説明

ロール状積層連続シート

【課題】帯状をなす上層シートおよび下層シートを積層した積層連続シートにおいて、接合用エンボス加工による外観の見栄えの低下を大幅に改善し得るロール状積層連続シートを提供する。
【解決手段】ロール状積層連続シートは、上層シート11の幅方向と長手方向とに沿って連続的に反復するエンボスパターンPを画成するように上層シート11に形成された多数の第1エンボス部11aと、上層シート11と下層シート12とが密着するような接合領域をそれぞれ画成し、上層シート11および下層シート12を一体的に接合するための上部接合用エンボス部11bおよび下部接合用エンボス部12bとを具え、上部および下部接合用エンボス部11b,12bの少なくとも一方が積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜した方向に沿ってそれぞれ一定間隔で配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状をなす上層シートおよび下層シートを積層してなる積層連続シートがロール状に巻回されたロール状積層連続シートに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールやキッチンロールなどの衛生用紙がロール状に巻回されたロール状衛生用紙においては、用紙自体にある程度の柔軟性や肌触りの良さが要求されることが多い。このような要求を満たすため、より薄いシートを複数枚積層してなる積層連続シートが採用される。この場合、積層状態にある帯状をなす複数枚のシートが相互に剥離しないように、積層連続シートに機械的なエンボス加工やスタンピングを施してこれらを一体的に接合する技術が特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−227099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層状態にあるシートが相互に剥離しないように、これらにエンボス加工やスタンピング(以下、これらの加工を一括してエンボス加工と便宜的に記述する)を施す場合、エンボス加工位置が連続シートの幅方向に関して常に一定位置で連続していると、不具合が生ずる。すなわち、巻き取られたロール状積層連続シートの外周面の一部がエンボス加工の積み重なりによって環状に膨出する結果、ロール状積層連続シートの外観の見栄えが損なわれてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1では積層連続シートを接合するための接合用エンボス加工が施されていない積層連続シートの表面全域にエンボス模様が形成されるように、デザイン用のエンボス加工を施すようにしている。さらに、このデザイン用のエンボス加工によって形成される個々のエンボス部よりも接合用エンボス加工によって形成されるエンボス部の大きさを小さく設定することにより、外観の見栄えの低下を抑制している。
【0006】
しかしながら、特許文献1にて提案された接合用エンボス部は、デザイン用のエンボス部の外観形状と大きく相違する上にこれらが別々の領域に形成されているため、接合用エンボス加工領域の存在を容易に視認可能であることに変わりがない。従って、外観の見栄えの改善という点では物足りないものであって、さらなる改良が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、帯状をなす上層シートおよび下層シートを積層した積層連続シートにおいて、接合用エンボス加工による外観の見栄えの低下を大幅に改善し得るロール状積層連続シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
帯状をなす上層シートおよび下層シートを積層してなる積層連続シートがロール状に巻回された本発明によるロール状積層連続シートは、前記上層シートの幅方向と長手方向とに沿って連続的に反復するエンボスパターンを画成するように前記上層シートに形成された多数の第1エンボス部と、前記上層シートと前記下層シートとが密着するような接合領域を画成するための上部接合用エンボス部と、この上部接合用エンボス部と共に前記上層シートと前記下層シートとが密着するような接合領域を画成し、前記上部接合用エンボス部とで前記上層シートおよび前記下層シートを一体的に接合するための下部接合用エンボス部とを具え、前記上部および下部接合用エンボス部の少なくとも一方が積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜した方向に沿ってそれぞれ一定間隔で配列していることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、上部接合用エンボス部および下部接合用エンボス部の接合領域にて上層シートと下層シートとが一体的に接合される。上部接合用エンボス部は、第1エンボス部により形成されるエンボスパターン中に紛れ込んだ状態となる。
