ワイヤーハーネス用結束バンド
【課題】アンダーカット部をなくし、係止力に優れたワイヤーハーネス用結束バンドを提供する。
【解決手段】バンド部20の幅方向両端部にはバンド部20の長手方向に沿って両面から突設されるガイドリブ22を備え、その中央位置には長手方向に沿って間欠的に複数の係止孔21が形成されている。バンド部20の一端部にはバンド挿通通路31が設けられ、その両側部にはガイド溝部32が形成されている。バンド挿通通路31のうち、バンド部20の表裏両面に対応する内壁部からは各々第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとが突設されている。第1ロックアーム部33Aの先端部寄りには、係止孔21に係合可能な単一の第1係合爪34Aが形成され、第2ロックアーム部33Bの先端部寄りには第1係合爪34Aが係合する係止孔21とは異なる係止孔21と係合する単一の第2係合爪34Bが形成されている。
【解決手段】バンド部20の幅方向両端部にはバンド部20の長手方向に沿って両面から突設されるガイドリブ22を備え、その中央位置には長手方向に沿って間欠的に複数の係止孔21が形成されている。バンド部20の一端部にはバンド挿通通路31が設けられ、その両側部にはガイド溝部32が形成されている。バンド挿通通路31のうち、バンド部20の表裏両面に対応する内壁部からは各々第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとが突設されている。第1ロックアーム部33Aの先端部寄りには、係止孔21に係合可能な単一の第1係合爪34Aが形成され、第2ロックアーム部33Bの先端部寄りには第1係合爪34Aが係合する係止孔21とは異なる係止孔21と係合する単一の第2係合爪34Bが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用結束バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に配索されるワイヤーハーネスを結束保持するために用いられる結束バンドの一例として図9から図11に記載のものが知られている。この結束バンド100は、ワイヤーハーネスに巻きつく帯状のバンド部101と、バンド部101を挿通して係止するバンド挿通孔102と、を備えている。バンド部101には、図示しない係止歯が形成され、挿通孔102内には、図10に示すロックアーム部103が一体形成されている。ロックアーム部103には3つの係止爪104が立設されており、その係止爪104を含めて一体に成形するための金型構造は図11に示すものとなっている。
【0003】
この金型構造は3型からなり、まず左側の第1金型1を開き、続いて、右側の下側に位置する第2金型2を開き、ロックアーム部103を第2金型2を開いたことで成形された空間部分に撓ませ、右側の上側に位置する第3金型3を右側に抜いて成形が完了する。しかしながらこのような構造によると、第3金型3に関して係止爪104がアンダーカットとなることから、最後の第3金型3を無理に抜くこととなる。これにより、第3金型3の引抜時に係止爪104に破損やダレが発生し、これが係止力の不足につながることが懸念される。
【0004】
これに対して、アンダーカット部が生じないような構造として特許文献1に記載のものが知られている。この結束バンドは、上記と略同様の構造をなしているが、ロックアーム部に突設される係止爪を一つとしているところが相違する。これにより、アンダーカット部が生じない金型構造としている。
【0005】
この結束バンドは、バンド部をワイヤーハーネスに巻きつけた状態で挿通孔へと挿通させ、ワイヤーハーネスを締め付けた位置で静止させると係止歯が係止爪に引っ掛かり結束した状態が保持される。また、バンド部を挿通孔から引き抜こうとすると、ロックアーム部に一体に形成された係止爪がバンド部の係止歯に引きずられて撓み変形し、ロックアーム部の後端部が、バンド部の係止歯に係止され、二重係止が可能な構造となっている。これにより、係止爪を一つにしたことによる係止力の低下を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−208018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようにバンド部を挿通孔から引き抜こうとした際にのみ、ロックアーム部の後端部は係止爪としての機能を果たすから、やはりバンド部が挿通孔の挿通方向に挿通されたときに係止するための係止力の低下が懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、係合力に優れ、且つ成形時にアンダーカット部が生じることのないワイヤーハーネス用結束バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部と、前記バンド部に形成されその幅方向の両端部において前記バンド部の長手方向に沿って両面から突設されたガイドリブと、前記バンド部に前記長手方向に沿って間欠的に形成された複数の係止孔と、前記バンド部の長手方向の一端部に設けられ、前記ワイヤハーネスに巻回した前記バンド部をその他端部側から挿通可能なバンド挿通通路と、前記バンド挿通通路の内周縁の対向位置に形成され前記バンド部の前記ガイドリブを前記バンド部の表裏両面側から摺接させてガイドするガイド溝部と、前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面の一方の面に対応する内壁部から突設され挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記係止孔に係合可能な単一の係合爪を有する第1のロックアームと、前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面のうちの他方の面に対応する内壁部から突設され挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記第1のロックアームの前記係合爪が係合する前記係止孔とは異なる係止孔と係合する単一の係合爪を有する第2のロックアームとを備えることに特徴を有する。
【0010】
このような構造によれば、2つの係合爪が異なる係止孔に係合して、2重に係止することができるから、係合力に優れた構造とすることができる。即ち、バンド挿通通路の対応する内周壁側から一つずつロックアームが形成され、その先端部寄りに各々一つずつ係合爪が立設されているから、従来の単一のロックアーム部が備えられ、そのロックアーム部から単一の係止爪が立設されていた場合と比較して、係合力を向上させることができる。さらに、この構造を成形するための成形金型には、アンダーカット部が生じず、バンド挿通通路の挿通方向を抜き方向とする2型からなる割型により成形できる。
【0011】
前記ワイヤーハーネス用結束バンドは、合成樹脂製であって、一体成形により形成されていることが望ましい。
【0012】
前記第1のロックアームと前記第2のロックアームとは、前記バンド挿通通路の挿通方向において互い違いとなる位置に形成されていてもよい。バンド挿通通路の内壁部の互いに対向する面に形成された第1のロックアームと第2のロックアームは、その挿通方向の位置が、一致して重なると、その分、バンド挿通通路の穴径の高さ方向に関して高くしなければならず、結束バンド全体の大きさが大きくなってしまう。これに対して、各ロックアームを互いにバンド挿通通路内でずらして配することで、対応する内壁部の両側にロックアームをそれぞれ設けたとしても、結束バンドが大型化するのを防ぐことができる。さらに、各係止爪が異なる係止孔にそれぞれ係止されるように配されているから、両側から同じ係止孔に2つの係止爪が係止されることがなく、バンド部の厚みは従来通りでよいという利点もある。
【0013】
前記係合爪は、前記第1のロックアームと前記第2のロックアームにおいて、前記バンド挿通通路に挿通された前記バンド部に沿う面上に各々形成され、前記係合爪の前記第1のロックアームと前記第2のロックアームの各々の基端部からの形成位置が同一であることが望ましい。各ロックアームの基端部からの係合爪の形成位置を同一とすることで、係止孔に対する係合爪の係合力を一定とすることができる。即ち、各ロックアームは、バンド部が挿通すると突設された側の内壁部側に撓み変形し、バンド部が静止するとその撓み変形したロックアームが弾性復帰することで、バンド部にロックアーム上に形成された係合爪が押し込まれるようにして、係合する。よって、係合爪のロックアームの基端部からの形成位置によって、そのロックアームの弾性力を利用した係合爪の係合力が変化するため、係合爪のロックアームの基端部からの形成位置が同一であることが望ましいのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、係合力に優れ、且つ成形時にアンダーカット部が生じることのない結束バンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る結束バンドの斜視図
【図2】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図1の本体部拡大図
【図3】本発明の実施形態1に係る結束バンドの正面図
【図4】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図3のA−A断面図
【図5】本発明の実施形態1に係る結束バンドの側面図
【図6】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図5のB−B断面図
【図7】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図3のA−A断面においてバンド部をバンド挿通孔に挿通させた状態図
