説明

ワイパーブレード用ゴム組成物及びワイパーブレード

【課題】シリコーンゴムを主成分としても、動作時の摩擦力が低く、ビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しにくいワイパーブレード用ゴム組成物及びワイパーブレードを提供する。
【解決手段】シリコーンゴム:100質量部、23℃における動粘度が100〜10,000mm/秒のシリコーンオイル:0.1〜20質量部、グラファイト及び表面を疎水化したシリカのうち少なくとも1種:合計で5〜50質量部を含有するゴム組成物を成型して、ワイパーブレードとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスに付着した雨滴を除去するワイパーブレード用のゴム組成物、及びこのゴム組成物から形成されたワイパーブレードに関する。より詳しくは、シリコーンゴムを主成分とするワイパーブレード用ゴム組成物及びワイパーブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム成形体は、その弾性を利用してシール部材、防振部材、自動車用ウェザーストリップやワイパーブレードなど、幅広い分野で利用されている。一方、従来のワイパーブレードは、天然ゴムの他、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン(Ethylene Propylene Diene Monomer:EPDM)ゴムなどの合成ゴムで形成されているが、単に動作させるだけでは、雨滴の除去が不十分であり、視界が十分に確保できないという問題がある。
【0003】
この問題を解決する方法として、従来、窓ガラスに撥水剤をコーティングする方法が採られている。この方法は、窓ガラス表面に表面張力が低い撥水剤の被膜が形成されるため、窓ガラスから雨滴が飛散しやすくなり、運転時の視界を良好に保持することができるが、その一方で、長時間ワイパーを作動させると、撥水剤成分がガラス面から物理的にはぎ取られ、効果が持続しないという問題がある。
【0004】
そこで、従来、シリコーンゴムに撥水剤としてシリコーンオイルを含有させたワイパーブレードが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、シリコーンオイルを含浸させた多孔質粒子を、シリコーンゴムに混合したワイパーブレードも提案されている(特許文献3参照)。これら特許文献1〜3に記載のワイパーブレードは、使用過程においてシリコーンオイルが滲みだし、窓ガラス表面に撥水性被膜を形成するため、優れた撥水効果を得ることができる。
【0005】
一方、シリコーンゴムは、天然ゴム、クロロプレンゴム及びEPDMゴムなどに比べて摩擦係数が高いため、ワイパーブレードに使用すると、動作時にビビリ音や鳴きが発生しやすい。このような摩擦音を解決する方法としては、ガラスとの接触面をEPDMなどの高硬度の合成ゴムで構成して、ガラス面との摩擦抵抗を小さくする方法が提案されている(特許文献4参照)。また、従来、シリコーンオイルなどの撥水剤成分を含ませた撥水剤担持体を混合した天然ゴム組成物からなるワイパーブレードも提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−247253号公報
【特許文献2】特開平10−16721号公報
【特許文献3】特開2000−16253号公報
【特許文献4】特開2004−17948号公報
【特許文献5】特開2004−50974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、特許文献4に記載のワイパーブレードは、シリコーンゴムと合成ゴムとを押出成型機内で多色成型することにより形成されるが、その場合、合成ゴムとシリコーンゴムとの接合面の密着性が必ずしも十分とは言えず、耐久性に劣るという問題点がある。
【0008】
一方、特許文献5に記載のワイパーブレードのように、シリコーンゴム以外のゴムを主成分とすると、摩擦音が低減されることはあるが、これらのゴムはシリコーンゴムに比べて耐候性が劣っている。また、長時間動作させるとワイパーが熱をもつため、ワイパーブレード用のゴムにも耐熱性が求められるが、シリコーンゴム以外のゴムでは十分な特性が得られないという問題点がある。更に、撥水剤にシリコーンオイルを使用した場合、シリコーンゴム以外のゴムとは相溶性が低いため、表面に滲みだし、べたつきが生じやすいという問題点もある。
【0009】