【0010】
なお、本明細書において記述される「接合用エンボス」という記述は、エンボス加工以外に加工対象物の変形を伴うスタンピングなどの加工形態による状態を含むものである。従って、本発明においては「接合用エンボス」を形成するためのエンボス加工ロールに代えてスタンピングロールなどを用いて「接合用エンボス」を加工対象物に形成することが可能である。
【0011】
積層連続シートの長手方向に沿って隣り合う少なくとも一方の接合用エンボス部による接合領域の間隔が積層連続シートの長手方向に沿った個々の整合領域の長さ以下であることが好ましい。
【0012】
また、積層連続シートの幅方向に対して傾斜する少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔と、積層連続シートの長手方向に対して傾斜する少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔とが同一であってよい。
【0013】
上部および下部接合用エンボス部を積層連続シートの長手方向に沿ってその幅方向両側縁部にそれぞれ近接して形成することができる。
【0014】
上部および下部接合用エンボス部の他方が連続した平面状または溝状をなすものであってよい。
【0015】
他方の接合用エンボス部による接合領域は、上層シートの厚み方向に関し、第1エンボス部が形成されていない上層シートの表面と同じ位置にあってよい。
【0016】
第1エンボス部を下層シート側に突出させることが好ましい。
【0017】
個々のエンボスパターンは、第1エンボス部が同心円状に配列した点対称形状をなすものや、回転対称形状あるいは螺旋状であってよい。
【0018】
エンボスパターンの配列方向を積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜させることが好ましい。
【0019】
上層シート側に突出するように積層連続シートの幅方向と長手方向とに沿って下層シートに所定間隔毎に形成される円錐台状をなす多数の第2エンボス部をさらに具えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロール状積層連続シートによると、第1エンボス部により形成されるエンボスパターン中に、上部接合用エンボス部が紛れ込んだ状態となる。このため、接合用エンボス部の視認性が従来のものよりも低下し、接合用エンボス部を形成したことによるロール状積層連続シートの見栄えの低下を大幅に抑制することができる。しかも、上部および下部接合用エンボス部の少なくとも一方が積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜した方向に沿ってそれぞれ一定間隔で配列しているので、エンボス加工中におけるエンボス加工ロールの周期的振動を抑制することができる。
【0021】
積層連続シートの長手方向に沿って隣り合う一方の接合用エンボス部による接合領域の間隔を個々の接合領域の長さ以下に設定した場合、そのエンボス加工中でのエンボス加工ロールの周期的振動を防止して騒音の発生をさらに抑制することができる。しかも、その交換寿命を延ばすことも可能となる。
【0022】
積層連続シートの幅方向に対して傾斜する少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔と、積層連続シートの長手方向に対して傾斜する少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔とが同一の場合、そのためのエンボス加工ロールの製造が容易となる。
【0023】
接合用エンボス部を積層連続シートの長手方向に沿ってその幅方向両側縁部にそれぞれ近接して形成した場合、剥離しやすい連続積層シートの幅方向両側縁が接合された状態となり、上層シートと下層シートとの剥離をより確実に防止することができる。
【0024】
上部および下部接合用エンボス部の他方が連続した平面状または溝状をなす場合、上層シートと下層シートとの密着性をより高めることができる。
【0025】
上層シートの厚み方向に関し、他方の接合用エンボス部による接合領域を第1エンボス部が形成されていない上層シートの表面と同じ位置にした場合、上部接合用エンボス部による上層シートの変形を少なくすることができる。この結果、接合用エンボス部の視認性がさらに低下し、接合用エンボス部を形成したことによるロール状積層連続シートの見栄えの低下をより一層抑制することができる。
【0026】
第1エンボス部が下層シート側に突出している場合、積層連続シートの表面の肌触りを良好に保つことができる。
【0027】
