説明

ワイピングクロス

【課題】 従来の一般的なワイピングクロスでは達成できない優れた拭き取り性能を具現でき、これを持続できるようなワイピングクロスを提供する。
【解決手段】 布帛表面に多数の窪み1が形成されることにより凹凸を呈するように製編織されていることを特徴とするワイピングクロスである。このワイピングクロスには、単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維が含まれ、布帛表面における面積1cm2あたりの窪みの個数が10〜60個であり、窪みの深さが0.1〜3.0mmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用、事務用、工業用等の様々な分野で用いることができる、拭き取り性能に優れたワイピングクロスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用、事務用、工業用、その他各分野に使用できるワイピングクロスとしては、綿等の天然繊維で構成された布帛が長く用いられてきた。しかしこれらの布帛では、清掃効果が不十分であるうえ、拭き取って布帛に付着した汚れを落とすのに通常の洗濯では落としにくいという問題があった。
【0003】
これらの問題を解消するものとして、単糸繊度0.5デニール以下の極細繊維を主体として構成されるワイピングクロス(例えば、特許文献1参照)が開発され、さらに、0.1デニール以下の極細繊維と高収縮糸の複合糸からなる織編物のワイピングクロス(例えば、特許文献2参照)等が開発され、使用されている。これらの極細繊維を使用したワイピングクロスは、極細繊維の細さや断面形状がもたらす作用により、微細な汚れの粒子も掻き取るようにして落とすことができ、拭き取り性に優れている。また合成繊維であるため、ワイピングクロスに付着した汚れも通常の洗濯で十分に落とすことができるという利点がある。
【特許文献1】特開昭63-211342号公報
【特許文献2】特開平11-172549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のワイピングクロスは、極細繊維等を使用することすなわちワイピングクロスを構成する繊維の特長によりその性能を向上させることに成功したが、ワイピングクロスに用いる布帛の組織という観点では、布帛表面はフラットな表面もしくはそれらに起毛加工を加えたもの、あるいはパイル布帛というようなものであって、拭き布として一般的なハンカチ、ふきん、タオル等と同様の域を出るものではなかった。このため、少量の汚れに対しては優れた拭き取り性を発揮するものの、一定量以上の汚れ、特に油汚れなどの粘性を有した汚れに対し使用した場合、布帛表面をそれらの汚れが覆ってしまい、極細繊維の拭き取り効果が発揮出来なくなることはおろか、再度その部分を使用することで汚れを広げてしまうことさえあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みて行われたもので、従来の一般的なワイピングクロスでは達成できない優れた拭き取り性能を具現でき、これを持続できるようなワイピングクロスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、製編織する組織を工夫して、布帛表面を凹凸のある形状に製編織することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は、布帛表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織されていることを特徴とするワイピングクロスを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワイピングクロスは、布帛表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈しているので、汚れを拭き取る際には、当該表面の凸部により汚れを効果的に掻き取ることができる。しかも、掻き取られた汚れが凹部すなわち窪みに入り込むので、多量の汚れを拭き取ることができるため、従来のワイピングクロスでは拭き取り不可能な多量の汚れに対しても対応できる。また、多量の汚れを保持している状態においても、汚れの大部分が窪み内にあるため、拭き取り対象物に接する凸部は汚れに覆い尽くされることもなく、優れた拭き取り効果を持続させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明のワイピングクロスは、布帛の表面形状に特徴を有するものであり、布帛表面に多数の窪みが形成されて凹凸を呈していることが重要である。そして、この凹凸は、パイル布帛でパイルを凸部と見立てたようなものではなく、製編織により実現された凹凸であり、布帛の織組織や編組織を工夫することにより、布帛表面に高低差のある形態、すなわち高い部分と低い部分が繰り返された組織とすることで実現されるものである。この低い部分が窪みというわけであり、窪みと窪みの間の領域は相対的に盛り上がったようになるので、本明細書では、この盛り上がった領域を凸部ということがある。このような凹凸を呈していることにより、布帛表面の凸部の繊維が拭き取り対象物から汚れを掻き取り、その後窪みに汚れを保持することで、優れた拭き取り性能が持続的に具備され得る。
【0011】
窪みの形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、図1に例示するようなストライプ状であってもよいが、図2に例示するような、窪み1の周囲が凸部2で囲まれたような形態、すなわち窪みの一つ一つが独立しているような形態とした場合、拭き取り対象物から除去した汚れを窪みに保持する効果が高いので好ましい。そのような独立した窪みの形状としては、特に限定されるものではないが、例えば図2に示されるような略四角形状が挙げられる。
【0012】
上記したような窪みを布帛表面に形成するための組織としては、布帛が織物の場合、例えばワッフル、ストライプ、へリンボン等の組織を採用でき、布帛が編物の場合、例えばワッフル、ストライプ、ツイル、ボーダー等の組織を採用できる。より具体的に説明すると、例えば、布帛が織物の場合には、図4に示すような組織をドビー織機で製織することにより、略四角形状の窪みを多数形成することができる。布帛が編物の場合には、図5に示すような組織を丸編機により製編することにより、同様に略四角形状の窪みを多数形成することができる。
