説明

ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置

【課題】プリント配線基板、延いては製品の小型化が可能なワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置を提供する。
【解決手段】ワイヤガイド25を直立及び傾斜させる機構を備えることにより、ワイヤガイド25を直立させた姿勢でボンディングワイヤ4の接続部とプリント配線基板上の端子とを接合させることが可能になる。したがって、従来のワイヤボンディング装置と比較して、ワイヤガイド25を直立させた分だけ、ボンディングヘッド2を小型化することが可能になり、ボンディングヘッド2と半導体チップのケーシングとの干渉を回避するためのスペースを縮小することができる。これにより、プリント配線基板、延いては該プリント配線基板を搭載する製品を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リード端子(第1端子)と半導体チップ電極(第2端子)とをループ形状のボンディングワイヤによって接続させるワイヤボンディング方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤボンディング方法は、ツールによってボンディングワイヤの第1接合部(先端部)を第1端子に押圧させて、この状態で、ツールの先端部を超音波振動させることにより、ボンディングワイヤの第1接合部を第1端子に接合(圧着)させる。そして、第1接合部と第1端子とを接合後、図4に示されるように、第1端子T1と第2端子T2との間にボンディングワイヤ4をループ形状に架線する。このループ形状に架線させたボンディングワイヤ4の第2接合部S2を、ツール3によって第2端子T2に押圧させて、この状態で、ツール3を超音波振動させることにより、ボンディングワイヤ4の第2接合部S2を第2端子T2に接合(圧着)させる。そして、図5に示されるように、ボンディングヘッド2をステップバック動作させてボンディングワイヤ4を一定の長さだけ引き出した後、このボンディングワイヤ4を第2接合部S2の近傍で切断する。
【0003】
上述したように、従来のワイヤボンディング方法では、ボンディングワイヤ4の第2接合部S2を第2端子に接合させた後、ボンディングワイヤ4を引き出すためのステップバック動作を要する。したがって、従来のワイヤボンディング方法では、ボンディングヘッド2をステップバック動作させた時に、当該ボンディングヘッド2のワイヤガイド5が、例えば半導体チップのケーシング7と干渉しないように、端子(第2端子T2)を配置する必要があり、プリント配線基板8、延いては製品の大型化を招いていた。さらに、従来のワイヤボンディング方法では、ワイヤガイド5によってボンディングワイヤ4をツール3の先端部3aの直下に向けて案内するため、ワイヤガイド5をツール3の軸心に対して例えば30°〜60°の傾斜角度で傾斜させる必要がある。このため、ボンディングヘッド2が大型化して、ワイヤガイド5がケーシング7との干渉を回避することができるように、端子(第2端子)を配置する必要があり、プリント配線基板8、延いては製品のさらなる大型化を招く結果となっていた。
【特許文献1】特開2005−353903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、プリント配線基板、延いては製品の小型化が可能なワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤボンディング方法は、ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの接合部を端子に接合させるワイヤボンディング方法であって、ボンディングワイヤをツールに対して傾斜させたワイヤガイドによって案内しながらワイヤ送出機構によって送出して、該ボンディングワイヤの第1接合部をツールの先端部の直下に位置させるワイヤ送出ステップと、該ワイヤ送出ステップ完了後、ボンディングヘッドを下降させて、ボンディングワイヤの第1接合部をツールの先端部によって第1端子に押圧させた状態で、ツールの先端部を超音波振動させることによりボンディングワイヤの第1接合部を第1端子に接合させる第1接合ステップと、該第1接合ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持して、この状態でボンディングヘッドを移動させて、第1端子と第2端子との間にボンディングワイヤをループ形状に架線する架線ステップと、該架線ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持すると共に、ボンディングワイヤの第2接合部をツールの先端部によって第2端子に押圧させた状態で、ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの第2接合部を第2端子に接合させる第2接合ステップと、該第2接合ステップ完了後、ツールとワイヤガイドとの間に配置したカッターによってボンディングワイヤをツールとワイヤガイドとの間で切断する切断ステップと、該切断ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持してボンディングヘッドを上昇させるヘッド上昇ステップと、を具備することを特徴とする。
本発明のワイヤボンディング方法によれば、切断ステップでボンディングワイヤをツールとワイヤガイドとの間で切断すると共に、ワイヤ送出ステップでワイヤ送出機構によってボンディングワイヤが送出されるので、従来のワイヤボンディング方法で行われていたボンディングワイヤを引き出すためのステップバック動作が不要になる。また、第2接合ステップでは、ワイヤガイドを直立させた状態に保持してワイヤボンディングの第2接続部と端子とを接合させるので、従来のワイヤボンディング方法と比較して、ワイヤガイドを直立させた分だけ、言い換えると、ワイヤガイドを傾斜させていない分だけ、ボンディングヘッドを小型化することが可能になる。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤボンディング装置は、ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの接合部を端子に接合させるワイヤボンディング装置であって、制御装置の制御に基きボンディングワイヤを送出するワイヤ送出機構と、パイプ形状に形成されてワイヤ送出機構によって送出されるボンディングワイヤを案内するワイヤガイドと、制御装置の制御に基きワイヤガイドを駆動してワイヤガイドのツールに対する傾斜角度を変化させるワイヤガイド傾斜機構と、ツールと直立した姿勢のワイヤガイドとの間に配置されてボンディングワイヤをツールの先端部とワイヤガイドとの間で切断するカッターと、を具備して、ワイヤガイド傾斜機構は、ボンディングワイヤがカッターによって切断されてボンディングヘッドが上昇された後、ワイヤガイドを、直立した姿勢からツール及びカッターに対してツール及びカッターが配置された側と反対側に傾倒させるようにして傾斜させて、ワイヤ送出機構は、ワイヤガイド傾斜機構によってワイヤガイドが傾斜された後、ボンディングワイヤを送出して、ワイヤ送出機構によって送出されたボンディングワイヤは、ワイヤガイドによってツールの先端部の直下に向けて案内されることを特徴とする。
本発明のワイヤボンディング装置によれば、ボンディングワイヤが、直立した姿勢のワイヤガイドとツールとの間に配置したカッターによってツールとワイヤガイドとの間で切断されると共にワイヤ送出機構によって送出されるので、従来のワイヤボンディング装置で行われていたボンディングワイヤを引き出すためのステップバック動作が不要になる。また、ワイヤガイド傾斜機構によってワイヤガイドを直立させた状態に保持してボンディングワイヤの接続部と端子とを接合させるので、従来のワイヤボンディング方法と比較して、ワイヤガイドを直立させた分だけ、言い換えると、ワイヤガイドを傾斜させていない分だけ、ボンディングヘッドを小型化することが可能になる。
【0007】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)、(2)項の各々が、請求項1、2の各々に相当する。
【0008】
(1)ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの接合部を端子に接合させるワイヤボンディング方法であって、ボンディングワイヤをツールに対して傾斜させたワイヤガイドによって案内しながらワイヤ送出機構によって送出して、該ボンディングワイヤの第1接合部をツールの先端部の直下に位置させるワイヤ送出ステップと、該ワイヤ送出ステップ完了後、ボンディングヘッドを下降させて、ボンディングワイヤの第1接合部をツールの先端部によって第1端子に押圧させた状態で、ツールの先端部を超音波振動させることによりボンディングワイヤの第1接合部を第1端子に接合させる第1接合ステップと、該第1接合ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持して、この状態でボンディングヘッドを移動させて、第1端