説明

ワイヤハーネス

【課題】設置等に係る位置ズレや寸法公差を十分に吸収することが可能なワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス21は、ハーネス本体22と、このハーネス本体22の一端に設けられるモータ側コネクタ23と、ハーネス本体22の他端に設けられるインバータ側コネクタ24とを備えて構成されている。ハーネス本体22は、高圧導電路25と、この高圧導電路25を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。高圧導電路25は、導体本体27と、接続部28、29と、モールド部30とを有して構成されている。導体本体27には、公差吸収部31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体本体及び接続部を含む導電路を備えてなるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車は、動力源となるモーターと、このモーターの駆動に必要な3相交流を発生させるインバータと、これらモーター及びインバータを接続するワイヤハーネスとを備えている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、複数本の高圧電線からなるハーネス本体と、このハーネス本体の一端に設けられてモーターの接続部分に取り付けられるモーター側取付部と、ハーネス本体の他端に設けられてインバータの接続部分に取り付けられるインバータ側取付部とを備えて構成されている。
【0004】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、モーターとインバータとを離して設置していることから、ハーネス本体が比較的長く形成されている。尚、モーター及びインバータの設置が近接するような場合は、当然にハーネス本体の長さが短くなってくる。ハーネス本体の長さが短くなればなるほど、太物の高圧電線を複数本含むワイヤハーネスはこの剛性が高くなってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モーター及びインバータのような機器同士が近接して設置され、また、これらモーター及びインバータを電気的に接続するワイヤハーネスの剛性が非常に高くなった場合には、設置位置等にズレが生じたり寸法公差が大きかったりすると、ワイヤハーネスによる電気的な接続が困難になってしまうという虞を有している。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、設置等に係る位置ズレや寸法公差を十分に吸収することが可能なワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、導体本体と、該導体本体の一端及び他端に設けられる接続部とを含む導電路を備えてなるワイヤハーネスにおいて、前記導体本体に公差吸収部を設け、該公差吸収部を、前記一端及び他端のいずれか一方の前記接続部を固定した状態でいずれか他方の前記接続部の位置をXYZ方向に変位可能に形成するとともに、変位させた後の前記導電路の状態を保持可能に形成することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記公差吸収部を山形状、波形状、及び捻り形状のいずれかの形状にて形成する、及び/又は、前記公差吸収部を前記導体本体の潰しにより形成することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記公差吸収部の導体幅方向中間に、該導体幅方向に対し略直交する方向に延びるスリットを形成することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1ないし請求項3いずれかに記載のワイヤハーネスにおいて、前記公差吸収部を含む前記導体本体の外側に絶縁性及び柔軟性を有するモールド部を設けることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1ないし請求項4いずれかに記載のワイヤハーネスにおいて、前記公差吸収部を略同じ位置に配置するように前記導電路を複数並べてなるとともに、該複数の導電路の端末に前記接続部を含む取付部を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された本発明によれば、導電路における導体本体に公差吸収部を設けることにより、導電路の例えば一端側の接続部を固定した状態で、他端側の接続部の位置をXYZ方向に変位させることができる。また、変位させた後の導電路の状態を公差吸収部にて保持することができる。従って、本発明によれば、設置等に係る位置ズレや寸法公差を十分に吸収することができるとともに、位置ズレや寸法公差の吸収状態を維持することができるという効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載された本発明によれば、公差吸収部の形状に係るより良い形態を提供することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載された本発明によれば、公差吸収部にスリットを形成することにより、変位させ易くすることができるという効果を奏する。これにより、作業性の向上を図ることができるという効果も奏する。
