説明

ロール

本発明は、抄紙機又は、板紙抄紙機若しくは仕上げ機用の、中間部が支持されたロールに関し、当該ロールは、2つのセクション、即ち、ロール(50’)の中間領域で互いに支持されたインナシェル(54’)とアウタシェル(52’)からなる。当該ロールの特徴は、ロールのインナシェル(54’)の製造材料のノミナル剛性が、アウタシェル(52’)の製造材料のノミナル剛性よりも大きいことである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機又は板紙抄紙機若しくは仕上げ機用のロールに関する。より詳細には、本発明は、中央部で支持された複合ロールに関する。最も好ましくは、本発明の複合ロールは、抄紙機又は板紙抄紙機におけるカレンダフライロール若しくはスプレッダーロールとして使用される。本発明は、また、ロールを支持する新種及び過大な速度範囲のロールの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のロールは、その中間で支持されており、主に、製紙産業においてリードロール、スプレッダーロール及びフライロールとして用いられる。それらは、端部で支持される従来のロールとは異なる撓み特性に特徴がある。従って、例えば繊維の縁部と中間領域の間の長さの差は、それらにより補償されることができ、アプローチ(スプレッダーロール)の方向から離れる方向に、ロールを垂れ下がり形態に曲げることによって、繊維若しくはウェブがしわにならないことを保証できる。
【0003】
スプレッダーロールの一種は、特許文献1に開示されており、そこでは、ロールは、休止状態にあるとき互いに離間された2つの同心のシェルにより形成されている。即ち、それらは、よくインナシェル及びアウタシェルと称され、長さ方向のロールの中間部に組み込まれる。インナシェルは、ベアリング上に回転可能に搭載されるシャフトジャーナルを備える。抄紙機若しくはその類において上述の種のロールが回転されるとき、機械繊維若しくはウェブのいずれか、或いは、双方が、ロールのインナシェルにある程度の撓みを与える。しかし、撓みは、上述の如く、ロールの中間部まわりのみにてインナシェルに取り付けられるアウタシェルに伝達されないが、その真っ直ぐな円筒形を維持しようとする。アウタシェルの剛性に単に依存して、それは、動作中に真っ直ぐに保つことができ、若しくは、インナシェルの視線方向で逆方向に曲がることができる。双方の場合、繊維若しくはウェブがしわになる可能性が防止される。
【0004】
上記の特許文献1に関して、例えば炭素繊維強化エポキシ樹脂により製造される複合スプレッダーロールに関するものであることも、注意に値する。
【0005】
カレンダフライロールは、例えば特許文献2乃至5において議論されている。これらの構造は、少なくとも本発明に関連する限り、上述のスプレッダーロールの構造に非常に似ている。
【0006】
更に、スプレッダーロール及びフライロールの双方として動作するのに適した構成が、本願出願人の特許文献6に議論されており、この文献では、インナシェルが、マシーンのフレーム構造でベアリング上に従来的態様で搭載されているロールが開示される。この出願の実際の発明は、アウタシェルをその端部にて、アウタシェルの撓みの方向と量が制御可能となる態様で、マシーンのフレーム構造上の調整可能なベアリング構成を介して支持することにある。
【0007】
上述のような中間部にて支持されるロールは、比較的可撓性の高いアウタシェルと比較的剛性の高いインナシェルを特徴とする。この特性は、インナシェル及びアウタシェルの相互間の寸法及び/又は材料の選択を介してもたらされる。
【0008】
しかし、スプレッダーロールが使用される場合にもいくらかの点で該当するが、特にカレンダフライロールに関して、これらのロールを用いたときにしばしば直面する問題は、ロールのクリティカルなノミナル周波数である。複合ロールのアウタシェルが、インナシェルのみにより支持されるとき、たいていの場合にはロールの中間部だけで支持されるが、ロールの第1のクリティカルなノミナル周波数は、ロールの直径が既存のフライロールやスプレッダーロールと等しく維持された場合を想定すると、比較的低く留まる。実際では、ある回転速度でロールを使用できるには、その回転速度はロールの限界公称周波数以内でないことを確認すべきであることを意味している。たいていの場合、ロールの回転速度は、クリティカルなノミナル周波数(限界公称周波数)よりも低く維持される。実際には、ロールの回転速度がそのクリティカルなノミナル周波数に対応すると思われるある用途では、それを回避する唯一の方法は、ロールの直径を増大させることである。しかし、これは、通常的には可能で無い。なぜならば、例えばスーパーカレンダにおいて、かかるオーダーに直径を備えるロールに対してスペースが存在しないからである。
