説明

ワイパ装置

【課題】ワイパ装置の軽量化を図りつつワイパ装置の剛性を充分なものとし、さらには組み立て作業性を向上させる。
【解決手段】フレーム部材15を径方向外側から少なくとも部分的に覆うホルダ固定部17a,18aをピボットホルダ17,18に設け、フレーム部材15の径方向からホルダ固定部17a,18aおよびフレーム部材15を貫通する固定ボルト19,28により、ピボットホルダ17,18をフレーム部材15に固定した。よって、ピボットホルダ17,18およびフレーム部材15は中実部分を備えないので軽量化でき、固定ボルト19,28によりピボットホルダ17,18をフレーム部材15に固定したので剛性を高めることができ、従前のようなカシメ位置の精度等を高精度で管理する必要が無く、組み立て作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームが固定されるピボット軸と、ピボット軸を揺動駆動する電動モータとを備えたワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両にはワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、ワイパブレードが装着されたワイパアームを揺動させてウィンドシールドに付着した雨水や埃等を払拭するようになっている。ワイパ装置は、ワイパアームが固定されるピボット軸と、ピボット軸を揺動駆動する電動モータとを備え、車室内の操作スイッチを操作して電動モータを回転駆動することで、ピボット軸を介してワイパブレードが揺動するようになっている。
【0003】
タンデム型のワイパ装置等、複数のワイパアームを備えたワイパ装置には、各ワイパアームに対応して複数のピボット軸が設けられている。各ピボット軸と電動モータとの間にはリンク機構が設けられ、リンク機構により電動モータの回転運動を揺動運動に変換し、各ピボット軸を同期して揺動させている。このようなワイパ装置としては、各ピボット軸を回転自在に支持する複数のピボットホルダをフレーム部材の長手方向端部に固定するとともに、フレーム部材の長手方向中間部に電動モータを固定するようにした、所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置が知られている。
【0004】
このようなモジュラー型ワイパ装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載された技術が知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたワイパ装置は、中空の樹脂製のワイパフレーム(フレーム部材)の両端側に一対の樹脂製のピボットホルダをそれぞれ設けて、各ピボットホルダを互いに連結している。各ピボットホルダのワイパフレームへの連結構造は、各ピボットホルダにそれぞれ一体成形した中実の円柱形状の嵌合部を、ワイパフレームの長手方向端部にそれぞれ嵌合させる構造(嵌合連結構造)を採用している。
【0006】
特許文献2に記載されたワイパ装置は、断面が略U字形状に形成された連結フレーム(フレーム部材)の両端側に一対のピボットホルダをそれぞれ設けて、各ピボットホルダを互いに連結している。各ピボットホルダの連結フレームへの連結構造は、ピボットホルダの連結部にカシメ用の凹部を形成するとともに、連結フレームには凹部よりも小径の開口部を形成し、連結部を連結フレームに装着した状態のもとで、開口部にパンチを当てて開口部の一部を変形させ、凹部に開口部の一部を入り込ませる構造(カシメ連結構造)を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−063360号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−268844号公報(図7,図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたワイパ装置によれば、ワイパ装置全体の軽量化を図るために、各ピボットホルダおよびワイパフレームをいずれも樹脂製としている。したがって、例えば真夏(高温)と真冬(低温)との雰囲気温度の差によって、各ピボットホルダとワイパフレームとの連結強度がばらつくという問題があり、連結強度がばらついた場合には、ワイパ装置ががたついて異音を発生したり、リンク機構に大きな負荷が掛かってリンク機構を早期に摩耗させたりする虞がある。よって、各ピボットホルダおよびワイパフレームの連結構造を見直す必要が生じていた。
【0009】
一方、上述の特許文献2に記載されたワイパ装置によれば、各ピボットホルダを連結フレームに固定する際にカシメ加工を施しており、各ピボットホルダと連結フレームとの連結強度にばらつきを生じさせないためにも、カシメ位置の精度、つまりポンチの開口部に対する位置精度を高精度で管理する必要等があり、組み立て作業性の悪化を招いていた。
【0010】
