説明

ワイヤレスセンサ・システム、そのワイヤレスセンサ

【課題】センサ側に電源等が不要で、且つ、電源供給用のアンテナの小型化が可能となる。
【解決手段】ワイヤレスセンサ1は、少なくとも、コンデンサ6と接続したセンサコイル5と、感応材2と磁性体3とが一体化されて成る“検知ユニット”を有する。送受信部20は、駆動コイル7、検出コイル8等を有する。感応材2は、任意の検出対象の状態変化に応じて形状(長さ等)が変化し、この形状変化に伴って磁性体3の形状変化が生じることで、センサコイル5のインダクタンスが変化し以ってLC共振周波数が変化し、この周波数変化が検出コイル8で検出されることで、検出対象の状態変化の有無を、送受信部20側で検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の状態を無線で検知可能なワイヤレスセンサなどに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象の状態を無線で検知可能なワイヤレスセンサは、各種のものが提案されているが、殆どの場合、センサ用の電源が必要であった。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載のものがある。以下、図7〜図9を参照して、これら特許文献1〜3の従来技術について説明する。
【0003】
図7は特許文献1のワイヤレスセンサの構成図、図8は特許文献2のワイヤレスセンサの構成図、図9は特許文献3のワイヤレスセンサの構成図である。
まず、図7について説明する。
【0004】
図7に示す特許文献1のワイヤレスセンサ100は、センサの電源101、増幅部102、制御部103、送信部104、アンテナ105等から成る。
電源101は、通常、外部もしくはバッテリから供給する必要があるが、外部供給の場合は、配線の施設や電源供給場所の制約により設置のための場所が制限されることや工事費用が発生する問題があった。バッテリ供給の場合は、バッテリ搭載のためにセンサの寸法が大きくなることやコストがアップすることや、バッテリ交換のための保守費用が発生する問題があった。
【0005】
この問題を解決するためにSAW(表面弾性波)を利用したワイヤレスセンサが提案されている。例えば特許文献2に記載のものがあり、その構成を図8に示す。
図8は特許文献2のワイヤレスSAWセンサ110の基本構成図であり、圧電基板111、アンテナ112、櫛歯電極113等から成るものである。
【0006】
特許文献2の構成の場合、センサ側の電源は不要となるが、電源供給のためのアンテナが大型化する問題があった。
この問題を解決するために磁気共振を利用したワイヤレスセンサが提案されている。例えば特許文献3に記載のものがあり、その構成を図9に示す。
【0007】
図9はワイヤレスセンサ120の基本構成図であり、発信器121、1次コイル122、2次コイル123、コンデンサ124、増幅器125等から成る。
特許文献3の構成の場合、検出対象となるのは、金属もしくは検出対象によりインダクタンスやコンデンサが変化するものに限られるため、種々のセンサへの適用が難しいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−134283号公報
【特許文献2】特開2007−304087号公報
【特許文献3】特開昭59−3284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したことから、センサ側に電源等が不要となるようにし、且つ電源供給のためのアンテナが大型化しないようにすると共に、更に、種々のセンサへの適用が実現できるようにすることが望まれている。
【0010】