【0016】
請求項4に記載された本発明によれば、公差吸収部を含む導体本体の外側にモールド部を設けることにより、導体本体の形状にかかわらず簡易に保護・防水等をすることができるという効果を奏する。本発明によれば、導体本体を加工して公差吸収部を設けた後、又は公差吸収部にスリット等を形成した後にモールド部を設けるようになることから、製造性のよい導電路にすることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項5に記載された本発明によれば、導電路を複数備えるとともにこの複数の導電路を並べてなるワイヤハーネスであり、一般的には剛性を有して曲げ難くなるところを、本発明では公差吸収部を設けてなる導電路を備えることから、例えばワイヤハーネスの一端側の取付部を固定した状態で、他端側の取付部の位置をXYZ方向に変位させることができる。また、本発明によれば、公差吸収部を略同じ位置に配置することから、複数の導電路を並べていても変位させ易くすることができる。さらに、本発明によれば、公差吸収部の機能により、変位させた後のワイヤハーネスの状態を保持することができる。従って、本発明によれば、導電路を複数備えたワイヤハーネスであっても設置等に係る位置ズレや寸法公差を十分に吸収することができるとともに、位置ズレや寸法公差の吸収状態を維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。
【図2】ワイヤハーネスの斜視図である(実施例1)。
【図3】ワイヤハーネスの底面図である。
【図4】図3のワイヤハーネスを矢印A方向から見た図である。
【図5】図3のワイヤハーネスを矢印B方向から見た図である。
【図6】図3のワイヤハーネスを矢印C方向から見た図である。
【図7】図3のワイヤハーネスのD−D線断面図である。
【図8】高圧導電路を構成する導体本体の底面図である。
【図9】図8の導体本体を矢印E方向から見た図である。
【図10】他の例となるワイヤハーネスの底面図である(実施例2)。
【図11】図10のワイヤハーネスを矢印F方向から見た図である。
【図12】高圧導電路の斜視図である。
【図13】図12の変形例となる高圧導電路の斜視図である。
【図14】図12の変形例となる高圧導電路の図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図15】更に他の例となるワイヤハーネスの底面図である(実施例3)である。
【図16】他の例となる導体本体の斜視図である。
【図17】更に他の例となる導体本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ワイヤハーネスは、設置等に係る位置ズレや寸法公差を十分に吸収することが可能な公差吸収部を導電路に設けてなる。
【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。また、図2はワイヤハーネスの斜視図、図3はワイヤハーネスの底面図、図4は図3のワイヤハーネスを矢印A方向から見た図、図5は図3のワイヤハーネスを矢印B方向から見た図、図6は図3のワイヤハーネスを矢印C方向から見た図、図7は図3のワイヤハーネスのD−D線断面図、図8は高圧導電路を構成する導体本体の底面図、図9は図8の導体本体を矢印E方向から見た図である。
【0021】
本実施例のワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車又は電気自動車に配索するものを対象にしている。以下では、ハイブリッド自動車での例を挙げて説明するものとする(電気自動車の場合でも本発明のワイヤハーネスの構成、構造、及び効果は基本的に同じであるものとする。尚、ハイブリッド自動車又は電気自動車に限らず、通常の自動車等でも本発明を適用することができるものとする)。
【0022】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介して図示しないバッテリー(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム5に設置(搭載)されている。また、図示しないバッテリーは、エンジンルーム5の後方に存在する自動車室内、又は後輪等がある自動車後部に設置(搭載)されている。
【0023】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧となる本発明のワイヤハーネス21により接続されている。また、図示しないバッテリーとインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス6により接続されている。ワイヤハーネス6は、エンジンルーム5から例えばフロアパネルの地面側となる床下にわたって配索されている。
【0024】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケース7を含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケース8を含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。図示しないバッテリーは、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。図示しないバッテリーは、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0025】
