ワイヤーハーネス及びその製造方法
【課題】電線に不織部材を巻回する際に、低コストで、電線と不織布とを簡単に固定することができ、且つ、ゴミの発生を抑制すること。
【解決手段】ワイヤーハーネス1は、電線束2と、電線束2の長手方向に延伸しつつ電線束2を巻回して囲繞する不織布10aとを備えている。ワイヤーハーネス1においては、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより、電線束2に不織布10aが固定されている。
【解決手段】ワイヤーハーネス1は、電線束2と、電線束2の長手方向に延伸しつつ電線束2を巻回して囲繞する不織布10aとを備えている。ワイヤーハーネス1においては、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより、電線束2に不織布10aが固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスの製造に際して、電線に不織部材を固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料により構成された2枚の被覆体の間にフラット回路体(電線)を挟み込むとともに、2枚の被覆体を加熱及び圧縮することによって、プロテクタを形成する技術が、従来より知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性材料としては不織部材などが採用され、プロテクタの形成に際して、電線に対して不織部材を巻回する。電線に不織部材を巻回する際及び巻回した後の電線に対する不織部材の横ズレを抑制するために、不織部材の巻き方向における始端部及び終端部に両面テープを予め貼り付けておくことが考えられる。不織部材の巻き方向における始端部に貼り付けられた両面テープ上に電線を載置して、両面テープで電線と不織部材の始端部を固定する。そして、不織部材の巻き方向における終端部側へ電線を転がして電線に不織部材を巻回していき、不織部材の終端部に貼り付けられた両面テープで不織部材の終端部を、電線に巻回された不織部材の外周部に固定する。その後、不織部材に対して加熱及び圧縮処理を行う。
【0005】
しかしながら、電線に不織部材を巻回する度に両面テープを使用するため、両面テープの部材費及び両面テープの在庫管理に関する管理工数が発生し、ワイヤーハーネスの製造コストが増加するという問題がある。また、加熱及び圧縮処理後に両面テープが保護部から食み出ないようにするために、不織部材の巻き方向における終端部に貼り付けられる両面テープの位置を、不織部材の巻き方向において終端より2〜3mmだけ内側とする必要がある。このような正確な位置に、両面テープを貼り付けることは難しい。さらに、両面テープを貼り付ける際に裏紙をはがす必要があるため、ゴミが増えるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、電線に不織部材を巻回する際に、低コストで電線と不織部材とを簡単に固定することができ、且つ、ゴミの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、電線と、前記電線の長手方向に延伸しつつ前記電線を巻回して囲繞する不織部材とを備え、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部が別々に溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部が形成されている。
【0010】
第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれか1つに係るワイヤーハーネスであって、前記電線は複数設けられ、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部が挟み込まれている。
【0011】
第5の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法は、電線と、前記電線に巻回された不織部材とを有するワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方を溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定して、前記電線に前記不織部材を巻回する工程を備える。
【0012】
第6の態様は、第5の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)において、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定する。
【0013】
第7の態様は、第5又は第6の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、(b)前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部を形成する工程を備える。
【0014】
第8の態様は、第5の態様〜第7の態様のいずれか1つに係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記電線は複数設けられ、前記工程(a)において、前記複数の電線に前記不織部材を巻回する前に、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部を挟み込む。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、両面テープを使用することなく、電線に不織部材を固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネスの製造コストを抑制できる。また、溶着により簡単に固定することができるうえ、ゴミの発生を抑制できる。
【0016】
第2の態様によると、電線に対する不織部材の横ズレの発生を抑制することができるため、電線に対して不織部材を簡単に巻くことができ、且つ、ワイヤーハーネスの品質が向上する。
【0017】
第3の態様によると、保護部により経路規制をすることができる。
【0018】