子と第2端子との間にボンディングワイヤをループ形状に架線する架線ステップと、該架線ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持すると共に、ボンディングワイヤの第2接合部をツールの先端部によって第2端子に押圧させた状態で、ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの第2接合部を第2端子に接合させる第2接合ステップと、該第2接合ステップ完了後、ツールとワイヤガイドとの間に配置したカッターによってボンディングワイヤをツールとワイヤガイドとの間で切断する切断ステップと、該切断ステップ完了後、ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持してボンディングヘッドを上昇させるヘッド上昇ステップと、を具備することを特徴とするワイヤボンディング方法。
本項に記載のワイヤボンディング方法によれば、ボンディングワイヤは、第2接合ステップでの接合が完了すると、切断ステップにおいてツールとワイヤガイドとの間で切断される。また、ボンディングワイヤは、ワイヤ送出ステップでワイヤ送出機構によって自動で送出される。したがって、従来のワイヤボンディング方法で行われていたボンディングワイヤを引き出すためのボンディングヘッドのステップバック動作が不要になり、ボンディングワイヤを引き出すためにステップバック動作させるためのスペース、すなわち、ボンディングヘッドと半導体チップのケーシング等との干渉を回避するためのスペースを確保しなくてなくて済む。これにより、プリント配線基板、延いては該プリント配線基板を搭載する製品を小型化することができる。
また、本項に記載のワイヤボンディング方法によれば、第2接合ステップにおいて、ワイヤガイドを直立させた姿勢、すなわち、ワイヤガイドをツールに沿わせるようにして、ボンディングワイヤの第2接続部と端子とが接合される。したがって、従来のワイヤボンディング方法と比較して、ワイヤガイドを直立させた分だけ、言い換えると、ワイヤガイドを傾斜させていない分だけ、ボンディングヘッドを小型化することが可能になり、ボンディングヘッドと半導体チップのケーシング等との干渉を回避するためのスペースを縮小することができる。これにより、プリント配線基板、延いては該プリント配線基板を搭載する製品を小型化することができる。
【0009】
(2)ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させてボンディングワイヤの接合部を端子に接合させるワイヤボンディング装置であって、制御装置の制御に基きボンディングワイヤを送出するワイヤ送出機構と、パイプ形状に形成されてワイヤ送出機構によって送出されるボンディングワイヤを案内するワイヤガイドと、制御装置の制御に基きワイヤガイドを駆動してワイヤガイドのツールに対する傾斜角度を変化させるワイヤガイド傾斜機構と、ツールと直立した姿勢のワイヤガイドとの間に配置されてボンディングワイヤをツールの先端部とワイヤガイドとの間で切断するカッターと、を具備して、ワイヤガイド傾斜機構は、ボンディングワイヤがカッターによって切断されてボンディングヘッドが上昇された後、ワイヤガイドを、直立した姿勢からツール及びカッターに対してツール及びカッターが配置された側と反対側に傾倒させるようにして傾斜させて、ワイヤ送出機構は、ワイヤガイド傾斜機構によってワイヤガイドが傾斜された後、ボンディングワイヤを送出して、ワイヤ送出機構によって送出されたボンディングワイヤは、ワイヤガイドによってツールの先端部の直下に向けて案内されることを特徴とするワイヤボンディング装置。
本項に記載のワイヤボンディング装置によれば、ボンディングワイヤは、端子との接合が完了すると、ツールと直立した姿勢のワイヤガイドとの間に配置されたカッターによってツールとワイヤガイドとの間で切断される。また、ボンディングワイヤは、ワイヤ送出機構によって自動で送出される。したがって、従来のワイヤボンディング装置で行われていたボンディングワイヤを引き出すためのボンディングヘッドのステップバック動作が不要になり、ボンディングワイヤを引き出すためにステップバック動作させるためのスペース、すなわち、ボンディングヘッドと半導体チップのケーシング等との干渉を回避するためのスペースを確保しなくてなくて済む。これにより、プリント配線基板、延いては該プリント配線基板を搭載する製品を小型化することができる。
