説明

ワイパブレード

本発明は特にウィンドガラスワイパのためのワイパブレードであって、該ワイパブレードが、少なくとも1つの被覆体を少なくとも部分的に備えている形式のものに関する。この場合、前記被覆体が、該被覆体の層厚さを測定するための少なくとも1種の指示薬成分を含有している。さらに本発明は、ワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、特に自動車のウィンドガラスワイパのためのワイパブレードであって、該ワイパブレードが、少なくとも1つの被覆体を少なくとも部分的に備えている形式のものに関する。さらに本発明は、ワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための方法に関する。
【0002】
ウィンドガラスワイパブレードが自動車のウィンドガラスの輪郭にできるだけ良好に適合するように種々異なる温度においてもフレキシブルとなるようにするために、ワイパブレードは通常、エラストマプロファイル、すなわちエラストマ異形成形材から製造される。この場合、主としてたとえばクロロプレンゴム、シリコーンゴムまたはポリウレタンゴムのような天然ゴムや合成ゴムのようなゴム材料が使用される。
【0003】
エラストマは、ガラスやプラスチックのような材料に比べて高い滑り摩擦係数を有しているので、ウィンドガラスの表面に載着されたウィンドガラスワイパの形のエラストマ異形成形材の規定された鉛直方向の載着力が加えられる場合、水平方向運動のためには載着力の数倍に相当する力が消費されなければならない。ウィンドガラスワイパが降雨時等の濡れた状態で作動される場合、このことは重要な問題とはならない。なぜならば、ウィンドガラス上の水膜によって、ウィンドガラスワイパブレードとウィンドガラスとの間に薄い潤滑膜が形成されるので、流体動力学的な潤滑が生じるからである。しかし、たとえば夏期や、短時間のにわか雨の後に、潤滑膜としての水がない状態でウィンドガラスワイパブレードが作動されると問題が生じる。このような条件下では、ウィンドガラスの素早い乾燥が行われ、これによって摩擦係数が著しく上昇し、このことはウィンドガラスワイパのいわゆるスキールノイズ(キュッキュ音)、びびりまたはそれどころか停止を招く恐れがある。
【0004】
乾燥したガラスウインドに対するウィンドガラスワイパブレードの摩擦係数を低減させるためには、これまでしばしばウィンドガラスワイパブレードの表面の塩素化または臭素化、つまり硬化が実施されていた。しかしこのことは、極めて正確なプロセス実行を要求し、しかも環境保護の点から見て問題がないわけでない。さらにこの種の処理方法によってワイパ品質にネガティブな影響が与えられる恐れがある。
【0005】
さらに、エラストマ異形成形材に被覆体を備えることが既に提案されている。この被覆体は、特に乾燥した条件下での摩擦係数、つまり乾燥時摩擦係数を低減させる。すなわちたとえばワイパリップをシリコーンゴムで被覆することが知られており、このシリコーンゴムには摩擦係数を低減させるために乾燥潤滑剤として二硫化モリブデンが導入されている。さらに、ポリウレタンラッカを結合剤として使用することが知られており、このポリウレタンラッカには黒鉛粉末が埋入されている。この他に、エラストマを被覆するための1成分のポリウレタンラッカが知られている。このポリウレタンラッカは、反応性のポリシロキサンを含有している。さらに、ポリウレタンとシロキサンの他に、カーボンブラック、テフロン、黒鉛、またはタルクのような添加剤を含有している被覆体が知られている。この材料を用いてエラストマに乾燥した条件下で低い摩擦係数を有する被覆体を形成することができる。
【0006】
摩擦を低減させる公知の減摩性の被覆体は、その黒色または黒灰色の色に基づきワイパブレードのエラストマ異形成形材とは見分けがつかないので、これまでは、被覆体の品質を視覚的に検査することが不可能であった。したがって、ワイパブレードの被覆体の欠陥、たとえば被覆体を有しないか、または過度に少ない被覆体しか有しない領域を明瞭に検出することができない。ワイパブレード上への分配に関して被覆体を検査することは、公知の減摩性の被覆体とワイパブレードのエラストマ異形成形材とが主として化学的な元素「炭素」および「水素」から成っているので両者が化学的に極めて酷似していることによって付加的に困難にされている。
【0007】
