説明

ローラミル

【課題】発生後の自励振動を抑えることが可能なローラミルを提供する。
【解決手段】ハウジング3に収納され、テーブル駆動装置4′によって回転駆動される粉砕テーブルと、該粉砕テーブル上に押圧され、塊状物を粉砕する複数のローラを有するローラ加圧ユニットと、該ローラ加圧ユニットを押圧する複数のローラ加圧装置10と、前記ローラ加圧ユニットをピボット軸13を介して傾動自在に支持するジャーナルカバー11と、前記ローラ加圧ユニットの動きを拘束可能なブレーキ装置18とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、石灰岩等の塊状物を微粉に粉砕するローラミル、特に自励振動を抑制可能なローラミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を燃料とする石炭焚きボイラでは、塊状の石炭をミルにより粉砕して微粉炭とし、微粉炭を1次空気と共に燃焼装置であるバーナに供給している。
【0003】
ミルの一つである竪型ローラミルは、ハウジングと、ハウジングの上部に収納され微粉炭と粗粉炭とを分級する分級機と、ハウジングの下部に収納され所定の回転数で回転する粉砕テーブルと、ハウジングに設けられたジャーナルカバーと、該ジャーナルカバーに支持されたローラ加圧ユニットとを有し、ローラ加圧ユニットは回転自在なローラを粉砕テーブルに押圧する構造となっている。
【0004】
粉砕テーブルの中心には給炭管から塊状の石炭が投入され、供給される。供給された塊状の石炭は、粉砕テーブルの回転による遠心力によって外周へと移動し、石炭が粉砕テーブルの外周に移動する過程で、ローラと粉砕テーブルの間に噛込まれて粉砕される。粉砕された粉砕炭は粉砕テーブル周囲の1次空気吹出し口より吹上がる1次空気によって上昇し、分級機により微粉炭と粗粉炭とに分級された後、微粉炭が1次空気と共にバーナに供給される。
【0005】
従来の構造に於いて、ローラの転がり抵抗が大きい場合、或は転がり抵抗に変動がある場合には、粉砕テーブルとローラとの間にスリップが発生し、ローラが高周波数で上下に振動し、竪型ローラミルに、スリップに起因する自励振動が発生することがある。
【0006】
自励振動が発生した場合、特にスプリング式のローラ加圧ユニットを使用する場合、発生した自励振動を減衰させることができず、竪型ローラミル自体を停止しなければ自励振動を制御できない為、竪型ローラミルの停止処理、再開にコストが掛るという問題があった。
【0007】
尚、粉砕ローラの噛込み側を回転テーブルの中心軸側に向け傾斜させてトーイン角度を形成し、又加圧フレームとローラブラケットの間に皿バネを積層したリンクサポートを設け、リンクサポートにより粉砕ローラの過剰な振り子動作を適切な程度に抑えることで運用を安定化させ、自励振動を防止するローラミルとして、特許文献1に示されるものがある。
【0008】
又、竪型粉砕機内の回転テーブルの速度を調整し、粉砕ローラに於ける原料の噛込み速度を最適化することで、スティックスリップ現象をきっかけにして発生する異常振動を防止する竪型粉砕機の運転方法として、特許文献2に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−317326号公報
【特許文献2】特開2007−7594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は斯かる実情に鑑み、発生後の自励振動を抑えることが可能なローラミルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ハウジングに収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、該粉砕テーブル上に押圧され、塊状物を粉砕する複数のローラを有するローラ加圧ユニットと、該ローラ加圧ユニットを押圧する複数のローラ加圧装置と、前記ローラ加圧ユニットをピボット軸を介して傾動自在に支持するジャーナルカバーと、前記ローラ加圧ユニットの動きを拘束可能なブレーキ装置とを具備するローラミルに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記ブレーキ装置は、前記ピボット軸の側端に固着された円板状のディスクと、前記ジャーナルカバーの外面に設けられ、前記ディスクの回転を拘束する拘束手段とを有するローラミルに係るものである。
