説明

ワイヤーボンディング装置

【課題】 キャピラリーに発生する異常からキャピラリーの交換時期を摩耗量に応じて高精度に検知することを可能にする。
【解決手段】 ワイヤーボンディング装置100は、キャピラリーを用いて半導体チップのワイヤーボンディングを行うワイヤーボンディング装置であって、キャピラリーに設けられた開口部下端の直径をモニターするカメラ108と、カメラ108でモニターされた前記開口部下端の直径が、所定の値以下であるかどうかを判別し、所定の値以下である場合に異常であると判定する判定部130と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリーを用いて半導体チップのワイヤーボンディングを行うワイヤーボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤーボンディング装置に用いられるキャピラリーの交換時期の特定方法として、特許文献1(特開平8-186146)に記載されているように、新たなボンディングツールをボンディングアラームに装着後、装置のボンディング作業累積時間が所定時間に達したら、ツール交換手段にボンディングツールの交換作業を行わせるものがあった。
【0003】
また、従来の別のキャピラリーの交換時期の特定方法として、あらかじめ寿命となる磨耗量にかかる打点数を評価しておき、ボンディング打点数が評価により得られた寿命の打点でキャピラリーの寿命と判断する方法があった。
【特許文献1】特開平8−186146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(特開平8-186146)に記載のキャピラリーの交換時期の特定方法では、装置のボンディング作業累積時間を記録する記録手段が必要であるため、装置が複雑になる上に、このボンディング作業累積時間がキャピラリーの磨耗量に直接対応しているわけではないので、キャピラリーの交換時期の特定方法としてはボンディング作業累積時間に基づく方法は精度を欠くものであった。
【0005】
また、ボンディングの打点数に基づくキャピラリーの交換時期の特定方法は、新しい材質のキャピラリーが開発された場合には、このキャピラリーの寿命に達するまでの新たな打点数の評価が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤーボンディング装置は、キャピラリーを用いて半導体チップのワイヤーボンディングを行うワイヤーボンディング装置であって、
キャピラリーに設けられた開口部下端の直径をモニターするカメラと、
カメラでモニターされた前記開口部下端の直径が、所定の値以下であるかどうかを判別し、所定の値以下である場合に異常であると判定する判定部と、を含む。
【0007】
このワイヤーボンディング装置において、判定部で異常が判定されたときに、装置全体を停止するように制御する制御部をさらに含んでいてもよい。また、判定部で異常が判定されたときに、アラームで知らせるアラーム部をさらに含んでいてもよい。
【0008】
以上のように構成することで、ワイヤーボンディング装置に用いられるキャピラリ−は、摩耗すると開口部下端の直径が小さくなるところ、この直径をカメラにより直接モニターすることで、キャピラリーの磨耗の程度、すなわち摩耗量を把握することができるので、キャピラリー交換時期を摩耗量に応じて高精度に検知することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャピラリーに発生する異常からキャピラリーの交換時期を摩耗量に応じて高精度に検知することを可能にするワイヤーボンディング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態にかかるワイヤーボンディング装置について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるワイヤーボンディング装置の要部を示すブロック図である。図2は、本実施形態でのカメラの構成例を模式的に示す図である。
本実施形態にかかるワイヤーボンディング装置100は、キャピラリー102を用いて半導体チップのワイヤーボンディングを行うワイヤーボンディング装置であって、キャピラリー102に設けられた開口部下端の直径をモニターするカメラ108と、カメラ108でモニターされた前記開口部下端の直径が、所定の値以下であるかどうかを判別し、所定の値以下である場合に異常であると判定する判定部130と、を含む。このほかに図示しないが、ワイヤーボンディング装置100には、半導体チップのボンディングパッドとリードフレーム側のリード電極とをワイヤーで接続させるためのボンダー部も含まれている。
【0012】
キャピラリー102は、図2に示したように、ワイヤー110を前記ボンディングパッドに圧着させるものであり、ワイヤー110をボンディングパッドに導入する部分に開口部を有する。
【0013】
また、カメラ108は、図2に示したようにして、キャピラリー102の開口部を直接撮像して得られた撮像データを判定部130に送る。これにより、キャピラリー102の開口部の状態、例えば開口部下端の直径、異物の付着などをモニターすることができる。