本発明の課題は、センサ側に電源等が不要で、電源供給用のアンテナが小形化可能であり、種々のセンシングへの適用が可能で汎用性のあるワイヤレスセンサ・システム、そのワイヤレスセンサなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のワイヤレスセンサ・システムは、ワイヤレスセンサと送受信部とを有するワイヤレスセンサ・システムであって、前記送受信部は、駆動コイルと、該駆動コイルに高周波電流を印加するドライバ部を有し、前記ワイヤレスセンサは、前記駆動コイルと電磁気的に結合する、コンデンサと接続したセンサコイルと、前記センサコイルの内側に配置される、任意の検出対象の状態変化に応じて形状が変化する感応材と、磁性体とが一体化された検知ユニットとを有し、前記送受信部は、前記磁性体の形状変化を、前記コンデンサが接続されたセンサコイルの共振特性の変化として検出する検出コイルを有し、前記任意の検出対象の状態変化に応じて前記感応材の形状が変化することに伴って前記磁性体の形状変化が生じることで、前記検出コイルで前記センサコイルの共振特性の変化が検出される。
【0012】
駆動コイル、コンデンサと接続したセンサコイル、及び磁性体による“LC共振によるワイヤレス検出”の構成に対して、任意の検出対象の状態変化に応じて形状が変化する感応材を磁性体と一体化した構成とする。これにより、センサ側に電源等が不要で且つワイヤレスに、任意の感応材で状態変化を検出可能な検出対象であれば、その状態変化を送受信部側で検知できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤレスセンサ・システム、そのワイヤレスセンサによれば、センサ側に電源等が不要で、電源供給用のアンテナが小形化可能であり、種々のセンシングへの適用が可能で汎用性のあるワイヤレスセンサ・システム、そのワイヤレスセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本例のワイヤレスセンサの全体構成を示す概略図である。
【図2】センシング対象の変化に応じた感応材および磁性体の変化を示す図である。
【図3】送受信部の構成例を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、異方性磁界の印加について説明する為の図である。
【図5】(a)、(b)は、検出コイルで検出される信号の一例を示す。
【図6】ワイヤレスセンサ・システムの等価回路である。
【図7】特許文献1のワイヤレスセンサの構成図である。
【図8】特許文献2のワイヤレスセンサの構成図である。
【図9】特許文献3のワイヤレスセンサの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3は、本例のワイヤレスセンサ・システムの構成/動作を示す図である。
本例のワイヤレスセンサ・システムは、図1に示すワイヤレスセンサ1と、図3に示す送受信部20とから成る。
【0016】
本例のワイヤレスセンサ・システムでは、既存の“LC共振によるワイヤレス検出技術”や、磁歪効果、ビラリ効果を利用する。詳しくは後述する。
本例のワイヤレスセンサ・システムでは、ワイヤレスセンサ1側に電源(バッテリ搭載など)は不要となるが、送受信部20側は電源が必要である。送受信部20側の電源は、従来と同様、外部供給、またはバッテリ搭載などとしてよい。
【0017】
まず、本例のワイヤレスセンサについて、図1と図2を用いて説明する。
図1は本例のワイヤレスセンサ1の全体構成を示す概略図である。図2はワイヤレスセンサ1の動作を説明する概略図である。検出対象の状態の変化(例えば一例としては温度やpH(ピーエッチ;水素イオン濃度指数)の変化)は、ワイヤレスセンサ1の感応材2で検知されて、これが送受信部20にワイヤレスで伝わり、送受信部20で表示される(または外部装置へと伝送される)。送受信部20については、詳しくは後に図3を参照して説明する。
【0018】
以下、まず、ワイヤレスセンサ1について説明する。
図1において、ワイヤレスセンサ1は、感応材2、磁性体3、磁石4、センサコイル5、コンデンサ6等から成る。感応材2と磁性体3と磁石4は、センサコイル5の内側に配置されている。感応材2と磁性体3は、例えば接着剤等によって接着されて一体化されている。尚、この様に感応材2と磁性体3とが一体化されてなる構成を、「感応材2+磁性体3」や“検知ユニット”等と記すものとする。磁石4は、「感応材2+磁性体3」と一体化されている必要はなく、磁性体3の近傍に配置されていればよい。また、コンデンサ6も、「感応材2+磁性体3」とは一体化せずに、任意の位置に設置してもよい。
