説明

ロール仕上機、及びロール仕上げ方法

【課題】ロール仕上機を改良して、被処理物の歓送を促進し、処理容量を格段に増加っさせる。
【解決手段】加熱ロール11は耐熱ベルト12を巻き掛けられ、矢印L方向に回転している。上記加熱ロール11に対向離間させてバキュームボックス13を設ける。該バキュームボックスが加熱ロール11に対向している面は多孔板13aによって構成する。ブロワ15によって前記バキュームボックス13内を排気して減圧させると、大気が被処理物8に接触しつつ矢印γ方向に流動し、被処理物8の表面付近の蒸気分圧を減少させる、蒸気分圧の降下によって蒸発が促進され、被処理物8が速やかに乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカレンダータイプロール仕上機のように、回転している加熱ロールと該加熱ロールに巻き掛けられたベルトとの間に被処理物を挿入してロール仕上げする技術に係り、その能率向上に関するものである。ただし、カレンダータイプ以外のロール仕上機に適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
図4はカレンダータイプロール仕上機の従来例を示し、動作方向を表す矢印を付記した模式的な正面図である。
この例は3個の主ロールを具備している。すなわち、第1主ロール1と、第2主ロール2と、第3主ロール3とを有していて、それぞれの主ロールには第1耐熱ベルト4、第2耐熱ベルト5、第3耐熱ベルト6が巻き掛けられている(ただし、主ロールの設置個数は3個とは限らず、一般的には2〜5個である)。
【0003】
第1主ロール1は、蒸気を供給して加熱されるとともに、付記矢印Rのように右回り(時計方向)に回転駆動されている。
これに巻き掛けられた第1耐熱ベルト4は付記矢印Lのように左回り(反時計方向)に回転している。
第2主ロール2および第3主ロール3は付記矢印Lのように左回りに回転駆動され、これらに巻き掛けられた第2耐熱ベルト5および第3耐熱ベルト6はそれぞれ付記矢印Rのように右回りに回転している。
【0004】
洗濯・脱水を済まされてロール仕上げ前の被処理物8Aは矢印aのように送り込みコンベア7によって搬入され、矢印bのように「第1主ロール1と圧迫ロール9との間」に差し込まれる。
被処理物8Aは圧迫ロール9に押圧されてシワを伸ばされ、高温の第1主ロール1に接触して乾燥せしめられる。
この例では4本の圧迫ロール9が設けられている。該圧迫ロールの設置個数は、一般に
4〜7本である。
被処理物8Aは第1主ロール1,第2主ロール2,第3主ロール3を順次に通過しつつ、耐熱ベルトによって主ロールに圧し付けられ、昇温している主ロールによって加熱され、プレス仕上げされて、被処理物8Bのように搬出される(矢印c)。
符号10を付して示したのはガイドテープであって、被処理物8Aの巻き付きを防止している。
【0005】
ロール仕上機に関し、特許文献1として記載する特開2006−138022号公報「洗濯済み被処理物のロール仕上機及び同ロール仕上方法」には、皺(しわ)を生じない技術が提案されている。
また、特許文献2として記載する特開2005−205065号公報「ロール仕上機における巻付き防止方法及びエアー式巻付き防止装置」には、被処理物がロールに巻き付くことを防止する技術が提案されている。
しかし、ロール仕上機の処理能率(処理量/時間)を向上させるための新規な提案や、ロール仕上機の形状寸法・重量・製作コストを低減するための新規な提案は未だ為されていない。
【特許文献1】特開2006−138022号公報
【特許文献2】特開2005−205065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗濯工場には洗濯機・脱水機・ロール仕上機がシリーズに設置されていて連続一貫作業が行われる。
洗濯機や脱水機のが性能が向上して処理容量(単位時間当たり処理量)が増大したので、仕上機の処理容量増加が要請されている。
単に処理容量を増加させるだけでなく、機械設置面積を拡大せず、しかも機械装置の重量増加や製作コスト増加を極力抑制することが求められる。
【0007】
図4に示した従来例のロール仕上機を見れば理解されるように、処理量を増加させようとすると、(a)主ロールの加熱温度を上昇させること。及び(b)主ロールの回転速度を上昇させること。が考えられる。
しかし、主ロールの加熱温度上昇には自ずから限界が有る。すなわち、主ロールは一般に蒸気で加熱されていっるので、蒸気温度以上の高温にはできない。もし仮に電熱などの手段を併用しようとしても、繊維製品である被処理物の耐熱性を超える高温にすることはできない。
また、主ロールの回転速度を上昇させると被処理物の通過時間が短縮されて乾燥が不十分になる。
従って、従来技術の範囲内で処理量を増加させようとすると、主ロールの形状を拡大したり、主ロールの設置本数を増加させたりせざるを得ない。
