説明

ワイヤハーネスの配索構造

【課題】光ケーブルを許容値以上の曲げ半径を確保した湾曲状態で、優れた作業効率をもってワイヤハーネスの分岐部分に組み込むことの出来る、新規な構造のワイヤハーネスの配索構造を提供すること。
【解決手段】光ケーブル20の許容曲げ半径以上の曲率半径をもって本体部分14の外周面16上に開口して該本体部分14の全周に亘って延びる収容案内溝18が形成された光ケーブルガイド部材12を設け、前記光ケーブル20を前記収容案内溝18に収容すると共に該収容案内溝18に沿って湾曲させる一方、前記光ケーブルガイド部材12の少なくとも前記本体部分14を、ワイヤハーネスの分岐部分10における複数の電線24の中に埋設して配索した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの配索構造に係り、特に、ワイヤハーネスの分岐部分に光ケーブルを配索するワイヤハーネスの配索構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等において、車両の各所に配設された複数の車載電装品に電力や電気信号を伝送するために、複数の電線を束ねて構成されたワイヤハーネスが用いられている。特に近年では、例えばカーオーディオにおいて、車室前方のコンポから後部座席のモニタにDVDの映像を伝送する場合等のように、大容量且つ高速のデータ通信を実現するために、光ファイバを用いた光ケーブルが採用されてワイヤハーネスに組み込まれることがある。
【0003】
ところで、ワイヤハーネスは、車体パネル等の形状に応じて様々な経路で配索されるものであり、分岐部分を有することが多い。そして、光ケーブルも分岐部分において、例えば90°や180°等に曲げられて配索されることがあるが、良く知られているように、光ケーブルには曲げ半径の許容値が設定されている。それ故、許容値よりも小さな曲げ半径で過度に曲げられると、光ケーブルの伝送効率が低下したり、光ケーブルを損傷するおそれがある。
【0004】
そこで、曲げ半径を許容値以上に確保しつつ、光ケーブルを湾曲状態で配索するために、例えば特開2001−215339号公報(特許文献1)には、ワイヤハーネスにテープ巻等で取り付けられる板部と、板部から突出して、光ケーブルを沿わせることによって許容値以上の曲げ半径で湾曲させるガイド突起とを備えた取付具を用いたワイヤハーネスの配索構造が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の配索構造では、取付具のガイド突起がワイヤハーネスの外側に突出されると共に、光ケーブルがワイヤハーネスの外周面上に配索される。それ故、ガイド突起が他部材と干渉するおそれや、ワイヤハーネスの外周面上に配索された光ケーブルが他部材との接触により損傷したり、ガイド突起から離脱するおそれがあった。加えて、ワイヤハーネスのテープ巻きの後に更に取付具と光ケーブルをテープ巻きで取り付けることから、作業工数が増加するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−215339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、光ケーブルを許容値以上の曲げ半径を確保した湾曲状態で、優れた作業効率をもってワイヤハーネスの分岐部分に組み込むことの出来る、新規な構造のワイヤハーネスの配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、複数の電線を含んで構成されたワイヤハーネスの分岐部分に光ケーブルを配索したワイヤハーネスの配索構造において、ブロック状の本体部分の外周面上に開口して、前記光ケーブルの許容曲げ半径以上の曲率半径をもって前記本体部分の全周に亘って延びる収容案内溝が形成された光ケーブルガイド部材を設け、前記光ケーブルを前記光ケーブルガイド部材の前記収容案内溝に収容すると共に該収容案内溝に沿って湾曲させる一方、前記光ケーブルガイド部材の少なくとも前記本体部分を、前記ワイヤハーネスの分岐部分における前記複数の電線の中に埋設したことを、特徴とする。
【0009】
本発明によれば、光ケーブルガイド部材の収容案内溝に光ケーブルを収容して、収容案内溝に沿って光ケーブルを湾曲させることによって、光ケーブルの過度の湾曲を阻止することが出来る。そして、光ケーブルを収容案内溝に沿わせた状態で、光ケーブルガイド部材の本体部分をワイヤハーネスの分岐部分における複数の電線の中に埋設することによって、許容曲げ半径を確保した湾曲状態で光ケーブルをワイヤハーネスの分岐部分に配索することが出来る。
