説明

ワイヤボンディング装置、これを用いたワイヤボンディング方法

【課題】自動でワイヤの不着原因を特定する。
【解決手段】ワイヤボンディング装置1は、接続端子上の所定のボンディング位置でキャピラリのZ軸移動速度を検出し、キャピラリのZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、移動機構によるキャピラリのZ軸移動を制御し、Z軸制御基板がしきい値以下になったときからのZ軸位置の変位量をキャピラリのZ軸位置の経時変化から算出し、ワイヤと接続端子との間の通電状態からワイヤの不着を検出し、不着検出部がワイヤの不着を検出したときの変位量と基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定し、補正/判定部が不着検出部によりワイヤの不着が検出されたときの変位量と基準変位量との差分が所定範囲を超えていると判定したとき、しきい値および超音波の発振出力量のいずれかを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置、これを用いたワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤボンディング装置としては、例えば特許文献1および2に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤボンディング装置は、パッド(接続端子)とワイヤとの間の不着を電気的手法により検出する手段と光学的手法により検出する手段とを備える。電気的手法により不着が検出され、かつ、光学的手法により不着が検出されたとき、光学的手法により検出されたワイヤ先端形状に基づいて、ワイヤ先端に所定の形状のボールを再形成して、パッドに再ボンディングを行う。
【0004】
特許文献2に記載のワイヤボンディング装置は、ボンディングツール(キャピラリ)と、このボンディングツールの一端を支持し、ボンディングツールに超音波振動を付与する超音波ホーンと、ボンディングツールの振動を計測して、ボンディングツールの振動の節の位置を算出する振動測定手段とを具備する。このワイヤボンディング装置は、節の位置に基づいてボンディング動作を続行又は停止する制御を行う。
【0005】
図5を用いて、従来のボンディング装置による電気的手法による不着検出を説明する。接続端子へのボンディングが成功すると、ワイヤと接続端子との間が通電状態になる。したがって検出した電圧が判定レベルの電圧より大きい場合は(S901Y)、装置を連続稼働させてボンディング処理の実行を継続する(S902)。一方、ワイヤが接続端子に不着しなかったときは、接続端子とワイヤとの間が導通しない。そのため、検出電圧が判定レベルの電圧よりも小さい場合(S901N)、不着と判定され、装置が自動停止等してエラー処理が実行される(S903)。そして、作業者によって装置が調整され装置リカバリーが行われる(S904)。
【特許文献1】特開2007−180348号公報
【特許文献2】特開2007−142049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献記載の従来技術では、ボンディング不着の有無は検出できるものの、不着の原因を特定することができなかった。そのため、不着が検出されるたびに装置を止めて不着原因を特定しなければならない場合があった。すると、装置調整に時間がかかり製造工程におけるスループットが低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ワイヤが挿通されているキャピラリと、
前記キャピラリをXYZ方向に移動する移動機構と、
超音波を発振出力して、前記キャピラリに超音波振動を付与する超音波印加部と、
ワーク上の所定のボンディング位置で前記キャピラリのZ軸移動速度を検出し、前記キャピラリのZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、前記移動機構による前記キャピラリのZ軸移動を制御する移動制御部と、
前記ボンディング位置において前記キャピラリのZ軸位置を検出するZ軸位置検出部と、
前記移動制御部が前記しきい値以下になったときからの前記Z軸位置の変位量を前記キャピラリの前記Z軸位置の経時変化から算出する演算部と、
前記ワイヤが前記ワークにボンディングされたときの前記変位量を基準変位量として記憶する記憶部と、
前記ワイヤと前記ワークとの間の通電状態から前記ワイヤの不着を検出する電気的不着検出部と、
前記電気的不着検出部により前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が所定範囲内か否かを判定する判定部と、
前記電気的不着検出部により前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると前記判定部が判定したとき、前記しきい値および前記超音波の発振出力量のいずれかを補正する補正部と、
を備えるワイヤボンディング装置
