説明

ワイヤーストリップ装置、ワイヤーハーネス圧接機及びワイヤーストリップ方法

【課題】ワイヤーや剥き代の長さに関係なく、常に安定した長さの剥き代が効率良く形成でき、ワイヤーの伸びも生じないワイヤーストリップ装置等を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明のワイヤーストリップ装置1は、ワイヤーWの一端をクランプして引き出すクランプ手段3と、ワイヤーWを所定の長さに切断するワイヤー切断手段5と、ワイヤーWの他端側の被覆Dのみを所定の位置で切断する被覆切断手段7と、他端側の被覆Dを取り除き、芯材Eを露出させる剥き代形成手段9とを備え、上記剥き代形成手段9に上記被覆Dの切断位置近傍を挟持してストリップするストリップ手段67と、該ストリップ手段67から動力が伝達されて凹凸係合構造79、81によって一体に移動する上下一対のワイヤー挟持部65、69を設け、上記ワイヤー切断手段5と被覆切断手段7と剥き代形成手段9をそれぞれ上下一対設けて上側のユニット23と下側のユニット25が一体になって接近、離反するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーの一端をクランプしてワイヤーを所定の長さ引き出すクランプ手段と、該クランプ手段によって引き出されたワイヤーを所定の長さに切断するワイヤー切断手段と、切断されたワイヤーの他端側の被覆のみを所定の位置で切断する被覆切断手段と、切断された被覆の他端側の被覆を取り除き、芯材を露出させる剥き代形成手段とを備えるワイヤーストリップ装置、該ワイヤーストリップ装置を備えるワイヤーハーネス圧接機及び該ワイヤーストリップ装置を使用したワイヤーストリップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の電装品やパーソナルコンピュータ等の電子機器にはワイヤーハーネスと呼ばれている端部にコネクターが取り付けられた複数本のワイヤーが束になった線材が使用されている。このようなワイヤーハーネスを製造する場合には下記の特許文献1に示すようなワイヤーハーネス圧接機が使用され、ワイヤーの端部に対するコネクターの圧接装着が行われていた。
一方、コネクターが装着されるワイヤーの端部と反対側の他方の端部はコネクターが取り付けられる場合と、ワイヤー端部の被覆のみを取り除いて芯材を露出させるいわゆる剥き代が形成される場合とがある。
【0003】
このうち後者の場合には図22に示すようなカッター刃303と、ストリッパー刃305と、押圧手段307とを備えた装置と、ワイヤーWの引出し手段であるメジャークランプユニット301とを組み合わせた機構が使用され、被覆Dの剥し作業を上記押圧手段307から遠く離れた位置にあるメジャークランプユニット301による引張力によって行っていた。
即ち、図22(a)に示すようにカッター刃303によってワイヤーWを切断し、ストリッパー刃305によって被覆Dを切断した後、図22(b)に示すようにメジャークランプユニット301をワイヤーWの引出し方向Aに大きく移動させることによってワイヤーWの端部に芯材Eが露出した所定長さの剥き代Bを形成するようにしていた。
【特許文献1】特開平4−277477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記メジャークランプユニット301による引張力を使用する方式では、ワイヤーWの全長に亘って引張力が作用してしまうため、ワイヤーWの伸び量が大きくなってしまい、ワイヤーWの端部に形成される剥き代Bの長さが安定しないという問題を有していた。
また、上記ワイヤーWの伸びはワイヤーWの長さと関係し、ワイヤーWが長くなるほど剥き代Bの伸びが大きくなる傾向を有していた。
【0005】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、ワイヤーの長さに関係なく、常に安定した長さの剥き代が効率良く形成でき、ワイヤーの伸びも生じないワイヤーストリップ装置、ワイヤーハーネス圧接機及びワイヤーストリップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるワイヤーストリップ装置は、ワイヤーの一端をクランプしてワイヤーを所定の長さ引き出すクランプ手段と、該クランプ手段によって引き出されたワイヤーを所定の長さに切断するワイヤー切断手段と、切断されたワイヤーの他端側の被覆のみを所定の位置で切断する被覆切断手段と、切断された被覆の他端側の被覆を取り除き、芯材を露出させる剥き代形成手段とを備えるワイヤーストリップ装置において、上記剥き代形成手段には上記被覆の切断位置の近傍を挟持してストリップするストリップ手段と、該ストリップ手段から動力が伝達されて凹凸係合構造によって一体に移動する上下一対のワイヤー挟持部とを備えており、更に、上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段はそれぞれ上下一対設けられており、このうち上側のユニットと下側のユニットはそれぞれ一体になって接近、離反するようにそれぞれ別々のベースフレームによって保持されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2によるワイヤーストリップ装置は、請求項1記載のワイヤーストリップ装置において、上記ワイヤー切断手段は上側に配置される上部カッター刃と、該上部カッター刃を保持する上部カッターホルダと、下側に配置される下部カッター刃と、該下部カッター刃を保持する下部カッターホルダとを備えることによって構成されており、上記上部カッター刃と上部カッターホルダの内部には剥き代を形成することによって生じた被覆屑を吸引して排出するためのエア流路が形成されていて、上記下部カッターホルダには複数本のワイヤーを個別に収容することができる櫛歯状の複数のスリット部が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3によるワイヤーストリップ装置は、請求項1または2記載のワイヤーストリップ装置において、上記被覆切断手段は上側に配置され、複数本のワイヤーを個別に切断し得る半円弧状にえぐられた複数の刃部を備えた上部ストリッパー刃と、該上部ストリッパー刃の側傍に設けられ、上部ストリッパー刃と一体に設けられる上部押圧部と、下側に配置され、複数本のワイヤーを個別に切断し得る半円弧状にえぐられた複数の刃部を備えた下部ストリッパー刃と、該下部ストリッパー刃の側傍に設けられ、付勢手段によって上部押圧部側へ突出した状態で配置される下部押圧部とを備えることによって構成されており、上記下部押圧部の押圧面には複数本のワイヤーを個別に保持することができるワイヤーの長手方向に延びる複数本の溝部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4によるワイヤーストリップ装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のワイヤーストリップ装置において、上記剥き代形成手段は上側に配置される上部ワイヤー挟持部と、該上部ワイヤー挟持部をクランプされているワイヤーの一端側に所定ストローク移動させるストリップ手段と、下側に配置される下部ワイヤー挟持部と、該下部ワイヤー挟持部をワイヤーの長手方向に摺動させるガイド機構と、上記下部ワイヤー挟持部がワイヤーの他端側に移動するように付勢する下部スライダ付勢手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項5によるワイヤーストリップ装置は、請求項4記載のワイヤーストリップ装置において、上記ストリップ手段は上記上部ワイヤー挟持部と一体にワイヤーの長手方向に摺動する上部スライダと、該上部スライダの側面に設けられるガイドローラと、揺動支点を中心に所定の角度揺動し、一端に上記ガイドローラと係合する半円弧状にえぐられた係合凹部が形成されている揺動アームと、該揺動アームの他端に摺動子の先端部が接続され、本体が上記上側のベースフレームによって保持されている揺動駆動手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項6によるワイヤーストリップ装置は、請求項4または5記載のワイヤーストリップ装置において、上記上部ワイヤー挟持部と下部ワイヤー挟持部のそれぞれの挟持面にはワイヤーの整列方向に延びる複数本の突条が形成されており、上記上部ワイヤー挟持部の下面におけるワイヤーの整列方向の両端部には下方に向けて突出する係合凸部が設けられており、一方、下部ワイヤー挟持部の上面におけるワイヤーの整列方向の両端部には上記係合凸部と係合する係合凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項7によるワイヤーハーネス圧接機は、巻取りドラムに巻き取られているワイヤーを加工ライン上に繰り出すワイヤー供給装置と、加工ライン上に繰り出されたワイヤーを加工部位に向けて搬送するワイヤー送り装置と、加工部位に向けて搬送したワイヤーを巻取りドラム側に戻すワイヤー戻し装置と、ワイヤーの一端にコネクターを圧接装着するコネクター圧接装置と、ワイヤーの他端に剥き代を形成するワイヤーストリップ装置と、ワイヤーの一端をクランプして引き出す可動チャック装置とを備えるワイヤーハーネス圧接機において、上記ワイヤーストリップ装置として請求項1〜請求項6のいずれかに記載のワイヤーストリップ装置を適用したことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項8によるワイヤーストリップ方法は、ワイヤーの一端をクランプしてワイヤーを所定の長さ引き出すワイヤー引出し工程と、上側のワイヤー切断手段と、被覆切断手段と、剥き代形成手段とを備えた上側のストリッパーユニットと、下側のワイヤー切断手段と、被覆切断手段と、剥き代形成手段とを備えた下側のストリッパーユニットとを接近方向に移動させるストリッパーユニット稼動工程と、上記上側のストリッパーユニットと下側のストリッパーユニットを作用位置に移動させてワイヤーの切断と、被覆の切断と、ワイヤーの保持とを同時に実行する切断・保持工程と、上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段の作用位置はそのままで、剥き代形成手段のみを動作させて剥き代部分の芯材を露出させる剥き代形成工程と、上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段の作用位置はそのままで、ワイヤーの一端をクランプしているクランプ手段をワイヤーの引出し方向に移動させてストリップを完了させると共に当該ワイヤーから分離された被覆屑を吸引、排出するストリップ完了・分離工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
そして上記手段によって以下のような作用が得られる。先ず、クランプ手段を利用してワイヤーの一端を引っ張って被覆を取り除く方式ではなく、被覆の切断位置の近傍をワイヤー挟持部によって挟持し、ストリップ手段によって当該挟持部を所定ストローク移動させることで剥き代を形成する方式を採用したことにより、剥き代の長さが安定し、ワイヤーの伸びが抑えられるようになる。
また、凹凸係合構造の採用によって一対のワイヤー挟持部の上下方向の離間した動きと、ワイヤーの引出し方向の一体の動きとが実現されるようになる。
また、ワイヤーの一端をクランプするクランプ手段と、ワイヤーの被覆を切断する被覆切断手段及びワイヤーに剥き代を形成する剥き代形成手段とを別体に構成することによって剥き代形成時に生ずる被覆と芯材間の摩擦力が小さくなる。
また、ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段をそれぞれ上下一対設け、このうち上側のユニットと下側のユニットをそれぞれ一体になって接近、離反するように構成したことによってワイヤーの切断加工と被覆の切断加工と剥き代の形成加工とがほとんど同時に実行され、加工終了後も同時に原点位置に復帰させることができる。
【0015】
また、上部カッター刃と上部カッターホルダの内部に被覆屑を吸引して排出するためのエア流路を形成した場合には剥き代の形成によって生じた不要な被覆屑は剥き代の形成とほとんど同じタイミングで速やかに外部に排出され、一ヶ所に集められる。
また、下部カッターホルダに櫛歯状の複数のスリット部を形成した場合にはワイヤー間の撚りや交差が防止され、ワイヤーの円滑な切断が実行されるようになる。
【0016】
また、上部ストリッパー刃と下部ストリッパー刃の双方に半円弧状にえぐられたワイヤーの数に対応した複数の刃部を形成した場合には、芯材を傷付けることなく、被覆のみを切断することが可能になる。
また、下部押圧部を付勢手段によって突出傾向が付与された可動状態で設けることによってワイヤーの過剰な押圧力が防止され、上部ストリッパー刃と下部ストリッパー刃の円滑な被覆の切断の妨げにもならない。
また、下部押圧部の押圧面にワイヤーの長手方向に延びる複数本の溝部を形成した場合には、ワイヤー間の撚りや交差が防止され、被覆の円滑な切断が実行されるようになる。