【0019】
この様に、図では感応材2と磁性体3と磁石4とコンデンサ6とが一体化されているように見えるかもしれないが、実際には、感応材2と磁性体3とが一体化されている必要はあるが、他の構成はその必要はない。
【0020】
尚、図1に示す駆動コイル7と検出コイル8は、後述する送受信部20の構成の一部である。また、センサコイル5とコンデンサ6とは、後に等価回路で示すように有線接続されており、LC回路を構成している。
【0021】
磁性体3は、磁場印加により磁気歪み(磁歪)が発生する磁性体である。印加磁場に対する磁気歪みが大きくなるように、磁性体3は鉄基アモルファス材(鉄系のアモルファス磁性体)とすることが望ましい。これによって、駆動コイル7による印加磁場に対して磁性体3の長さの変化が大きくなり(伸縮が大きくなる)、以って検出コイル8による検出出力(検出信号の振幅)が大きくなる。換言すれば、感度を高めることができ、以ってワイヤレスセンサ1−送受信部20間の距離(検知可能距離)を伸ばすことができる。但し、鉄基アモルファス材とする例に限定するものではない。また、後述するように、磁石4を設けたことによって、検出コイル8の検出出力が更に大きくなる。
【0022】
感応材2は、例えばセンシング対象である温度やpHの変化に応じて変化(伸縮等)する温度応答性材料やpH応答性材料(例えばN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)等)などの感応材である。勿論、この例に限らないが、感応材2は、センシング対象の何らかの変化に応じて伸縮・変形することで、当該感応材2と一体化されている上記磁性体3に歪み(圧力)を与えて変形させて“ビラリ効果”を生じさせるようなものであることが必要である。
【0023】
一例として、感応材2の厚さは1〜2(mm)程度で、磁性体3の厚さは0.1〜0.2(mm)程度のものが用いられる。感応材2と磁性体3は、数μmのシート状の接着剤で接着される。シート状接着剤としては、例えば東亜合成の紫外線硬化型接着剤のPCA−1(5μm)等が用いられる。
【0024】
磁石4は、主に磁性体3に対して異方性磁界を印加するための磁石である。
センサコイル5は、磁性体3の磁気歪みの状態に応じて電磁誘導により磁気特性が変化するコイルである。磁気歪みの状態を電磁誘導によりセンサコイル5で検出するために、感応材2、磁性体3、および磁石4はセンサコイル5内部に設ける必要がある。これに伴って、ワイヤレスセンサ1を小形化する為に例えば磁石4の小形化を実現するために、磁石4は図示のようにシート状の磁石が用いられることが望ましい。磁石をシート状にすることにより、焼結タイプの磁石に比べて薄くできるので、ワイヤレスセンサ1の小形化に寄与できる。尚、シート状の磁石は、既存のものであり、市販されている。
【0025】
コンデンサ6は、センサコイル5に接続してLC共振を行うためのコンデンサである。
駆動コイル7は、磁性体3に磁場を印加するとともに、センサコイル5とともにLC共振を行うコイルである。
【0026】
検出コイル8は、センサコイル5と駆動コイル7の共振状態の変化を検出するためのコイルである。尚、検出コイル8の位置は、図示の例に限らず、センサコイル5と駆動コイル7の共振状態の変化を検出できる位置であれば何処でもよい。例えば、図示の点線で示すように、駆動コイル7に対してワイヤレスセンサ1を挟んで反対側に検出コイル8を設けても良い。この場合、ワイヤレスセンサ1の両端側に、一端に駆動コイル7が設けられ、他端に検出コイル8が設けられることになる。
【0027】
駆動コイル7には例えば高周波電流(一例としては100kHzであるが、この例に限らない)が印加されており、センサコイル5はこの駆動コイル7と電磁気的に結合されたものとなる(磁界結合(磁界共振結合))。検出コイル8と検出部10は、これら駆動コイル7とセンサコイル5の電磁気的な結合状態(特にその変化)を検出する。
【0028】