【0014】
判定部130は、カメラ108から送られる撮像データに基づいて、キャピラリーの異常が発生したか否か、例えばキャピラリーが摩耗して交換時期を迎えたか否かを判定する。
【0015】
図3および図4は、キャピラリーが摩耗したか否かを判別する方法を示す図である。
図3では、摩耗していない状態のキャピラリー102が示されている。これによれば、キャピラリー102の下方部の先端には、開口部104が形成されており、この開口部104の下端の幅が直径106として示されている。一方、図4では、ワイヤーボンディングへの使用を重ねて摩耗したキャピラリー102が示されている。これによれば、キャピラリー102の使用の結果、先端面102bが後退して、先端面102aとなり、開口部104の下端の直径106aは、図3の直径106よりも小さいものとなる。
【0016】
したがって、判定部130では、カメラ108から送られてくる撮像データから、キャピラリー102の先端面、すなわち開口部下端の直径を検出し、この直径が所定値よりも小さいか否かを判別するようになっている。この判別結果がYES、すなわちキャピラリー102の開口部下端の直径が所定値よりも小さくなっていたときには異常が発生したと判定し、この判別結果がNO、すなわちこの直径が所定値よりも小さくなっていないときには異常が発生していないと判定される。
【0017】
さらに、判定部130では、カメラ108より送られる撮像データに基づいて、キャピラリー102の開口部に異物が付着したか否かを判別することもできる。すなわち、カメラ108がキャピラリー102に設けられた開口部に付着した異物を撮像したときに、キャピラリー102に異物が付着したか否かを判別し、異物が付着したと判別されたときに異常であると判定される。
【0018】
アラーム部132は、判定部130で異常が判定されたときに、その旨をアラームで作業者に知らせるものである。作業者は、このアラームによって、キャピラリー102に異常が発生したことを知ることができる。また、異常の種類ごとに異なるアラームを出すようにすることもできる。例えば、キャピラリー102が摩耗して交換時期にあること、およびキャピラリー102に異物が付着したことを、作業者はアラームの種類で知ることができるようになる。なお、この異常が判定された旨を、アラーム部132にてアラームを発生させるかわりに、表示装置などにて表示させるようにしてもよい。
【0019】
また、制御部136は、判定部130で異常が判定されたときに、前記ボンダー部を含めた装置100全体を停止するように制御するものである。装置100を停止させた後は、例えばキャピラリー102が交換時期にあるときや、キャピラリー102に異物が付着したときはキャピラリーの交換を行うことができる。なお、異常が判定されたときに、制御部136による自動停止を行うかわりに、作業者が異常を確認したら、手動で装置全体を停止させるようにしてもよい。
【0020】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態でのカメラの構成例を模式的に示す図である。
図5によれば、半導体チップ116の上に設けられたボンディングパッド118およびリード電極120がワイヤー110により接続されていることが示されている。このボンディングパッド118に、ワイヤー110を圧着させるための圧着ボール112が形成されている。なお、図面には示されていないが、その他の構成として図1に示したものと同様に、判定部130,アラーム部132,制御部136が設けられている。
【0021】
図6は、圧着ボールが形成される様子を模式的に示す図である。図7は、この圧着ボールの上面図を示す。
図6によれば、圧着ボール112には、ボンディングパッド(不図示)に接続されるワイヤー110の先端において、キャピラリー102により圧着される際に、キャピラリー102の開口部104の部分が転写されることになる。さらに、この転写された部分の径が、キャピラリー102の開口部104の下端の直径114に対応するようになっている。
【0022】
そこで、図7に示したように、カメラ108が、キャピラリー102に設けられた開口部104が転写された半導体チップ上の圧着ボールを撮像することによって、キャピラリー102に設けられた開口部下端の直径をモニターするものである。すなわち、判定部130にて、カメラ108から送られるこの撮像データに基づいて、圧着ボール112上に転写される径を検出して、キャピラリー102の開口部が摩耗したか否かを判定することができる。
【0023】
また、キャピラリー102の開口部に付着した異物が、圧着ボールに転写されるため、判定部130では、キャピラリー102に設けられた開口部104に付着した異物が転写された半導体チップ116上の圧着ボール112をカメラ108が撮像したときに、キャピラリー102に異物が付着したか否かをさらに判別し、異物が付着したと判別されたときに異常であると判定することもできる。
【0024】