インバータユニット4は、本実施例においてモータユニット3の直上に配置固定されている。すなわち、インバータユニット4とモータユニット3は近接するように設置されている。このような設置状態であることから、ワイヤハーネス21は短いものとなっている。インバータユニット4とモータユニット3とに関し、引用符号9はモータユニット3の直上に配置固定するための固定脚部を示している。
【0026】
先ず、本実施例のワイヤハーネス21に係る構成及び構造について具体的に説明をする。
【0027】
図2ないし図7において、ワイヤハーネス21は、ハーネス本体22と、このハーネス本体22の一端に設けられるモータ側コネクタ23(取付部)と、ハーネス本体22の他端に設けられるインバータ側コネクタ24(取付部)とを備えて構成されている。モータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24は、ハーネス本体22の一部を含んで構成されている。
【0028】
ワイヤハーネス21は、後の説明で分かるようになるが、位置ズレや寸法公差を十分に吸収することができるような構成及び構造を有している(ワイヤハーネス21は、高圧で太物となるものであっても、また、短尺となるものであっても全体的に剛体にならず、所望の変位や形状保持が可能であって、位置ズレや寸法公差を十分に吸収することができるようになっている)。
【0029】
図中の矢印Xは車両上下方向を示している。また、矢印Yは車両左右方向(車両幅方向)を示している。さらに、矢印Zは車両前後方向を示している。本実施例においては、モータ側コネクタ23の中心軸L1及びインバータ側コネクタ24の中心軸L3が同一直線上になく、ハーネス本体22の中間の中心軸L2を含めて全体的に見ると、中心軸は略クランク状となるようになっている(図3参照。この限りでないものとする。例えば中心軸L1〜L3を見た時に同一直線上にあるようにしてもよいものとする)。
【0030】
図7ないし図9において、ハーネス本体22は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧導電路25(導電路)と、この複数本の高圧導電路25を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。
【0031】
高圧導電路25は、導体本体27と、この導体本体27の一端及び他端に連続して設けられる接続部28、29とを有して構成されている。また、高圧導電路25は、導体本体27の外側に設けられるモールド部30を有して構成されている。
【0032】
導体本体27の一端に連続する接続部28は、モータ側コネクタ23の一部を構成する部分として設けられている。また同様に、導体本体27の他端に連続する接続部29もインバータ側コネクタ24の一部を構成する部分として設けられている。
【0033】
導体本体27及び接続部28、29は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。本実施例においては、所定の導体幅及び肉厚を有するバスバー形状(帯板形状)に形成されている(バスバー形状に限らないものとする。バスバー形状以外の例に関しては後述するものとする)。バスバー形状の導体本体27及び接続部28、29は、この全体が剛体になるものでなく、後述の公差吸収部31により所望の変位や形状保持が可能となるように形成されている。導体本体27及び接続部28、29は、金属板をプレス加工してなるバスバー形状であることから、中実なものとなっている。
【0034】
導体本体27は、上記中心軸L1〜L3(図3参照)が略クランク状となることから、これに合わせて形成されている。導体本体27の上記中心軸L2に対応する部分には、公差吸収部31が設けられている。公差吸収部31は、所望の変位や形状保持をすることができるように形成されている。公差吸収部31は、本実施例において山形状(谷形状)となるように形成されている(形状は一例であるものとする。他の形状は実施例2以降で説明するものとする)。より具体的な形状としては、半円形で太鼓橋となる形状に形成されている。公差吸収部31は、導体本体27の剛性低下を図る部分として、言い換えれば曲げや伸ばしをし易くする部分(変位させ易くする部分、可動させ易くする部分)として形成されている。
【0035】
この他、公差吸収部31は、曲げや伸ばしをした後の状態を保持することができるように形成されている。すなわち、曲げや伸ばしをする前の状態に戻らないように形成されている(僅かな戻りは問題ないものとする。作業性や接続信頼性に影響してしまうような戻りでなければよいものとする)。
【0036】
このような公差吸収部31には、スリット32が形成されている。スリット32は、公差吸収部31における導体幅方向中間に形成されている。また、導体幅方向に対して略直交する方向に延びるように形成されている。スリット32は、公差吸収部31において更に剛性低下を図る部分として形成されている。公差吸収部31は、スリット32の形成に伴い断面積の減少が生じないようにするため、導体幅方向外側に若干膨出するような形状に形成されている。
