ワイヤリール支持装置、およびねじ接続部材のロック構造
【課題】簡単な作業で確実にワイヤリールを装着し、ワイヤリールの交換作業も簡単に行うことができるワイヤリール支持装置を提供する。
【解決手段】固定軸1と、固定軸1に回転可能に支持され、先端にねじ部23を有する回転体2と、ねじ部23に螺合されるねじ部32を有するキャップ部材3と、を備え、回転体2の基端にはフランジ22が設けられ、フランジ22とキャップ部材3との間にワイヤリール7を介在させて、回転体2によりワイヤリール7を一体支持するワイヤリール支持装置A1であって、キャップ部材3に設けられた爪514および回転体2に対して相対回転不能とされた孔521を有し、回転体2に対してキャップ部材3を所定量ねじ込んだときに、爪514と孔521との係合により、ねじ部32の緩みを規制するロック機構5と、操作レバー61の操作により爪514と孔521との係合を解除するロック解除機構6とを備える。
【解決手段】固定軸1と、固定軸1に回転可能に支持され、先端にねじ部23を有する回転体2と、ねじ部23に螺合されるねじ部32を有するキャップ部材3と、を備え、回転体2の基端にはフランジ22が設けられ、フランジ22とキャップ部材3との間にワイヤリール7を介在させて、回転体2によりワイヤリール7を一体支持するワイヤリール支持装置A1であって、キャップ部材3に設けられた爪514および回転体2に対して相対回転不能とされた孔521を有し、回転体2に対してキャップ部材3を所定量ねじ込んだときに、爪514と孔521との係合により、ねじ部32の緩みを規制するロック機構5と、操作レバー61の操作により爪514と孔521との係合を解除するロック解除機構6とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤが巻回されたワイヤリールを回転可能に取り付けるためのワイヤリール支持装置、および当該ワイヤリール支持装置に適用可能なねじ接続部材のロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極ガスシールドアーク溶接において、一般に、ワイヤリールに巻回された溶加材としてのワイヤがワイヤ送給装置により所望の送り量で溶接トーチに送り出される。ワイヤ送給装置の近傍には、ワイヤリール支持装置が設けられている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたワイヤリール支持装置は、同文献の図2によく表れているように、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持された回転軸(回転体)と、回転軸の先端にねじ込まれる固定キャップ(キャップ部材)とを備えている。固定軸は、ワイヤ送給装置の近傍に設けられた起立状の支持板に固定されている。回転軸は、固定軸に回転可能に支持されている。回転軸の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられており、このフランジには軸方向に延びる回り止めピンが立設されている。回転軸の先端には、雌ねじからなるねじ部が形成されている。ワイヤリールには、軸方向に延びる回り止め孔が設けられており、この回り止め孔に回転軸の回り止めピンが嵌挿した状態でワイヤリールは回転軸に一体に支持される。固定キャップは、一端部につまみ部を有するとともに、他端部において、回転軸の先端のねじ部に螺合するねじ部が形成されている。
【0004】
ワイヤリールをワイヤリール支持装置に装着する際には、ワイヤリールを回転軸に取り付けた状態で、固定キャップのねじ部を回転軸のねじ部にねじ込む。固定キャップのねじ込み作業は、つまみ部を手で掴んで回すことにより行う。そうすると、ワイヤリールは、回転軸のフランジと固定キャップのつまみ部との間に介在されて、回転軸からの脱落が防止される。ワイヤ送給装置によりワイヤが送り出されると、ワイヤリール支持装置に支持されたワイヤリールは、回転軸と一体回転しながらワイヤを繰り出す。なお、一般に、ワイヤリール支持装置には、ワイヤ送給の停止時にワイヤリールの回転を速やかに止めるための回転体制動機構が設けられている。
【0005】
溶接作業においては、溶接の開始と停止とが頻繁に繰り返されるので、その度にワイヤリール支持装置の回転軸が回転と停止を繰り返す。このように回転軸の回転と停止が繰り返されると、回転軸にねじ込まれた固定キャップのねじ部が緩む虞がある。当該ねじ部が緩むと、回転軸に支持されたワイヤリールがガタつく虞があり、このガタつきがワイヤ送給性に悪影響を与え、ワイヤリール溶接品質の低下を招く場合がある。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1に記載のワイヤリール支持装置では、固定キャップのつまみ部を押さえる押さえねじがさらに設けられている。このような押さえねじを有する構成により、固定キャップのねじ部の緩み防止の対策が施されていた。
【0007】
しかしながら、上記従来の構成においては、ワイヤリールの装着時には、固定キャップをねじ込んだ後に押さえねじをねじ込むといった2段階のねじ込み作業が必要となるので、その作業が比較的に煩わしかった。また、押さえねじのねじ込み作業を忘れてしまう可能性もあり、取り付け状態の確実性に欠ける面があった。また、ワイヤリールに巻かれたワイヤを使い切ると、ワイヤリールを交換する必要があるが、ワイヤリールを取り外す際にも、2段階でねじを緩める必要があるので、ワイヤリールの交換作業も煩わしかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−52882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、簡単な作業で確実にワイヤリールを装着することができ、ワイヤリールの交換作業も簡単に行うことができるワイヤリール支持装置、および、そのようなワイヤリール支持装置を構成するのに適したねじ接続部材のロック構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0011】
本発明の第1の側面によって提供されるワイヤリール支持装置は、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、を備え、上記回転体の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられ、上記フランジと上記キャップ部材との間にワイヤリールを介在させて、上記回転体により上記ワイヤリールを一体に回転するように支持する、ワイヤリール支持装置であって、上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成のワイヤリール支持装置によれば、ワイヤリールを取り付ける際に、回転体に対するキャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、係止部と被係止部とが係合し、第2ねじ部が緩む方向へのキャップ部材の動作が規制され、ロック機構が機能した状態になる。したがって、上記構成によれば、キャップ部材を回転体にねじ込むといった簡単な作業で第2ねじ部の緩みを防止することができ、確実にワイヤリールを装着することができる。また、ワイヤリールを交換する際には、操作部の操作により係止部と被係止部との係合が解除されるため、ワイヤリールの交換作業も簡単に行うことができる。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられた板ばねを含んで構成されている。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記爪には、この爪が上記凹部に進入したときに、上記第2ねじ部の締め付け方向への回転を許容する傾斜部と、上記第2ねじ部の緩み方向への回転を阻止する側縁部とが形成されている。
【0017】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記回転体と上記キャップ部材との間に介装される環状のプレートを備え、上記プレートには、周方向に沿って上記被係止部が複数設けられており、上記プレートは、軸方向に延び、かつ上記ワイヤリールと当接して当該ワイヤリールとの相対回転を阻止する突片を備える。
【0018】
好ましい実施の形態においては、上記プレートは、上記キャップ部材に付属している。
【0019】
好ましい実施の形態においては、上記操作部は、上記弾性部材に固定されており、上記キャップ部材には、上記操作部の操作量を規制する操作量規制部が設けられている。
【0020】
本発明の第2の側面によって提供されるねじ接続部材のロック構造は、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴としている。
【0021】
好ましい実施の形態においては、上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される。