そこで、本発明は、撥水性被膜形成効果に優れ、かつ、シリコーンゴムを主成分としても、動作時の摩擦力が低く、ビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しにくいワイパーブレード用ゴム組成物及びワイパーブレードを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイパーブレード用ゴム組成物は、シリコーンゴム:100質量部、23℃における動粘度が100〜10,000mm/秒のシリコーンオイル:0.1〜20質量部、グラファイト及び表面を疎水化したシリカのうち少なくとも1種:合計で5〜50質量部を含有するものである。
本発明においては、シリコーンゴムに、特定の動粘度のシリコーンオイルと、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを、それぞれ特定量配合しているため、従来品に比べて、オイルブリードによる汚染が発生しにくく、かつ窓ガラス面に対する摩擦力が低い。これにより、撥水性及び払拭性に優れ、更に摩擦音が発生しにくいワイパーブレードを実現することができる。
【0011】
本発明に係るワイパーブレードは、前述したゴム組成物からなるものである。
本発明においては、シリコーンオイルの動粘度を特定の範囲とし、更に、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを含有しているため、従来品に比べて、撥水性及び払拭性が向上し、ビビリ音や鳴きなどの摩擦音も発生しにくい。
このワイパーブレードは、動摩擦係数を0.4以下とすることができる。
また、JIS K6253に基づき、23℃の温度条件下で、タイプAデュロメータ試験機により測定した硬さが50〜80°であってもよい。
更に、接触したガラス面に撥水性被膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコーンゴムに、特定の動粘度のシリコーンオイルと、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを、それぞれ特定量配合しているため、撥水性及び払拭性に優れ、かつビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しないワイパーブレードを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<第1の実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態に係るワイパーブレード用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物という。)について説明する。本実施形態のゴム組成物は、シリコーンゴムを100質量部、23℃における動粘度が100〜10,000mm/秒のシリコーンオイルを0.1〜20質量部、グラファイト及び表面を疎水化したシリカのうち少なくとも1種を合計で5〜50質量部を含有する。
【0015】
[シリコーンゴム]
本実施形態のゴム組成物で使用するシリコーンゴムは、加硫し得るゴム状弾性体であればよく、例えばジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム及びメチルビニルフェニルシリコーンゴムなどのミラブル型シリコーンゴムが挙げられる。なお、これらのシリコーンゴムは、単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0016】
[シリコーンオイル]
前述したシリコーンゴムにシリコーンオイルを配合すると、ワイパー動作時にブレードからシリコーンオイルが滲みだし、窓ガラス表面に撥水性被膜を形成することができる。しかしながら、シリコーンオイルの23℃における動粘度が100mm/秒未満であると、シリコーンオイルが必要以上に滲みだし、成型後のワイパーブレードにべたつきを生じやすくなる。一方、23℃における動粘度が10,000mm/秒を超えるシリコーンオイルを配合すると、窓ガラス表面への被膜形成効率が低下し、撥水性を生じるまでのワイパー動作時間が長くなる。
【0017】
よって、本実施形態のゴム組成物では、23℃における動粘度が100〜10,000mm/秒のシリコーンオイルを配合する。なお、シリコーンオイルの23℃における動粘度の下限値は500mm/秒であることが望ましく、上限値は3,000mm/秒であることが望ましい。これにより、成形体からシリコーンオイルの過剰な滲みだしが抑制されると共に、撥水性被膜の形成効率が向上する。その結果、ワイパーブレードや窓ガラス表面の汚染がなく、ワイパー動作後速やかに撥水効果が得られるワイパーブレード用ゴム組成物を実現することができる。
【0018】
また、本実施形態のゴム組成物に配合するシリコーンオイルの種類は、特に限定されるものではなく、前述した動粘度の範囲のものから適宜選択することができるが、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及び側鎖のメチル基の一部を水素で置換したメチルハイドロジェンシリコーンオイルなどを使用することができる。
