説明

ワイヤボンディング装置

【課題】 静電容量が低いデバイスに対しても不着検出が可能なワイヤボンディング装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るワイヤボンディング装置は、半導体チップの電極とリードフレームのリードをワイヤによって接続するワイヤボンディング装置において、DC電圧をワイヤに印加するDC印加手段30,36,40と、ワイヤからの検出電圧を検出する電圧検出手段37,30と、DC電圧を印加した時から検出電圧が検出しきい値電圧に達した時又は超えた時までの第1時間を検出する時間検出手段41と、前記第1時間と、ボンディングが不着のワイヤに前記DC電圧を印加した時から前記検出しきい値電圧に達するまで又は超えるまでの第2時間とを比較することにより、ワイヤが正常にボンディング接続されたか否かを判定する判定手段41,30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置に係わり、特に、静電容量が低いデバイスに対しても不着検出が可能なワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置は、金線、アルミニウムなどからなるワイヤを用いて第1ボンディング点となる半導体チップ上の電極と、第2ボンディング点となるリードとを接続するものである。
【0003】
二次元方向に移動可能なXYテーブル上に搭載されたボンディングヘッドのリニアモータ若しくはモータ軸に連結したカムなどによりボンディングアームが上下に揺動され、このボンディングアームの超音波ホーンの先端に取り付けられたキャピラリからワイヤが送り出され、このワイヤの先端と放電電極との間に高電圧を印加することにより放電を起こさせる。その放電エネルギーによってワイヤの先端を溶融させてワイヤの先端にボールを形成する。そしてキャピラリの先端に保持されたボールを第1ボンディング点である半導体チップの電極にボンディングアームの揺動による機械的な加圧力により押し付けつつ、超音波及び加熱手段を併用して熱圧着を行い、第1ボンディング点に対してワイヤを接続する。
【0004】
図5(a)乃至(d)は、上記ワイヤボンディング装置によるワイヤボンディングを行う工程を説明する図である。
図5(a)及び(b)に示すように、キャピラリ2の先端に送り出されたワイヤ1の先端と放電電極4との間で放電を一定の時間起こさせ、ワイヤ1の先端を溶融してボール20を形成し、キャピラリ2の先端で保持してキャピラリ2を第1ボンディング点15なる半導体チップ13の電極12の直上に位置させる。
【0005】
次に、図5(c)に示すように、キャピラリ2を下降させてボール20を電極12に押し付けて加圧すると同時にキャピラリ2の先端に対して前記ボンディングアームの超音波ホーンを介して超音波振動を印加する。これにより、電極にワイヤ1を接続する。
次いで、図5(d)に示すようにキャピラリ2を所定のループコントロールに従って上昇させ、第2ボンディング点16となるリード14方向に移動させる。
【0006】
次に、キャピラリ2を下降させワイヤ1をリード14に押し付けて加圧すると同時にキャピラリ2の先端に対して超音波ホーンを介して超音波振動を印加してリード14に対しワイヤ1を接続する。この後、キャピラリ2を上昇させてあらかじめ設定されたキャピラリ2の上昇位置でワイヤカットクランプ3を閉じ、リード14上のワイヤをカットして一回のボンディング作業が完了する。
【0007】
従来のワイヤボンディング装置は、半導体チップ13の電極12にボール20を押しつぶしてボンディングが行われた状態で、ボンディングが確実に成されたか否か、すなわちワイヤが不着状態であるか否かを不着検出装置によって判断している。この不着検出装置は、次のような手順で不着検出が行われる。
【0008】
図6は、従来の不着検出方法を示すフローチャートである。
ボンディング前に検出区間・開始位置、検出しきい値を一括で設定する(ST1,ST2)。なお、検出区間、開始位置、検出しきい値をワイヤ毎に設定することはできない。
【0009】
次いで、半導体チップの電極とリードとをワイヤによって接続するワイヤボンディングを行う(ST3)。そして、ワイヤが半導体チップの電極に確実にボンディングされたか否かの不着検出を行う(ST4)。このとき、ワイヤが不着であると判断した場合、ワイヤボンディング装置を停止するなどのエラー処理が行われる。また、ワイヤが確実にボンディングされたと判断した場合、次のワイヤボンディングを行い、同様に不着検出を行う(ST3,ST4)。すべてのワイヤボンディングが行われたらワイヤボンディング作業を終了する(ST5)。