【0013】
更に又本発明は、前記ローラ加圧装置は筒状のシリンダカバーと、該シリンダカバー内に挿通され前記ローラ加圧ユニットを押圧するプランジャロッドとを有し、前記ブレーキ装置は前記シリンダカバーの半径方向に設けられたブレーキシリンダと、該ブレーキシリンダによって前記プランジャロッドに押圧される摩擦部材とを有し、前記ブレーキ装置は前記プランジャロッドの軸心方向の動きを拘束可能であるローラミルに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハウジングに収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、該粉砕テーブル上に押圧され、塊状物を粉砕する複数のローラを有するローラ加圧ユニットと、該ローラ加圧ユニットを押圧する複数のローラ加圧装置と、前記ローラ加圧ユニットをピボット軸を介して傾動自在に支持するジャーナルカバーと、前記ローラ加圧ユニットの動きを拘束可能なブレーキ装置とを具備するので、自励振動の発生を検出した後に前記ローラ加圧ユニットの動きを拘束し、自励振動を抑えることができ、自励振動を抑える為にローラミル自体を停止する必要がなく、稼働コストの低減、作業効率の向上を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例に係る竪型ローラミルの立面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る竪型ローラミルの概略立断面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る竪型ローラミルの要部拡大断面図である。
【図5】図4のB−B矢視図であり、(A)はブレーキ装置が作動した状態を示し、(B)はブレーキ装置が作動していない状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
先ず、図1〜図3に於いて、本発明の第1の実施例に係る竪型ローラミル1について説明する。
【0018】
中空構造又は脚構造の基台2に筒状のハウジング3が立設され、該ハウジング3の下部には円周3等分した位置にジャーナルカバー11が設けられている。前記ハウジング3により密閉された空間が形成され、該空間の下部には減速機4を介して粉砕テーブル5が設けられる。該粉砕テーブル5は前記減速機4を介して粉砕テーブルモータ(図示せず)によって定速又は可変速で回転され、前記減速機4と前記粉砕テーブルモータとでテーブル駆動装置4′が構成される。又、前記減速機4には振幅や加速度等を計測することで振動を検出する振動センサ6が設けられている。
【0019】
前記粉砕テーブル5の上面には、断面が円弧状の凹溝7を有する複数のテーブルセグメント8がリング状に設けられている。
【0020】
前記粉砕テーブル5の回転中心から放射状に所要組数、例えば120°間隔で設けられた3組のローラ加圧ユニット9と、該ローラ加圧ユニット9を押圧可能な3組のローラ加圧装置10が設けられている。前記ローラ加圧ユニット9及び前記ローラ加圧装置10はピボット軸13を介して前記ジャーナルカバー11によって支持され、前記ローラ加圧ユニット9はローラ12を有し、前記ピボット軸13を介して傾動自在となっている。
【0021】
前記ローラ加圧装置10はスプリング式であり、プランジャロッド14を有し、該プランジャロッド14はスプリング(図示せず)により先端側へと付勢され、前記ローラ加圧ユニット9を前記テーブルセグメント8に押圧する様になっている。
【0022】
前記ピボット軸13は、ゴム製或は合成樹脂製のブッシュ15を介して軸受け部16に回転自在に支持され、該軸受け部16が前記ジャーナルカバー11に固着されている。前記ピボット軸13の一端部にはブレーキ装置18が設けられ、該ブレーキ装置18は、前記ピボット軸13の一端にボルト等で固着された円板状のディスク17と、該ディスク17を拘束する拘束手段30により構成される。