第4の態様によると、不織部材の巻き始めにおいて不織部材と電線との横ズレの発生を一層抑制することができるため、電線に対して不織部材をより簡単に巻くことができる。
【0019】
第5の態様によると、両面テープを使用することなく、電線に不織部材を固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネスの製造コストを抑制できる。また、溶着により簡単に固定することができるうえ、ゴミの発生を抑制できる。
【0020】
第6の態様によると、電線に対する不織部材の横ズレの発生を抑制することができるため、ワイヤーハーネスの品質が向上することができ、且つ、電線に対して不織部材を簡単に巻くことができる。
【0021】
第7の態様によると、保護部により経路規制をすることができる。
【0022】
第8の態様によると、不織部材の巻き始めにおいて不織部材と電線との横ズレの発生を一層抑制することができるため、電線に対して不織部材をより簡単に巻くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図2】同上のワイヤーハーネスを示す側面図である。
【図3】同上の電線束と1本の電線との間に隙間を形成した状態を示す平面図である。
【図4】同上の電線束と1本の電線との間に不織布を通した状態を示す平面図である。
【図5】不織布の巻き方向における始端部を溶着した状態を示す平面図である。
【図6】不織布の巻き方向における終端部を溶着した状態を示す平面図である。
【図7】実施形態2に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図8】同上のワイヤーハーネスを示す側面図である。
【図9】同上のワイヤーハーネスを製造するためのホットプレス用成形型の例を示す概略斜視図である。
【図10】同上のホットプレス用成形型を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図11】同上のホットプレス用成形型を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
{実施形態1}
以下、実施形態1に係るワイヤーハーネス1について説明する。図1は、ワイヤーハーネス1を示す概略斜視図であり、図2は、ワイヤーハーネス1を示す側面図である。
【0025】
ワイヤーハーネス1は、複数の電線3,4(本実施形態では5本)を束ねた電線束2と、電線束2の長手方向に延伸しつつ電線束2の一部を巻回して囲繞する不織布10a(不織部材)とを有する。電線束2としては、車両等において各種電気機器間を相互接続するワイヤーハーネス1を構成するものが想定される。もっとも、不織布10aにより囲繞される電線は、電線束であってもよいし、1本の電線であってもよい。尚、不織布10aは電線束2の長手方向の全部を囲繞してもよい。
【0026】
不織布10aの巻き方向における始端部は、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に挟み込まれた後、不織布10aの巻き方向における終端側に折り曲げられて、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について、複数箇所(例えば、2箇所)の溶着部11(図5参照)を溶着することにより固定されている。溶着部11には、平面視円形状の凹みがそれぞれ形成されている。不織布10aの巻き方向における終端部は、電線束2に巻回された不織布10aの外周部に重ねられて、不織布10aにおける終端部及びこれと重なる部分について、複数箇所(例えば、2箇所)の溶着部12を溶着することにより固定されている。溶着部12には、平面視円形状の凹みがそれぞれ形成されている。溶着としては、例えば、超音波ホッチキスなどによる超音波溶着又は、小型のアイロンなどによる熱溶着が行われる。本実施形態では超音波ホッチキスによる超音波溶着がなされ、1箇所につき約0.8秒で溶着され、溶着部11,12には約2mmの凹みが形成される。
【0027】
もっとも、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部のうちの一方について溶着により固定し、他方については放置してもよい。尚、金属ホッチキスで、不織布10aの巻き方向における始端部及び終端部を固定することも考えられるが、本発明においては溶着により固定するため、金属ホッチキスを使用した場合と比較して部材費を抑制することができるうえ、金属製の針が不織布10aに残留することもない。
【0028】
不織布としては、超音波溶着可能な熱可塑性樹脂繊維を有する部材を用いることができる。超音波ホッチキスにより、不織布において溶着部を加圧しながら超音波振動を加えることにより溶着することができる。
【0029】
以上のように構成されたワイヤーハーネス1によると、両面テープを使用することなく、電線束2に不織布10aを固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネス1の製造コストを抑制できる。また、溶着により電線束2に不織布10aを固定するため、不織布10aの巻き方向における終端部について正確な位置に両面テープを貼り付ける必要がなくなり、簡単に固定することができる。さらに、両面テープを使用しないため、ゴミの発生を抑制できる。
【0030】
不織布10aの巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより、電線束2に不織布10aを固定するため、電線束2に対する不織布10aの横ズレの発生を抑制することができる。このため、電線に対して不織布10aを簡単に巻くことができ、且つ、ワイヤーハーネス1の品質が向上する。
【0031】
また、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う電線4との間に、不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれているため、不織布10aの巻き始めにおいて不織布10aと電線束2との横ズレの発生を一層抑制することができ、電線束2に対して不織布10aをより簡単に巻くことができる。特に、電線束2に不織布10aを巻回する際に、電線束2を不織布10aの巻き方向に転がす必要がないため、電線束2を鉛直姿勢にした状態でも不織布10aの巻回作業を行うことができる。