【0017】
また、被覆の切断位置の近傍を挟持している上部ワイヤー挟持部を形成するワイヤーの剥き代分だけ所定ストローク移動させるストリップ手段を設けた場合にはワイヤーの全長に伸びを生じさせるような引っ張り方向の過剰なストレスを掛けることなく剥き代の形成加工を実行できるようになる。
また、ガイド機構を設けた場合にはワイヤーの移動方向を水平に保って円滑なワイヤーの移動が実行できるようになり、下部スライダ付勢手段を設けた場合には剥き代の形成加工の終了と同時に当初の位置に下部ワイヤー挟持部を速やかに戻すことができる。
【0018】
また、上部ワイヤー挟持部と一体の上部スライダを設けた場合には上部ワイヤー挟持部が水平方向に円滑に移動できるようになる。
また、揺動アームと揺動駆動手段を設けた場合には力点となるガイドローラに強い力を伝達できるようになり、円滑な上部ワイヤー挟持部の移動が実行できるようになる。
また、上部ワイヤー挟持部と下部ワイヤー挟持部のそれぞれの挟持面にワイヤーの整列方向に延びる複数本の突条を形成した場合には上下のワイヤー挟持部に作用するグリップ力が向上し、ワイヤー移動時の滑りが防止される。
また、上部ワイヤー挟持部の下面におけるワイヤーの整列方向の両端部に係止凸部を設け、下部ワイヤー挟持部の上面におけるワイヤーの整列方向の両端部に上記係合凸部と係合する係合凹部を設けた場合には上記ワイヤーの挟持作用に影響を与えることなく、上記係合凸部と係合凹部による係合作用によって上部ワイヤー挟持部と下部ワイヤー挟持部を確実に係合させて一体の部材としてワイヤーの引出し方向に移動させることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のワイヤーストリップ装置、ワイヤーハーネス圧接機及びワイヤーストリップ方法によると、被覆を無理に引っ張ることなく、しかも被覆の切断位置の近傍を挟持してワイヤーの剥き代分だけ引っ張るようにしたから剥き代の長さが安定し不揃いにならない。また、剥き代形成時に生ずる被覆と芯材間の摩擦力が小さくなることもあってワイヤーの伸びも生じない。
また、ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段とをベースフレームに固定して上下のユニットを一体に接近、離反するように構成したことにより、ワイヤーの切断と、被覆の切断と、剥き代の形成との一連の加工をほとんど同時に実行でき、短時間で剥き代を形成できるようになる。
【0020】
また、下部カッターホルダに形成される櫛歯状の複数のスリット部や下部押圧部の押圧面に形成される溝部によってワイヤーの整列状態が維持されるからワイヤーや被覆の円滑な切断が実行される。
また、下部押圧部を付勢手段によって突出傾向が付与された可動状態で設け、上下のワイヤー挟持部の挟持面におけるワイヤーの整列方向の両端部に係合凸部と係合凹部とによって構成される凹凸係合構造を設けることによってワイヤーに対する過剰な挟持力が防止され、ワイヤーの破損や損傷を防止しつつ、上部ワイヤー挟持部と下部ワイヤー挟持部を確実に係合させ、一体にワイヤーの引出し方向に移動させてワイヤーの他端に剥き代を形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図示の実施の形態を例にとって、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す切断・保持工程時の側断面図、図2は同上、ワイヤー加工部位周辺を拡大して示す側断面図、図3は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す剥き代形成工程時の側断面図、図4は同上、ワイヤー加工部位周辺を拡大して示す側断面図、図5は本発明のワイヤーストリップ装置の要部を拡大して示す側断面図、図6は図5中のA−A矢視図、図7は図5中のB−B矢視図、図8は図5中のC−C矢視図、図9は図5中のD−D矢視図、図10は図5中のE−E矢視図である。
【0022】
また、図11は上部ストッパー刃を拡大して示す正面図、図12は下部ストリッパー刃を拡大して示す正面図、図13は上部ストリッパー刃と下部ストリッパー刃によってワイヤーの被覆が切断される様子を示す拡大正面図、図14は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すワイヤー引出し工程時の側断面図、図15は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリッパーユニット稼動工程時の側断面図、図16は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリップ完了・分離工程時の側断面図、図17は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリッパーユニット原点復帰工程時の側断面図、図18は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す製品取出し・ワイヤー戻し工程時の側断面図、図19は本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すコネクター圧接工程時の側断面図、図20は本発明のワイヤーストリップ装置によって剥き代が形成されたワイヤーハーネスを示す側面図、図21は本発明のワイヤーストリップ装置を適用したワイヤーハーネス圧接機を示す側断面図である。
【0023】
本実施の形態では一例として図20に示すようにワイヤーWの一端にコネクターCが圧接装着され、ワイヤーWの他端に剥き代Bが形成されたワイヤーハーネス100を例にとって、該ワイヤーハーネス100を製造する場合に使用される図21に示すようなワイヤーハーネス圧接機201と、該ワイヤーハーネス圧接機201に適用されるワイヤーストリップ装置1とについて、該ワイヤーストリップ装置1の構成を中心にワイヤーハーネス圧接機201の概要を説明し、その後、該ワイヤーストリップ装置1を使用することによって実行されるワイヤーストリップ方法について説明する。
【0024】
ワイヤーハーネス圧接機201には巻取りドラム203に巻き取られているワイヤーWを加工ライン205上に繰り出すワイヤー供給装置207と、加工ライン205上に繰り出されたワイヤーWを加工部位209に向けて搬送するワイヤー送り装置211と、加工部位209に向けて搬送したワイヤーWを巻取りドラム203側に戻すワイヤー戻し装置213と、ワイヤーWの一端にコネクターCを圧接装着するコネクター圧接装置215と、ワイヤーWの他端に剥き代Bを形成するワイヤーストリップ装置1と、ワイヤーWの一端をクランプして引き出す可動チャック装置217とを備えている。