また、本項に記載のワイヤボンディング装置によれば、ワイヤガイド傾斜機構を備えることにより、ワイヤガイドを直立させた姿勢、すなわち、ワイヤガイドをツールに沿わせた姿勢で、ボンディングワイヤの接続部と端子とを接合させることが可能になる。したがって、従来のワイヤボンディング装置と比較して、ワイヤガイドを直立させた分だけ、言い換えると、ワイヤガイドを傾斜させていない分だけ、ボンディングヘッドを小型化することが可能になり、ボンディングヘッドと半導体チップのケーシング等との干渉を回避するためのスペースを縮小することができる。これにより、プリント配線基板、延いては該プリント配線基板を搭載する製品を小型化することができる。なお、ボンディングワイヤをカッターによって切断してボンディングヘッドを上昇させた後、ワイヤガイド傾斜機構によってワイヤガイドを、直立した姿勢からツール及びカッターに対してツール及びカッターが配置された側と反対側に傾倒させるようにして傾斜させる。そして、ボンディングワイヤをワイヤガイドによって案内しながらワイヤ送出機構によって所定長さだけ送出することで、ボンディングワイヤは、接続部(先端部)が、ツールの先端部の直下に位置決めさせることができる。
本項の態様において、ワイヤ送出機構は、例えば、ボンディングワイヤを挟持する一対の送出ローラをサーボモータで回転駆動することにより、スプールに巻回されたボンディングワイヤを引き出すように構成することができる。
また、本項の態様において、ワイヤガイド傾斜機構は、例えば、ワイヤガイドをツール及びカッターに対して斜め下向きに近接離反させる直動機構と、ワイヤガイドの基部を回転駆動させる回転駆動機構とを組み合わせて協働させることにより、ツールに対して傾斜させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
プリント配線基板、延いては製品の小型化が可能なワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図1〜図3に基いて説明する。なお、上述した従来のワイヤボンディング装置1と同一の構成要素には同一の名称及び符号を付与する。図1に示されるように、ワイヤボンディング装置11は、昇降ベース12がラム13によって支持されて、該昇降ベース12がラム13の駆動によって上下方向へ移動及び位置決めされる。昇降ベース12には、ペンシル形状に形成されて軸心が鉛直方向に沿って配置されたツール3が設けられる。このツール3は、トランジューサ14の水平方向へ延びるホーン15によって支持される。このトランジューサ14は、昇降ベース12によって支持されて、電磁コイルばね16のばね力によって下方へ付勢される。そして、ワイヤボンディング装置11では、電磁コイルばね16のばね力によってツール3の先端部(下端部)でボンディングワイヤ4の接続部(第1接合部S1又は第2接合部S2)をプリント配線基板8上の端子(第1端子T1又は第2端子T2)に押圧させる(以下、接合圧力を作用させるという)。この接合圧力を作用させた状態で、トランジューサ14を起動させてツール3を超音波振動させることにより、ボンディングワイヤ4の接続部(第1接合部S1又は第2接合部S2)とプリント配線基板8上の端子(第1端子T1又は第2端子T2)とが接合(圧着)される構造になっている。
【0012】
図1に示されるように、ワイヤボンディング装置11は、パイプ形状に形成されて中間に屈折部を有するワイヤガイド25を備える。このワイヤガイド25は、昇降ベース12に設けられたスライドベース17によって支持される。このスライドベース17は、電動モータ18(ワイヤガイド傾斜機構)の駆動によって図1における右斜め下方向へ直線移動される。また、ワイヤガイド25は、スライドベース17に配置された電動モータ19(ワイヤガイド傾斜機構)の駆動によって回動中心C1の回りに回動されて位置決めされる。そして、ワイヤボンディング装置11は、制御装置の制御に基き電動モータ18と電動モータ19とを協働させることにより、図3に示されるように、ワイヤガイド25をツール3に沿わせた直立の姿勢(図1参照)から当該ツール3が配置された側と反対側へ傾倒させて傾斜させることができる構造になっている。図1に示されるように、スライドベース17には、シリコンチューブ20によって案内されてワイヤガイド25に挿通されたボンディングワイヤ4をワイヤガイド25の先端部へ向けて送出させるワイヤ送出機構21が設けられる。このワイヤ送出機構21は、シリコンチューブ20とワイヤガイド25との間に露出したボンディングワイヤ4を一定の力で挟持するように構成された一対のローラ22と、一対のローラ22のうちの少なくとも一方を回転駆動する電動モータと、からなる。
【0013】