本例のワイヤレスセンサ・システムでは、上記のように感応材2と磁性体3とを一体化する構成とすることで、感応材2の形状変化によって磁性体3に歪みが生じる(圧が掛かる)構成としている。これによって磁性体3に係る所謂“ビラリ効果”によって、上記LC回路の共振状態(特に共振周波数)が変化するので、この周波数の変化を検出コイル8等で検出することで、センシング対象の温度やpHが変化したことを送受信部20側で検知できる(変化の有無を検知できる;尚、本手法は、どの程度変化したのか(変化量)までも検知するようなものではない)。
【0029】
すなわち、まず、駆動コイル7の印加磁場によって磁性体3の長さ変化が生じる(伸縮が生じる;磁性材料に外部から磁界をかけると、材料が変形する(伸縮する)現象が起こる。これを磁歪という(磁気歪み効果とも呼ばれる))。この伸縮の大きさは、後述するように磁石4によって異方性磁界を印加することによって、大きくなる。磁石4が存在することで、検出コイル8等で検出される信号の周波数や振幅(上記共振周波数や振幅)を変化させることになり、特に振幅を大きくすることになる。つまり、磁石4がある場合は、磁石4が無い場合に比べて、本手法によるワイヤレスセンサ・システムの動作可能距離(検出コイル8の検出出力によるセンシング対象の状態変化の検知可能な距離)が、大きくなる。従って、磁石4は必須の構成要素ではないが、図1のように磁石4がある構成の方が望ましい。
【0030】
図1に示す構成において仮に感応材2を除外した構成を仮想した場合、何らかの形で磁性体3に圧力を加えると、所謂“ビラリ効果”によって、上記共振周波数が変化する(共振特性の変化が生じる)ことになる。本手法では、これを利用して、検出対象の変化に応じて形状が変化する(伸縮する等)性質の上記感応材2を、図1に示すように少なくとも磁性体3と一体化する構成としている。これより、感応材2の形状変化によって磁性体3に圧力が加わることで、“ビラリ効果”によって、検出コイル8での検出信号の周波数が変化する。つまり、感応材2による検出対象の状態変化(温度、pH等の変化)を、共振特性の変化として検出コイル8で検出することができる。
【0031】
上記のことから既に述べたように、感応材2と磁性体3とは、例えば接着剤で接着される等して一体化されている必要がある。尚、磁石4は一体化せずに磁性体3近傍に配置することが望ましい。
【0032】
ここで、磁石4を設けるのは、磁石4によって直流のバイアス磁界(異方性磁界)を印加することで、向きがバラバラな磁気モーメントを一方向に整列させて、駆動コイル7による磁場印加による磁性体3の伸縮が大きくなるようにするためである。磁石4がない場合、磁性体3の伸縮は小さいものとなる。
【0033】
例えば、磁石4がない場合、例えば図4(a)に示すように、磁性体3において各原子の磁気モーメントの向き(点線矢印で示す)がバラバラとなっている。この為、磁性体3に関して所定の一方向(図上、左右方向)への伸縮(実線矢印で示す)は小さくなる。
【0034】
一方、磁石4がある場合には、例えば図4(b)に示すように、磁性体3において各原子の磁気モーメントの向き(点線矢印で示す)が、上記所定の一方向(図上、左右方向)の向きに揃っている(伸縮方向と向きが同じである)。この為、磁性体3に関して上記所定の一方向(図上、左右方向)への伸縮が、大きくなる。尚、この様なことは「磁石4によって異方性磁界を印加する」等と言われる。
【0035】
センシング対象の状態変化を電源レスでかつワイヤレスで検出するために、以上の構成が必要である。
なお、図1の例では検出コイル8は駆動コイル7の内側に配置されているが、駆動コイル7と検出コイル8は別々に配置してもよい。
【0036】
図2には、センシング対象の変化に応じた感応材2および磁性体3の変化の様子を示している。
センシング対象が変化しない場合は図2(a)に示すように、磁性体3の磁気歪みは、駆動コイル7によって印加される磁場の強さのみで決まる。センシング対象が変化した場合は図2(b)に示すように、感応材2の長さ(形)が変化するので(図は感応材2が伸びた場合)、磁性体3の磁気歪みは、感応材2の伸びに応じて変化する。
【0037】
磁性体3の磁気歪みが変化すると、センサコイル5の磁気特性が変化し、駆動コイル7との共振状態が変化するので、結果的に検出コイル8の検出信号(特にその周波数)が変化する。