【図8】本発明の実施形態1に係る結束バンドの金型構造を示した概略図
【図9】従来例に係る結束バンドの背面図
【図10】従来例に係る結束バンドの図9のC−C断面図
【図11】従来例に係る結束バンドの金型構造を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
ワイヤーハーネス用結束バンド10は、合成樹脂製であって、一体成形によって形成されている。その構成は図1に示すように、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部20と、バンド部20の一端に連結された略箱状の本体部30と、本体部30を貫通するように設けられたバンド挿通通路31とを備えている。以下、図1の上を上側、下を下側、手前側を後方、奥側を前方として説明する。
【0017】
バンド部20は、図1に示すように、複数のワイヤーハーネスを束ねることのできる長さを有し、略一定の幅寸法で本体部30から下方に延出されている。その厚みは可撓性を有するために薄肉となっている。バンド部20の幅方向の略中央部には係止孔21が長手方向に沿って一定間隔に多数形成されている。バンド部20の幅方向の両端部には、バンド部20の長手方向に沿って延びるガイドリブ22が両面から突設されている。
【0018】
本体部30には、図1の奥側から手前側(前方から後方)に貫通するバンド挿通通路31が形成されている。バンド挿通通路31は、バンド部20がその先端から挿通可能であって、その幅方向の両側部には、バンド部20のガイドリブ22をその上下両面側から摺接することの可能なガイド溝部32が設けられている。
【0019】
バンド挿通通路31の挿通方向の略中央位置の上側壁面31Aからは、図4に示すように、第1ロックアーム部33A(第1のロックアームに相当する)が突設されている。第1ロックアーム部33Aは、バンド挿通通路31の後方に向かってL字型に屈曲し、その延出方向は、バンド挿通通路31の挿通方向に沿う方向とされている。バンド挿通通路31の挿通方向の第1ロックアーム部33Aの突設位置よりも前側の位置には、バンド挿通通路31の下側壁面31Bから第2ロックアーム部33B(第2のロックアームに相当する)が突設されている。第2ロックアーム部33Bは、第1ロックアーム部33Aと同様に、バンド挿通通路31の後方に向かってL字型に屈曲し、その延出方向は、バンド挿通通路31の挿通方向に沿う方向である。
【0020】
第1ロックアーム部33Aの先端側の下側壁面31Bに対向する面には、第1係合爪34Aが立設されている。同じようにして、第2ロックアーム部33Bの先端側の上側壁面31Aに対向する面には、第2係合爪34Bが立設されている。各係合爪34の形状は、図4に示すように、バンド挿通通路31の挿入側である前側からなだらかに傾斜をなして立ち上がり、後側の端部は、その挿通方向に対して直交する方向に切り立った状態となっている。この係合爪34が、バンド部20の係止孔21に引っ掛かることで係合される。
【0021】
次にワイヤーハーネスを結束する手順について図5から図7を用いて説明する。
まず、図示しないワイヤーハーネスにバンド部20を巻回した状態で、バンド部20をバンド挿通通路31に挿入する。詳しくは、その挿入方向は、図5に示す矢印の方向(前側から後側)であって、バンド部20の両側のガイドリブ22がガイド溝部32に嵌るようにその先端からバンド挿通孔31も挿入する。図6に示すように、バンド部20のガイドリブ22の上下両面がガイド溝部32に摺接すると、バンド部20は、このガイド溝部32に沿ってさらに挿通されていく。この際、各ロックアーム部33はバンド部20によって、各々突設された側の壁面31に向かって弾性的に撓み変形している。
【0022】
さて、バンド部20が、ワイヤーハーネスを締め付けた状態で静止すると、各係合爪34に係止孔21が引っ掛かかる。詳しくは、係止爪34を有するロックアーム部33は、撓み変形したその反力(つまり、弾性復帰しようとする力)により、対向するバンド部20を押圧した状態にある。この状態でバンド部20を静止すると、各係合爪34に対応する位置の係止孔21に、当該係合爪34が入り込むことで係合される(図7参照)。以上のようにして、ワイヤーハーネスは、結束バンド10によってその締め付けた状態のままに結束される。
【0023】
なお、このワイヤーハーネス用結束バンド10を成形するための成形金型50は、図8に示すように、第1金型51と第2金型52とからなる割型によって構成され、その抜き方向は、バンド挿通孔30の挿通方向と同方向とされる。
【0024】
