説明

ワイヤロープの探傷装置

【課題】搬送に伴う不具合を解消することができるワイヤロープの探傷装置の提供。
【解決手段】本発明は、一対の永久磁石から成る磁石2a,2bとヨーク1とによって構成された磁化器、及び漏洩磁束を検出する磁気センサ3を含む検出部と、装着されたワイヤロープ4が摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部6とを備えたものにおいて、磁性体から成るハンドル11と、このハンドル11を、磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を開く方向に、及び磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えている。ワイヤロープ摺動部6は、磁石2a,2bが収容される筐体本体8aに設け、ハンドル11は、支柱11a,11bと、これらの支柱11a,11b間に延設される延設部11cとを含み、可動機構は、ハンドル11を回動自在に筐体本体8aに保持させ、且つ、直線移動可能に筐体本体8aに保持させる回動保持手段から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ、リフト、ケーブルカー、あるいはクレーン等に使用されるワイヤロープの探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータ、リフト、ケーブルカー、あるいはクレーン等に使用されるワイヤロープは、複数本の鋼線を撚ることによって構成されている。これらのワイヤロープは、疲労や摩耗により構成要素である鋼線が少しずつ破断し、その鋼線の破断数は経年的に増加する傾向にある。破断数が基準値を超えるとワイヤロープは寿命に至ったと判断され、新しいものに交換される。そのため、定期的な検査によりワイヤロープが寿命に至ったかどうか、すなわち現在のワイヤロープが安全に使用できるものかどうかを評価することが必要になる。従来、使用中のワイヤロープの破断数を検査するために目視による検査が行われていた。しかし目視による検査では、ワイヤロープが長い場合には長い点検作業時間を要していた。
【0003】
このようなことから近年、電磁気探傷法を実施する探傷装置、すなわちワイヤロープテスタを用いてワイヤロープの破断数を定量的に計測する装置が、例えば特許文献1,2,3に提案されている。これらの特許文献1,2,3に示される従来の探傷装置は、ワイヤロープを長手方向に磁化し、磁石間に配置された磁気センサを用いて鋼線の破断部分から漏洩する磁束を検出することにより、鋼線の破断数を把握するものであった。
【0004】
なお、特許文献1に示される従来技術は、検出部が、磁石と、磁性体のヨークから成る磁化器を含む構成となっている。検出部はワイヤロープが当てられる探傷時に、ワイヤロープに磁束が投入されるように、非探傷時すなわち通常状態では磁路が開放されている。このため検出部をワイヤロープに近づけると、磁気吸引力が作用し、検出部にワイヤロープが吸引される状態となる。また、特許文献2に示される従来技術は、磁性体とコイルとで磁化器が構成されている。また、特許文献3に示される従来技術は、磁路にスペーサを挟むことでワイヤロープに投入する磁束量をコントロールするものである。この特許文献3に示される従来技術も、特許文献1に示される従来技術と同様に、非探傷時にあっては磁路は開放されたままとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−198684号公報
【特許文献2】特開昭59−650号公報
【特許文献3】特開2009−122074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に示される従来技術は、非探傷時である通常状態で磁路が開放されているので、探傷装置の搬送に際して周囲の磁性体を吸引しやすい。また、強力な磁石を備えている場合には、検出部に磁気カードが接触すると、その磁気カードの情報を壊してしまうことがある。また、特許文献2に示される従来技術は、特許文献1に示される従来技術におけるように搬送時の磁化に関する問題は生じないが、当該探傷装置の他に電源も搬送しなければならず、搬送に労力を要する。特許文献3に示される従来技術は、非探傷時である通常状態で磁路が開放されたままであるので磁束が周囲に漏れ、前述した特許文献1に示される従来技術と同じ問題を生じる。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、搬送に伴う不具合を解消することができるワイヤロープの探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るワイヤロープの探傷装置は、少なくとも1つ以上の磁石とヨークとによって構成された磁化器、及び漏洩磁束を検出する磁気センサを含む検出部と、装着されたワイヤロープが摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部とを備えたワイヤロープの探傷装置において、磁性体と、この磁性体を、前記磁石と前記ヨークを介して形成される磁路を開く方向に、及び前記磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、ワイヤロープ摺動部にワイヤロープが装着されて実施される探傷時には、可動機構によって磁性体を、磁石とヨークを介して形成される磁路を開く方向に移動させることが行われる。