【0022】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される。
【0023】
好ましい実施の形態においては、上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられたばねを含んで構成されている。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るワイヤリール支持装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤリール支持装置の縦断面図である。
【図3】キャップ部材の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図3のV−V矢視図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う一部切欠き断面図である。
【図7】本発明に係るワイヤリール支持装置の他の例を示す縦断面図である。
【図8】回転体およびキャップ部材の図7におけるVIII−VIII矢視図である。
【図9】図8のIX−IX矢視図である。
【図10】図9のX−X線に沿う要部断面図である。
【図11】操作部を操作した状態を示す図10と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0027】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係るワイヤリール支持装置を示している。本実施形態のワイヤリール支持装置A1は、固定軸1と、回転体2と、キャップ部材3と、回転体制動機構4と、ロック機構5と、ロック解除機構6と、を備えて構成されている。
【0028】
固定軸1の基端にはフランジ11が設けられており、このフランジ11が起立状の支持板8にボルト締結されている。
【0029】
回転体2は、固定軸1に外嵌される筒状の胴部21と、胴部21の基端に設けられたフランジ22と、ねじ部23とを有し、固定軸1に回転可能に支持されている。フランジ22には、軸方向に延びる回り止めピン24が立設されている。胴部21の先端には、雌ねじからなるねじ部23が形成されている。胴部21の軸方向長さは、後述するワイヤリール7の軸方向長さよりも少し短く設定される。かかる構成の回転体2は、たとえばABS樹脂などの所定の強度を有する合成樹脂により一体形成されたものである。
【0030】
回転体制動機構4は、図2によく表れているように、圧縮コイルばね41、座金42,43、調整ボルト44、連結ピン45を備えて構成されている。圧縮コイルばね41は、座金42,43間に介装されている。座金43は、固定軸1の先端に対し、連結ピン45を介して相対回転不能かつ軸方向移動可能に連結されている。調整ボルト44は、固定軸1の先端にねじ込まれている。そして、調整ボルト44のねじ込み量に応じて決まる圧縮コイルばね41の押圧力が座金43を介して回転体2のフランジ22に作用しており、ワイヤリール7(回転体2)の回転時には、フランジ22と固定軸1のフランジ11とが摺接することにより、回転体2の回転に制動が与えられる。かかる構成の回転体制動機構4より、ワイヤ送給の停止時にワイヤリール7の回転を速やかに止めることができ、ワイヤに弛みが生じるのを防止することができる。
【0031】
図3、図4に表れているように、キャップ部材3は、軸方向の一端部に設けられたつまみ部31と、他端部に設けられたねじ部32とを備えている。つまみ部31は、ねじ部32との間に形成されたフランジ33から軸方向に沿って延びている。つまみ部31は、円形の外形を有している。つまみ部31の外周には、軸方向に沿った帯状突起311が複数設けられており、手で掴むときのグリップ性が高められている。ねじ部32は、雄ねじからなり、回転体2のねじ部23に螺合される部分である。ねじ部23,32のピッチは、たとえば4mmとされている。ねじ部32とフランジ33との間には、後述するプレート52を外嵌するための環状溝34が形成されている。かかる構成のキャップ部材3は、たとえばABS樹脂などの所定の強度を有する合成樹脂により一体形成されたものである。
【0032】
ロック機構5は、ねじ部32の緩みを防止するためのものであり、板ばね51(弾性部材)と、プレート52とを備えて構成されている。
【0033】
図3に表れているように、板ばね51は、カバー511を介してキャップ部材3に固定されている。より具体的には、図3、図6に表れているように、カバー511は、ボルト512によってキャップ部材3に固定されており、板ばね51の一方の端部51aは、ボルト513によってカバー511の端部に固定されている。板ばね51の他方の端部51bは、略直角に屈曲させられており、その先端には、爪514(係止部)が設けられている。図3から理解されるように、板ばね51は、爪514の軸方向の変位に対して弾性復元力を有する。板ばね51が自然状態にあるとき、爪514は、キャップ部材3のフランジ33に形成された貫通孔33aを通じて、当該フランジ33から軸方向に突出している。板ばね51が自然状態にあるときに爪514がフランジ33から突出する長さは、適宜設定される。図6によく表れているように、爪514には、傾斜部514aが形成されている。傾斜部514aは、ねじ部32のねじ込み方向に向くように傾斜させられており、本実施形態では、ねじ部32が右ねじである場合を示している。また、図6に表れているように、爪514は、傾斜部514aの最下端から真上に延びる側縁部514bを有している。なお、爪514は、本発明でいう係止部の一例に相当するものである。
【0034】
プレート52は、環状とされており、キャップ部材3の環状溝34に遊嵌されている。より具体的には、図5に表れているように、プレート52の内周部は多角形状とされており、この内周部の寸法は、キャップ部材3のねじ部32の谷部に沿わせて回転させることにより環状溝34に外嵌可能とされる一方、ねじ部32の山部に係止される程度に設定される。このようにして、プレート52は、キャップ部材3の環状溝34に遊嵌された状態で当該キャップ部材3に付属している。なお、本実施形態では、図3、図6に表れているように、プレート52の過度のガタつきを防止するためのOリング35が環状溝34に装着されているが、このOリング35は必ずしも設ける必要はない。
【0035】
プレート52には、周方向に沿って一定ピッチで複数の孔521(被係止部)が形成されている。これら複数の孔521は、すべて同一内径とされており、爪514の先端が進入しうるサイズおよび配置とされている。複数の孔521は、本発明でいう被係止部の一例に相当する。また、複数の孔521は、本発明でいう、爪が進入しうる凹部の一態様である。
【0036】
プレート52の外周部には、軸方向に延びる突片522が設けられている。この突片522の意義については後述する。詳細については後述するが、図2に表れているように、キャップ部材3のねじ部32が回転体2のねじ部23にねじ込まれると、プレート52は、ワイヤリール7とキャップ部材3のフランジ33との間に挟まれる。このとき、爪514がプレート52のいずれかの孔521に進入しており、当該爪514と孔521との係合により、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制される。すなわち、ロック機構5が機能した状態にある。
【0037】
ロック解除機構6は、爪514と孔521との係合を解除するためのものであり、操作レバー61(操作部)を備えて構成されている。図3に表れているように、操作レバー61は、板ばね51の端部51b近傍に溶接などの適宜手段によって固定されている。操作レバー61を引き上げると(図3において左側・矢印方向に動かす)、爪514は、板ばね51の弾性復元力に抗して孔521から退避させられる方向(図中左側)へ変位し、爪514と孔521との係合が解除される。
【0038】
図6に表れているように、キャップ部材3に固定されたカバー511は、一対の側壁511aと、これら側壁511aの上端を覆う頂壁511bとを有し、板ばね51を囲むように断面コの字状とされている。カバー511は、板ばね51を保護する役割を担う。また、上記した操作レバー61の引き上げ操作の際には、操作レバー61が頂壁511bに当接することにより、その操作量が規制される。頂壁511bは、本発明でいう操作量規制部を担う。
【0039】
上記構成のワイヤリール支持装置A1は、図示しないワイヤ送給装置の近傍に設けられている。
【0040】
次に、ワイヤリール支持装置A1に対するワイヤリールの取り付け方法および取り外し方法について説明する。
【0041】
図1および図2を参照するとよく理解されるように、ワイヤリール7は、筒状軸部71を有するとともに、この筒状軸部71から径方向外方に偏倚した位置に軸方向全長に延びる小径の筒部72を有しており、この筒部72内面により回り止め孔73が形成されている。
【0042】