【0038】
この様に、センシング対象の状態に応じて伸縮する感応材2を用いることで、センシング対象の状態に応じた信号を検出コイル8によりワイヤレスで検出が可能となる。よって、センシング対象の状態が変化すれば、検出コイル8の検出信号(特にその周波数)が変化するので、この変化を後述する検出部10等で検出することで、センシング対象の状態変化の有無を、送受信部20側でモニタできることになる。
【0039】
図3は送受信部の構成例を示すブロック図である。
送受信部20は、上記駆動コイル7と検出コイル8と、ドライバ部9、検出部10、表示・通信部11、電源部12等を有する。ドライバ部9、検出部10、及び表示・通信部11には、それぞれ、電源部12から電力供給されている。
【0040】
ドライバ部9は、駆動コイル7を動作させるためのドライブ回路で構成される。ドライバ部9は、例えば駆動コイル7に高周波電流(上記のように、例えば一例としては100kHz)を印加する。
【0041】
検出部10は、検出コイル8による検出信号を入力して、例えばその周波数(共振周波数)を検出したり、この共振周波数の変化の有無を判定し、これら共振周波数やその変化の有無を、表示・通信部11に対して出力する処理回路等を有する。これは、例えば、CPUによって実現する。この例の場合、CPUは、予めメモリ等に記憶されている所定のアプリケーションプログラムを実行することにより、上記共振周波数の検出やその変化の有無を判定する処理等を実現する。
【0042】
表示・通信部11は、上記検出部10の出力信号をもとに、検出結果の表示または/及び不図示の外部の装置への送信を行う構成であり、ディスプレイまたは/及び不図示のネットワークに接続された通信インタフェース等を有する。
【0043】
以下、上記構成のワイヤレスセンサ・システムの詳細な動作例を記載する。尚、前提として、ドライバ部9によって駆動コイル7に高周波電流を印加している状態にあるものとする。
【0044】
(1)駆動コイル7でセンサコイル5を励磁する。これにより、「センサコイル5+コンデンサ6」と駆動コイル7とでLC共振する。
(2)上記センサコイル5の励磁により、磁性体3が磁歪効果により伸縮する。
【0045】
(3)上記の状態になった後、任意のときに、検出対象が変化すると(温度やpHの変化)、当該検出対象の変化に応じて感応材2が伸縮する。図1、図2に示す構成・動作により、この感応材2の伸縮によって磁性体3が変形する(歪み/圧力が加わった結果)。
【0046】
(4)上記磁性体3の変形によりビラリ効果で磁界が変化してセンサコイル5のインダクタンスが変化する。これにより、「センサコイル5+コンデンサ6」と駆動コイル7とのLC共振周波数が変化する。
【0047】
ここで、図5(a)、(b)に、上記検出コイル8で検出される信号の一例を示す。
図5(a)は通常時、図5(b)は検出対象が変化したときの検出信号の一例である。
尚、図5(a),(b)において、横軸は時間(t)、縦軸は信号の大きさである。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、検出コイル8で検出される信号は、上記駆動コイル7に印加される信号(例えば100kHzの信号;図上、実線で示す)と上記「センサコイル5+コンデンサ6」と励磁コイル7とのLC共振信号(図上、点線で示す)とが混合した信号である。検出部10は、上記駆動コイル7に印加される信号は認識しているので、当然、この信号(実線)を除去することは容易に実現できる。これより、検出部10は、LC共振信号のみを抽出することができ、例えばその周波数を判定することができる。
【0049】
ここで、本構成における上記LC共振信号の周波数、すなわちLC共振周波数は、仮に磁性体3や磁石4や感応材2等が存在しないとした場合、すなわちワイヤレスセンサ1側は基本的にセンサコイル5とコンデンサ6のみでLC回路を構成した場合には、図5(a),(b)に実線で示す信号のようになるものとする(例えばLC共振周波数=100kHz)。
【0050】
