ワイヤカッタ
【課題】ワイヤの切断時において、ワイヤの切断部分にふくらみ部分のないワイヤカッタを提供する。
【解決手段】ワイヤ9の切断操作を行なう操作用ハンドル2と、操作用ハンドル2に取着され、ワイヤ9を案内するワイヤ案内路7が形成された切断部3と、を備え、前記ワイヤ案内路7に案内された前記ワイヤ9を切断するワイヤカッタ1であって、前記切断部3は、前記ワイヤ案内路の両側に前記ワイヤ9を緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部40と、該一対のワイヤ挟持部40間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路7の一点に向かって移動する複数の切断刃60a,60bと、を備えてなる。
【解決手段】ワイヤ9の切断操作を行なう操作用ハンドル2と、操作用ハンドル2に取着され、ワイヤ9を案内するワイヤ案内路7が形成された切断部3と、を備え、前記ワイヤ案内路7に案内された前記ワイヤ9を切断するワイヤカッタ1であって、前記切断部3は、前記ワイヤ案内路の両側に前記ワイヤ9を緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部40と、該一対のワイヤ挟持部40間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路7の一点に向かって移動する複数の切断刃60a,60bと、を備えてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを切断するワイヤカッタに係り、特に、アーク溶接または溶射等のワイヤを切断するに好適なワイヤカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アーク溶接等の溶接や溶射を行なう際には、ワイヤ状の溶射材料または溶接材料(ワイヤ)を溶融して、対象物に融着させている。このようなワイヤは、ドラムに巻かれており、ニッパなどのワイヤカッタを用いて切断される。切断されたワイヤは、その切断部である先端が溶射装置または溶接装置内に挿入され、フィードローラ等により装置内のワイヤ案内路に搬送される。搬送されたワイヤは、溶射又は溶接の処理速度に合わせて、装置内に所定の搬送速度(供給速度)で搬送される。
【0003】
ところで、ワイヤを切断するワイヤカッタとして、例えば、一方側に把持・操作用ハンドルを形成し、他方側に、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断刃が形成されたワイヤカッタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤカッタは、ワイヤに被覆された絶縁シースをワイヤから除去すべく、ワイヤ案内路の一方側において、切断刃との間で前記ワイヤを緊張状態で挟持する補助工具(ワイヤ挟持部)をさらに備えている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−118709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ニッパなどのワイヤカッタを用いた場合には、2つの切断刃でワイヤを押さえ込んで切断するが、ワイヤの切断時に、ワイヤの切断部近傍が、径方向外側に向かって塑性流動し、径方向外側に膨らみ部分を有したヘラ状の切断部分が形成されてしまう。また、特許文献1に記載のワイヤカッタは、切断刃とワイヤ挟持部の間のワイヤに対して緊張状態を保ちながら、ワイヤ挟持部で絶縁シースを除去すると共にワイヤを切断するが、このワイヤカッタを用いたとしても、ワイヤの切断部分は同様の形状になってしまう。
【0006】
このような切断部分を有したワイヤを、溶接又は溶射の装置に挿入した場合、膨らみ部分が鋭利なため、ワイヤ案内路、チップ等に傷をつけることがある。これにより、装置内におけるワイヤの送り速度(供給速度)が変動する可能性がある。この供給速度の変動が一定以上になると、処理速度に依存するアーク及びワイヤ溶融速度が不安定となり、スパッタの発生の原因となる場合がある。
【0007】
さらに、前記装置は、ワイヤ案内路とワイヤの摩擦抵抗を低減し、ワイヤの供給速度を一定に保つために、ワイヤ案内路に樹脂ライナを被覆されているものも多いが、このような膨らみ部分(バリ)が、樹脂ライナの表面を傷つけてしまい、ライナ寿命の低下を招くこともありうる。
【0008】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤの切断時において、ワイヤの切断部分にふくらみ部分のないワイヤカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ワイヤの切断予定部を緊張状態に保ち、この緊張状態のワイヤを切断刃により切断することにより、ワイヤの切断部分はワイヤの長手方向に沿って塑性流動しやすく、切断部分にバリ等の膨らみ部分が形成されにくいとの新たな知見を得た。
【0010】
本発明は、前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係るワイヤカッタは、ワイヤの切断操作を行なう操作部と、該操作部に取着され、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断部と、を備え、前記ワイヤ案内路に案内された前記ワイヤを切断するワイヤカッタであって、前記切断部は、前記ワイヤ案内路の両側で前記ワイヤを緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部と、該一対のワイヤ挟持部間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動する複数の切断刃と、を備える。
【0011】
本発明によれば、ワイヤ切断部に案内されたワイヤは、ワイヤ案内路の両側のワイヤ挟持部に把持されると共に、一対のワイヤ挟持部により、ワイヤ案内路内においてその両側から引張されて緊張状態が確保される。この緊張状態にワイヤの一点に向かって、複数の切断刃が、異なる方向から移動することにより、ワイヤを切断することができる。この結果、ワイヤ切断時において、ワイヤは、ワイヤの長手方向である引張方向に塑性流動しやすいので、これにより、ワイヤの径方向外側に向かって膨らんだ部分が殆どない切断部分を得ることができる。
【0012】
このように切断部分に膨らみ部分の少ないワイヤは、装置のワイヤ案内路内に円滑に挿入し、一定速度で搬送することができるので、アーク及びワイヤ溶融速度が安定し、スパッタの発生も抑制することができる。さらに、このようなワイヤは搬送時において、装置内のワイヤ案内路を傷つけ難いので、装置の長寿命化を図ることも可能となる。
【0013】
本発明に係るワイヤカッタの前記複数の切断刃は、ワイヤを切断することができるのであれば、その個数は特に限定されるものではないが、好ましくは、少なくとも3以上の切断刃からなり、より好ましくは4つの切断刃からなる。
【0014】
本発明によれば、従来のように、2つの切断刃によって、ワイヤを切断した場合には、ワイヤは径方向外側に塑性流動しやすいが、3以上の切断刃を異なる方向からワイヤ案内路の一点に向かって移動させることにより、ワイヤの切断部近傍は、径方向外側に向かって塑性流動し難く、長手方向にワイヤの切り口肉を逃がし易くなる。さらに、4つの切断刃にすれば、四方から切断刃をワイヤ案内路の一点に向かって移動させる機構は、他の場合に比べてよりシンプルな機構となるため、ワイヤカッタ自体の製造コストを抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断部は、前記ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動をすることが可能な一対の切断部本体をさらに備え、各切断部本体には前記ワイヤ挟持部が配置されていることがより好ましい。
【0016】
本発明によれば、各ワイヤ挟持部が各切断部本体に配置されているので、一対の切断部本体が、ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動するのに合わせて、ワイヤ挟持部により、ワイヤ案内路内のワイヤを容易に緊張状態にすることができる。