【0010】
特に、光ケーブルガイド部材の少なくとも本体部分が、ワイヤハーネスを構成する複数の電線の中に埋設される。これにより、本体部分と該本体部分の収容案内溝に収容される光ケーブルとをワイヤハーネスから突出することなく配設することが出来て、本体部分の他部材との干渉や、他部材との干渉による光ケーブルの損傷や光ケーブルガイド部材からの離脱のおそれを低減することが出来る。更に、ワイヤハーネスの分岐部分を形成するに際して、光ケーブルガイド部材および光ケーブルと共に複数の電線をテープ巻きして結束することによって、分岐部分の形成工程で光ケーブルのワイヤハーネスへの組み込みを同時に作業効率良く行なうことが出来る。
【0011】
また、光ケーブルガイド部材の本体部分は、複数の電線の中に埋設されて、本体部分を囲む複数の電線で支持される。これにより、光ケーブルガイド部材に特別なワイヤハーネスへの取付部を設けることも不要であり、部品点数の削減を図ることが出来る。更に、ワイヤハーネスへの取付部が不要であることから、ワイヤハーネスの分岐形状に応じて複数形状の取付部を用意することも不要とされており、光ケーブルガイド部材の汎用性を向上することも出来る。
【0012】
更にまた、光ケーブルガイド部材の収容案内溝が、光ケーブルガイド部材の本体部分の全周に亘って延びている。従って、収容案内溝の方向性を意識することなく、収容案内溝の周上の任意の部分を用いて、光ケーブルを任意の方向に湾曲させることが出来る。これにより、光ケーブルガイド部材を、光ケーブルの各種の湾曲態様に対応して、優れた汎用性をもって用いることが出来る。なお、収容案内溝は、光ケーブルガイド部材の本体部分の外周面上を少なくとも一周しておれば良く、本体部分の外周面上を一周する円環形状のみならず、本体部分の外周面上を複数回に亘って周回する螺旋形状等とされていてもよい。また、本体部分に形成される収容案内溝は1つに限定されることはなく、複数形成されていてもよい。更に、収容案内溝に収容される光ケーブルは、必ずしも1本に限定されることはなく、1つの収容案内溝に複数本の光ケーブルを収容してもよい。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分が円柱形状とされているものである。本態様によれば、本体部分が角部を有さないことから、複数の電線への埋設状態で、それらの電線を傷つけるおそれを低減することが出来る。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記光ケーブルガイド部材における前記収容案内溝の前記本体部分の外周面上での開口幅寸法が、前記光ケーブルの径寸法よりも小さくされているものである。
【0015】
本態様によれば、光ケーブルを収容案内溝の開口部分で係止して、収容案内溝から抜け難くすることが出来る。これにより、複数の電線への埋設状態で、光ケーブルの光ケーブルガイド部材からの離脱を阻止して、許容値以上の曲げ半径をより安定的に維持することが出来る。また、複数の電線を光ケーブルガイド部材の周囲に配索して分岐部分を形成するに際して、光ケーブルガイド部材に光ケーブルを保持させた状態で電線を配索することが出来て、作業性の向上を図ることが出来る。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記光ケーブルガイド部材における前記収容案内溝が、前記本体部分の全周に亘って連続して延びる円環形状とされているものである。本態様によれば、収容案内溝を本体部分の外周面上でスペース効率良く形成することが出来て、光ケーブルガイド部材における本体部分のコンパクト化を図ることが出来る。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分に、複数の前記収容案内溝が並列して形成されているものである。
【0018】
本態様によれば、本体部分に複数の収容案内溝が形成されていることから、より多数の光ケーブルを1つの光ケーブルガイド部材で湾曲状態に配索することが出来る。そして、収容案内溝が円環形状とされていることから、複数の収容案内溝をケーブルガイド部材の本体部分にスペース効率良く形成することが出来て、複数の光ケーブルを、平行に重なるようにしてワイヤハーネスの分岐部分にスペース効率良く配索することが出来る。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記第一〜第五の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分に、非円形の部品固定用治具穴が貫設されているものである。