【0023】
該拘束手段30は、前記ジャーナルカバー11の外面に固着されたホルダ19と、該ホルダ19に保持されたキャリパ20と、該キャリパ20に内蔵されたブレーキシリンダ22と、該ブレーキシリンダ22に圧油を供給する圧油供給回路(図示せず)とを具備している。
【0024】
前記キャリパ20は凹溝21が形成された断面凹字形状となっており、前記ブレーキシリンダ22は前記凹溝21を挾んで対向して配設され、前記ブレーキシリンダ22の先端には焼結金属、鋳造品等のブレーキパッド(図示せず)が設けられている。又、前記圧油供給回路には前記ブレーキシリンダ22への圧油の供給又は停止を切替える電磁弁(図示せず)が設けられ、該電磁弁は制御装置62の制御で作動し、或は作業者のスイッチ操作で作動する様になっている。
【0025】
対向する前記ブレーキシリンダ22,22の間には前記ディスク17の外周部が挿入され、前記圧油供給回路を介して前記ブレーキシリンダ22に圧油を供給することで、前記ディスク17がブレーキパッドにより挾持され、前記ディスク17の回転が拘束される様になっている。又、前記ブレーキシリンダ22への圧油を停止することで、前記ディスク17の拘束が解除される。
【0026】
前記粉砕テーブル5の下方には1次空気室23が形成され、前記ハウジング3内部の前記粉砕テーブル5より上方は、分級室24となっている。
【0027】
前記ハウジング3の下部には1次空気供給口25が取付けられ、該1次空気供給口25は図示しない送風機に接続されると共に、前記1次空気室23に連通している。前記粉砕テーブル5の周囲には、1次空気の吹出し口26が全周に設けられている。
【0028】
前記ハウジング3の上側には原料給排部27が設けられている。該原料給排部27は倒立円錐台形状となっていると共に、下端より円柱状の固定分級部29が前記ハウジング3の内部に向って延出している。又、前記原料給排部27には該原料給排部27の中心部を貫通する様にパイプ状のシュート28が設けられ、該シュート28が前記ハウジング3の内部に延出し、下端が前記粉砕テーブル5の中央上方に位置している。前記シュート28には塊状の原料が供給され、供給された原料は前記粉砕テーブル5の中心部に落下する様になっている。
【0029】
前記ハウジング3の上端部には、リング状の回転分級部31が回転自在に設けられ、該回転分級部31の外周部には円周方向に所定角度ピッチでブレード32が配設されている。前記回転分級部31は前記固定分級部29及び前記シュート28と同心であり、モータ等を有する回転機構33により回転される様になっている。又、前記回転分級部31の下端には、中空で略倒立円錐形状のコーン34が配設され、該コーン34は前記シュート28に支持されている。
【0030】
前記原料給排部27には、粉砕された粉体を送給する粉体送給管35が接続されており、該粉体送給管35はボイラのバーナ(図示せず)に接続されている。
【0031】
次に、前記竪型ローラミル1に於ける石炭の粉砕について説明する。
【0032】
前記粉砕テーブル5が、前記減速機4を介して粉砕テーブルモータ(図示せず)により回転され、前記1次空気供給口25より200℃前後の1次空気が前記1次空気室23に導入された状態で、前記シュート28より塊状の石炭が投入される。塊状の石炭は、前記シュート28の下端より前記粉砕テーブル5の中心部に流落し、該粉砕テーブル5上に供給される。
【0033】
該粉砕テーブル5上の石炭は、該粉砕テーブル5の回転による遠心力で外周方向に移動し、前記ローラ12に噛込まれて粗粉炭と微粉炭からなる粉砕炭に粉砕され、更に遠心力によって外周に移動する。
【0034】
遠心力によって前記テーブルセグメント8を乗越えた粉砕炭は、前記吹出し口26から吹上がった1次空気に乗って、粉砕炭流36として前記分級室24の外周部を前記ハウジング3の内壁面に沿って上昇する。
【0035】
該ハウジング3の内壁面に沿って上昇する前記粉砕炭流36は、前記回転機構33によって回転する前記回転分級部31のブレード32を横切る際に、所定粒径以上の粗粉炭は前記ブレード32と衝突して弾かれ前記粉砕テーブル5上に落下し、前記ローラ12により再度粉砕される。又、所定粒径以下の微粉炭は前記回転分級部31に流入する。