図1に示されるように、ワイヤボンディング装置11は、直立した姿勢のワイヤガイド25とツール3との間に配置されたカッター6を備える。このカッター6は、カッターベース23を介して昇降ベース12に支持される。そして、ワイヤボンディング装置11は、カッターベース23がラックアンドピニオン機構を介して電動モータ24によって上下方向へ移動及び位置決めされて、ボンディングワイヤ4をワイヤガイド25とツール3との間で切断可能に構成される。
【0014】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、ツール3によってボンディングワイヤ4の第1接合部S1とプリント配線基板8上の第1端子T1との間に接合圧力を作用させて、この状態で当該ツール3を超音波振動させることにより、第1接合部S1と第1端子T1とを接合(圧着)させる。この時、ワイヤガイド25は、直立した姿勢で保持される。次に、ワイヤ送出機構21によってボンディングワイヤ4を送出させながらボンディングヘッド2をプリント配線基板8上の第2端子T2に向けて移動させて次の接合位置に位置決めさせる。これにより、ボンディングワイヤ4は、図2に示されるように、第1端子T1と第2端子T2との間にループ形状に架線される。そして、ツール3によってボンディングワイヤ4の第2接合部S2とプリント配線基板8上の第2端子T2との間に接合圧力を作用させて、この状態で当該ツール3を超音波振動させることにより、第2接合部S2と第2端子T2とを接合(圧着)させる。
【0015】
次に、カッター6を駆動してボンディングワイヤ4をツール3とワイヤガイド25との間で切断する。その切断後、ワイヤガイド25の直立した姿勢を保持した状態で、ボンディングヘッド2を上昇させる。なお、上昇後のボンディングヘッド2の高さは、ワイヤガイド25を傾倒させて傾斜させた時に、当該ワイヤガイド25が半導体チップのケーシング7と干渉しないような高さに設定する。次に、図3に示されるように、ワイヤガイド25を先端部を回動中心に回動させて当該ワイヤガイド25をツール3が配置された側と反対側へ傾倒させる。これにより、ワイヤガイド25を、例えば45°の傾斜角度で傾斜させる。この状態で、ボンディングワイヤ4をワイヤガイド25によって案内しながらワイヤ送出機構21によって送出することにより、当該ボンディングワイヤ4の次の第1接合部S1をツール3の先端部の直下に位置させる。
【0016】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態のワイヤボンディング装置11によれば、ボンディングワイヤ4は、接合部(第1接合部S1又は第2接合部S2)と端子(第1端子T1又は第2端子T2)との接合が完了すると、ツール3と直立した姿勢のワイヤガイド25との間に配置されたカッター6によってツール3とワイヤガイド25との間で切断されると共に、ワイヤ送出機構21によって自動で送出される。したがって、本実施形態のワイヤボンディング装置11では、従来のワイヤボンディング装置1(図4及び図5参照)で行われていたボンディングワイヤ4を引き出すためのステップバック動作が不要になり、ボンディングワイヤ4を引き出すためにボンディングヘッド2をステップバック動作させるためのスペース、すなわち、ボンディングヘッド2(ワイヤガイド25)と半導体チップのケーシング7との干渉を回避するためのスペースを確保しなくて済む。これにより、プリント配線基板8、延いては該プリント配線基板8を搭載する製品を小型化することができる。さらに、ボンディングヘッド2をステップバック動作させなくて済むので、サイクルタイムが短縮されて生産性を向上させることができる。そのうえ、ボンディングワイヤ4の供給が安定することで、信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態のワイヤボンディング装置11によれば、ワイヤガイド25を直立及び傾斜させる機構を備えることにより、ワイヤガイド25を直立させた姿勢でボンディングワイヤ4の接続部(第1接合部S1又は第2接合部S2)とプリント配線基板8上の端子(第1端子T1又は第2端子T2)とを接合させることが可能になる。したがって、従来のワイヤボンディング装置1と比較して、ワイヤガイド25を直立させた分だけ、言い換えると、ワイヤガイド25を傾斜させていない分だけ、ボンディングヘッド2を小型化することが可能になり、ボンディングヘッド2と半導体チップのケーシング7との干渉を回避するためのスペースを縮小することができる。これにより、プリント配線基板8、延いては該プリント配線基板8を搭載する製品を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のワイヤボンディング装置のボンディングヘッド周辺の構造を示す図である。