個々のエンボスパターンが第1エンボス部を同心円状に配列した点対称形状をなす場合、接合用エンボス部をエンボスパターンにさらに紛れ込ませた状態にすることができる。この結果、接合用エンボス部を形成したことによる見栄えの低下をさらに抑制することが可能である。
【0028】
エンボスパターンの配列方向が積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜している場合も同様に、接合用エンボス部をエンボスパターンにさらに紛れ込ませた状態にすることができる。この結果、接合用エンボス部を形成したことによる見栄えの低下をさらに抑制することが可能である。
【0029】
上層シート側に突出するように積層連続シートの幅方向と長手方向とに沿って下層シートに所定間隔毎に多数の第2エンボス部を形成した場合、連続積層シートの柔軟性および肌触りをさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるロール状積層連続シートをトイレットロールに適用した一実施例の外観を表す立体投影図である。
【図2】図1に示したトイレットロールを構成する積層連続シートの正面図である。
【図3】図2中のIII−III矢視に沿った拡大断面図である。
【図4】接合用エンボス部を加工するためのエンボス加工ロールの外周部を展開した平面図である。
【図5】図3に対応した接合用エンボス部の他の実施形態を模式的に表す拡大断面図である。
【図6】図4に示したエンボス加工ロールの外周部の拡大断面図である。
【図7】図1に示したトイレットロールの製造設備の一部を模式的に表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によるロール状積層連続シートをトイレットロールに応用した一実施形態について、図1〜図6を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態に限らず、例えばキッチンロールなどのように、帯状をなす下層シートおよび上層シートを積層してなる積層連続シートがロール状に巻回されたあらゆるロール状積層連続シートに対して応用することができる。
【0032】
本実施形態におけるトイレットロールの外観を図1に示し、その積層連続シートの一部の正面形状を図2に示し、そのIII−III矢視に沿った断面形状を抽出拡大して模式的に図3に示す。本実施形態におけるトイレットロール10は、2枚のティシュ11,12を重ね合わせた積層連続シート13を円筒状の巻き芯14に所定長巻回したものである。本実施形態においては、一方のティシュ(以下、これを表面ティシュと記述する)11が本発明における帯状の上層シートに対応し、他方のティシュ(以下、これを裏面ティシュと記述する)12が本発明における帯状の下層シートに対応する。
【0033】
なお、本実施形態では2枚のティシュ11,12を重ね合わせて積層連続シート13を構成するようにしたが、上層シートと下層シートとの間にさらに1枚以上のシートを重ね合わせて積層連続シートを構成するようにしてもよい。つまり、本発明における積層連続シートは、少なくとも上層シートと下層シートとを積層したものであって、3枚以上のシートを積層したものを包含することに注意されたい。
【0034】
表面ティシュ11には、裏面ティシュ12との重ね合わせ面15側に突出する多数の第1エンボス部11aが形成されている。このように、第1エンボス部11aを表面ティシュ11の表面から裏面ティシュ12側に突出させたことにより、重ね合わせ面15と反対側の表面ティシュ11の表面の手触りを良好に保つことができる。個々の第1エンボス部11aは、頂部の径が1mm,高さが0.8mm,頂角が40度の円錐台形状をなしている。しかしながら、このような寸法形状に限定されるわけではない。これら第1エンボス部11aは、表面ティシュ11の幅方向(図2中、左右方向)と長手方向(図2中、上下方向)とに沿って連続的に反復するエンボスパターンPを画成する。本実施形態における個々のエンボスパターンPは、図2中、二点鎖線で囲まれた一辺が約28.5mmのほぼ正方形の領域を占めるように設定され、第1エンボス部11aが同心円状に配列した点対称形状をなす。本実施形態では、平均すると1cm2あたり約21個の第1エンボス部11aが表面ティシュ11に配されるような密度となっている。しかしながら、このような密度に限定されるわけではない。また、これらエンボスパターンPの配列方向は、図2から明らかとなるように、積層連続シート13の幅方向および長手方向に対してそれぞれわずかに(図示例では7.5度)傾斜している。
【0035】
本実施形態では、個々のエンボスパターンPがほぼ正方形の領域を占めるように設定したが、正三角形の領域を占めるように設定し、これらを稠密状態で配列させるようにしてもよい。また、これらのエンボスパターンが第1エンボス部11aを一定間隔で螺旋状に配列させたものや、あるいは任意の曲線に沿って第1エンボス部11aを回転対称形状に配列させたものであってもよい。