【0025】
尚、ワイヤーストリップ装置1を除く、上記ワイヤーハーネス圧接機201の他の構成については既存或いはこれから開発される種々の構成が適用可能であるので、ここでの説明は省略する。
また、上記可動チャック装置217はワイヤーストリップ装置1の動きと密接に関係する部材であるため、以下の説明ではワイヤーストリップ装置1の構成部材に含め、クランプ手段3として説明する。
【0026】
本発明のワイヤーストリップ装置1は、ワイヤーWの一端をクランプしてワイヤーWを所定の長さ引き出すメジャー機能を備えたクランプ手段3と、該クランプ手段3によって引き出されたワイヤーWを所定の長さに切断するワイヤー切断手段5と、切断されたワイヤーWの他端側の被覆Dのみを所定の位置で切断する被覆切断手段7と、切断された被覆Dの他端側の被覆Dを取り除き、芯材Eを露出させる剥き代形成手段9とを備えることによって基本的に構成されている。
【0027】
クランプ手段3は、複数本のワイヤーWを幅方向に整列させた状態でクランプできるクランプチャック部11と、該クランプチャック部11を保持し、ワイヤーWの引出し方向A及び戻し方向Fに摺動し得るリニアブロック13と、該リニアブロック13と係合するガイドレール15とによって構成される往復摺動手段であるリニアガイド16を備えている。
尚、上記クランプ手段3はワイヤーWの長さを設定するメジャー機能と、製品であるワイヤーハーネス100を取り出す排出手段としての機能と、切断した不要な被覆屑Gと上記ワイヤーハーネス100とを分離するストリップ機能とを備えている。
【0028】
ワイヤー切断手段5は、後述する被覆切断手段7及び剥き代形成手段9と共にそれぞれ上下一対設けられており、それぞれ別々の上部ベースフレーム19と下部ベースフレーム21とによって保持されている。
尚、上部ベースフレーム19によって保持される上側のユニットを上部ストリッパーユニット23、下部ベースフレーム21によって保持される下側のユニットを下部ストリッパーユニット25として識別する。
そして、上部ストリッパーユニット23は上部に設けられる昇降手段27とガイド手段29とによって上下方向Hに垂直に昇降移動できるようになっており、下部ストリッパーユニット25は下部に設けられる昇降手段31とガイド手段33とによって上下方向Hに垂直に昇降移動できるようになっている。
また、上部ストリッパーユニット23と下部ストリッパーユニット25は互いに接近、離反するように構成されている。
【0029】
ワイヤー切断手段5は上部ストリッパーユニット23側に配置される上部カッター刃35と、該上部カッター刃35を保持する上部カッターホルダ37と、下部ストリッパーユニット25側に配置される下部カッター刃39と、該下部カッター刃39を保持する下部カッターホルダ41とを備えることによって基本的に構成されている。
上部カッター刃35は薄手の矩形平板状のカッター刃で、先端にワイヤーWの引出し方向A側を斜めにカットした片刃状の刃部が形成されている。また上部カッター刃35はブロック状の上部カッターホルダ37によって保持されており、上部カッター刃35と上部カッターホルダ37の内部には剥き代Bを形成することによって生じた被覆屑Gを吸引して排出するための図示しないエア吸引装置と接続されているエア流路43が形成されている。
【0030】
下部カッター刃39は厚手の矩形平板状のカッター刃で、先端にワイヤーWの戻し方向F側を斜めにカットした片刃状の刃部が形成されている。また下部カッター刃39はブロック状の下部カッターホルダ41によって保持されており、下部カッターホルダ41には複数本のワイヤーWを個別に収容することができる図10に示すような櫛歯状の複数のスリット部45が形成されている。
そしてこれらのスリット部45にワイヤーWが個別に収容されることによってワイヤーWの撚りや交差が防止されて、ワイヤーWの円滑な送りが可能になっている。
【0031】
被覆切断手段7は上部ストリッパーユニット23側に配置される上部ストリッパー刃47と、該上部ストリッパー刃47のワイヤーWの引出し方向A側の側傍において上部ストリッパー刃47と一体に設けられる上部押圧部49と、下部ストリッパーユニット25側に配置される下部ストリッパー刃51と、該下部ストリッパー刃51のワイヤーWの引出し方向A側の側傍において付勢手段である圧縮コイルバネ53によって上部押圧部49側へ突出した状態で配置される下部押圧部55とを備えることによって基本的に構成されている。
【0032】
上部ストリッパー刃47と下部ストリッパー刃51は図11〜13に示すように共に矩形平板状をしており、対向する先端部には複数の刃部57、59が形成されている。またそれぞれの刃部57、59は対向する位置に設けられており、複数本のワイヤーWを個別に切断し得るよう半円弧状にえぐられた形状を有している。
そしてワイヤーWの被覆Dの切断に当たっては図13に示すように上部ストリッパー刃47と下部ストリッパー刃51との間に隙間Sが形成され、刃部57と刃部59は芯材Eには至らない芯材E近傍の被覆Dの途中までの部分に進入し、切断する。
【0033】
従って被覆Dには非切断部Kが残るが、後述する剥き代形成手段9による作用によってワイヤーWが移動する際に上記非切断部Kが破断されるため、芯材Eを傷付けることなく、被覆Dのみを切断できるようになっている。
また圧縮コイルバネ53によって上方に突出されるように付勢されている下部押圧部55の押圧面61には図7に示すように複数本のワイヤーWを個別に保持することができるワイヤーWの長手方向に延びる複数本の溝部63が整列状態で形成されている。
【0034】
従って上部押圧部49と下部押圧部55とによって上下から押圧されるワイヤーWは、上記下部押圧部55側に形成されている溝部63に嵌って、整列状態で保持されると共に、上記圧縮コイルバネ53の弾性作用によって過剰な押圧力が生じないようになっており、次に述べる剥き代形成手段9によるワイヤーWの移動を妨げるようなこともない。
【0035】
剥き代形成手段9は上部ストリッパーユニット23側の上記上部ストリッパー刃47の近傍位置に配置される上部ワイヤー挟持部65と、該上部ワイヤー挟持部65をクランプされているワイヤーWの一端側に所定ストローク移動させるストリップ手段67と、下部ストリッパーユニット25側の上記下部ストリッパー刃51の近傍位置に配置される下部ワイヤー挟持部69と、該下部ワイヤー挟持部69をワイヤーWの長手方向に摺動させるガイド機構71と、上記下部ワイヤー挟持部69がワイヤーWの他端側に移動するように付勢する下部スライダ付勢手段73とを備えることによって基本的に構成されている。