本発明の目的は、ワイパ装置の軽量化を図りつつワイパ装置の剛性を充分なものとし、さらには組み立て作業性を向上させることが可能なワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のワイパ装置は、ワイパアームが固定されるピボット軸と、前記ピボット軸を揺動駆動する電動モータとを備えたワイパ装置であって、前記ピボット軸を回動自在に支持するピボットホルダと、前記ピボットホルダに取り付けられるパイプフレームと、前記ピボットホルダに設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うホルダ固定部と、前記パイプフレームの径方向から前記ホルダ固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記ピボットホルダを前記パイプフレームに固定するホルダ固定部材とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパ装置は、前記電動モータのケーシングに設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うケーシング固定部と、前記パイプフレームの径方向から前記ケーシング固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記電動モータを前記パイプフレームに固定するモータ固定部材とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のワイパ装置は、前記ワイパ装置を車体に固定するための固定脚と、前記固定脚に設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆う固定脚固定部と、前記パイプフレームの径方向から前記固定脚固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記固定脚を前記パイプフレームに固定する固定脚固定部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイパ装置によれば、パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うホルダ固定部をピボットホルダに設け、パイプフレームの径方向からホルダ固定部およびパイプフレームを貫通するホルダ固定部材により、ピボットホルダをパイプフレームに固定する。したがって、ピボットホルダおよびパイプフレームは中実部分を備えないので、ワイパ装置全体の軽量化を図ることができる。また、ホルダ固定部材によりピボットホルダをパイプフレームに固定するので、雰囲気温度に関わらず充分な連結強度を確保、つまりワイパ装置の剛性を高めることができ、がたつき等に起因する異音の発生等を防止できる。さらに、従前のようなカシメ位置の精度等を高精度で管理する必要が無いので、組み立て作業性を向上させることができる。
【0015】
本発明のワイパ装置によれば、電動モータのケーシングに、パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うケーシング固定部を設け、パイプフレームの径方向からケーシング固定部およびパイプフレームを貫通するモータ固定部材により、電動モータをパイプフレームに固定する。よって、ワイパ装置全体の重量増加を抑えつつ、電動モータのパイプフレームに対する固定強度を充分に確保できる。
【0016】
本発明のワイパ装置によれば、ワイパ装置を車体に固定するための固定脚を設け、固定脚にはパイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆う固定脚固定部を設け、パイプフレームの径方向から固定脚固定部およびパイプフレームを貫通する固定脚固定部材により、固定脚をパイプフレームに固定する。よって、ワイパ装置全体の重量増加を抑えつつ、固定脚のパイプフレームに対する固定強度を充分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るワイパ装置を搭載した車両の前方側部分を示す説明図である。
【図2】第1実施の形態に係るワイパ装置を拡大して示す正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図6】第2実施の形態に係るワイパ装置(DR側)を示す部分拡大図である。
【図7】図6,図8のD−D線に沿う断面図である。
【図8】第2実施の形態に係るワイパ装置(AS側)を示す部分拡大図である。
【図9】第3実施の形態に係るワイパ装置(DR側)を示す部分拡大図である。