【0036】
該回転分級部31に流入した前記粉砕炭流36は、前記固定分級部29の外周面に沿って下方に変向され、該固定分級部29の下端で再度上方に変向され、前記原料給排部27内を通って前記粉体送給管35より送出され、ボイラのバーナ(図示せず)に供給される。又、前記固定分級部29の下端で上方に変向される際、慣性力により前記粉砕炭流36から分離した微粉炭は、前記コーン34内を落下し、該コーン34の下端より前記粉砕テーブル5上に落下し、前記ローラ12により再度粉砕される。
【0037】
上記処理中、前記振動センサ6により、所定の振幅、例えば振幅が200μmを超えるかどうかで自励振動の有無が検出される。前記振動センサ6により自励振動が検出されると、検出信号は前記制御装置62に送出され、該制御装置62は検出結果に基づき電磁弁を制御し、前記ブレーキシリンダ22,22を駆動する。
【0038】
該ブレーキシリンダ22,22がブレーキパッドを前記ディスク17に押圧し、該ディスク17がブレーキパッドに挾持され、該ディスク17に摩擦による制動が作用する。前記拘束手段30は、前記ジャーナルカバー11の外面に固着されているので、前記ピボット軸13の回転が前記ジャーナルカバー11に拘束され、前記ピボット軸13に支持される前記ローラ加圧ユニット9の動きが拘束される。
【0039】
前記竪型ローラミル1に於ける自励振動は、前記ローラ12が何らかの理由、例えば該ローラ12が前記粉砕テーブル5上をスリップすることで、前記ローラ12が前記粉砕テーブル5上をバウンドし、前記ローラ12の振動と連動して前記ローラ加圧ユニット9を押圧する前記ローラ加圧装置10、前記ローラ加圧ユニット9を支持する前記ピボット軸13、及び該ピボット軸13を支持する前記ジャーナルカバー11等が振動することで発生する。即ち、前記ローラ12の振動に、前記ローラ加圧装置10、前記ピボット軸13、前記ジャーナルカバー11、前記ハウジング3等が共振することで自励振動が発生する。
【0040】
従って、前記ディスク17を前記拘束手段30にて拘束することで、前記ピボット軸13の回転が拘束され、前記ローラ加圧ユニット9からの振動の伝達が遮断され、前記竪型ローラミル1の自励振動を抑えることができる。
【0041】
上述の様に、第1の実施例では、自励振動の発生を検出した後に、前記ブレーキ装置18にてディスク17を拘束することで、前記ローラ加圧ユニット9の動きを拘束し、自励振動を抑えることができるので、自励振動を抑える為に前記竪型ローラミル1自体を停止する必要がなく、稼働コストの低減、作業効率の向上を図ることができる。
【0042】
又、緊急時には電磁弁を手動で操作し、前記ブレーキ装置18を作動させてもよい。
【0043】
又、前記ブレーキ装置18は前記竪型ローラミル1の外部に設けられるので、前記ディスク17、前記ブレーキシリンダ22,22のブレーキパッドは大気により冷却することができ、前記ディスク17及びブレーキパッドが摩擦熱により過熱するのを防止することができる。
【0044】
更に、前記ブレーキ装置18は、前記竪型ローラミル1の外部に設けられるので、既存の竪型ローラミルに対しても加工を加えることなく容易に追加することができる。
【0045】
尚、第1の実施例では、前記ディスク17を前記ピボット軸13の一端に設けているが、前記ディスク17を前記ピボット軸13の両端に設け、前記拘束手段30により前記ピボット軸13を両端から拘束してもよいのは言う迄もない。
【0046】
又、第1の実施例では、スプリング式の前記ローラ加圧装置10を用いた前記竪型ローラミル1に前記ディスク17と該ディスク17を拘束する前記拘束手段30からなる前記ブレーキ装置18を設けているが、油圧式のローラ加圧装置を用いた竪型ローラミルに第1の実施例の前記ブレーキ装置18を適用してもよい。
【0047】
更に、ブレーキパッドと前記キャリパ20との間にスプリングを介設し、該スプリングの反発力により前記ディスク17を開放する構造としてもよい。
【0048】
尚、図2中では、前記回転分級部31が前記回転機構33によって回転される構造となっているが、前記回転分級部31を固定的に設け、旋回する前記粉砕炭流36と前記ブレード32との衝突により分級を行う構造としてもよいのは言う迄もない。