【0010】
次に、上記不着検出方法を実施する不着検出装置について説明する。
図7は、従来のワイヤボンディング装置のDC専用不着検出装置を示すブロック図である。DC専用不着検出装置は、DC特性を有する半導体チップ専用の不着検出を行うものである。
DC専用不着検出装置は、DC用不着検出基板44及びボンディングCPU基板18を有している。ボンディングCPU基板18はI/Oポート32を備えている。DC用不着検出基板44は、I/Oポート33、CPU30、A/Dコンバータ35、増幅器(AMP)37、直流発生器45及び抵抗46を備えている。
【0011】
出力部38は、図5に示すワイヤボンディング装置のワイヤ1に接続されている。また、接地電位(GND)39は、半導体チップ13が載置されたボンディングステージに出力部38を介して接続されている。
【0012】
DC専用不着検出装置を用いて不着検出を行う場合、ワイヤボンディング時に直流発生器45から抵抗46、出力部38、ワイヤ1を介して半導体チップ13の電極12に電圧が印加される。そして、半導体チップ13の電極12からワイヤ1を介して検出信号が増幅器37に入力され、増幅器37から出力された出力信号がA/Dコンバータ35によってAD変換されCPU30に入力される。このCPU30において、検出された信号がしきい値内であれば正常にボンディングされたと判断され、検出信号がしきい値から外れていれば異常ボンディング(即ち不着)であると判断される。そして、正常ボンディングであるか不着であるかの信号がI/Oポート33,32を介してボンディングCPU基板18に入力され、不着検出が行われる。
【0013】
図8は、従来のワイヤボンディング装置のAC専用不着検出装置の具体的な構成を示す回路図である(特許文献1参照)。AC専用不着検出装置は、AC特性を有する半導体チップ専用の不着検出を行うものである。
ワイヤスプール21より繰り出されたワイヤ1は、ワイヤ1の保持、解放が可能なワイヤカットクランプ3の保持面の間を通り、ワイヤカットクランプ3の直下に位置するキャピラリ2を挿通している。ワイヤスプール21のワイヤの端であるスプールワイヤ端22と、フレームとしてのリードフレーム11を載置する基準電位点であるボンディングステージ17との間には交流ブリッジ回路5が接続されている。
【0014】
この交流ブリッジ回路5は交流発生器5aを備え、前記交流発生器5aは所定の周波数で発振する正弦波発振回路を内蔵している。交流ブリッジ回路5は、交流発生器5aと、交流発生器5aからの出力信号を受ける可変抵抗器R1とコンデンサC1からなる第1直列回路5c1、交流発生器5からの交流信号を受ける固定抵抗R2と、スプールワイヤ端22から基準電位点であるボンディングステージ17に至る電気経路を含む第2直列回路5c2とで閉ループを形成している。
【0015】
また、前記可変抵抗R1と、コンデンサC1との間の第1接続点Xは、差動増幅器6の一方の入力端に接続され、前記固定抵抗R2と前記スプールワイヤ端22との間の第2接続点Yが、前記差動増幅器6の他方の入力端に接続されている。
前記固定抵抗R2とスプールワイヤ端22との間には、同軸ケーブル5bが外来ノイズの影響を避けるために接続されている。従って、同軸ケーブル5bの芯線と外被との間で発生する同軸ケーブル5bの静電容量C2が生じ、静電容量C2が等価的に固定抵抗R2とボンディングステージ17との間に接続されることになる。
【0016】
差動増幅器6は、演算増幅器A1、演算増幅器A2、抵抗R3、抵抗R4、抵抗R5より構成される。この差動増幅器6は、前記第1接続点X、第2接続点Yから両入力端に供給される信号入力の差成分を検出して出力するものであり、前記差動増幅器6の出力端には、コンデンサC及びトランス7の一次側入力端子が直列に接続されている。
【0017】
トランス7の二次側出力端子は、絶対値変換器8に接続されており、絶対値変換器8は、トランス7より出力される正極性及び負極性の交流電圧を正極性の絶対値電圧に変換するものである。そして絶対値変換器8の出力端には第1レベル弁別器9が接続され、第1レベル弁別器9の出力はボンディング判定器26に入力され不着状態を検出するようにしている。
【0018】
また、交流ブリッジ回路5の第2接続点Yに接続された差動増幅器6の演算増幅器A1の出力端子には、ローパスフィルタ23が接続されている。ローパスフィルタ23の出力は、第2レベル弁別器24に入力される。第2レベル弁別器24は、ローパスフィルタ23の出力信号を前もって設定された基準の信号レベルと比較し、ローパスフィルタ23の出力信号が基準の信号レベル以上であれば論理値“0”の信号を論理積器25に出力し、ローパスフィルタ23の出力信号が基準の信号レベル以下であれば論理値“1”の信号を論理積器25に出力する。
