説明

ワイヤボンディング装置

【課題】ワイヤボンディング装置においてフリーエアーボール表面の酸化を抑制する。
【解決手段】ワイヤを各電極に接合するキャピラリ31と、キャピラリ31の先端が抜き差しされる貫通穴22が設けられた水平板21と、水平板21の上面21aに沿って貫通穴22の中心22cに向って酸化防止ガスを吹き出す第1の酸化防止ガス流路12と、水平板21の上面21aに沿って貫通穴22の中心22cに向って第1の酸化防止ガス流路12と交差する方向から酸化防止ガスを吹き出す第2の酸化防止ガス流路13と、を備え、水平板21の各酸化防止ガス流路12,13が配置されていない領域は、水平板21の上面21aの気体が水平板21の縁23〜25の外側に流出できるように開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置によって半導体チップの電極と基板の電極とを金属ワイヤによって接続する場合、ボンディングツールの先端から延出した金属ワイヤとトーチ電極との間でスパークを発生させてフリーエアーボールを形成し、そのフリーエアーボールを一方の電極の上に接合し(ボールボンディング)、ボンディングツールの先端からワイヤを繰り出して他方の電極の上までルーピングし、他方の電極の上にワイヤを接合する方法が用いられている。ワイヤボンディングにおいては、金属ワイヤ或いは形成したフリーエアーボールの表面が酸化してしまうと、金属ワイヤ或いはフリーエアーボールと各電極との接合不良が発生してしまうことから、ワイヤには酸化しない金ワイヤが多く用いられている。
【0003】
一方、近年、銅やアルミなど酸化する金属ワイヤを用いてワイヤボンディングを行うことが提案されている。このように酸化する金属ワイヤを用いてボンディングを行う場合には、金属ワイヤ表面の酸化を抑制することが必要で、フリーエアーボール形成領域やボンディングを行う電極の表面に向って酸化防止ガスを吹き付け、フリーエアーボール形成領域或いは電極近傍の領域を酸化防止ガス雰囲気として金属ワイヤ表面の酸化を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、フリーエアーボール形成領域の周囲を囲むようにガスカバーを配置し、ガスカバーの中に取り付けられた多孔質部材を通して周囲から酸化防止ガスをガスカバー中央のキャビティに吹き出し、キャビティを酸化防止ガス雰囲気とし、その中でワイヤとトーチ電極との間にスパークを発生させてフリーエアーボールを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294975号公報
【特許文献2】特開2008−130825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているように、パイプの先端からフリーエアーボール形成領域に向って酸化防止ガスを吹き付ける場合、フリーエアーボール形成領域を酸化防止ガスの雰囲気に保持するためには、酸化防止ガスの流量を多くすることが必要となる。このため、フリーエアーボール形成の間に酸化防止ガスによってボールが冷却されてしまい、良好なフリーエアーボールを形成することができないという問題があった。
【0007】
一方、ワイヤボンディング装置はボンディングツールを上下に移動させてワイヤボンディングを行うものである。このため、特許文献2に記載されているように、フリーエアーボール形成領域の周囲をガスカバーで取り囲み、その中に酸化防止ガスを吹き出してガスカバー中央のキャビティ内を酸化防止ガス雰囲気とする場合、キャビティの中をボンディングツールが上下方向に移動することとなる。
【0008】
フリーエアーボールを形成する際には、ボンディングツールの先端をキャビティの中まで上昇させた上、先端に延出させたワイヤとトーチ電極との間にスパークを発生させることとなる。しかし、ボンディングツールを上昇させると、ボンディングツールの周囲に滞留している空気がボンディングツールに随伴してキャビティの中に入りこんでしまう。酸化防止ガスをキャビィティの周囲から吹き出しても、キャビティの中に入り込んだ空気は、ガスカバーに遮られて容易に外部に排出されず、キャビティ内部に酸素を含む空気雰囲気が残ってしまい、この空気雰囲気の中でスパークが行われる場合がある。このため、特許文献2に記載された従来技術では、フリーエアーボール形成の際の金属表面の酸化を抑制できず、銅等の空気中で酸化する金属ワイヤを用いてワイヤボンディングを行う場合のボンディング品質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、ワイヤボンディング装置においてフリーエアーボール表面の酸化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワイヤボンディング装置は、半導体チップの電極と基板の電極との間をワイヤによって接続するワイヤボンディング装置であって、ワイヤを各電極に接合するボンディングツールと、ボンディングツールの先端が抜き差しされる貫通穴が設けられた水平板と、水平板の上面に沿って貫通穴の中心に向って酸化防止ガスを吹き出す第1の酸化防止ガス流路と、水平板の上面に沿って貫通穴の中心に向って第1の酸化防止ガス流路と交差する方向から酸化防止ガスを吹き出す第2の酸化防止ガス流路と、を備え、水平板の各酸化防止ガス流路が配置されていない領域は、水平板上面の気体が水平板の縁の外側に流出できるように開放されていること、を特徴とする。
