説明

ロールオン容器

【課題】常に一定量の内容液を塗布することができるとともに、その組立てが容易なロールオン容器を提案する。
【解決手段】ロールオン容器1は、容器本体3の口部3bに塗布具5を装着してなり、該塗布具5が塗布ボール9とベース部材11と保持部材13とを備える。保持部材13は、塗布ボール9を転動自在に抱持する抱持壁23とベース部材11に保持されるとともに抱持壁23を支持する支持部33とを有し、ベース部材11は、抱持壁23に沿って延在し底部に連通孔27を形成するドーム壁25を有する。支持部33と抱持壁23との間には、該抱持壁23をドーム壁25から離間させる方向に付勢して該抱持壁23及び該ドーム壁25の相互間に定量室Rを形成するベンド壁35が一体に設けられ、抱持壁23には注出孔37,38が形成されるとともに、ベンド壁35による付勢力に抗した塗布ボール9の押し込みより連通孔27を閉塞する弁体40が一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ボールを有するロールオン式の塗布具を容器本体の口部に装着してなるロールオン容器に関し、特に、一定量の内容液を塗布できるようにする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールオン容器として、例えば特許文献1に記載されるように、塗布ボールと、該塗布ボールを回転自在に保持する中栓とを有し、容器を逆さにした状態で塗布ボールを塗布面に押し当てながら転動させることによって、塗布ボールに付着した内容液を塗布面に転写させて塗布するようにしたものが知られている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のものは、塗布ボールの転動に応じて容器内の内容液が吐出されるものであるから、塗布ボールを長く転動させればその分、多くの内容液が吐出される結果となり、また、内容液の粘性が低い場合には必要以上の内容液が流出することがあり、塗布量の調整を行うことは困難である。
【0004】
一方、特許文献2には、塗布量の調整を可能とすべく、液体通孔を設けた中底を有するとともに球体保持筒内に塗布用球体を保持させた球体保持栓において、中底と塗布用球体との間に液体通孔を開閉する弁体を設けるとともに、弁体と中底との間に含水物質を挿設し、使用時には含水物質を圧搾して、該圧搾による吐出液体を塗布用球体を介して塗布するようにした球体保持栓が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3129961号公報
【特許文献2】実公昭49−34443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載のものは、例えば長期使用に伴い含水物質にへたりが生じた場合には、含水物質による含水量が減少する結果、吐出される液体が減少するという問題がある。また、含水物質を位置決めした上で弁体と中底との間に挿設しなければならず、組立て作業が煩雑になるという問題がある。
【0007】
それゆえ、本発明は、常に一定量の内容液を塗布することができるとともに、その組立てが容易なロールオン容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のロールオン容器は、容器本体の口部にロールオン式の塗布具を装着してなるものであって、前記塗布具が、塗布ボールと、前記容器本体の前記口部に装着されるベース部材と、前記ベース部材に被さって保持されるとともに前記塗布ボールを保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記塗布ボールに沿って延在して該塗布ボールを転動自在に抱持する抱持壁と、前記ベース部材に保持されるとともに前記抱持壁を支持する支持部とを有し、前記ベース部材は、前記抱持壁に沿って延在し、底部に前記容器本体の内部とつながる連通孔を形成するドーム壁を有し、前記支持部と前記抱持壁との間に、該抱持壁を前記ドーム壁から離間させる方向に付勢して該抱持壁及び該ドーム壁の相互間に定量室を形成するベンド壁を一体に設け、前記抱持壁に前記定量室内の内容液を前記塗布ボールの表面に流出させる注出孔を形成するとともに、前記ベンド壁による付勢力に抗した前記塗布ボールの押し込みより前記連通孔内に挿入されて該連通孔を閉塞する弁体を一体に設けたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明のロールオン容器にあっては、前記弁体は、前記塗布ボールの押し込み時に前記連通孔の内面との間にシールを形成する基部と、この基部から該連通孔に対して隙間を空けて延びて該弁体の移動を案内するガイド部とからなることが好ましい。