が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、ワイヤをキャピラリに挿通させるステップと、
前記キャピラリをXYZ方向に移動するステップと、
超音波を発振出力して、前記キャピラリに超音波振動を付与するステップと、
ワーク上の所定のボンディング位置で前記キャピラリのZ軸移動速度を検出し、前記キャピラリのZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、前記キャピラリのZ軸移動を制御するステップと、
前記ボンディング位置において前記キャピラリのZ軸位置を検出するステップと、
前記しきい値以下になったときからの前記Z軸位置の変位量を前記キャピラリの前記Z軸位置の経時変化から算出するステップと、
前記ワイヤが前記ワークにボンディングされたときの前記変位量を基準変位量として取得するステップと、
前記ワイヤと前記ワークとの間の通電状態から前記ワイヤの不着を検出するステップと、
前記通電状態から前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定するステップと、
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると判定したとき、前記しきい値および前記超音波の発振出力量のいずれかを補正するステップと、
を含むワイヤボンディング方法
が提供される。
【0009】
この発明によれば、移動制御部によりキャピラリのZ軸移動が制御されているときのキャピラリのZ軸位置を検出するとともに、ワイヤとワークとの間の通電状態からワイヤの不着を検出する。そして、検出されたキャピラリのZ軸位置の経時変化からZ軸位置の変位量を算出し、算出された変位量が基準変位量の所定範囲内にあるか否かを判定する。これにより、ワイヤとワークとの間の通電状態だけでなく、ワーク上でワイヤ先端等が溶融されることによるキャピラリの沈み込みの有無を検出することができる。したがって、キャピラリの沈み込みが検出されなかったときは、ワイヤ先端に超音波溶融が発生していないと判断することができ、補正部が超音波の発振出力量を変更することにより、キャピラリに適度な超音波振動を付与してワイヤ先端に超音波溶融を発生させることができる。また、補正部が、Z軸移動速度のしきい値を変更することにより、ワイヤをワーク上にうまく接触させることもできる。よって、電気的手法によりワイヤ不着を検出した場合においても、装置が自動補正を行うことで迅速に不着トラブルをリカバリーし、製造工程におけるスループットの低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワイヤ不着を精度よく検出してワイヤ不着の原因を検出することができる。したがって、作業者の技量に依存しないで迅速に装置調整を実行することができ、製造工程におけるスループットの低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態のワイヤボンディング装置1を示す。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤが挿通されているキャピラリ101と、キャピラリ101をXYZ方向に移動する移動機構102と、超音波の発振出力を印加する超音波発振部110と、キャピラリに超音波振動を付与する超音波ホーン103と、を有する。ワイヤボンディング装置1は、超音波振動によってワイヤを接続端子104にボンディングする。超音波発振部110と超音波ホーン103とが超音波印加部を構成している。
【0013】
また、ワイヤボンディング装置1は、Z軸制御基板(移動制御部)113と、Zエンコーダ(Z軸位置検出部)105と、演算部106と、記憶部107と、電気的不着検出部108(図1中では、「不着検出部」)と、判定/補正部109と、を備える。Z軸制御基板113は、接続端子104上の所定のボンディング位置でキャピラリ101のZ軸移動速度を検出し、キャピラリ101のZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、移動機構102によるキャピラリのZ軸移動を制御する。Zエンコーダ105は、前記ボンディング位置においてキャピラリ101のZ軸位置を検出する。演算部106は、Z軸制御基板113がしきい値以下になったときからのZ軸位置の変位量をキャピラリ101のZ軸位置の経時変化から算出する。記憶部107は、ワイヤが接続端子104にボンディングされたときの変位量を基準変位量として記憶する。電気的不着検出部108は、ワイヤと接続端子104との間の通電状態からワイヤの不着を検出する。判定/補正部109は、電気的不着検出部108がワイヤの不着を検出したときの変位量と基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定する。そして、電気的不着検出部108によりワイヤの不着が検出されたときの変位量と基準変位量との差分が所定範囲を超えていると判定したとき、しきい値および超音波の発振出力量のいずれかを補正する。