【0011】
本発明のワイヤボンディング装置において、第1の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、第2の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、各吹き出し口の各周縁の間とには、その近傍に酸化防止ガスが滞留するように水平板の上面に設けられた壁面が延びていること、としても好適であるし、壁面は、水平板に設けられた貫通穴の周縁から離間して設けられていること、としても好適である。
【0012】
本発明のワイヤボンディング装置において、各酸化防止ガス流路の各吹き出し口に接続する部分は、それぞれ水平板の上面に沿って延びる直線管路であり、各直線管路の内部には、酸化防止ガスの偏流を抑制するガイドベーンがそれぞれ設けられていること、としても好適であるし、各ガイドベーンは、平板を十字形に組み合わせて直線管路の断面を4つのセクションに区分し、平板は、前記水平板の上面に対して傾斜して配置されていること、としても好適である。
【0013】
本発明のワイヤボンディング装置において、前記水平板の下面から斜め下方向に向かって前記貫通穴の中心に酸化防止ガスを吹き出す第3の酸化防止ガス流路と、を備えること、としても好適であるし、前記第1の酸化防止ガス流路と、前記第2の酸化防止ガス流路と、前記第3の差酸化防止ガス流路と、前記水平板とは、共通の基体部に設けられ、前記基体部は、前記第1の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記第2の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記各吹き出し口の各周縁の間で、前記水平板の上面に配置され、その近傍に酸化防止ガスが滞留する壁面を有していること、としても好適であるし、前記第3の酸化防止ガス流路は、前記ボンディングツールの先端に向かって酸化防止ガスを吹き出すこと、としても好適である。
【0014】
本発明のワイヤボンディング装置において、各酸化防止ガス流路のいずれか一方の酸化防止ガス流路の吹き出し口から水平板の貫通穴に向かって延び、ボンディングツール先端に延出したワイヤとの間にスパークを発生させてフリーエアーボールを形成するトーチ電極が設けられていること、としても好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ワイヤボンディング装置においてフリーエアーボール表面の酸化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットの平面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットに設けられるガイドベーンの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットに設けられる酸化防止ガス流路の断面を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す立面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す立面図である。
【図7】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるワイヤボンディング装置の酸化防止ユニットの平面図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す立面図である。
【図11】本発明の他の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す立面図である。
【図12】本発明の他の実施形態におけるワイヤボンディング装置と酸化防止ユニットの動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように本実施形態のワイヤボンディング装置100は、半導体チップ或いは基板の電極にワイヤを接合するボンディングツールであるキャピラリ31と、キャピラリ31を上下方向に移動させる図示しない超音波ホーンに取り付けられたボンディングアーム32と、キャピラリ31の先端に延出させたテールワイヤ51から図6(b)に示すフリーエアーボール52を形成する領域を酸化防止ガス雰囲気に保持し、フリーエアーボール52の表面の酸化を防止する酸化防止ユニット10とを備えている。ボンディングアーム32と、酸化防止ユニット10は図示しないボンディングヘッドに取り付けられ、一体となって水平方向に移動するよう構成されている。なお、図1において垂直方向はZ方向で、XYは互いに直角な水平方向を示す。以下、各図において同様である。
