説明

ローラ駆動式ステージ位置決め装置

【課題】位置決めすべきステージを、ローラ駆動方式により自動位置決めするローラ駆動式ステージ位置決め装置を提供すること。
【解決手段】基体1と、基体に設けたガイドレール2に沿って移動可能であり、ステージ3を備え、該ステージに対して一体的に組み立てられたトラックプレート4を備えたステージ組立体5と、トラックプレートの一方の面に当接し、ガイドレールに対して直交する方向に沿って軸心を有する送りローラ6と、送りローラを回転駆動するための回転駆動源7と、トラックプレートの他方の面に当接し、送りローラとによりトラックプレートを挟み込む加圧ローラ8とを含むものからなり、送りローラを回転することによって、トラックプレートを介して前記ステージ組立体を移動するようにしたことを特徴とするローラ駆動式ステージ位置決め装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動組立機あるいは画像処理検査機などの機器装置において、位置決めすべきステージを、ローラ駆動方式により自動位置決めするためのローラ駆動式ステージ位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動組立機あるいは画像処理検査機などの機器装置において、サーボモータあるいはステッピングモータを用いてステージを移動させ、自動位置決めする手段として、特許文献1および特許文献2に開示されるようなボールねじ駆動方式が知られている。
【0003】
特許文献1には、ボールねじを大トルクで回転駆動させる場合、大型モータを必要としていた従来技術に対して、一本のボールねじの両端にモータを接続し、この一対のモータによりボールねじを回転することによって、小型モータで大型モータ駆動に相当する回転力を得る構成が開示されている。この特許文献1に開示される技術によれば、当該ボールねじを駆動させるためには、トルクの関係上、ボールねじの一端に大型モータを接続するか、あるいは、ボールねじの両端に一対の小型モータを接続するかという要件が求められるものであって、コストの面においても、モータ設置スペースの面においても大きな課題を有するものであった。
【0004】
特許文献2には、その課題として、ボールねじを回転させるためのモータとボールねじナットまでの距離が、被駆動体の移動に伴って変化し、その距離が大きくなるとたわみが生じ、誤差の補正が困難であるという課題を解決するため、位置決め誤差が平均化されて均一になるよう二本のボールねじを対にして平行に配置し、それぞれのボールねじの端部にボールねじ駆動モータを設ける構成が開示されている。この特許文献2に開示される技術によれば、二本のボールねじ、並びに、それぞれを駆動する二つのボールねじ駆動モータを要件とするものであって、特許文献1に開示の技術と同様、コスト面並びに設置スペース面において課題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−146692号公報
【特許文献2】特開2000−141156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステージを自動位置決めするための手段としてのボールねじ駆動方式は、上記従来技術にみられる課題に加えて、それらを構成する部品と組立に高い精度が要求されるため、製造コストの低減が困難であるという大きな課題を有している。
【0007】
さらに、今日の画像処理技術の目覚ましい向上により、ステージの位置決め精度への依存が低くなっているので、位置決め精度上、オーバースペックになる場合が多いという課題も指摘されている。
【0008】
ステージを自動位置決めするための手段としての他の駆動方法では、安価で高速移動が可能なタイミングベルトによる送り方法がある。このタイミングベルト送り方式のものは、プーリーの慣性モーメントやベルトの張力の影響、柔軟なベルトを使用する構造上、位置決め停止時の振動の制停に時間がかかり、応答性に劣るという大きな課題を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、上記するような従来技術にみられる問題点を解消しようとするものであって、自動組立機あるいは画像処理検査機などの機器装置に対して、サーボモータあるいはステッピングモータを用いてステージを移動させ、自動位置決めする手段として、ローラ駆動方式を採用した新規な構成でなるローラ駆動式ステージ位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、基体と、この基体に設けたガイドレールに沿って移動可能であり、ステージを備え、該ステージに対して一体的に組み立てられたトラックプレートを備えたステージ組立体と、該トラックプレートの一方の面に当接し、ガイドレールに対して直交する方向に沿って軸心を有する送りローラと、該送りローラを回転駆動するための回転駆動源と、トラックプレートの他方の面に当接し、送りローラとによりトラックプレートを挟み込む加圧ローラとを含むものからなり、送りローラを回転することによって、トラックプレートを介してステージ組立体を移動するようにしたことを特徴とするローラ駆動式ステージ位置決め装置を構成するものである。