【0013】
本発明のワイピングクロスは、布帛の片方の表面(片面)が上記のような凹凸を呈しておればこと足り、凹凸を呈する表面を拭き取り作業に供することで本発明の目的が達成されるが、両方の表面(両面)が凹凸を呈していてもよい。両面が凹凸を呈する態様とすれば、両面を拭き取り作業に供することができるだけでなく、ドレープ性においても特に良好なものとすることができる。
【0014】
両面が凹凸を呈する態様とするには、例えば図3(図2のIII−III断面図に相当する)に示すように、一方の表面の窪みの箇所が、他方の表面の凸部に対応する組織とすればよい。もっとも、一方の表面の凸部が必ずしも他方の表面の窪みに対応していることを要するものではない。したがって、本発明のワイピングクロスにおいて、布帛両面ともに表面に独立した窪みが多数形成されている組織で製編織された構成を採用できることはいうまでもない。
【0015】
本発明のワイピングクロスにおいて、布帛表面の窪みの個数としては、面積1cm2あたりの窪みの個数が10〜60個であることが好ましく、20〜50個であることがより好ましい。面積1cm2あたりの窪みの個数が10個に満たない面では、凹凸の間隔が広すぎ、逆に、60個を超える面では凹凸の間隔が細かくなりすぎ、いずれも本発明の目的とする拭き取り性能が得られ難い傾向にあるので好ましくない。
【0016】
また、窪みの深さ、すなわち、凸部の頂点から窪みの底面までの高低差としては、0.1〜3.0mmが好ましい。窪みの深さが0.1mm未満では、窪みが浅すぎるため、窪みに保持できる汚れの許容量が少なくなってしまうので好ましくない。また深さが3.0mmを超えると、凸部が高すぎて、拭き取り作業の際に加わる圧力に対して不安定で倒れやすくなることにより、拭き取り性能が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0017】
また、本発明のワイピングクロスを構成する繊維の種類としては、特に限定されるものではなく、各種の合成繊維を使用することができる。該糸条を形成する糸としては、合成繊維が使用される。合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、あるいはこれらのポリエステルに付加的部分としてさらにイソフタル酸等の酸成分、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのようなジオール成分を共重合した共重合ポリエステルからなるポリエステル系繊維が挙げられる。また、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のポリアミドからなるポリアミド系繊維が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン系繊維が挙げられる。また、アクリルニトリルからなるアクリル系繊維が挙げられる。さらには、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル化合物からなる生分解性合成繊維が挙げられ、この生分解性合成繊維は、土壌中や水中に長時間放置すると微生物などの作用によって炭酸ガスと水に分解され得る。
【0018】
合繊繊維のラスターについては、ブライト、セミダル、フルダルのいずれでもよく、酸化チタン等の添加物を繊維中に含有させる量は目的に応じて任意であるが、拭き取りの対象が精密部品等、細かいキズが問題になる場合には、添加量の少ないブライトもしくは添加しない純ブライトとするのが好ましい。
【0019】
また、繊維の繊度としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよいが、いわゆる極細繊維、具体的には単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を少なくとも一部に使用すると、当該繊維の有する優れた汚れ除去機能により、ワイピングクロスの拭き取り性能を向上させることができるので好ましい。すなわち、本発明のワイピングクロスとしては、単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を含んでなることが好ましく、単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を50%以上含んでなることがより好ましい。なお、本発明に好ましく使用される極細繊維の単糸繊度を0.001〜1.0dtexとするのは、0.001dtex未満では、繊維の切断による毛羽立ちや発塵が生じやすく、ワイピングクロスとしての耐久性を低下させる傾向にあるためであり、一方、1.0dtexを超えると、極細繊維としての機能があまり期待できないことによる。
【0020】
極細繊維の種類としては、特に限定されるものではなく、上記したような合成繊維を形成する繊維形成性ポリマーから直接紡糸された極細繊維、あるいは、同じ系統又は異なる系統の2種類のポリマーを用いた2成分系複合繊維を化的学剥離、物理的剥離、溶解除去等の方法で処理して極細化した割繊糸と称される極細繊維が使用できる。また、極細繊維として、三角断面、四角断面、五角断面、扁平断面、楔形断面、あるいは、アルファベットを象ったC型断面、H型断面、I型断面、W型断面等の異形断面の極細繊維を用いると、断面のエッジに相当する部分が効率的に汚れを掻き取る機能を発揮するので、ワイピングクロスの拭き取り性能をより向上させることができる。
【0021】
本発明のワイピングクロスは、上記したように拭き取り性能に優れたものであるが、この拭き取り性能を評価する方法として、本発明者らは次に示す方法を採用するものである。
<拭き取り性能の評価方法>
1.表面を純水洗浄した後にメタノール置換を行ったガラスプレート(厚さ1mm)を用意し、その中央部のオパシティ値(不透明度合い)を分光光度計(マクベス社製、CE−3100)により測定した(その値をOgとする)。
2.次に、当該ガラスプレート中央部表面の半径1cmの範囲に、汚染源として20mgのグリスを塗布し、同様にオパシティ値を測定した(その値をO0とする)。