以上説明したように、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bの二つのロックアームをバンド挿通通路31の上下壁面31A,31Bにその挿通方向に対して互い違いとなるように各々一つずつ設け、さらに各ロックアーム部33A,33Bの先端側に第1係合爪34A,第2係合爪34Bをそれぞれ立設させているから、2つの係合爪34A,34Bが異なる係止孔21にそれぞれ係合し、バンド部20の異なる2箇所を係合する2重係合構造とすることができる。加えて、従来の例えばバンド挿通通路の下側壁面にのみロックアームを突設しそのロックアーム上に複数の係合爪を立設させた場合と比較して、各ロックアーム部33A,33Bに立設する係合爪34A,34Bを一つずつとしたことにより、成形時にアンダーカット部が生じることなく、しかも成形金型を2型からなる割型とすることができる。このように、本実施形態によれば、2重係合構造とアンダーカット部の生じない金型構造の両方を同時に可能とすることができる。
【0025】
また、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとをバンド挿通通路31の挿通方向に関してずらして配置することで、挿通方向に関して同位置に設けられた場合と比較して、バンド挿通通路31の内径を小さくすることができる。さらに、各係止爪34A,34Bが異なる係止孔21にそれぞれ係止されるように配されているから、両側から同じ係止孔21に2つの係止爪34A,34Bが係止されることがなく、従来の係止爪がバンド部の片側のみに対応していた場合と、略同じ厚さのバンド部20で対応することができる。
【0026】
なお、バンド部20の幅方向両端部には、上下両面に突出するガイドリブ22が形成されており、バンド挿通通路31のガイドリブ22に対応する位置にはガイド溝部32が設けられているから、バンド部20は、ガイドリブ22をガイド溝部32に合致させることで、バンド部20の挿通方向をガイドすることができる。これにより、係合爪34A,34Bがバンド部20の係止孔21に係合されやすいように、その位置関係を一定とすることができるから、さらなる係合力の向上に寄与できる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0028】
(1)上記実施形態1では、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bは、バンド挿通通路31の挿通方向において、互い違いとなるように、形成されていたが、これに限られず、例えば、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとが互いに対向する位置に形成されていてもよい。ただし、各ロックアーム部33に突設される係合爪34の位置は、互い違いとなるように、各ロックアーム部33の先端からの距離が異なるように形成されている。このようにすれば、各係合爪34は、それぞれ異なる係止孔21に係合されることとなるので、バンド部20の異なる位置での二重係止が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
10…ワイヤーハーネス用結束バンド
20…バンド部
21…係止孔
30…本体部
31…バンド挿通通路
32…ガイド溝部
33A…第1ロックアーム部
33B…第2ロックアーム部
34A…第1係合爪
34B…第2係合爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用結束バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に配索されるワイヤーハーネスを結束保持するために用いられる結束バンドの一例として図9から図11に記載のものが知られている。この結束バンド100は、ワイヤーハーネスに巻きつく帯状のバンド部101と、バンド部101を挿通して係止するバンド挿通孔102と、を備えている。バンド部101には、図示しない係止歯が形成され、挿通孔102内には、図10に示すロックアーム部103が一体形成されている。ロックアーム部103には3つの係止爪104が立設されており、その係止爪104を含めて一体に成形するための金型構造は図11に示すものとなっている。
【0003】
この金型構造は3型からなり、まず左側の第1金型1を開き、続いて、右側の下側に位置する第2金型2を開き、ロックアーム部103を第2金型2を開いたことで成形された空間部分に撓ませ、右側の上側に位置する第3金型3を右側に抜いて成形が完了する。しかしながらこのような構造によると、第3金型3に関して係止爪104がアンダーカットとなることから、最後の第3金型3を無理に抜くこととなる。これにより、第3金型3の引抜時に係止爪104に破損やダレが発生し、これが係止力の不足につながることが懸念される。
【0004】
これに対して、アンダーカット部が生じないような構造として特許文献1に記載のものが知られている。この結束バンドは、上記と略同様の構造をなしているが、ロックアーム部に突設される係止爪を一つとしているところが相違する。これにより、アンダーカット部が生じない金型構造としている。