【0009】
即ち、寸法上の制約は、最も支配的な問題である。なぜならば、例えば、カレンダエレベータ及びロールクリアランスは、ある安全基準を満たさなければならないからである。ロールのより大きい直径は、必然的に、ニップ出口及び入口角度を変化させる。
【0010】
注意に値するその他の問題は、少なくともある従来のスプレッダーロールを用いた場合には張力測定が実行できないことである。なぜならば、これらのロールを用いた場合、ロールの垂れ下がりは、ロール端部の取り付け部にモーメントを向け、当該モーメントは、張力計測を顕著に妨害するからである。この種のロールは、一のシリンダから形成され、当該シリンダは、たいていの場合には複合材料からなり、互いに軸方向に離間した2点にて、両端が、抄紙機若しくは板紙抄紙機のフレーム構造上に、支持されている。1点は、支持体の固定点とみなすことができる一方、他点を介して、ロールは、径方向の力を受け、この力は、押し方向若しくは引き方向であり、ロールの垂れ下がりを引き起こす。当該力は、それゆえに、装置に向けられ、これにより、ロールは、当該フレーム構造に固定されるか若しくは当該フレーム構造により支持される。張力に加えて、ロールを垂れ下げる力/モーメントも、張力測定用のセンサにより必然的に検出され、センサからのデータはもはや有効で無い。即ち、この種のロールが用いられるとき、張力は、別のロールで測定される必要がある。
【特許文献1】フィンランド特許公開第72766号公報
【特許文献2】米国特許第4,692,971号
【特許文献3】米国特許第5,438,920号
【特許文献4】WO−A1−9909829
【特許文献5】WO−A1−9742375
【特許文献6】フィンランド特許出願20031384
【特許文献7】EP−A2−0363887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、上述の先行技術の問題の少なくとも一部を無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ロールのノミナル周波数に影響を与えるために用いられる因子のより大がかりな精査により、ロールの弾性特性が、ロールのノミナル周波数に比較的強い影響を有することが、明らかになった。従って、我々は、その弾性特性を利用して、ロールのクリティカルなノミナル周波数を顕著に高いレベルまで上昇させることができうり、さらに、ロールの寸法上の要求に制限を設ける必要のない、かかる材料若しくは複数の材料のロールを製造することが可能であるかを精査することを開始できる。本発明は、異なる弾性特性を有するインナシェル及びアウタシェルのロールに辿り着いた。
【0013】
ある意味では、類似の種類のロールが、特許文献7にて議論されているが、しかし、幾つかの異なる層からなる従来のロールだけを開示し、中間部が支持されたロールについては示唆していない。層の少なくとも一部は、少なくとも2つの異なる方向に巻かれた複合材料から製造されている。例えば、ある場合には、ロールの最も内側の層は、軸方向に関して75〜90度の角度で巻かれ、他言すると、略径方向に巻かれている。ロールの最も外側の層も、同様に、軸方向に関して0〜35度の角度で巻かれている。この態様で製造されるロールの内部応力は、径方向で圧縮応力であり、これにより、ロールにおいて層間のクラックは生じないことが、教示されている。また、軸方向の伸張の制御及び特許文献7に提示される目的に合致した弾性特性のような他の効果的な特性が言及されている。
【0014】
また、ロールの弾性及び振動は、ロールの中間部で互いに指示されている以外にロールのインナシェルとアウタシェルがロールの端部にてロールの固定装置及びベアリングにより支持されており、これにより、アウタシェルの端部の振動がより良好に制御可能であるという事実によっても、良い影響を受ける。
【0015】
本発明による好ましい実施例では、ロール用の固定及び支持装置も用いられ、これにより、ロールのアウタシェルは、インナシェルに対して、端部で撓むことができ、ロールを垂れ下げる。この場合、ロールの垂れ下がりによりその取り付け部に伝達されるパワーは、先行技術に比べて、実際上存在せず、これにより、ロールでの張力測定が可能となる。