判定部130での判定結果に基づいて、第1実施形態と同様に、異常が判定されたときにはアラーム部132でアラームを発し、また制御部で装置100全体を停止するように制御してもよい。これにより、装置100を停止させた後は、作業者は、例えばキャピラリー102が交換時期にあるときや、キャピラリー102に異物が付着したときはキャピラリーの交換を行うことができる。
【0025】
以上、説明したように、これら実施形態によれば、キャピラリーの開口部下部を直接撮像し、または半導体チップのボンディングパッド上に形成される圧着ボールを上面から撮像することにより、キャピラリーの開口部における様子を直接的または間接的にモニターすることができ、撮像結果にしたがって、キャピラリーの磨耗の程度、すなわち摩耗量を把握することができるので、キャピラリー交換時期を摩耗量に応じて高精度に検知することができる。
【0026】
これにより、キャピラリーに発生する異常からキャピラリーの交換時期を摩耗量に応じて高精度に検知することを可能にするワイヤーボンディング装置を提供することができる。
【0027】
また、キャピラリーへの異物の付着を併せてモニターすることで、キャピラリーに異物が付着したまま、ボンディングを行うことを回避することができ、これによる不具合の発生、およびその後のボンディングへの悪影響によるさらなる不具合の発生を抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態にかかるワイヤーボンディング装置の要部を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態でのカメラの構成例を模式的に示す図である。
【図3】キャピラリーが摩耗したか否かを判別する方法を示す図である。
【図4】キャピラリーが摩耗したか否かを判別する方法を示す図である。
【図5】第2実施形態でのカメラの構成例を模式的に示す図である。
【図6】第2実施形態において圧着ボールが形成される様子を模式的に示す図である。
【図7】図6の圧着ボールの上面図を示す。
【符号の説明】
【0029】
100 ワイヤーボンディング装置
102 キャピラリー
104 開口部
106 開口部下端の直径
108 カメラ
110 ワイヤー
112 圧着ボール
114 転写された開口部下端の直径
116 半導体チップ
118 ボンディングパッド
120 リード電極
130 判定部
132 アラーム部
136 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリーを用いて半導体チップのワイヤーボンディングを行うワイヤーボンディング装置であって、
前記キャピラリーに設けられた開口部下端の直径をモニターするカメラと、
前記カメラでモニターされた前記開口部下端の直径が、所定の値以下であるかどうかを判別し、所定の値以下である場合に異常であるという判定を行う判定部と、を含むワイヤーボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーボンディング装置において、
前記カメラは、前記キャピラリーの開口部を直接撮像することによって、前記キャピラリーに設けられた開口部下端の直径をモニターすることを特徴とするワイヤーボンディング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤーボンディング装置において、
前記カメラは、前記キャピラリーに設けられた開口部が転写された前記半導体チップ上の圧着ボールを撮像することによって、前記キャピラリーに設けられた開口部下端の直径をモニターすることを特徴とするワイヤーボンディング装置。
【請求項4】
請求項2に記載のワイヤーボンディング装置において、
前記判定部は、さらに、前記カメラの撮像信号に基づいて、前記キャピラリーに異物が付着したか否かを判別し、異物が付着したと判別されたときに異常であるという判定を行うことを特徴とするワイヤーボンディング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のワイヤーボンディング装置において、
前記判定部は、さらに、前記カメラの撮像信号に基づいて、前記キャピラリーに異物が付着したか否かを判別し、異物が付着したと判別されたときに異常であるという判定を行うことを特徴とするワイヤーボンディング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のワイヤーボンディング装置において、
前記判定部で行われた前記判定に基づいて、装置全体を停止するように制御する制御部をさらに含むことを特徴とするワイヤーボンディング装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のワイヤーボンディング装置において、
前記判定部で行われた前記判定に基づいて、アラームで知らせるアラーム部をさらに含むことを特徴とするワイヤーボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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