主ロールの形状寸法を拡大したり、主ロール設置本数を増加させたりすると、必然的にロール仕げ機全体の形状寸法や重量や設置所要面積を増加させ、これに伴って製作コストを上昇させる。
【0008】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、
機械装置の設置所要面積を増加させることなく、重量増加や製作コスト上昇を僅少に抑制し、しかも処理量を格段に増加せしめ得るロール仕上機、及びロール仕上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理は、被処理物付近の通風状態を改良して、被処理物から発生した蒸気を速やかに排除し、被処理物付近の空気中の蒸気分圧を低下させることによって蒸発を促進する。
本発明の1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次のとおりである。この段落においては、理解が容易なように図面参照符号を括弧書で付記してあるが、この付記は本発明の構成を限定するものではない。
(図1(A)参照)加熱ロール11の外周面の過半部(点αから左回りに点βまで)に耐熱ベルト12が巻き掛けられている。
上記の耐熱ベルト巻き掛けられた区域に対向離間させてバキュームボックス13が設置されている。符号13aを付して示したのは多孔板である。
上記バキュームボックス13内の空気(蒸気を含んでいる)を、ブロワ15によって排出する。
(図1(B)参照)加熱ロール11と耐熱ベルト12との間に挟み付けられている被処理物8から発生した蒸気は、多孔板13aを通ってバキューム吸引され、速やかに排除される。このため、被処理物8からの蒸発が促進される。
【0010】
上述の原理に基づく具体的な構成として請求項1の発明に係るロール仕上機は、加熱ロール(主ロール)と、該加熱ロールに巻き掛けられたベルトとを備えたロール仕上機において、
加熱ロールがベルトを巻き掛けられている区域に対向離間するバキュームボックスと、
上記バキュームボックス内の空気(蒸気を含む)を排出する手段とが設置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1の発明装置の構成要件に加えて、
前記バキュームボックスが加熱ロールに対向している面の少なくとも1部分が多孔板によって構成されており、該多孔板は加熱ロールの外周面と同心の凹円柱面をなしていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1または請求項2の発明の構成要件に加えて、
前記バキュームボックスが加熱ロールに対向している縁の少なくとも1部分(望ましくは、加熱ロールの軸芯に直交する縁)に、耐熱性の柔軟なシール部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1ないし請求項3の発明の構成要件に加えて、
前記のバキュームボックスに、加熱ロールとの間の間隙寸法を増減調節する手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明に係るロール仕上機の構成は、前記請求項1の発明構成要件に加えて、
1個の加熱ロールに対して1個のバキュームボックスが設けられており、
又は、1個の加熱ロールに対して複数個のバキュームボックスが設けられるとともに、該複数個のバキュームボックスの吸込み側の面が相互に隣接して加熱ロールの外周面の1部について、その長さ方向の大半を覆っていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明に係るロール仕上げ方法は、
回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられたベルトとの間に被処理物を挿入する方式のロール仕上げ方法において、
加熱ロールがベルトを巻き掛けられている区域の少なくとも1部分を覆ってバキューム吸引手段を設け、
上記バキューム吸引手段によって被処理物から発生する蒸気を速やかに排除して、該被処理物の乾燥を促進することを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明に係るロール仕上げ方法は、前記請求項6の発明方法の構成要件に加えて、
前記バキューム吸引手段が加熱ロールに対向している箇所に空気吸入用の開口を設け、かつ、この開口付近に空気流量を制御する手段(例えば多孔板)を設けて、空気の流量分布を均一ならしめることを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明に係るロール仕上げ方法は、前記請求項6または請求項7の発明方法の構成要件に加えて、
加熱ロールとベルトとの間に挟み込まれている状態の被処理物の厚さ寸法に応じて、