【0016】
本発明による抄紙機又は、板紙抄紙機若しくは仕上げ機用のロールの特徴は、ロールが中間部で支持されており、2つのセクション、即ちいわゆるインナシェル及びアウタシェルから構成され、それらは、互いにロールの中間領域で互いに支持されており、ロールのインナシェルの製造材料のノミナル剛性は、ロールのアウタシェルの製造材料のノミナル剛性よりも有意に大きいことである。
【0017】
本発明によるロールのその他の特徴は、添付の特許請求の範囲により示される。
【発明の効果】
【0018】
例えば、本発明により、中間部で支持されるロールを用いることで、従来の寸法のフライロールを使用した場合でも、クリティカルなノミナル周波数が安全に高くなる。
【0019】
本発明によるロールは、複合構造であり、スプレッダーロールや例えばスーパーカレンダフライロールとして使用できる。なぜならば、それらは、他のロール特性を妥協することを要せずに、直径を顕著に小さくすることができるからである。
【0020】
本発明によるロールは、ロールの回転速度がそのノミナル周波数よりも高いことを意味する超臨界領域で稼動させることができる。従って、ロールの直径は、小さく,ロールは、材料コスト及び製造の双方の観点から、より安価となる。また、ロールは、そのサイズの観点から、従前の構成で使用される鋼製ロールに置き換わることができる。
【0021】
本発明で開示されるような態様でロールのアウタシェルの端部を支持することによって、超臨界速度でのロールの使用が容易となる。
【0022】
本発明の好ましい実施例によれば、ロールは、張力測定がロールに関連して必要とされる使用ポイントに適用可能である。
【0023】
ロールのアウタシェルの撓み及びロールの垂れ下がりの調整の双方は、調整装置118により実行されることができる。更に、垂れ下がりは、常に、垂れ下がり量に関係なく同一レベルで実行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
これより、本発明のロールは、添付図面を参照して詳説される。
【0025】
図1は、特許文献1に開示されるような中間部で支持された先行技術の複合ロール10を示す図である。これは、シャフトジャーナル12及び14に取り付けられる複合インナシェル16と、同様に複合構造であり、インナシェルの長手方向の中間部18に取り付けられるアウタシェル20とからなる。従来では、ロールの中間部で支持されたロールの構造に典型的なものは、ロールの端部領域、より具体的には、ロールのアウタシェルがインナシェルにより支持されていない領域には、アウタシェルとインナシェルの間に環状の間隔22が設けられ、例えばインナシェル16が垂れ下がるにも拘らずアウタシェルが真っ直ぐに保つことを可能とし、若しくは、アウタシェル20がインナシェル16とは反対に垂れ下がることを可能としている。中間部が支持された複合ロールにおいて、インナシェル及びアウタシェルは、従来的には同一の材料から製造され、この場合、インナシェルは、アウタシェルよりも実質的に厚く、これにより、インナシェルの剛性が確保されるか、若しくは、インナシェルはスチールで形成され、アウタシェルは複合材料で形成される。
【0026】
図1に示すロールは、中間部が支持されており、実際には、例えば図の下向きに、ウェブ及び/又は繊維の力がアウタシェル20を介してロールに影響を与えるとき、及び、ロールがマシーンフレーム上のベアリングを介してシャフトジャーナル12及び14により支持されているとき、ロールのインナシェル16は、シャフトジャーナル12及び14間で下向きに垂れ下がろうとする。しかし、この垂れ下がり傾向は、アウタシェル20には伝達されない。なぜならば、アウタシェルは、その中間部、即ち、インナシェルの方向が、ベアリングの中心線を通るシャフトライン24の方向と略同一となるセクション、でしかインナシェルに支持されていないからである。
【0027】
この場合、ウェブの力をインナシェルに伝達するのに加えて、アウタシェルは、反対方向に垂れ下がる、即ち、ウェブの力の作用により、図の上向きに垂れ下がる。なぜならば、アウタシェルの縁部は、インナシェルにより支持されている中間部よりも剛性が低いからである。この場合、ロールのアウタシェル及びインナシェルは、反対方向に垂れ下がる。かかる構造では、インナシェルの垂れ下がり(ボウ)に無関係に、ロールのアウタシェルの直線性が目標とされることが知られている。