【0019】
更に、シリコーンオイルの配合量は、主成分であるシリコーンゴム100質量に対して0.1〜20質量部とする。ゴム組成物におけるシリコーンオイルの配合量が0.1質量部未満の場合、十分な撥水性が得られず、また配合量が20質量部を超えると、成型したワイパーブレードの硬さが低下して、払拭性が低下するからである。
【0020】
なお、シリコーンオイルの配合量は、シリコーンゴム100質量部に対して1〜10質量部とすることがより好ましい。これにより、シリコーンオイルの過剰な滲みだしによるワイパーブレードや窓ガラス表面の汚染を防止し、払拭性及び撥水性のバランスに優れたワイパーブレード用ゴム組成物を実現することができる。
【0021】
[グラファイト,シリカ]
本実施形態のゴム組成物では、ワイパーブレードの摺動性を向上する目的で、グラファイト及び/又は表面が疎水化されたシリカを配合する。その際使用するグラファイトとして、例えば塊状黒鉛、鱗片状黒鉛及び土状黒鉛などの天然黒鉛や、人造黒鉛などを使用することができる。
【0022】
また、シリカは、結晶シリカ、溶融シリカ、乾式法により製造された無水珪酸、又は湿式法により製造された含水珪酸などを、所定の方法でその表面を疎水化したものを使用することができる。シリカの表面を疎水化する方法は、特に限定されるものではなく、シリカの種類や性質などに応じて適宜選択することができるが、本実施形態のゴム組成物においては、シランカップリング剤により疎水化処理されたものを使用することが好ましい。
【0023】
なお、シリカの表面を疎水化する際に使用するシランカップリング剤の種類は、特に限定されるものではなく、公知のあらゆるシランカップリング剤を1種又は2種以上適宜選択して使用することができる。
【0024】
シリカの表面を疎水化するシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリキドキシプロピルメチルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどの分子中に2個以上の加水分解性シラノールを有するものが挙げられる。
【0025】
本実施形態のゴム組成物においては、前述したグラファイト及び表面を疎水化したシリカの一方のみを配合してもよいが、その両方を配合することもできる。ただし、シリコーンゴム100質量部に対して、これらの配合量が合計で5質量部未満の場合、成型したワイパーブレードの摺動性が不十分となり、ビビリ音や鳴きが発生しやすくなる。一方、グラファイト及び表面を疎水化したシリカの配合量が、合計で50質量部を超えると、成型したワイパーブレードの硬さが高くなり、動作時の窓ガラス表面への追従性が低下するため、払拭性が低下する。
【0026】
よって、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカの配合量は、主成分であるシリコーンゴム100質量部に対して、合計で5〜50質量部とする。なお、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカの配合量は、合計で10〜30質量部とすることが望ましく、これにより、摺動性と払拭性を兼備したワイパーブレードを得ることができる。
【0027】
[製造方法]
次に、前述したゴム組成物の製造方法について説明する。本実施形態のゴム組成物は、前述した各成分を、例えばバンバリーミキサー、ニーダー及び二本ロールなどの公知の混練装置を用いて混練することにより得られる。
【0028】
以上詳述したように、本実施形態のゴム組成物は、シリコーンゴムに、特定の動粘度のシリコーンオイルと、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを、それぞれ特定量配合しているため、シリコーンオイルによる撥水性被膜形成効率を低下させずに、ガラス面に対する動摩擦係数を低下させることができる。これにより、撥水性及び払拭性に優れ、かつビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しないワイパーブレードを得ることができる。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るワイパーブレードについて説明する。本実施形態のワイパーブレードは、前述した第1の実施形態のゴム組成物を、所定形状に成型したものである。
【0030】
[動摩擦係数]
本実施形態のワイパーブレードは、動摩擦係数(対象材SUS304)が0.4以下であることが望ましい。動摩擦係数が0.4を超えると、摺動性が不十分となり、ビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しやすくなるからである。なお、ワイパーブレードの動摩擦係数は、例えばグラファイトや疎水シリカの配合量を変えることにより、調整することができる。