このような状態においてワイヤロープ摺動部にワイヤロープを装着させると、磁石から放出される磁束がワイヤロープに投入され、ヨークに帰還する。この間に磁気センサによってワイヤロープからの漏洩磁束が検出され、ワイヤロープの破断数が把握される。このように、電源を要することなく、すなわち電源の搬送の労力を要することなく、ワイヤロープの探傷を実施することができる。
【0010】
また、非探傷時、例えば搬送時には、可動機構によって磁性体を、磁石とヨークを介して形成される磁路を閉じる方向に移動させることが行われる。これにより、外部への磁束の漏洩を抑えることができる。したがって、搬送時に周囲の磁性体を吸引したり、接触した磁気カードの情報を壊してしまう懸念がない。このように本発明は、搬送に伴う不具合を解消することができる。
【0011】
また本発明は、前記発明において、前記ワイヤロープ摺動部を、前記磁石が収容される筐体に設け、前記磁性体は、探傷時に把持されるハンドルから成り、前記ハンドルは、一対の支柱と、これらの支柱間に延設される延設部とを含み、前記可動機構は、前記ハンドルの前記支柱のそれぞれを前記筐体の両側部の該当するものに回動自在に保持させ、且つ、前記ハンドルの前記延設部が前記筐体に近づくように、及び離れるように、前記支柱のそれぞれを前記筐体の両側部の該当するものに移動可能に保持させる回動保持手段から成ることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、前記発明において、前記回動保持手段は、前記筐体の両側部、及び前記ハンドルの前記支柱のうちの一方に形成された長穴と、他方に形成され、前記長穴の長手方向に沿って移動可能に前記長穴に係合する係合突起とから成ることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、前記発明において、前記磁性体は、前記磁石に接触するように、または前記磁石に近づくように移動可能であるとともに、前記磁石から離れるように移動可能な可動体から成り、前記可動機構は、前記可動体を前記磁石に接触するように、または前記磁石に近づくように付勢する付勢手段から成ることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、前記発明において、前記付勢手段は、一端側が前記ヨークに保持され、他端側が前記可動体に係着されるばねから成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、少なくとも1つ以上の磁石とヨークとによって構成された磁化器、及び漏洩磁束を検出する磁気センサを含む検出部と、装着されたワイヤロープが摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部とを備えたものにあって、磁性体と、この磁性体を、磁石とヨークを介して形成される磁路を開く方向に、及び前記磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えたことから、電源の搬送を要することなく探傷を実施することができ、また、搬送時に周囲の磁性体を吸引したり、接触した磁気カードの情報を壊してしまう懸念がなく、従来生じていたような当該探傷装置の搬送に伴う不具合を解消することができる。これにより、当該探傷装置の搬送に際して必要とされる注意を従来に比べて緩やかにすることができ、当該探傷装置を搬送してワイヤロープの探傷を実施する作業者の労力を、従来に比べて軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るワイヤロープの探傷装置の第1実施形態を示す要部分解斜視図である。
【図2】搬送時における第1実施形態の保持形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す要部分解斜視図である。
【図4】探傷時における第2実施形態の保持形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るワイヤロープの探傷装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るワイヤロープの探傷装置の第1実施形態を示す要部分解斜視図、図2は、搬送時における第1実施形態の保持形態を示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態に係る探傷装置は、磁性体から成る角棒状のヨーク1と、このヨーク1の例えば両端に設けられ、永久磁石から成る一対の磁石2a,2bを備えている。これらのヨーク1と一対の磁石2a,2bとによって磁化器が構成されている。一対の磁石2a,2bのそれぞれは、U字状の溝を有する磁性体から成る溝形成体5a,5bのうちの該当するものを接続してある。また、一対の溝形成体5a,5b間のヨーク1部分には、溝形成体5a,5bのU字状の溝と同形状のU字状の溝を有し、漏洩磁束を検出する磁気センサ3を設けてある。前述したヨーク13、磁石2a,2b、及び溝形成体5a,5bと、磁気センサ3とによって、ワイヤロープ4に対する検出部が構成されている。