【0028】
中間部が支持されている上述のロール構成の問題は、とりわけ、この種の中間部が支持されるロールのクリティカルなノミナル周波数が非常に低いことである。
【0029】
図2は、特許文献6に詳細が開示されている支持構造と共に、本発明の好ましい実施例を示し、当該支持構成は、特に、本発明によるロールと関連して使用されるのに好適である。当該支持構成において、ロールのインナシェルは、ロールのフレーム構造により通常的な方法で支持されるが、アウタシェルは、従来的な態様でフリーのままにされていないが、端部を介して、好ましくは同一のフレーム構造上に支持され、その垂れ下がり量と方向が制御可能となるようにする。従って、図2に示すロール50’は、アウタシェル52’、インナシェル54’、シャフトスリーブ56及びシャフトジャーナル66からなる。ロール50’のインナシェル54’は、固定の支持構造60によりベアリング68を介して回転可能に支持され、この場合、インナシェル54’のシャフトジャーナル66の外側の端部は、径方向に移動不能である。アウタシェル52’のシャフトスリーブ56は、移動するベアリングハウジング80によりベアリング58を介して支持されている。この実施例では、ベアリングハウジング80は、支持構造60によりガイド82を介して支持され、シャフトスリーブ56及びロール50’のアウタシェル52’の端部が、ガイド82により画成される方向に移動できるようにする。当該ガイドの位置は、径方向の面内で回転されることもでき、この場合、アウタシェルの垂れ下がりの方向が制御されることができる。同様の方法で、ガイドは、例えば特許文献6に記載されるような態様で、ストッパを備えることができ、当該ストッパにより、アウタシェルの撓み量が制御可能となる。
【0030】
図2に示す構成において、ロールのインナ及びアウタシェルは、互いに取り付けられていないが、インナシェル54’、特にその中心線CLは、アウタシェル52’の内径に略等しい外径の球部(バルブ)58を備える。好ましくは、球部58の外径は、アウタシェル52’の内径よりもわずかに大きいが、インナシェル54’がアウタシェル52’へと押されてアウタシェル52’の外面上に球部が出現しない程度にされる。インナ及びアウタシェルを互いに結合させる他の態様は、とりわけ、サイジングや収縮であり、若しくは、図3に関連して後述されるように、それらは、複合材料であるときに部品の製造段階で既に一体構造とされることもできる。
【0031】
本発明の観点から、図1に示した構造とこのロールの間の基本的な相違は、本発明の構成では、ロールのインナシェル54’及びアウタシェル52’が、ロールの撓み及び弾性特性及びノミナル周波数の双方を最適化できるようにすべく、明確に異なる材料から形成される。
【0032】
フライロール若しくはその類の最適な動作のための基本は、インナシェルが、アウタシェルよりも実質的に剛性が高いことである。インナシェル積層の軸方向の弾性率は、少なくとも80GPaであるべきであり、好ましくは250GPaであるべきである。これらの値は、しかしながら、炭素繊維強化ロールで通常的に達成可能なものよりも高い。80〜250GPaの弾性率の値は、巻きにより非常に剛性のある炭素繊維のインナシェルを用意することにより達成される。この目的に適しており、一般的にタール若しくはピッチ繊維と称されるある高剛性の炭素繊維の弾性率は、直線層の繊維方向で約400GPaである。
【0033】
より具体的には、原理上、2種類の炭素繊維、即ちいわゆるPANベース繊維、及びピッチベース繊維が存在する。PANベース繊維では、基本材料は、ポリアクリルニトリルであり、ピッチベースの繊維では、ピッチであり、オイル精製時に製造され、主にごみとして分類される。ピッチベースの繊維は、通常、タール若しくはピッチ繊維と称される。双方の基本材料及び製造技術の相違に起因して、これらのピッチベース繊維の弾性率は、PANベース繊維に比べてせいぜい略2倍である。これらのピッチ繊維が、ロールを準備する際に軸方向に巻かれるとき、160〜250GPaの軸方向の弾性率を達成することが可能である。ロールが、後述の態様で、上述の材料から製造されるとき、インナシェルの撓みは、最小化されることになり、今日のスーパーカレンダフライロールの外径を動的に達成することが可能であり、これは、ベアリングを有し自身の他の問題を有する従前使用されている鋼製のフライロールに置き換わるための上述のロールの使用に対する一般的な要求である。