【0049】
次に、図4、図5(A)(B)に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、第2の実施例に於ける竪型ローラミルの構造は、第1の実施例に於ける竪型ローラミル1の構造と略同様であるので、説明を省略する。又、図4、図5(A)(B)中、図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、図4中、紙面に対して左側を基端側、紙面に対して右側を先端側とする。
【0050】
第2の実施例に於けるローラ加圧装置41は第1の実施例に於けるローラ加圧装置10と同様、スプリング式となっている。
【0051】
前記ローラ加圧装置41は、ジャーナルカバー11の内面に内部に突出する様に固着されると共に、先端面に孔が穿設された内側シリンダカバー42と、前記ジャーナルカバー11の外面に固着され外側に向って突出する外側シリンダカバー43を有しており、前記ジャーナルカバー11には前記内側シリンダカバー42と同心に貫通孔44が穿設されている。
【0052】
該貫通孔44には拘束部材53が嵌設され、該拘束部材53にはスリーブ45が螺合貫通され、該スリーブ45にプランジャロッド46が摺動自在に挿通され、該プランジャロッド46の先端に押圧部47が嵌入固着されている。該押圧部47の基端には、前記内側シリンダカバー42の内径と略同径且つ該内側シリンダカバー42先端面の孔より大径のフランジ部48が形成され、前記押圧部47の先端部のみが前記内側シリンダカバー42の先端面の孔より分級室24内へと突出する様になっている。
【0053】
前記スリーブ45の先端部には、スプリング受け49が固着され、該スプリング受け49の基部には、前記内側シリンダカバー42の内径と略同径の円板状のフランジ部51が形成されており、前記フランジ部48と前記フランジ部51との間には、スプリング52が圧縮状態で介設されている。尚、該スプリング52の初期撓み量は、前記拘束部材53又は前記スリーブ45を回転させ、前記フランジ部48と前記フランジ部51との間隔を調整することで設定される。
【0054】
前記拘束部材53にはフランジ部54が形成されており、該フランジ部54は前記ジャーナルカバー11の内壁と当接し、前記スリーブ45の基端側への動きが拘束されるので、前記スプリング52の反発力は前記押圧部47を突出させる様作用し、前記スプリング52の反発力によりローラ加圧ユニット9を押圧する様になっている。
【0055】
前記外側シリンダカバー43の基端側には、前記プランジャロッド46を挾持する様、ブレーキ装置55が設けられている。該ブレーキ装置55は、ゴムや合成樹脂等の高摩擦係数を有する摩擦部材56と、該摩擦部材56の軸方向の変位のみを拘束する断面コ字状のホルダ57と、前記摩擦部材56を前記プランジャロッド46に対して押圧可能なシリンダロッド58を有するブレーキシリンダ59等により構成される。尚、前記摩擦部材56、前記ホルダ57、前記ブレーキシリンダ59は、前記プランジャロッド46の軸心に関して対称に2組設けられる。
【0056】
前記ブレーキシリンダ59は前記外側シリンダカバー43の外周面に設けられ、前記ホルダ57は前記外側シリンダカバー43の内周面に設けられ、前記シリンダロッド58は前記外側シリンダカバー43、前記ホルダ57を貫通している。又、前記ブレーキシリンダ59には圧油を供給する為の圧油供給回路(図示せず)が接続されている。
【0057】
前記ホルダ57,57に保持される前記摩擦部材56,56は円柱を2分割した半円柱形状であり、対向する面には、それぞれ前記プランジャロッド46と同径或は僅かに大径な半円柱形状の凹溝60,60が刻設されており、前記シリンダロッド58,58により押圧された際には、図5(A)に示される様に、前記凹溝60,60により前記プランジャロッド46を挾持する様になっている。
【0058】
又、前記摩擦部材56,56間には、前記凹溝60,60を避けてスプリング61が介設されており、前記シリンダロッド58,58による押圧が解除された際には、図5(B)に示される様に、前記スプリング61の反発力により前記摩擦部材56,56が離反され、前記プランジャロッド46が開放される様になっている。