【0017】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、前記切断部本体に取着され、かつ前記ワイヤ案内路を挟んで対向配置された一対のワイヤ押さえコマと、前記切断部本体の前記離間移動に連動して、前記一対のワイヤ押えコマを前記ワイヤ案内路に向かって近接移動させる近接移動機構と、を備えることがより好ましい。
【0018】
本発明によれば、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを切断部本体の離間移動に連動して、近接移動機構により、対向配置されたワイヤ押えコマがワイヤ案内路に向かって移動する。この一対のワイヤ押えコマの近接移動により、ワイヤ案内路のあるワイヤを挟持すると共に、離間移動する切断部本体に取着された各ワイヤ押えコマも相互に離間移動するので、ワイヤ案内路のワイヤを挟持しながら緊張状態にすることが容易にできる。
【0019】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、該一対のワイヤ押えコマが離間する方向に、前記一対のワイヤ押えコマを付勢する押えコマ付勢手段をさらに備えることがより好ましい。
【0020】
本発明によれば、ワイヤ切断時には、一対のワイヤ押えコマの近接移動により、ワイヤ案内路が狭くなるが、コマ付勢手段を設けたことによりワイヤ押えコマを自動的に離間させ、次回の切断時に、ワイヤをワイヤ案内路に容易に案内することができる。これにより、ワイヤカッタの操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、前記近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限する荷重制限手段をさらに備えることがより好ましい。
【0022】
本発明によれば、荷重制限手段を設けることにより、近接移動するワイヤ押えコマによるワイヤへの過剰な圧迫、及び該圧迫によるワイヤの変形を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、一点に向かって同時に複数の切断刃が移動することができるものであれば、切断刃を移動させる構造は特に限定されるものではないが、より好ましくは、本発明に係るワイヤカッタの前記切断部は、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、前記複数の切断刃を、前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させる切断刃移動機構を備える。
【0024】
本発明によれば、前記切断刃移動機構を設けることにより、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、ワイヤ挟持部によりワイヤ案内路内のワイヤを緊張状態にすることができると共に、切断刃を前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させることができる。
【0025】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、前記切断部は、前記一点に向かって移動した切断刃を、離間する方向に付勢する切断刃付勢手段をさらに備えることがより好ましい。
【0026】
本発明によれば、ワイヤ切断時には、複数の切断刃がワイヤ案内路の一点に向かって移動しているので、ワイヤ案内路は閉塞されているが、切断刃付勢手段を設けたことにより切断刃を自動的に離間させ、次回の切断時にワイヤをワイヤ案内路に容易に案内することができる。これにより、ワイヤカッタの操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。
【0027】
本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、前記操作部は、ヒンジ部を有した一対の操作用ハンドルであって、前記ヒンジ部を挟んで前記操作用ハンドルの一方側には操作用取手部が形成され、他方側には前記切断部が連結されていることがより好ましい。
【0028】
本発明によれば、特に、前記ハンドルの一方側の操作用取手部の操作に合わせて、一対の切断部本体を相互に離間移動可能なように前記ハンドルに取り付けた場合には、前記ハンドルの操作に応じて、簡単に、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを、緊張状態で挟持することができる。さらに、前記操作用ハンドルの一方側の操作用取手部の操作に合わせて、切断部本体を離間移動可能なように操作用ハンドルに取り付けた場合には、操作用ハンドルの操作に応じて、簡単に、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを切断することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ワイヤの切断時において、ワイヤの切断部分に、ワイヤ径方向外側にふくらみ部分のないワイヤを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、図面を参照して、本発明に係るワイヤカッタについて実施形態に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本実施形態にワイヤカッタの側面外観図であり、図2は、図1のII−II線矢視断面図、図3は、図2のIII−III線矢視断面図である。なお、以下では、図1に示すワイヤに沿った方向を左右方向と、これに対して垂直な方向を上下方向と、紙面に対して垂直方向を前後方向として、便宜上説明するが、この方向に限定して本発明を特定するものではない。
【0032】
図1〜3に示すように、本発明に係るワイヤカッタ1は、一対の操作用ハンドル(操作部)2,2と、操作用ハンドルに取着された切断部3を備えている。一対の操作用ハンドル2,2は、ワイヤ9の切断操作を行なうものであり、中央においてピポットピンにより連結されたヒンジ部22を有している。各操作用ハンドル2は、ヒンジ部22を挟んで一方側に、操作者が握手することが可能なように操作用取手部21が形成されている。また、一対の操作用ハンドル2,2には、操作者が操作用取手部21同士を握り締めて、近接させた(ワイヤ9を切断した)後、操作用取手部21同士を離間移動させるバネ25が配置されている。さらに、操作用ハンドル2は、ヒンジ部22のピポットピンを挟んで他方側には、連結ピン23を介して切断部3に連結されている。
【0033】
切断部3は、ワイヤ9を切断する部分であり、図2に示すように、一対の切断部本体30と、ワイヤ挟持部40と、複数の切断刃60a,60bとを少なくとも備えており、その内部には、切断予定のワイヤ9を案内するワイヤ案内路7が形成されている。
【0034】
各切断部本体30は、連結ピン23を介して操作用ハンドル2に連結されている。そして、操作者が操作用取手部2同士を握り締めたときに、操作用ハンドル2,2のピポット運動により、切断部本体30は、ワイヤ案内路7に沿って相互に離間移動をすることが可能となっている。なお、本発明及び本実施形態でいう、ワイヤ案内路7とは、切断部3を構成する部材を組み立てたときに、切断部3の内部に形成された通路であって、ワイヤ9が案内されて配置される経路のことをいう。さらに、切断部本体30の内部には、ワイヤ挟持部40、複数の切断刃60a,60bおよびこれらを移動させる切断刃移動機構50a,bが設けられている。
【0035】
図4〜図7は、ワイヤ挟持部40を説明するための図である。図4は、図1のIV−IV線矢視断面図であり、図5は、図4のV−V線矢視断面図であり、図6は、本実施形態に係るワイヤカッタ1のワイヤ挟持部40の斜視図であり、図7は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の一対のワイヤ押えコマ41の斜視図である。
【0036】
図4〜6に示すように、ワイヤ挟持部40は、ワイヤ案内路7の両側にワイヤ9を緊張状態で挟持するものであり、各ワイヤ挟持部40は、各切断部本体30に配置されている。また、各ワイヤ挟持部40は、一対のワイヤ押えコマ41,41と、各ワイヤ押えコマ41をワイヤ案内路7に向かって駆動させる駆動部材42と、該駆動部材42を支持する支持部材43と、を少なくとも備えている。
【0037】