米国特許公開第5349718号明細書に基づき、ワイパブレードの使用中に大気中のUV放射線の作用を受けて徐々にその色を変化させる被覆体をワイパブレードに備えることが公知である。徐々に変色させることによりワイパブレードの寿命を表示し、かつワイパブレードの使用者に、ワイパブレードを交換する必要があることを表示しようとしている。
【0008】
このような被覆体は、被覆体における欠陥、たとえばスライドコートの欠陥を検出するためには適していない。なぜならば、この被覆体は別個の層としてワイパブレードに塗布され、しかも変色は徐々にしか行われないからである。
【0009】
発明の開示
本発明の対象は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有するワイパブレード、つまり、被覆体が、該被覆体の層厚さを測定するための少なくとも1種の指示薬成分を含有することを特徴とするワイパブレードである。本発明によるワイパブレードには、ワイパブレードの被覆体の層厚さが測定可能となるという利点がある。このことは、ワイパブレードが、被覆体の層厚さを測定するための少なくとも1種の指示薬成分を含有する被覆体を少なくとも部分的に有していることにより行われる。被覆体は、特に減摩性の被覆体、有利にはスライドコート被覆体である。本発明の枠内で、「指示薬成分」とは、被覆体中のその含量が被覆体のその他の全ての成分よりも著しく少ないような成分を意味する。指示薬成分の含量は、有利には最大3質量%であり、特に有利には、0.1〜2質量%である。さらに「指示薬成分」とは、被覆体のトライボロジ的、物理的、化学的および別の特性に対して何ら影響を与えないか、またはせいぜい無視し得る程度の影響しか与えないことを意味する。特に指示薬成分は、被覆体およびワイパブレードに対して化学的に不活性である。さらに本発明の枠内における指示薬成分は、被覆体中でのその含量、ひいては被覆体の層厚さが破壊なく測定可能であることにより優れている。
【0010】
本発明の根底をなす思想は、ワイパブレードの被覆体に、被覆体の層厚さのための指示薬として働く付加的な成分を少量で添加することである。指示薬成分が被覆体中にほぼ均質に分配されていることにより、被覆体中のこの成分の含量は、被覆体の層厚さに対して比例する。したがって指示薬成分の含量を測定することによって、層厚さを求めることができる。
【0011】
本発明によれば、被覆体における欠陥、たとえばワイパブレードの、被覆されていない領域または過度に小さな層厚さを有する領域、または剥落した被覆体を有する領域を検出することが可能となる。また、指示薬成分を用いて、ワイパブレードの使用による被覆体の摩耗を検査することができる。
【0012】
指示薬成分を含有する被覆体の製作は、指示薬成分を有しない被覆体の製作と同じ方法、または類似した方法により行うことができる。また、ワイパブレードへの被覆体の被着も、指示薬成分なしの被覆体の被着と同じ方法または類似した方法により行うことができる。この場合に本発明によるワイパブレードの別の利点が得られる。なぜならば被覆体の製作方法および被覆体を被着させるための方法を変更しなくて済むからである。被覆体に、その製作時に指示薬成分を添加することしか必要とならない。
【0013】
指示薬成分の含量が特に破壊なく測定可能となるので、ワイパブレードは、被覆体の層厚さの測定後に、たとえば自動車のウィンドガラスワイパ装置におけるその汎用の使用にワイパ品質を損なうことなく供給され得る。このことには、層厚さの測定を、個々のワイパブレードにつき抜取り検査式に行うのではなく、多数のワイパブレードにつき行うことができるという利点がある。層厚さの測定は、できれば全ての個々のワイパブレードのために行われ得る。すなわち、被覆体の品質を製造プロセスにおいて、たとえば連続的にコントロールすることができる。
【0014】
有利な実施形態では、指示薬成分が、1種の蛍光性の成分、特にUV蛍光性の成分、または種々の蛍光性の成分の混合物である。層厚さのための別の指示薬成分またはマーカ成分も可能である。すなわち、たとえば弱放射性の成分を使用することができ、この成分の放射線は被覆体に含まれている量に対して比例する。たとえばC13のような非放射性の炭素同位体を指示薬成分として使用することも可能である。この場合、C13は、C13NMR(核磁気共鳴)によって検出され得る。しかし、蛍光性の指示薬成分には、指示薬成分自体が比較的好都合であるだけでなく、紫外線分光法というその測定方法も比較的好都合であり、僅かな手間をかけるだけで実施可能となるという利点がある。
【0015】