【0011】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置であって、送りローラのローラ径を変更可能に設計してなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置であって、加圧ローラが、一対のローラ対からなり、その各軸心が、前記送りローラの軸心に対して平行であり、前記送りローラの軸心位置から等距離ずつ離れた位置に軸心を有するものからなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明において、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置であって、加圧ローラをトラックプレートに押し付け、当該押し付け圧を任意に設定可能になした押し付け圧設定手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成になるこの発明のローラ駆動式ステージ位置決め装置は、一つの回転駆動源によって回転制御される送りローラ6と、加圧ローラ8とによって、ステージ組立体5におけるトラックプレート4を挟み込み、送りローラ6の回転駆動によりステージ組立体5を移動させてステージの位置決めを行うようにしたものであり、構造がシンプルであるため、部品加工工数、組立工数を減らすことができ、経済的に極めて有利に作用するとともに、当該装置の設置に関しても省スペース化が図れるという点において極めて有効に作用するものといえる。
【0015】
さらに、この発明になるローラ駆動式ステージ位置決め装置は、送りローラ6のローラ径を変更可能にしたことにより、ステージの位置決め精度と移動速度のバランスをとることができ、この点においてをも極めて有効に作用するものといえる。
【0016】
さらに、この発明になるローラ駆動式ステージ位置決め装置は、加圧ローラ8の加圧力を変更制御することにより、移動推力の上限が任意に設定でき、異常時、積載物や周辺機器の損傷を防ぐことができ、この点においてをも極めて有効に作用するものといえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明にかかるローラ駆動式ステージ位置決め装置の具体的な一実施例を示す概略的な斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線に沿って断面にして示す概略的なA−A線断面斜視図である。
【図3】図3は、図1におけるB−B線に沿って断面にして示す概略的なB−B線断面斜視図である。
【図4】図4は、図2における断面の状態を、矢印Y1の方向からみた概略的な断面図である。
【図5】図5は、図3における断面の状態を、矢印Y2の方向からみた概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明になるローラ駆動式ステージ位置決め装置について、図面に示す具体的な実施例にもとづいて詳細に説明する。
まず、この発明になるローラ駆動式ステージ位置決め装置LDは、例えば、静止系の構成部材である基体1を有し、この基体1に対して相対的に移動するステージ組立体5を組み合わせた構成のものからなっている。前記基体1は、基体プレート11を介して、当該ステージ位置決め装置LDを取り付けるべき機器装置に対して固定設置されるようになっている。前記基体1には、起立壁部材12を介して、その上部に一対のガイドレール2、2と、後述する送りローラ6の軸方向両端部を、ベアリング13、13を介して軸支する軸受手段14、14が設けてある。
【0019】
この基体1に対して、前記ステージ組立体5は、以下に示すような構成のものからなっている。前記ステージ組立体5は、ステージ3と、このステージ3に対して一体的に組み付けられたトラックプレート4とを含むものからなっている。前記トラックプレート4は、前記ステージ3の下面側に、下方向に向けてのびるトラックプレート固定支持部材15、15により、前記ステージ3に対して平行する面に沿って一体的に固定支持されている。
【0020】
前記ステージ組立体5は、前記ステージ3の下面に、前記基体1における一対のガイドレール2、2に摺動可能に嵌り合うガイド溝部材16、16を備えており、前記ガイド溝部材16、16をガイドレール2、2に嵌め合わせることによって、前記ステージ組立体5を前記基体1に対して、矢印X方向に往復移動可能なように構成されている。
【0021】
この発明では、前記基体1と前記ステージ組立体5との間には、原点復帰手段9が設けてある。この原点復帰手段9は、その一例において、前記基体1あるいはステージ組立体5のいずれかに設けた原点センサ10によって構成されており、当該原点センサ10の出力信号に応答して原点復帰するようになっている。
【0022】