【0031】
[硬さ]
本実施形態のワイパーブレードは、JIS K6253に基づき、23℃の温度条件下で、タイプAデュロメータ試験機により測定した硬さが50〜80°であることが望ましい。このデュロメータ硬さが50°未満の場合、動作時に、ワイパーブレード先端に設けられたリップ部が窓ガラスに倒れ込み、雨滴の払拭性が低下することがある。また、ワイパーブレードのデュロメータ硬さが80°を超えると、リップ部が立ち過ぎて、スティック−スリップな動作が発生し、ビビリ音が発生しやすくなる。
【0032】
[製造方法]
以下、本実施形態のワイパーブレードの製造方法について説明する。本実施形態のワイパーブレードは、主成分であるシリコーンゴムを架橋して、3次元網目構造を形成することにより、その機能が発生する。具体的には、前述した第1の実施形態のゴム組成物と架橋剤とを公知の混練装置を用いて混練した後、プレス成形や押出成型などの公知の成型方法で成型することにより得られる。
【0033】
その際、架橋剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、及びp−メチルベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を使用することができる。なお、架橋剤は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、これら架橋剤の使用量は、シリコーンゴム100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることがより好ましい。架橋剤の添加量が、シリコーンゴム100質量部に対して0.1質量部未満の場合、架橋が不十分となることがある。一方、架橋剤の添加量が10質量部を超えると、成型時の加工性が低下すると共に、架橋剤がブルームし易くなることがある。なお、ブルームとは、成型品表面に架橋剤が粉をふいた状態で存在することをいう。
【0035】
更に、本実施形態のワイパーブレードは、必要に応じて、そのリップ部をグラファイトなどの摺動性粒子でコーティングすることができる。その方法としては、例えば成型後のワイパーブレードを、摺動性粒子を分散させた熱硬化性樹脂溶液に浸漬した後、ワイパーブレードに付着した樹脂を熱硬化させる方法がある。このように、リップ部表面に摺動性粒子を含む層を形成することにより、動作時の摩擦音を更に低減することが可能となる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態のワイパーブレードは、シリコーンオイルを含有しているため、接触したガラス面に撥水性被膜を形成することができる。また、このワイパーブレードでは、シリコーンオイルの動粘度を特定の範囲とし、更に、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを含有しているため、従来品に比べて、撥水性及び払拭性に優れ、かつビビリ音や鳴きなどの摩擦音が発生しにくい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0038】
本実施例においては、前述した第1の実施形態のゴム組成物を使用して、ワイパーブレード又は評価用成形体を作製し、その特性を評価した。また、本発明の比較例として、本発明の範囲から外れるゴム組成物を使用して、ワイパーブレード又は評価用成形体を作製し、実施例と同様の方法で特性を評価した。各実施例及び比較例の具体的作製方法並びに評価方法を下記に示す。
【0039】
(実施例1)
シリコーンゴムI(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(以下、モメンティブと略す。)製「TSE260−5U」):70質量部、シリコーンゴムII(モメンティブ製「TSE260−7U」):30質量部、シリコーンオイルA(モメンティブ製「TSF451−500」,動粘度:500mm/秒):5質量部、カーボンブラック(旭カーボン(株)製「旭#60」):1質量部、グラファイト(新越化成(株)製「G−20A」):30質量部、架橋剤(モメンティブ製「TC−8(2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン」):0.4質量部を、容量3リットルのニーダーミキサーを用いて15分間混練し、取り出した。
【0040】
次に、得られた混練物を、プレス温度:170℃、プレス時間:10分で加硫した後、更に200℃の条件下で4時間二次加硫させて、評価用のワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0041】
(実施例2)