【0034】
他言すると、本発明によるロールは、例えば、アウタシェルが従来的な方法、即ち、例えば米国特許第4,856,158号に示されるような態様で、軸方向視で0〜30度のである主に軸方向の巻角度を用いて、生成されることができ、この場合、アウタシェル積層の軸方向の弾性率は、略30〜80GPaとなる。ある場合、アウタシェルは、強化されないプラスティック材料のような、幾つかの他の適切な材料により製作されることもできる。インナシェルは、対応して、より高い剛性の繊維のみで、主に0〜30度の軸方向で巻かれ、この場合、インナシェル積層の軸方向の弾性率は、アウタシェル積層の軸方向の弾性率の約2〜4倍である。双方のシェルは、シェルを所定形状に保持するために周方向で(+/−45〜+/−85)より多く巻かれた層を有する。従って、用語“主に軸方向”は、好ましくは、層の70%を越える部分が当該軸方向の角度を用いて巻かれていることを意味する。
【0035】
種々のロール若しくはその部品及びその特性を互いに比較するその他の方法は、比較パラメータとして、積層の軸方向におけるノミナル剛性を用いることであり、これは、kax=Eax/ρで表され、Eaxは、軸方向の巻管若しくはシェルの積層の弾性率であり、ρは、当該管若しくはシェルの密度であり、炭素繊維の場合には1550kg/mのオーダーである。ノミナル剛性を比較パラメータとして用いることによって、アウタシェルのノミナル剛性は、kax=0.035〜0.055GNm/kgであり、インナシェルのノミナル剛性は、対応して、kax=0.055〜0.165GNm/kgである。尚、しかしながら、より大きなウェブ厚さ(6,5m以上)ではインナシェルのノミナル剛性はkax=0.10〜0.15GNm/kgであるべきである。対応するノミナル剛性が、比較の目的のため、スチールに対して計算される場合、スチールのkaxの値は、0.026GNm/kgであり、複合インナシェルのノミナル剛性が、鋼製インナシェルに比べて4〜6倍であることが分かる。
【0036】
図3は、ロールのインナシェル54”及びアウタシェル52”が如何にして互いに支持若しくは相互結合されることができるかを示す本発明のその他の好ましい実施例を示す。ロール50”は、例えば、インナシェルが最初に適切なコア上に巻かれ、その後、米国特許第4,856,158号に開示されるような製造モードが後続するような態様で、製造されることができる。即ち、2つのコアピースが、ロールの中間セクションにてそれらの間の自由な領域を残す態様で、仕上げられたインナシェル上に配置され、当該自由な領域上には、ロールが複合材料のみから製造される場合に、ロールセクションを互いにバインドする“リッジ”が巻かれる。コアピースは、必要な場合に、使用されることができ、例えば、硬化されるときに破壊される材料からなる使い捨てのスリーブである。コアピースのシェルの厚さは、ロールのインナ及びアウタシェル間の環状の間隔の径方向の寸法に必然的に対応する。また、ロールの製造は、ロールセクションをバインドする目的の上述のリッジがコアピース間の領域に一緒に巻かれ、その後、巻がロールの全体長さまで拡張されるように、実現される。上述のリッジは、インナ若しくはアウタシェルと同一の材料からなってよく、若しくは、目的に適合した他の材料からなってもよい。
【0037】
図3は、ロール端部がより好ましく支持されている状況に適合された、ロールの端部を支持するためのその他の代替構成を示す。この代替構成では、ロールのインナシェル54”は、その位置が、抄紙機若しくは仕上げ機又はその類のフレーム構造上で調整可能となるように、ベアリング42及びベアリングハウジング44を介して支持される。ロール50”のインナシェル54”の双方の端部は、端部スリーブ38を備え、端部スリーブ38には、アウタシェル52”のシャフトスリーブ30の内側の空間を介して突出するシャフトジャーナル30が取り付けられる。シャフトジャーナル40は、同様に、ベアリングハウジング44によりベアリング42を介して外側端部で回転可能に支持されている。ベアリングハウジング44は、調整スクリューとして指示された調整装置36により支持される。即ち、インナシェル54”の端部は、調整装置36によりアウタシェル52”の端部に対して径方向に伝達されることができ、これは、アウタシェル52”の望ましい垂れ下がりを生成する。アウタシェル52”は、同様に、生産マシーンのフレーム構造上にシャフトスリーブ30及びベアリング32を介して支持されている。