一対のワイヤ押えコマ41,41は、ワイヤ案内路7を挟んで対向配置されている。図7に示すように、各ワイヤ押えコマ41の対向面(一方側の面)41aには、ワイヤ案内路7を形成すべく、挟持するワイヤ9の形状に合わせた形状のワイヤ挟持溝41bが形成されている。また、対向面41aには、ワイヤ挟持溝41bを挟んで2つのバネ挿入孔41cが形成されている。バネ挿入孔41cには、一対のワイヤ押えコマ41,41が離間する方向に、一対のワイヤ押えコマ41,41を付勢する付勢バネ(押えコマ付勢手段)48が配置されている。
【0038】
また、各ワイヤ押えコマ41の外側端部(ワイヤ案内路7の端側)には、T字状のガイド41dが形成されている。また、ガイド41dは、ワイヤ押えコマ41,41同士がワイヤ案内路7に向かってスライド自在なように、切断部本体30に形成されたT字溝31(図4参照)に配置されている。さらに、ワイヤ押えコマ41の他方側の面は、ワイヤ案内路に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面41eが形成されており、傾斜面41eには、駆動部材42が当接している。
【0039】
駆動部材42は、ワイヤ案内路7に向かって一対のワイヤ押えコマ41,41を近接移動さるための部材(近接移動手段)であり、後述するように、切断部本体30の離間移動に連動して、一対のワイヤ押えコマ41,41をワイヤ案内路7に向かって近接移動させる機構を成している。具体的には、ワイヤ押えコマ41に当接する側(一方側)には、ワイヤ押えコマの傾斜面41eに対して相対的にスライドするスライド面(傾斜面)42aが形成されており、このスライド面42aも、ワイヤ案内路に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面であることは勿論のことである。このようにして、ワイヤ押えコマ41と駆動部材42とのワイヤ案内路7に沿った相対的な移動に伴い、ワイヤ押えコマ41と駆動部材42の傾斜面(スライド面)42a同士がスライドし、一対のワイヤ押えコマ41,41が、相互に近接する方向に移動する近接移動機構を得ることができる。
【0040】
さらに、駆動部材42の他方側の面は、支持部材43と摺動可能に当接している。駆動部材42と支持部材43との当接面である双方の合わせ面には、凹部が形成されている。この凹部には、荷重制限バネ(荷重制限手段)45が配置されており、駆動部材42と支持部材43の双方に付勢可能なように、配置されている。この荷重制限バネ45は、近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限するものとなる。
【0041】
さらに、支持部材43は、切断部本体30に対して固定されず、スライド可能に配置されてれおり、その中央には、後述する切断刃60aが通過するための通し窓43aが形成されている。
【0042】
図8〜11は、本実施形態にかかる複数の切断刃60a,60b、及びこれを移動させる切断刃移動機構50a,50bを説明するための図である。図8は、図1のVIII−VIII線矢視断面図であり、図9は、図8のIX−IX線矢視断面図であり、図10は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の前後方向の切断刃60a,60bの切断刃移動機構50aの要部斜視図であり、図11は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の上下方向の切断刃60a,60bの切断刃移動機構50bの要部斜視図である。尚、図8及び9は、切断刃に関連した、必要な部材のみを抽出して図示している。
【0043】
図8及び9に示すように、ワイヤ9を切断するための4つの切断刃は、前後方向に移動可能に配置された2つの切断刃60a,60aと、上下方向に移動可能に配置された2つの切断刃60b,60bと、からなる。これらの全ての切断刃は、ワイヤ案内路7の両側のワイヤ挟持部40,40の間に設けられている(図2参照)。全ての切断刃は、異なる方向から(四方から)ワイヤ案内路7の一点に向かって移動するように配置されている。また、これらの切断刃は、図10,11に示すように、四角柱の刃先を有しており、切断時にそれらの刃先先端が、前記ワイヤ案内路7の一点において、一致するようになっている(図9参照)。
【0044】
図10に示すように、前後方向の2つの切断刃60a,60aは、エの字状の一対の刃押え板(切断刃駆動部材)52a,52aの中央に取着されおり、切断刃移動機構50を構成する刃押え板52a同士は、ワイヤ案内路7を挟んで対向配置されている。
【0045】
一対の刃押え板52a,52aが対向した刃押え板52aの対向面55aには、その四隅に4つのピン挿入孔54aが形成されている。ピン挿入孔54aには、円柱状のバランスピン56aの端部が、内挿されており、かつ、バランスピン56aが、その軸方向に移動可能に配置されている。さらに、バランスピン56aの外周には、一点に向かって移動した切断刃を、離間する方向に付勢する切断刃付勢ばね(切断刃付勢手段)58aが配置されている。
【0046】
また、刃押え板52aの外側の面には、ワイヤ案内路7に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面53aを有しており、この傾斜面53aは、切断部本体30の内面(傾斜面)に、相対的にスライド可能に当接している。そして、刃押え板52と切断部本体30とのワイヤ案内路7に沿った相対的な移動に伴い、刃押え板52と切断部本体30の傾斜面53a同士がスライドし、前後方向の一対の切断刃60a,60aが、相互に近接する方向に移動する近接移動機構を得ることができる。
【0047】
また、上述したワイヤ挟持部の傾斜面41eの傾斜角度と、刃押え板52の傾斜面53aの傾斜角度は、切断刃60aがワイヤ案内路7の一点に到達する前に、ワイヤ押えコマ41同士によりワイヤ挟持部40が緊張状態でワイヤ9を挟持できるように設定されている。これは、ワイヤ押えコマ間の距離、切断刃間の距離が、これらの移動量になるので、この距離も考慮して、それら傾斜角度が設定されている。
【0048】
なお、上下方向に切断刃を移動させる切断刃移動機構50bは、図11に示すように、切断刃60aとはその移動方向が異なり、刃押え板52aとはその形状が異なるだけであり、図10に示す切断刃移動機構50aと略機構である。よって、図11に示す各部材及び部分は、図10の部材等に付した符号末尾のaをbに変えることで、その詳細な説明は省略する。
【0049】
このように構成されたワイヤカッタ1の作用について以下に説明する。まず、図1からも明らかなように、作業者は、切断部3に形成されたワイヤ案内路7に沿って、ワイヤ9を案内する。次に、作業者は、操作用ハンドル2の操作用取手部21が相互に近接するように、一対の操作用ハンドル2を握る。
【0050】
この際、操作用ハンドル2は、ヒンジ部22のピポットピンにより連結されているので、他方側に配置された切断部3の一対の切断部本体30,30が、左右方向(ワイヤ案内路7に沿った方向)に、相互に離間移動する。
【0051】
このとき、ワイヤ案内路7の両側に取付けられたワイヤ挟持部40は以下の挙動を示す。具体的には、図4及び6に示すように、ワイヤ挟持部40のワイヤ押えコマ41は、切断部本体30にワイヤ案内路7に向かって移動可能に取着され、駆動部材42のスライド面(傾斜面)42aに当接しているので、ワイヤ押えコマ41の傾斜面41eは、駆動部材42の傾斜面42aに対して相対的にスライドする。
【0052】
このスライドにより、対向配置されたワイヤ押えコマ41は、ワイヤ案内路7に向かって移動し、ワイヤ9は、一対のワイヤ押えコマ41,41によって、ワイヤ挟持溝41b,41b内において挟持される。さらに、ワイヤ押えコマ41は、ワイヤ案内路7に沿って離間移動する切断部本体30に取り付けられているので、ワイヤ案内路7の両端にあるワイヤ押えコマ41,41(ワイヤ挟持部40,40)も、互いに離間移動する。これにより、ワイヤ9には、ワイヤ案内路7の両側において、ワイヤ挟持部40により挟持されると共に、両端から引張されるので、ワイヤ9を緊張状態に保つことができる。
【0053】
また、その一方で、駆動部材42と支持部材43とは、合わせ面においてスライドすることになる。そして、該スライドを制限するように、すなわち、近接移動したワイヤ押えコマ41同士に作用する荷重を制限するように、荷重制限バネ45を設けたので、近接移動するワイヤ押えコマ41によるワイヤ9への過剰な圧迫、及び該圧迫によるワイヤの変形を防止することができる。