【0014】
以下、ワイヤボンディング装置1について詳細に説明する。
【0015】
ワイヤボンディング装置1は、超音波振動、圧力、熱を加えて、ワイヤ又はワイヤ先端に形成された被接合部材(金属ボール)と接続端子104とを接合する超音波併用熱圧着方式を採用する。ワイヤボンディング装置1は、半導体装置の組立工程で用いられる。
【0016】
具体的には、ワイヤボンディング装置1は、半導体チップ11とリードフレーム12との間をワイヤで接続するワイヤボンディング工程で用いられる。このワイヤボンディング工程によって、図2で示すように、半導体チップ11の接続端子104とインナーリード13のリード端子14との間がワイヤ16で接続される。半導体チップ11には、接続端子104が形成されている。図1で示す半導体装置10の一部が図2で示すワーク15を構成している。
【0017】
ワイヤ16はたとえば金ワイヤを用いることができる。キャピラリ101に挿通されたワイヤ先端には金属ボール等の被接合部材が形成されていてもよい。
【0018】
図1にもどり、ワイヤボンディング装置1は、超音波制御部111を備えている。超音波制御部111の制御の下、超音波発振部110が超音波ホーン103に超音波の発振出力を印加し、発振出力された超音波は超音波ホーン103を伝達する。こうすることで超音波ホーン103からキャピラリ101に超音波振動が付与される。
【0019】
また、ワイヤボンディング装置1は、ヒータブロック112を備えている。ヒータブロック112は、半導体装置10を搭載する。半導体装置10は、基板(図示せず)と基板に搭載された半導体チップ11とから構成されている。基板にはリードフレーム12が形成されている。また、半導体チップ11には接続端子104が形成され、リードフレーム12にはリード端子14が形成されている。したがって、半導体装置10がヒータブロック112に搭載されることで接続端子104およびリード端子14に所定の熱を加えることができる。
【0020】
ここで、電気的不着検出部108は、後述の電気的手法によりワイヤの不着を検出する。すなわち、ワイヤに電流を流し、ワイヤと接続端子104との間に電流を検出した場合に、ワイヤが接続端子104と良好に接合されていると判断する。一方、ワイヤに電流を流しても、電流が検出されないときは、不着と判断する。ワイヤと接続端子104との通電状態は、たとえば、基準となる接地電位と接続端子104にかかる電位とを比較することでその差分を電圧として検出することができる。
【0021】
記憶部107には、超音波の印加状態とZ軸実軌道とを時間軸で対応づけたチャートが記憶される。超音波の印加状態として、超音波発振部110が発振した発振出力量および超音波の出力タイミングが超音波制御部111によって記憶部107に記憶される。また、Z軸実軌道として、Zエンコーダ105が検出したZ位置検出がZ軸制御基板113によって記憶部107に記憶される。
【0022】
図4は、記憶部107に記憶されるチャート(モニタリングデータ)を例示したものである。波形Iは、Zエンコーダ105によって検出されるZ軸位置の経時変化を示す。また、波形IIは、超音波発振部110から出力される超音波振動の発振出力量の経時変化を示す。図4では、横軸が時間軸を示している。以下、図4を用いてキャピラリ101のZ軸移動およびワイヤボンディングについて説明する。
【0023】
ワイヤボンディングの一連の動作は、移動機構102によりキャピラリ101を移動し、ワイヤを接続端子104に接触させることから始まる。移動機構102は、接続端子104上の所定のXY位置までキャピラリ101を移動させると、キャピラリ101をZ軸方向に下動する。そして、ワイヤと接続端子104とが接触することで徐々に下動速度が低下し、下動速度が所定のしきい値に達したとき、キャピラリ101はaで示すZ軸位置で保持される。なお、このしきい値はあらかじめZ軸制御基板113に設定されている。
【0024】
ついで、下動速度がしきい値以下になったことに応じて、Z軸制御基板113が移動機構102のZ軸移動を一定の速度にすることで、キャピラリ101と接続端子104との間には一定の荷重がかけられる。そして、超音波発振部110から超音波が発振出力される。図4で示す例では、超音波振動の出力はtのタイミングで開始され、所定期間(T)超音波振動が出力されている。なお、超音波振動を付与する期間(T)はあらかじめ記憶部107に記憶されている。
【0025】
出力された超音波振動は、超音波ホーン103を伝達することでキャピラリ101に付与される。そうすると、ワイヤ先端又はワイヤ先端に形成された金属ボールの被接合部材が変形し、キャピラリ101のZ軸位置が徐々に下動する。Zエンコーダ105はこのZ軸位置を経時的に検出し、Z軸制御基板113を介して記憶部107で蓄積する。こうすることで、波形Iで示すチャートを得ることができる。図4の例では、キャピラリ101のZ軸位置はaからaに変化している。
【0026】