【0032】
<製造方法>
ワイヤーハーネス1の製造方法に係る実施形態について説明する。
【0033】
ワイヤーハーネス1は、電線束2に不織布10aを巻回する前に、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部を挟み込み、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより電線束2に不織布10aを固定して、電線束2に不織布10aを巻回する工程(a)を備える製造方法により製造することができる。
【0034】
ワイヤーハーネス1の製造方法を説明する。電線束2を所定の配線ラインに沿って布線する。図3に示すように、1本の電線3の長手方向における両端部を除く部分を、電線束2から所定間隔だけ離して、電線束2と電線3との間に隙間5を形成する。図4に示すように、電線束2と電線3との間に形成された隙間5に、不織布10aの巻き方向における始端部(例えば、始端から10mm)を通す。図5に示すように、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて1本の電線3の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着部11を溶着して、電線3と不織布10aの巻き方向における始端部を固定する。
【0035】
もっとも、電線束2と2本以上の電線との間の隙間に不織布10aの巻き方向における始端部を通して、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて2本以上の電線の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよいし、電線束2に対して不織布10aを一巻きし、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよい。また、1本の電線と不織布10aとを有するワイヤーハーネスの場合は、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて1本の電線の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよい。
【0036】
次に、電線束2に対して不織布10aを巻回し、図6に示すように、不織布10aの巻き方向における終端部を不織布10aの外周面に重ねた状態で、不織布10aにおける終端部及びこれと重なる部分について溶着部12を溶着して、電線束2に巻回された不織布10aと不織布10aの巻き方向における終端部を固定することにより、ワイヤーハーネス1が製造される。
【0037】
{実施形態2}
<ワイヤーハーネスの構成>
実施形態2に係るワイヤーハーネス15について説明する。図7は、ワイヤーハーネス15を示す概略斜視図であり、図8は、ワイヤーハーネス15を示す側面図である。尚、本実施形態2の説明において、前記実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
ワイヤーハーネス15は、電線束2と、電線束2の一部を保護する保護部10とを備える。保護部10は、電線束2の延在方向に対して略直交する面において、断面円形状に形成されている。保護部10は、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれ、且つ、不織布10aが電線束2の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。このため、1本の電線3と2本の電線4との間に保護部10が形成されており、電線3と電線4は、微小間隔だけ離間している。もっとも、2本以上の電線と、これらと隣り合う電線との間に不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれていてもよい。また、保護部10は電線束2の長手方向の全部を保護してもよい。
【0039】
尚、保護部10の断面形状は、円形状に限られるものではなく、矩形状、あるいはその他の多角形状(三角形状、六角形状)であってもよい。また、電線束2の延在方向に沿って異なる断面形状であってもよい。
【0040】
不織布としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能な不織布を用いることができる。かかる不織布として、絡み合う基本繊維と接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。そして、不織布を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱することで、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染み込む。この後、不織布が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織布が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持されるようになる。
【0041】
接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0042】
上記基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得ればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織布を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染み込む。そして、不織布が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織布は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。また、不織布同士の接触部分に溶融した接着樹脂が染み込むと、その接着樹脂によって不織布同士が接合される。
【0043】