【0010】
また、本発明のロールオン容器にあっては、前記注出孔を、相互に対向する位置に2箇所以上設けてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持部材とベース部材との間に定量室が形成されるようにしたので、一定量の内容液を塗布することができ、しかも、この定量室はベンド壁の付勢力をもって抱持壁をドーム壁から離間させることで出現するものであって、その付勢力は常に一定であることから定量室内の容量も一定となり、常に一定量の内容液の塗布が可能となる。また、抱持壁を可動させるベンド壁は該抱持壁及び支持部と一体に形成されていることから、上記特許文献2の含水物質の組付け時に必要であった位置決め作業を不要として容易に組み付けを行うことが可能であるとともに部品点数を削減することもできる。
【0012】
また、弁体を、塗布ボールの押し込み時に連通孔内に嵌り込む基部と、この基部から該連通孔に対して隙間を空けて延びて該弁体の移動を案内するガイド部とから構成した場合には、塗布ボールを塗布面に押し付けた際に、ガイド部によって弁体をドーム壁の連通孔内に確実に挿入することができて、より一層確実に一定量の内容液を注出して塗布することが可能となる。
【0013】
さらに、注出孔を相互に対向する2箇所以上に設けた場合には、定量室内から注出された内容液を塗布ボールに均一に付着させることができて、塗布ボールによる内容液の塗布をムラなく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う一実施形態のロールオン容器の、軸線に沿った部分断面図である。
【図2】図1のロールオン容器を、キャップを外した状態で示した断面図である。
【図3】図1のロールオン容器の使用態様を説明する図であり、(a)はロールオン容器を逆さにした状態を示し、(b)はロールオン容器の塗布ボールを塗布面に接触させた状態を示し、(c)はロールオン容器の塗布ボールを所定の圧力下で塗布面に押し付けた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。ここに図中、符号1は、本発明に従う一実施形態のロールオン容器であり、符号3は、胴部3aと該胴部3aの下端を閉塞する底部(図示省略)と胴部3aの上部に設けられた口部3bとからなり、内側に内容液の収納空間を形成する容器本体であり、符号5は、該容器本体3の口部3bに装着されるロールオン式の塗布具であり、符号7は、容器本体3の口部3bに装着されるキャップである。なお、以下の説明において、上下方向に関する記載(例えば、「上」、「下」、「底」)は、全て、ロールオン容器を水平な面に載置したときの状態を基準する。
【0016】
本実施形態のロールオン容器1は、容器本体3の口部3bに塗布具5を装着してなるものであって、図1及び図2に示すように、塗布具5は、概して、球形の塗布ボール9と、容器本体3の口部3bに装着されるベース部材11と、このベース部材11に被さって保持されるとともに塗布ボール9を保持する保持部材13と、を備えている。
【0017】
ベース部材11は、容器本体3の口部3bの突端の外周に形成された膨出環15にアンダーカット係合する装着筒17と、該装着筒17の上端から上記口部3bの突端に沿って内側に延びる天面壁19と、天面壁19の内側に下方に向けて垂設されて口部3bの内周面に嵌り込むシールリング21と、天面壁19の内側に連設され、後述の抱持壁23に沿って延在するドーム壁25とからなる。ドーム壁25の底部(中央)には、容器本体3の内部につながる連通孔27が形成され、上端部の外周には、後述の嵌合筒29を嵌合、保持する環状リブ25aが形成されている。
【0018】
保持部材13は、塗布ボール9に沿って延在して該塗布ボール9を転動自在に抱持する上記抱持壁23と、ベース部材11のドーム壁25の上端部外周を取り囲み該上端部(詳細には上記環状リブ25a)に凸部29aを介して嵌合、保持される嵌合筒29および該嵌合筒29の内側に連設されるとともにドーム壁25の上端縁に向けて環状突起31aを垂設する支持壁31からなる支持部33とを有する。