【0019】
ボンディング検出切替器27は第1ボンディング(チップボンディング)時に論理値“1”の信号を出力し、第2ボンディング(リードボンディング)時に論理値“0”の信号を論理積器25に出力する。論理積器25は、ボンディング検出切替器27の出力信号と第2レベル弁別器24の出力との論理積(AND演算)を行い、第1ボンディング(チップボンディング)時には、論理値“1”又は“0”をボンディング判定器26に出力し、第2ボンディング(リードボンディング)時には、常に論理値“0”をボンディング判定器26に出力する。
【0020】
ボンディング判定器26は、第1ボンディング点としての半導体チップ13上の電極12又は第2ボンディング点としてのリードフレーム11のリード14にボンディング接続したとき、不着検出タイミング、すなわちボンディング装置からの指令により不着検出モードでの検出を行う状態で論理積器25からの出力信号を読みとり、不着検出を行う設定となっている。
【0021】
【特許文献1】特開2000−260808号公報(4〜5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、上記従来のワイヤボンディング装置における不着検出装置では、DC専用不着検出装置及びAC専用不着検出装置のいずれにおいてもAC又はDCの出力電圧に対する検出電圧の差を判定することにより正常着であるか不着であるかを判別している。この方式では、DC専用不着検出とAC専用不着検出と共に、検出電圧の波形が定常状態になってからの電圧値を検出電圧としている。このため、検出対象物である半導体チップ及びリードフレームが一定以上の大きさの静電容量(例えば100PF程度)を有していなければ、出力電圧と検出電圧との間に正常着であるか不着であるかを判定するのに必要な差が生じにくい。言い換えると、数PFから数十PFといった極めて低い静電容量しか有さない検出対象物については、従来の不着検出装置で不着検出を行うことができない。また、検出対象物の低静電容量化はますます進む方向にある。
【0023】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、静電容量が低いデバイスに対しても不着検出が可能なワイヤボンディング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明に係るワイヤボンディング装置は、半導体チップの電極とリードフレームのリードをワイヤによって接続するワイヤボンディング装置又は半導体チップのパッドにバンプをボンディングするワイヤボンディング装置において、
DC電圧をワイヤ又はバンプに印加するDC印加手段と、
前記ワイヤ又はバンプからの検出電圧を検出する電圧検出手段と、
前記DC電圧を印加した時から前記検出電圧が検出しきい値電圧に達した時又は超えた時までの第1時間を検出する時間検出手段と、
前記第1時間と、ボンディングが不着のワイヤ又はバンプに前記DC電圧を印加した時から前記検出しきい値電圧に達するまで又は超えるまでの第2時間とを比較することにより、ワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたか否かを判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
【0025】
上記本発明に係るワイヤボンディング装置では、ボンディング対象物が静電容量を有するため、正常着である場合の検出しきい値電圧に達した時又は超えた時までの第1時間が、不着である場合の検出しきい値電圧に達するまで又は超えるまでの第2時間に比べて長いことを利用する。これにより、検出対象物の静電容量が極めて小さい場合でも第1時間と第2時間とを比較することができ、それにより不着検出が可能となる。
【0026】
また、本発明に係るワイヤボンディング装置において、前記DC印加手段は、DCパルス信号をワイヤ又はバンプに印加する手段であることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係るワイヤボンディング装置において、前記判定手段は、前記第1時間が前記第2時間より長ければワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたと判定し、前記第1時間が前記第2時間に比べて長くなければワイヤ又はバンプが不着であると判定する手段であることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係るワイヤボンディング装置において、前記DC印加手段はCPU、D/Aコンバータ及び抵抗を有し、