シリコーンオイルAの代わりに、シリコーンオイルB(モメンティブ製「TSF451−1000」,動粘度:1,000mm/秒)を5質量部配合した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0042】
(実施例3)
シリコーンオイルAの代わりに、シリコーンオイルC(モメンティブ製「TSF451−3000」,動粘度:3,000mm/秒)を5質量部配合した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0043】
(実施例4)
シリコーンオイルBの配合量を1質量部とした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0044】
(実施例5)
シリコーンオイルBの配合量を10質量部とした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0045】
(実施例6)
グラファイトの配合量を5質量部にした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0046】
(実施例7)
グラファイトの配合量を45質量部にした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0047】
(実施例8)
グラファイトの代わりに、表面を疎水化したシリカ(日本アエロジル(株)製「R972」)を5質量部配合した以外は、前述した実施例6と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0048】
(実施例9)
表面を疎水化したシリカの配合量を10質量部にした以外は、前述した実施例8と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0049】
(実施例10)
表面を疎水化したシリカの配合量を25質量部にした以外は、前述した実施例8と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0050】
(実施例11)
表面を疎水化したシリカ5質量部に加えて、グラファイトを20質量部配合した以外は、前述した実施例8と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0051】
(比較例1)
シリコーンオイルAの代わりに、シリコーンオイルD(モメンティブ製「TSF451−50」,動粘度:50mm/秒)を5質量部配合した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0052】
(比較例2)
シリコーンオイルAの代わりに、シリコーンオイルE(モメンティブ製「TSF451−50,000」,動粘度:50,000mm/秒)を5質量部配合した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0053】
(比較例3)
シリコーンオイルBの配合量を0.05質量部にした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0054】
(比較例4)
シリコーンオイルBの配合量を25質量部にした以外は、前述した実施例2と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0055】
(比較例5)
グラファイトの配合量を2.5質量部にした以外は、前述した実施例6と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0056】
(比較例6)
グラファイトの配合量を60質量部にした以外は、前述した実施例6と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0057】
(比較例7)
表面を疎水化したシリカの代わりに、表面が未処理のシリカ(日本アエロジル(株)製「R380」)を10質量部配合した以外は、前述した実施例9と同様の方法及び条件で、ワイパーブレード、ダンベル及びシートを成型した。
【0058】
そして、前述した方法で作製した実施例1〜11及び比較例1〜7の試料(ワイパーブレード,ダンベル、シート)を、以下に示す方法で評価した。
【0059】
[耐汚染性]
得られたワイパーブレードを、40℃、相対湿度90%の環境に1週間暴露した後、表面のべたつきを指触にて判定した。その結果、べたつきがなかったものを○、べたつきがあったものを×とした。
【0060】
[撥水性]
ワイパーのベンチ試験機の窓ガラス面を油膜除去剤にて洗浄した後、水滴を噴霧させることなくワイパーブレードを5分間空運転させ、ガラス面に撥水性皮膜を形成させた。その後、20秒間散水−10秒間止水の散水パターンを繰り返し、ガラス面に形成された水滴の大きさから、撥水性を5段階(数字が大きいもの程撥水性に優れる)で評価した。その際、ワイパーブレードの押し付け圧は16g/cmとした。