【0018】
酸化防止ユニット10は、樹脂又は絶縁体から作られた基体部である本体11と、本体11を図示しないボンディングヘッドに取り付ける取り付けアームと40を含んでいる。図1、図2に示す様に、本体11は、略直方体形状の第1ブロック11aと、平面が略台形形状の第2ブロック11bと水平板21とが全体としてL字型に組み合わされたもので、第1ブロック11aの第2ブロック11b側の角部と第2ブロック11bの長辺側の角部とは一体となって成形され、その凹部側の第1ブロック11aと第2ブロック11bの各外側面は曲面11eによって接続されている。また、第1ブロック11aの垂直壁面11cと第2ブロック11bの斜辺側の垂直壁面11dとは隣接して配置されている。第1ブロック11aの垂直壁面11cと第2ブロック11bの斜辺側の垂直壁面11dとからは、第1ブロック11aの底面と第2ブロック11bの底面とを接続する水平板21が各垂直壁面11c,11dに垂直に、即ち水平方向(XY方向)に延びている。つまり、本体11は、第1ブロック11aと第2ブロック11bとがそれぞれ図2に示す直交する各中心線61(X方向中心線),62(Y方向中心線)の方向に延びる各腕を構成し、水平板21は各腕の交差部分を接続するように配置され、略直方体形状の第1ブロック11aと、平面が略台形形状の第2ブロック11bと水平板21とが全体としてL字型に組み合わされているものである。また、図2に示す様に、水平板21の貫通穴22は、その中心22cが第1ブロック11aの中心線61(X方向中心線)と第2ブロック11bの中心線62(Y方向中心線)との交点に位置するように配置されている。また、図1、図2に示す様に、キャピラリ31は、その中心が貫通穴22の中心22cとなるように配置されている。
【0019】
第1ブロック11aは、図2に示す中心線61(X方向中心線)の方向に延びる直線状の第1酸化防止ガス流路12を備えている。図3に示す様に、第1酸化防止ガス流路12は、第1ブロック11aの水平板21に対する垂直壁面11cに中心線61(X方向中心線)の方向に延びるよう設けられた第1穴14aの中に、ガイドベーンアセンブリ14bを嵌め込んだものである。ガイドベーンアセンブリ14bは、円筒状の外筒14cと平板を十字型に交差させたガイドベーン14とを含んでいる。ガイドベーンアセンブリ14bを第1穴14aの内面に嵌め込むと、ガイドベーンアセンブリ14bのガイドベーン14は、4つの扇形断面の流路セクション12aから12dを構成する。ガイドベーンアセンブリ14bは、十字型のガイドベーン14が水平板21の上面21aから45度ずつ傾斜するように第1ブロック11aの第1穴14aに嵌め込まれているので、4つの扇形の流路セクション12a〜12dの内、流路セクション12a,12cは垂直方向に並び、流路セクション12b,12dは水平方向に並んでいる。そして、各流路セクション12aから12dは全体として第1酸化防止ガス流路12を構成する。また、図3に示す様に、第1酸化防止ガス流路12の垂直壁面11cと反対側には第1酸化防止ガス流路12に接続され、第1ブロック11aの斜め上方向に延びる第1酸化防止ガス供給管18が接続されている。そして、図1、図2に示すように、第1酸化防止ガス流路12の第1ブロック11aの垂直壁面11cに対する開口は水平板21の貫通穴22に向って酸化防止ガスを吹き出す第1酸化防止ガス吹き出し口16となる。
【0020】
第2ブロック11bは、図2に示す中心線62(Y方向中心線)の方向に延びる直線状の第2酸化防止ガス流路13を備えている。図4に示す様に、第2酸化防止ガス流路13には、第2ブロック11bの水平板21に対する垂直壁面11dに、中心線62(Y方向中心線)の方向に延びるように設けられた第2穴15aの中に、外筒15cに傾斜させた平板を十字に組み合わせたガイドベーン15が取り付けられたガイドベーンアセンブリ15bが嵌め込まれている。ガイドベーン15は、4つの扇形断面の流路セクション13aから13dを構成し、各流路セクション13aから13dは全体として第2酸化防止ガス流路13を構成する。また、図2、図4に示す様に、第2酸化防止ガス流路13の垂直壁面11dと反対側には第2酸化防止ガス流路13に接続され、第2ブロック11bの斜め上方向に延びる第2酸化防止ガス供給管19が接続されている。そして、第2酸化防止ガス流路13の第2ブロック11bの垂直壁面11dに対する開口は水平板21の貫通穴22に向って酸化防止ガスを吹き出す第2酸化防止ガス吹き出し口17となる。図2に示す様に、垂直壁面11dは中心線62(Y方向中心線)に対して傾斜しているので、第2酸化防止ガス吹き出し口17は、図1に示す様に楕円形状となっている。