ワイヤリール7をワイヤリール支持装置A1に取り付ける際には、まず、ワイヤリール7の筒状軸部71を、回転体2の先端を通じて胴部21に外嵌する。このとき、回転体2の回り止めピン24がワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿されており、回転体2とワイヤリール7とは、相対回転不能とされる。
【0043】
次に、キャップ部材3のねじ部32を回転体2のねじ部23にねじ込む。キャップ部材3のねじ込み作業は、つまみ部31を手で掴んで回すことにより行う。このとき、プレート52の突片522をワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿しておく。これにより、プレート52は、ワイヤリール7に対して相対回転不能とされる。また、上述したように回転体2とワイヤリール7とは相対回転不能であるため、プレート52およびこれに設けられた複数の孔521は、回転体2に対して相対回転不能とされている。
【0044】
ここで、キャップ部材3を回転体2にねじ込むにつれて、キャップ部材3のフランジ33とワイヤリール7の端面との間隔は狭くなり、フランジ33とプレート52との間隔も狭くなる。そして、フランジ33とプレート52との間隔が、板ばね51が自然状態にあるときのフランジ33から突出する爪514の長さより小さくなると、爪514の先端がプレート52の側面に当接する。このとき、爪514はプレート52によって軸方向(図3における左側)に変位させられ、板ばね51は弾性復元力に抗して少し撓む。爪514がプレート52の孔521に臨む位置にくると、爪514は孔521に進入し、板ばね51は自然状態に戻る。爪514が孔521に進入した状態にあるとき、ねじ部32を緩める方向へキャップ部材3を回そうとしても、爪514の側縁部514bと孔521との係合により、ねじ部32の緩みが阻止される。このとき、ロック機構5が機能した状態にある。一方、キャップ部材3をねじ込むと、図6を参照すると理解できるように、爪514に形成された傾斜部514aが孔521の縁に当接しながら、爪514は、軸方向に変位させられ、孔521から退避する。このように爪514と孔521とが係合状態にあるときにおいても、ねじ部32の締め付け方向への回転は許容される。
【0045】
さらにキャップ部材3を回転体2にねじ込み続けると、爪514は、隣接する孔521への進入動作と当該孔521からの退避動作を繰り返し、ねじ込み作業の節度感と爪514の動作音とが生ずる。そして、図2に表れているように、キャップ部材3のフランジ33とワイヤリール7の端面との間にプレート52が密着状態で挟まれると、ワイヤリール7の取り付けが完了する。
【0046】
ワイヤリール7を取り外す際には、キャップ部材3に設けられた操作レバー61を引き上げると、爪514(側縁部514b)と孔521との係合が解除される。この状態でキャップ部材3のねじ部32を緩める方向へ回転させることができ、キャップ部材3を回転体2から取り外し、続いてワイヤリール7を取り外すことができる。
【0047】
上記構成のワイヤリール支持装置A1においては、ワイヤリール7を取り付ける際に、回転体2に対するキャップ部材3のねじ込み量が所定の量に達したときに、爪514(側縁部514b)と孔521とが係合し、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制され、ロック機構5が機能した状態になる。したがって、本実施形態によれば、キャップ部材3を回転体2にねじ込むといった簡単な作業でねじ部32の緩みを防止することができ、確実にワイヤリール7を装着することができる。
【0048】
ワイヤリール7を交換する際には、操作レバー61を引き上げるだけで爪514と孔521との係合が解除されるため、キャップ部材3、ワイヤリール7を順次簡単に取り外すことができる。また、操作レバー61を引き上げた際には、板ばね51は弾性復元力に抗して撓んだ状態にあるので、操作レバー61を離すと、板ばね51は自然状態の位置に戻る。したがって、引き続いてワイヤリール7を装着する際には、キャップ部材7を回転体2にねじ込むだけで、ロック機構5を確実に機能させることができる。
【0049】
また、複数の孔521が設けられたプレート52は、キャップ部材3に付属している。これにより、ロック機構5を担う要素である、板ばね51(弾性部材)、爪514(係止部)、複数の孔521(被係止部)は、すべてキャップ部材3側に属する。したがって、回転体2にねじ込まれるキャップ部材3の緩み防止の機能を、回転体2については従来のものに何ら変更を加えることなく、また、上記したようにキャップ部材3をねじ込むだけの作業をもって、もたせことができる。
【0050】
さらに、プレート52に複数の孔521(本実施形態では30個)が設けられていると、キャップ部材3を回転体2に対してねじ込む過程において、上述したように、爪514は、隣接する孔521への進入動作と当該孔521からの退避動作を繰り返し、ねじ込み作業の節度感と爪514の動作音とが生ずる。したがって、作業者は、爪514と孔521とが係合しうる状態にあることを容易に認識することができる。
【0051】
回転体2の胴部21の軸方向長さは、ワイヤリール7の軸方向長さよりも少し小さく設定されている。このような構成によれば、図2を参照するとよくわかるように、キャップ部材3を十分にねじ込むと、ワイヤリール7は、回転体2のフランジ22とキャップ部材3のフランジ33との間に、プレート52とともに密着状態で挟まれる。したがって、ワイヤリール7の軸方向長さについて、寸法公差範囲内での多少の誤差があっても、ワイヤリール7を回転体2にガタつきなく固定することができる。
【0052】
板ばね51が自然状態にあるときに爪514がキャップ部材3のフランジ33から突出する長さは、適宜設定することができる。爪514のフランジ33からの突出長さを比較的に大きくしておくと、キャップ部材3を十分にねじ込んだときの爪514と孔521との係合代も大きくなるので、ロック機構5の信頼性が高まる。また、キャップ部材3をねじ込む際に、プレート52の突片522をワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿しなかった場合には、プレート52とワイヤリール7との相対回転は、突片522と、回り止め孔73を形成する筒部72とが当接することにより、規制される。したがって、突片522を回り止め孔73に嵌挿しなかった場合には、キャップ部材3を十分にねじ込んでも、キャップ部材3は、爪514と孔521との係合に関係なく、ねじ部32が緩む方向へ約1回転戻りうる。このような場合でも、爪514のフランジ33からの突出長さを、ねじ部23,32のピッチよりも大きくしておくと、ロック機構5を適切に機能させることができる。
【0053】
キャップ部材3に設けられた板ばね51は、カバー511によって囲まれている。このため、外物の接触などによる板ばね51の不当な変形を防止することができ、ロック機構5の信頼性を高めることができる。また、ロック機構5を解除すべく操作レバー61を操作する際には、当該操作レバー61がカバー511の頂壁511bと当接することにより、その操作量が規制されるため、板ばね51が弾性限度を超えて塑性変形するのを防止することができる。
【0054】
図7〜図11は、本発明に係るワイヤリール支持装置の他の例を示している。なお、これらの図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0055】
本実施形態のワイヤリール支持装置A2においては、上記実施形態のワイヤリール支持装置A1に比べて、ロック機構5およびロック解除機構6を担う部分の構成が大きく異なっており、これに伴い種々の変更が施されている。
【0056】
図7、図10に表れているように、本実施形態において、ロック機構5は、キャップ部材3に設けられたストッパ53、圧縮コイルばね54(弾性部材)、および操作レバー61と、回転体2に設けられた凹部26(被係止部)とを備えて構成されている。ストッパ53は、キャップ部材3に収容保持されており、先端に設けられた爪531がキャップ部材3のフランジ33およびねじ部32の一部を切欠くように形成された貫通孔36を通じて軸方向に進退移動可能とされている。図7によく表れているように、ストッパ53は、基端から軸方向中央にかけて形成された二股状のピン支持片532と、両ピン支持片532間の溝部533とを有する。両ピン支持片532には、溝部533を跨ぐ状態でピン534が支持されている。
【0057】
溝部533には、プレート状の操作レバー61が嵌まっている。図10、図11に表れているように、操作レバー61は、キャップ部材3に形成された開口37を通じて軸方向と直交する方向へ進退移動可能とされている。操作レバー61には、傾斜状の長孔611が形成されており、この長孔611にストッパ53のピン534が挿通している。操作レバー61の基端に隣接して圧縮コイルばね54が収容されている。操作レバー61が操作されないときには、圧縮コイルばね54の弾性復元力により操作レバー61は、図10における左側に付勢されており、操作レバー61の先端が開口37から進出させられている。操作レバー61が図10における左側に進出移動すると、長孔611に倣ってピン534が図中下方に移動し、ストッパ53の爪531が貫通孔36から進出する。このように、ストッパ53のピン534および操作レバー61の長孔611は、カム機構を構成している。