前記バキューム吸引手段と加熱ロール外周面との間の間隙寸法を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明装置を適用すると、加熱ロールに対向させてバキュームボックスが設けられ、かつこのバキュームボックス内の空気(蒸気を含んでいる)を排出する手段が設けられているので、加熱ロールの表面に接している被処理物から発生した蒸気が速やかにバキューム吸引されて排除される。
このため、被処理物の表面に接している空気中の蒸気分圧が低下して、蒸発が促進される。
蒸発の促進により、加熱ロールの形状寸法や温度が同じでも、ロール仕上の能率が格段に向上する。
この発明装置の必須構成部材はバキュームボックスと、空気排除手段(例えばブロワと排気管)であるから、ロール仕上機の設置所要面積を増加させず、ロール仕上機の重量や製作コストの増加は僅少である。
本発明装置の適用による処理能率の上昇が非常に大きいので、処理容量/機械重量、処理容量/製作コスト、処理容量/設置所要面積、及び処理容量/消費エネルギーが格段に増大する。
【0019】
請求項2の発明装置を請求項1の発明に併せて適用すると、多孔板が空気流量の分布を均一ならしめるので、被処理物が均一に乾燥し、ロール仕上の処理むらを生じる虞れが無い。
【0020】
請求項3の発明装置を請求項1又は請求項2の発明装置に併せて適用すると、
バキュームボックスと加熱ロールとの間がフレキシブルなシール部材によって緩やかにシールされる。
このため、被処理物に接触せずにバイパスされる吸入空気流量が抑制され、吸入空気の有効利用率が向上する。
しかも、前記のシール部材がフレキシブルであり、シール間隔が緩やかであるから、被処理物に付着しているボタンなどの硬質の部材に対して柔軟に順応することができ、トラブル発生が未然に防止される。
【0021】
請求項4の発明装置を請求項1ないし請求項3の発明装置に併せて適用すると、
バキュームボックスと加熱ロールとの間隔寸法が調節可能であるから、被処理物の種類に応じて、適正な状態で作動させることができる。これによって、ロール仕上機の汎用性を拡大される。
【0022】
請求項5の発明装置を適用することによっても、前記請求項1におけると同様の作用効果が得られる。
【0023】
請求項6の発明方法を適用すると、
加熱ロールがベルトを巻き掛けられている区域、すなわち加熱ロールとベルトとの間に被処理物が挟み付けられてプレスされる区域がバキューム吸引手段で覆われているので、該バキューム吸引手段によって「被処理物から発生する蒸気」を速やかに排除することができる。
これによって、被処理物の表面に接触している空気中の蒸気分圧が低下し、蒸発が促進される。
このため、小形軽量の加熱ロールを用いて大量の被処理物(洗濯・脱水された洗濯物)を迅速にロール仕上げすることができる。
【0024】
請求項7の発明方法を前記請求項6の発明方法に併せて適用すると、被処理物に接触する空気の流量分布が均一になり、乾燥の進行も均一になる。このため、処理物に仕上むらが発生しない。
【0025】
請求項8の発明方法を前記請求項6または請求項7のの発明方法に併せて適用すると、
被処理物(洗濯・脱水された洗濯物)の種類に応じて適正なロール仕上げを行なうことができる。
すなわち、ハンカチのように薄手の被処理物であっても無効な空気流をバイパスさせず、ズボンのように厚手の被処理物であっても引っ掛からないで円滑に通過させることができ、汎用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明に係るロール仕上機の1実施形態を示し、(A)は要部を模式的に描いた正面断面図であり、(B)は上記(A)図に仮想線の楕円で囲んで示した部分Bの拡大詳細断面図である。
符号11を付して示したのは加熱ロールであって、前掲の図4(従来例)における第1〜第3主ロール(符号1〜3)の何れか一つに対応する部材である。
圧迫ロール9と対比して名付けると主ロールとなり、その機能に基づいて名付けると加熱ロールとなる。
本発明において加熱ロールと主ロールとは実質的に同じ部材である。
【0027】
(図1(A)参照)本例における加熱ロール11は矢印Lのように左回り(反時計方向)に回転しており、被処理物(本図1(A)において図示省略)は、点α付近で加熱ロール11と耐熱ベルト12との間に挟み込まれ、点β付近で放出される。
すなわち点αから左回りに点βに至る間が被処理物のプレス加工区間である。
このプレス加工区域は「耐熱ベルト12が加熱ロール11に巻き掛けられている区域」と同じである。
上記のプレス加工区間(α〜β)の一部に対向・離間させてバキュームボックス13が配置されている。
【0028】
前記バキュームボックス13が加熱ロール11に対向している面は、該加熱ロールと同心の凹円柱面に成形された多孔板13aによって構成されている。
上記バキュームボックス13内の空気は空気排出手段(本例ではブロワ15)により、排気管14を介して減圧されている。