【図10】第3実施の形態に係るワイパ装置(AS側)を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係るワイパ装置を搭載した車両の前方側部分を示す説明図を、図2は第1実施の形態に係るワイパ装置を拡大して示す正面図を、図3は図2のA−A線に沿う断面図を、図4は図2のB−B線に沿う断面図を、図5は図2のC−C線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0020】
図1に示すように、車両10の前方側にはフロントウィンドシールド11が設けられ、フロントウィンドシールド11上には、フロントウィンドシールド11に付着した雨水や埃等を払拭するDR側(運転席側)ワイパブレード12と、AS側(助手席側)ワイパブレード13とが設けられている。
【0021】
DR側ワイパブレード12は、DR側ワイパアーム12aの先端側に回動自在に取り付けられ、AS側ワイパブレード13は、AS側ワイパアーム13aの先端側に回動自在に取り付けられている。各ワイパブレード12,13は、各ワイパアーム12a,13aの内側に設けられた引っ張りバネ(図示せず)により、フロントウィンドシールド11に向けてそれぞれ弾性接触している。
【0022】
各ワイパブレード12,13は、フロントウィンドシールド11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間に形成される各払拭範囲11a,11bを、それぞれ同期して同一方向に往復払拭動作するようになっている。つまり、各ワイパブレード12,13の払拭パターンはタンデム型となっている。
【0023】
車両10には、各ワイパアーム12a,13aを駆動して往復払拭動作させるワイパ装置14が搭載されている。ワイパ装置14は、図2に示すようにフレーム部材(パイプフレーム)15によりユニット化された所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置となっている。
【0024】
図1および図2に示すように、ワイパ装置14は、DR側ワイパアーム12aが固定されるDR側ピボット軸16aと、AS側ワイパアーム13aが固定されるAS側ピボット軸16bとを備えている。DR側ピボット軸16aはDR側ピボットホルダ17に回転自在に支持され、AS側ピボット軸16bはAS側ピボットホルダ18に回転自在に支持されている。
【0025】
DR側ピボットホルダ(ピボットホルダ)17は、フレーム部材15の長手方向一側に取り付けられ、図3に示すように、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することにより所定形状に形成されている。DR側ピボットホルダ17は、ホルダ固定部17a,支持部17bおよび固定脚17cを備えている。
【0026】
ホルダ固定部17aは、フレーム部材15の外周形状に倣うよう断面が略円弧形状に形成され、フレーム部材15を径方向外側から部分的に覆っている。ホルダ固定部17aには、固定ボルト(ホルダ固定部材)19が貫通する貫通孔17dが設けられ、貫通孔17dは、フレーム部材15の短手方向に沿って設けた一対の貫通孔15aと対向している。
【0027】
これにより、フレーム部材15の径方向一側(図中上側)から各貫通孔17d,15aに固定ボルト19を貫通させ、フレーム部材15の径方向他側(図中下側)から固定ボルト19に固定ナット20をネジ結合することで、DR側ピボットホルダ17をフレーム部材15に相対回転不能でかつ強固に固定できる。なお、固定ナット20とフレーム部材15との間には、固定ナット20が着座するステー21が設けられ、ステー21は、フレーム部材15の変形を防止するとともに、DR側ピボットホルダ17のフレーム部材15への充分な固定強度を確保するためのものである。
【0028】
ホルダ固定部17aには、フレーム部材15の短手方向に沿って延びるよう略円筒形状に形成された支持部17bが一体に設けられている。支持部17bは、DR側ピボット軸16aを回動自在に支持しており、その径方向内側でかつ軸方向両端側には、支持部17bに対するDR側ピボット軸16aの回動をスムーズにする一対の軸受22が装着されている。各軸受22の近傍にはOリング23がそれぞれ設けられ、各Oリング23は、支持部17bとDR側ピボット軸16aとの間に雨水等が進入するのを防止している。
【0029】
ホルダ固定部17aの貫通孔17dを挟む支持部17b側とは反対側(図中右側)には、ワイパ装置14を車両10の車体(DR側)に固定するための固定脚17cが一体に形成されている。固定脚17cには、ゴム製の防振ブッシュ24a(図2参照)が設けられ、防振ブッシュ24aには固定ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。そして、車体(DR側)に固定ボルトをネジ結合することで、ワイパ装置14は車体(DR側)に固定される。
【0030】