【0058】
図7、図8に表れているように、凹部26は、回転体2の先端において、ねじ部23の一部を切欠くように1箇所に形成されており、ストッパ53の爪531が進入する部分である。ストッパ53および凹部26は、ねじ部32のねじ込み量が所定の量に達したときに位相が一致するようにねじ部32,23周方向における位置が設定されている。これにより、キャップ部材3を回転体2にねじ込むと、ストッパ53先端の爪531は、回転体2の端部に摺接しながら徐々に退避し、ストッパ53と凹部26の位相が一致すると、図8に示すように、爪531が凹部26に進入する。ここで、爪531と凹部26とが係合しており、キャップ部材3は、ねじ部32の緩み方向および締め付け方向のいずれの方向への回転も阻止される。このとき、ロック機構5が機能した状態にある。なお、ねじ部23,32のピッチは、たとえば4mmとされており、爪531がフランジ33から突出する長さは、たとえば、ねじ部23,32のピッチより小さい3mmとされる。
【0059】
ロック解除機構6は、爪531と凹部26との係合を解除するためのものであり、操作レバー61を備えて構成されている。操作レバー61を押し込むと(図10において右側に移動させる)、ピン534が長孔611に倣って上動し、図11に示すように、爪531は、圧縮コイルばね54の弾性復元力に抗して凹部26から退避させられる方向に変位し、爪531と凹部26との係合が解除される。この状態でキャップ部材3のねじ部32を緩める方向へ回転させることができ、キャップ部材3を回転体2から取り外し、ワイヤリール7を取り外すことができる。
【0060】
上記構成のワイヤリール支持装置A2においては、ワイヤリール7を取り付ける際に、回転体2に対するキャップ部材3のねじ込み量が所定の量に達したときに、爪531と凹部26とが係合し、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制され、ロック機構5が機能した状態になる。したがって、本実施形態によれば、キャップ部材3を回転体2にねじ込むといった簡単な作業でねじ部32の緩みを防止することができ、確実にワイヤリール7を装着することができる。
【0061】
ワイヤリール7を交換する際には、操作レバー61を押し込むだけで爪531と凹部26との係合が解除されるため、キャップ部材3、ワイヤリール7を順次簡単に取り外すことができる。また、操作レバー61を押し込んだ際には、圧縮コイルばね54は弾性復元力に抗して圧縮された状態にあるので、操作レバー61を離すと、当該操作レバー61は、初期の位置(図10に示された位置)に戻る。したがって、引き続いてワイヤリール7を装着する際には、キャップ部材3を回転体2にねじ込むだけで、ロック機構5を確実に機能させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワイヤリール支持装置の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0063】
本発明でいう係止部および被係止部の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。また、ロック機構を構成する弾性部材としては、上記実施形態のようにキャップ部材3に設けた板ばね51や圧縮コイルばね54に限定されない。たとえば、キャップ部材として一体成形される成形品の一部に、弾性部材としての機能をもたせてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ワイヤリール支持装置について説明したが、回転体、およびこの回転体にねじ込まれるキャップ部材を備えるねじ接続部材のロック構造は、ワイヤリール支持装置への適用に限定されるものではない。本発明に係るねじ接続部材のロック構造は、回転する部材(回転体)と、この回転体にねじ込まれて回転体と共回りするキャップ部材と、を備える装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
A1,A2 ワイヤリール支持装置
1 固定軸
11 フランジ
2 回転体
21 胴部
22 フランジ
23 ねじ部(第1ねじ部)
24 回り止めピン
25 突出壁
26 凹部(被係止部)
3 キャップ部材
31 つまみ部
32 ねじ部(第2ねじ部)
33 フランジ
4 回転体制動機構
5 ロック機構
51 板ばね(弾性部材)
511 カバー
511b 頂壁(操作量規制部)
514 爪(係止部)
514a 傾斜部
514b 側縁部
52 プレート
521 孔(被係止部、凹部)
522 突片
53 ストッパ
531 爪(係止部)
54 圧縮コイルばね(弾性部材)
6 ロック解除機構
61 操作レバー(操作部)
7 ワイヤリール
73 回り止め孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤが巻回されたワイヤリールを回転可能に取り付けるためのワイヤリール支持装置、および当該ワイヤリール支持装置に適用可能なねじ接続部材のロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極ガスシールドアーク溶接において、一般に、ワイヤリールに巻回された溶加材としてのワイヤがワイヤ送給装置により所望の送り量で溶接トーチに送り出される。ワイヤ送給装置の近傍には、ワイヤリール支持装置が設けられている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたワイヤリール支持装置は、同文献の図2によく表れているように、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持された回転軸(回転体)と、回転軸の先端にねじ込まれる固定キャップ(キャップ部材)とを備えている。固定軸は、ワイヤ送給装置の近傍に設けられた起立状の支持板に固定されている。回転軸は、固定軸に回転可能に支持されている。回転軸の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられており、このフランジには軸方向に延びる回り止めピンが立設されている。回転軸の先端には、雌ねじからなるねじ部が形成されている。ワイヤリールには、軸方向に延びる回り止め孔が設けられており、この回り止め孔に回転軸の回り止めピンが嵌挿した状態でワイヤリールは回転軸に一体に支持される。固定キャップは、一端部につまみ部を有するとともに、他端部において、回転軸の先端のねじ部に螺合するねじ部が形成されている。
【0004】
ワイヤリールをワイヤリール支持装置に装着する際には、ワイヤリールを回転軸に取り付けた状態で、固定キャップのねじ部を回転軸のねじ部にねじ込む。固定キャップのねじ込み作業は、つまみ部を手で掴んで回すことにより行う。そうすると、ワイヤリールは、回転軸のフランジと固定キャップのつまみ部との間に介在されて、回転軸からの脱落が防止される。ワイヤ送給装置によりワイヤが送り出されると、ワイヤリール支持装置に支持されたワイヤリールは、回転軸と一体回転しながらワイヤを繰り出す。なお、一般に、ワイヤリール支持装置には、ワイヤ送給の停止時にワイヤリールの回転を速やかに止めるための回転体制動機構が設けられている。
【0005】
溶接作業においては、溶接の開始と停止とが頻繁に繰り返されるので、その度にワイヤリール支持装置の回転軸が回転と停止を繰り返す。このように回転軸の回転と停止が繰り返されると、回転軸にねじ込まれた固定キャップのねじ部が緩む虞がある。当該ねじ部が緩むと、回転軸に支持されたワイヤリールがガタつく虞があり、このガタつきがワイヤ送給性に悪影響を与え、ワイヤリール溶接品質の低下を招く場合がある。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1に記載のワイヤリール支持装置では、固定キャップのつまみ部を押さえる押さえねじがさらに設けられている。このような押さえねじを有する構成により、固定キャップのねじ部の緩み防止の対策が施されていた。
【0007】
しかしながら、上記従来の構成においては、ワイヤリールの装着時には、固定キャップをねじ込んだ後に押さえねじをねじ込むといった2段階のねじ込み作業が必要となるので、その作業が比較的に煩わしかった。また、押さえねじのねじ込み作業を忘れてしまう可能性もあり、取り付け状態の確実性に欠ける面があった。また、ワイヤリールに巻かれたワイヤを使い切ると、ワイヤリールを交換する必要があるが、ワイヤリールを取り外す際にも、2段階でねじを緩める必要があるので、ワイヤリールの交換作業も煩わしかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−52882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、簡単な作業で確実にワイヤリールを装着することができ、ワイヤリールの交換作業も簡単に行うことができるワイヤリール支持装置、および、そのようなワイヤリール支持装置を構成するのに適したねじ接続部材のロック構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0011】