また、ホットプレスとは、加工対象物である不織布を金型間に挟み込み、加熱状態で金型に圧を加えて不織布を成型加工することをいう。保護部10を形成するのに適したホットプレスのより具体的な例については後述する。
【0044】
以上のように構成されたワイヤーハーネス15によると、ホットプレスにより保護部10が形成されたため、保護部10により経路規制をすることができる。
【0045】
<製造方法>
ワイヤーハーネス15の製造方法に係る実施形態について説明する。
【0046】
ワイヤーハーネス15は、実施形態1の工程(a)と、不織布10aが電線束2を覆った状態でホットプレスされることにより保護部10を形成する工程(b)とを備える製造方法により製造することができる。
【0047】
図9は、保護部10を製造するためのホットプレス用成形型20の例を示す概略斜視図である。尚、ホットプレス用成形型20の形状は、製造する保護部10の形状に応じて決定されるものであり、図9には、図7と図8に例示する形状の保護部10を製造するのに用いられるホットプレス用成形型20が示されている。
【0048】
ホットプレス用成形型20は、下型21と、上型24とを有している。下型21は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下型面22が形成されている。下型面22は、概略的には、上方及び両端部に開口する断面円形状の溝23を有している。溝23の延在方向の長さは、電線束2における保護対象部分(電線束2における保護部10で覆うべき部分)の長さと略同一に形成されている。
【0049】
上型24は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上型面25が形成されている。上型面25は、下型面22と同形状を有しており、下型面22に対して近接対向配置されることにより、上型面25と下型面22との間で、保護部10が形成される。
【0050】
下型21及び上型24には、加熱装置としてのヒータ26(図10参照)が設けられている。ヒータ26は、下型面22及び上型面25を、基本繊維の融点よりも低く、且つ、接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱するものである。ヒータ26は、例えば、下型21及び上型24内に埋設されたものであってもよいし、下型21及び上型24の外面に熱伝達可能な形態で取付けられたものであってもよい。
【0051】
ホットプレス用成形型20を用いたワイヤーハーネス15の製造方法を説明する。実施形態1の場合と同様に、電線束2を所定の配線ラインに沿って布線した後、1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部を挟み込んで、不織布10aの巻き方向における始端部を溶着する。次に、電線束2に不織布10aを巻回し、不織布10aの巻き方向における終端部を溶着して電線束2に不織布10aを固定する。
【0052】
図10に示すように、下型21の下型面22上に、電線束2と不織布10aが配設される。具体的には、電線束2における不織布10aで囲繞された部分が、下型面22の溝23の延在方向に沿って載置される。
【0053】
次に、図11に示すように、下型21と上型24をヒータ26により加熱した状態で、下型21と上型24を近接移動させ、両者間に圧を加える。すると、電線束2を覆った状態で不織布10aが圧縮される。これにより、断面円形状の保護部10が形成される。溶着部11,12に形成されていた凹みは、その周辺領域と共にホットプレスされて消滅する。この後、下型21と上型24を離間移動させ、両者からワイヤーハーネス15を取り出す。ホットプレス後の冷却は、下型21と上型24との間に存在する状態で行われてもよいし、それらの間から取り外した状態で行われてもよい。尚、曲げられた溝を有する金型を用い、ホットプレスの際に、保護部10を、ワイヤーハーネス15を配設する経路に応じて曲げてもよい。
【0054】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0055】
1,15 ワイヤーハーネス
2 電線束
3,4 電線
10 保護部
10a 不織布
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスの製造に際して、電線に不織部材を固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料により構成された2枚の被覆体の間にフラット回路体(電線)を挟み込むとともに、2枚の被覆体を加熱及び圧縮することによって、プロテクタを形成する技術が、従来より知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性材料としては不織部材などが採用され、プロテクタの形成に際して、電線に対して不織部材を巻回する。電線に不織部材を巻回する際及び巻回した後の電線に対する不織部材の横ズレを抑制するために、不織部材の巻き方向における始端部及び終端部に両面テープを予め貼り付けておくことが考えられる。不織部材の巻き方向における始端部に貼り付けられた両面テープ上に電線を載置して、両面テープで電線と不織部材の始端部を固定する。そして、不織部材の巻き方向における終端部側へ電線を転がして電線に不織部材を巻回していき、不織部材の終端部に貼り付けられた両面テープで不織部材の終端部を、電線に巻回された不織部材の外周部に固定する。その後、不織部材に対して加熱及び圧縮処理を行う。
【0005】
しかしながら、電線に不織部材を巻回する度に両面テープを使用するため、両面テープの部材費及び両面テープの在庫管理に関する管理工数が発生し、ワイヤーハーネスの製造コストが増加するという問題がある。また、加熱及び圧縮処理後に両面テープが保護部から食み出ないようにするために、不織部材の巻き方向における終端部に貼り付けられる両面テープの位置を、不織部材の巻き方向において終端より2〜3mmだけ内側とする必要がある。このような正確な位置に、両面テープを貼り付けることは難しい。さらに、両面テープを貼り付ける際に裏紙をはがす必要があるため、ゴミが増えるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、電線に不織部材を巻回する際に、低コストで電線と不織部材とを簡単に固定することができ、且つ、ゴミの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、電線と、前記電線の長手方向に延伸しつつ前記電線を巻回して囲繞する不織部材とを備え、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部が別々に溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部が形成されている。