【0037】
公差吸収部31は、本実施例において導体本体27に一つ設けられているが、この限りでないものとする。また、導体本体27のほぼ中央位置に設けられているが、この限りでないものとする。すなわち、所望の変位等に必要な数や箇所に設けてよいものとする。例えば、導体本体27の上記中心軸L2に対応する部分に二つ、或いは上記中心軸L1とL2の公差部分及び中心軸L3とL2の公差部分にそれぞれ設けてもよいものとする。
【0038】
接続部28及び29は、モータユニット3及びインバータユニット4(図1参照)における図示しない接続部の形態に合わせて形成されている。また、モータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24の形態にも合わせて形成されている。本実施例においては、接続部28及びモータユニット3の図示しない接続部同士を重ねてボルト及びナットで締結することができるように、また、接続部29及びインバータユニット4の図示しない接続部同士を重ねてボルト及びナットで締結することができるように形成されている。接続部28、29の各先端位置には、貫通孔33が形成されている。
【0039】
モールド部30は、絶縁性及び柔軟性を有する被覆として設けられている。モールド部30は、公差吸収部31等を設けた状態の導体本体27を保護することができる部分として、また、防水等をすることができる部分として設けられている。モールド部30は、ゴム等のエラストマーを用いてモールド成形することにより形成されている。
【0040】
図2ないし図7において、電磁シールド部材26は、電磁シールド機能を発揮させるための部材であって、例えば編組又は金属箔を筒状にすることにより形成されている。電磁シールド部材26は、本実施例においてモータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24を覆うような長さで形成されている。
【0041】
電磁シールド部材26の固定は、通常、シールドシェルを用いて固定するのが一般的であるが、本実施例においては導電性を有する締め付け固定部材34と、この締め付け固定部材34をモータユニット3のシールドケース7及びインバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に締結することが可能な図示しないボルトとを備えて固定するようになっている。締め付け固定部材34は、環状のプレート形状となる端末押圧部35と、この端末押圧部35に連成される一対の固定部36とを有している。一対の固定部36には、上記図示しないボルトに対するボルト挿通孔(符号省略)が貫通形成されている。
【0042】
電磁シールド部材26は、この端末部分に一対の固定部36に対する逃がし部分を形成し、その上で端末部分を外側にして端末押圧部35を挿入するとともに、挿入後に端末部分を内側へ折り返して端末押圧部35の内縁を通過させると、これにより略袋状の保持部が形成されて締め付け固定部材34を保持することができるようになっている(詳しくは特願2010−132585号参照)。そして、締め付け固定部材34を図示しないボルトで固定すると、端末押圧部35とシールドケース7(8)との間に電磁シールド部材26の端末部分が挟み込まれ、これにより電気的な接続も完了するようになっている。
【0043】
モータ側コネクタ23は、高圧導電路25における接続部28を含んで構成されている。また、モータ側コネクタ23は、接続部28を樹脂モールドして設けられるハウジング37を含んで構成されている。モータ側コネクタ23の先端は、モータユニット3のシールドケース7(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。ハウジング37の先端外縁には、ゴムパッキン38が設けられている。
【0044】
インバータ側コネクタ24は、モータ側コネクタ23と同様に高圧導電路25における接続部29を含んで構成されている。また、インバータ側コネクタ24は、接続部29を樹脂モールドして設けられるハウジング39を含んで構成されている。インバータ側コネクタ24の先端は、インバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。ハウジング39の先端外縁には、ゴムパッキン40が設けられている。
【0045】
次に、上記構成及び構造に基づきながら、ワイヤハーネス21の配索について説明をする。説明は、図1ないし図7のいずれかを参照するものとする。
【0046】
ワイヤハーネス21の配索は、モータ側コネクタ23をモータユニット3に接続固定するとともに、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(一端側の端末部分)をシールドケース7に接続固定する作業を先ず行う。この作業による接続固定が完了すると、ワイヤハーネス21の一端は固定状態になる。
【0047】
ワイヤハーネス21の一端が固定状態になると、次にインバータ側コネクタ24をインバータユニット4に接続固定する作業を行う。また、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(他端側の端末部分)をシールドケース8に接続固定する作業を行う。この時、例えばインバータユニット4に位置ズレが生じていた場合には、或いは寸法公差が比較的大きくとられていた場合には、インバータ側コネクタ24の位置を変位させて位置ズレ或いは寸法公差を吸収し、この上で接続固定を完了させる。
【0048】
ワイヤハーネス21は、公差吸収部31を有することから、この公差吸収部31にて矢印X、Y、Z方向への曲げや伸ばしをして上記変位をさせることができ、これにより位置ズレ或いは寸法公差を吸収することができる。尚、公差吸収部31はスリット32を有することから、このスリット32により剛性を低下させて変位させ易くすることができる。また、矢印X、Y、Z方向への曲げや伸ばしによるワイヤハーネス21の変位状態は、公差吸収部31により保持されることから、接続固定部分への不必要な応力等を掛からないようにすることができる。
【実施例2】
【0049】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図10は他の例となるワイヤハーネスの底面図である。また、図11は図10のワイヤハーネスを矢印F方向から見た図、図12は高圧導電路の斜視図、図13及び図14は変形例となる高圧導電路の図である。尚、上記実施例1と同じ構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図10及び図11において、ワイヤハーネス51は、ハーネス本体52と、このハーネス本体52の一端に設けられるモータ側コネクタ23(取付部)と、ハーネス本体22の他端に設けられるインバータ側コネクタ24(取付部)とを備えて構成されている。モータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24は、ハーネス本体52の一部を含んで構成されている。ワイヤハーネス51は、ハーネス本体52を構成する後述の高圧導電路53(導電路)が実施例1と異なるのみで、効果は実施例1と基本的に同じであるものとする。以下、ハーネス本体52について説明をする。
【0051】
ハーネス本体52は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧導電路53(導電路)と、この複数本の高圧導電路53を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。
【0052】
図12において、高圧導電路53は、導体本体54と、この導体本体54の一端及び他端に連続して設けられる接続部28、29とを有して構成されている。また、高圧導電路53は、導体本体54の外側に設けられるモールド部30を有して構成されている。
【0053】
導体本体54及び接続部28、29は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。本実施例においては、所定の導体幅及び肉厚を有するバスバー形状(帯板形状)に形成されている。また、バスバー形状であるとともにこれに捻りを加えた形状に形成されている。バスバー形状の導体本体54及び接続部28、29は、この全体が剛体になるものでなく、後述の公差吸収部55により所望の変位や形状保持が可能となるように形成されている。導体本体54及び接続部28、29は、金属板をプレス加工してなるバスバー形状であることから、中実なものとなっている。
【0054】
導体本体54は、本実施例において略クランク状となるように形成されている。このような導体本体54の中間部分は、公差吸収部55となるよう形成されている。公差吸収部55は、所望の変位や形状保持をすることができるように形成されている。公差吸収部55は、本実施例において上記の如く捻り形状に形成されている(捻りに係る形状は一例であるものとする)。より具体的な形状としては、略180゜回転させるように捻ってなる形状に形成されている。
【0055】
尚、捻りに関しては上記略180゜回転に限らず、例えば図13に示す如くの90゜捻りと反90゜捻りの組み合わせによりなる公差吸収部55′や、図14に示す如くの捻りを加えつつ略波形状に形成してなる公差吸収部55″であってもよいものとする。
【0056】
公差吸収部55(55′、55″)は、導体本体54の剛性低下を図る部分として、言い換えれば曲げや伸ばしをし易くする部分(変位させ易くする部分、可動させ易くする部分)として形成されている。
【0057】
この他、公差吸収部55は、曲げや伸ばしをした後の状態を保持することができるように形成されている。すなわち、曲げや伸ばしをする前の状態に戻らないように形成されている(僅かな戻りは問題ないものとする。作業性や接続信頼性に影響しちしまうような戻りでなければよいものとする)。公差吸収部55には、実施例1のスリット32(図8参照)を適宜設けてもよいものとする。
【0058】
上記構成及び構造において(図1、図10、及び図11参照)、ワイヤハーネス51の配索は、モータ側コネクタ23をモータユニット3に接続固定するとともに、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(一端側の端末部分)をシールドケース7に接続固定する作業を先ず行う。この作業による接続固定が完了すると、ワイヤハーネス51の一端は固定状態になる。
【0059】
ワイヤハーネス51の一端が固定状態になると、次にインバータ側コネクタ24をインバータユニット4に接続固定する作業を行う。また、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(他端側の端末部分)をシールドケース8に接続固定する作業を行う。この時、例えばインバータユニット4に位置ズレが生じていた場合には、或いは寸法公差が比較的大きくとられていた場合には、インバータ側コネクタ24の位置を変位させて位置ズレ或いは寸法公差を吸収し、この上で接続固定を完了させる。
【0060】
ワイヤハーネス51は、公差吸収部55(55′、55″)を有することから、この公差吸収部55にて矢印X、Y、Z方向への曲げや伸ばしをして上記変位をさせることができる。これにより位置ズレ或いは寸法公差を吸収することができる。
【実施例3】
【0061】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。図15は更に他の例となるワイヤハーネスの底面図である。
【0062】
図15において、ワイヤハーネス61は、ハーネス本体62と、このハーネス本体62の一端に設けられるモータ側コネクタ63(取付部)と、ハーネス本体62の他端に設けられるインバータ側コネクタ64(取付部)とを備えて構成されている。モータ側コネクタ63及びインバータ側コネクタ64は、ハーネス本体62の一部を含んで構成されている。以下、上記各構成について説明をする。
【0063】
ハーネス本体62は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧導電路65(導電路)と、この複数本の高圧導電路65を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。ハーネス本体62は、特に限定するものでないが実施例1〜2と同じ電磁シールド部材26を用いるものとする。
【0064】
高圧導電路65は、導体本体66と、この導体本体66の一端及び他端に連続して設けられる接続部67、68とを有して構成されている。また、高圧導電路65は、導体本体66の外側に設けられるモールド部69を有して構成されている。
【0065】
導体本体66は、導電性を有しており、銅や銅合金やアルミニウムにより製造されている。導体本体66は、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造)のもののいずれであってもよいものとする。本実施例においては、アルミニウム製で丸形となる棒状の導体構造のものが用いられている。導体本体66は、この全体が剛体になるものでなく、後述の公差吸収部70により所望の変位や形状保持が可能となるように形成されている。
【0066】
接続部67、68は、実施例1〜2の接続部28及び29と同様の部分であって、本実施例においては導体本体66の各端部に対し、溶接により接合されている(一例であるものとする)。
【0067】
導体本体66は、本実施例において略クランク状となるように形成されている。このような導体本体66の中間部分(又は全体)は、公差吸収部70となるよう形成されている。公差吸収部70は、所望の変位や形状保持をすることができるように形成されている。公差吸収部70は、曲げや伸ばしをし易くする部分(変位させ易くする部分、可動させ易くする部分)として形成されている。
【0068】
この他、公差吸収部70は、曲げや伸ばしをした後の状態を保持することができるように形成されている。すなわち、曲げや伸ばしをする前の状態に戻らないように形成されている(僅かな戻りは問題ないものとする。作業性や接続信頼性に影響してしまうような戻りでなければよいものとする)。
【0069】
モータ側コネクタ63は、実施例1〜2のモータ側コネクタ23と基本的に同じ構成及び機能を有している。モータ側コネクタ63の先端は、モータユニット3のシールドケース7(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。
【0070】
インバータ側コネクタ64は、実施例1〜2のインバータ側コネクタ24と基本的に同じ構成及び機能を有している。インバータ側コネクタ64の先端は、インバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。
【0071】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネス61の配索は、モータ側コネクタ63をモータユニット3(図1参照)に接続固定するとともに、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(一端側の端末部分)をシールドケース7(図1参照)に接続固定する作業を先ず行う。この作業による接続固定が完了すると、ワイヤハーネス61の一端は固定状態になる。
【0072】
ワイヤハーネス61の一端が固定状態になると、次にインバータ側コネクタ64をインバータユニット4(図1参照)に接続固定する作業を行う。また、締め付け固定部材34及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(他端側の端末部分)をシールドケース8(図1参照)に接続固定する作業を行う。この時、例えばインバータユニット4に位置ズレが生じていた場合には、或いは寸法公差が比較的大きくとられていた場合には、インバータ側コネクタ64の位置を変位させて位置ズレ或いは寸法公差を吸収し、この上で接続固定を完了させる。
【0073】
ワイヤハーネス61は、公差吸収部70を有することから、この公差吸収部70にて矢印X、Y、Z方向への曲げや伸ばしをして上記変位をさせることができる。これにより位置ズレ或いは寸法公差を吸収することができる。
【実施例4】
【0074】
以下、図面を参照しながら実施例4を説明する。図16は他の例となる導体本体の斜視図である。
【0075】
図16において、導体本体81は導電性を有しており、本実施例においてはアルミニウム製で丸形となる棒状の導体構造のものが用いられている。導体本体81は、この全体が剛体になるものでなく、二つの公差吸収部82により所望の変位や形状保持が可能となるように形成されている(公差吸収部82の数は一例であるものとする。一つ等であってもよいものとする)。
【0076】
二つの公差吸収部82は、丸形の導体本体81を板状に潰すことにより形成されている。二つの公差吸収部82は、曲げ位置や曲げ方向等を考慮して所定の配置となるように形成されている。二つの公差吸収部82は、延び方向が略同じであるものの曲げ方向が異なるように形成されている。二つの公差吸収部82は、それぞれ丸形の導体本体81の断面積に合わせて(若干小さくなる程度は可)潰され、これにより形成されている。
【0077】
以上のような公差吸収部82を有する導体本体81を採用しても、ワイヤハーネスは実施例1〜3と同様の効果を奏するのは言うまでもない。
【実施例5】
【0078】
以下、図面を参照しながら実施例5を説明する。図17は更に他の例となる導体本体の斜視図である。
【0079】
図17において、導体本体91は導電性を有しており、本実施例においてはアルミニウム製でバスバー形状となるのものが用いられている。導体本体91は、この全体が剛体になるものでなく、波形状の公差吸収部92により所望の変位や形状保持が可能となるように形成されている。尚、波形状の公差吸収部92は、実施例4と同様に、曲げ位置や曲げ方向等を考慮して複数設けてもよいものとする。
【0080】
以上のような公差吸収部92を有する導体本体91を採用しても、ワイヤハーネスは実施例1〜3と同様の効果を奏するのは言うまでもない。
【0081】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…エンジンルーム
6…ワイヤハーネス
7、8…シールドケース
9…固定脚部
21…ワイヤハーネス
22…ハーネス本体
23…モータ側コネクタ(取付部)
24…インバータ側コネクタ(取付部)
25…高圧導電路(導電路)
26…電磁シールド部材
27…導体本体
28、29…接続部
30…モールド部
31…公差吸収部
32…スリット
33…貫通孔
34…締め付け固定部材
35…端末押圧部
36…固定部
37、39…ハウジング
38、40…ゴムパッキン
51…ワイヤハーネス
52…ハーネス本体
53…高圧導電路(導電路)
54…導体本体
55…公差吸収部
61…ワイヤハーネス
62…ハーネス本体
63…モータ側コネクタ(取付部)
64…インバータ側コネクタ(取付部)
65…高圧導電路(導電路)
66…導体本体
67、68…接続部
69…モールド部
70…公差吸収部
81、91…導体本体
82、92…公差吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体本体と、該導体本体の一端及び他端に設けられる接続部とを含む導電路を備えてなるワイヤハーネスにおいて、
前記導体本体に公差吸収部を設け、
該公差吸収部を、前記一端及び他端のいずれか一方の前記接続部を固定した状態でいずれか他方の前記接続部の位置をXYZ方向に変位可能に形成するとともに、変位させた後の前記導電路の状態を保持可能に形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記公差吸収部を山形状、波形状、及び捻り形状のいずれかの形状にて形成する、及び/又は、前記公差吸収部を前記導体本体の潰しにより形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記公差吸収部の導体幅方向中間に、該導体幅方向に対し略直交する方向に延びるスリットを形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれかに記載のワイヤハーネスにおいて、
前記公差吸収部を含む前記導体本体の外側に絶縁性及び柔軟性を有するモールド部を設ける
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれかに記載のワイヤハーネスにおいて、
前記公差吸収部を略同じ位置に配置するように前記導電路を複数並べてなるとともに、該複数の導電路の端末に前記接続部を含む取付部を設けてなる
ことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−48823(P2012−48823A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186804(P2010−186804)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】