【0038】
図4は、中間部が支持された本発明のロールに対する最も好ましい構成の斜視図である。図示の支持構成は、スプレッダーロールに関連した使用に最も好ましいが、垂れ下げられるロールに関連する他の用途も必然的に可能である。図示のロールの支持及び駆動構成は、抄紙機若しくは他の製造マシーンのフレーム構造に取り付けられるベアリングブラケット100を備え、それが、必然的には、駆動サイドの問題である場合、このベアリングブラケットには、例えば、ロールの駆動モータ102が取り付けられるか支持される。ロール(ロールは、図2若しくは図3に示すような構造であってよい)のインナシェルの延長部として機能するロールシャフトは、左から、ベアリングブラケット100の中心の穴を通って、駆動モータ102のクラッチまで延在する。クラッチ自体は、知られた如何なるタイプのものであってもよい。ロールのシャフトは、ベアリングによりベアリングブラケット100により支持され、これにより、ロールのシャフトの方向の変化が十分な範囲で可能となる。同様に、それ自体知られた態様で、駆動モータ102のクラッチ若しくは駆動モータ102のベアリングブラケットへの取り付けが、角度の変化が可能となるようになされている。
【0039】
また、これに関して言及に値することは、必然的に、ロールの駆動方法は、インナシェルのシャフトジャーナル上のロールの端部にあるベルトプーリー構成であってよく、この場合、駆動モータは、ロールの側方、上方若しくは下方に比較的自由に搭載されることができる。
【0040】
ロールのアウタシェルの延長部として機能するシャフトスリーブは、リング104の内側に位置し、その位置は、内部にベアリングスリーブがベアリング105上に搭載されているリング104の位置を変化させることにより、ロールの垂れ下がりを調整することが可能となるように、調整可能である。図示の支持構成は、実際に如何なる所望の方向にロールの垂れ下がりを可能とする。より具体的には、リング104は、リング104の両側に略対称に配置された2つのレバー106,108により支持されている。レバー106,108の一端は、ベアリングブラケット内に別に配置された回転可能なディスク110に回動可能に取り付く。レバー106,108の他端は、出張り112,114を介してリング104の外周部に回動可能に取り付く。レバー104,106の対称的な固定方法に起因して、リング104の中心点の軌跡は、リング104が横方向に動くとき真っ直ぐである。リング(図4に示す実施例において)は、スプリング装置116(例えばガススプリング)を介してディスク110により下方から支持され、その一端は、当該ディスクにより支持され、他端はリング104により支持されている。スプリング手段116から視たとき、リング104の反対側には、リング104を横方向に移動させるために、若しくは、実際にロールの垂れ下がりの調整を可能とするために、(本実施例では、さもなければ配置が自由となる)リング104及びディスク110の間に調整スクリュウ118若しくはその類の装置が配置される。実際の調整手順は、図5a及び図5bに関連して詳説される。
【0041】
上述の回転可能なディスク110は、本発明の好ましい実施例を意味し、ロールの垂れ下がり面の方向の調整を可能とする。当該ディスク110は、ベアリングブラケット100の側部により回転可能に配置され、例えば、ディスク110は、ディスクの円筒形突起がベアリングブラケットの中心穴に通り、ロールのシャフトから当該突起の内側になるように、ベアリング上に搭載される。ディスク110をシャフトまわりで回転させるのは、例えば、ディスクの幾つかの適切なポイントにてギアリング、及び、対応して、ベアリングブラケットに関連したねじ棒を配置することにより、必然的に可能であり、ねじ棒の端部は、正方形の足124として図示されており、この場合、ねじ棒の回転により、ディスク110がシャフトまわりに回転される。ディスク110と共に、ロールの垂れ下がり面を画成するリング104も回転する。また、それ自体知られている他の種の回転装置も必然的に使用可能である。
【0042】
明確にすると、ベアリングブラケット100から視たとき、ディスク110は、ロール側に配置される。また、ディスクのロール側には、上述のレバー106,108、スプリング装置116及び調整装置118が、回動可能に取り付き若しくは支持される。
【0043】