その後、所定期間(T)の経過後に、超音波発振部110は、tのタイミングで超音波発振の出力を停止する。ついで、移動機構102によりXYZ方向にキャピラリ101をリード端子14に移動し、リード端子14にワイヤがボンディングされることで接続端子104とリード端子14とが接続されることとなる。
【0027】
ここで、演算部106は、一連のワイヤボンディング動作において作成されたチャートからZ軸位置の変位量(A)および超音波の発振出力量(B)を算出することができる。Z軸位置の変位量(A)は換言すると、ワイヤ先端等の超音波変形によるキャピラリ101の沈み込み量ということができる。図4において、Z軸位置の変位量(A)は、キャピラリ101の下動速度がしきい値に達したとき(a)と所定期間(T)経過後のZ軸位置(a)との差分から算出することができる。また、超音波の発振出力量(B)は、超音波が印加されていないベース状態の電位(b)と超音波発振されプラトーに達したときの印加電位(b)との差分から算定することができる。演算部106は、算出したZ軸位置の変位量や発振出力量を記憶部107に記憶することもできる。
【0028】
つづいてワイヤボンディング装置1を用いたワイヤボンディング方法について説明する。図3は、ワイヤボンディング装置1を用いたワイヤボンディング方法を説明するフローチャートである。
【0029】
まず、初期状態としてのZ軸実軌道及び超音波印加状態の登録を受け付け、記憶部107に記憶する(S101)。具体的には、たとえば、図4で示すような、良好にワイヤボンディングされているときのチャートを初期状態のシステム情報として登録する。このとき、演算部106はZ軸位置の変位量(A)を基準変位量として算出し、記憶部107に記憶する。また、演算部106は、超音波の発振出力量(B)を基準出力量として算出し、記憶部107に記憶する。
【0030】
ついで、移動機構102によりキャピラリ101をワーク上の所定のXY軸位置に移動させ、Zエンコーダ105および超音波発振部110によりZ軸実軌道及び超音波印加状態の自動モニタリングを開始する(S102)。ワイヤと接続端子104とが接触し、Z軸移動が所定のしきい値以下になったときZ軸制御基板113が移動機構102の移動速度を一定にして、キャピラリ101と接続端子104との間に一定の荷重をかける。装置が正常に運転されているときは超音波発振部110から所定期間の超音波が出力され、キャピラリ101に超音波が付与される。超音波の出力が停止した後、移動機構102が再稼働して、キャピラリ101を接続端子104の位置からXYZ方向に移動させる。
【0031】
次に、電気的不着検出部108がワイヤに電流を流し、ワイヤと接続端子104との間の通電状態を検出する(S103)。このとき、たとえば、基準となる接地電位と接続端子104にかかる電位とを比較することでその差分を電圧として検出することができる。検出された電圧が判定基準となる電圧より大きい場合(S104Y)は、ボンディングが良好に行われたと判断することができる。この場合、移動機構102はキャピラリ101をリード端子14上に移動し、リード端子14上でボンディングが行われる。その後、ワイヤボンディング装置1が連続稼働して(S105)、半導体装置10のすべての接続端子104およびリード端子14についてワイヤボンディングが行われる。
【0032】
一方、検出された電圧があらかじめ設定された判定レベル電圧以下である場合(S104N)は、ワイヤと接続端子104との間に電流が流れていないことになる。これにより、ワイヤが接続端子104にボンディングされていないことを検出することができる。このようにして、電気的不着検出部108は、ワイヤ不着を電気的手法により検出すると、記憶部107に不着検出情報を送出する。記憶部107は、不着検出情報を電気的不着検出部108から受け付けて、自動モニタリングの結果を演算部106に送出する。そして、演算部106は、受け付けた自動モニタリングの結果から、Z軸位置の変位量(実測変位量)を算出する。
【0033】
その後、判定/補正部109は、記憶部107を参照し、算出された実測変位量と記憶された基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定する(S107)。所定範囲とは、あらかじめ記憶部107に登録された数値範囲である。算出された実測変位量と記憶された基準変位量との差分が所定範囲に満たないと判断される場合(S107N)、ワイヤ先端等に適量の超音波がかかっておらず、ワイヤ先端等が適度に溶融しなかったため、キャピラリ101のZ軸方向への沈み込みが充分に起こらなかったと判断される。
【0034】
この場合、演算部106は、超音波印加波形から超音波の発振出力量を算出し、算出された発振出力量と基準出力量とを比較してその差分を検出する。そして、判定/補正部109は、検出された差分から、基準出力量と同程度の超音波発振がキャピラリ101に付与されているか否かを判定する(S108)。
【0035】