【0020】
また、この第1実施形態は、前述したヨーク1、一対の磁石2a,2b、溝形成体5a,5b、及び磁気センサ3が収容される筐体本体8aと、ヨーク1、一対の磁石2a,2b、及び磁気センサ3が収容された状態で、筐体本体8aの下側開口部を閉塞するベース部材8bとを備えている。これらの筐体本体8aとベース部材8bとによって、1つの筐体が形成される。筐体本体8aには、探傷が実施されるワイヤロープ4が摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部6を設けてある。このワイヤロープ摺動部6は非磁性体から成っている。前述した溝形成体5a,5bのU字状の溝、及び磁気センサ3のU字状の溝は、ワイヤロープ摺動部6の外周部分に嵌着可能となっている。
【0021】
ベース部材8bには、磁気センサ3の検出値、すなわち検出した漏洩磁束を出力するコネクタ9を固定してある。このコネクタ9は、信号線を介してワイヤロープ4の破断数を演算する検出器10に接続してある。
【0022】
また、この第1実施形態は、磁性体と、この磁性体を、一対の磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を開く方向に、及び磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えている。
【0023】
前述した磁性体は、例えばワイヤロープ4の探傷時に把持されるハンドル11から成っている。このハンドル11は、一対の支柱11a,11bと、例えばこれらの支柱11a,11b間に延設され、これらの支柱11a,11bと一体に設けられる延設部11cとを含み、全体がコ字形状となっている。搬送時等の非探傷時にあっては、ハンドル11の延設部11cは図2に示すように、筐体本体8aに設けたワイヤロープ摺動部6に収容可能となっている。
【0024】
このハンドル11を移動させる可動機構は、ハンドル11の支柱11a,11bのそれぞれを筐体本体8aの両側部の該当するものに回動自在に保持させ、且つ、ハンドル11の延設部11cが筐体本体8aに近づくように、及び離れるように、支柱11a,11bのそれぞれを筐体本体8aの両側部の該当するものに移動可能に保持させる回動保持手段から成っている。
【0025】
例えば、この回動保持手段は、筐体本体8aの両側部のそれぞれに形成され、ワイヤロープ摺動部6の伸長方向と直交する方向に形成された長穴8a1等と、支柱11a,11bそれぞれの内側部分に設けられ、前述した長穴8a1等の長手方向に沿って移動可能に、及び回動可能に長穴8a1等に係合する円柱状の係合突起12aとから成っている。
【0026】
このように構成した第1実施形態は、探傷時には、図2に示す保持形態からハンドル11を少し上方に移動させた後、回動させることが行われる。すなわち、ハンドル11を、磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を開く方向に移動させることが行われる。そして、ハンドル11の延設部11cを把持した状態で、ワイヤロープ摺動部6にワイヤロープ4を装着させて、例えばワイヤロープ4の伸長方向に沿って移動させるようにして探傷が実施される。なお、図2に示す保持形態からハンドル11を少し上方に移動させる際には、支柱11a,11bに設けた係合突起11d等が筐体本体8aの長穴8a1等内を直線移動する。また、ハンドル11を回動させる際には、円柱状の係合突起11d等が長穴8a1等内を回動する。
【0027】
前述のように、ワイヤロープ摺動部6にワイヤロープ4を装着させると、例えば磁石2aから放出される磁束が磁性体から成る溝形成体5aを介してワイヤロープ4に投入され、さらに磁性体から成る溝形成体5bを介して磁石2bに入り、ヨーク1に帰還する。この間に、磁気センサ3によってワイヤロープ4からの漏洩磁束が検出され、この検出された漏洩磁束に相応する信号がコネクタ9から出力され、このコネクタ9に接続された信号線を介して検出器10に送信される。検出器10は、磁気センサ3で検出される漏洩磁束に基づいて、例えばワイヤロープ4中の鋼線の破断数を演算する。すなわち、検出器10によって鋼線の破断数が把握される。この第1実施形態は、永久磁石から成る磁石2a,2bを備えていることから、電源を要することなく、すなわち電源の搬送の労力を要することなく、ワイヤロープ4の探傷を実施することができる。
【0028】