本発明の第1の側面によって提供されるワイヤリール支持装置は、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、を備え、上記回転体の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられ、上記フランジと上記キャップ部材との間にワイヤリールを介在させて、上記回転体により上記ワイヤリールを一体に回転するように支持する、ワイヤリール支持装置であって、上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成のワイヤリール支持装置によれば、ワイヤリールを取り付ける際に、回転体に対するキャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、係止部と被係止部とが係合し、第2ねじ部が緩む方向へのキャップ部材の動作が規制され、ロック機構が機能した状態になる。したがって、上記構成によれば、キャップ部材を回転体にねじ込むといった簡単な作業で第2ねじ部の緩みを防止することができ、確実にワイヤリールを装着することができる。また、ワイヤリールを交換する際には、操作部の操作により係止部と被係止部との係合が解除されるため、ワイヤリールの交換作業も簡単に行うことができる。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられた板ばねを含んで構成されている。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記爪には、この爪が上記凹部に進入したときに、上記第2ねじ部の締め付け方向への回転を許容する傾斜部と、上記第2ねじ部の緩み方向への回転を阻止する側縁部とが形成されている。
【0017】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記回転体と上記キャップ部材との間に介装される環状のプレートを備え、上記プレートには、周方向に沿って上記被係止部が複数設けられており、上記プレートは、軸方向に延び、かつ上記ワイヤリールと当接して当該ワイヤリールとの相対回転を阻止する突片を備える。
【0018】
好ましい実施の形態においては、上記プレートは、上記キャップ部材に付属している。
【0019】
好ましい実施の形態においては、上記操作部は、上記弾性部材に固定されており、上記キャップ部材には、上記操作部の操作量を規制する操作量規制部が設けられている。
【0020】
本発明の第2の側面によって提供されるねじ接続部材のロック構造は、固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴としている。
【0021】
好ましい実施の形態においては、上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される。
【0022】
好ましい実施の形態においては、上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される。
【0023】
好ましい実施の形態においては、上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられたばねを含んで構成されている。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るワイヤリール支持装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤリール支持装置の縦断面図である。
【図3】キャップ部材の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図3のV−V矢視図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う一部切欠き断面図である。
【図7】本発明に係るワイヤリール支持装置の他の例を示す縦断面図である。
【図8】回転体およびキャップ部材の図7におけるVIII−VIII矢視図である。
【図9】図8のIX−IX矢視図である。
【図10】図9のX−X線に沿う要部断面図である。
【図11】操作部を操作した状態を示す図10と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0027】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係るワイヤリール支持装置を示している。本実施形態のワイヤリール支持装置A1は、固定軸1と、回転体2と、キャップ部材3と、回転体制動機構4と、ロック機構5と、ロック解除機構6と、を備えて構成されている。
【0028】
固定軸1の基端にはフランジ11が設けられており、このフランジ11が起立状の支持板8にボルト締結されている。
【0029】
回転体2は、固定軸1に外嵌される筒状の胴部21と、胴部21の基端に設けられたフランジ22と、ねじ部23とを有し、固定軸1に回転可能に支持されている。フランジ22には、軸方向に延びる回り止めピン24が立設されている。胴部21の先端には、雌ねじからなるねじ部23が形成されている。胴部21の軸方向長さは、後述するワイヤリール7の軸方向長さよりも少し短く設定される。かかる構成の回転体2は、たとえばABS樹脂などの所定の強度を有する合成樹脂により一体形成されたものである。
【0030】
回転体制動機構4は、図2によく表れているように、圧縮コイルばね41、座金42,43、調整ボルト44、連結ピン45を備えて構成されている。圧縮コイルばね41は、座金42,43間に介装されている。座金43は、固定軸1の先端に対し、連結ピン45を介して相対回転不能かつ軸方向移動可能に連結されている。調整ボルト44は、固定軸1の先端にねじ込まれている。そして、調整ボルト44のねじ込み量に応じて決まる圧縮コイルばね41の押圧力が座金43を介して回転体2のフランジ22に作用しており、ワイヤリール7(回転体2)の回転時には、フランジ22と固定軸1のフランジ11とが摺接することにより、回転体2の回転に制動が与えられる。かかる構成の回転体制動機構4より、ワイヤ送給の停止時にワイヤリール7の回転を速やかに止めることができ、ワイヤに弛みが生じるのを防止することができる。
【0031】
図3、図4に表れているように、キャップ部材3は、軸方向の一端部に設けられたつまみ部31と、他端部に設けられたねじ部32とを備えている。つまみ部31は、ねじ部32との間に形成されたフランジ33から軸方向に沿って延びている。つまみ部31は、円形の外形を有している。つまみ部31の外周には、軸方向に沿った帯状突起311が複数設けられており、手で掴むときのグリップ性が高められている。ねじ部32は、雄ねじからなり、回転体2のねじ部23に螺合される部分である。ねじ部23,32のピッチは、たとえば4mmとされている。ねじ部32とフランジ33との間には、後述するプレート52を外嵌するための環状溝34が形成されている。かかる構成のキャップ部材3は、たとえばABS樹脂などの所定の強度を有する合成樹脂により一体形成されたものである。
【0032】
ロック機構5は、ねじ部32の緩みを防止するためのものであり、板ばね51(弾性部材)と、プレート52とを備えて構成されている。
【0033】
図3に表れているように、板ばね51は、カバー511を介してキャップ部材3に固定されている。より具体的には、図3、図6に表れているように、カバー511は、ボルト512によってキャップ部材3に固定されており、板ばね51の一方の端部51aは、ボルト513によってカバー511の端部に固定されている。板ばね51の他方の端部51bは、略直角に屈曲させられており、その先端には、爪514(係止部)が設けられている。図3から理解されるように、板ばね51は、爪514の軸方向の変位に対して弾性復元力を有する。板ばね51が自然状態にあるとき、爪514は、キャップ部材3のフランジ33に形成された貫通孔33aを通じて、当該フランジ33から軸方向に突出している。板ばね51が自然状態にあるときに爪514がフランジ33から突出する長さは、適宜設定される。図6によく表れているように、爪514には、傾斜部514aが形成されている。傾斜部514aは、ねじ部32のねじ込み方向に向くように傾斜させられており、本実施形態では、ねじ部32が右ねじである場合を示している。また、図6に表れているように、爪514は、傾斜部514aの最下端から真上に延びる側縁部514bを有している。なお、爪514は、本発明でいう係止部の一例に相当するものである。
【0034】