【図2】本実施形態の説明図であって、特に、ワイヤガイドを直立させた姿勢でボンディングワイヤの第2接合部とプリント配線基板上の第2端子とが接合される状態を示す図である。
【図3】本実施形態の説明図であって、特に、図2における接合の完了後、ボンディングヘッドを上昇させて、さらに、ワイヤガイドを傾斜させた状態を示す図である。
【図4】従来のワイヤボンディング装置の説明図であって、特に、ステップバック動作直前の状態を示す図である。
【図5】従来のワイヤボンディング装置の説明図であって、特に、ステップバック動作直後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
2 ボンディングヘッド、3 ツール、4 ボンディングワイヤ、6 カッター、11 ワイヤボンディング装置、18,19 電動モータ(ワイヤガイド傾斜機構)、21 ワイヤ送出機構、25 ワイヤガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させて前記ボンディングワイヤの接合部を前記端子に接合させるワイヤボンディング方法であって、
前記ボンディングワイヤを前記ツールに対して傾斜させたワイヤガイドによって案内しながらワイヤ送出機構によって送出して、該ボンディングワイヤの第1接合部を前記ツールの先端部の直下に位置させるワイヤ送出ステップと、
該ワイヤ送出ステップ完了後、ボンディングヘッドを下降させて、前記ボンディングワイヤの第1接合部を前記ツールの先端部によって第1端子に押圧させた状態で、前記ツールの先端部を超音波振動させることにより前記ボンディングワイヤの第1接合部を第1端子に接合させる第1接合ステップと、
該第1接合ステップ完了後、前記ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持して、この状態で前記ボンディングヘッドを移動させて、前記第1端子と前記第2端子との間に前記ボンディングワイヤをループ形状に架線する架線ステップと、
該架線ステップ完了後、前記ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持すると共に、前記ボンディングワイヤの第2接合部を前記ツールの先端部によって第2端子に押圧させた状態で、前記ツールの先端部を超音波振動させて前記ボンディングワイヤの第2接合部を前記第2端子に接合させる第2接合ステップと、
該第2接合ステップ完了後、前記ツールと前記ワイヤガイドとの間に配置したカッターによって前記ボンディングワイヤを前記ツールと前記ワイヤガイドとの間で切断する切断ステップと、
該切断ステップ完了後、前記ワイヤガイドを直立させた姿勢に保持して前記ボンディングヘッドを上昇させるヘッド上昇ステップと、
を具備することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
ボンディングワイヤの接合部をツールの先端部によって端子に押圧させた状態で、該ツールの先端部を超音波振動させて前記ボンディングワイヤの接合部を前記端子に接合させるワイヤボンディング装置であって、
制御装置の制御に基き前記ボンディングワイヤを送出するワイヤ送出機構と、
パイプ形状に形成されて前記ワイヤ送出機構によって送出される前記ボンディングワイヤを案内するワイヤガイドと、
前記制御装置の制御に基き前記ワイヤガイドを駆動して前記ワイヤガイドの前記ツールに対する傾斜角度を変化させるワイヤガイド傾斜機構と、
前記ツールと直立した姿勢の前記ワイヤガイドとの間に配置されて前記ボンディングワイヤを前記ツールの先端部と前記ワイヤガイドとの間で切断するカッターと、
を具備して、
前記ワイヤガイド傾斜機構は、前記ボンディングワイヤが前記カッターによって切断されてボンディングヘッドが上昇された後、前記ワイヤガイドを、直立した姿勢から前記ツール及び前記カッターに対して前記ツール及び前記カッターが配置された側と反対側に傾倒させるようにして傾斜させて、
前記ワイヤ送出機構は、前記ワイヤガイド傾斜機構によって前記ワイヤガイドが傾斜された後、前記ボンディングワイヤを送出して、
該ワイヤ送出機構によって送出された前記ボンディングワイヤは、前記ワイヤガイドによって前記ツールの先端部の直下に向けて案内されることを特徴とするワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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