図5aは、図4によるロール支持構成の平面図である。本図は、ロールの曲げが未だ始まっていない基本位置を示すが、アウタシェルのシャフトスリーブは、ロールシャフトと同心である。即ち、図示の例では、ベアリングブラケット100のベアリング部120は、リング104の内側に配置されるベアリング105と同心に示される。スプリング装置116も、リング104を右に押す態様で、“休止状態”で機能し、この場合、調整スクリュウ118は、リング104におけるカウンタ表面122により支持される。このとき、スプリング装置116は、システムからすべての隙間(クリアランス)を取り除き、構造を剛にする。
【0044】
図5bは、リング104がスプリング装置116に抗して調整スクリュウ118により左に移動されている状況を示す。尚、レバー106,108の回転にも拘らず、リング104の中心は、同一の高さに留まる。即ち、中心の移動は、直線的に生ずる。
【0045】
上述の如く、スプリング装置116に関してリング104の反対側に加えて、調整スクリュウ118は、リング104に関連して略如何なる場所にも位置することができる。調整スクリュウをレバー106若しくはレバー108とディスク110との間に配置することも可能である。本質的な要素は、スプリング装置により可能とされる方向に調整スクリュウによりリングの位置を調整することが可能であることだけである。
【0046】
上述の構造の効果は、例えば先行技術と比較したとき、とりわけ、アウタシェルの振れ及びロール垂れ下がりの調整の双方を一の調整装置118により実行することができることである。また、垂れ下がりは、垂れ下がり量に無関係に常に同一面内で生ずることである。
【0047】
上述により示すように、中間部が支持されたロールのまったく新規なタイプが開発され、当該ロールにより、先行技術のロールの特徴的な幾つかの問題や欠点を低減若しくは全体として無くすことができる。尚、本発明によるロールは、カレンダフライロールとして主に示されているが、本発明は、例えばスプレッダーロールのような、中間部が支持されたロールが使用できる全ての場所に適用可能である。また、図2乃至図5は、ロール端部を支持する2,3の構成のみしか示していないが、これらの支持/ベアリング構成のみが本発明のロールに関連して使用されるべきであることを決して意味せず、他の種の支持構成も適用可能である。必然的に、図1に示すような、端部が完全に支持されていないアウタシェルを備える従来的なロールも、本発明の範囲内に入る。上述では、本発明は、模範的な例示の観点から、最も好ましい定型化実施例で説明されている。それゆえに、明らかながら、本発明は、添付の特許請求の範囲で定義される保護範囲内に留まりつつ、上述の実施例から相当に逸脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】特許文献1に開示されるような中間部で支持された先行技術の複合ロールを示す図である。
【図2】特許文献6に詳細が開示されているフライロールの選択的な構造と共に、本発明の好ましい実施例を示す図である。
【図3】特許文献6に先行技術として開示されるようなフライロールの選択的な構造と共に、本発明のその他の好ましい実施例を示す図である。
【図4】本発明による、中間部が支持されたロールに対するその他の支持構成であって、特にスプレッダーロールに対して使用されるのが好適な構成を示す図である。
【図5a】ロールを垂れ下げるための、図4による支持構造の使用を示す図である。
【図5b】ロールを垂れ下げるための、図4による支持構造の使用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心で支持され、互いに支持されたインナシェル(54’、54”)とアウタシェル(52’、52”)からなる、抄紙機又は、板紙抄紙機若しくは仕上げ機用のロールであって、
ロール(50’、50”)のインナシェル(54’、54”)の製造材料のノミナル剛性は、アウタシェル(52’、52”)の製造材料のノミナル剛性よりも大きい、ロール。
【請求項2】
ロール(50’、50”)のインナシェル(54’、54”)の製造材料の軸方向の弾性率は、前記ロールのアウタシェル(52’、52”)の製造材料の軸方向の弾性率よりも実質的に高い、請求項1に記載のロール。
【請求項3】
ロール(50’、50”)のインナシェル(54’、54”)の製造材料の軸方向の弾性率は、前記ロールのアウタシェル(52’、52”)の製造材料の軸方向の弾性率の2から4倍である、請求項1に記載のロール。