【0036】
上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69はブロック状の部材であり、対向するそれぞれの挟持面にはワイヤーWの整列方向Lに延びる複数本の突条75、77が形成されている。また対向するそれぞれの挟持面におけるワイヤーWの整列方向Lの両端部には上部ワイヤー挟持部65側に係合凸部79、下部ワイヤー挟持部69側に係合凹部81が設けられており、上記係合凸部79が係合凹部81と係合することによって上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69とがワイヤーWの引出し方向Aに一体になって移動できるようになっている。
尚、上記突条75、77を設けることによって上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69のワイヤーWに対するグリップ力が向上し、滑りを生じさせることなく、確実にワイヤーWを所定ストローク移動できるようになる。
【0037】
ガイド機構71は図7、8に示すように下部ワイヤー挟持部69を保持するスライドベース72と、ワイヤーWの整列方向Lに所定の間隔を隔てて配置されている2組のリニアガイド83、83とによって構成されている。リニアガイド83はガイドレール85と、ガイドレール85と係合して案内されるスライダブロック87とによって構成されており、一例として下部ベースフレーム21側に2本のガイドレール85、85を、そしてスライドベース72側に2つのスライダブロック87、87をそれぞれ取り付けるように構成されている。
下部スライダ付勢手段73は図7、8に示すように上記2組のリニアガイド83、83の中間に配置されている2本の圧縮コイルバネ89、89によって構成されている。そして2本の圧縮コイルバネ89、89の一端が上記スライドベース72に係止され、2本の圧縮コイルバネ89、89の他端が下部ベースフレーム21の一部に係止されることで、スライドベース72は常時、ワイヤーWの戻し方向Fに付勢されるようになっている。
【0038】
ストリップ手段67は上述した上部ワイヤー挟持部65と一体にワイヤーWの長手方向に摺動する上部スライダ91と、該上部スライダ91の一例として内側面に2個設けられているガイドローラ93、93と、揺動支点95を中心に所定の角度(例えば約20°)揺動する揺動アーム97と、該揺動アーム97を駆動する揺動駆動手段99とを基本的に備えることによって構成されている。
上部スライダ91は上述した上部ベースフレーム19に対してワイヤーWの長手方向に摺動自在に設けられるブロック状の部材である。上部スライダ91の上面には平面視矩形状の凹陥部101が設けられており、該凹陥部101の左右の内側面に対して上記2個のガイドローラ93、93が遊転可能な状態で取り付けられている。
【0039】
揺動アーム97は図5に示すように揺動支点95から上方の部分がワイヤーWの引出し方向Aに幾分屈曲した形状をしたブロック状の部材である。揺動アーム97の下端には上記ガイドローラ93と係合する半円弧状にえぐられた係合凹部103が形成されている。
また、上記揺動支点95を挟んで揺動アーム97の他端側には連結穴105が形成されており、該連結穴105を貫通する連結ピン107によって揺動駆動手段99と回転自在に接続されている。
揺動駆動手段99は一例としてエアシリンダ109によって構成されており、エアシリンダ109のシリンダ本体111は上部ベースフレーム19にブラケット113を介して水平に固定されている。そしてエアシリンダ109の摺動子の先端部115は上記連結ピン107によって上記揺動アーム97の連結穴105と回転自在に接続されている。
【0040】
次にこのようにして構成されるワイヤーストリップ装置1を使用することによって実行される本発明のワイヤーストリップ方法について図1〜図4及び図14〜図19に基づいて説明する。
本実施の形態に係るワイヤーストリップ方法は、(1)ワイヤー引出し工程と、(2)ストリッパーユニット稼動工程と、(3)切断・保持工程と、(4)剥き代形成工程と、(5)ストリップ完了・分離工程と、(6)ストリッパーユニット原点復帰工程と、(7)製品取出し・ワイヤー戻し工程と、(8)コネクター圧接工程とを順次実行することによって構成されている。
【0041】
(1)ワイヤー引出し工程(図14参照)
ワイヤー引出し工程はワイヤーWの一端をクランプしてワイヤーWを所定の長さ引き出す工程である。尚、ワイヤーWの一端には前工程においてコネクターCがコネクター圧接装置215によって圧接装着されている。そしてこのようなワイヤーWの一端に対してクランプチャック部11が近付き、整列された複数本のワイヤーWの一端を一挙にクランプしてワイヤーWの引出し方向Aに向かってワイヤーWを引き出す。尚、この時の引出し量によって製品となるワイヤーハーネス100に使用されるワイヤーWの長さが設定される。
【0042】
(2)ストリッパーユニット稼動工程(図15参照)
ストリッパーユニット稼動工程は上部ストリッパーユニット23と下部ストリッパーユニット25とを接近方向に移動させる工程である。即ち、昇降手段27を駆動して上部ストリッパーユニット23をガイド手段29によって垂直方向に案内させながら下方に移動させる。また上記上部ストリッパーユニット23の動きに連動するように、昇降手段31を駆動して下部ストリッパーユニット25をガイド手段33によって垂直方向に案内させながら上方に移動させる。
【0043】
(3)切断・保持工程(図1、2参照)
切断・保持工程は上部ストリッパーユニット23と下部ストリッパーユニット25とを作用位置に移動させてワイヤーWの切断と、被覆Dの切断とワイヤーWの保持とを同時に実行する工程である。即ち、下部カッターホルダ41に形成されているスリット部45によってワイヤーWは1本ずつ個別に保持された状態で、上記上部カッター刃35と下部カッター刃39とが交差することによってワイヤーWを所定の長さで切断する。
そして該ワイヤーWの切断位置近傍のワイヤーWの引出し方向A側の位置では上記上部押圧部49と下部押圧部55の押圧力によって保持されている状態のワイヤーWに対して上部ストリッパー刃47と下部ストリッパー刃51が上下から作用して被覆Dを切断する。また被覆Dの切断位置近傍のワイヤーWの引出し方向A側の位置では上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69とによる挟持力によってワイヤーWは確実に挟持された状態になっている。