DR側ピボット軸16aの基端側(図中下側)には、リンク機構50を形成するDR側駆動レバー53の一端側が固定されており、DR側ピボット軸16aの先端側には、止め輪25が固定されている。これにより、DR側ピボット軸16aのDR側ピボットホルダ17からの抜け止めがなされている。また、DR側ピボット軸16aのさらに先端側には、DR側ワイパアーム12a(図1参照)の空転を防止するセレーション部26と、DR側ワイパアーム12aを固定するための締結ナット(図示せず)がネジ結合される雄ネジ部27とが形成されている。
【0031】
AS側ピボットホルダ(他のピボットホルダ)18は、フレーム部材15の長手方向他側に取り付けられ、図4に示すように、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することにより所定形状に形成されている。AS側ピボットホルダ18は、ホルダ固定部18aと支持部18bとを備えている。
【0032】
ホルダ固定部18aは、フレーム部材15の外周形状に倣うよう断面が略円弧形状に形成され、フレーム部材15を径方向外側から部分的に覆っている。ホルダ固定部18aには、固定ボルト(ホルダ固定部材)28が貫通する貫通孔18cが設けられ、貫通孔18cは、フレーム部材15の短手方向に沿って設けた一対の貫通孔15bと対向している。
【0033】
これにより、フレーム部材15の径方向一側(図中上側)から各貫通孔18c,15bに固定ボルト28を貫通させ、フレーム部材15の径方向他側(図中下側)から固定ボルト28に固定ナット29をネジ結合することで、AS側ピボットホルダ18をフレーム部材15に相対回転不能でかつ強固に固定できる。なお、固定ナット29とフレーム部材15との間には、固定ナット29が着座するステー30が設けられ、ステー30は、フレーム部材15の変形を防止するとともに、AS側ピボットホルダ18のフレーム部材15への充分な固定強度を確保するためのものである。
【0034】
ホルダ固定部18aには、フレーム部材15の短手方向に沿って延びるよう略円筒形状に形成された支持部18bが一体に設けられている。支持部18bは、AS側ピボット軸16bを回動自在に支持しており、その径方向内側でかつ軸方向両端側には、支持部18bに対するAS側ピボット軸16bの回動をスムーズにする一対の軸受31が装着されている。各軸受31の近傍にはOリング32がそれぞれ設けられ、各Oリング32は、支持部18bとAS側ピボット軸16bとの間に雨水等が進入するのを防止している。
【0035】
AS側ピボット軸16bの基端側(図中下側)には、リンク機構50を形成するAS側駆動レバー55の一端側が固定されており、AS側ピボット軸16bの先端側には、止め輪33が固定されている。これにより、AS側ピボット軸16bのAS側ピボットホルダ18からの抜け止めがなされている。また、AS側ピボット軸16bのさらに先端側には、AS側ワイパアーム13a(図1参照)の空転を防止するセレーション部34と、AS側ワイパアーム13aを固定するための締結ナット(図示せず)がネジ結合される雄ネジ部35とが形成されている。
【0036】
図2に示すように、フレーム部材15のAS側ピボットホルダ18よりも長手方向他側には、ワイパモータ(電動モータ)36が固定されている。ワイパモータ36は、各ピボット軸16a,16bを駆動させるものであり、モータ部37とギヤ部38とを備えている。
【0037】
モータ部37は、鋼板等をプレス加工(深絞り加工)することにより、有底筒状に形成されたモータケース(ヨーク)37aを備えており、モータケース37aの内部には、複数の永久磁石37b(図示では2つ)が設けられている。各永久磁石37bの内側には、所定の隙間を介して外部にコイル37cが巻装されたアーマチュア(回転子)37dが回動自在に設けられ、アーマチュア37dの回転中心には、アーマチュア軸37eが貫通して固定されている。アーマチュア軸37eの先端側はギヤケース38aの内部にまで延ばされており、アーマチュア軸37eの先端側には、減速機構を形成するウォーム(図示せず)が設けられている。
【0038】
アーマチュア軸37eのウォームとアーマチュア37dとの間には、コンミテータ(整流子)37fが固定されており、コンミテータ37fにはコイル37cの端部が電気的に接続されている。コンミテータ37fの外周部分には、複数のブラシ37g(図示では2つ)が、複数の押圧ばね37hのバネ力により弾性接触しつつ摺接するようになっている。これにより、各ブラシ37gに車載コントローラ(図示せず)から駆動電流を供給することで、アーマチュア37dには電磁力(回転力)が発生し、アーマチュア軸37eは所定の回転速度,回転方向で回転する。
【0039】
ギヤ部38は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することで所定形状に形成されたギヤケース(ケーシング)38aを備えている。ギヤケース38aの内部には、減速機構を形成するウォームホイール38bが回動自在に設けられており、ウォームホイール38bの外周部分に形成されたギヤ歯(図示せず)は、アーマチュア軸37eのウォームに噛み合わされている。ウォームホイール38bの回転中心には、出力軸38cが一体回転可能に設けられ、出力軸38cの先端側は、ギヤケース38aの外部にまで延ばされている。これにより、アーマチュア軸37eの回転が所定の回転速度にまで減速されて、高トルク化された回転力が出力軸38cから出力される。