【0005】
この結束バンドは、バンド部をワイヤーハーネスに巻きつけた状態で挿通孔へと挿通させ、ワイヤーハーネスを締め付けた位置で静止させると係止歯が係止爪に引っ掛かり結束した状態が保持される。また、バンド部を挿通孔から引き抜こうとすると、ロックアーム部に一体に形成された係止爪がバンド部の係止歯に引きずられて撓み変形し、ロックアーム部の後端部が、バンド部の係止歯に係止され、二重係止が可能な構造となっている。これにより、係止爪を一つにしたことによる係止力の低下を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−208018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようにバンド部を挿通孔から引き抜こうとした際にのみ、ロックアーム部の後端部は係止爪としての機能を果たすから、やはりバンド部が挿通孔の挿通方向に挿通されたときに係止するための係止力の低下が懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、係合力に優れ、且つ成形時にアンダーカット部が生じることのないワイヤーハーネス用結束バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部と、前記バンド部に形成されその幅方向の両端部において前記バンド部の長手方向に沿って両面から突設されたガイドリブと、前記バンド部に前記長手方向に沿って間欠的に形成された複数の係止孔と、前記バンド部の長手方向の一端部に設けられ、前記ワイヤハーネスに巻回した前記バンド部をその他端部側から挿通可能なバンド挿通通路と、前記バンド挿通通路の内周縁の対向位置に形成され前記バンド部の前記ガイドリブを前記バンド部の表裏両面側から摺接させてガイドするガイド溝部と、前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面の一方の面に対応する内壁部から突設され挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記係止孔に係合可能な単一の係合爪を有する第1のロックアームと、前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面のうちの他方の面に対応する内壁部から突設され挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記第1のロックアームの前記係合爪が係合する前記係止孔とは異なる係止孔と係合する単一の係合爪を有する第2のロックアームとを備えることに特徴を有する。
【0010】
このような構造によれば、2つの係合爪が異なる係止孔に係合して、2重に係止することができるから、係合力に優れた構造とすることができる。即ち、バンド挿通通路の対応する内周壁側から一つずつロックアームが形成され、その先端部寄りに各々一つずつ係合爪が立設されているから、従来の単一のロックアーム部が備えられ、そのロックアーム部から単一の係止爪が立設されていた場合と比較して、係合力を向上させることができる。さらに、この構造を成形するための成形金型には、アンダーカット部が生じず、バンド挿通通路の挿通方向を抜き方向とする2型からなる割型により成形できる。
【0011】
前記ワイヤーハーネス用結束バンドは、合成樹脂製であって、一体成形により形成されていることが望ましい。
【0012】
前記第1のロックアームと前記第2のロックアームとは、前記バンド挿通通路の挿通方向において互い違いとなる位置に形成されていてもよい。バンド挿通通路の内壁部の互いに対向する面に形成された第1のロックアームと第2のロックアームは、その挿通方向の位置が、一致して重なると、その分、バンド挿通通路の穴径の高さ方向に関して高くしなければならず、結束バンド全体の大きさが大きくなってしまう。これに対して、各ロックアームを互いにバンド挿通通路内でずらして配することで、対応する内壁部の両側にロックアームをそれぞれ設けたとしても、結束バンドが大型化するのを防ぐことができる。さらに、各係止爪が異なる係止孔にそれぞれ係止されるように配されているから、両側から同じ係止孔に2つの係止爪が係止されることがなく、バンド部の厚みは従来通りでよいという利点もある。
【0013】