【0054】
さらに、緊張状態のワイヤに対して、ワイヤ挟持部40の間に配置されえた4つの切断刃は以下の挙動を示す。図8〜11を参照して明らかなように、4つの切断刃を取り付けた刃押え板52a,52bの傾斜面53a,53bが、切断部本体30の離間移動により、切断部本体30の傾斜した内面に、相対的にスライドする。このスライドにより、4つの切断刃は、四方(上下前後)からワイヤ案内路7の一点に向かって移動し、これら切断刃の刃先によりワイヤ9は、切断される。
【0055】
このとき、図10に示すように、対向配置された一対の刃押え板52a,52aの間に、バランスピン56aを配置し、さらに、その外周に切断刃付勢ばね(切断刃付勢手段)56aを設けたので、切断刃60a,60aは、刃先がぶれることなく、再現性をもって、ワイヤ案内路7の一点に向かって移動することができる。これにより、ワイヤカッタ1の操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。また、図11に示すように、刃押え板52bの形状は異なるが、図10の刃押え板52aと同様の機構であるので、切断刃60b,60bも、同様に刃先が、ぶれるとはない。このようにして、ワイヤの切断部近傍は、径方向外側に向かって塑性流動し難く、長手方向にワイヤの切り口肉を、刃先の逃げ面に逃がし易くなる。
【0056】
また、4つの切断刃は、安定して、ワイヤ案内路7の一点に向かって安定的に移動し、ワイヤ切断部3に案内されたワイヤ9は、ワイヤ切断時において、ワイヤ9の長手方向である引張方向に塑性流動しやすいので、これにより、ワイヤの径方向外側に向かって膨らんだ部分が殆どない切断部分を得ることができる。
【0057】
さらに、ワイヤ9の切断時には、切断刃60a,60aがワイヤ案内路7の一点に向かって移動しているので、ワイヤ案内路7は閉塞されているが、切断刃付勢ばね56aを設けたことにより切断刃60a,60aを自動的に離間させることができる。次回の切断時にワイヤ9をワイヤ案内路7に容易に案内することができる。
【0058】
また、ワイヤ挟持部40に付勢バネ48を設けたことにより、後述するような、ワイヤ切断時には、一対のワイヤ押えコマ41,41が近接移動するのでワイヤ案内路7が狭くなるが、付勢バネ48が、近接したワイヤ押えコマ41,41を自動的に離間させるので、次回の切断時に、ワイヤ9をワイヤ案内路7に容易に案内することができる。
【実施例】
【0059】
本実施形態に係るワイヤカッタを用いた実施例を以下に示す。
【0060】
(実施例)
ワイヤとして、直径1.6mmであり、Fe−0.07質量%、C−0.17質量%、Mn−0.1質量%、残部Siの材質の第一の溶射用ワイヤと、Fe−0.1質量%、C−12質量%、残部Crの材質の第二の溶射用ワイヤを準備し、このワイヤを本実施形態のワイヤカッタを用いて切断した。
【0061】
<外観評価>
切断したワイヤの切断部分のワイヤ径を測定し、切断部分の目視で径方向外側に膨らんでいるかを確認した。
【0062】
<性能評価>
外径φ100mm、内径φ80mm、高さ135mm、のアルミニウム製のスリーブの内面に、ワイヤカッタで切断した第一の溶射用ワイヤを用いて、電圧値、電流値、供給速度、及び溶射ノズルのトラバース速度を適宜設定して、厚さ0.4mmの溶射被膜を形成した。そして、被膜表面に0.8mm以上の突起がある場合は、スパッタがあるとして、この作業を繰返した。そして、スリーブ200個の溶射を行ったときのスパッタの発生個数をカウントした。この結果を表1に示す。さらに、継続して前記溶射を行った際の当該溶射装置にライニングされた樹脂ライナの寿命も測定した。この結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(比較例)
実施例と同じ第一及び第二の溶射用ワイヤを準備し、従来のようにニッパを用いてワイヤを切断した。そして、実施例と同じように、外観評価を行なうと共に、性能評価も行なった。この結果を表1に示す。
【0065】
[結果]
実施例では、ワイヤの切断部分のワイヤ径は未切断部分のものと同程度であり、膨らみもなかったが、比較例では、ワイヤの切断部分のワイヤ径は実切断部分のものに比べて増加していた。
【0066】
また、表1から明らかのように、実施例では、スパッタの発生は皆無であり、溶射装置の樹脂ライナは、装置を1000時間使用しても、使用可能な状態であった。一方、比較例では、200個中、11個のスリーブにスパッタが発生していた。また、樹脂ライナの寿命は、370時間で、実施例に比べて短かった。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0068】
例えば、本実施形態では、ワイヤの切断操作を行なう操作部を、操作用ハンドルとしたが、切断部により切断をすることができるのであれば、直接装置に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係るワイヤカッタの側面外観図。
【図2】図1のII−II線矢視断面図。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図。
【図5】図4のV−V線矢視断面図。
【図6】本実施形態に係るワイヤカッタのワイヤ挟持部の斜視図。
【図7】本実施形態に係るワイヤカッタの一対のワイヤ押えコマの斜視図。
【図8】図1のVIII−VIII線矢視断面図。
【図9】図8のIX−IX線矢視断面図。
【図10】本実施形態に係るワイヤカッタの前後方向の切断刃の移動機構の要部斜視図。
【図11】本実施形態に係るワイヤカッタの上下方向の切断刃の移動機構の要部斜視図。
【符号の説明】
【0070】
1:ワイヤカッタ、2:操作用ハンドル、3:切断部、7:ワイヤ案内路、9:ワイヤ、30:切断部本体、40:ワイヤ挟持部、41:ワイヤ押えコマ、60a,60b:切断刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを切断するワイヤカッタに係り、特に、アーク溶接または溶射等のワイヤを切断するに好適なワイヤカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アーク溶接等の溶接や溶射を行なう際には、ワイヤ状の溶射材料または溶接材料(ワイヤ)を溶融して、対象物に融着させている。このようなワイヤは、ドラムに巻かれており、ニッパなどのワイヤカッタを用いて切断される。切断されたワイヤは、その切断部である先端が溶射装置または溶接装置内に挿入され、フィードローラ等により装置内のワイヤ案内路に搬送される。搬送されたワイヤは、溶射又は溶接の処理速度に合わせて、装置内に所定の搬送速度(供給速度)で搬送される。
【0003】
ところで、ワイヤを切断するワイヤカッタとして、例えば、一方側に把持・操作用ハンドルを形成し、他方側に、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断刃が形成されたワイヤカッタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤカッタは、ワイヤに被覆された絶縁シースをワイヤから除去すべく、ワイヤ案内路の一方側において、切断刃との間で前記ワイヤを緊張状態で挟持する補助工具(ワイヤ挟持部)をさらに備えている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−118709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ニッパなどのワイヤカッタを用いた場合には、2つの切断刃でワイヤを押さえ込んで切断するが、ワイヤの切断時に、ワイヤの切断部近傍が、径方向外側に向かって塑性流動し、径方向外側に膨らみ部分を有したヘラ状の切断部分が形成されてしまう。また、特許文献1に記載のワイヤカッタは、切断刃とワイヤ挟持部の間のワイヤに対して緊張状態を保ちながら、ワイヤ挟持部で絶縁シースを除去すると共にワイヤを切断するが、このワイヤカッタを用いたとしても、ワイヤの切断部分は同様の形状になってしまう。
【0006】
このような切断部分を有したワイヤを、溶接又は溶射の装置に挿入した場合、膨らみ部分が鋭利なため、ワイヤ案内路、チップ等に傷をつけることがある。これにより、装置内におけるワイヤの送り速度(供給速度)が変動する可能性がある。この供給速度の変動が一定以上になると、処理速度に依存するアーク及びワイヤ溶融速度が不安定となり、スパッタの発生の原因となる場合がある。