【0040】
ギヤケース38aには、図5に示すように、断面が略円弧形状に形成されたケーシング固定部38dが一体に設けられている。ケーシング固定部38dは、ワイパモータ36をフレーム部材15に固定するためのもので、フレーム部材15を径方向外側から部分的に覆っている。ケーシング固定部38dには、固定ボルト(モータ固定部材)39が貫通する貫通孔38eが設けられ、貫通孔38eは、フレーム部材15の短手方向に沿って設けた一対の貫通孔15cと対向している。
【0041】
これにより、フレーム部材15の径方向一側(図中上側)から各貫通孔38e,15cに固定ボルト39を貫通させ、フレーム部材15の径方向他側(図中下側)から固定ボルト39に固定ナット40をネジ結合することで、ワイパモータ36をフレーム部材15に相対回転不能でかつ強固に固定できる。なお、固定ナット40とフレーム部材15との間には、固定ナット40が着座するステー41が設けられ、ステー41は、フレーム部材15の変形を防止するとともに、ワイパモータ36のフレーム部材15への充分な固定強度を確保するためのものである。
【0042】
ここで、ケーシング固定部38dは、図2に示すようにその長手方向に沿って一対の固定ボルト39によりフレーム部材15に固定されている。したがって、貫通孔38e,一対の貫通孔15c,固定ナット40およびステー41についても、図5で示す他にもう一組設けられている(詳細図示せず)。
【0043】
図2に示すように、ギヤケース38aのケーシング固定部38dには、ワイパ装置14を車両10の車体(AS側)に固定するための固定脚38fが一体に形成されている。固定脚38fには、ゴム製の防振ブッシュ24bが設けられ、防振ブッシュ24bには固定ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。そして、車体(AS側)に固定ボルトをネジ結合することで、ワイパ装置14は車体(AS側)に固定される。
【0044】
フレーム部材15は、DR側ピボットホルダ17とAS側ピボットホルダ18とを連結し、車両10の車幅方向(図中左右方向)に延びている。フレーム部材15は、各ピボットホルダ17,18を互いに所定の相対位置関係となるよう位置決めするもので、例えば、長さが異なるフレーム部材15を複数準備することで、フレーム部材15以外の構成部品を共通化しつつ、車両10側の異なる搭載スペースに対応することができる。
【0045】
また、フレーム部材15は、鋼材よりなる単純な中空パイプにより形成するため、ワイパ装置14を搭載する車両10側の搭載スペースに合わせて任意の長さに切断するだけで良い。さらには、固定ボルト19,28,39がそれぞれ貫通する各貫通孔15a,15b,15cを、フレーム部材15の長手方向に沿う任意の箇所に設けることで、右ハンドル車,左ハンドル車等、種々の車両10への搭載レイアウトに対応することができる。
【0046】
ワイパモータ36の出力軸38cと各ピボット軸16a,16bとの間には、リンク機構50が設けられている。リンク機構50は、出力軸38cの回転運動を揺動運動に変換し、変換した揺動運動を各ピボット軸16a,16bに伝達するようになっている。これにより、ワイパモータ36を回転駆動することで、出力軸38c,リンク機構50,各ピボット軸16a,16bを介して各ワイパアーム12a,13a(図1参照)が揺動駆動される。
【0047】
リンク機構50は、クランクアーム51,駆動ロッド52,DR側駆動レバー53,連結ロッド54およびAS側駆動レバー55を備えている。クランクアーム51の一端側は出力軸38cに固定され、クランクアーム51の他端側は、ワイパモータ36の回転駆動により出力軸38cを中心に回転するようになっている。
【0048】
DR側駆動レバー53およびAS側駆動レバー55の一端側は、各ピボット軸16a,16b(図3および図4参照)の基端側に固定されており、各駆動レバー53,55の他端側は、フレーム部材15のワイパモータ36側(図中下側)に延ばされている。
【0049】
クランクアーム51の他端側と、AS側駆動レバー55の他端側との間には、駆動ロッド52が設けられている。駆動ロッド52は、クランクアーム51およびAS側駆動レバー55のそれぞれに、ボールジョイントBJ(詳細図示せず)を介して回動自在に連結されている。また、DR側駆動レバー53の他端側とAS側駆動レバー55の他端側との間には、駆動ロッド52よりも長尺の連結ロッド54が設けられている。連結ロッド54は、各駆動レバー53,55のそれぞれにボールジョイントBJを介して回動自在に連結されている。