【請求項4】
インナシェル(54’、54”)及び/又はアウタシェル(52’、52”)は、複合材料からなる、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項5】
ロール(50’、50”)のインナシェル(54’、54”)は、タール又はピッチ繊維の巻体からなる、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項6】
ロール(50’、50”)のインナシェル(54’、54”)は、主に軸方向視で0〜30度の角度まで巻かれる、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項7】
ロール(50’、50”)のアウタシェル(52’、52”)は、炭素繊維、ガラス繊維若しくは、プラスティックのような適切なノミナル剛性を有する他の材料のような、従来の材料からなる、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項8】
ロール(50’、50”)のアウタシェル(52’、52”)は、主に軸方向視で0〜30度の角度まで巻かれる、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項9】
ロール(50’、50”)のアウタシェル(52’、52”)は、長手方向の中央部が、インナシェル(54’、54”)により支持される、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項10】
ロール(50’、50”)のアウタシェル(52’、52”)は、端部が、抄紙機、板紙抄紙機又は仕上げ機若しくはその類のフレーム構造上にベアリング(58;32;105)を介して支持される、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項11】
アウタシェルの端部でのベアリング構成(58;32;105)は、インナシェル(54’、54”)のシャフトに対して径方向に伝達可能である、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項12】
径方向のベアリング構成(58;32;105)の動きの方向は、ガイド(82)若しくはレバー(106,108)により画成される、請求項10〜11のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項13】
径方向の動き量、即ちロールの垂れ下がりは、調整装置(118)により画成される、請求項10〜12のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項14】
調整装置(118)と共にスプリング装置(116)を作動させ、これにより、ロールの垂れ下がり機構のクリアランスが取り除かれ、前記機構が一般的に強化される、請求項10〜13のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項15】
調整装置(118)は、少なくとも1つの回転可能なスクリューを含む、請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項16】
スプリング装置(116)は、少なくとも1つのガススプリングを含む、請求項10〜15のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項17】
張力計測を備える請求項10〜16のうちのいずれか1項に記載のロール。
【請求項18】
過大な速度範囲で動作させる請求項10〜16のうちのいずれか1項に記載のロールの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2008−516091(P2008−516091A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534041(P2007−534041)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050344
【国際公開番号】WO2006/037859
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】