【0010】
第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれか1つに係るワイヤーハーネスであって、前記電線は複数設けられ、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部が挟み込まれている。
【0011】
第5の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法は、電線と、前記電線に巻回された不織部材とを有するワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方を溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定して、前記電線に前記不織部材を巻回する工程を備える。
【0012】
第6の態様は、第5の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)において、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定する。
【0013】
第7の態様は、第5又は第6の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、(b)前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部を形成する工程を備える。
【0014】
第8の態様は、第5の態様〜第7の態様のいずれか1つに係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記電線は複数設けられ、前記工程(a)において、前記複数の電線に前記不織部材を巻回する前に、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部を挟み込む。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、両面テープを使用することなく、電線に不織部材を固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネスの製造コストを抑制できる。また、溶着により簡単に固定することができるうえ、ゴミの発生を抑制できる。
【0016】
第2の態様によると、電線に対する不織部材の横ズレの発生を抑制することができるため、電線に対して不織部材を簡単に巻くことができ、且つ、ワイヤーハーネスの品質が向上する。
【0017】
第3の態様によると、保護部により経路規制をすることができる。
【0018】
第4の態様によると、不織部材の巻き始めにおいて不織部材と電線との横ズレの発生を一層抑制することができるため、電線に対して不織部材をより簡単に巻くことができる。
【0019】
第5の態様によると、両面テープを使用することなく、電線に不織部材を固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネスの製造コストを抑制できる。また、溶着により簡単に固定することができるうえ、ゴミの発生を抑制できる。
【0020】
第6の態様によると、電線に対する不織部材の横ズレの発生を抑制することができるため、ワイヤーハーネスの品質が向上することができ、且つ、電線に対して不織部材を簡単に巻くことができる。
【0021】
第7の態様によると、保護部により経路規制をすることができる。
【0022】
第8の態様によると、不織部材の巻き始めにおいて不織部材と電線との横ズレの発生を一層抑制することができるため、電線に対して不織部材をより簡単に巻くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図2】同上のワイヤーハーネスを示す側面図である。
【図3】同上の電線束と1本の電線との間に隙間を形成した状態を示す平面図である。
【図4】同上の電線束と1本の電線との間に不織布を通した状態を示す平面図である。
【図5】不織布の巻き方向における始端部を溶着した状態を示す平面図である。
【図6】不織布の巻き方向における終端部を溶着した状態を示す平面図である。
【図7】実施形態2に係るワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【図8】同上のワイヤーハーネスを示す側面図である。
【図9】同上のワイヤーハーネスを製造するためのホットプレス用成形型の例を示す概略斜視図である。
【図10】同上のホットプレス用成形型を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図11】同上のホットプレス用成形型を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
{実施形態1}
以下、実施形態1に係るワイヤーハーネス1について説明する。図1は、ワイヤーハーネス1を示す概略斜視図であり、図2は、ワイヤーハーネス1を示す側面図である。
【0025】
ワイヤーハーネス1は、複数の電線3,4(本実施形態では5本)を束ねた電線束2と、電線束2の長手方向に延伸しつつ電線束2の一部を巻回して囲繞する不織布10a(不織部材)とを有する。電線束2としては、車両等において各種電気機器間を相互接続するワイヤーハーネス1を構成するものが想定される。もっとも、不織布10aにより囲繞される電線は、電線束であってもよいし、1本の電線であってもよい。尚、不織布10aは電線束2の長手方向の全部を囲繞してもよい。
【0026】