前記電圧検出手段は増幅器及びCPUを有し、
前記時間検出手段は、前記DC電圧を印加した時からの時間をカウントするタイマー回路、前記検出電圧と前記検出しきい値電圧を比較する比較回路、及び、前記検出電圧が前記検出しきい値電圧を超えたか否かを判定する判定回路を有し、
前記判定手段は、前記第1時間と前記第2時間を比較する比較回路、前記第1時間が前記第2時間より長いか短いかを判定する判定回路、及びCPUを有していることも可能である。
【0029】
また、本発明に係るワイヤボンディング装置においては、前記検出しきい値電圧及び前記第2時間を予め設定しておき、前記DC印加手段によりDC電圧をワイヤ又はバンプに印加し、前記電圧検出手段によりワイヤ又はバンプからの検出電圧を検出し、前記時間検出手段により前記第1時間を検出し、前記判定手段により前記第1時間と前記第2時間とを比較してワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたか否かを判定することをソフトウエア制御により行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、静電容量が低いデバイスに対しても不着検出が可能なワイヤボンディング装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態による不着検出装置を模式的に示すブロック図である。図2は、図1に示す不着検出基板とワイヤボンディング装置との配線による接続関係を概略的に示す図である。なお、従来のワイヤボンディング装置と同一の構造及び機能を有する部分については要部のみを説明し、詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施の形態による不着検出装置は、DCパルス方式によるものであり、検出区間・開始位置などのパラメータ設定項目について、ワイヤ毎に設定できるものである。尚、AC/DC特性の混在しているデバイスに対しても不着検出は可能である。
【0033】
図1に示すように、不着検出装置は、DCパルス方式不着検出基板10、ボンディングCPU基板18及びメインCPU基板19を有している。メインCPU基板19はCPU28を備えており、このCPU28はキーボード31に接続されている。検出区間・開始位置、検出しきい値などのワイヤ毎のパラメータをキーボード31によって入力することができる。
【0034】
ボンディングCPU基板18はI/Oポート32及びCPU29を備えており、CPU29はCPU28に接続されている。
DCパルス方式不着検出基板10は、I/Oポート33、CPU30、比較回路Cとタイマー回路Tと判定回路Jを有する回路群41、増幅器(AMP)37、メモリ34、D/Aコンバータ36及び抵抗40を備えている。
【0035】
I/Oポート33の入力側はCPU30に接続されており、I/Oポート33の出力側はI/Oポート32に接続されている。また、CPU30は回路群41に接続されており、この回路群41は増幅器(AMP)37に接続されている。CPU30はD/Aコンバータ36に接続されており、D/Aコンバータ36は抵抗40に接続されている。また、CPU30はメモリ34に接続されている。
【0036】
出力部38は、図2に示すワイヤ(金線)1に接続されている。また、接地電位(GND)39は、半導体チップ13が載置されたボンディングステージに出力部を介して接続されている。
【0037】
次に、上記不着検出装置によって不着検出を行う方法について図1乃至図4を参照しつつ説明する。
図3は、図1に示す不着検出装置によって不着検出を行う流れを示すフローチャートである。図4は、図1に示す不着検出装置によって不着検出を行う際、出力電圧Eをワイヤに印加してから時間tの経過による検出電圧Vcの変化を示す図である。参照符号42は不着(オープン)波形を示しており、参照符号43は正常着波形を示している。Vc1は不着検出用しきい値電圧を示している。
【0038】
まず、半導体チップとリードとを接続するボンディングを行う前に、半導体チップ13におけるワイヤ毎について、検出区間・開始位置、DCパルス方式、不着検出用しきい値電圧、時間t1などのパラメータ設定項目をキーボード31から入力する。これにより、メインCPU基板19のCPU28にパラメータ設定項目が入力される。
【0039】
