説明

ロールミル

【課題】隣接配置した一対のロールの間に配置した一対の堰板の接触側面に沿って上昇した原材料が滞留するのを防止して高品質の材料を形成することができるロールミルを提供する。
【解決手段】複数本のロール6,7を軸平行に隣接配置し、一対のロールの間の両端を一対の堰板10,10で閉塞し、これら一対の堰板の間から一対のロール間に原材料Mを投入して混練・分散処理を行なうロールミルである。一対の堰板の原材料が接触する接触側面16には、原材料が接触側面に沿って滞留するのを防止する滞留防止部17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス電子部品の製造において粉体と液体とを混合した原材料を混練・分散処理するロールミルに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス電子部品の材料であるペースト材料は、粉体と液体とを混合した原材料をロールミルで混練・分散処理することで形成される。
ロールミルとして、3本のロールを配置した装置が知られている(例えば、特許文献1)。
このロールミルは、図5に示すように、始点ロール1及び中間ロール2が互いのロール面を近接して軸平行に配置され、中間ロール2及び終点ロール3が互いのロール面を近接して軸平行に配置され、中間ロール2が時計回りに回転し、始点ロール1及び終点ロール3が反時計回りに回転するようにしている。粉体と液体とを混合した原材料は、始点ロール1及び中間ロール2の間に投入され、ロール1、2間、ロール2、3間を通過する際の剪断力および圧縮力によって混練・分散処理が行なわれる。そして、混練・分散処理によって形成されたペースト材料は、終点ロール3に移行した後、掻き取り部4によって回収される。
【0003】
原材料が投入される始点ロール1及び中間ロール2の上部には、図6にも示すように、ロール軸に沿って互いに離間して一対の堰板5,5が配置されている。
これら一対の堰板5,5は、図7に示すように、互いに交差する2つの曲率下端面5a,5bを形成した平板部材であり、曲率下端面5a,5bを始点ロール1及び中間ロール2のロール面上部に近接させて均一の間隙を設けながら、始点ロール1及び中間ロール2の間の原材料の投入幅を設定している。
【0004】
図5に示す3本ロールの装置は、ロール1、2間を通過する際の混練・分散処理によって形成されたペースト材料の一部分が終点ロール3に移行し、掻き取り部4によって回収される方式であるため、その処理条件によっては、終点ロール3に移行し、掻き取り部4によって回収されたペースト材料の混練・分散が足りない場合が有り、このような場合、掻き取り部4で回収したペースト材料を始点ロール1及び中間ロール2の間に再投入しなければならず、作業性の面で問題がある。
【0005】
図5に示す3本ロールの装置における上記のような問題点に対応して、再投入作業なしで長時間の混練・分散処理を行うことができるようにした2本ロールの装置もある。この2本ロールの装置は、図5で示した3本ロールの装置と異なる構造のロールミルとして、図8に示すように、互いのロール面を近接させて軸平行に配置した2本の第1及び第2ロール6,7及び一対の堰板5,5を備え、原材料を第1及び第2ロール6,7の間に繰り返し通過させ、長時間の混練・分散処理を行うことで高品質のペースト材料を形成するようにしたロールミルである。なお、このロールミルの一対の堰板5,5も、図7と同様に、互いに交差する2つの曲率下端面5a,5bを形成した平板部材であり、曲率下端面5a,5bを第1ロール6及び第2ロール7のロール面上部に近接させて均一の間隙を設けながら、第1ロール6及び第2ロール7の原材料の投入幅を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−25075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図8で示した2本ロールのロールミルは、図9にも示すように、混練・分散処理を行なっている原材料Mが、堰板5の平面形状の側面に沿って上昇して滞留した状態となり、長時間の混練・分散処理を行っても、高品質のペースト材料を形成しにくいという問題がある。
また、図5で示した3本ロールのロールミルは、上述のように、ロール1、2間を通過する際の混練・分散処理によって形成されたペースト材料の一部分が終点ロール3に移行していく方式であるため、図8で示した2本ロールのロールミルほどではないが、その処理条件によっては、始点ロール1及び中間ロール2の上部に配置した堰板5の側面近くを流れる原材料Mが、側面に沿って上昇して滞留しやすく、高品質のペースト材料を形成しにくくなるという問題がある。