また、非探傷時、例えば搬送時には、前述とは逆にハンドル11を回動させた後、ハンドル11を下方に直線移動させて、ハンドル11の延設部11cを筐体本体8aのワイヤロープ摺動部6に収容させ、図2に示す保持形態とすることが行われる。すなわち、ハンドル11を、磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を閉じる方向に移動させることが行われる。これにより、例えば磁石2aから放出される磁束が溝形成体5aを介して磁性体から成るハンドル11に投入され、さらに溝形成体5bを介して磁石2bに入り、ヨーク1に帰還する。したがって、外部への磁束の漏洩を抑えることができ、搬送時に周囲の磁性体を吸引したり、この第1実施形態に係る探傷装置に接触した磁気カードの情報を壊してしまう懸念がない。
【0029】
このように、第1実施形態に係る探傷装置は、電源の搬送を要することなく探傷を実施することができ、また、搬送時に周囲の磁性体を吸引したり、接触した磁気カードの情報を壊してしまう懸念がなく、当該探傷装置の搬送に伴う不具合を解消することができる。これにより、当該探傷装置の搬送に際して必要とされる注意を緩やかにすることができ、当該探傷装置を搬送してワイヤロープ4の探傷を実施する作業者の労力を軽減させることができる。
【0030】
なお、前述の第1実施形態では、一対の磁石2a,2bを設けた構成にしてあるが、単に1つの永久磁石を設けることによっても探傷は可能である。
【0031】
また、前述の第1実施形態では、筐体本体8aの両側部に長穴8a1等を設け、ハンドル11の支柱11a,11bに長穴8a1等に係合する係合突起11d等を設けた構成にしてあるが、これとは逆に、筐体本体8aの両側部に係合突起を設け、ハンドル11の支柱11a,11bに前述の係合突起が係合する長穴を設けた構成にしてもよい。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態を示す要部分解斜視図、図4は、探傷時における第2実施形態の保持形態を示す斜視図である。
【0033】
第2実施形態に係る探傷装置は、磁性体から成るコ字状のヨーク13と、このヨーク13の例えば両端に設けられ、永久磁石から成る一対の磁石2a,2bを備えている。これらのヨーク13と一対の磁石2a,2bとによって磁化器が構成されている。一対の磁石2a,2bのそれぞれは、U字状の溝を有する磁性体から成る溝形成体5a,5bのうちの該当するものを接続してある。また、一対の溝形成体5a,5b間には、高さ寸法を十分に低く設定され、溝形成体5a,5bのU字状の溝と同形状のU字状の溝を有し、漏洩磁束を検出する磁気センサ3を設けてある。前述したヨーク13、磁石2a,2b、及び溝形成体5a,5bと、磁気センサ3とによって、ワイヤロープ4に対する検出部が構成されている。
【0034】
また、この第2実施形態は、前述した一対の磁石2a,2b、溝形成体5a,5b、及び磁気センサ3が収容される筐体17を備えている。この筐体17には、探傷が実施されるワイヤロープ4が摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部6を設けてある。このワイヤロープ摺動部6は非磁性体から成っている。前述した溝形成体5a,5bのU字状の溝、及び磁気センサ3のU字状の溝は、ワイヤロープ摺動部6の外周部分に嵌着可能となっている。例えば、磁気センサ3は、ワイヤロープ摺動部6に嵌着して、このワイヤロープ摺動部6に保持されるようになっている。
【0035】
磁気センサ3には、この磁気センサ3の検出値、すなわち検出した漏洩磁束を出力するコネクタ9を固定してある。このコネクタ9は、信号線を介してワイヤロープ4の破断数を演算する検出器10に接続してある。
【0036】
また、この第2実施形態も、磁性体と、この磁性体を、一対の磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を開く方向に、及び磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えている。
【0037】
この第2実施形態における磁性体は、同図3に示すように、磁石2a,2bのそれぞれに接触するように、または磁石2a,2bに近づくように移動可能であるとともに、磁石2a,2bのそれぞれから離れるように移動可能な、例えば断面が半円形のかまぼこ状の可動体14から成っている。探傷時にあっては、この可動体14がヨーク13に接触するように把持される。すなわち、可動体14とヨーク13とによって断面積の大きな1つの磁性体が形成される。
【0038】
この可動体14を移動させる可動機構は、可動体14を磁石2a,2bに接触するように、または磁石2a,2bに近づくように付勢する付勢手段から成っている。この付勢手段は、例えば、一端側がヨーク13に保持され、他端側が可動体14に係着される一対のばね15a,15bから成っている。
【0039】
このように構成した第2実施形態は、探傷時には、図4に示すように、可動体14とヨーク13とが把持される。これにより可動体14は、一対のばね15a,15bの付勢力に抗して磁石2a,2bから離れる方向に移動し、ヨーク13に当接する。すなわち、可動体14が磁石2a,2bとヨーク13を介して形成される磁路を開く方向に移動し、前述したようにヨーク13とともに断面積の大きな1つの磁性体を形成する。この状態において、ワイヤロープ摺動部6にワイヤロープ4を装着させ、例えばワイヤロープ4の伸長方向に沿って移動させるようにして探傷が実施される。