3.底面積7.07cm2(半径1.5cmの円形)の拭き取り用ジグにワイピングクロスを被せたものにより、上記ガラスプレートの汚染源を塗布した箇所を、拭き取り荷重14.1g/m2、拭き取り速度3cm/秒の条件で拭き取るという拭き取り試験を実施した。このとき、1回拭き取るごとにオパシティ値を測定してからワイピングクロスを新しいものに取り替えることとし、1つの試料につき計3回の拭き取り及びオパシティ値測定(累積拭き取り回数n回のときの測定値をOnとする)を行なった。
4.以上の測定結果から、下記数式により算出される汚れ除去率を求め、拭き取り性能の指標とした。
【0022】
【数1】

【0023】
この方法で求められる汚れ除去率は、ワイピングクロスが汚れを除去してゆく度合いをよく示すものであり、ワイピングクロスの拭き取り性能の定量的な指標となる。本発明の目的を達成するうえで、この汚れ除去率としては、除去率70%以上、さらには80%以上が1回の拭き取りで達成されることが好ましい。また、除去率90%以上、さらには95%以上が3回以内の拭き取りで達成されることが好ましく、2回以内の拭き取りで達成されることがより好ましい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、ワイピングクロスの拭き取り性能の評価は、上記した汚れ除去率を求めることにより行なった。
【0025】
実施例1
難溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを使用し、易溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートにポリエチレングリコール(分子量6000)12質量%及びスルホイソフタル酸2モル%が共重合された共重合ポリエステルを使用し、易溶性ポリマーが全体の20質量%を占めるように両ポリマーを放射状に配列した8分割の溶解割繊型複合繊維からなる仮撚加工糸(156dtex/96f)を用意した。この仮撚加工糸を経糸・緯糸の両方に用いて、図4に示す組織で製織することにより、織物両表面に多数の独立した窪みが形成されている織物を得た。この織物を常法により精錬した後、苛性ソーダ20g/L、浴比1:30、温度98℃の条件でアルカリ割繊処理を施すことにより、織物中の上記溶解割繊型複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去して単糸繊度0.16dtexの極細繊維に割繊した。その後、仕上げセットを行うことにより、両表面が凹凸を呈する本発明のワイピングクロスを得た。
【0026】
実施例2
難溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを使用し、易溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートにポリエチレングリコール(分子量6000)12質量%及びスルホイソフタル酸2モル%が共重合された共重合ポリエステルを使用し、易溶性ポリマーが全体の20質量%を占めるように両ポリマーを放射状に配列した8分割の溶解割繊型複合繊維からなる仮撚加工糸(78dtex/48f)と、ポリエステル高収縮糸(30dtex/12f、100℃×30分間での沸水収縮率が25%)とのインターレース混繊糸(110dtex/60f)を用意した。この混繊糸を用いて図5に示す組織を22ゲージで製編することにより、編物両表面に多数の独立した窪みが形成されている織物を得た。この織物を常法により精錬した後、苛性ソーダ20g/L、浴比1:30、温度98℃の条件でアルカリ割繊処理を施すことにより、編物中の上記溶解割繊型複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去して単糸繊度0.16dtexの極細繊維に割繊した。その後、仕上げセットを行うことにより、両表面が凹凸を呈する本発明のワイピングクロスを得た。なお、このワイピングクロスでは、仕上げ後での極細繊維の含有率は65%であった。
【0027】
比較例1
織組織を平組織にすること以外は、実施例1と同様にして、表面がフラットで凹凸のない比較用のワイピングクロスを得た。
【0028】
比較例2
編組織を24ゲージのスムースにすること以外は、実施例2と同様にして、表面がフラットで凹凸のない比較用のワイピングクロスを得た。
【0029】
なお、実施例及び比較例で得られたワイピングクロスの特性を下記表1に示す。表1中の特性は、いずれも仕上げ後のワイピングクロスについてのものである。また、窪みの個数はいずれも両面で同等であり、実施例1及び2のワイピングクロスの厚みは、両面の凸部同士間の厚みを測定したものである。
【0030】
【表1】

【0031】
上記表1に示した結果から明らかなように、本発明のワイピングクロスは、布帛表面に多数の窪みが形成されて凹凸を呈する構成により、布帛表面がフラットな比較用のワイピングクロスよりも遥かに優れた拭き取り性を有することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のワイピングクロスの布帛表面を模式的に例示する平面図である。
【図2】本発明のワイピングクロスの布帛表面を模式的に例示する平面図である。
【図3】本発明のワイピングクロスの断面を模式的に例示する断面図である。
【図4】本発明のワイピングクロスに採用できる織物の組織図の一例である。
【図5】本発明のワイピングクロスに採用できる編物の組織図の一例である。
【符号の説明】
【0033】
1 窪み
2 凸部
F1〜F5 給糸口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織されていることを特徴とするワイピングクロス。
【請求項2】
単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のワイピングクロス。
【請求項3】
布帛表面において、面積1cm2あたりの窪みの個数が10〜60個であり、窪みの深さが0.1〜3.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイピングクロス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−6537(P2006−6537A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186422(P2004−186422)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】