そこで、本発明は、隣接配置した一対のロールの間に配置した一対の堰板の接触側面に沿って上昇した原材料が滞留するのを防止して高品質の材料を形成することができるロールミルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1のロールミルは、複数本のロールを軸平行に隣接配置し、隣接する一対のロールの間の両端を一対の堰板で閉塞し、前記一対の堰板の間から前記一対のロール間に原材料を投入して混練・分散処理を行なうロールミルにおいて、前記一対の堰板の前記原材料が接触する接触側面に、前記原材料が前記接触側面に沿って滞留するのを防止する滞留防止部を設けた。
この発明によると、一対の堰板の接触側面に設けた滞留防止部が、一対のロールの間の原材料の滞留量を低減することができるので、確実に混練・分散処理された材料を形成することができ、これにより、高品質の材料を形成することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のロールミルにおいて、前記滞留防止部が、前記一対のロールのロール面に対面するように前記接触側面に形成され、前記接触側面に沿って上昇してきた前記原材料が接触することで当該原材料の上昇を規制する段差面である。
この発明によると、一対のロールのロール面に対面するように接触側面に段差面を形成するだけで、接触側面に沿う原材料の上昇を規制して一対のロールの間の原材料の滞留量を低減することができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のロールミルにおいて、前記段差面が、前記一対のロールの前記ロール面に平行に対面する単一の平面である。
この発明によると、一対のロールのロール面に対面するように堰板の接触側面に単一の平面からなる段差面を形成するだけで、一対のロールの間の原材料の滞留量を低減することができる。
【0011】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項2記載のロールミルにおいて、前記段差面が、前記一対のロールの前記ロール面に対して平行に対面している第1段差面と、この第1段差面に連続して形成され、前記一対のロールの回転速度差により前記一対のロールの間で発生した前記原材料の流れを阻止する位置に設けた第2段差面とを備えている。
この発明によると、堰板の接触側面に沿って原材料が上昇していくが、その原材料が接触側面に形成した第1段差面に接触することで、一定高さ以上の上昇が規制される。また、前記一対のロールの間で発生した前記原材料の流れは、第2段差面に衝突して一対のロールの間に戻されていく。したがって、本発明は、原材料の上昇が規制され、原材料が一対のロールの間に戻されていくので、さらに確実に混練・分散処理された材料を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るロールミルによれば、一対の堰板の接触側面に設けた滞留防止部が、一対のロールの間の原材料の滞留量を低減することができるので、確実に混練・分散処理された材料を形成することができ、これにより、高品質の材料を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態のロールミルを示す概略図である。
【図2】第1実施形態のロールミルを構成する堰板の構造を示す図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態のロールミルを示す概略図である。
【図4】第2実施形態のロールミルを構成する堰板の構造を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【図5】3本のロールからなる従来のロールミルを示す概略構成図である。
【図6】図5の要部を平面視で示した図である。
【図7】従来のロールミルを構成する堰板の構造を示す図である。
【図8】2本のロールからなる従来のロールミルを示す概略構成図である。
【図9】従来のロールミルにおいて原材料が堰板の側面に沿って上昇し、滞留している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図5から図8で示した構成と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
図1及び図2は、本発明に係る第1実施形態のロールミルを示すものである。