【0044】
(4)剥き代形成工程(図3、4参照)
剥き代形成工程は、ワイヤー切断手段5と被覆切断手段7の作用位置はそのままで、剥き代形成手段9のみを動作させて剥き代B部分の芯材Eを露出させる工程である。即ち、エアシリンダ109を駆動させて摺動子のみを突出させ、揺動アーム97の連結穴105側の部分をワイヤーWの戻し方向Fに移動させる。
これに伴って揺動アーム97は揺動支点95を中心にして所定の角度揺動し、係合凹部103側をワイヤーWの引出し方向Aに移動させる。そして当該係合凹部103の移動に伴って係合凹部103に係合しているガイドローラ93を介して上部スライダ91と該上部スライダ91と一体の上部ワイヤー挟持部65も同方向に移動するようになる。
【0045】
また上記上部ワイヤー挟持部65の動きは係合凸部79と係合凹部81とによる凹凸係合構造を介して下部ワイヤー挟持部69にも伝達され、下部ワイヤー挟持部69は一体に設けられるスライドベース72と共に圧縮コイルバネ89の付勢力に抗してリニアガイド83によって案内され、ワイヤーWの引出し方向Aに上記上部ワイヤー挟持部65と一体になって移動する。
そしてこの状態では上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69が移動した分、上部ワイヤー挟持部65及び下部ワイヤー挟持部69とクランプチャック部11との間の距離が狭まるため、当該部位のワイヤーWは図示のように幾分撓んだ形状になる。
【0046】
尚、上記上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69の移動量は揺動アーム97の揺動角度を調整することによって調整でき、ワイヤーWの切断位置と被覆Dの切断位置との間の被覆Dを被覆屑Gとして完全に取り去る全ストリップ状態と、ワイヤーWの切断位置と被覆Dの切断位置との間の被覆DをワイヤーWの戻し方向Fにずらしたハーフストリップ状態との切替えが可能になっている。
またワイヤーWは上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69の移動に際しても被覆切断手段7における上部押圧部49と下部押圧部55の押圧力を受けているが、その押圧力は強固ではないため、圧縮コイルバネ53の収縮方向の変形によってワイヤーWは上部押圧部49と下部押圧部55との間を滑って引出し方向Aに移動することができるようになっている。
【0047】
(5)ストリップ完了・分離工程(図16参照)
ストリップ完了・分離工程はワイヤー切断手段5と被覆切断手段7と剥き代形成手段9の作用位置は上記剥き代形成工程のままで、クランプ手段3をワイヤーWの引出し方向Aに移動させることによって撓んでいたワイヤーWを緊張状態にしてストリップを完了させると共に製品となるワイヤーハーネス100から分離された被覆屑Gを吸引、排出する工程である。
即ちクランプチャック部11をワイヤーWの引出し方向Aに移動させると同時に図示しないエア吸引装置を作動させて上記製品から分離された被覆屑Gをエア流路43内に進入させて外部に排出する。
【0048】
(6)ストリッパーユニット原点復帰工程(図17参照)
ストリッパーユニット原点復帰工程は上部ストリッパーユニット23と下部ストリッパーユニット25とを離反方向に移動させる工程である。即ち、昇降手段27を駆動して上部ストリッパーユニット23をガイド手段29によって垂直方向に案内させながら上方に移動させて、原点位置に復帰させる。また上記上部ストリッパーユニット23の動きに連動するように、昇降手段31を駆動して下部ストリッパーユニット25をガイド手段33によって垂直方向に案内させながら下方に移動させて、原点位置に復帰させる。
【0049】
(7)製品取出し・ワイヤー戻し工程(図18参照)
製品取出し・ワイヤー戻し工程は完成したワイヤーハーネス100を製品として外部に取り出し、ワイヤーWを戻し方向Fに戻す工程である。
即ちクランプチャック部11を拡開状態にして製品となるワイヤーハーネス100を外部に取り出す。また同時にワイヤー戻し装置213を作動させて、ワイヤーWの切断された新たな一端をコネクター圧接装置215におけるコネクターCの圧接位置に移動させる。
【0050】
(8)コネクター圧接工程(図19参照)
コネクター圧接工程はワイヤーWの一端にコネクターCを圧接装着する工程である。即ち、コネクターCの圧接位置に位置しているワイヤーWの一端に対してコネクターCを供給して被せ、上下から圧接してワイヤーWの被覆Dの一部を破いて、コネクターC側の接点に芯材Eを圧接させてワイヤーWとコネクターCとの間の電気的導通を図るようにする。
【0051】
以上、本実施の形態によると、次のような効果を奏することができる。先ず、被覆Dを無理に引っ張ることなく、しかも被覆の切断位置の近傍を挟持してワイヤーの剥き代分だけ引っ張るようにしたから剥き代Bの長さが安定し不揃いにならない。また剥き代B形成時に生ずる被覆Dと芯材E間の摩擦力が小さくなることもあってワイヤーWの伸びも生じない。
また、ワイヤー切断手段5と被覆切断手段7と剥き代形成手段9とを上下の上部ベースフレーム19、21に固定して上下の上部ストリッパーユニット23、25を一体に接近、離反するように構成したことにより、ワイヤーWの切断と、被覆Dの切断と、剥き代Bの形成との一連の加工をほとんど同時に実行でき、短時間で剥き代Bを形成できるようになる。
【0052】
また、下部カッターホルダ41に形成される櫛歯状の複数のスリット部45や下部押圧部55の押圧面61に形成される溝部63によってワイヤーWの整列状態が維持されるからワイヤーWや被覆Dの円滑な切断が実行される。
また、下部押圧部55を付勢手段である圧縮コイルバネ53によって突出傾向が付与された可動状態で設け、上下のワイヤー挟持部65、69の挟持面におけるワイヤーWの整列方向Lの両端部に係合凸部79と係合凹部81とによって構成される凹凸係合構造を設けることによってワイヤーWに対する過剰な挟持力が防止され、ワイヤーWの破損や損傷を防止しつつ、上部ワイヤー挟持部65と下部ワイヤー挟持部69を確実に係合させ、一体にワイヤーWの引出し方向Aに移動させてワイヤーWの他端に剥き代Bを形成できるようになる。
【0053】