前記係合爪は、前記第1のロックアームと前記第2のロックアームにおいて、前記バンド挿通通路に挿通された前記バンド部に沿う面上に各々形成され、前記係合爪の前記第1のロックアームと前記第2のロックアームの各々の基端部からの形成位置が同一であることが望ましい。各ロックアームの基端部からの係合爪の形成位置を同一とすることで、係止孔に対する係合爪の係合力を一定とすることができる。即ち、各ロックアームは、バンド部が挿通すると突設された側の内壁部側に撓み変形し、バンド部が静止するとその撓み変形したロックアームが弾性復帰することで、バンド部にロックアーム上に形成された係合爪が押し込まれるようにして、係合する。よって、係合爪のロックアームの基端部からの形成位置によって、そのロックアームの弾性力を利用した係合爪の係合力が変化するため、係合爪のロックアームの基端部からの形成位置が同一であることが望ましいのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、係合力に優れ、且つ成形時にアンダーカット部が生じることのない結束バンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る結束バンドの斜視図
【図2】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図1の本体部拡大図
【図3】本発明の実施形態1に係る結束バンドの正面図
【図4】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図3のA−A断面図
【図5】本発明の実施形態1に係る結束バンドの側面図
【図6】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図5のB−B断面図
【図7】本発明の実施形態1に係る結束バンドの図3のA−A断面においてバンド部をバンド挿通孔に挿通させた状態図
【図8】本発明の実施形態1に係る結束バンドの金型構造を示した概略図
【図9】従来例に係る結束バンドの背面図
【図10】従来例に係る結束バンドの図9のC−C断面図
【図11】従来例に係る結束バンドの金型構造を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
ワイヤーハーネス用結束バンド10は、合成樹脂製であって、一体成形によって形成されている。その構成は図1に示すように、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部20と、バンド部20の一端に連結された略箱状の本体部30と、本体部30を貫通するように設けられたバンド挿通通路31とを備えている。以下、図1の上を上側、下を下側、手前側を後方、奥側を前方として説明する。
【0017】
バンド部20は、図1に示すように、複数のワイヤーハーネスを束ねることのできる長さを有し、略一定の幅寸法で本体部30から下方に延出されている。その厚みは可撓性を有するために薄肉となっている。バンド部20の幅方向の略中央部には係止孔21が長手方向に沿って一定間隔に多数形成されている。バンド部20の幅方向の両端部には、バンド部20の長手方向に沿って延びるガイドリブ22が両面から突設されている。
【0018】
本体部30には、図1の奥側から手前側(前方から後方)に貫通するバンド挿通通路31が形成されている。バンド挿通通路31は、バンド部20がその先端から挿通可能であって、その幅方向の両側部には、バンド部20のガイドリブ22をその上下両面側から摺接することの可能なガイド溝部32が設けられている。
【0019】
バンド挿通通路31の挿通方向の略中央位置の上側壁面31Aからは、図4に示すように、第1ロックアーム部33A(第1のロックアームに相当する)が突設されている。第1ロックアーム部33Aは、バンド挿通通路31の後方に向かってL字型に屈曲し、その延出方向は、バンド挿通通路31の挿通方向に沿う方向とされている。バンド挿通通路31の挿通方向の第1ロックアーム部33Aの突設位置よりも前側の位置には、バンド挿通通路31の下側壁面31Bから第2ロックアーム部33B(第2のロックアームに相当する)が突設されている。第2ロックアーム部33Bは、第1ロックアーム部33Aと同様に、バンド挿通通路31の後方に向かってL字型に屈曲し、その延出方向は、バンド挿通通路31の挿通方向に沿う方向である。
【0020】
第1ロックアーム部33Aの先端側の下側壁面31Bに対向する面には、第1係合爪34Aが立設されている。同じようにして、第2ロックアーム部33Bの先端側の上側壁面31Aに対向する面には、第2係合爪34Bが立設されている。各係合爪34の形状は、図4に示すように、バンド挿通通路31の挿入側である前側からなだらかに傾斜をなして立ち上がり、後側の端部は、その挿通方向に対して直交する方向に切り立った状態となっている。この係合爪34が、バンド部20の係止孔21に引っ掛かることで係合される。
【0021】
次にワイヤーハーネスを結束する手順について図5から図7を用いて説明する。
まず、図示しないワイヤーハーネスにバンド部20を巻回した状態で、バンド部20をバンド挿通通路31に挿入する。詳しくは、その挿入方向は、図5に示す矢印の方向(前側から後側)であって、バンド部20の両側のガイドリブ22がガイド溝部32に嵌るようにその先端からバンド挿通孔31も挿入する。図6に示すように、バンド部20のガイドリブ22の上下両面がガイド溝部32に摺接すると、バンド部20は、このガイド溝部32に沿ってさらに挿通されていく。この際、各ロックアーム部33はバンド部20によって、各々突設された側の壁面31に向かって弾性的に撓み変形している。