本実施形態のロールミルは、図1に示すように、互いの外周を近接して軸平行に配置した第1ロール6及び第2ロール7と、これら第1及び第2ロール6,7の上部にロール軸に沿う方向に互いに離間して配置した一対の堰板10,10とを備えている。なお、第1ロール6のロール軸をP1とし、第2ロールのロール軸をP2とする。
【0015】
第1ロール6は反時計回りに回転し、第2ロール7は時計回りに回転している。また、第2ロール7の回転速度V2は、第1ロール6の回転速度V1より早く設定されている(V2>V1)。
図1の堰板10は、一対の堰板10,10のうちの一方を示している。この堰板10は、図2(a)に示すように、第1ロール6のロール面上部に沿って近接する第1曲率下端面11と、第2ロール7のロール面上部に沿って近接する第2曲率下端面12とを形成した平板部材である。
【0016】
一方の堰板10は、図2(b)に示すように、第1及び第2曲率下端面11,12を形成した側を薄板部13とし、第1及び第2曲率下端面11,12から離間した側を厚板部14として形成されている。そして、粉体と液体とを混合した原材料Mが接触しない一方の側面15を平面形状とし、原材料Mが接触する他方の側面16に、薄板部13及び厚板部14に直交した単一平面の段差面17が形成されている。また、図示しないが、一対の堰板10,10のうちの他方の堰板10も同一構成とされている。
【0017】
上記構成の一対の堰板10,10は、図1に示すように、第1曲率下端面11を第1ロール6のロール面上部に沿うように近接させ、第2曲率下端面12を第2ロール7のロール面上部に沿うように近接させ、他方の側面16を原材料Mに接触する方向に向け、他方の側面16に設けた単一平面の段差面17が、第1及び第2ロール6,7のロール面上部に上方から対向するように配置される。ここで、段差面17は、図1に示すように、第1ロール6のロール軸P1及び第2ロールのロール軸P2を同一平面に含む仮想平面F1に対して平行となるように設けられている。
【0018】
上記構成のロールミルによると、投入された原材料Mは、第1ロール6及び第2ロール7の互いの逆方向回転により混練・分散処理が行なわれる。ここで、第2ロール7の回転速度V2が第1ロール6の回転速度V1より早く設定されているので(V2>V1)、第1ロール6及び第2ロール7の間の上部に投入された原材料Mは、図1に示す矢印A方向にローリングした状態となる。
【0019】
混練・分散処理が行なわれている原材料Mの一部は、一対の堰板10,10の他方の側面16に沿って上昇していくが、他方の側面16に形成した段差面17に接触することで、一定高さ以上の上昇が規制される。
このように、一対の堰板10,10に形成した段差面17によって原材料Mの上昇が規制され、混練・分散処理されずに滞留する原材料Mの滞留量を低減することができるので、本実施形態のロールミルは、高品質のペースト材料を形成することができる。
また、堰板10の側面16に単一平面の段差面17を形成するだけで、原材料Mの上昇を確実に規制することができる。
【0020】
次に、図3及び図4は、本発明に係る第2実施形態のロールミルを示すものである。本実施形態も、第2ロール7の回転速度V2が、第1ロール6の回転速度V1より早く設定されている(V2>V1)。
本実施形態のロールミルは、図3に示すように、第1及び第2ロール6,7の上部にロール軸に沿う方向に互いに離間して配置した一対の堰板20,20を備えている。
図4の堰板20は、一対の堰板20,20のうちの一方を示している。この堰板20は、図4(a)に示すように、第1ロール6のロール面上部に沿って近接する第1曲率下端面21と、第2ロール7のロール面上部に沿って近接する第2曲率下端面22とを形成した平板部材である。
【0021】
一方の堰板20は、図4(b)に示すように、第1及び第2曲率下端面21,22を形成した側を薄板部23とし、第1及び第2曲率下端面21,22から離間した側を厚板部24として形成されている。そして、粉体と液体とを混合した原材料Mが接触しない一方の側面25を平面形状とし、原材料Mが接触する他方の側面26に、薄板部23及び厚板部24に直交した段差面27が形成されている。
【0022】
この段差面27は、第1曲率下端面21に近接して形成された平面形状の第1段差面27aと、この第1段差面27aに対して鈍角を成して連続し、第2曲率下端面22に向かうように形成された第2段差面27bとを備えている。また、図示しないが、一対の堰板20,20のうちの他方の堰板20も同一構成とされている。