【0019】
そして、支持部33と抱持壁23との間、より詳細には支持壁31と抱持壁23との間には、撓み変形可能に抱持壁23を塗布ボール9とともに上方(ドーム壁25から離間させる方向)に付勢して該抱持壁23及び該ドーム壁25の相互間に一定量の内容液を収容可能な定量室R(図2参照)を形成するベンド壁35が一体に設けられている。つまり、ベンド壁35は、塗布ボール9を押し込まない状態(図2の状態)では、抱持壁23をドーム壁25から離間させて抱持壁23及びドーム壁25の相互間に定量室Rを形成する一方、塗布ボール9が押し込まれた状態(図1の状態)では撓み変形して抱持壁23をドーム壁25に対する近接方向に変位させるものである。
【0020】
さらに、この塗布具5においては、抱持壁23には上記定量室R内の内容液を塗布ボール9の表面に流出させる少なくとも一つ(ここでは対向位置に形成された2つ)の注出孔37,38が形成されている。なお、抱持壁23に形成する注出孔は3つ以上としてもよく、この場合、注出孔は抱持壁23の周方向に等間隔で配置することが好ましい。
【0021】
また、抱持壁23には、ベンド壁35の付勢力に抗して塗布ボール9が押し込まれた際(抱持壁23が、ドーム壁25に対する近接方向への変位した際)に連通孔27内に挿入されて該連通孔27を閉塞する筒状の弁体40が一体に設けられている。この例では、弁体40は、上述した塗布ボール9の押し込み時に連通孔27の内面と面接触して該内面との間にシールを形成する基部40aと、この基部40aから先端に向けて該連通孔27に対して隙間を空けて延びて該弁体40の移動を案内するガイド部40bとからなる。
【0022】
キャップ7は、図1に示すように、頂壁42と側周壁44とを有しており、頂壁42の下面には、キャップ7を締めたときに塗布ボール9の上部を押圧する押えリング42aが設けられ、側周壁44の下部内周には、口部3bの外周に形成されたねじ3bに羅合するねじ44aが形成されている。
【0023】
次に、塗布具5を備える本実施形態のロールオン容器1の作用について説明する。容器本体3内には、塗布物として、液体あるいはクリーム状の香水、化粧料、薬剤等が収容されており、塗布ボール9が嵌めこまれた保持部材13をベース部材11に装着して形成された塗布具5の装着筒17を、容器本体3の口部3bに位置合わせして打栓により嵌着し、さらに、キャップ7を容器本体3の口部3bに装着することでキャップ7の押えリング42aにより塗布ボール9が押し込まれるとともにドーム壁25の連通孔27が弁体40によって閉塞されて、容器本体3の内部が密封されたロールオン容器1が形成される。
【0024】
使用にあたって、図2に示すようにキャップ7を容器本体3の口部3bから外すと、ベンド壁35の付勢力によって抱持壁23が上方へ押し上げられ抱持壁23とドーム壁25との間に定量室Rが出現する。この状態で、図3(a)に示すように、ロールオン容器1を傾けるあるいは倒立させると、定量室R内に連通孔27と弁体40のガイド部40bとの間の隙間を通って容器本体3内の内容液が流入し、定量室R内は一定量の内容液で満たされる。なお、このとき、塗布ボール9と抱持壁23との間は、該抱持壁23の先端位置Pにてシールされるため、定量室R内の内容液が外部に漏れ出ることはない。
【0025】
この状態から、図3(b)に示すように、塗布ボール9を塗布面に接触させると抱持壁23及び塗布ボール9間の上記シールが解除され、さらに図3(c)に示すように塗布ボール9を塗布面に所定の圧力下で押し付けると、ベンド壁35の付勢力に抗して抱持壁23がドーム壁25に対する近接方向に変位するのに伴って、弁体40の基部40aがドーム壁25に形成された連通孔27に挿入されて連通孔27が閉塞され、内容液の塗布量が確定される。そして、塗布ボール9を塗布面に押し付けたままロールオン容器1を動かすと塗布ボール9が回転して、注出孔37,38を通じて定量室R内の内容液が塗布ボール9の表面に付着し、塗布ボール9の表面に付着した内容液は塗布面に塗布されることになる。
【0026】