(図1(B)を併せて参照)耐熱ベルト12と加熱ロール11との間に挟まれた被処理物8は、耐熱ベルトや加熱ロールと一緒に矢印L方向に回転し、多孔板13aの前面を通過する。
バキュームボックス13内がバキューム吸引されているので、付近の空気は矢印γのように流動する。
【0029】
前記矢印γの行先はブロワ15の吸入口である。該矢印γの上流側は、「バキュームボックス13が加熱ロール11に接近している縁の付近であり、この付近の空気が被処理物8に接触しつつ吸い寄せられて多孔板13aを通過する。
加熱ロール11によって加熱された被処理物8に含有されている液体(例えば水)は蒸発しようとするが、直前に蒸発した液体の蒸気が充満している(蒸気の分圧が高い)と蒸発を妨げられる。
この状態で前記矢印γのように通気されると、被処理物に接している空気中の蒸気分圧が低下して、蒸発が促進される。
【0030】
(図1(A)参照)被処理物(本図において図示を省略)は点αで加熱ロール11に接し、点αから点δまで進行する間に圧迫ロール9で皺(しわ)を伸ばされつつ加熱ロールによって余熱され、蒸発し易い温度になって点δを通過し、バキュームボックス13の多孔板13aに差しかかる。
被処理物は、多孔板に対向しつつ矢印L方向に通過し、この間に含有液体(本例においては水)を蒸発させる。
【0031】
本図1に示した実施形態に係るロール仕上機の主要部材を抽出して描いた外観斜視図は図2のごとくである。
本例においては、バキュームボックス13が加熱ロール11に対向している縁に、耐熱性の柔軟なシール部材としてのフェルト16が取り付けられ、比較的緩やかにシールされている。上記の比較的緩やかとは、僅少のリークは許容される意である。
本発明において耐熱性とは、蒸気によって加熱されている加熱ロールに接触するに耐え得る意である。
上記のようにシールすると、空気の無効なバイパス流動が抑制される。その上、被処理物(本図2において図示省略)の厚さ寸法の変化に対する許容性が増加する。本発明を実施する際、前記のシール部材はフェルトに限らず、柔軟な耐熱性の材料を適宜に選定して用いることができる。
【0032】
図示を省略するが、バキュームボックス13と加熱ロール11との間隔寸法を調節し得る手段を設けておくと、被処理物の種類の変化に対して順応することができ、ハンカチのように薄手の被処理物でもズボンのように厚手の被処理物であってもロール仕上げできて汎用性が大きい。
本発明を実施する場合、前記のバキュームボックス13は文字どおりに函状の部材であることを要しない。例えば家庭用電気掃除機の吸込口(ノズル)に類似した部材の複数個を配列しても同様の作用効果が得られる。配列区域は、図2の例においてバキュームボックス13が加熱ロール11に対向している区域と同様にする。
すなわち、加熱ロール11の外周面の1部を、ほぼその全長に亙って覆うようにすれば良い。
上述のように複数個の吸込口(ノズル)を配列すると、図1の実施形態に示した多孔板13aを省略することができる。
【0033】
(図1(B)参照)多孔板13aは、加熱ロール11の外周面と同心の凹円柱面に成形される。その曲率半径rは、加熱ロール11の半径寸法に対して被処理物8の厚さ寸法tを加えて設定される。
ただし前記の被処理物厚さ寸法tは一定ではないので、次のように設定することが推奨される。
(a)予想される被処理物厚さ寸法の範囲内で、その最大値をとる。又は、
(b)多孔板13aの位置を調節できるように構成する(バキュームボックス13と加熱ロール11との間の間隔寸法Tを増減し得る調節機構を設ける)。
【0034】
図3は、前記の実施形態に係るロール仕上機における蒸発状態を、従来例のロール仕上機における蒸発状態と比較した実験成績を示す図表である。
縦軸は洗濯物内の水分含有率である。符号Cを付して示した値は遠心脱水機で脱水した状態の水分含有率、すなわち、ロール仕上げを開始する状態である。
符号Nを付して示したのは自然乾燥を完成した状態、すなわち、ロール仕上げを完了したと判定される状態である。
横軸は時間(単位:秒)である。
【0035】
カーブdは従来例(図4参照)のロール仕上機における被処理物の乾燥の進行状態を、カーブeは実施形態(図1参照)のロール仕上機における乾燥の進行状態を、それぞれ表している。
洗濯・脱水を終えた状態の洗濯物をロール仕上機に投入した場合、従来例においては自然乾燥と同様の状態まで乾くのに約3秒間を要したのに比して、本実施形態においては約1秒間で乾いていることが、この図表から読み取られる。
これは1例であるが、本発明の適用により、乾燥所要時間が例えば1/3というように格段に短縮されることが実証された。
【0036】
本発明の応用例として、次のような形態が考えられる。
例えば前掲の図4に示した従来例は3本の主ロール1を備えているが、この主ロールに本発明に係るバキュームボックス、排気管、及びブロワを併設すると、主ロールの設置数は1個で足りることになる。