【0021】
図4に示す様に、第2穴15aは、円筒形状で、下側に半円形状の断面の溝15dが設けられている。図1、図2に示す様に、溝15dは第2ブロック11bの中心線62(Y方向中心線)に沿って伸び、溝15dの中には、キャピラリ31の先端から延出したテールワイヤ51との間でスパークを発生させて図6(b)に示すフリーエアーボール52を形成するトーチ電極35が取り付けられている。トーチ電極35は、第2ブロック11bの垂直壁面11dと反対側の取り付けアーム40に延び、取り付けアーム40と第2ブロック11bとを貫通するトーチ電極取り付け穴36から外部に延出し、外部の電源装置に接続されている。また、トーチ電極35は、このトーチ電極取り付け穴36を通して抜き差し可能であり、酸化防止ユニット10の他の部分を分解せずにトーチ電極35のみを交換することができる。
【0022】
また、図4に示す様に、十字型のガイドベーン15によって仕切られた4つの扇形の流路セクション13a〜13dの内、下側の流路セクション13aは、その下部をトーチ電極が貫通するが、溝15dの分だけ流路セクション13aの断面積が大きくなっているので、他の流路セクション13b〜13dと同様の酸化防止ガスを流すことができるよう構成されている。
【0023】
以上のように構成されたワイヤボンディング装置100の動作について図5から図7を参照して説明する。図5は、ボンディングステージ41の上に吸着された基板42の電極43の上にワイヤ50を接合した状態を示している。この状態では、キャピラリ31の先端は、貫通穴22を通って電極43の表面に達しており、上下方向のキャピラリ31の中心線34と貫通穴22の中心線63(Z方向中心線)とは同一軸上で、電極43の中心を通る位置となっている。また、図5に実線の矢印で示す様に、第1、第2酸化防止ガス供給管18,19からは、酸化防止ガスがそれぞれ第1、第2酸化防止ガス流路12,13に供給され、酸化防止ガスは、第1、第2酸化防止ガス流路12,13の各吹き出し口16,17から貫通穴22の中心22cに向って吹き出している。
【0024】
図6(a)に示す様に、ワイヤ50の電極43への接合が終了すると、ボンディングアーム32が回転し、ボンディングアーム32の先端に取り付けられているキャピラリ31は上方向に上昇する。キャピラリ31が上昇するとキャピラリ31の先端にはテールワイヤ51が延出される。テールワイヤ51が所定の長さとなったら、図示しないクランパによってワイヤを把持してキャピラリ31と一緒に上昇させることにより、ワイヤを切断する。これにより、キャピラリ31の先端には所定の長さのテールワイヤ51が延出した状態となる。そして、更に、キャピラリ31の先端が水平板21の上面21aよりも上側で、テールワイヤ51の下端がトーチ電極35の中心位置近傍となるまでキャピラリ31を上昇させる。
【0025】
キャピラリ31を上昇させると、キャピラリ31の周囲の空気は、図6(a)に示す点線の矢印のようにキャピラリ31に随伴して貫通穴22を通って水平板21の上面21aまで上昇してくる。
【0026】
一方、図6(a)に実線の矢印で示す様に、第1、第2酸化防止ガス流路12,13の各吹き出し口16,17から水平板21の上面21aに沿って貫通穴22の中心22cに向って酸化防止ガスが吹き出している。図7に示す様に各吹き出し口16,17から吹き出した酸化防止ガスは、それぞれ水平板21の上側で、各中心線61(X方向中心線),62(Y方向中心線)に沿った方向に進み、貫通穴22の上でぶつかり、その後、酸化防止ガス流路や垂直壁面が配置されておらず開放されている水平板21の中心線61(X方向中心線)に垂直な縁25と、中心線62(Y方向中心線)に垂直な縁23と、中心線61(X方向中心線),62(Y方向中心線)に対して傾斜している縁24とから水平板21の外側に向かって流れていく。この際、図6(a)、図7の点線矢印で示す様に、貫通穴22を通って水平板21の上面21aの上側に上昇してきた空気は、実線の矢印で示す酸化防止ガスによって各垂直壁面11c,11dによって囲まれず開放されている各縁23,24,25から水平板21の外側に流出していく。また、各吹き出し口16,17から吹き出した酸化防止ガスは、水平板21に対して垂直な壁面となっている第1、第2ブロック11a,11bの各垂直壁面11c,11dによって滞留領域が形成され、図6(a)、図7に示す様に、水平板21の上面21aから垂直壁面11c,11dの上端の間の高さで、貫通穴22の領域と、貫通穴と垂直壁面11c,11dとの間の領域を含むように水平方向に広がる酸化防止ガス雰囲気領域70を形成する。
【0027】