不織布10aの巻き方向における始端部は、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に挟み込まれた後、不織布10aの巻き方向における終端側に折り曲げられて、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について、複数箇所(例えば、2箇所)の溶着部11(図5参照)を溶着することにより固定されている。溶着部11には、平面視円形状の凹みがそれぞれ形成されている。不織布10aの巻き方向における終端部は、電線束2に巻回された不織布10aの外周部に重ねられて、不織布10aにおける終端部及びこれと重なる部分について、複数箇所(例えば、2箇所)の溶着部12を溶着することにより固定されている。溶着部12には、平面視円形状の凹みがそれぞれ形成されている。溶着としては、例えば、超音波ホッチキスなどによる超音波溶着又は、小型のアイロンなどによる熱溶着が行われる。本実施形態では超音波ホッチキスによる超音波溶着がなされ、1箇所につき約0.8秒で溶着され、溶着部11,12には約2mmの凹みが形成される。
【0027】
もっとも、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部のうちの一方について溶着により固定し、他方については放置してもよい。尚、金属ホッチキスで、不織布10aの巻き方向における始端部及び終端部を固定することも考えられるが、本発明においては溶着により固定するため、金属ホッチキスを使用した場合と比較して部材費を抑制することができるうえ、金属製の針が不織布10aに残留することもない。
【0028】
不織布としては、超音波溶着可能な熱可塑性樹脂繊維を有する部材を用いることができる。超音波ホッチキスにより、不織布において溶着部を加圧しながら超音波振動を加えることにより溶着することができる。
【0029】
以上のように構成されたワイヤーハーネス1によると、両面テープを使用することなく、電線束2に不織布10aを固定することができるため、両面テープの部材費及び両面テープの管理工数をなくすことができ、ワイヤーハーネス1の製造コストを抑制できる。また、溶着により電線束2に不織布10aを固定するため、不織布10aの巻き方向における終端部について正確な位置に両面テープを貼り付ける必要がなくなり、簡単に固定することができる。さらに、両面テープを使用しないため、ゴミの発生を抑制できる。
【0030】
不織布10aの巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより、電線束2に不織布10aを固定するため、電線束2に対する不織布10aの横ズレの発生を抑制することができる。このため、電線に対して不織布10aを簡単に巻くことができ、且つ、ワイヤーハーネス1の品質が向上する。
【0031】
また、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う電線4との間に、不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれているため、不織布10aの巻き始めにおいて不織布10aと電線束2との横ズレの発生を一層抑制することができ、電線束2に対して不織布10aをより簡単に巻くことができる。特に、電線束2に不織布10aを巻回する際に、電線束2を不織布10aの巻き方向に転がす必要がないため、電線束2を鉛直姿勢にした状態でも不織布10aの巻回作業を行うことができる。
【0032】
<製造方法>
ワイヤーハーネス1の製造方法に係る実施形態について説明する。
【0033】
ワイヤーハーネス1は、電線束2に不織布10aを巻回する前に、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部を挟み込み、不織布10aの巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより電線束2に不織布10aを固定して、電線束2に不織布10aを巻回する工程(a)を備える製造方法により製造することができる。
【0034】
ワイヤーハーネス1の製造方法を説明する。電線束2を所定の配線ラインに沿って布線する。図3に示すように、1本の電線3の長手方向における両端部を除く部分を、電線束2から所定間隔だけ離して、電線束2と電線3との間に隙間5を形成する。図4に示すように、電線束2と電線3との間に形成された隙間5に、不織布10aの巻き方向における始端部(例えば、始端から10mm)を通す。図5に示すように、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて1本の電線3の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着部11を溶着して、電線3と不織布10aの巻き方向における始端部を固定する。
【0035】
もっとも、電線束2と2本以上の電線との間の隙間に不織布10aの巻き方向における始端部を通して、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて2本以上の電線の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよいし、電線束2に対して不織布10aを一巻きし、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよい。また、1本の電線と不織布10aとを有するワイヤーハーネスの場合は、不織布10aの巻き方向における始端部を終端側に折り曲げて1本の電線の一部を被覆した状態で、不織布10aの巻き方向における始端部及びこれと重なる部分について溶着してもよい。
【0036】
次に、電線束2に対して不織布10aを巻回し、図6に示すように、不織布10aの巻き方向における終端部を不織布10aの外周面に重ねた状態で、不織布10aにおける終端部及びこれと重なる部分について溶着部12を溶着して、電線束2に巻回された不織布10aと不織布10aの巻き方向における終端部を固定することにより、ワイヤーハーネス1が製造される。
【0037】
{実施形態2}
<ワイヤーハーネスの構成>
実施形態2に係るワイヤーハーネス15について説明する。図7は、ワイヤーハーネス15を示す概略斜視図であり、図8は、ワイヤーハーネス15を示す側面図である。尚、本実施形態2の説明において、前記実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