【0050】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るワイパ装置14によれば、フレーム部材15を径方向外側から少なくとも部分的に覆うホルダ固定部17a,18aを各ピボットホルダ17,18にそれぞれ設け、フレーム部材15の径方向から各ホルダ固定部17a,18aおよびフレーム部材15を貫通する各固定ボルト19,28により、各ピボットホルダ17,18をフレーム部材15に固定した。
【0051】
したがって、各ピボットホルダ17,18およびフレーム部材15は中実部分を備えないので、ワイパ装置14全体の軽量化を図ることができる。また、各固定ボルト19,28により各ピボットホルダ17,18をフレーム部材15に固定したので、雰囲気温度(高温/低温)に関わらず充分な連結強度を確保、つまりワイパ装置14の剛性を高めることができ、がたつき等に起因する異音の発生等を防止できる。さらに、従前のようなカシメ位置の精度等を高精度で管理する必要が無いので、組み立て作業性を向上させることができる。
【0052】
また、第1実施の形態に係るワイパ装置14によれば、ワイパモータ36のギヤケース38aに、フレーム部材15を径方向外側から少なくとも部分的に覆うケーシング固定部38dを設け、フレーム部材15の径方向からケーシング固定部38dおよびフレーム部材15を貫通する固定ボルト39により、ワイパモータ36をフレーム部材15に固定した。よって、ワイパ装置14全体の重量増加を抑えつつ、ワイパモータ36のフレーム部材15に対する固定強度を充分に確保できる。
【0053】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図6は第2実施の形態に係るワイパ装置(DR側)を示す部分拡大図を、図7は図6,図8のD−D線に沿う断面図を、図8は第2実施の形態に係るワイパ装置(AS側)を示す部分拡大図をそれぞれ表している。
【0055】
第2実施の形態に係るワイパ装置60は、上述した第1実施の形態に係るワイパ装置14に比して、車両10の車体(DR側/AS側)への固定構造が異なっている。具体的には、DR側ピボットホルダ17の固定脚17cおよびギヤケース38aの固定脚38f(図2参照)を省略し、DR側固定部材61とAS側固定部材68とを備えた点が異なっている。
【0056】
図6に示すように、DR側固定部材61は、固定脚62と固定脚固定部63とを備え、固定脚62は固定脚固定部63に対して垂直となるよう一体に設けられている。固定脚62には、ゴム製の防振ブッシュ64aが設けられ、防振ブッシュ64aには固定ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。そして、車体(DR側)に固定ボルトをネジ結合することで、ワイパ装置60は車体(DR側)に固定される。
【0057】
固定脚固定部63は、図7に示すように、フレーム部材15の外周形状に倣うよう断面が略円弧形状に形成され、フレーム部材15を径方向外側から部分的に覆っている。固定脚固定部63には、固定ボルト(固定脚固定部材)65が貫通する貫通孔63aが設けられ、貫通孔63aは、フレーム部材15の短手方向に沿って設けた一対の貫通孔15dと対向している。
【0058】
これにより、フレーム部材15の径方向一側(図中上側)から各貫通孔63a,15dに固定ボルト65を貫通させ、フレーム部材15の径方向他側(図中下側)から固定ボルト65に固定ナット66をネジ結合することで、DR側固定部材61をフレーム部材15に相対回転不能でかつ強固に固定できる。なお、固定ナット66とフレーム部材15との間には、固定ナット66が着座するステー67が設けられ、ステー67は、フレーム部材15の変形を防止するとともに、DR側固定部材61のフレーム部材15への充分な固定強度を確保するためのものである。
【0059】
図8に示すように、AS側固定部材68は、固定脚69と固定脚固定部70とを備え、固定脚69は固定脚固定部70に対して所定角度で傾斜するよう一体に設けられている。固定脚69には、ゴム製の防振ブッシュ64bが設けられ、防振ブッシュ64bには固定ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。そして、車体(AS側)に固定ボルトをネジ結合することで、ワイパ装置60は車体(AS側)に固定される。
【0060】
固定脚固定部70は、図7に示すように、フレーム部材15の外周形状に倣うよう断面が略円弧形状に形成され、フレーム部材15を径方向外側から部分的に覆っている。固定脚固定部70には、固定ボルト(固定脚固定部材)71が貫通する貫通孔70aが設けられ、貫通孔70aは、フレーム部材15の短手方向に沿って設けた一対の貫通孔15eと対向している。
【0061】
これにより、フレーム部材15の径方向一側(図中上側)から各貫通孔70a,15eに固定ボルト71を貫通させ、フレーム部材15の径方向他側(図中下側)から固定ボルト71に固定ナット72をネジ結合することで、AS側固定部材68をフレーム部材15に相対回転不能でかつ強固に固定できる。なお、固定ナット72とフレーム部材15との間には、固定ナット72が着座するステー73が設けられ、ステー73は、フレーム部材15の変形を防止するとともに、AS側固定部材68のフレーム部材15への充分な固定強度を確保するためのものである。
【0062】
以上のように形成した第2実施の形態に係るワイパ装置60においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態によれば、ワイパ装置60を車体(DR側/AS側)に固定するための固定脚62,69を設け、各固定脚62,69にはフレーム部材15を径方向外側から少なくとも部分的に覆う固定脚固定部63,70を設け、フレーム部材15の径方向から各固定脚固定部63,70およびフレーム部材15を貫通する各固定ボルト65,71により、各固定脚62,69をフレーム部材15に固定した。よって、ワイパ装置60全体の重量増加を抑えつつ、各固定脚62,69のフレーム部材15に対する固定強度を充分に確保できる。
【0063】
次に、本発明の第3実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
図9は第3実施の形態に係るワイパ装置(DR側)を示す部分拡大図を、図10は第3実施の形態に係るワイパ装置(AS側)を示す部分拡大図をそれぞれ表している。
【0065】
第3実施の形態に係るワイパ装置80は、上述した第1実施の形態に係るワイパ装置14に比して、車両10の車体(DR側/AS側)への固定構造が異なっている。具体的には、DR側ピボットホルダ17の固定脚17cおよびギヤケース38aの固定脚38f(図2参照)を省略し、DR側固定脚81とAS側固定脚82とを備えた点が異なっている。
【0066】
図9および図10に示すように、各固定脚81,82は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することにより中実の屈曲した棒状に形成されている。各固定脚81,82の基端側にはそれぞれ挿入部81a,82aが形成され、各挿入部81a,82aは、フレーム部材15の長手方向両端側にそれぞれ挿入されている。各挿入部81a,82aには、図中表側と裏側とで合計8つ(図示では4つ)のカシメ凹部81b,82b(図中破線)が形成されており、各挿入部81a,82aをフレーム部材15に挿入した状態のもとで、フレーム部材15の各カシメ凹部81b,82bに対応する箇所を押圧変形させることで、フレーム部材15の一部を各カシメ凹部81b,82bに入り込ませる。これにより、フレーム部材15に各固定脚81,82がカシメ固定される。
【0067】
各固定脚81,82の先端側には、ゴム製の防振ブッシュ83a,83bがそれぞれ設けられ、各防振ブッシュ83a,83bには固定ボルト(図示せず)が貫通するようになっている。そして、車体(DR側/AS側)に固定ボルトをネジ結合することで、ワイパ装置80は車体(DR側/AS側)に固定される。
【0068】
以上のように形成した第3実施の形態に係るワイパ装置80においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第3実施の形態によれば、DR側固定脚81とAS側固定脚82とを、単純な棒状形状に形成したので、各固定脚81,82の成形型(金型)を簡素化することができる。
【0069】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、各固定部17a,17b,38d,63,70を、それぞれ断面が略円弧形状になるよう形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、断面が円環状になるよう形成することもできる。この場合、円環状に形成した各固定部にフレーム部材15を挿入して組み付けるようになるので、ステー21,30,41,67,73が不要となり、組み立て作業性を向上させることが可能となる。
【0070】
また、上記各実施の形態においては、本発明におけるホルダ固定部材,モータ固定部材,固定脚固定部材として、それぞれ固定ボルト19,28,39,65,71を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、リベット等の他の固定部材を採用することもできる。
【0071】
さらに、上記各実施の形態においては、本発明におけるピボットホルダの固定をDR側とAS側との両方に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、少なくとも片方側のみに適用するようにしても良い。
【0072】
また、上記各実施の形態においては、DR側ピボットホルダ17とAS側ピボットホルダ18とを一のフレーム部材15に取り付けてタンデム型としたものを示したが、本発明はこれに限らず、DR側ピボットホルダとAS側ピボットホルダとを別のフレーム部材に取り付けて、DR側ワイパブレードとAS側ワイパブレードとを対向払拭させるようにした対向払拭型に適用することもできる。