尚、不着検出用しきい値電圧は、図1及び図2に示す不着検出装置を備えたワイヤボンディング装置によって予め実測した電圧値を用いる。具体的には、意図的に不着(オープン)であるワイヤボンディングを行い、その際に出力電圧Eをワイヤに印加してから時間t1が経過した時の検出電圧Vcを測定し、この測定した電圧値から不着検出用しきい値電圧Vc1を決定する。この時間t1における検出電圧Vcの測定を1回だけ行い、その測定値を不着検出用しきい値電圧としても良いし、その測定値に所定の電圧値を加算したものを不着検出用しきい値電圧としても良い。また、このような測定を複数回行うことも好ましく、その場合は複数の測定値のうち最も高い電圧値を不着検出用しきい値電圧としても良いし、最も高い電圧値に所定の電圧値を加算したものを不着検出用しきい値電圧としても良いし、また複数の測定値の平均値を不着検出用しきい値電圧としても良いし、前記平均値に所定の電圧値を加算したものを不着検出用しきい値電圧としても良い。
【0040】
次いで、ソフトウエア制御により前記パラメータ設定項目がボンディングCPU基板18のCPU29からI/Oポート32,33を通してDCパルス方式不着検出基板10のCPU30に通知され、メモリ34に格納される。すなわち、検出区間・開始位置設定がボンディングCPU基板18のCPU29からI/Oポート32,33を通してDCパルス方式不着検出基板10のCPU30に通知され(ST11)、DCパルス方式設定がボンディングCPU基板18のCPU29からI/Oポート32,33を通してDCパルス方式不着検出基板10のCPU30に通知され(ST12)、不着検出しきい値電圧設定がボンディングCPU基板18のCPU29からI/Oポート32,33を通してDCパルス方式不着検出基板10のCPU30に通知され(ST13)、時間t1設定がボンディングCPU基板18のCPU29からI/Oポート32,33を通してDCパルス方式不着検出基板10のCPU30に通知され(ST14)、これらのパラメータ設定項目がメモリ34に格納される。そして、不着検出しきい値電圧Vc1についてはメモリ34からCPU30を介して比較回路Cに設定される。
【0041】
次いで、1ワイヤボンディングを行う(ST15)。具体的には、図2に示すワイヤ(金線)1の先端を溶融してボールを形成し、キャピラリ2の先端で保持してキャピラリ2を第1ボンディング点である半導体チップ13の電極12の直上に位置させ、キャピラリ2を下降させてボールを電極12に押し付けて加圧すると同時にキャピラリ2の先端に対してボンディングアームの超音波ホーンを介して超音波振動を印加する。これにより、電極にワイヤ1を接続する。
【0042】
上記のワイヤボンディング時に不着検出を行う(ST16〜ST19)。以下、不着検出方法について詳細に説明する。
半導体チップ13の電極12にDC電圧をステップ状に与えた場合、下記式(1)に示すような関係及び図4に示すような特性がある。ワイヤが電極12に正常にボンディング接続されると検出電圧は図4に示すような正常着波形43となるが、ワイヤが電極12に不着(オープン)であると検出電圧は不着(オープン)波形42となる。これは、ボンディング対象の電極には静電容量が存在するためである。従って、正常にボンディング接続された場合の不着検出用しきい値電圧Vc1に達するまでの時間t2は、不着(オープン)である場合の電圧Vc1に達するまでの時間t1に比べて遅れる。この時間差(t2−t1)は下記式(1)に示す通り静電容量Cに比例するため、検出対象物の静電容量が極めて小さい場合でも時間差を検出することができ、それにより不着検出が可能となる。
【0043】
t1=−R・C・Ln{1−(Vc1/E)} ・・・(1)
但し、Eは印加電圧(出力電圧)であり、Vc1は不着検出用しきい値電圧であり、t1は時間であり、Cは検出対象物の静電容量である。
【0044】
上述した内容を踏まえて、不着検出方法について具体的に説明する。
まず、ソフトウエア制御によりCPU30内部で演算されD/Aコンバータ36、抵抗40を介してDCパルス信号による出力電圧(図4に示す印加電圧E)が出力部38から出力され、このDCパルス信号がワイヤ1を通して半導体チップ13の電極12に印加される。そして、その印加時からの時間t2を図1に示すタイマー回路Tによってカウントする(ST16)。これと同時に、増幅器(AMP)37を通して検出電圧Vcを検出する。この検出電圧Vc1と検出しきい値電圧(不着検出用しきい値電圧Vc1)を比較回路Cによって比較し、検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1を超えたか否か(又は検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1に達したか否か)を判定回路Jによって判定する(ST17)。検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1を超えていない場合(又は検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1に達していない場合)はタイマー回路Tによる時間t2のカウントを続行し、検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1を超えた場合(又は検出電圧Vcが検出しきい値電圧Vc1に達した場合)は時間t2のカウントを終了する(ST18)。これらの処理はソフトウエア制御により行われる。