【0036】
裏面ティシュ12には、表面ティシュ11との重ね合わせ面15側に突出するように裏面ティシュ12の幅方向および長手方向に対して所定角度(図示例では45度)傾斜した方向に沿って配列する多数の第2エンボス部12aが所定間隔毎に形成されている。表面ティシュ11と同様に、第2エンボス部12aを裏面ティシュ12の表面から表面ティシュ11側へと突出させたことにより、重ね合わせ面15と反対側の裏面ティシュ12の表面の手触りを良好に保つことができる。個々の第2エンボス部12aは、頂部の径が0.4mm,高さが0.75mm,頂角が40度の円錐台形状をなし、1cm2あたり約60個の密度にて裏面ティシュ12に配されている。従って、配列方向に沿って隣接する第2エンボス部12aの間隔は、それぞれ約1.3mmである。しかしながら、これらの数値に限定されるわけではない。
【0037】
このように、表面ティシュ11と裏面ティシュ12とにこれらの重ね合わせ面15側に突出するエンボス部11a,12aを形成したことにより、積層連続シート13の表裏両面の手触りの良さと相俟ってその柔軟性を向上させることができる。
【0038】
表面ティシュ11と裏面ティシュ12とを重ね合わせた状態でこれらを一体的に接合する接合領域Cを画成する接合用エンボス部11b,12bは、積層連続シート13の幅方向両側縁に近接して形成されている。これにより、積層連続シート13の幅方向両側縁部からの表面ティシュ11と裏面ティシュ12との剥離を抑制することができる。また、接合領域Cが第1エンボス部11aおよび第2エンボス部12aを含む積層連続シート13の厚み範囲内に形成され、接合用エンボス部11b,12bが積層連続シート13の表裏両面から外側に突出していない状態となっている。このため、外周面の一部が接合用エンボス加工の積み重なりによって環状に膨出する従来のトイレットロールの如き現象が発生せず、ロール状積層連続シートの外観の見栄えを良好に保つことができる。
【0039】
表面ティシュ11側に形成される上部接合用エンボス部11bは、積層連続シート13の長手方向に沿って連続した平面状をなす。本実施形態における上部接合用エンボス部11bによる接合領域Cは、表面ティシュ11の厚み方向に関し、第1エンボス部11aが形成されていない表面ティシュ11の表面と同じ位置に設定されている。これにより、表面ティシュ11の表面には、第1エンボス部11aによる溝状の窪みが実質的に形成されなくなり、積層連続シート13の見栄えの低下をさらに抑制することができる。
【0040】
また、多数の下部接合用エンボス部12bは、図4に外周面を展開形状で示すエンボス加工ロール16によって裏面ティシュ12側に形成される。これら下部接合用エンボス部12bは、積層連続シート13の幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜した方向に沿ってそれぞれ一定間隔で配列する。本実施形態では、積層連続シート13の幅方向に対して傾斜する下部接合用エンボス部12bの配列間隔と、積層連続シート13の長手方向に対して傾斜する下部接合用エンボス部12bの配列間隔とを同一に設定している。また、積層連続シート13の幅方向および長手方向に対する下部接合用エンボス部12bの配列方向の傾斜角α,βを25度に設定している。これにより、積層連続シート13の幅方向および長手方向に沿った下部接合用エンボス部12bの分布状態をより均一化させることができる。
【0041】
上部接合用エンボス部11bは、表面ティシュ11側から裏面ティシュ12側に突出して表面ティシュ11と裏面ティシュ12とが密着するように形成され、その溝底の幅は2.6mm程度に設定される。なお、上述したように本実施形態における上部接合用エンボス部11bの接合領域Cは、表面ティシュ11の厚み方向に関し、第1エンボス部11aが形成されていない表面ティシュ11の表面と同じ位置に設定されている。このため、表面ティシュ12には第1エンボス部11aにより裏面ティシュ12側に突出する凹みが実質的に形成されない。しかしながら、上部接合用エンボス部11bの接合領域Cを図示例よりも重ね合わせ面15側に近づけた場合、例えば図5に示すように重ね合わせ面15に位置させた場合、上部接合用エンボス部11bが連続した溝状に形成されることに注意されたい。また、下部接合用エンボス部12bは、裏面ティシュ12側から表面ティシュ11側に突出して表面ティシュ11と裏面ティシュ12とが密着するように形成されている。正四角錐台状をなす下部接合用エンボス部12bの頂部および基部の一辺の長さは、それぞれ0.3mm,1.256mm,高さが0.66mm,頂角が70度に設定されている。しかしながら、これらの数値に限定されるわけではなく、また表面ティシュ11および裏面ティシュ12に形成される接合用エンボス部11b,12bの形状を逆に入れ換えることも可能である。