【0020】
本態様によれば、複数の電線を束ねてワイヤハーネスの分岐部分を形成するに際して、電線のガイドに用いる治具に突設されたピンに、部品固定用治具穴を挿通することによって、光ケーブルガイド部材を治具上で位置決めすることが出来る。また、部品固定用治具穴が非円形とされていることから、治具上のピンへの挿通状態で光ケーブルガイド部材の回転を抑えることが出来る。これにより、複数の電線を束ねてワイヤハーネスの分岐部分を形成するに際して、光ケーブルガイド部材および光ケーブルを治具上でより安定的に位置決めすることが出来て、更なる作業性の向上を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワイヤハーネスの分岐部分に光ケーブルガイド部材を設けると共に、該光ケーブルガイド部材の本体部分に、光ケーブルの許容曲げ半径以上の曲率半径をもって全周に亘って延びる収容案内溝を形成する一方、該収容案内溝に光ケーブルを収容して該収容案内溝に沿って湾曲させると共に、該光ケーブルガイド部材の少なくとも本体部分を、ワイヤハーネスの分岐部分における複数の電線の中に埋設して配索した。これにより、光ケーブルを許容値以上の曲げ半径を確保しつつ、ワイヤハーネスの分岐部分に湾曲状態で配索することが出来る。更に、光ケーブルガイド部材の本体部分と光ケーブルをワイヤハーネスの複数の電線に埋設することによって、これら本体部分および光ケーブルと他部材との干渉を抑えて、光ケーブルの損傷のおそれを軽減することが出来る。それと共に、複数の電線を束ねて分岐部分を形成するに際して、本体部分と光ケーブルを複数の電線の中に埋め込んでこれら電線と共にテープ巻きすることによって、光ケーブルを分岐部分の形成工程と同時に作業効率良くワイヤハーネスに組み込むことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のワイヤハーネスの配索構造を備えた分岐部分の説明図。
【図2】図1に示した分岐部分に設けられる光ケーブルガイド部材の斜視図。
【図3】図2に示した光ケーブルガイド部材の平面図。
【図4】図3におけるIV−IV断面図。
【図5】図1に示した分岐部分の形成方法を説明するための説明図。
【図6】本発明のワイヤハーネスの配索構造を備えた異なる態様の分岐部分の説明図。
【図7】図2と異なる態様の光ケーブルガイド部材の斜視図。
【図8】図2および図7と異なる態様の光ケーブルガイド部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1に、本発明のワイヤハーネスの配索構造を備えたワイヤハーネスの分岐部分(以下、適宜に分岐部分と称する)10を示す。なお、分岐部分10は、後述するテープ26で全体が巻回されているが、図1においては、要部のテープ26を省略して図示している。また、図1においては、後述する光ケーブルガイド部材12の収容案内溝18内を透視して図示している。
【0025】
分岐部分10には、光ケーブルガイド部材(以下、適宜にガイド部材と称する)12が埋設されている。図2〜図4に、ガイド部材12を示す。ガイド部材12は、円柱形状の本体部分14を有する一体成型品とされている。ガイド部材12の材質は特に限定されるものではなく、金属やゴム弾性体等も採用可能であるが、好適には、合成樹脂材料が採用される。
【0026】
本体部分14は、円形の断面形状をもって軸方向(図4中、上下方向)に延びる円柱状のブロック形状とされている。本体部分14には、本体部分14の外周面16上に開口して本体部分14の周方向に延びる複数(本実施形態においては、4つ)の収容案内溝18a〜18dが形成されている。これら収容案内溝18a〜18dは互いに略同様の形状とされていることから、特に区別する必要の無い場合には、収容案内溝18として説明する。
【0027】
収容案内溝18は、略円形の断面形状をもって本体部分14を一周する円環形状とされており、本体部分14の全周に亘って、連続して形成されている。収容案内溝18の内径の曲率半径:Rは、収容する光ケーブル20a〜20d(図1参照)の許容曲げ半径以上に設定されている。本実施形態においては、光ケーブル20a〜20dの径寸法が略3mm、許容曲げ半径が7.5mmに設定されているのに対応して、収容案内溝18の内径の曲率半径:Rが7.5mm以上に設定されている。