【0007】
さらに、前記装置は、ワイヤ案内路とワイヤの摩擦抵抗を低減し、ワイヤの供給速度を一定に保つために、ワイヤ案内路に樹脂ライナを被覆されているものも多いが、このような膨らみ部分(バリ)が、樹脂ライナの表面を傷つけてしまい、ライナ寿命の低下を招くこともありうる。
【0008】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤの切断時において、ワイヤの切断部分にふくらみ部分のないワイヤカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ワイヤの切断予定部を緊張状態に保ち、この緊張状態のワイヤを切断刃により切断することにより、ワイヤの切断部分はワイヤの長手方向に沿って塑性流動しやすく、切断部分にバリ等の膨らみ部分が形成されにくいとの新たな知見を得た。
【0010】
本発明は、前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係るワイヤカッタは、ワイヤの切断操作を行なう操作部と、該操作部に取着され、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断部と、を備え、前記ワイヤ案内路に案内された前記ワイヤを切断するワイヤカッタであって、前記切断部は、前記ワイヤ案内路の両側で前記ワイヤを緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部と、該一対のワイヤ挟持部間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動する複数の切断刃と、を備える。
【0011】
本発明によれば、ワイヤ切断部に案内されたワイヤは、ワイヤ案内路の両側のワイヤ挟持部に把持されると共に、一対のワイヤ挟持部により、ワイヤ案内路内においてその両側から引張されて緊張状態が確保される。この緊張状態にワイヤの一点に向かって、複数の切断刃が、異なる方向から移動することにより、ワイヤを切断することができる。この結果、ワイヤ切断時において、ワイヤは、ワイヤの長手方向である引張方向に塑性流動しやすいので、これにより、ワイヤの径方向外側に向かって膨らんだ部分が殆どない切断部分を得ることができる。
【0012】
このように切断部分に膨らみ部分の少ないワイヤは、装置のワイヤ案内路内に円滑に挿入し、一定速度で搬送することができるので、アーク及びワイヤ溶融速度が安定し、スパッタの発生も抑制することができる。さらに、このようなワイヤは搬送時において、装置内のワイヤ案内路を傷つけ難いので、装置の長寿命化を図ることも可能となる。
【0013】
本発明に係るワイヤカッタの前記複数の切断刃は、ワイヤを切断することができるのであれば、その個数は特に限定されるものではないが、好ましくは、少なくとも3以上の切断刃からなり、より好ましくは4つの切断刃からなる。
【0014】
本発明によれば、従来のように、2つの切断刃によって、ワイヤを切断した場合には、ワイヤは径方向外側に塑性流動しやすいが、3以上の切断刃を異なる方向からワイヤ案内路の一点に向かって移動させることにより、ワイヤの切断部近傍は、径方向外側に向かって塑性流動し難く、長手方向にワイヤの切り口肉を逃がし易くなる。さらに、4つの切断刃にすれば、四方から切断刃をワイヤ案内路の一点に向かって移動させる機構は、他の場合に比べてよりシンプルな機構となるため、ワイヤカッタ自体の製造コストを抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断部は、前記ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動をすることが可能な一対の切断部本体をさらに備え、各切断部本体には前記ワイヤ挟持部が配置されていることがより好ましい。
【0016】
本発明によれば、各ワイヤ挟持部が各切断部本体に配置されているので、一対の切断部本体が、ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動するのに合わせて、ワイヤ挟持部により、ワイヤ案内路内のワイヤを容易に緊張状態にすることができる。
【0017】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、前記切断部本体に取着され、かつ前記ワイヤ案内路を挟んで対向配置された一対のワイヤ押さえコマと、前記切断部本体の前記離間移動に連動して、前記一対のワイヤ押えコマを前記ワイヤ案内路に向かって近接移動させる近接移動機構と、を備えることがより好ましい。
【0018】
本発明によれば、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを切断部本体の離間移動に連動して、近接移動機構により、対向配置されたワイヤ押えコマがワイヤ案内路に向かって移動する。この一対のワイヤ押えコマの近接移動により、ワイヤ案内路のあるワイヤを挟持すると共に、離間移動する切断部本体に取着された各ワイヤ押えコマも相互に離間移動するので、ワイヤ案内路のワイヤを挟持しながら緊張状態にすることが容易にできる。
【0019】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、該一対のワイヤ押えコマが離間する方向に、前記一対のワイヤ押えコマを付勢する押えコマ付勢手段をさらに備えることがより好ましい。
【0020】
本発明によれば、ワイヤ切断時には、一対のワイヤ押えコマの近接移動により、ワイヤ案内路が狭くなるが、コマ付勢手段を設けたことによりワイヤ押えコマを自動的に離間させ、次回の切断時に、ワイヤをワイヤ案内路に容易に案内することができる。これにより、ワイヤカッタの操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係るワイヤカッタの前記ワイヤ挟持部は、前記近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限する荷重制限手段をさらに備えることがより好ましい。
【0022】
本発明によれば、荷重制限手段を設けることにより、近接移動するワイヤ押えコマによるワイヤへの過剰な圧迫、及び該圧迫によるワイヤの変形を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、一点に向かって同時に複数の切断刃が移動することができるものであれば、切断刃を移動させる構造は特に限定されるものではないが、より好ましくは、本発明に係るワイヤカッタの前記切断部は、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、前記複数の切断刃を、前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させる切断刃移動機構を備える。
【0024】
本発明によれば、前記切断刃移動機構を設けることにより、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、ワイヤ挟持部によりワイヤ案内路内のワイヤを緊張状態にすることができると共に、切断刃を前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させることができる。
【0025】
また、本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、前記切断部は、前記一点に向かって移動した切断刃を、離間する方向に付勢する切断刃付勢手段をさらに備えることがより好ましい。
【0026】
本発明によれば、ワイヤ切断時には、複数の切断刃がワイヤ案内路の一点に向かって移動しているので、ワイヤ案内路は閉塞されているが、切断刃付勢手段を設けたことにより切断刃を自動的に離間させ、次回の切断時にワイヤをワイヤ案内路に容易に案内することができる。これにより、ワイヤカッタの操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。
【0027】
本発明に係るワイヤカッタの切断刃は、前記操作部は、ヒンジ部を有した一対の操作用ハンドルであって、前記ヒンジ部を挟んで前記操作用ハンドルの一方側には操作用取手部が形成され、他方側には前記切断部が連結されていることがより好ましい。