このように、水平板21の上側に入り込んだ空気を酸化防止ガスで水平板21の各縁23〜25の外側に排出した上で酸化防止ガス雰囲気領域70が形成されることから酸化防止ガス雰囲気領域70は、空気を含まない領域とすることができる。そして、この酸化防止ガス雰囲気領域70の中でトーチ電極35とキャピラリ31の先端のテールワイヤ51と間にスパークを発生させて図6(b)に示す様にキャピラリ31の先端にフリーエアーボール52を形成すると、酸化防止ガス雰囲気領域70の中には酸素を含む空気が混入していないので、効果的にフリーエアーボール52の表面の酸化を抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態では、第1、第2酸化防止ガス流路12,13は、それぞれ十字型のガイドベーン14,15が水平板21の上面21aから45度ずつ傾斜するよう配置されているので、4つの扇形の流路セクション12a〜12d,13a〜13dの内、流路セクション12a,12c及び13a,13cは垂直方向に並び、流路セクション12b,12d及び13b,13dは水平方向に並んでいる。このように各流路セクション12a〜12dが配置されているので、本実施形態のように第1酸化防止ガス供給管18が第1酸化防止ガス流路12に対して垂直方向或いは水平方向に対して傾斜して接続されていても、各流路セクション12a〜12dを流れる酸化防止ガスの流量は略同一の流量となる。また、同様に、第2酸化防止ガス供給管19が第2酸化防止ガス流路13に対して垂直方向或いは水平方向に対して傾斜して接続されていても、第2酸化防止ガス流路13の各流路セクション13a〜13dを流れる酸化防止ガスの流量は略同一の流量となる。これによって、各吹き出し口16,17から貫通穴22に向って吹き出す酸化防止ガスに、例えば、ガスが下側にのみ偏って流れるような偏流が発生することを効果的に抑制できるので、水平板21の上側の酸化防止ガス雰囲気領域70の高さの幅を広げることができ、様々なボンディング条件に対しても効果的にフリーエアーボール52の表面の酸化を抑制し、銅やアルミ等の空気中で酸化する金属ワイヤを用いたボンディングの品質を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、各吹き出し口16,17はXY方向に直交することとして説明したが、各吹き出し口16,17は互いに直交していなくとも、各吹き出し口から貫通穴22の中心22cに向って酸化防止ガスを吹き出し、貫通穴22の上でぶつかるように交差していればよい。
【0030】
次に、図8から図12を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。図1から図7を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。図8に示すように、本実施形態は、基体部である本体11の第1ブロック11aと第2ブロック11bと反対方向に向かって突出する第3ブロック11fを備えている。第3ブロック11fの上側には、第3酸化防止ガス供給管81が取り付けられ、図9に示すように、第3ブロック11fには、第3ブロック11fの上面から下面11gに向かって斜めに貫通する第3の酸化防止ガス流路82が設けられ、図9に示すように、第3ブロック11fの下面11gの開口は、下面11gから斜め下方向に向かって酸化防止ガスを噴出する第3酸化防止ガス吹き出し口83となっている。そして、第3ブロック11fの下面11gは、水平板21の下面同一面となっている。図9に示すように、第3酸化防止ガス流路82の中心線84は、ボンディングアーム32の伸びる方向と略同様の方向で、図10に示すように貫通穴22の中心線64の方向で、キャピラリ31の先端あるいはキャピラリ31と電極43の接点近傍に向かうように構成されている。このため、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出した酸化防止ガスは、キャピラリ31の接する電極43の近傍に向かって吹き出される。
【0031】
以上のように構成されたワイヤボンディング装置100の動作について図10から図12を参照して説明する。図10に実線の矢印で示す様に、第1、第2、第3酸化防止ガス供給管18,19,81からは、酸化防止ガスがそれぞれ第1、第2、第3酸化防止ガス流路12,13,82に供給され、酸化防止ガスは、第1、第2、第3酸化防止ガス流路12,13,82の各吹き出し口16,17,83から吹き出す。第1、第2酸化防止ガス吹き出し口12,13から吹き出した酸化防止ガスは、水平板21の上面21aに沿って貫通穴22の中心22cに向かい、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出した酸化防止ガスは、貫通穴22の中心でキャピラリ31が接する電極43の近傍に向かって吹き出される。そして、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出した酸化防止ガスは、水平板21の下側に滞留し、キャピラリ31の先端と電極43の近傍に酸化防止ガス雰囲気領域75を形成する。