ワイヤーハーネス15は、電線束2と、電線束2の一部を保護する保護部10とを備える。保護部10は、電線束2の延在方向に対して略直交する面において、断面円形状に形成されている。保護部10は、電線束2のうちの1本の電線3と、これと隣り合う電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれ、且つ、不織布10aが電線束2の一部を覆った状態でホットプレスされることにより形成されている。このため、1本の電線3と2本の電線4との間に保護部10が形成されており、電線3と電線4は、微小間隔だけ離間している。もっとも、2本以上の電線と、これらと隣り合う電線との間に不織布10aの巻き方向における始端部が挟み込まれていてもよい。また、保護部10は電線束2の長手方向の全部を保護してもよい。
【0039】
尚、保護部10の断面形状は、円形状に限られるものではなく、矩形状、あるいはその他の多角形状(三角形状、六角形状)であってもよい。また、電線束2の延在方向に沿って異なる断面形状であってもよい。
【0040】
不織布としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能な不織布を用いることができる。かかる不織布として、絡み合う基本繊維と接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。そして、不織布を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱することで、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染み込む。この後、不織布が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織布が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持されるようになる。
【0041】
接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0042】
上記基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得ればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織布を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染み込む。そして、不織布が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織布は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。また、不織布同士の接触部分に溶融した接着樹脂が染み込むと、その接着樹脂によって不織布同士が接合される。
【0043】
また、ホットプレスとは、加工対象物である不織布を金型間に挟み込み、加熱状態で金型に圧を加えて不織布を成型加工することをいう。保護部10を形成するのに適したホットプレスのより具体的な例については後述する。
【0044】
以上のように構成されたワイヤーハーネス15によると、ホットプレスにより保護部10が形成されたため、保護部10により経路規制をすることができる。
【0045】
<製造方法>
ワイヤーハーネス15の製造方法に係る実施形態について説明する。
【0046】
ワイヤーハーネス15は、実施形態1の工程(a)と、不織布10aが電線束2を覆った状態でホットプレスされることにより保護部10を形成する工程(b)とを備える製造方法により製造することができる。
【0047】
図9は、保護部10を製造するためのホットプレス用成形型20の例を示す概略斜視図である。尚、ホットプレス用成形型20の形状は、製造する保護部10の形状に応じて決定されるものであり、図9には、図7と図8に例示する形状の保護部10を製造するのに用いられるホットプレス用成形型20が示されている。
【0048】
ホットプレス用成形型20は、下型21と、上型24とを有している。下型21は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下型面22が形成されている。下型面22は、概略的には、上方及び両端部に開口する断面円形状の溝23を有している。溝23の延在方向の長さは、電線束2における保護対象部分(電線束2における保護部10で覆うべき部分)の長さと略同一に形成されている。
【0049】
上型24は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上型面25が形成されている。上型面25は、下型面22と同形状を有しており、下型面22に対して近接対向配置されることにより、上型面25と下型面22との間で、保護部10が形成される。
【0050】
下型21及び上型24には、加熱装置としてのヒータ26(図10参照)が設けられている。ヒータ26は、下型面22及び上型面25を、基本繊維の融点よりも低く、且つ、接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱するものである。ヒータ26は、例えば、下型21及び上型24内に埋設されたものであってもよいし、下型21及び上型24の外面に熱伝達可能な形態で取付けられたものであってもよい。
【0051】
ホットプレス用成形型20を用いたワイヤーハーネス15の製造方法を説明する。実施形態1の場合と同様に、電線束2を所定の配線ラインに沿って布線した後、1本の電線3と、これと隣り合う2本の電線4との間に不織布10aの巻き方向における始端部を挟み込んで、不織布10aの巻き方向における始端部を溶着する。次に、電線束2に不織布10aを巻回し、不織布10aの巻き方向における終端部を溶着して電線束2に不織布10aを固定する。
【0052】
図10に示すように、下型21の下型面22上に、電線束2と不織布10aが配設される。具体的には、電線束2における不織布10aで囲繞された部分が、下型面22の溝23の延在方向に沿って載置される。
【0053】