尚、本発明のワイヤーストリップ装置1、ワイヤーハーネス圧接機201及びワイヤーストリップ方法は上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば本発明のワイヤーストリップ装置1は図20に示すようなワイヤーハーネス100を製造する場合のワイヤーWの他端側での剥き代Bの形成に使用する場合に限らず、ワイヤーW単体でのどちらか一端あるいは両端での剥き代Bの形成に使用することが可能である。従ってワイヤーハーネス圧接機201と切り離してワイヤーストリップ装置1単独でも使用可能である。
また本発明のワイヤーストリップ方法は基本的にはワイヤー引出し工程と、ストリッパーユニット稼動工程と、切断・保持工程と、剥き代形成工程と、ストリップ完了・分離工程とを備えていればよく、特に上記のようにワイヤーハーネス圧接機201と切り離してワイヤーストリップ装置1単独で使用する場合にはコネクター圧接工程は不要となる。
また上下のワイヤー挟持部65、69に設けられている係合凸部79と係合凹部81はどちら側に設けられていてもよく、上部ワイヤー挟持部65に係合凹部81を設け、下部ワイヤー挟持部69に係合凸部79を設けるようにすることも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は自動車等の電装品として、あるいはパーソナルコンピュータ等の電子機器に使用されているワイヤーハーネスや電気線材として使用されているワイヤー等の製造、使用分野等で利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す切断・保持工程時の側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、図1におけるワイヤー加工部位周辺を拡大して示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す剥き代形成工程時の側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、図3におけるワイヤー加工部位周辺を拡大して示す側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置の要部を拡大して示す側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、図5中のA−A矢視図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、図5中のB−B矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図で、図5中のC−C矢視図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図で、図5中のD−D矢視図である。
【図10】本発明の実施の形態を示す図で、図5中のE−E矢視図である。
【図11】本発明の実施の形態を示す図で、上部ストリッパー刃を拡大して示す正面図である。
【図12】本発明の実施の形態を示す図で、下部ストリッパー刃を拡大して示す正面図である。
【図13】本発明の実施の形態を示す図で、下部ストリッパー刃と下部ストリッパー刃によってワイヤーの被覆が切断されている様子を示す拡大正面図である。
【図14】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すワイヤー引出し工程時の側断面図である。
【図15】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリッパーユニット稼動工程時の側断面図である。
【図16】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリップ完了・分離工程時の側断面図である。
【図17】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すストリッパーユニット原点復帰工程時の側断面図である。
【図18】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示す製品取出し・ワイヤー戻し工程時の側断面図である。
【図19】本発明の実施の形態を示す図で、本発明のワイヤーストリップ装置とコネクター圧接装置を示すコネクター圧接工程時の側断面図である。
【図20】本発明のワイヤーストリップ装置によって剥き代が形成されたワイヤーハーネスを示す側面図である。
【図21】本発明のワイヤーストリップ装置を適用したワイヤーハーネス圧接機を示す側断面図である。
【図22】従来例を示す図で、メジャークランプユニットを使用した従来のワイヤーストリップ方法を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ワイヤーストリップ装置
3 クランプ手段
5 ワイヤー切断手段
7 被覆切断手段
9 剥き代形成手段
11 クランプチャック部
13 リニアブロック
15 ガイドレール
16 リニアガイド
17 駆動モータ
19 上部ベースフレーム
21 下部ベースフレーム
23 上部ストリッパーユニット
25 下部ストリッパーユニット
27 昇降手段
29 ガイド手段
31 昇降手段
33 ガイド手段
35 上部カッター刃
37 上部カッターホルダ
39 下部カッター刃
41 下部カッターホルダ
43 エア流路
45 スリット部
47 上部ストリッパー刃
49 上部押圧部
51 下部ストリッパー刃
53 圧縮コイルバネ(付勢手段)
55 下部押圧部
57 刃部
59 刃部
61 押圧面
63 溝部
65 上部ワイヤー挟持部
67 ストリップ手段
69 下部ワイヤー挟持部
71 ガイド機構
72 スライドベース
73 下部スライダ付勢手段
75 突条
77 突条
79 係合凸部(凹凸係合構造)
81 係合凹部(凹凸係合構造)
83 リニアガイド
85 ガイドレール
87 スライダブロック
89 圧縮コイルバネ
91 上部スライダ
93 ガイドローラ
95 揺動支点
97 揺動アーム
99 揺動駆動手段
100 ワイヤーハーネス
101 凹陥部
103 係合凹部
105 連結穴
107 連結ピン
109 エアシリンダ
111 シリンダ本体
113 ブラケット
115 摺動子の先端部
201 ワイヤーハーネス圧接機
203 巻取りドラム
205 加工ライン
207 ワイヤー供給装置
209 加工部位
211 ワイヤー送り装置
213 ワイヤー戻し装置
215 コネクター圧接装置
217 可動チャック装置
W ワイヤー
A 引出し方向
B 剥き代
C コネクター
D 被覆
E 芯材
F 戻し方向
G 被覆屑
H 上下方向
S 隙間
K 非切断部