たとえば、モニタリング結果から算定された発振出力量と基準出力量との差分が所定範囲に満たないと判定される場合(S108N)において、発振出力量が基準出力量に満たないとき、判定/補正部109は、超音波制御部111に対して超音波発振部110に発振出力を強くするように自動補正を行う(S109)。こうすることで、キャピラリ101に付加される超音波振動を増加させることができる。一方、発振出力量が基準出力量を超えているとき、判定/補正部109は、超音波発振部110からの超音波の発振出力を弱めるように自動補正を行う(S109)。こうすることで、キャピラリ101に付加される超音波振動を減少させることができる。
【0036】
また、モニタリング結果から算定された発振出力量が基準出力量の所定範囲に満たすと判定される場合(S108Y)、ワイヤと接続端子104とが適切に接触していないことが考えられる。そこで、判定/補正部109は、Z軸制御基板113にあらかじめ設定されている下動速度のしきい値を低くしたり高くしたりする(S110)。こうすることで、ワイヤ先端又はワイヤ先端に形成された金属ボールと接続端子104とを適切に接触させることができる。また、ワイヤ先端に金属ボールが形成されているときは、キャピラリ101が下降しすぎて金属ボールが過度につぶれてしまうことも防止することができる。
【0037】
以上のように、判定/補正部109によりZ軸制御基板113および超音波制御部111について自動補正が行われた後、接続端子104上で再びボンディング操作が実行される(S111)。
【0038】
ところで、判定/補正部109が、実測変位量が基準変位量を満たすと判断した場合(S107Y)は、不測のエラーが発生していると考えられる。不測のエラーには、種々のものが想定されるが、半導体装置10などワイヤボンディング装置1以外に原因があると考えられる。そこで、ワイヤボンディング装置1は、モニタ等にエラー表示をしたりアラームを発呼するなどしてエラー処理を実行し(S112)、作業者による装置調整が行われる(S113)。そして、リカバリー後に再ボンディング操作が実行される(S111)。
【0039】
次に、ワイヤボンディング装置1の作用および効果について図1を用いつつ説明する。ワイヤボンディング装置1によれば、Z軸制御基板113によりキャピラリ101のZ軸移動が制御されているときの接続端子104上の所定のボンディング位置でキャピラリ101のZ軸位置の経時変化を検出し、電気的手法によりワイヤの不着が検出されたときのキャピラリ101のZ軸位置の変位量と基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定する。これにより、ワイヤと接続端子104との間の通電状態だけでなく、ワイヤ先端等の超音波溶融の有無を検出することができ、ワイヤ不着を精度よく検出することができる。
【0040】
また、ワイヤボンディング装置1では、判定/補正部109が不着原因であるZ軸位置変位および超音波の印加状態を判断することができる。そして、記憶部107があらかじめZ軸位置の変位量および超音波の印加タイミングや発振出力量をあらかじめ記憶しておくことで、ワイヤと接続端子104との間の通電状態を検出するだけでなく、Zエンコーダ105が検出するキャピラリ101のZ軸位置データおよび超音波発振部110からの超音波発振出力データを利用することで、判定/補正部109が超音波溶融を検出し、ワイヤ不着の要因を特定することができる。また、判定/補正部109は初期状態の超音波の発振出力量を基準として正確な補正係数を導き、発振出力を強めたり弱めたりして適量の超音波振動をキャピラリ101に付与することができる。
【0041】
また、判定/補正部109は、キャピラリ101の沈み込みは検出されていないが、初期状態と同程度の超音波を出力していると判断した場合は、ワイヤと接続端子104とが接触されていないことが不着の原因と特定することができる。したがって、Z軸制御基板113における下動速度の検出タイミングを制御することでワイヤと接続端子104とを適度に接触させることができる。
【0042】
このように、ワイヤボンディング装置1によれば、不着の原因を自動で特定し、ボンディング装置内で容易に自動補正をすることができる。そのため、作業者の技量に依存しないで装置調整を実行し、ワイヤ不着から装置を容易にリカバリーすることができる。また、装置内で自動補正させることで、いちいち装置を止めずに容易にリカバリーすることができる。したがって、装置の停止による製造工程におけるスループットの低下を抑制することが可能となる。
【0043】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態に係るワイヤボンディング装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係るワイヤボンディング装置の構成の一部を示す模式図である。
【図3】実施の形態に係るワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態に係るモニタリングデータの一例である。
【図5】従来のワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 ワイヤボンディング装置
10 半導体装置
11 半導体チップ