次に、図11に示すように、下型21と上型24をヒータ26により加熱した状態で、下型21と上型24を近接移動させ、両者間に圧を加える。すると、電線束2を覆った状態で不織布10aが圧縮される。これにより、断面円形状の保護部10が形成される。溶着部11,12に形成されていた凹みは、その周辺領域と共にホットプレスされて消滅する。この後、下型21と上型24を離間移動させ、両者からワイヤーハーネス15を取り出す。ホットプレス後の冷却は、下型21と上型24との間に存在する状態で行われてもよいし、それらの間から取り外した状態で行われてもよい。尚、曲げられた溝を有する金型を用い、ホットプレスの際に、保護部10を、ワイヤーハーネス15を配設する経路に応じて曲げてもよい。
【0054】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0055】
1,15 ワイヤーハーネス
2 電線束
3,4 電線
10 保護部
10a 不織布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の長手方向に延伸しつつ前記電線を巻回して囲繞する不織部材とを備え、
前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部が別々に溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部が形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記電線は複数設けられ、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部が挟み込まれている、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
電線と、前記電線に巻回された不織部材とを有するワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方を溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定して、前記電線に前記不織部材を巻回する工程、
を備えるワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(a)において、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定する、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
(b)前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部を形成する工程を備える、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記電線は複数設けられ、
前記工程(a)において、前記複数の電線に前記不織部材を巻回する前に、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部を挟み込む、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項1】
電線と、
前記電線の長手方向に延伸しつつ前記電線を巻回して囲繞する不織部材とを備え、
前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方が溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部が別々に溶着されることにより前記電線に前記不織部材が固定されている、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部が形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスであって、
前記電線は複数設けられ、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部が挟み込まれている、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
電線と、前記電線に巻回された不織部材とを有するワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部のうちの少なくとも一方を溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定して、前記電線に前記不織部材を巻回する工程、
を備えるワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(a)において、前記不織部材の巻き方向における始端部と終端部を別々に溶着することにより前記電線に前記不織部材を固定する、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
(b)前記不織部材が前記電線を覆った状態でホットプレスされることにより保護部を形成する工程を備える、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1つに記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記電線は複数設けられ、
前記工程(a)において、前記複数の電線に前記不織部材を巻回する前に、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の電線と、これと隣り合う電線との間に前記不織部材の巻き方向における始端部を挟み込む、ワイヤーハーネスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−65439(P2013−65439A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203008(P2011−203008)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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