プレート52は、環状とされており、キャップ部材3の環状溝34に遊嵌されている。より具体的には、図5に表れているように、プレート52の内周部は多角形状とされており、この内周部の寸法は、キャップ部材3のねじ部32の谷部に沿わせて回転させることにより環状溝34に外嵌可能とされる一方、ねじ部32の山部に係止される程度に設定される。このようにして、プレート52は、キャップ部材3の環状溝34に遊嵌された状態で当該キャップ部材3に付属している。なお、本実施形態では、図3、図6に表れているように、プレート52の過度のガタつきを防止するためのOリング35が環状溝34に装着されているが、このOリング35は必ずしも設ける必要はない。
【0035】
プレート52には、周方向に沿って一定ピッチで複数の孔521(被係止部)が形成されている。これら複数の孔521は、すべて同一内径とされており、爪514の先端が進入しうるサイズおよび配置とされている。複数の孔521は、本発明でいう被係止部の一例に相当する。また、複数の孔521は、本発明でいう、爪が進入しうる凹部の一態様である。
【0036】
プレート52の外周部には、軸方向に延びる突片522が設けられている。この突片522の意義については後述する。詳細については後述するが、図2に表れているように、キャップ部材3のねじ部32が回転体2のねじ部23にねじ込まれると、プレート52は、ワイヤリール7とキャップ部材3のフランジ33との間に挟まれる。このとき、爪514がプレート52のいずれかの孔521に進入しており、当該爪514と孔521との係合により、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制される。すなわち、ロック機構5が機能した状態にある。
【0037】
ロック解除機構6は、爪514と孔521との係合を解除するためのものであり、操作レバー61(操作部)を備えて構成されている。図3に表れているように、操作レバー61は、板ばね51の端部51b近傍に溶接などの適宜手段によって固定されている。操作レバー61を引き上げると(図3において左側・矢印方向に動かす)、爪514は、板ばね51の弾性復元力に抗して孔521から退避させられる方向(図中左側)へ変位し、爪514と孔521との係合が解除される。
【0038】
図6に表れているように、キャップ部材3に固定されたカバー511は、一対の側壁511aと、これら側壁511aの上端を覆う頂壁511bとを有し、板ばね51を囲むように断面コの字状とされている。カバー511は、板ばね51を保護する役割を担う。また、上記した操作レバー61の引き上げ操作の際には、操作レバー61が頂壁511bに当接することにより、その操作量が規制される。頂壁511bは、本発明でいう操作量規制部を担う。
【0039】
上記構成のワイヤリール支持装置A1は、図示しないワイヤ送給装置の近傍に設けられている。
【0040】
次に、ワイヤリール支持装置A1に対するワイヤリールの取り付け方法および取り外し方法について説明する。
【0041】
図1および図2を参照するとよく理解されるように、ワイヤリール7は、筒状軸部71を有するとともに、この筒状軸部71から径方向外方に偏倚した位置に軸方向全長に延びる小径の筒部72を有しており、この筒部72内面により回り止め孔73が形成されている。
【0042】
ワイヤリール7をワイヤリール支持装置A1に取り付ける際には、まず、ワイヤリール7の筒状軸部71を、回転体2の先端を通じて胴部21に外嵌する。このとき、回転体2の回り止めピン24がワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿されており、回転体2とワイヤリール7とは、相対回転不能とされる。
【0043】
次に、キャップ部材3のねじ部32を回転体2のねじ部23にねじ込む。キャップ部材3のねじ込み作業は、つまみ部31を手で掴んで回すことにより行う。このとき、プレート52の突片522をワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿しておく。これにより、プレート52は、ワイヤリール7に対して相対回転不能とされる。また、上述したように回転体2とワイヤリール7とは相対回転不能であるため、プレート52およびこれに設けられた複数の孔521は、回転体2に対して相対回転不能とされている。
【0044】
ここで、キャップ部材3を回転体2にねじ込むにつれて、キャップ部材3のフランジ33とワイヤリール7の端面との間隔は狭くなり、フランジ33とプレート52との間隔も狭くなる。そして、フランジ33とプレート52との間隔が、板ばね51が自然状態にあるときのフランジ33から突出する爪514の長さより小さくなると、爪514の先端がプレート52の側面に当接する。このとき、爪514はプレート52によって軸方向(図3における左側)に変位させられ、板ばね51は弾性復元力に抗して少し撓む。爪514がプレート52の孔521に臨む位置にくると、爪514は孔521に進入し、板ばね51は自然状態に戻る。爪514が孔521に進入した状態にあるとき、ねじ部32を緩める方向へキャップ部材3を回そうとしても、爪514の側縁部514bと孔521との係合により、ねじ部32の緩みが阻止される。このとき、ロック機構5が機能した状態にある。一方、キャップ部材3をねじ込むと、図6を参照すると理解できるように、爪514に形成された傾斜部514aが孔521の縁に当接しながら、爪514は、軸方向に変位させられ、孔521から退避する。このように爪514と孔521とが係合状態にあるときにおいても、ねじ部32の締め付け方向への回転は許容される。
【0045】
さらにキャップ部材3を回転体2にねじ込み続けると、爪514は、隣接する孔521への進入動作と当該孔521からの退避動作を繰り返し、ねじ込み作業の節度感と爪514の動作音とが生ずる。そして、図2に表れているように、キャップ部材3のフランジ33とワイヤリール7の端面との間にプレート52が密着状態で挟まれると、ワイヤリール7の取り付けが完了する。
【0046】
ワイヤリール7を取り外す際には、キャップ部材3に設けられた操作レバー61を引き上げると、爪514(側縁部514b)と孔521との係合が解除される。この状態でキャップ部材3のねじ部32を緩める方向へ回転させることができ、キャップ部材3を回転体2から取り外し、続いてワイヤリール7を取り外すことができる。
【0047】
上記構成のワイヤリール支持装置A1においては、ワイヤリール7を取り付ける際に、回転体2に対するキャップ部材3のねじ込み量が所定の量に達したときに、爪514(側縁部514b)と孔521とが係合し、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制され、ロック機構5が機能した状態になる。したがって、本実施形態によれば、キャップ部材3を回転体2にねじ込むといった簡単な作業でねじ部32の緩みを防止することができ、確実にワイヤリール7を装着することができる。
【0048】
ワイヤリール7を交換する際には、操作レバー61を引き上げるだけで爪514と孔521との係合が解除されるため、キャップ部材3、ワイヤリール7を順次簡単に取り外すことができる。また、操作レバー61を引き上げた際には、板ばね51は弾性復元力に抗して撓んだ状態にあるので、操作レバー61を離すと、板ばね51は自然状態の位置に戻る。したがって、引き続いてワイヤリール7を装着する際には、キャップ部材7を回転体2にねじ込むだけで、ロック機構5を確実に機能させることができる。
【0049】
また、複数の孔521が設けられたプレート52は、キャップ部材3に付属している。これにより、ロック機構5を担う要素である、板ばね51(弾性部材)、爪514(係止部)、複数の孔521(被係止部)は、すべてキャップ部材3側に属する。したがって、回転体2にねじ込まれるキャップ部材3の緩み防止の機能を、回転体2については従来のものに何ら変更を加えることなく、また、上記したようにキャップ部材3をねじ込むだけの作業をもって、もたせことができる。
【0050】
さらに、プレート52に複数の孔521(本実施形態では30個)が設けられていると、キャップ部材3を回転体2に対してねじ込む過程において、上述したように、爪514は、隣接する孔521への進入動作と当該孔521からの退避動作を繰り返し、ねじ込み作業の節度感と爪514の動作音とが生ずる。したがって、作業者は、爪514と孔521とが係合しうる状態にあることを容易に認識することができる。
【0051】
回転体2の胴部21の軸方向長さは、ワイヤリール7の軸方向長さよりも少し小さく設定されている。このような構成によれば、図2を参照するとよくわかるように、キャップ部材3を十分にねじ込むと、ワイヤリール7は、回転体2のフランジ22とキャップ部材3のフランジ33との間に、プレート52とともに密着状態で挟まれる。したがって、ワイヤリール7の軸方向長さについて、寸法公差範囲内での多少の誤差があっても、ワイヤリール7を回転体2にガタつきなく固定することができる。
【0052】