【0040】
このとき例えば、磁石2aから放出される磁束が磁性体から成る溝形成体5aを介してワイヤロープ4に投入され、さらに磁性体から成る溝形成体5bを介して磁石2bに入り、可動体14及びヨーク13から成る磁性体に帰還する。この間に、磁気センサ3によってワイヤロープ4からの漏洩磁束が検出され、この検出された漏洩磁束に相応する信号がコネクタ9から出力され、このコネクタ9に接続された信号線を介して検出器10に送信される。検出器10は、磁気センサ3で検出される漏洩磁束に基づいて、例えばワイヤロープ4中の鋼線の破断数を演算する。すなわち、検出器10によって鋼線の破断数が把握される。この第2実施形態も、第1実施形態と同様に永久磁石から成る磁石2a,2bを備えていることから、電源を要することなく、すなわち電源の搬送の労力を要することなく、ワイヤロープ4の探傷を実施することができる。
【0041】
また、非探傷時、例えば搬送時には、一対のばね15a,15bの付勢力によって可動体14が磁石2a,2b方向に移動し、例えば磁性体から成る溝形成体5a,5bに接触する。すなわち、可動体14が磁石2a,2bとヨーク1を介して形成される磁路を閉じる方向に移動する。これにより、例えば磁石2aから放出される磁束が溝形成体5aを介して磁性体から成る可動体14に投入され、さらに溝形成体5bを介して磁石2bに入り、ヨーク13に帰還する。したがって、外部への磁束の漏洩を抑えることができ、搬送時に周囲の磁性体を吸引したり、この第1実施形態に係る探傷装置に接触した磁気カードの情報を壊してしまう懸念がない。すなわち、この第2実施形態も、第1実施形態と同様に、当該探傷装置の搬送に伴う不具合を解消することができ、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ヨーク
2a,2b 磁石
3 磁気センサ
4 ワイヤロープ
5a,5b 溝形成体
6 ワイヤロープ摺動部
8a 筐体本体
8a1 長穴
8b ベース部材
9 コネクタ
10 検出器
11 ハンドル
11a,11b 支柱
11c 延設部
11d 係合突起
13 ヨーク
14 可動体
15a,15b ばね(付勢部材)
17 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の磁石とヨークとによって構成された磁化器、及び漏洩磁束を検出する磁気センサを含む検出部と、装着されたワイヤロープが摺動可能な、または相対的に摺動可能なワイヤロープ摺動部とを備えたワイヤロープの探傷装置において、
磁性体と、この磁性体を、前記磁石と前記ヨークを介して形成される磁路を開く方向に、及び前記磁路を閉じる方向に移動させる可動機構とを備えたことを特徴とするワイヤロープの探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤロープの探傷装置において、
前記ワイヤロープ摺動部を、前記磁石が収容される筐体に設け、
前記磁性体は、探傷時に把持されるハンドルから成り、
前記ハンドルは、一対の支柱と、これらの支柱間に延設される延設部とを含み、
前記可動機構は、前記ハンドルの前記支柱のそれぞれを前記筐体の両側部の該当するものに回動自在に保持させ、且つ、前記ハンドルの前記延設部が前記筐体に近づくように、及び離れるように、前記支柱のそれぞれを前記筐体の両側部の該当するものに移動可能に保持させる回動保持手段から成ることを特徴とするワイヤロープの探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤロープの探傷装置において、
前記回動保持手段は、前記筐体の両側部、及び前記ハンドルの前記支柱のうちの一方に形成された長穴と、他方に形成され、前記長穴の長手方向に沿って移動可能に前記長穴に係合する係合突起とから成ることを特徴とするワイヤロープの探傷装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤロープの探傷装置において、
前記磁性体は、前記磁石に接触するように、または前記磁石に近づくように移動可能であるとともに、前記磁石から離れるように移動可能な可動体から成り、
前記可動機構は、前記可動体を前記磁石に接触するように、または前記磁石に近づくように付勢する付勢手段から成ることを特徴とするワイヤロープの探傷装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤロープの探傷装置において、
前記付勢手段は、一端側が前記ヨークに保持され、他端側が前記可動体に係着されるばねから成ることを特徴とするワイヤロープの探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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