【0059】
石炭の粉砕処理中、振動センサ6(図2参照)により自励振動が検出されると、前記ブレーキ装置55が作動する。
【0060】
該ブレーキ装置55が駆動され、前記摩擦部材56,56が前記シリンダロッド58,58によって押圧され、前記プランジャロッド46が前記摩擦部材56,56により挾持され、前記プランジャロッド46に対して制動力が作用する。即ち、プランジャロッド46の軸心方向の動きが前記摩擦部材56、前記ホルダ57、前記外側シリンダカバー43を介して前記ジャーナルカバー11によって拘束される。
【0061】
前記ローラ加圧ユニット9が振動する際には、前記ピボット軸13を軸として前記ローラ加圧ユニット9が上下方向に振動する。即ち、前記ローラ加圧ユニット9の上下振動は該ローラ加圧ユニット9を介して前記プランジャロッド46に伝達され、該プランジャロッド46が軸心方向に振動する。前記ブレーキ装置55により前記プランジャロッド46の動きを拘束することで、前記ローラ加圧ユニット9の動きを拘束することができ、竪型ローラミル1(図2参照)に発生した自励振動を抑えることができる。
【0062】
第2の実施例に於いても、自励振動を検出した後に、前記ブレーキ装置55にて前記プランジャロッド46を拘束することで、前記ローラ加圧ユニット9の動きを拘束し、自励振動を抑えることができるので、自励振動が発生した際に前記竪型ローラミル1自体を停止する必要がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0063】
尚、第1の実施例、第2の実施例では、ローラを有する竪型のローラミルについて説明したが、ローラを有する横型のローラミルに対しても、本発明のブレーキ装置が適用可能であるのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0064】
1 竪型ローラミル
3 ハウジング
4′ テーブル駆動装置
5 粉砕テーブル
6 振動センサ
9 ローラ加圧ユニット
10 ローラ加圧装置
11 ジャーナルカバー
12 ローラ
13 ピボット軸
14 プランジャロッド
17 ディスク
18 ブレーキ装置
19 ホルダ
20 キャリパ
21 凹溝
22 ブレーキシリンダ
24 分級室
30 拘束手段
41 ローラ加圧装置
42 内側シリンダカバー
43 外側シリンダカバー
46 プランジャロッド
55 ブレーキ装置
56 摩擦部材
57 ホルダ
59 ブレーキシリンダ
60 凹溝
61 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、該粉砕テーブル上に押圧され、塊状物を粉砕する複数のローラを有するローラ加圧ユニットと、該ローラ加圧ユニットを押圧する複数のローラ加圧装置と、前記ローラ加圧ユニットをピボット軸を介して傾動自在に支持するジャーナルカバーと、前記ローラ加圧ユニットの動きを拘束可能なブレーキ装置とを具備することを特徴とするローラミル。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、前記ピボット軸の側端に固着された円板状のディスクと、前記ジャーナルカバーの外面に設けられ、前記ディスクの回転を拘束する拘束手段とを有する請求項1のローラミル。
【請求項3】
前記ローラ加圧装置は筒状のシリンダカバーと、該シリンダカバー内に挿通され前記ローラ加圧ユニットを押圧するプランジャロッドとを有し、前記ブレーキ装置は前記シリンダカバーの半径方向に設けられたブレーキシリンダと、該ブレーキシリンダによって前記プランジャロッドに押圧される摩擦部材とを有し、前記ブレーキ装置は前記プランジャロッドの軸心方向の動きを拘束可能である請求項1のローラミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91054(P2013−91054A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236185(P2011−236185)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】