【0028】
本発明によれば、特に、前記ハンドルの一方側の操作用取手部の操作に合わせて、一対の切断部本体を相互に離間移動可能なように前記ハンドルに取り付けた場合には、前記ハンドルの操作に応じて、簡単に、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを、緊張状態で挟持することができる。さらに、前記操作用ハンドルの一方側の操作用取手部の操作に合わせて、切断部本体を離間移動可能なように操作用ハンドルに取り付けた場合には、操作用ハンドルの操作に応じて、簡単に、ワイヤ案内路に配置されたワイヤを切断することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ワイヤの切断時において、ワイヤの切断部分に、ワイヤ径方向外側にふくらみ部分のないワイヤを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、図面を参照して、本発明に係るワイヤカッタについて実施形態に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本実施形態にワイヤカッタの側面外観図であり、図2は、図1のII−II線矢視断面図、図3は、図2のIII−III線矢視断面図である。なお、以下では、図1に示すワイヤに沿った方向を左右方向と、これに対して垂直な方向を上下方向と、紙面に対して垂直方向を前後方向として、便宜上説明するが、この方向に限定して本発明を特定するものではない。
【0032】
図1〜3に示すように、本発明に係るワイヤカッタ1は、一対の操作用ハンドル(操作部)2,2と、操作用ハンドルに取着された切断部3を備えている。一対の操作用ハンドル2,2は、ワイヤ9の切断操作を行なうものであり、中央においてピポットピンにより連結されたヒンジ部22を有している。各操作用ハンドル2は、ヒンジ部22を挟んで一方側に、操作者が握手することが可能なように操作用取手部21が形成されている。また、一対の操作用ハンドル2,2には、操作者が操作用取手部21同士を握り締めて、近接させた(ワイヤ9を切断した)後、操作用取手部21同士を離間移動させるバネ25が配置されている。さらに、操作用ハンドル2は、ヒンジ部22のピポットピンを挟んで他方側には、連結ピン23を介して切断部3に連結されている。
【0033】
切断部3は、ワイヤ9を切断する部分であり、図2に示すように、一対の切断部本体30と、ワイヤ挟持部40と、複数の切断刃60a,60bとを少なくとも備えており、その内部には、切断予定のワイヤ9を案内するワイヤ案内路7が形成されている。
【0034】
各切断部本体30は、連結ピン23を介して操作用ハンドル2に連結されている。そして、操作者が操作用取手部2同士を握り締めたときに、操作用ハンドル2,2のピポット運動により、切断部本体30は、ワイヤ案内路7に沿って相互に離間移動をすることが可能となっている。なお、本発明及び本実施形態でいう、ワイヤ案内路7とは、切断部3を構成する部材を組み立てたときに、切断部3の内部に形成された通路であって、ワイヤ9が案内されて配置される経路のことをいう。さらに、切断部本体30の内部には、ワイヤ挟持部40、複数の切断刃60a,60bおよびこれらを移動させる切断刃移動機構50a,bが設けられている。
【0035】
図4〜図7は、ワイヤ挟持部40を説明するための図である。図4は、図1のIV−IV線矢視断面図であり、図5は、図4のV−V線矢視断面図であり、図6は、本実施形態に係るワイヤカッタ1のワイヤ挟持部40の斜視図であり、図7は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の一対のワイヤ押えコマ41の斜視図である。
【0036】
図4〜6に示すように、ワイヤ挟持部40は、ワイヤ案内路7の両側にワイヤ9を緊張状態で挟持するものであり、各ワイヤ挟持部40は、各切断部本体30に配置されている。また、各ワイヤ挟持部40は、一対のワイヤ押えコマ41,41と、各ワイヤ押えコマ41をワイヤ案内路7に向かって駆動させる駆動部材42と、該駆動部材42を支持する支持部材43と、を少なくとも備えている。
【0037】
一対のワイヤ押えコマ41,41は、ワイヤ案内路7を挟んで対向配置されている。図7に示すように、各ワイヤ押えコマ41の対向面(一方側の面)41aには、ワイヤ案内路7を形成すべく、挟持するワイヤ9の形状に合わせた形状のワイヤ挟持溝41bが形成されている。また、対向面41aには、ワイヤ挟持溝41bを挟んで2つのバネ挿入孔41cが形成されている。バネ挿入孔41cには、一対のワイヤ押えコマ41,41が離間する方向に、一対のワイヤ押えコマ41,41を付勢する付勢バネ(押えコマ付勢手段)48が配置されている。
【0038】
また、各ワイヤ押えコマ41の外側端部(ワイヤ案内路7の端側)には、T字状のガイド41dが形成されている。また、ガイド41dは、ワイヤ押えコマ41,41同士がワイヤ案内路7に向かってスライド自在なように、切断部本体30に形成されたT字溝31(図4参照)に配置されている。さらに、ワイヤ押えコマ41の他方側の面は、ワイヤ案内路に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面41eが形成されており、傾斜面41eには、駆動部材42が当接している。
【0039】
駆動部材42は、ワイヤ案内路7に向かって一対のワイヤ押えコマ41,41を近接移動さるための部材(近接移動手段)であり、後述するように、切断部本体30の離間移動に連動して、一対のワイヤ押えコマ41,41をワイヤ案内路7に向かって近接移動させる機構を成している。具体的には、ワイヤ押えコマ41に当接する側(一方側)には、ワイヤ押えコマの傾斜面41eに対して相対的にスライドするスライド面(傾斜面)42aが形成されており、このスライド面42aも、ワイヤ案内路に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面であることは勿論のことである。このようにして、ワイヤ押えコマ41と駆動部材42とのワイヤ案内路7に沿った相対的な移動に伴い、ワイヤ押えコマ41と駆動部材42の傾斜面(スライド面)42a同士がスライドし、一対のワイヤ押えコマ41,41が、相互に近接する方向に移動する近接移動機構を得ることができる。
【0040】
さらに、駆動部材42の他方側の面は、支持部材43と摺動可能に当接している。駆動部材42と支持部材43との当接面である双方の合わせ面には、凹部が形成されている。この凹部には、荷重制限バネ(荷重制限手段)45が配置されており、駆動部材42と支持部材43の双方に付勢可能なように、配置されている。この荷重制限バネ45は、近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限するものとなる。
【0041】
さらに、支持部材43は、切断部本体30に対して固定されず、スライド可能に配置されてれおり、その中央には、後述する切断刃60aが通過するための通し窓43aが形成されている。
【0042】
図8〜11は、本実施形態にかかる複数の切断刃60a,60b、及びこれを移動させる切断刃移動機構50a,50bを説明するための図である。図8は、図1のVIII−VIII線矢視断面図であり、図9は、図8のIX−IX線矢視断面図であり、図10は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の前後方向の切断刃60a,60bの切断刃移動機構50aの要部斜視図であり、図11は、本実施形態に係るワイヤカッタ1の上下方向の切断刃60a,60bの切断刃移動機構50bの要部斜視図である。尚、図8及び9は、切断刃に関連した、必要な部材のみを抽出して図示している。
【0043】
図8及び9に示すように、ワイヤ9を切断するための4つの切断刃は、前後方向に移動可能に配置された2つの切断刃60a,60aと、上下方向に移動可能に配置された2つの切断刃60b,60bと、からなる。これらの全ての切断刃は、ワイヤ案内路7の両側のワイヤ挟持部40,40の間に設けられている(図2参照)。全ての切断刃は、異なる方向から(四方から)ワイヤ案内路7の一点に向かって移動するように配置されている。また、これらの切断刃は、図10,11に示すように、四角柱の刃先を有しており、切断時にそれらの刃先先端が、前記ワイヤ案内路7の一点において、一致するようになっている(図9参照)。