【0042】
なお、下部接合用エンボス部12bを正四角錐台形状に配列した場合、これを加工するための図6に示すような断面形状を持つエンボス加工ロール16の凸面16aをホブ切りの方法にて容易かつ高精度に製造することができる。
【0043】
一対の金属製エンボス加工ロール16,17を用いて上述した接合用エンボス部11b,12bを加工する場合、一方のエンボス加工ロール16を他方のエンボス加工ロール17に対してばねや空気圧などの弾性力を伴って押し付ける必要がある。接合用エンボス部12bを形成するための凸部16aが一方のエンボス加工ロール16の外周面にその周方向に沿って間欠的に形成されているため、次のような状態が発生する。すなわち、凸部16aが積層連続シート13を挟んで他方のエンボス加工ロール17の平滑な外周面17aに押し当たる度に、一方のエンボス加工ロール16が他方のエンボス加工ロール17から離れるように振動する。この結果、騒音が発生したり、凸部16aの摩耗が生じやすくなり、凸部16aが形成されたエンボス加工ロール16の寿命が短くなってしまうという不具合が生ずる。しかしながら、積層連続シート13の長手方向に沿って隣り合う下部接合用エンボス部12bの間隔を適切に設定することにより、見掛け上、凸部16aがエンボス加工ロール16の外周面にその周方向に沿って連続的に形成されたようにすることができる。これは、積層連続シート13の長手方向に沿って隣接する下部接合用エンボス部12bの頂部の隙間Gを積層連続シート13の長手方向に沿った下部接合用エンボス部12bの頂部の長さ以下に設定することによってほぼ達成可能である。この結果、一方のエンボス加工ロール16をほぼ同じ位置で回転させることが可能となり、エンボス加工ロール16の振動が発生せず、騒音が発生しにくくなる。また、凸部16aの摩耗も少なくなってエンボス加工ロール16の寿命を延ばすことができる。換言すると、積層連続シート13の長手方向に沿った下部接合用エンボス部12bの頂部の間隔とその寸法とに応じて凸部16aの配列方向を積層連続シート13の幅方向に対して適切な角度で傾斜させればよい。なお、経験的には積層連続シート13の長手方向に沿って隣接する下部接合用エンボス部12bの頂部の隙間Gを約0.3mm以下に設定すればよく、上述した本実施形態の場合、傾斜角α,βを15〜29度の範囲で設定することが有効である。
【0044】
なお、この積層連続シート13には、積層連続シート13をその幅方向に横切る破断用ミシン目をその長手方向に沿って一定間隔でさらに形成することができる。
【0045】
このようなトイレットロール10の製造設備を模式的に図7に示す。原反ティシュスタンド18には、原反表面ティシュロール11Rおよび原反裏面ティシュロール12Rが配されており、これら原反ティシュロール11R,12Rは、製品となるトイレットロール10の幅の数倍から二十数倍の幅を有する。原反ティシュスタンド18に隣接してエンボス加工部19が配され、さらに巻取部20,図示しない末端処理部,切断部が順に配されている。原反表面ティシュロール11Rおよび原反裏面ティシュロール12Rから引き出された帯状をなす長尺ティシュ11L,12Lは、エンボス加工部19にてエンボス加工が施され、それぞれ第1および第2エンボス部11a,12aが形成される。これにより、長尺ティシュ11L,12Lに張りとしなやかさとが与えられ、さらにこのエンボス加工部19にて長尺ティシュ11L,12Lが相互に重ね合わされて積層状態となる。図示しない長尺の巻き芯14(図1参照)が配される巻取部20には複数対のエンボス加工ロール16,17が配されている。これらエンボス加工ロール16,17は、長尺ティシュ11L,12Lを重ね合わせることによって形成される長尺積層連続シート13Lに接合用エンボス部11b,12bを形成するためのものである。これらエンボス加工ロール16,17によって接合用エンボス部11b,12bが形成された所定長の長尺積層連続シート13Lが長尺の巻き芯14に巻き取られる。末端処理部においては、所定長の長尺積層連続シート13Lの末端が長尺の巻き芯14に巻き取られた長尺のトイレットロール10(図1参照)の表面に糊付けされ、その後、切断されて切断部へと搬出される。切断後に残った長尺積層連続シート13Lの基端は、巻取部20に配される新たな長尺の巻き芯14に巻き付けられ、再び所定長の長尺積層連続シート13Lがこの長尺の巻き芯14に巻き取られるようになっている。切断部では、図示しないカッターにて長尺のトイレットロール10が所定幅に切断されて個々のトイレットロール10となる。
【0046】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