これに対して、仮に磁性体3(更に磁石4もあってよい)を図1に示す位置に設けた場合、所謂「磁歪効果」による磁性体3の伸縮に影響されて、上記LC共振信号の周波数、すなわちLC共振周波数が、変化することになる。これは、例えば図5(a)に点線で示す信号の周波数となる。尚、「磁性体3の伸縮の周波数」=「LC共振周波数」になるものと考えてよい。
【0051】
そして、上述した通り、検出コイル8と検出部10では、図5(a)に点線で示す信号のみを抽出することができ(これが上記検出信号に相当する)、その周波数、すなわち上記LC共振信号の周波数、すなわちLC共振周波数を認識することができ、当然、LC共振周波数が変化した場合にはこれを検知することができる。
【0052】
そして、上記のように磁性体3の伸縮状態がLC共振周波数に影響するように構成したことで、感応材2の変形が磁性体3の伸縮状態に影響することで、LC共振周波数が変化することになり、これを検出コイル8で検出することで、センシング対象の状態変化を検知できることになる。
【0053】
すなわち、まず、図5(a)に示す状態は、図1に示す構成において、感応材2が変化(伸縮等)していない状態と見做すことができる。そして、この状態から、感応材2が変化(伸縮等)した場合には、検出コイル8で検出される上記LC共振信号は、例えば図5(b)に一点鎖線で示す信号となる。つまり、上記図5(a)に点線で示す信号と比べて、周波数が変化している(振幅も変化するかもしれないが、ここでは関係ないものとする)。この様に、検出対象の状態変化に応じて感応材2が変化(伸縮等)することで、共振特性の変化(特にLC共振周波数の変化)が生じ、以って検出コイル8での検出信号(上記LC共振信号)の周波数が変化する。
【0054】
検出対象が変化した場合も、検出コイル8で検出される信号は、図5(b)に示す上記駆動コイル7に印加される信号(図上、実線で示す)と上記LC共振信号(図上、一点鎖線で示す)とが混合した信号である。検出部10は、上記通常時と同様、LC共振信号のみを抽出して、その周波数(LC共振周波数)を判定することができる。
【0055】
そして、上記の通り、上記一点鎖線で示す信号の周波数は、上記点線で示す信号の周波数とは、異なっている(尚、振幅も異なるかもしれないが、本手法では周波数変化を検出するので、振幅については特に言及しない)。
【0056】
これより、例えば検出部10は、通常時に(または起動時の初期処理等で)検出した周波数を基準値としてメモリに記憶しておき、その後、随時、周波数を検出して、検出した周波数を上記基準値と比較することで、周波数変化の有無を判定する。そして、周波数が変化した場合には、センシング対象の状態が変化したものとして、その旨を表示・通信部11によって表示させるか又は外部装置(不図示)に通知させることができる。
【0057】
また、図6に、上記ワイヤレスセンサ・システムの等価回路を示す。
図6に示すように、ワイヤレスセンサ1側はセンサコイル5とコンデンサ6によるLC回路が構成され(その他、抵抗成分等もあるが特に言及しない)、送受信部20側は、駆動コイル7とドライバ部9(例えば100kHz交流信号供給源)とから成る。センサコイル5と駆動コイル7とは、電磁気的に結合されたものとなる(磁界結合あるいは磁界共振結合状態)。
【0058】
本例のワイヤレスセンサ・システムは、例えば医療用であり、この場合、ワイヤレスセンサ1の感応材2は、例えば人間の体内に挿入され、体内(血液や体液等)の温度やpHを検知するものとなる。
【0059】
尚、ワイヤレスセンサ1と送受信部20との動作可能距離は、例えば50〜100(cm)程度となる(尚、磁石4が無い場合には、10(cm)程度となる)。
以上説明したように、本例のワイヤレスセンサ・システムは、ワイヤレスセンサ1と送受信部20とを有するワイヤレスセンサ・システムであって、以下の構成を有するものと言える。
【0060】
すなわち、まず、送受信部20は、駆動コイル7と、該駆動コイル7に高周波電流を印加するドライバ部9を有する。ワイヤレスセンサ1は、駆動コイル7と電磁気的に結合する、コンデンサ6と接続したセンサコイル5を有する。ワイヤレスセンサ1は、更に、センサコイル5の内側に配置される、任意の検出対象の状態変化に応じて形状が変化する感応材2と、磁性体3とが一体化された検知ユニットを有する。