【0044】
図10に示すように、前後方向の2つの切断刃60a,60aは、エの字状の一対の刃押え板(切断刃駆動部材)52a,52aの中央に取着されおり、切断刃移動機構50を構成する刃押え板52a同士は、ワイヤ案内路7を挟んで対向配置されている。
【0045】
一対の刃押え板52a,52aが対向した刃押え板52aの対向面55aには、その四隅に4つのピン挿入孔54aが形成されている。ピン挿入孔54aには、円柱状のバランスピン56aの端部が、内挿されており、かつ、バランスピン56aが、その軸方向に移動可能に配置されている。さらに、バランスピン56aの外周には、一点に向かって移動した切断刃を、離間する方向に付勢する切断刃付勢ばね(切断刃付勢手段)58aが配置されている。
【0046】
また、刃押え板52aの外側の面には、ワイヤ案内路7に沿った方向Lに対して、傾斜した傾斜面53aを有しており、この傾斜面53aは、切断部本体30の内面(傾斜面)に、相対的にスライド可能に当接している。そして、刃押え板52と切断部本体30とのワイヤ案内路7に沿った相対的な移動に伴い、刃押え板52と切断部本体30の傾斜面53a同士がスライドし、前後方向の一対の切断刃60a,60aが、相互に近接する方向に移動する近接移動機構を得ることができる。
【0047】
また、上述したワイヤ挟持部の傾斜面41eの傾斜角度と、刃押え板52の傾斜面53aの傾斜角度は、切断刃60aがワイヤ案内路7の一点に到達する前に、ワイヤ押えコマ41同士によりワイヤ挟持部40が緊張状態でワイヤ9を挟持できるように設定されている。これは、ワイヤ押えコマ間の距離、切断刃間の距離が、これらの移動量になるので、この距離も考慮して、それら傾斜角度が設定されている。
【0048】
なお、上下方向に切断刃を移動させる切断刃移動機構50bは、図11に示すように、切断刃60aとはその移動方向が異なり、刃押え板52aとはその形状が異なるだけであり、図10に示す切断刃移動機構50aと略機構である。よって、図11に示す各部材及び部分は、図10の部材等に付した符号末尾のaをbに変えることで、その詳細な説明は省略する。
【0049】
このように構成されたワイヤカッタ1の作用について以下に説明する。まず、図1からも明らかなように、作業者は、切断部3に形成されたワイヤ案内路7に沿って、ワイヤ9を案内する。次に、作業者は、操作用ハンドル2の操作用取手部21が相互に近接するように、一対の操作用ハンドル2を握る。
【0050】
この際、操作用ハンドル2は、ヒンジ部22のピポットピンにより連結されているので、他方側に配置された切断部3の一対の切断部本体30,30が、左右方向(ワイヤ案内路7に沿った方向)に、相互に離間移動する。
【0051】
このとき、ワイヤ案内路7の両側に取付けられたワイヤ挟持部40は以下の挙動を示す。具体的には、図4及び6に示すように、ワイヤ挟持部40のワイヤ押えコマ41は、切断部本体30にワイヤ案内路7に向かって移動可能に取着され、駆動部材42のスライド面(傾斜面)42aに当接しているので、ワイヤ押えコマ41の傾斜面41eは、駆動部材42の傾斜面42aに対して相対的にスライドする。
【0052】
このスライドにより、対向配置されたワイヤ押えコマ41は、ワイヤ案内路7に向かって移動し、ワイヤ9は、一対のワイヤ押えコマ41,41によって、ワイヤ挟持溝41b,41b内において挟持される。さらに、ワイヤ押えコマ41は、ワイヤ案内路7に沿って離間移動する切断部本体30に取り付けられているので、ワイヤ案内路7の両端にあるワイヤ押えコマ41,41(ワイヤ挟持部40,40)も、互いに離間移動する。これにより、ワイヤ9には、ワイヤ案内路7の両側において、ワイヤ挟持部40により挟持されると共に、両端から引張されるので、ワイヤ9を緊張状態に保つことができる。
【0053】
また、その一方で、駆動部材42と支持部材43とは、合わせ面においてスライドすることになる。そして、該スライドを制限するように、すなわち、近接移動したワイヤ押えコマ41同士に作用する荷重を制限するように、荷重制限バネ45を設けたので、近接移動するワイヤ押えコマ41によるワイヤ9への過剰な圧迫、及び該圧迫によるワイヤの変形を防止することができる。
【0054】
さらに、緊張状態のワイヤに対して、ワイヤ挟持部40の間に配置されえた4つの切断刃は以下の挙動を示す。図8〜11を参照して明らかなように、4つの切断刃を取り付けた刃押え板52a,52bの傾斜面53a,53bが、切断部本体30の離間移動により、切断部本体30の傾斜した内面に、相対的にスライドする。このスライドにより、4つの切断刃は、四方(上下前後)からワイヤ案内路7の一点に向かって移動し、これら切断刃の刃先によりワイヤ9は、切断される。
【0055】
このとき、図10に示すように、対向配置された一対の刃押え板52a,52aの間に、バランスピン56aを配置し、さらに、その外周に切断刃付勢ばね(切断刃付勢手段)56aを設けたので、切断刃60a,60aは、刃先がぶれることなく、再現性をもって、ワイヤ案内路7の一点に向かって移動することができる。これにより、ワイヤカッタ1の操作性、及びワイヤ切断の作業性を向上させることができる。また、図11に示すように、刃押え板52bの形状は異なるが、図10の刃押え板52aと同様の機構であるので、切断刃60b,60bも、同様に刃先が、ぶれるとはない。このようにして、ワイヤの切断部近傍は、径方向外側に向かって塑性流動し難く、長手方向にワイヤの切り口肉を、刃先の逃げ面に逃がし易くなる。
【0056】
また、4つの切断刃は、安定して、ワイヤ案内路7の一点に向かって安定的に移動し、ワイヤ切断部3に案内されたワイヤ9は、ワイヤ切断時において、ワイヤ9の長手方向である引張方向に塑性流動しやすいので、これにより、ワイヤの径方向外側に向かって膨らんだ部分が殆どない切断部分を得ることができる。
【0057】
さらに、ワイヤ9の切断時には、切断刃60a,60aがワイヤ案内路7の一点に向かって移動しているので、ワイヤ案内路7は閉塞されているが、切断刃付勢ばね56aを設けたことにより切断刃60a,60aを自動的に離間させることができる。次回の切断時にワイヤ9をワイヤ案内路7に容易に案内することができる。
【0058】
また、ワイヤ挟持部40に付勢バネ48を設けたことにより、後述するような、ワイヤ切断時には、一対のワイヤ押えコマ41,41が近接移動するのでワイヤ案内路7が狭くなるが、付勢バネ48が、近接したワイヤ押えコマ41,41を自動的に離間させるので、次回の切断時に、ワイヤ9をワイヤ案内路7に容易に案内することができる。
【実施例】
【0059】
本実施形態に係るワイヤカッタを用いた実施例を以下に示す。
【0060】
(実施例)
ワイヤとして、直径1.6mmであり、Fe−0.07質量%、C−0.17質量%、Mn−0.1質量%、残部Siの材質の第一の溶射用ワイヤと、Fe−0.1質量%、C−12質量%、残部Crの材質の第二の溶射用ワイヤを準備し、このワイヤを本実施形態のワイヤカッタを用いて切断した。
【0061】
<外観評価>
切断したワイヤの切断部分のワイヤ径を測定し、切断部分の目視で径方向外側に膨らんでいるかを確認した。
【0062】
<性能評価>
外径φ100mm、内径φ80mm、高さ135mm、のアルミニウム製のスリーブの内面に、ワイヤカッタで切断した第一の溶射用ワイヤを用いて、電圧値、電流値、供給速度、及び溶射ノズルのトラバース速度を適宜設定して、厚さ0.4mmの溶射被膜を形成した。そして、被膜表面に0.8mm以上の突起がある場合は、スパッタがあるとして、この作業を繰返した。そして、スリーブ200個の溶射を行ったときのスパッタの発生個数をカウントした。この結果を表1に示す。さらに、継続して前記溶射を行った際の当該溶射装置にライニングされた樹脂ライナの寿命も測定した。この結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(比較例)
実施例と同じ第一及び第二の溶射用ワイヤを準備し、従来のようにニッパを用いてワイヤを切断した。そして、実施例と同じように、外観評価を行なうと共に、性能評価も行なった。この結果を表1に示す。
【0065】
[結果]
実施例では、ワイヤの切断部分のワイヤ径は未切断部分のものと同程度であり、膨らみもなかったが、比較例では、ワイヤの切断部分のワイヤ径は実切断部分のものに比べて増加していた。
【0066】