【0045】
次いで、カウントされた時間t2と予め決められている時間t1を比較回路Cによって比較する。時間t2が時間t1を超える場合は正常着(ボンディング接続されたこと)と判定回路Jによって判断し、時間t2が時間t1を超えていない場合は不着(オープン)と判定回路Jによって判断する(ST19)。この着/不着の結果は、I/Oポートを介してボンディングCPU基板18のCPU29に通知される。ワイヤが不着であると通知された場合、ワイヤボンディング装置を停止するなどのエラー処理が行われる。また、ワイヤが正常着(確実にボンディングされた)と通知された場合、次のワイヤボンディングを行う。
【0046】
尚、本実施の形態では、時間t2のカウント開始(ST16)、検出電圧が検出しきい値電圧を超えたか否か(又は検出電圧が検出しきい値電圧に達したか否か)の判定(ST17)、時間t2のカウント終了(ST18)のステップを1回のみ、すなわちDCパルス信号をワイヤに印加し、その印加時からの時間t2のカウントを1回のみ行っているが、1ワイヤボンディングにおいてDCパルス信号をワイヤに複数回印加し、時間t2のカウントを複数回行うことも可能である。この場合は、複数の時間t2のうち最も短い時間t2を時間t1と比較しても良いし、最も短い時間t2から所定の時間を差引いた時間を時間t1と比較しても良いし、また複数の時間t2の平均時間を時間t1と比較しても良いし、前記平均時間に所定の時間を差引いた時間を時間t1と比較しても良い。
【0047】
ワイヤが確実にボンディングされたと判断した場合、次のワイヤボンディングについてパラメータ設定項目の設定をソフトウエア制御により行い(ST11〜ST14)、ワイヤボンディングを行い(ST15)、ワイヤボンディング時に不着検出を行う(ST16〜ST19)。所定のワイヤ数まで繰り返し、すべてのワイヤボンディングが行われたらワイヤボンディング作業を終了する(ST20)。
【0048】
上述したワイヤボンディング及び不着検出は、図5に示す第1ボンディング点15である半導体チップの電極へのワイヤボンディングについて説明しているが、図5に示す第2ボンディング点16であるリードへのワイヤボンディングについても上述した不着検出方法とほぼ同様に不着検出することが可能であり、またワイヤ1の先端を溶融してボールを形成し、このボールを半導体チップの電極又はパッドにバンプとして接続する場合についても上述した不着検出方法とほぼ同様に不着検出することが可能である。
【0049】
上記実施の形態によれば、正常にボンディング接続された場合の不着検出用しきい値電圧Vc1に達するまでの時間t2が、不着(オープン)である場合の電圧Vc1に達するまでの時間t1に比べて遅れることを利用する。これにより、検出対象物の静電容量が極めて小さい場合でも時間差(t2−t1)を検出することができ、それにより不着検出が可能となる。よって、従来の不着検出装置では不着検出できないような極めて低い静電容量しか有さない検出対象物についても不着検出が可能となる。
【0050】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、本実施の形態では、検出区間・開始位置などのパラメータ設定項目をワイヤ毎に設定しているが、全てのワイヤについてパラメータ設定項目を統一的に設定して本発明を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態による不着検出装置を模式的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す不着検出基板とワイヤボンディング装置との配線による接続関係を概略的に示す図である。
【図3】図1に示す不着検出装置によって不着検出を行う流れを示すフローチャートである。
【図4】図1に示す不着検出装置によって不着検出を行う際、出力電圧Eをワイヤに印加してから時間tの経過による検出電圧Vcの変化を示す図である。