【0061】
[初期払拭性,耐ビビリ音性,耐鳴き性]
撥水性の評価試験と同様に、ワイパーブレードを5分間空運転させた後に、20秒間散水−10秒間止水の散水パターンを繰り返し、払拭性、ワイパーブレードがガラス面を摺動する際に生じるビビリ音(ジャダー)及び鳴き(スキール音)を、5段階(数字が大きいもの程各特性に優れる)で評価した。
【0062】
[払拭回数,動作電流]
ベンチ試験機にて、ワイパーブレードを5分間空運転させ、その間の払拭回数及び動作電流を測定した。
【0063】
[動摩擦係数]
厚さ5mm、縦100mm、横100mmのプレス成型品を作製し、新東科学(株)製トライポギアTYPE:HHS2000を使用して測定した。測定は、φ10mmの剛球圧子にて50g荷重を試料にかけ、2mm/秒の速度で往復運動させることで実施した。
【0064】
[引張強さ]
JIS K6251に基づき、プレス温度:170℃、プレス時間:10分で成形した3号ダンベルを、更に200℃の条件下4時間二次加硫させ、これを23℃の条件下、500mm/分の速度で引張り、最大応力を測定した。
【0065】
[硬さ]
JIS K6253に基づき、プレス温度:170℃、プレス時間:10分で成形した厚さ6mmの試験片を、更に200℃の条件下4時間二次加硫させたものを、23℃の温度条件下で、タイプAデユロメータ試験機を使用して、その硬さを測定した。
【0066】
以上の結果を、下記表1,2にまとめて示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
上記表1,2に示すように、本発明の範囲で作製した実施例1〜11の成型品は、いずれも、耐汚染性、引張強さ、硬さ、動摩擦係数、撥水性、払拭性、耐ビビリ音性、耐鳴き性、払拭回数、及び電流値が良好で、バランスのとれた特性であることが分かった。
【0070】
特に、実施例1〜3、9〜11の成型品は、撥水性及び払拭性の評価が4以上、動摩擦係数が0.26以下であり、かつ動作電流値が2.6A以下と優れた特性を示した。
【0071】
これに対して、本発明の範囲から外れる各比較例の成形体は、以下の点で実施例の成形体よりも劣っていた。
【0072】
(1)比較例1
比較例1の成型体は、動粘度が100mm/秒未満のシリコーンオイルDを使用したため、成型品表面にベタツキが生じた。
【0073】
(2)比較例2
比較例2の成型体は、動粘度が10,000mm/秒を超えるシリコーンオイルEを使用したため、撥水性に劣っていた。
【0074】
(3)比較例3
比較例3の成型体は、シリコーンオイルの添加量が0.1質量部未満のため、撥水性に劣っていた。
【0075】
(4)比較例4
比較例4の成型体は、シリコーンオイルの添加量が20質量部を超えているため、表面にベタツキが生じた。
【0076】
(5)比較例5
比較例5の成型体は、グラファイト及び表面を疎水化したシリカの総配合量が5質量部未満であるため、動摩擦係数が0.4以上となり、耐ビビリ音及び耐鳴きが低下し、かつ払拭回数及び電流値も増加した。
【0077】
(6)比較例6
比較例6の成型体は、グラファイト及び表面を疎水化したシリカの総配合量が50質量部を超えているため、硬さが80以上となり、耐ビビリ音及び耐鳴きが低下した。
【0078】
(7)比較例7
比較例7に示す成型体は、表面が未処理のシリカを使用したため、払拭性及び耐ビビリ音、更には耐鳴きが低下した。
【0079】
以上の結果から、シリコーンゴムに、特定の動粘度のシリコーンオイルと、グラファイト及び/又は表面を疎水化したシリカを含有させることにより、撥水性、払拭性、耐ビビリ音、耐鳴きの全てが良好で、かつワイパー動作時の電流が低く、摺動性に優れるワイパーブレードが得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム:100質量部、
23℃における動粘度が100〜10,000mm/秒のシリコーンオイル:0.1〜20質量部、
グラファイト及び表面を疎水化したシリカのうち少なくとも1種:合計で5〜50質量部、
を含有するワイパーブレード用ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物からなるワイパーブレード。
【請求項3】
動摩擦係数が0.4以下であることを特徴とする請求項2に記載のワイパーブレード。
【請求項4】
JIS K6253に基づき、23℃の温度条件下で、タイプAデュロメータ試験機により測定した硬さが50〜80°であることを特徴とする請求項2又は3に記載のワイパーブード。
【請求項5】
接触したガラス面に撥水性被膜を形成することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のワイパーブレード。