【0032】
図11(a)に示す様に、ワイヤ50の電極43への接合が終了すると、ボンディングアーム32が回転し、ボンディングアーム32の先端に取り付けられているキャピラリ31は上方向に上昇し、キャピラリ31の先端には所定の長さのテールワイヤ51が延出した状態となる。そして、更に、キャピラリ31の先端が水平板21の上面21aよりも上側で、テールワイヤ51の下端がトーチ電極35の中心位置近傍となるまでキャピラリ31を上昇させる。
【0033】
先に図1から図7を参照して説明した実施形態では、図6(a)に示したように、キャピラリ31を上昇させると、キャピラリ31の周囲の空気は、図6(a)に示す点線の矢印のようにキャピラリ31に随伴して貫通穴22を通って水平板21の上面21aまで上昇してくるが、本実施形態では、図10を参照して説明したように、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出された酸化防止ガスにより、水平板21の下面には酸化防止ガス雰囲気領域75が形成されている。このため、図11(a)に示すようにキャピラリ31を上昇させると、図11(a)の実線で示すように、水平板21の下面に滞留していた酸化防止ガスがキャピラリ31に随伴して貫通穴22を通って水平板21の上面21aに吹き出す。
【0034】
また、図11(a)に実線の矢印で示す様に、第1、第2酸化防止ガス流路12,13の各吹き出し口16,17から水平板21の上面21aに沿って貫通穴22の中心22cに向って酸化防止ガスが吹き出している。図12に示す様に各吹き出し口16,17から吹き出した酸化防止ガスは、それぞれ水平板21の上側で、各中心線61(X方向中心線),62(Y方向中心線)に沿った方向に進み、貫通穴22の上でぶつかり、その後、酸化防止ガス流路や垂直壁面が配置されておらず開放されている水平板21の中心線61(X方向中心線)に垂直な縁25と、中心線62(Y方向中心線)に垂直な縁23と、中心線61(X方向中心線),62(Y方向中心線)に対して傾斜している縁24とから水平板21の外側に向かって流れていく。また、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出した酸化防止ガスは、図12の一点鎖線の矢印で示すように、水平板21の下側に入り、貫通穴22を通って図12の実線で示すように、水平板21の上面21aの上側に上昇した後、各垂直壁面11c,11dによって囲まれず開放されている各縁23,24,25から水平板21の外側に流出していく。また、各吹き出し口16,17から吹き出した酸化防止ガスは、水平板21に対して垂直な壁面となっている第1、第2ブロック11a,11bの各垂直壁面11c,11dによって滞留領域が形成され、図10(a)、図12に示す様に、水平板21の上面21aから垂直壁面11c,11dの上端の間の高さで、貫通穴22の領域と、貫通穴と垂直壁面11c,11dとの間の領域を含むように水平方向に広がる酸化防止ガス雰囲気領域70を形成する。
【0035】
このように、第3酸化防止ガス吹き出し口83から吹き出した酸化防止ガスによって予め水平板21の下側に酸化防止ガス雰囲気領域75を形成しておくことによってキャピラリ31の上昇の際に水平板21の上面21aに空気が回りこむことを抑制しつつ水平板21aの上側に酸化防止ガス雰囲気領域70が形成されることから酸化防止ガス雰囲気領域70に、空気が混入することを効果的に抑制することができる。そして、この酸化防止ガス雰囲気領域70の中でトーチ電極35とキャピラリ31の先端のテールワイヤ51との間にスパークを発生させて図11(b)に示す様にキャピラリ31の先端にフリーエアーボール52を形成すると、酸化防止ガス雰囲気領域70の中には酸素を含む空気が混入していないので、効果的にフリーエアーボール52の表面の酸化を抑制することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、第1ブロック11aの第2ブロック11bと反対側に第3ブロック11fを設け、第3酸化防止ガス流路82の中心線84がボンディングアーム32の伸びる方向と略同様の方向に取り付けられていることとして説明したが、第3酸化防止ガス吹き出し口83の方向が貫通穴22の中心で、キャピラリ31が電極43に接する位置の近傍に向かうように配置してあれば、第3酸化防止ガス吹き出し口83の方向は、例えば、Y方向の中心線23に沿った方向としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 酸化防止ユニット、11 本体、11a 第1ブロック、11b 第2ブロック、11c,11d 垂直壁面、11e 曲面、11f 第3ブロック、11g 下面、12 