【図5】(a)乃至(d)は、ワイヤボンディング装置によるワイヤボンディングを行う工程を説明する図である。
【図6】従来の不着検出方法を示すフローチャートである。
【図7】従来のワイヤボンディング装置のDC専用不着検出装置を示すブロック図である。
【図8】従来のワイヤボンディング装置のAC専用不着検出装置の具体的な構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ワイヤ、2…キャピラリ、3…ワイヤカットクランプ、4…放電電極、5…交流ブリッジ回路、5a…交流発生器、5b…同軸ケーブル、5c1…第1直列回路、5c2…第2直列回路、X…第1接続点、Y…第2接続点、6…差動増幅器、7…トランス、8…絶対値変換器、9…第1レベル弁別器、10…DCパルス方式不着検出基板、11…リードフレーム、12…半導体チップの電極、13…半導体チップ、14…リード、15…第1ボンディング点、16…第2ボンディング点、17…ボンディングステージ、18…ボンディングCPU基板、19…メインCPU基板、20…ボール、21…ワイヤスプール、22…スプールワイヤ端、23…ローパスフィルタ、24…第2レベル弁別器、25…論理積器、26…ボンディング判定器、27…ボンディング検出切替器、28,29,30…CPU、31…キーボード、32,33…I/Oポート、34…メモリ、35…A/Dコンバータ、36…D/Aコンバータ、37…増幅器(AMP)、38…出力部、39…接地電位(GND)、40…抵抗、41…回路群、C…比較回路、T…タイマー回路、J…判定回路、42…不着(オープン)波形、43…正常着波形、44…DC用不着検出基板、45…直流発生器、46…抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの電極とリードフレームのリードをワイヤによって接続するワイヤボンディング装置又は半導体チップのパッドにバンプをボンディングするワイヤボンディング装置において、
DC電圧をワイヤ又はバンプに印加するDC印加手段と、
前記ワイヤ又はバンプからの検出電圧を検出する電圧検出手段と、
前記DC電圧を印加した時から前記検出電圧が検出しきい値電圧に達した時又は超えた時までの第1時間を検出する時間検出手段と、
前記第1時間と、ボンディングが不着のワイヤ又はバンプに前記DC電圧を印加した時から前記検出しきい値電圧に達するまで又は超えるまでの第2時間とを比較することにより、ワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたか否かを判定する判定手段と、
を具備することを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記DC印加手段は、DCパルス信号をワイヤ又はバンプに印加する手段である請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第1時間が前記第2時間より長ければワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたと判定し、前記第1時間が前記第2時間に比べて長くなければワイヤ又はバンプが不着であると判定する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記DC印加手段はCPU、D/Aコンバータ及び抵抗を有し、
前記電圧検出手段は増幅器及びCPUを有し、
前記時間検出手段は、前記DC電圧を印加した時からの時間をカウントするタイマー回路、前記検出電圧と前記検出しきい値電圧を比較する比較回路、及び、前記検出電圧が前記検出しきい値電圧を超えたか否かを判定する判定回路を有し、
前記判定手段は、前記第1時間と前記第2時間を比較する比較回路、前記第1時間が前記第2時間より長いか短いかを判定する判定回路、及びCPUを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記検出しきい値電圧及び前記第2時間を予め設定しておき、前記DC印加手段によりDC電圧をワイヤ又はバンプに印加し、前記電圧検出手段によりワイヤ又はバンプからの検出電圧を検出し、前記時間検出手段により前記第1時間を検出し、前記判定手段により前記第1時間と前記第2時間とを比較してワイヤ又はバンプが正常にボンディング接続されたか否かを判定することをソフトウエア制御により行う請求項1乃至4のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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