10 トイレットロール
11 表面ティシュ
11a 第1エンボス部
11b 接合用エンボス部
11L,12L 長尺ティシュ
11R 原反表面ティシュロール
12 裏面ティシュ
12a 第2エンボス部
12b 接合用エンボス部
12R 原反裏面ティシュロール
13 積層連続シート
13L 長尺積層連続シート
14 巻き芯
15 重ね合わせ面
16 エンボス加工ロール
16a 凸部
17 エンボス加工ロール
17a 外周面
18 原反ティシュスタンド
19 エンボス加工部
20 巻取部
P エンボスパターン
C 接合領域
G 積層連続シートの長手方向に沿って隣接する下部接合用エンボス部の頂部の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなす上層シートおよび下層シートを積層してなる積層連続シートがロール状に巻回されたロール状積層連続シートであって、
前記上層シートの幅方向と長手方向とに沿って連続的に反復するエンボスパターンを画成するように前記上層シートに形成された多数の第1エンボス部と、
前記上層シートと前記下層シートとが密着するような接合領域を画成するための上部接合用エンボス部と、
この上部接合用エンボス部と共に前記上層シートと前記下層シートとが密着するような接合領域を画成し、前記上部接合用エンボス部とで前記上層シートおよび前記下層シートを一体的に接合するための下部接合用エンボス部と
を具え、前記上部および下部接合用エンボス部の少なくとも一方が積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜した方向に沿ってそれぞれ一定間隔で配列していることを特徴とするロール状積層連続シート。
【請求項2】
積層連続シートの長手方向に沿って隣り合う前記少なくとも一方の接合用エンボス部による接合領域の間隔が積層連続シートの長手方向に沿った個々の前記接合領域の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のロール状積層連続シート。
【請求項3】
積層連続シートの幅方向に対して傾斜する前記少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔と、積層連続シートの長手方向に対して傾斜する前記少なくとも一方の接合用エンボス部の配列間隔とが同一であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール状積層連続シート。
【請求項4】
前記上部および下部接合用エンボス部は、積層連続シートの長手方向に沿ってその幅方向両側縁部にそれぞれ近接して形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項5】
前記上部および下部接合用エンボス部の他方が連続した平面状または溝状をなすことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項6】
前記他方の接合用エンボス部による接合領域は、前記上層シートの厚み方向に関し、前記第1エンボス部が形成されていない前記上層シートの表面と同じ位置にあることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項7】
前記第1エンボス部が前記下層シート側に突出していることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項8】
個々の前記エンボスパターンが前記第1エンボス部を同心円状に配列した点対称形状をなしていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項9】
前記エンボスパターンの配列方向が前記積層連続シートの幅方向および長手方向に対してそれぞれ傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のロール状積層連続シート。
【請求項10】
前記上層シート側に突出するように前記積層連続シートの幅方向と長手方向とに沿って前記下層シートに所定間隔毎に形成される多数の第2エンボス部をさらに具えたことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のロール状積層連続シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−183236(P2012−183236A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49370(P2011−49370)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】