また、表1から明らかのように、実施例では、スパッタの発生は皆無であり、溶射装置の樹脂ライナは、装置を1000時間使用しても、使用可能な状態であった。一方、比較例では、200個中、11個のスリーブにスパッタが発生していた。また、樹脂ライナの寿命は、370時間で、実施例に比べて短かった。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0068】
例えば、本実施形態では、ワイヤの切断操作を行なう操作部を、操作用ハンドルとしたが、切断部により切断をすることができるのであれば、直接装置に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係るワイヤカッタの側面外観図。
【図2】図1のII−II線矢視断面図。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図。
【図5】図4のV−V線矢視断面図。
【図6】本実施形態に係るワイヤカッタのワイヤ挟持部の斜視図。
【図7】本実施形態に係るワイヤカッタの一対のワイヤ押えコマの斜視図。
【図8】図1のVIII−VIII線矢視断面図。
【図9】図8のIX−IX線矢視断面図。
【図10】本実施形態に係るワイヤカッタの前後方向の切断刃の移動機構の要部斜視図。
【図11】本実施形態に係るワイヤカッタの上下方向の切断刃の移動機構の要部斜視図。
【符号の説明】
【0070】
1:ワイヤカッタ、2:操作用ハンドル、3:切断部、7:ワイヤ案内路、9:ワイヤ、30:切断部本体、40:ワイヤ挟持部、41:ワイヤ押えコマ、60a,60b:切断刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤの切断操作を行なう操作部と、該操作部に取着され、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断部と、を備え、前記ワイヤ案内路に案内された前記ワイヤを切断するワイヤカッタであって、
前記切断部は、前記ワイヤ案内路の両側で前記ワイヤを緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部と、該一対のワイヤ挟持部間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動する複数の切断刃と、を備えることを特徴とするワイヤカッタ。
【請求項2】
前記切断部は、前記ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動をすることが可能な一対の切断部本体をさらに備え、各切断部本体に前記ワイヤ挟持部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤカッタ。
【請求項3】
前記ワイヤ挟持部は、前記切断部本体に取着され、かつ前記ワイヤ案内路を挟んで対向配置された一対のワイヤ押さえコマと、前記切断部本体の前記離間移動に連動して、前記一対のワイヤ押えコマを前記ワイヤ案内路に向かって近接移動させる近接移動機構と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のワイヤカッタ。
【請求項4】
前記ワイヤ挟持部は、該一対のワイヤ押えコマが離間する方向に、前記一対のワイヤ押えコマを付勢する押えコマ付勢手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のワイヤカッタ。
【請求項5】
前記ワイヤ挟持部は、前記近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限する荷重制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤカッタ。
【請求項6】
前記切断部は、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、前記複数の切断刃を、前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させる切断刃移動機構を備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項7】
前記複数の切断刃は、少なくとも3以上の切断刃からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項8】
前記切断部は、前記一点に向かって移動した切断刃を、相互に離間する方向に付勢する切断刃付勢手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項9】
前記操作部は、中央にヒンジ部を有した一対の操作用ハンドルであって、前記ヒンジ部を挟んで前記操作用ハンドルの一方側には操作用取手部が形成され、他方側には前記切断部が連結されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項1】
ワイヤの切断操作を行なう操作部と、該操作部に取着され、ワイヤを案内するワイヤ案内路が形成された切断部と、を備え、前記ワイヤ案内路に案内された前記ワイヤを切断するワイヤカッタであって、
前記切断部は、前記ワイヤ案内路の両側で前記ワイヤを緊張状態で挟持する一対のワイヤ挟持部と、該一対のワイヤ挟持部間で、異なる方向から前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動する複数の切断刃と、を備えることを特徴とするワイヤカッタ。
【請求項2】
前記切断部は、前記ワイヤ案内路に沿って相互に離間移動をすることが可能な一対の切断部本体をさらに備え、各切断部本体に前記ワイヤ挟持部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤカッタ。
【請求項3】
前記ワイヤ挟持部は、前記切断部本体に取着され、かつ前記ワイヤ案内路を挟んで対向配置された一対のワイヤ押さえコマと、前記切断部本体の前記離間移動に連動して、前記一対のワイヤ押えコマを前記ワイヤ案内路に向かって近接移動させる近接移動機構と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のワイヤカッタ。
【請求項4】
前記ワイヤ挟持部は、該一対のワイヤ押えコマが離間する方向に、前記一対のワイヤ押えコマを付勢する押えコマ付勢手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のワイヤカッタ。
【請求項5】
前記ワイヤ挟持部は、前記近接移動したワイヤ押えコマ同士に作用する荷重を制限する荷重制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤカッタ。
【請求項6】
前記切断部は、前記一対の切断部本体の離間移動に連動して、前記複数の切断刃を、前記ワイヤ案内路の一点に向かって移動させる切断刃移動機構を備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項7】
前記複数の切断刃は、少なくとも3以上の切断刃からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項8】
前記切断部は、前記一点に向かって移動した切断刃を、相互に離間する方向に付勢する切断刃付勢手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【請求項9】
前記操作部は、中央にヒンジ部を有した一対の操作用ハンドルであって、前記ヒンジ部を挟んで前記操作用ハンドルの一方側には操作用取手部が形成され、他方側には前記切断部が連結されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のワイヤカッタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−254568(P2009−254568A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106971(P2008−106971)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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