板ばね51が自然状態にあるときに爪514がキャップ部材3のフランジ33から突出する長さは、適宜設定することができる。爪514のフランジ33からの突出長さを比較的に大きくしておくと、キャップ部材3を十分にねじ込んだときの爪514と孔521との係合代も大きくなるので、ロック機構5の信頼性が高まる。また、キャップ部材3をねじ込む際に、プレート52の突片522をワイヤリール7の回り止め孔73に嵌挿しなかった場合には、プレート52とワイヤリール7との相対回転は、突片522と、回り止め孔73を形成する筒部72とが当接することにより、規制される。したがって、突片522を回り止め孔73に嵌挿しなかった場合には、キャップ部材3を十分にねじ込んでも、キャップ部材3は、爪514と孔521との係合に関係なく、ねじ部32が緩む方向へ約1回転戻りうる。このような場合でも、爪514のフランジ33からの突出長さを、ねじ部23,32のピッチよりも大きくしておくと、ロック機構5を適切に機能させることができる。
【0053】
キャップ部材3に設けられた板ばね51は、カバー511によって囲まれている。このため、外物の接触などによる板ばね51の不当な変形を防止することができ、ロック機構5の信頼性を高めることができる。また、ロック機構5を解除すべく操作レバー61を操作する際には、当該操作レバー61がカバー511の頂壁511bと当接することにより、その操作量が規制されるため、板ばね51が弾性限度を超えて塑性変形するのを防止することができる。
【0054】
図7〜図11は、本発明に係るワイヤリール支持装置の他の例を示している。なお、これらの図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0055】
本実施形態のワイヤリール支持装置A2においては、上記実施形態のワイヤリール支持装置A1に比べて、ロック機構5およびロック解除機構6を担う部分の構成が大きく異なっており、これに伴い種々の変更が施されている。
【0056】
図7、図10に表れているように、本実施形態において、ロック機構5は、キャップ部材3に設けられたストッパ53、圧縮コイルばね54(弾性部材)、および操作レバー61と、回転体2に設けられた凹部26(被係止部)とを備えて構成されている。ストッパ53は、キャップ部材3に収容保持されており、先端に設けられた爪531がキャップ部材3のフランジ33およびねじ部32の一部を切欠くように形成された貫通孔36を通じて軸方向に進退移動可能とされている。図7によく表れているように、ストッパ53は、基端から軸方向中央にかけて形成された二股状のピン支持片532と、両ピン支持片532間の溝部533とを有する。両ピン支持片532には、溝部533を跨ぐ状態でピン534が支持されている。
【0057】
溝部533には、プレート状の操作レバー61が嵌まっている。図10、図11に表れているように、操作レバー61は、キャップ部材3に形成された開口37を通じて軸方向と直交する方向へ進退移動可能とされている。操作レバー61には、傾斜状の長孔611が形成されており、この長孔611にストッパ53のピン534が挿通している。操作レバー61の基端に隣接して圧縮コイルばね54が収容されている。操作レバー61が操作されないときには、圧縮コイルばね54の弾性復元力により操作レバー61は、図10における左側に付勢されており、操作レバー61の先端が開口37から進出させられている。操作レバー61が図10における左側に進出移動すると、長孔611に倣ってピン534が図中下方に移動し、ストッパ53の爪531が貫通孔36から進出する。このように、ストッパ53のピン534および操作レバー61の長孔611は、カム機構を構成している。
【0058】
図7、図8に表れているように、凹部26は、回転体2の先端において、ねじ部23の一部を切欠くように1箇所に形成されており、ストッパ53の爪531が進入する部分である。ストッパ53および凹部26は、ねじ部32のねじ込み量が所定の量に達したときに位相が一致するようにねじ部32,23周方向における位置が設定されている。これにより、キャップ部材3を回転体2にねじ込むと、ストッパ53先端の爪531は、回転体2の端部に摺接しながら徐々に退避し、ストッパ53と凹部26の位相が一致すると、図8に示すように、爪531が凹部26に進入する。ここで、爪531と凹部26とが係合しており、キャップ部材3は、ねじ部32の緩み方向および締め付け方向のいずれの方向への回転も阻止される。このとき、ロック機構5が機能した状態にある。なお、ねじ部23,32のピッチは、たとえば4mmとされており、爪531がフランジ33から突出する長さは、たとえば、ねじ部23,32のピッチより小さい3mmとされる。
【0059】
ロック解除機構6は、爪531と凹部26との係合を解除するためのものであり、操作レバー61を備えて構成されている。操作レバー61を押し込むと(図10において右側に移動させる)、ピン534が長孔611に倣って上動し、図11に示すように、爪531は、圧縮コイルばね54の弾性復元力に抗して凹部26から退避させられる方向に変位し、爪531と凹部26との係合が解除される。この状態でキャップ部材3のねじ部32を緩める方向へ回転させることができ、キャップ部材3を回転体2から取り外し、ワイヤリール7を取り外すことができる。
【0060】
上記構成のワイヤリール支持装置A2においては、ワイヤリール7を取り付ける際に、回転体2に対するキャップ部材3のねじ込み量が所定の量に達したときに、爪531と凹部26とが係合し、ねじ部32が緩む方向へのキャップ部材3の動作が規制され、ロック機構5が機能した状態になる。したがって、本実施形態によれば、キャップ部材3を回転体2にねじ込むといった簡単な作業でねじ部32の緩みを防止することができ、確実にワイヤリール7を装着することができる。
【0061】
ワイヤリール7を交換する際には、操作レバー61を押し込むだけで爪531と凹部26との係合が解除されるため、キャップ部材3、ワイヤリール7を順次簡単に取り外すことができる。また、操作レバー61を押し込んだ際には、圧縮コイルばね54は弾性復元力に抗して圧縮された状態にあるので、操作レバー61を離すと、当該操作レバー61は、初期の位置(図10に示された位置)に戻る。したがって、引き続いてワイヤリール7を装着する際には、キャップ部材3を回転体2にねじ込むだけで、ロック機構5を確実に機能させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワイヤリール支持装置の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0063】
本発明でいう係止部および被係止部の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。また、ロック機構を構成する弾性部材としては、上記実施形態のようにキャップ部材3に設けた板ばね51や圧縮コイルばね54に限定されない。たとえば、キャップ部材として一体成形される成形品の一部に、弾性部材としての機能をもたせてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ワイヤリール支持装置について説明したが、回転体、およびこの回転体にねじ込まれるキャップ部材を備えるねじ接続部材のロック構造は、ワイヤリール支持装置への適用に限定されるものではない。本発明に係るねじ接続部材のロック構造は、回転する部材(回転体)と、この回転体にねじ込まれて回転体と共回りするキャップ部材と、を備える装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
A1,A2 ワイヤリール支持装置
1 固定軸
11 フランジ
2 回転体
21 胴部
22 フランジ
23 ねじ部(第1ねじ部)
24 回り止めピン
25 突出壁
26 凹部(被係止部)
3 キャップ部材
31 つまみ部
32 ねじ部(第2ねじ部)
33 フランジ
4 回転体制動機構
5 ロック機構
51 板ばね(弾性部材)
511 カバー
511b 頂壁(操作量規制部)
514 爪(係止部)
514a 傾斜部
514b 側縁部
52 プレート
521 孔(被係止部、凹部)
522 突片
53 ストッパ
531 爪(係止部)
54 圧縮コイルばね(弾性部材)
6 ロック解除機構
61 操作レバー(操作部)
7 ワイヤリール
73 回り止め孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、を備え、
上記回転体の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられ、上記フランジと上記キャップ部材との間にワイヤリールを介在させて、上記回転体により上記ワイヤリールを一体に回転するように支持する、ワイヤリール支持装置であって、
上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、
操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴とする、ワイヤリール支持装置。
【請求項2】
