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第一実施形態の真空搬送装置の構成を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の部分断面図である。
【図2】本発明の第四実施形態の真空搬送装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第五実施形態の真空搬送装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明者等が行った実験の結果を示す図である。
【図5】従来の真空搬送装置の構成を示す図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は図5(a)の部分断面図である。
【図6】軸受タイプの搬送ローラを示す図である。
【図7】ローラフォロアタイプの搬送ローラを示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 搬送ローラ(ローラフォロア)
2 転がり軸受
21 外輪
21a 外輪側転動体軌道面
22 内輪
22a 内輪側転動体軌道面
23 転動体
3 回転軸
4 台車(搬送部)
4a レール(被案内面)
5 変位抑制手段
5a 凸状部
5b 凹状部
D ディスクメディア
SR 搬送ローラ側硬化層
SF 台車側硬化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより、前記搬送部を案内するローラフォロアであって、
少なくとも前記外周面は、金属粒子または非金属粒子を衝突させることにより形成された硬化層を有し、
前記金属粒子または非金属粒子は、球状または略球状であることを特徴とするローラフォロア。
【請求項2】
前記硬化層は、当該硬化層の表面近傍の温度を、前記外周面が鉄系金属で構成されている場合は前記鉄系金属のA3変態点を越えた温度とし、前記外周面が非鉄系金属で構成されている場合は前記非鉄系金属の再結晶温度以上として形成されることを特徴とする請求項1に記載したローラフォロア。
【請求項3】
前記硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上であり、且つ表面祖度が1.6Raμm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載したローラフォロア。
【請求項4】
前記硬化層の少なくとも前記被案内面と接触する部分が研削処理され、
前記研削処理後の硬化層は、表面硬度がビッカース硬さでHv700以上であり、且つ表面祖度が1.6Raμm以下であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載したローラフォロア。
【請求項5】
前記硬化層または前記研削処理後の硬化層の厚さを、10μm〜100μmの範囲内としたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載したローラフォロア。
【請求項6】
少なくとも前記外周面は、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載したローラフォロア。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載したローラフォロアと、当該ローラフォロアの外周面と接触する被案内面を備えた搬送部と、を備え、真空環境中で用いられる真空搬送装置であって、
少なくとも前記被案内面は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した前記硬化層または前記研削処理後の硬化層と同様の硬化層または研削処理後の硬化層を有していることを特徴とする真空搬送装置。
【請求項8】
少なくとも前記被案内面は、マルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載した真空搬送装置。
【請求項9】
前記外周面及び前記被案内面のうち少なくとも一方は、前記被案内面の前記外周面に対する、前記搬送部の案内方向と直交または略直交する方向への変位を抑制する変位抑制手段を備えることを特徴とする請求項7または8に記載した真空搬送装置。
【請求項10】
前記変位抑制手段は、前記外周面に形成され、且つ前記搬送部の案内方向から見て前記被案内面へ向けて突出する凸状部と、前記被案内面に形成され、且つ前記搬送部の案内方向から見て前記凸状部と対向する凹状部と、を備えることを特徴とする請求項9に記載した真空搬送装置。
【請求項11】
前記凸状部は、前記搬送部の案内方向から見てアール状または略アール状に形成されており、
前記凹状部は、前記搬送部の案内方向から見てV字状に形成されていることを特徴とする請求項10に記載した真空搬送装置。
【請求項12】
前記外周面を固定軸に対して回転自在に支持する転がり軸受を備え、
前記転がり軸受の軌道面に、真空用潤滑剤によって形成された潤滑被膜を形成し、
前記潤滑被膜の被膜厚さを、1g/m〜10g/mの範囲内としたことを特徴とする請求項7から11のうちいずれか1項に記載した真空搬送装置。
【請求項13】
前記潤滑被膜は、以下の(1)〜(3)のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項12に記載した真空搬送装置。
(1) 官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2) 官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3) アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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