したがって、本実施形態のロールオン容器1によれば、保持部材13とベース部材11との間に定量室Rが形成されるようにしたので、一定量の内容液を塗布することができ、しかも、この定量室Rはベンド壁35の付勢力をもって抱持壁23をドーム壁25から離間させることで出現するものであって、その付勢力は常に一定であることから定量室R内の容量も一定となり、常に一定量の内容液の塗布が可能となる。また、抱持壁23を可動させるベンド壁35は該抱持壁23及び支持部33と一体に形成されていることから、上記特許文献2の含水物質の組付け時に必要であった位置決め作業を不要として容易に組み付けを行うことが可能であるとともに部品点数を削減することもできる。
【0027】
また、本実施形態では、弁体40を、塗布ボール9の押し込み時に連通孔27の内面との間にシールを形成する基部40aと、この基部40aから該連通孔27に対して隙間を空けて延びて該弁体40の移動を案内するガイド部40bとから構成したことから、このガイド部40bによって、塗布ボール9の押し込み時に弁体40をドーム壁25の連通孔27内に確実に挿入することができるので、すなわち、弁体40による連通孔27の不確実、不安定な遮断に起因して必要以上の内容液が定量室R内に流入するのを防止することができるので、より一層確実に一定量の内容液を注出して塗布することが可能となる。
【0028】
さらに、本実施形態では、注出孔37,38を相互に対向する2箇所に設けたことから、定量室R内から注出された内容液を塗布ボール9に均一に付着させることができて、塗布ボール9による内容液の塗布をムラなく行うことが可能となる。
【0029】
しかも、本実施形態では、支持壁31の下面にドーム壁25の上端縁に押圧される環状突起31aを設けたことから、この環状突起31aにより定量室Rを密封することができ、特に、この環状突起31aは塗布ボール9を塗布面に押し付けた際にベンド壁35の撓み変形に伴って上記上端縁により強く押し付けられることになって、塗布時の定量室Rの密封をより確実なものとすることできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
かくして、本発明により、常に一定量の内容液を塗布することができるとともに、その組立てが容易なロールオン容器を提案することが可能となった。
【符号の説明】
【0031】
1 ロールオン容器
3 容器本体
3b 口部
5 塗布具
7 キャップ
9 塗布ボール
11 ベース部材
13 保持部材
23 抱持壁
25 ドーム壁
27 連通孔
33 支持部
35 ベンド壁
37,38 注出孔
40 弁体
40a 基部
40b ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部にロールオン式の塗布具を装着してなるロールオン容器であって、
前記塗布具が、塗布ボールと、
前記容器本体の前記口部に装着されるベース部材と、
前記ベース部材に被さって保持されるとともに前記塗布ボールを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記塗布ボールに沿って延在して該塗布ボールを転動自在に抱持する抱持壁と、前記ベース部材に保持されるとともに前記抱持壁を支持する支持部とを有し、
前記ベース部材は、前記抱持壁に沿って延在し、底部に前記容器本体の内部とつながる連通孔を形成するドーム壁を有し、
前記支持部と前記抱持壁との間に、該抱持壁を前記ドーム壁から離間させる方向に付勢して該抱持壁及び該ドーム壁の相互間に定量室を形成するベンド壁を一体に設け、
前記抱持壁に前記定量室内の内容液を前記塗布ボールの表面に流出させる注出孔を形成するとともに、前記ベンド壁による付勢力に抗した前記塗布ボールの押し込みより前記連通孔内に挿入されて該連通孔を閉塞する弁体を一体に設けたことを特徴とするロールオン容器。
【請求項2】
前記弁体は、前記塗布ボールの押し込み時に前記連通孔の内面との間にシールを形成する基部と、この基部から該連通孔に対して隙間を空けて延びて該弁体の移動を案内するガイド部とからなる、請求項1に記載のロールオン容器。
【請求項3】
前記注出孔を、相互に対向する位置に2箇所以上設けてなる、請求項1又は2に記載のロールオン容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−232776(P2012−232776A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102247(P2011−102247)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】