【0028】
また、図4に示すように、収容案内溝18の断面形状は、光ケーブル20a〜20dの径寸法よりもやや大きな径寸法を有する略円形状が外周面16で切り欠かれることによって、半周よりも僅かに多く回り込む部分円形状とされている。これにより、収容案内溝18は、光ケーブル20a〜20dの1本を収容可能な大きさを有していると共に、収容案内溝18の外周面16上での開口幅寸法:wは、光ケーブル20a〜20dの径寸法よりもやや小さくされている。そして、4つの収容案内溝18a〜18dが、本体部分14の軸方向(図4中、上下方向)に並んで形成されている。
【0029】
さらに、本体部分14の中心部分には、部品固定用治具穴22が貫設されている。部品固定用治具穴22は、非円形の断面形状をもって本体部分14の中心軸上に貫設されている。部品固定用治具穴22の断面形状は非円形であれば特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の矩形状や、六角形や八角形等の多角形状、楕円やその他任意の非円形状が採用可能であり、本実施形態においては、角部が丸められた角丸の正方形とされている。
【0030】
このような光ケーブルガイド部材12は、図1に示したように、各収容案内溝18a〜18dに光ケーブル20a〜20dをそれぞれ収容して湾曲させた状態で、ワイヤハーネスの分岐部分10に設けられる。図1に例示する分岐部分10は十字形状の分岐部分とされている。光ケーブル20a〜20dは、各収容案内溝18a〜18dに部分的に収容されて、収容案内溝18a〜18dに沿って湾曲される。これにより、各光ケーブル20a〜20dが、収容案内溝18a〜18dで案内されて、曲げ半径を許容値以上に確保しつつ、略90°に湾曲されて配索されている。そして、ガイド部材12の周囲に、分岐部分10を構成する複数の電線24が配索されて、それら複数の電線24で囲まれてガイド部材12が支持されると共に、電線24とガイド部材12、および光ケーブル20a〜20dの全体がテープ26でテープ巻きされることにより、分岐部分10が形成されている。これにより、ガイド部材12と光ケーブル20a〜20dが、複数の電線24への埋設状態で分岐部分10に組み込まれている。なお、ガイド部材12は、本体部分14の全体が複数の電線24の束内に埋設されて、分岐部分10の外面の全体を覆うテープ26から突出することなく分岐部分10に配設されている。また、光ケーブル20a〜20dが、複数の電線24の束内に配索される。
【0031】
なお、分岐部分10は、例えば図5に示すようにして好適に形成される。先ず、治具28を用意する。治具28には、4つのガイドピン30が四角形の4頂点に位置して突設されている。治具28において、4つのガイドピン30の中央部分には、位置決めピン32が突設されている。位置決めピン32は、光ケーブルガイド部材12の部品固定用治具穴22の断面形状より僅かに小さな略相似の断面形状とされている。
【0032】
そして、光ケーブルガイド部材12を用意して、部品固定用治具穴22に位置決めピン32を挿通することにより、ガイド部材12を治具28に組み付ける。続いて、光ケーブル20a〜20dを用意して、ガイド部材12の収容案内溝18a〜18dにそれぞれ収容すると共に、収容案内溝18a〜18dに沿わせて所望の配索形状に湾曲させる。
【0033】
次に、複数の電線24を用意して、必要に応じて治具28のガイドピン30で案内して湾曲させる等しつつ、治具28上で所望の配索形状に配索する。電線24を治具28上で配索するに際して、ガイド部材12の近辺に配索される電線24を、ガイド部材12の外周面16や上下面に沿わせるなどして、複数の電線24でガイド部材12を囲むように配索する。そして、複数の電線24とガイド部材12および光ケーブル20a〜20dにテープ26を巻き付けると共に治具28から取り外すことにより、分岐部分10を形成することが出来る。
【0034】