上記構成の一対の堰板20,20は、図3に示すように、第1曲率下端面21を第1ロール6のロール面上部に沿うように近接させ、第2曲率下端面22を第2ロール7のロール面上部に沿うように近接させ、他方の側面26を原材料Mに接触する方向に向け、他方の側面16に設けた段差面27は、第1及び第2ロール6,7のロール面上部に上方から対向するように配置される。
【0023】
ここで、段差面27は、図3に示すように、第1段差面27aが、第1ロール6のロール軸P1及び第2ロールのロール軸P2を同一平面に含む仮想平面F1に対して平行となり、第2段差面27bが、第2ロール7側に傾きながら仮想平面F1に交差するように設けられる。
上記構成のロールミルによると、投入された原材料Mは、第1ロール6及び第2ロール7の互いの逆方向回転により混練・分散処理が行なわれる。ここで、第2ロール7の回転速度V2が第1ロール6の回転速度V1より早く設定されているので(V2>V1)、第1ロール6及び第2ロール7の間の上部に投入された原材料Mは、図3に示す矢印A方向にローリングした状態となる。
【0024】
混練・分散処理が行なわれている原材料Mの一部は、一対の堰板20,20の他方の側面26に沿って上昇していくが、他方の側面26に形成した第1段差面27aに接触することで、一定高さ以上の上昇が規制される。また、図3の矢印A方向にローリングした原材料Mは、第2ロール7側に傾いて形成された第2段差面27bに接触することで第1ロール6及び第2ロール7の間に戻されていく。
【0025】
このように、一対の堰板20,20に形成した段差面27の第1段差面27aによって原材料Mの上昇が規制され、段差面27の第2段差面27bによって上昇した原材料Mが第1ロール6及び第2ロール7の間に戻されていくので、混練・分散処理されずに滞留する原材料Mの滞留量を低減することができ、本実施形態のロールミルも、高品質のペースト材料を形成することができる。
【0026】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、2本のロール6,7を備えたロールミルについて説明したが、本発明の要旨がこれに限定されるものではなく、例えば、始点ロール、中間ロール及び終点ロールを備えた3本のロールミルであっても、始点ロール及び中間ロールの間に配置した一対の堰板を上記実施形態と同一の構造とすることで、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0027】
6…第1ロール、7…第2ロール、10,20…堰板、11,21…第1曲率下端面、12,22…第2曲率下端面、13,23…薄板部、14,24…厚板部、15,25…一方の側面、16,26…他方の側面(接触側面)、17,27…段差面、27a…第1段差面、27b…第2段差面、A…原材料のローリング方向、M…粉体と液体を混合した原材料、V1…第1ロールの回転速度、V2…第2ロールの回転速度、P1…第1ロールのロール軸、P2…第2ロールのロール軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のロールを軸平行に隣接配置し、隣接する一対のロールの間の両端を一対の堰板で閉塞し、前記一対の堰板の間から前記一対のロール間に原材料を投入して混練・分散処理を行なうロールミルにおいて、
前記一対の堰板の前記原材料が接触する接触側面に、前記原材料が前記接触側面に沿って滞留するのを防止する滞留防止部を設けたことを特徴とするロールミル
【請求項2】
前記滞留防止部は、前記一対のロールのロール面に対面するように前記接触側面に形成され、前記接触側面に沿って上昇してきた前記原材料が接触することで当該原材料の上昇を規制する段差面であることを特徴とする請求項1記載のロールミル。
【請求項3】
前記段差面は、前記一対のロールの前記ロール面に平行に対面する単一の平面であることを特徴とする請求項2記載のロールミル。
【請求項4】
前記段差面は、前記一対のロールの前記ロール面に対して平行に対面している第1段差面と、この第1段差面に連続して形成され、前記一対のロールの回転速度差により前記一対のロールの間で発生した前記原材料の流れを阻止する位置に設けた第2段差面とを備えていることを特徴とする請求項2記載のロールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−24680(P2012−24680A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164655(P2010−164655)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】