この発明では、前記ステージ組立体5におけるトラックプレート4の下面4aに対して前記送りローラ6が当接するように構成されており、前記トラックプレート4の上面4bに対して、加圧ローラ8が当接するように構成されていて、前記送りローラ6を回転させることによって、前記トラックプレート4を介して、前記ステージ組立体5をストロークStの範囲で往復移動させることができるようになっている。
【0023】
この発明におけるステージ位置決め装置LDは、前記送りローラ6を回転駆動するための一つの回転駆動源7を備えている。この回転駆動源7は、サーボモータあるいはステッピングモータであり、制御手段22からの出力信号に応じて、前記送りローラ6を正逆方向に回転駆動制御するように構成してある。前記送りローラ6の軸23は、カップリング24によって、前記回転駆動源7の回転軸25に連結されている。
【0024】
この発明において、前記送りローラ6と前記トラックプレート4とは、摩擦接触する構成であり、摩耗による送りローラ6の直径変化は、送り精度に直接影響するため、当該送りローラには、超硬合金など硬度の高い材料が用いられる。また、送りローラ6とトラックプレート4との接触面は、安定した摩擦力を得るため相応の面粗度に仕上げられている。
【0025】
さらに、この発明において、前記送りローラ6は、そのローラ径を変更することができるように構成されている。送りローラ6のローラ径を変更することによって、ステージの位置決め精度と移動速度のバランスをとることができるようになっている。
【0026】
一方、この発明において、前記加圧ローラ8は、一対のローラ17、17からなっていて、その各軸心18、18が前記送りローラ6の軸心19に対して平行であり、前記送りローラ6の軸心位置から等距離ずつ離れた位置に軸心18、18が位置するように設計されている。
【0027】
前記加圧ローラ8は、前記送りローラ6との間にトラックプレート4を挟み込んで、前記送りローラ6を回転することによって、前記トラックプレート4を介して前記ステージ組立体5を移動させるものであり、前記加圧ローラ8は、押し付け圧設定手段20により前記トラックプレート4に押し付けられるようになっている。
【0028】
前記押し付け圧設定手段20は、前記加圧ローラ対17、17を前記トラックプレート4に押し付ける方向に作用するスプリング21、21によって構成されている。この発明において、前記押し付け圧設定手段20におけるスプリング21、21のばね力を適宜変更することで、移動推力の上限を任意に設定でき、異常時における積載物や周辺機器の損傷を防ぐことができるようになっている。
【符号の説明】
【0029】
LD ローラ駆動式ステージ位置決め装置
1 基体
2 ガイドレール
3 ステージ
4 トラックプレート
5 ステージ組立体
6 送りローラ
7 回転駆動源
8 加圧ローラ
9 原点復帰手段
10 原点センサ
11 基体プレート
12 起立壁部材
13 ベアリング
14 軸受手段
15 トラックプレート固定支持部材
16 ガイド溝部材
17 一対のローラ
18 一対のローラの軸心
19 送りローラの軸心
20 押し付け圧設定手段
21 スプリング
22 制御手段
23 送りローラ軸
24 カップリング
25 回転駆動源の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に設けたガイドレールに沿って移動可能であり、ステージを備え、該ステージに対して一体的に組み立てられたトラックプレートを備えたステージ組立体と、
前記トラックプレートの一方の面に当接し、前記ガイドレールに対して直交する方向に沿って軸心を有する送りローラと、
前記送りローラを回転駆動するための回転駆動源と、
前記トラックプレートの他方の面に当接し、前記送りローラとにより前記トラックプレートを挟み込む加圧ローラとを含むものからなり、
前記送りローラを回転することによって、前記トラックプレートを介して前記ステージ組立体を移動するようにしたことを特徴とするローラ駆動式ステージ位置決め装置。
【請求項2】
前記送りローラのローラ径を変更可能に設計してなることを特徴とする請求項1に記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置。
【請求項3】
前記加圧ローラが、一対のローラ対からなり、その各軸心が、前記送りローラの軸心に対して平行であり、前記送りローラの軸心位置から等距離ずつ離れた位置に軸心を有するものからなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置。
【請求項4】
前記加圧ローラを前記トラックプレートに押し付け、当該押し付け圧を任意に設定可能になした押し付け圧設定手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のローラ駆動式ステージ位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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