上述の考察から明らかなように、本発明の適用によってロール仕上機の処理能率を格段に(例えば3倍に)増大させ得るということは、ロール仕上機の形状,寸法,重量,および製作コストを格段に低減せしめ得ることを意味する。
先に述べたように、洗濯工場が洗濯機と脱水機と仕上機とによって構成されて連続一貫操業されていること、及び、洗濯機や脱水機の処理容量が増大していることを勘案すると、本発明によるロール仕上機の処理容量増大は実用的価値が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るロール仕上機の1実施形態を示し、(A)は要部を模式的に描いた正面断面図、(B)は上記(A)図に仮想線楕円で囲んで示した部分Bの拡大詳細断面図
【図2】前記の実施形態に係るロール仕上機の主要構成部材を抽出して模式的に描いた斜視図
【図3】前記の実施形態に係るロール仕上機における被処理物の含有水分の減少状態を、従来例に係るロール仕上機における被処理物の含有水分の減少状態と比較した実験成績を示す図表
【図4】従来例に係る3本ロール形式の仕上機を示し、運転状態を説明するための矢印を付記した正面図
【符号の説明】
【0038】
1…第1主ロール
2…第2主ロール
3…第3主ロール
4…第1耐熱ベルト
5…第2耐熱ベルト
6…第3耐熱ベルト
7…送り込みコンベア
8…被処理物
9…圧迫ロール
10…ガイドテープ
11…加熱ロール
12…耐熱ベルト
13…バキュームボックス
13a…多孔板
14…排気管
15…ブロワ
16…フェルト
a…被処理物の搬入を表す矢印
b…被処理物の差し込みを表す矢印
c…被処理物の搬出を表す矢印
C…遠心脱水レベル
d…従来例における含有水分量の変化を表すカーブ
e…実施形態における含有水分量の変化を表すカーブ
L…左回り(反時計方向)の回転方向を表す矢印
N…自然乾燥レベル
r…多孔板の曲率半径
R…右回り(時計方向)の回転方向を表す矢印
t…被処理物の厚さ寸法
T…多孔板と加熱ロールとの間隔寸法
α…プレス開始箇所
β…プレス終了箇所
γ…通気方向を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられたベルトとを備えたロール仕上機において、 加熱ロールがベルトを巻き掛けられている区域に対向離間するバキュームボックスと、
上記バキュームボックス内の空気を排出する手段とが設置されていることを特徴とするロール仕上機。
【請求項2】
前記バキュームボックスが加熱ロールに対向している面の少なくとも1部分が多孔板によって構成されており、該多孔板は加熱ロールの外周面と同心の凹円柱面をなしていることを特徴とする、請求項1に記載したロール仕上機。
【請求項3】
前記バキュームボックスが加熱ロールに対向している縁の少なくとも1部分に、耐熱性の柔軟なシール部材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載したロール仕上機。
【請求項4】
前記のバキュームボックスに、加熱ロールとの間の間隙寸法を増減調節する手段が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか一つに記載したロール仕上機。
【請求項5】
1個の加熱ロールに対して1個のバキュームボックスが設けられており、
又は、1個の加熱ロールに対して複数個のバキュームボックスが設けられるとともに、該複数個のバキュームボックスの吸込み側の面が相互に隣接して加熱ロールの外周面の長さ方向の大半を覆っていることを特徴とする、請求項1に記載したロール仕上機。
【請求項6】
回転している加熱ロールと、該加熱ロールに巻き掛けられたベルトとの間に被処理物を挿入するロール仕上げ方法において、
加熱ロールがベルトを巻き掛けられている区域の少なくとも1部分を覆ってバキューム吸引手段を設け、
上記バキューム吸引手段によって被処理物から発生する蒸気を排除して、該被処理物の乾燥を促進することを特徴とするロール仕上げ方法。
【請求項7】
前記バキューム吸引手段が加熱ロールに対向している箇所に空気吸入用の開口を設け、かつ、この開口に空気流量を制御する手段を設けて、吸入空気の流量分布を均一ならしめることを特徴とする、請求項6に記載したロール仕上げ方法。
【請求項8】
加熱ロールとベルトとの間に挟み込まれている状態の被処理物の厚さ寸法に応じて、
前記バキューム吸引手段と加熱ロールとの間の間隙寸法を調整することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載したロール仕上げ方法。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−55092(P2008−55092A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238689(P2006−238689)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】