【0061】
そして、送受信部20は、磁性体3の形状変化を、上記(コンデンサ6が接続された)センサコイル5の共振特性の変化として検出する検出コイル8を有する。
上記構成により、任意の検出対象の状態変化に応じて感応材2の形状が変化することに伴って磁性体3の形状変化が生じることで、検出コイル8でセンサコイル5の共振特性の変化が検出される。つまり、任意の検出対象の状態変化を、検出コイル8で検出できる。
【0062】
本発明によれば、センサ側への電源やバッテリ供給が不要となるので、電源施設のための配線工事やバッテリ搭載のためのコストやサイズアップがなく、バッテリ交換のための保守費用も発生しないので、小型、低コスト化が可能である。
【0063】
また、磁気的な共振現象を利用してワイヤレスセンシングを行うので、アンテナが大型化することなく、小形化が可能となる。
また、磁歪効果とビラリ効果によるワイヤレス検知システムを利用することで、基本的にはセンシング対象の状態に応じて変形(伸縮等)する感応材であれば何でも適用可能であり、種々のセンシングへの適用が可能で汎用性のあるワイヤレスセンサが実現できる。
【符号の説明】
【0064】
1 ワイヤレスセンサ
2 感応材
3 磁性体
4 磁石
5 センサコイル
6 コンデンサ
7 駆動コイル
8 検出コイル
9 ドライバ部
10 検出部
11 表示・通信部
12 電源部
20 送受信部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスセンサと送受信部とを有するワイヤレスセンサ・システムであって、
前記送受信部は、駆動コイルと、該駆動コイルに高周波電流を印加するドライバ部を有し、
前記ワイヤレスセンサは、
前記駆動コイルと電磁気的に結合する、コンデンサと接続したセンサコイルと、
前記センサコイルの内側に配置される、任意の検出対象の状態変化に応じて形状が変化する感応材と、磁性体とが一体化された検知ユニットとを有し、
前記送受信部は、前記磁性体の形状変化を、前記コンデンサが接続されたセンサコイルの共振特性の変化として検出する検出コイルを有し、
前記任意の検出対象の状態変化に応じて前記感応材の形状が変化することに伴って前記磁性体の形状変化が生じることで、前記検出コイルで前記センサコイルの共振特性の変化が検出されることを特徴とするワイヤレスセンサ・システム。
【請求項2】
前記磁性体には、前記駆動コイルの印加磁場によって伸縮する、磁歪効果が生じるものであることを特徴とする請求項1記載のワイヤレスセンサ・システム。
【請求項3】
前記磁性体の形状変化に応じて、前記検出コイルでの検出信号の周波数が変化することを特徴とする請求項1または2記載のワイヤレスセンサ・システム。
【請求項4】
前記磁性体を鉄系のアモルファス磁性体とすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のワイヤレスセンサ・システム。
【請求項5】
前記磁性体の近傍に、該磁性体に対して異方性磁界を印加する磁石を設けることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のワイヤレスセンサ・システム。
【請求項6】
前記磁石をシート状の磁石とすることを特徴とする請求項5記載のワイヤレスセンサ・システム。
【請求項7】
ワイヤレスセンサと送受信部とを有するワイヤレスセンサ・システムにおける該ワイヤレスセンサであって、
前記送受信部が有する高周波電流が印加された駆動コイルと電磁気的に結合する、コンデンサと接続したセンサコイルと、
前記センサコイルの内側に配置される、任意の検出対象の状態変化に応じて形状が変化する感応材と、磁性体とが一体化された検知ユニットとを有し、
前記任意の検出対象の状態変化に応じて前記感応材の形状が変化することに伴って前記磁性体の形状変化が生じることで、前記センサコイルの共振特性が変化することを特徴とするワイヤレスセンサ・システムのワイヤレスセンサ。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate