説明

ワイヤボンダ装置およびその使用方法

【課題】 半導体チップの電極とリードフレームのインナーリードをワイヤボンディングする際、多数のアイランドを一緒に抑えてリードフレームを固定し、高品質で高生産性のワイヤボンディングを行う。
【解決手段】 ウインドクランパに設けられた押えブロック止を有する押えブロック穴に、前記ウインドクランパの厚み上下方向に移動可能な押えブロック体を有し、前記押えブロック体の上面が押えバネにより前記ウインドクランパの下面方向に押され、前記押えブロック体の押え凸部が前記ウインドクランパの下面より突出し、前記押え凸部がリードフレーム受台と平行にリードフレームを固定するワイヤボンダ装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤボンダ装置に関する、更に詳しくは、新規な方法でリードフレームを固定することのできるウインドクランパを有するワイヤボンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、一般的に使われているワイヤボンダ装置の模式図である。ワイヤボンダ装置は、半導体チップ6が搭載されたリードフレーム1を、垂直に降下する図2に示されるようなウインドクランパ4bとワイヤボンダ装置に固定されているリードフレーム受台19とで挟み込んで固定し、ウインドクランパ4bに空けられた窓内でキャピラリー5を用いてワイヤボンディングする。
【0003】
図5(a)は一部を省略して描いた1枚のリードフレーム1の平面図である。図5(b)は1つのアイランド19とそれに関わる複数のインナーリード8と1つのアイランドリード9の拡大平面図である。リードフレーム1は半導体チップ6を固定するアイランド19がマトリックス状に配置されている。ここでは、アイランド19についてリードフレーム1の長手方向(矢印bの方向)をアイランド列、それと垂直なリードフレーム1の短辺方向をアイランド行とする。即ち、図5(a)のリードフレーム1には各アイランド行に1aから1nまでの14アイランドが含まれている。
【0004】
ここではリードフレーム1の前記アイランド行のアイランド数を1と仮定し、図6の一般的なワイヤボンダ装置を用いたワイヤボンディングについて説明する。図5(b)に示したリードフレーム1のアイランド19の上面に固定されたひとつの半導体チップ6表面の電極と、リードフレーム1のインナーリード8をワイヤで電気的にボンディングする際、全てのインナーリード8とアイランドリード9を固定しないと、ワイヤと半導体チップ上の電極あるいはワイヤとインナーリードとの密着度が低下してワイヤボンディングが正常に行われない。インナーリード8とアイランドリード9の固定は、リードフレーム1の下側にあるリードフレーム受台7と、ウインドクランパ4に設けられた窓枠状の金属製の押え凸部17がインナーリード8とアイランドリード9を押さえることでなされる。高歩留まりで高品質のワイヤボンドを実現するようにインナーリード8とアイランドリード9を押えるには、リードフレーム受台7と押え凸部17の高精度の平行度が、不可欠であることは言うまでも無い。
【0005】
なお、本明細書では、インナーリード8とアイランドリード9を押えることを、アイランドを押さえる、または固定すると称する。またこれを、リードフレームを押さえる、または固定すると称することもある。
【0006】
生産性向上の要求に応えて、前記アイランド行のアイランド19の数を増加させた場合、アイランドを同時に多数押さえようとすると、リードフレーム受台7と押え凸部17の平行度を実現する加工や調整が列の数が多数になればなるほどますます難しくなることは容易に想像できる。
【0007】
図2には、ワイヤボンダ装置に組み込まれた従来型のウインドクランパを示す。図2(a)は、従来型のウインドクランパ4bの上平面図である。図2(b)は、従来型のウインドクランパ4bのA−A’断面図である。先に述べた平行度の要求を満たすように、図2に示したような、スリット入りのウインドクランパ4bを用いたワイヤボンダ装置となっている(例えば、特許文献1参照。)。この従来型のウインドクランパ4bは、スリットにより押え凸部17を有する押え板16がジャイロの様にX、Y、Z、θ方向に移動および回転でき、多数のアイランド19を含むアイランド行をリードフレーム受台7と押え凸部17で精度良く平行に押さえるのを目的としている。
【特許文献1】特開2002−217230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近の電子機器の小型化への要求はとどまること無く高まり、その要求は半導体装置の小型化へも伝播し、リードフレーム1も当然小型化され、高生産性の目的に合わせてアイランド行のアイランド19の数も増加している。図7は代表的な小型半導体装置のパッケージに利用されているリードフレームの特徴を示したものである。従来からパッケージSC−82ABに利用されているリードフレームは、厚さ0.15mm、アイランド19のピッチ10mm、8個取りあった。
【0009】
リードフレームの厚みが薄く、アイランド19のピッチが小さく、多数のアイランド19を有するアイランド行を1行単位で押え凸部が全てのインナーリード8とアイランドリード9を均一押さえるには、多数のアイランド19を押さえる押え凸部が平行度を保つための加工と、その平行度の調節に多大の手数と熟練とを必要として、非効率的であるばかりか、前記平行度に、調節作業を行う作業者の個人差に起因してばらつきが存在し、このばらつきのためにリードフレームの表面に傷を付けたり、そのインナーリード8とアイランドリード9を変形させたりすると言う問題が発生するのであった。
【0010】
前記従来型のウインドクランパ4bを用いた場合、リードフレームに対して接当する押え板16を、その昇降ヘッドに対して、リードフレームの表面と平行な方向に移動しないウインドクランパ4bをリードフレームに押付けるとき、及びリードフレームから離すときにおいて、リードフレームに対して横滑りが発生し易く、この横滑りによって、リードフレーム表面に傷を付ける、そのインナーリード8とアイランドリード9を変形させる、位置ズレを起こすと言う問題が発生するのであった。
【0011】
また、リードフレームを押さえる時に、押え凸部が接触し押さえる時に多数のアイランド19を1行単位で押さえるため一ヶ所に集中荷重がかかり、インナーリード8とアイランドリード9に傷をつけると言う問題が発生することもあった。
【0012】
リードフレーム受台7には、ワイヤボンディングの品質を高めるために、アイランド19を加熱するヒーター14が組み込まれている。それ故、熱膨張によるリードフレームの変形が起こり、平行度を保つことは一層困難である。また、接触箇所を弾力性のある樹脂で構成しても、リードフレーム受台7は、150〜250℃で暖められるので、樹脂の耐久性や熱変形に対する対応が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、前記課題を解決する手段として、次なる手段を用意する。
(1) リードフレームを両側から挟み込んで固定するためのリードフレーム受台およびウインドクランパを備え、前記ウインドクランパは、開口部である押さえブロック穴と、前記ブロック穴の周辺の一部に設けられた押さえブロック止めと、前記押さえブロック穴に挿入されて、前記押さえブロック止めと密着する押さえブロック耳を有する複数個の移動可能な押さえブロック体と、前記ウインドクランパに固着され、前記押さえブロック体を押圧する押さえバネとを有し、前記押さえブロック体の下面である押さえ凸部は前記ウインドクランパの下面より突出し、リードフレームのアイランドリードおよびインナーリードとをリードフレーム受台に押さえ付けることを特徴とするワイヤボンダ装置とした。
(2) 手段(1)において、前記押えブロック体は、複数の半導体チップに対応するアイランドリードおよびインナーリードとを固定することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンダ装置とした。
(3) 手段(1)において、前記ウインドクランパの、前記押さえブロック耳の下面は平坦で、前記押さえブロック体の側面は曲面であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のワイヤボンダ装置とした。
(4) 手段(1)において、前記ウインドクランパは、前記押えブロック体の前記押え凸部の圧力が等しくなる様に設定された前記押えバネを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置とした。
(5) 前記ウインドクランパは、前記押さえ凸部がリードフレーム接触前は、前記押えブロック耳が前記押えブロック止と密着し、前記押え凸部がリードフレーム接触後は、前記押えブロック耳が前記押えブロック止から浮上することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置とした。
(6) 手段(1)において、前記押圧手段は押さえバネであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のワイヤボンダ装置
(7) 前記押さえブロック体をリードフレームの形状に合せ交換し、リードフレームを固定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置の使用方法とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウインドクランパの加工精度や調整技術に依存することなしに、小型パッケージに利用される厚みが薄く、アイランドのピッチが小さいリードフレームを用いた場合でも、多数のアイランドを含むアイランド行を1行単位で均一な押圧で押さえることができ、高品質で高生産性のワイヤボンディングを可能とするワイヤボンダ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
【実施例】
【0016】
図1は、本発明実施例のワイヤボンダ装置に組み込まれたウインドクランバ4aである。図1(a)は、ウインドクランバ4aの上平面図である。図1(b)は、ウインドクランバ4aのA−A’断面図である。図1(c)は、ウインドクランバ4のB−B’断面図である。図3は、本発明実施例に於ける1連の押えブロック群の周辺拡大上平面図である。図4は、本発明実施例に於ける押えブロック体1個周辺である。図4(a)は、押えブロック体1個周辺の上平面図であり、図4(b)は、押えブロック体1個周辺のA−A’断面図であり、図4(c)は、押えブロック体1個周辺のB−B’を立体的に表現した図である。図3と図4より、本発明実施例のウインドクランパ4aの構造は明らかである。
【0017】
本発明実施例は、リードフレーム受台7内に、ヒーター14が内蔵されており、このリードフレーム受台17の上面には、図5(a)に示すように幅方向に沿って一定ピッチ間隔で形成したアイランド19に対して半導体チップ6をダイボンディングして成るリードフレーム1が乗せられており、このリードフレーム1における各アイランド19には、複数本のインナーリード8と1本のアイランドリード9が繋がり、幅方向に多数個のアイランド行で形成されている。
【0018】
図1の符号4aは、前記リードフレーム受台7の上方に配設した本発明実施例のウインドクランパ4aを示し、この本発明実施例のウインドクランパ4aは、図6の従来型のウインドクランパ4bと同様に、これに固着したウインドクランパ支持棒18を図示しない機構にて上下動することにより、リードフレーム受台7に向かって下降動したのち作業が終了後に上昇動し、リードフレーム1が1行ピッチ送る構成されている。符号3は、押えブロック体を示し、この押えブロック体3は、前記リードフレーム1における半導体チップ4が嵌まる貫通孔を備えると共に、その下面にリードフレーム1のアイランド19の回りにおけるインナーリード8とアイランドリード9に対して接当する押え凸部17を複数備えている。
【0019】
さらに、本発明実施例のウインドクランパ4aは、押えブロック体3を受けるため押えブロック止10を有し、図1(c)が示すように形成される。押えブロック止10は本発明実施例のウインドクランパ4aと水平に溝があり、押えブロック耳11のX方向に対して規制された押えブロック止10を有し、押えブロック穴13が設けられている。
【0020】
その押えブロック止10と押えブロック穴13に嵌め込まれ押えブロック体3の押えブロック耳11の形状は、X方向に規制されている側面部は、曲面に形成され上下部は、図4(c)で示すように下部は、押えブロック止10と平行に受けられるように成っており、上部は、本発明実施例のウインドクランパ4aに固定された押えバネ2が受けられるように成っており、押えブロック体3の側面に設けられた押えブロック耳11を本発明実施例のウインドクランパ4aに固定された押えバネ2と押えブロック止10で挟み込むことにより、押えブロック耳11とブロック止10が密着固定し、本発明実施例のウインドクランパ4aと押えブロック体3の底部に相当する押え凸部17の突出している部分が平行に保ったまま保持される形成になっている。
【0021】
この場合において、前記押えブロック体3は図4(c)に示したように押えブロック体3の押えブロック耳11が下面に平坦、側面に曲面を有するので、押え凸部17がインナーリード8とアイランドリード9が接触する前までは、押えブロック耳11はブロック止10と平行に密着し、押え凸部17がインナーリード8とアイランドリード9が接触した後は、押えブロック体3がブロック止から浮き上がり自由自在に可動ができるので、押え凸部17とリードフレーム受台7の平面度不足にも対応した均一なリードフレーム押圧を有することができ、インナーリード8とアイランドリード9の接触時の横滑りを防止することができる。
【0022】
更に、図1(a)で示したように、たとえ、押えバネ2の平面幅が均一でないとしても、各押えバネ3の形状寸法を設定することにより、リードフレーム受台7の平面度不足にも対応した均一なリードフレーム押圧を実現する。即ち、本発明実施例のワイヤボンダ装置を用いると、複数のアイランド19を含むアイランド行を一緒に固定することが出来る。
【0023】
なお、本発明において、押えブロック体3の押えブロック耳11を下向きに押圧付勢するためのバネ手段としては、本発明実施例の押えバネ2にすることに限らず、コイルバネ、軟質弾性体、磁気、空気、油圧等を使用することができることは言うまでもない。また、本発明実施例は、一行分の各アイランド19を3等分にして行っているが、これを、アイランド19一個毎に押えブロック体3を構成することは可能であり、その際に、押えバネ2の圧力を再設定することにより、自在に押さえにあった圧力をつたえられることができる。
【0024】