【0022】
さて、バンド部20が、ワイヤーハーネスを締め付けた状態で静止すると、各係合爪34に係止孔21が引っ掛かかる。詳しくは、係止爪34を有するロックアーム部33は、撓み変形したその反力(つまり、弾性復帰しようとする力)により、対向するバンド部20を押圧した状態にある。この状態でバンド部20を静止すると、各係合爪34に対応する位置の係止孔21に、当該係合爪34が入り込むことで係合される(図7参照)。以上のようにして、ワイヤーハーネスは、結束バンド10によってその締め付けた状態のままに結束される。
【0023】
なお、このワイヤーハーネス用結束バンド10を成形するための成形金型50は、図8に示すように、第1金型51と第2金型52とからなる割型によって構成され、その抜き方向は、バンド挿通孔30の挿通方向と同方向とされる。
【0024】
以上説明したように、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bの二つのロックアームをバンド挿通通路31の上下壁面31A,31Bにその挿通方向に対して互い違いとなるように各々一つずつ設け、さらに各ロックアーム部33A,33Bの先端側に第1係合爪34A,第2係合爪34Bをそれぞれ立設させているから、2つの係合爪34A,34Bが異なる係止孔21にそれぞれ係合し、バンド部20の異なる2箇所を係合する2重係合構造とすることができる。加えて、従来の例えばバンド挿通通路の下側壁面にのみロックアームを突設しそのロックアーム上に複数の係合爪を立設させた場合と比較して、各ロックアーム部33A,33Bに立設する係合爪34A,34Bを一つずつとしたことにより、成形時にアンダーカット部が生じることなく、しかも成形金型を2型からなる割型とすることができる。このように、本実施形態によれば、2重係合構造とアンダーカット部の生じない金型構造の両方を同時に可能とすることができる。
【0025】
また、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとをバンド挿通通路31の挿通方向に関してずらして配置することで、挿通方向に関して同位置に設けられた場合と比較して、バンド挿通通路31の内径を小さくすることができる。さらに、各係止爪34A,34Bが異なる係止孔21にそれぞれ係止されるように配されているから、両側から同じ係止孔21に2つの係止爪34A,34Bが係止されることがなく、従来の係止爪がバンド部の片側のみに対応していた場合と、略同じ厚さのバンド部20で対応することができる。
【0026】
なお、バンド部20の幅方向両端部には、上下両面に突出するガイドリブ22が形成されており、バンド挿通通路31のガイドリブ22に対応する位置にはガイド溝部32が設けられているから、バンド部20は、ガイドリブ22をガイド溝部32に合致させることで、バンド部20の挿通方向をガイドすることができる。これにより、係合爪34A,34Bがバンド部20の係止孔21に係合されやすいように、その位置関係を一定とすることができるから、さらなる係合力の向上に寄与できる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0028】
(1)上記実施形態1では、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bは、バンド挿通通路31の挿通方向において、互い違いとなるように、形成されていたが、これに限られず、例えば、第1ロックアーム部33Aと第2ロックアーム部33Bとが互いに対向する位置に形成されていてもよい。ただし、各ロックアーム部33に突設される係合爪34の位置は、互い違いとなるように、各ロックアーム部33の先端からの距離が異なるように形成されている。このようにすれば、各係合爪34は、それぞれ異なる係止孔21に係合されることとなるので、バンド部20の異なる位置での二重係止が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
10…ワイヤーハーネス用結束バンド
20…バンド部
21…係止孔
30…本体部
31…バンド挿通通路
32…ガイド溝部
33A…第1ロックアーム部
33B…第2ロックアーム部
34A…第1係合爪
34B…第2係合爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部と、
前記バンド部に形成されその幅方向の両端部において前記バンド部の長手方向に沿って両面から突設されたガイドリブと、
前記バンド部に前記長手方向に沿って間欠的に形成された複数の係止孔と、
前記バンド部の長手方向の一端部に設けられ、前記ワイヤハーネスに巻回した前記バンド部をその他端部側から挿通可能なバンド挿通通路と、