12 リードフレーム
13 インナーリード
14 リード端子
15 ワーク
16 ワイヤ
101 キャピラリ
102 移動機構
103 超音波ホーン
104 接続端子
105 Zエンコーダ
106 演算部
107 記憶部
108 電気的不着検出部
109 判定/補正部
110 超音波発振部
111 超音波制御部
112 ヒータブロック
113 Z軸制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが挿通されているキャピラリと、
前記キャピラリをXYZ方向に移動する移動機構と、
超音波を発振出力して、前記キャピラリに超音波振動を付与する超音波印加部と、
ワーク上の所定のボンディング位置で前記キャピラリのZ軸移動速度を検出し、前記キャピラリのZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、前記移動機構による前記キャピラリのZ軸移動を制御する移動制御部と、
前記ボンディング位置において前記キャピラリのZ軸位置を検出するZ軸位置検出部と、
前記移動制御部が前記しきい値以下になったときからの前記Z軸位置の変位量を前記キャピラリの前記Z軸位置の経時変化から算出する演算部と、
前記ワイヤが前記ワークにボンディングされたときの前記変位量を基準変位量として記憶する記憶部と、
前記ワイヤと前記ワークとの間の通電状態から前記ワイヤの不着を検出する電気的不着検出部と、
前記電気的不着検出部により前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が所定範囲内か否かを判定する判定部と、
前記電気的不着検出部により前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると前記判定部が判定したとき、前記しきい値および前記超音波の発振出力量のいずれかを補正する補正部と、
を備えるワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると前記判定部が判定したとき、
前記補正部は、前記超音波の発振出力量を強めることを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると前記判定部が判定したとき、
前記補正部は、前記超音波の発振出力量を弱めることを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記ワイヤが前記ワークにボンディングされたときの前記超音波の発振出力量を基準出力量として記憶し、
前記演算部は、前記電気的不着検出部が前記ワイヤの不着を検出したときの前記発振出力量と前記基準出力量との差分を検出し、
前記判定部は、前記電気的不着検出部が前記ワイヤの不着を検出したときの前記発振出力量と前記基準出力量との差分から、所定量の超音波が前記キャピラリに付与されているか否かを判定し、
前記所定量の超音波が前記キャピラリに付与されていないと前記判定部が判定したとき、前記補正部は、前記超音波の発振出力量を制御することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると前記判定部が判定したとき、
前記補正部は、前記しきい値を補正することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が所定範囲内にあると前記判定部が判定したとき、エラー出力をするエラー出力部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
ワイヤをキャピラリに挿通させるステップと、
前記キャピラリをXYZ方向に移動するステップと、
超音波を発振出力して、前記キャピラリに超音波振動を付与するステップと、
ワーク上の所定のボンディング位置で前記キャピラリのZ軸移動速度を検出し、前記キャピラリのZ軸移動速度が所定のしきい値以下になったとき、前記キャピラリのZ軸移動を制御するステップと、
前記ボンディング位置において前記キャピラリのZ軸位置を検出するステップと、
前記しきい値以下になったときからの前記Z軸位置の変位量を前記キャピラリの前記Z軸位置の経時変化から算出するステップと、
前記ワイヤが前記ワークにボンディングされたときの前記変位量を基準変位量として取得するステップと、
前記ワイヤと前記ワークとの間の通電状態から前記ワイヤの不着を検出するステップと、
前記通電状態から前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が所定範囲内にあるか否かを判定するステップと、
前記ワイヤの不着が検出されたときの前記変位量と前記基準変位量との差分が前記所定範囲を超えていると判定したとき、前記しきい値および前記超音波の発振出力量のいずれかを補正するステップと、
を含むワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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