第1酸化防止ガス流路、12a〜12d,13a〜13d 流路セクション、13 第2酸化防止ガス流路、14,15 ガイドベーン、14a 第1穴、14b,15b ガイドベーンアセンブリ、14c,15c 外筒、15a 第2穴、15d 溝、16,17 吹き出し口、18 第1酸化防止ガス供給管、19 第2酸化防止ガス供給管、21 水平板、21a 上面、22 貫通穴、22c 中心、23,24,25 縁、31 キャピラリ、32 ボンディングアーム、34,61,62,63 中心線、35 トーチ電極、36 トーチ電極取り付け穴、40 取り付けアーム、41 ボンディングステージ、42 基板、43 電極、50 ワイヤ、51 テールワイヤ、52 フリーエアーボール、70,75 酸化防止ガス雰囲気領域、81 第3酸化防止ガス供給管、82 第3酸化防止ガス流路、83 第3酸化防止ガス吹き出し口、100 ワイヤボンディング装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの電極と基板の電極との間をワイヤによって接続するワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤを前記各電極に接合するボンディングツールと、
前記ボンディングツールの先端が抜き差しされる貫通穴が設けられた水平板と、
前記水平板の上面に沿って前記貫通穴の中心に向って酸化防止ガスを吹き出す第1の酸化防止ガス流路と、
前記水平板の上面に沿って前記貫通穴の中心に向って前記第1の酸化防止ガス流路と交差する方向から酸化防止ガスを吹き出す第2の酸化防止ガス流路と、を備え、
前記水平板の前記各酸化防止ガス流路が配置されていない領域は、前記水平板上面の気体が前記水平板の縁の外側に流出できるように開放されていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイボンディング装置であって、
前記第1の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記第2の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記各吹き出し口の各周縁の間とには、その近傍に酸化防止ガスが滞留するように前記水平板の上面に設けられた壁面が延びていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイボンディング装置であって、
前記壁面は、前記水平板に設けられた前記貫通穴の周縁から離間して設けられていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記各酸化防止ガス流路の前記各吹き出し口に接続する部分は、それぞれ前記水平板の上面に沿って延びる直線管路であり、
前記各直線管路の内部には、酸化防止ガスの偏流を抑制するガイドベーンがそれぞれ設けられていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記各ガイドベーンは、平板を十字形に組み合わせて前記直線管路の断面を4つのセクションに区分し、
前記平板は、前記水平板の上面に対して傾斜して配置されていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記水平板の下面から斜め下方向に向かって前記貫通穴の中心に酸化防止ガスを吹き出す第3の酸化防止ガス流路と、を備えること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記第1の酸化防止ガス流路と、前記第2の酸化防止ガス流路と、前記第3の酸化防止ガス流路と、前記水平板とは、共通の基体部に設けられ、
前記基体部は、前記第1の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記第2の酸化防止ガス流路の吹き出し口の周縁と、前記各吹き出し口の各周縁の間で、前記水平板の上面に配置され、その近傍に酸化防止ガスが滞留する壁面を有していること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記第3の酸化防止ガス流路は、前記ボンディングツールの先端に向かって酸化防止ガスを吹き出すこと、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記第1、第2の各酸化防止ガス流路のいずれか一方の酸化防止ガス流路の吹き出し口から前記水平板の前記貫通穴に向かって延び、前記ボンディングツール先端に延出したワイヤとの間にスパークを発生させてフリーエアーボールを形成するトーチ電極が設けられていること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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