蛍光性の成分は、無機化合物または有機化合物であってよい。蛍光性の成分は、固体の形で、つまり顔料として、または液体の形で、つまり染料として提供されてよい。蛍光性の成分は、たとえばリン灰ウラン石、オキサジン、ローダミン、カルボシアニン、ウラニン、フルオレセインであってよい。
【0016】
被覆体が、層厚さのための指示薬成分として蛍光性の成分を有している場合、層厚さを測定するために、ワイパブレードの被覆体は、紫外線(UV)の放射線源を用いて紫外線で照射される。蛍光性の成分は紫外線を吸収し、特徴的な黄緑色の光を発する。発せられた蛍光の強度は、たとえば紫外線分光計によって測定され、定量化され得る。この場合、蛍光の強度は、蛍光性の成分の量に対して比例し、ひいては層厚さに対して比例している。
【0017】
本発明の別の対象は、請求項10の特徴部に記載の特徴を有する、ワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための方法である。
【0018】
ワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための本発明による方法は、以下のステップを包含する:
(a)少なくとも1種の蛍光性の成分を含有する被覆体で、ワイパブレードを少なくとも部分的に被覆し、
(b)ステップ(a)により被覆されたワイパブレードの被覆体に、紫外線の放射線源によって紫外線を照射し、
(c)ステップ(b)による照射の際に発せられた蛍光の強度を測定し、
(d)ステップ(c)により測定された蛍光の強度によって、被覆体の層厚さを測定する。
【0019】
ワイパブレードのエラストマ異形成形材の被覆(ステップ(a))は、たとえば吹付け塗布、はけ塗り等によって行われる。被覆体は、塗布の後で、場合によっては加熱下に乾燥されられる。
【0020】
本発明による方法のステップ(b)による被覆体の照射は、慣用のUV放射線源を用いて、かつ蛍光性の成分の検出のために使用されるような汎用の強度で行われ得る。
【0021】
照射の際に発せられる蛍光の強度の測定は、慣用の紫外線分光計によって実施され得る(ステップ(c))。
【0022】
ステップ(c)により測定された蛍光の強度を利用した被覆体の層厚さの測定は、既知の法則性、すなわち蛍光性の成分の含量、ひいては層厚さは、蛍光の強度に対して比例するという法則性を受ける。
【0023】
本発明によるワイパブレードの被覆体は、特に減摩性の被覆体であり、有利にはスライドコートもしくは滑り塗膜である。減摩性の被覆体は、ワイパブレードに直接に被着されているか、または複数の種々の被覆体のうちの1つとして設けられていてよい。被覆体はさらに、1つまたは複数の層の形で被着されていてよい。減摩性の被覆体の層厚さは、2〜20μmの範囲であると有利である。
【0024】
スライドコートもしくは滑り塗膜は少なくとも一種の乾燥潤滑剤、特に黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、二硫化モリブデン、結合剤、特にポリアクリレート、ポリウレタン、メラミン樹脂ならびに溶剤、特に水および/または1種または数種の有機溶剤を含有している。
【0025】
スライドコートは、特にポリウレタン系であり、このポリウレタン系には、場合によっては、反応性イソシアネート基を含有する第2の成分が添加される。第2の成分のイソシアネート基は、結合剤のあとからの化学的な架橋を生ぜしめるので、このイソシアネート基は、ポリマに組み込まれた、摩擦係数を低減させる成分を形成する。スライドコートは、有利には水性の1成分ラッカ、または2成分ラッカとして提供される。
【0026】
乾燥潤滑剤としては、特に黒鉛が適している。さらにポリプロピレン粉末、または粉末状のポリテトラフルオロエチレンまたは二硫化モリブデンの添加が有利である。さらに上記の乾燥潤滑剤のうち2種または数種を、場合によってはポリアミド粉末、ポリエチレン粉末および/またはポリアミドの溶液と組み合せてスライドコートに添加することもできる。黒鉛と別の乾燥潤滑剤との混合物が特に有利であることが判っている。特にポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、または二硫化モリブデンと組み合わされた形の黒鉛が適している。このような改質スライドコートは、最大1.5、部分的に1.0より下の特に低い乾燥時摩擦係数を有すると同時に耐磨耗性および耐候性を有する、ワイパブレードに極めて良好に付着した被覆体をもたらす。
【0027】