【0073】
さらに、上記各実施の形態においては、ワイパ装置14,60,80として、車両10の前方側のフロントウィンドシールド11を払拭するものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10の後方側に設けられるリヤウィンドシールドや、鉄道車両や航空機等のウィンドシールドを払拭するワイパ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 車両
11 フロントウィンドシールド
11a,11b 払拭範囲
12 DR側ワイパブレード
12a DR側ワイパアーム
13 AS側ワイパブレード
13a AS側ワイパアーム
14 ワイパ装置
15 フレーム部材(パイプフレーム)
15a〜15e 貫通孔
16a DR側ピボット軸
16b AS側ピボット軸
17 DR側ピボットホルダ
17a ホルダ固定部
17b 支持部
17c 固定脚
17d 貫通孔
18 AS側ピボットホルダ
18a ホルダ固定部
18b 支持部
18c 貫通孔
19 固定ボルト(ホルダ固定部材)
20 固定ナット
21 ステー
22 軸受
23 Oリング
24a,24b 防振ブッシュ
25 止め輪
26 セレーション部
27 雄ネジ部
28 固定ボルト(ホルダ固定部材)
29 固定ナット
30 ステー
31 軸受
32 Oリング
33 止め輪
34 セレーション部
35 雄ネジ部
36 ワイパモータ(電動モータ)
37 モータ部
37a モータケース
37b 永久磁石
37c コイル
37d アーマチュア
37e アーマチュア軸
37f コンミテータ
37g ブラシ
37h 押圧ばね
38 ギヤ部
38a ギヤケース(ケーシング)
38b ウォームホイール
38c 出力軸
38d ケーシング固定部
38e 貫通孔
38f 固定脚
39 固定ボルト(モータ固定部材)
40 固定ナット
41 ステー
50 リンク機構
51 クランクアーム
52 駆動ロッド
53 DR側駆動レバー
54 連結ロッド
55 AS側駆動レバー
60 ワイパ装置
61 DR側固定部材
62 固定脚
63 固定脚固定部
63a 貫通孔
64a,64b 防振ブッシュ
65 固定ボルト(固定脚固定部材)
66 固定ナット
67 ステー
68 AS側固定部材
69 固定脚
70 固定脚固定部
70a 貫通孔
71 固定ボルト(固定脚固定部材)
72 固定ナット
73 ステー
80 ワイパ装置
81 DR側固定脚
81a 挿入部
81b カシメ凹部
82 AS側固定脚
82a 挿入部
82b カシメ凹部
83a,83b 防振ブッシュ
BJ ボールジョイント
LRP 下反転位置
URP 上反転位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパアームが固定されるピボット軸と、前記ピボット軸を揺動駆動する電動モータとを備えたワイパ装置であって、
前記ピボット軸を回動自在に支持するピボットホルダと、
前記ピボットホルダに取り付けられるパイプフレームと、
前記ピボットホルダに設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うホルダ固定部と、
前記パイプフレームの径方向から前記ホルダ固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記ピボットホルダを前記パイプフレームに固定するホルダ固定部材とを有することを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイパ装置において、前記電動モータのケーシングに設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆うケーシング固定部と、前記パイプフレームの径方向から前記ケーシング固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記電動モータを前記パイプフレームに固定するモータ固定部材とを有することを特徴とするワイパ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のワイパ装置において、前記ワイパ装置を車体に固定するための固定脚と、前記固定脚に設けられ、前記パイプフレームを径方向外側から少なくとも部分的に覆う固定脚固定部と、前記パイプフレームの径方向から前記固定脚固定部および前記パイプフレームを貫通し、前記固定脚を前記パイプフレームに固定する固定脚固定部材とを有することを特徴とするワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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