上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、
上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される、請求項1に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項3】
上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、
上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、
上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される、請求項2に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項4】
上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられた板ばねを含んで構成されている、請求項3に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項5】
上記爪には、この爪が上記凹部に進入したときに、上記第2ねじ部の締め付け方向への回転を許容する傾斜部と、上記第2ねじ部の緩み方向への回転を阻止する側縁部とが形成されている、請求項4に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項6】
上記ロック機構は、上記回転体と上記キャップ部材との間に介装される環状のプレートを備え、
上記プレートには、周方向に沿って上記被係止部が複数設けられており、
上記プレートは、軸方向に延び、かつ上記ワイヤリールと当接して当該ワイヤリールとの相対回転を阻止する突片を備える、請求項5に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項7】
上記プレートは、上記キャップ部材に付属している、請求項6に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項8】
上記操作部は、上記弾性部材に固定されており、
上記キャップ部材には、上記操作部の操作量を規制する操作量規制部が設けられている、請求項3ないし7のいずれかに記載のワイヤリール支持装置。
【請求項9】
固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、
一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、
上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、
操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴とする、ねじ接続部材のロック構造。
【請求項10】
上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、
上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される、請求項9に記載のねじ接続部材のロック構造。
【請求項11】
上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、
上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、
上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される、請求項10に記載のねじ接続部材のロック構造。
【請求項12】
上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられたばねを含んで構成されている、請求項11に記載のねじ接続部材のロック構造。
【請求項1】
固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、を備え、
上記回転体の基端には、径方向外方に延出するフランジが設けられ、上記フランジと上記キャップ部材との間にワイヤリールを介在させて、上記回転体により上記ワイヤリールを一体に回転するように支持する、ワイヤリール支持装置であって、
上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、
操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴とする、ワイヤリール支持装置。
【請求項2】
上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、
上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される、請求項1に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項3】
上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、
上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、
上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される、請求項2に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項4】
上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられた板ばねを含んで構成されている、請求項3に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項5】
上記爪には、この爪が上記凹部に進入したときに、上記第2ねじ部の締め付け方向への回転を許容する傾斜部と、上記第2ねじ部の緩み方向への回転を阻止する側縁部とが形成されている、請求項4に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項6】
上記ロック機構は、上記回転体と上記キャップ部材との間に介装される環状のプレートを備え、
上記プレートには、周方向に沿って上記被係止部が複数設けられており、
上記プレートは、軸方向に延び、かつ上記ワイヤリールと当接して当該ワイヤリールとの相対回転を阻止する突片を備える、請求項5に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項7】
上記プレートは、上記キャップ部材に付属している、請求項6に記載のワイヤリール支持装置。
【請求項8】
上記操作部は、上記弾性部材に固定されており、
上記キャップ部材には、上記操作部の操作量を規制する操作量規制部が設けられている、請求項3ないし7のいずれかに記載のワイヤリール支持装置。
【請求項9】
固定軸と、この固定軸に回転可能に支持され、先端に第1ねじ部を有する回転体と、
一端部につまみ部を有し、かつ他端部に上記第1ねじ部に螺合される第2ねじ部を有するキャップ部材と、
上記キャップ部材に設けられた係止部、および上記回転体に対して相対回転不能とされた被係止部を有し、上記回転体に対する上記キャップ部材のねじ込み量が所定の量に達したときに、上記係止部と上記被係止部との係合により、上記第2ねじ部の緩み方向への動作を規制するロック機構と、
操作部の操作により、上記係止部と被係止部との係合を解除するロック解除機構と、を備えることを特徴とする、ねじ接続部材のロック構造。
【請求項10】
上記係止部は、上記第2ねじ部の軸方向に突出する爪を含んで構成され、
上記被係止部は、上記爪が進入しうる凹部を含んで構成される、請求項9に記載のねじ接続部材のロック構造。
【請求項11】
上記ロック機構は、上記爪の上記軸方向への変位に対して弾性復元力を有する弾性部材を備えて構成されており、
上記操作部は、上記弾性部材に連係されており、
上記係止部は、上記操作部の操作により上記弾性部材の弾性復元力に抗して上記被係止部から退避させられる方向へ変位し、上記係止部と被係止部との係合が解除される、請求項10に記載のねじ接続部材のロック構造。
【請求項12】
上記弾性部材は、端部に上記爪が設けられ、かつ上記キャップ部材に設けられたばねを含んで構成されている、請求項11に記載のねじ接続部材のロック構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−35962(P2012−35962A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177239(P2010−177239)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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