スライドコートに混入された乾燥潤滑剤は、最大20μm、理想的には10μmよりも小さい粒度を有していると有利である。これによって、ワイパブレードの十分に線条痕のない払拭パターンが保証されている。
【0028】
ポリウレタンと、場合によっては硬化剤と、乾燥潤滑剤として添加された黒鉛粉末とを有するスライドコートは、薄い被覆体の形でエラストマ異形成形材に被着され、120℃の温度で10分間乾燥される。
【0029】
スライドコートとしては、たとえば国際公開第03/106575号パンフレットに記載されているようなスライドコートが適している。
【0030】
蛍光性の成分は、スライドコートの機能、たとえば付着、摩擦係数および摩擦係数低減ならびに摩耗特性に対して不都合な影響を与えない。
【0031】
実施例
適当なスライドコート系は、微細黒鉛約10質量%と、水性結合剤分散液(たとえばポリアクリレートまたはポリウレタン)約4〜8質量%と、有機溶剤(たとえばブトキシエタノール)約10〜15質量%と、指示薬成分(ウラニンAPまたはフルオレセイン)約0.5質量%と、水約70質量%とから成っている。スライドコートの製作は、適切な溶解機内で適度な撹拌下に行われる。
【0032】
スライドコート被覆体に、波長254nmと波長360nmの紫外線ランプによって紫外線を照射した。254nm波長が特に好適である。なぜならば未覆体、またはほとんど被覆されていない基板(ワイパブレード)から蛍光が特に強力に浮かび上がるからである。
【0033】
蛍光を、市販の紫外線分光計によって反射測定しかつ定量化した。これによって、既知の法則性に従って層厚さを測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にウィンドガラスワイパのためのワイパブレードであって、該ワイパブレードが、少なくとも1つの被覆体を少なくとも部分的に備えている形式のものにおいて、前記被覆体が、該被覆体の層厚さを測定するための少なくとも1種の指示薬成分を含有していることを特徴とするワイパブレード。
【請求項2】
前記被覆体中の指示薬成分の含量が、破壊なしに測定可能である、請求項1記載のワイパブレード。
【請求項3】
被覆体における指示薬成分の含量が、最大3質量%であり、有利には0.1〜2.0質量%である、請求項1または2記載のワイパブレード。
【請求項4】
指示薬成分が、UV蛍光性の成分である、請求項1から3までのいずれか1項記載のワイパブレード。
【請求項5】
蛍光性の成分が、無機化合物または有機化合物である、請求項4記載のワイパブレード。
【請求項6】
蛍光性の成分が、リン灰ウラン石、オキサジン、ローダミン、カルボシアニン、ウラニン、またはフルオレセインである、請求項4または5記載のワイパブレード。
【請求項7】
被覆体が、減摩性の被覆体、特にスライドコートである、請求項1から6までのいずれか1項記載のワイパブレード。
【請求項8】
前記スライドコートが、少なくとも1種の乾燥潤滑剤、特に黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、二硫化モリブデンを有している、請求項7記載のワイパブレード。
【請求項9】
スライドコートが、結合剤、特にポリアクリレート、ポリウレタン、メラミン樹脂を含有している、請求項7または8記載のワイパブレード。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための方法において、
(a)少なくとも1種の蛍光性の成分を含有する被覆体でワイパブレードを少なくとも部分的に被覆し、
(b)ステップ(a)により被覆されたワイパブレードの被覆体に、紫外線の放射線源によって紫外線を照射し、
(c)ステップ(b)による照射の際に発せられた蛍光の強度を測定し、
(d)ステップ(c)により測定された蛍光の強度によって、被覆体の層厚さを測定する、
より成る方法ステップを実施することを特徴とする、ワイパブレードの被覆体の層厚さを測定するための方法。

【公表番号】特表2009−528212(P2009−528212A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556731(P2008−556731)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050351
【国際公開番号】WO2007/098982
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】