L 整列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーの一端をクランプしてワイヤーを所定の長さ引き出すクランプ手段と、
該クランプ手段によって引き出されたワイヤーを所定の長さに切断するワイヤー切断手段と、
切断されたワイヤーの他端側の被覆のみを所定の位置で切断する被覆切断手段と、
切断された被覆の他端側の被覆を取り除き、芯材を露出させる剥き代形成手段とを備えるワイヤーストリップ装置において、
上記剥き代形成手段には上記被覆の切断位置の近傍を挟持してストリップするストリップ手段と、該ストリップ手段から動力が伝達されて凹凸係合構造によって一体に移動する上下一対のワイヤー挟持部とを備えており、
更に、上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段はそれぞれ上下一対設けられており、このうち上側のユニットと下側のユニットはそれぞれ一体になって接近、離反するようにそれぞれ別々のベースフレームによって保持されていることを特徴とするワイヤーストリップ装置。
【請求項2】
上記ワイヤー切断手段は上側に配置される上部カッター刃と、
該上部カッター刃を保持する上部カッターホルダと、
下側に配置される下部カッター刃と、
該下部カッター刃を保持する下部カッターホルダとを備えることによって構成されており、
上記上部カッター刃と上部カッターホルダの内部には剥き代を形成することによって生じた被覆屑を吸引して排出するためのエア流路が形成されていて、
上記下部カッターホルダには複数本のワイヤーを個別に収容することができる櫛歯状の複数のスリット部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤーストリップ装置。
【請求項3】
上記被覆切断手段は上側に配置され、複数本のワイヤーを個別に切断し得る半円弧状にえぐられた複数の刃部を備えた上部ストリッパー刃と、
該上部ストリッパー刃の側傍に設けられ、上部ストリッパー刃と一体に設けられる上部押圧部と、
下側に配置され、複数本のワイヤーを個別に切断し得る半円弧状にえぐられた複数の刃部を備えた下部ストリッパー刃と、
該下部ストリッパー刃の側傍に設けられ、付勢手段によって上部押圧部側へ突出した状態で配置される下部押圧部とを備えることによって構成されており、
上記下部押圧部の押圧面には複数本のワイヤーを個別に保持することができるワイヤーの長手方向に延びる複数本の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤーストリップ装置。
【請求項4】
上記剥き代形成手段は上側に配置される上部ワイヤー挟持部と、
該上部ワイヤー挟持部をクランプされているワイヤーの一端側に所定ストローク移動させるストリップ手段と、
下側に配置される下部ワイヤー挟持部と、
該下部ワイヤー挟持部をワイヤーの長手方向に摺動させるガイド機構と、
上記下部ワイヤー挟持部がワイヤーの他端側に移動するように付勢する下部スライダ付勢手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のワイヤーストリップ装置。
【請求項5】
上記ストリップ手段は上記上部ワイヤー挟持部と一体にワイヤーの長手方向に摺動する上部スライダと、
該上部スライダの側面に設けられるガイドローラと、
揺動支点を中心に所定の角度揺動し、一端に上記ガイドローラと係合する半円弧状にえぐられた係合凹部が形成されている揺動アームと、
該揺動アームの他端に摺動子の先端部が接続され、本体が上記上側のベースフレームによって保持されている揺動駆動手段とを備えていることを特徴とする請求項4記載のワイヤーストリップ装置。
【請求項6】
上記上部ワイヤー挟持部と下部ワイヤー挟持部のそれぞれの挟持面にはワイヤーの整列方向に延びる複数本の突条が形成されており、
上記上部ワイヤー挟持部の下面におけるワイヤーの整列方向の両端部には下方に向けて突出する係合凸部が設けられており、
一方、下部ワイヤー挟持部の上面におけるワイヤーの整列方向の両端部には上記係合凸部と係合する係合凹部が設けられていることを特徴とする請求項4または5記載のワイヤーストリップ装置。
【請求項7】
巻取りドラムに巻き取られているワイヤーを加工ライン上に繰り出すワイヤー供給装置と、
加工ライン上に繰り出されたワイヤーを加工部位に向けて搬送するワイヤー送り装置と、
加工部位に向けて搬送したワイヤーを巻取りドラム側に戻すワイヤー戻し装置と、
ワイヤーの一端にコネクターを圧接装着するコネクター圧接装置と、
ワイヤーの他端に剥き代を形成するワイヤーストリップ装置と、
ワイヤーの一端をクランプして引き出す可動チャック装置とを備えるワイヤーハーネス圧接機において、
上記ワイヤーストリップ装置として請求項1〜請求項6のいずれかに記載のワイヤーストリップ装置を適用したことを特徴とするワイヤーハーネス圧接機。
【請求項8】
ワイヤーの一端をクランプしてワイヤーを所定の長さ引き出すワイヤー引出し工程と、
上側のワイヤー切断手段と、被覆切断手段と、剥き代形成手段とを備えた上側のストリッパーユニットと、下側のワイヤー切断手段と、被覆切断手段と、剥き代形成手段とを備えた下側のストリッパーユニットとを接近方向に移動させるストリッパーユニット稼動工程と、
上記上側のストリッパーユニットと下側のストリッパーユニットを作用位置に移動させてワイヤーの切断と、被覆の切断と、ワイヤーの保持とを同時に実行する切断・保持工程と、
上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段の作用位置はそのままで、剥き代形成手段のみを動作させて剥き代部分の芯材を露出させる剥き代形成工程と、
上記ワイヤー切断手段と被覆切断手段と剥き代形成手段の作用位置はそのままで、ワイヤーの一端をクランプしているクランプ手段をワイヤーの引出し方向に移動させてストリップを完了させると共に当該ワイヤーから分離された被覆屑を吸引、排出するストリップ完了・分離工程とを備えていることを特徴とするワイヤーストリップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−271632(P2008−271632A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107739(P2007−107739)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000203450)村田工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】