このようなワイヤハーネスの配索構造によれば、光ケーブルガイド部材12を設けたことによって、光ケーブル20a〜20dを、ガイド部材12の収容案内溝18a〜18dに沿わせて、許容値以上の曲げ半径を確保した曲げ状態で、分岐部分10に配索することが出来る。そして、ガイド部材12の全体と光ケーブル20a〜20dが、分岐部分10における複数の電線24の束内に埋設されて、分岐部分10を覆うテープ26内に配設される。これにより、ガイド部材12や光ケーブル20a〜20dの他部材との干渉が軽減されて、光ケーブル20a〜20dの損傷やガイド部材12からの離脱のおそれが軽減されている。特に本実施形態においては、ガイド部材12における本体部分14の全体が円柱形状とされていることから、周囲の電線24を傷つけるおそれも軽減されている。更に、ガイド部材12は、周囲を囲む複数の電線24で支持される。従って、ガイド部材12に特別なワイヤハーネスへの取り付け部を形成したり、そのような取り付け部を分岐部分の具体的な分岐形状に対応して複数種類用意することも不要とされており、ガイド部材12を、各種の分岐形状の分岐部分に対して、優れた汎用性をもって用いることが出来る。
【0035】
また、分岐部分10を形成する際に、ガイド部材12と光ケーブル20a〜20dの周囲に複数の電線24を配索して、ガイド部材12および光ケーブル20a〜20dと共にテープ巻きすることによって、分岐部分10の形成とガイド部材12および光ケーブル20a〜20dの組み込みを同時に行うことが出来、優れた作業効率を得ることが出来る。更に、ガイド部材12に非円形の部品固定用治具穴22が形成されていることにより、部品固定用治具穴22に治具28の位置決めピン32を挿通することによって、ガイド部材12を治具28上で回転不能に位置決めすることが出来る。これにより、電線24を配索するに際して、ガイド部材12および光ケーブル20を治具28上でより安定的に位置決めすることが出来て、より優れた作業効率を得ることが出来る。但し、部品固定用治具穴22は、必ずしも必要ではない。
【0036】
また、光ケーブルガイド部材12の収容案内溝18は、本体部分14の全周に亘って形成されている。これにより、収容案内溝18において、本体部分14の周上の何れの位置も任意に利用することが出来て、光ケーブル20の湾曲角度を自由に設定することが出来る。特に、収容案内溝18が円環形状とされていることから、収容案内溝18を本体部分14の軸方向(図4中、上下方向)でコンパクトに形成することが出来る。そして、複数の収容案内溝18a〜18bを並列してスペース効率良く形成すると共に、1つのガイド部材12で複数の光ケーブル20a〜20dを案内することが可能とされている。更に、収容案内溝18の外周面16の開口寸法が、光ケーブル20の径寸法よりも小さくされており、光ケーブル20が収容案内溝18から抜け出し困難とされている。これにより、光ケーブル20のガイド部材12からの離脱を阻止できると共に、電線24を配索して分岐部分10を形成するに際して、ガイド部材12で光ケーブル20を保持させておくことが可能であり、より優れた作業効率を得ることが出来る。
【0037】
なお、このようなワイヤハーネスの配索構造は、各形状の分岐部分に適用することが可能である。例えば、図6に、本発明のワイヤハーネスの配索構造を備えた、異なる態様のワイヤハーネスの分岐部分40を、図1と略同様にして示す。なお、以下の説明において、前記分岐部分10と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記分岐部分10と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0038】
本態様における分岐部分40はT字形状の分岐部分とされており、光ケーブルガイド部材12と1本の光ケーブル20が、複数の電線24の束の中に埋設されている。本態様においては、光ケーブル20が収容案内溝18aに収容されて、U字状に略180°湾曲して配索されている。なお、分岐部分40は、図6に仮想線で併せ示すように、3つのガイドピン30が三角形の各頂点に位置して突設されていると共に、それら3つのガイドピンの中央に位置決めピン32が突設された治具42を用い、前記分岐部分10と同様にして形成することが出来る。前記分岐部分10と本態様における分岐部分40から明らかなように、本発明に従うワイヤハーネスの配索構造によれば、光ケーブルガイド部材12の収容案内溝18aがガイド部材12の全周に亘って形成されていることから、光ケーブル20の湾曲角度を自由に設定することが可能であり、同一の光ケーブルガイド部材12を各形状の分岐部分に汎用的に用いることが出来る。従って、これら分岐部分10および分岐部分40はあくまでも例示であり、本発明に従うワイヤハーネスの配索構造は、Y字状の分岐部分等に適用することも勿論可能である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、光ケーブルガイド部材の具体的形状は前記実施形態の如き形状に限定されるものではない。図7に示す異なる態様の光ケーブルガイド部材44のように、収容案内溝46を、本体部分14の外周面16上を複数回に亘って周回する螺旋形状とする等しても良い。また、図8に示す更に異なる態様の光ケーブルガイド部材48のように、本体部分50を、角柱形状とする等しても良い。