前記バンド挿通通路の内周縁の対向位置に形成され前記バンド部の前記ガイドリブを前記バンド部の表裏両面側から摺接させてガイドするガイド溝部と、
前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面の一方の面に対応する内壁部から突設され、挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記係止孔に係合可能な単一の係合爪を有する第1のロックアームと、
前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面のうちの他方の面に対応する内壁部から突設され、挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記第1のロックアームの前記係合爪が係合する前記係止孔とは異なる係止孔と係合する単一の係合爪を有する第2のロックアームと、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項2】
前記ワイヤーハーネス用結束バンドは、合成樹脂製であって、一体成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項3】
前記第1のロックアームと前記第2のロックアームとは、前記バンド挿通通路の挿通方向において互い違いとなる位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項4】
前記係合爪は、前記第1のロックアームと前記第2のロックアームにおいて、前記バンド挿通通路に挿通された前記バンド部に沿う面上に各々形成され、前記係合爪の前記第1のロックアームと前記第2のロックアームの各々の基端部からの形成位置が同一であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項1】
ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部と、
前記バンド部に形成されその幅方向の両端部において前記バンド部の長手方向に沿って両面から突設されたガイドリブと、
前記バンド部に前記長手方向に沿って間欠的に形成された複数の係止孔と、
前記バンド部の長手方向の一端部に設けられ、前記ワイヤハーネスに巻回した前記バンド部をその他端部側から挿通可能なバンド挿通通路と、
前記バンド挿通通路の内周縁の対向位置に形成され前記バンド部の前記ガイドリブを前記バンド部の表裏両面側から摺接させてガイドするガイド溝部と、
前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面の一方の面に対応する内壁部から突設され、挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記係止孔に係合可能な単一の係合爪を有する第1のロックアームと、
前記バンド挿通通路のうち前記バンド部の表裏両面のうちの他方の面に対応する内壁部から突設され、挿通された前記バンド部の前記他端側に向かってL字形に屈曲して前記バンド部に沿って延びると共に、先端部寄りに前記第1のロックアームの前記係合爪が係合する前記係止孔とは異なる係止孔と係合する単一の係合爪を有する第2のロックアームと、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項2】
前記ワイヤーハーネス用結束バンドは、合成樹脂製であって、一体成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項3】
前記第1のロックアームと前記第2のロックアームとは、前記バンド挿通通路の挿通方向において互い違いとなる位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【請求項4】
前記係合爪は、前記第1のロックアームと前記第2のロックアームにおいて、前記バンド挿通通路に挿通された前記バンド部に沿う面上に各々形成され、前記係合爪の前記第1のロックアームと前記第2のロックアームの各々の基端部からの形成位置が同一であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス用結束バンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−94770(P2011−94770A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251932(P2009−251932)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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