また、本発明実施例のように、押えブロック体3は本発明実施例のウインドクランパ4aに着脱自在に挿入することができるから、リードフレームのアイランド形状や1行当たりのアイランド個数が変更になっても押えブロック体3形状変更のみで、本発明実施例のウインドクランパ4aに対する着脱は容易に行うことができる。
【0025】
図8は、本発明実施例に於けるパッケージの一例であり、パッケージSON−4を用いたのであり、パッケージSON−4に於いての利用されるリードフレームは、厚さ0.08mm、アイランド19のピッチ3.3mm、14個取りである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例のワイヤボンダ装置に組み込まれたウインドクランバである。図1(a)は、ウインドクランバの上平面図である。図1(b)は、ウインドクランバのA−A’断面図である。図1(c)は、ウインドクランバのB−B’を立体的に表現した図である。
【図2】従来のワイヤボンダ装置に組み込まれたウインドクランバである。図2(a)は、ウインドクランバの上平面図である。図2(b)は、ウインドクランバのA−A’断面図である。
【図3】本発明実施例に於ける押えブロック群周辺の拡大上平面図である。
【図4】本発明実施例に於ける押えブロック1個周辺である。図4(a)は、押えブロック1個周辺の上平面図である。図4(b)は、押えブロック1個周辺のA−A’断面図である。図3(c)は、押えブロック1個周辺のB−B’を立体的に表現した図である。
【図5】本発明実施例で利用されるリードフレームである。図5(a)は、リードフレームの平面図である。図5(b)は、一つのアイランド部の拡大図である。図5(c)は、図5(b)のA−A’断面図である。
【図6】一般的なワイヤボンダ装置の模式図である。
【図7】従来のパッケージとそのリードフレームの諸元表である。
【図8】本発明実施例に於けるパッケージとそのリードフレームの諸元表である。
【符号の説明】
【0027】
1 リードフレーム
2 押えバネ
3 押えブロック体
4a 本発明実施例のウインドクランパ
5 キャピラリー
6 半導体チップ
7 リードフレーム受台(ヒーター付き)
8 インナーリード
9 アイランドリード
10 押えブロック止
11 押えブロック耳
11b 押えブロック耳側面
12 押えブロック群周辺
13 押えブロック穴
14 ヒーター
17 押え凸部
18 ウインドクランパ支持棒
19 アイランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームを両側から挟み込んで固定するためのリードフレーム受台およびウインドクランパを備え、
前記ウインドクランパは、
開口部である押さえブロック穴と、
前記ブロック穴の周辺の一部に設けられた押さえブロック止めと、
前記押さえブロック穴に挿入されて、前記押さえブロック止めと密着する押さえブロック耳を有する複数個の移動可能な押さえブロック体と、
前記ウインドクランパに固着され、前記押さえブロック体を押圧手段とを有し、
前記押さえブロック体の下面である押さえ凸部は前記ウインドクランパの下面より突出し、リードフレームのアイランドリードおよびインナーリードとをリードフレーム受台に押さえ付けることを特徴とするワイヤボンダ装置。
【請求項2】
前記押えブロック体は、複数の半導体チップに対応するアイランドリードおよびインナーリードとを固定することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンダ装置。
【請求項3】
前記ウインドクランパの、前記押さえブロック耳の下面は平坦で、前記押さえブロック体の側面は曲面であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のワイヤボンダ装置。
【請求項4】
前記ウインドクランパは、前記押えブロック体の前記押え凸部の圧力が等しくなる様に設定された前記押圧手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置。
【請求項5】
前記ウインドクランパは、前記押さえ凸部がリードフレーム接触前は、前記押えブロック耳が前記押えブロック止と密着し、前記押え凸部がリードフレーム接触後は、前記押えブロック耳が前記押えブロック止から浮上することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置。
【請求項6】
前記押圧手段は押さえバネであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のワイヤボンダ装置。
【請求項7】
前記押さえブロック体をリードフレームの形状に合せ交換し、前記リードフレームを固定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載のワイヤボンダ装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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