【0040】
さらに、収容案内溝の断面形状は円に限定されず、例えば矩形状などでも良い。また、1つの収容案内溝を、複数本の光ケーブルを収容可能な大きさをもって形成する等しても良い。加えて、収容案内溝は、本体部分に少なくとも1つ形成されていれば良く、例えば、本体部分に収容案内溝が1つのみ形成されていても良い。
【0041】
また、必要に応じて、光ケーブルガイド部材に、本体部分から把持用の突起を突出して形成するなどしても良い。そのような場合には、光ケーブルガイド部材は、少なくとも本体部分が電線の束内に埋設されていれば良く、本体部分のみを電線の束内に埋設して、把持用の突起を電線の束内から突出させる等しても良い。
【0042】
更にまた、分岐部分に設けられる光ケーブルガイド部材は、必ずしも1つに限定されるものではなく、必要に応じて、1つの分岐部分に複数の光ケーブルガイド部材を設けるなどしても良い。
【符号の説明】
【0043】
10,40:ワイヤハーネスの分岐部分、12,44,48:光ケーブルガイド部材、14,50:本体部分、16:外周面、18a〜d,46:収容案内溝、20a〜d:光ケーブル、22:部品固定用治具穴、24:電線、28,42:治具、30:ガイドピン、32:位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を含んで構成されたワイヤハーネスの分岐部分に光ケーブルを配索したワイヤハーネスの配索構造において、
ブロック状の本体部分の外周面上に開口して、前記光ケーブルの許容曲げ半径以上の曲率半径をもって前記本体部分の全周に亘って延びる収容案内溝が形成された光ケーブルガイド部材を設け、
前記光ケーブルを前記光ケーブルガイド部材の前記収容案内溝に収容すると共に該収容案内溝に沿って湾曲させる一方、
前記光ケーブルガイド部材の少なくとも前記本体部分を、前記ワイヤハーネスの分岐部分における前記複数の電線の中に埋設した
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【請求項2】
前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分が円柱形状とされている
請求項1に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項3】
前記光ケーブルガイド部材における前記収容案内溝の前記本体部分の外周面上での開口幅寸法が、前記光ケーブルの径寸法よりも小さくされている
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項4】
前記光ケーブルガイド部材における前記収容案内溝が、前記本体部分の全周に亘って連続して延びる円環形状とされている
請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項5】
前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分に、複数の前記収容案内溝が並列して形成されている
請求項4に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項6】
前記光ケーブルガイド部材における前記本体部分に、非円形の部品固定用治具穴が貫設されている
請求項1〜5の何れか1つに記載のワイヤハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242667(P2012−242667A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113724(P2011−113724)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】