説明

ワイヤーロープの探傷装置

【課題】ワイヤーロープの径方向に対する押圧力を比較的小さく保ちながらも、このワイヤーロープの振動を抑制することができるワイヤーロープの探傷装置の提供。
【解決手段】ワイヤーロープ4の長手方向に磁化する一対の永久磁石2a,2bと、これら永久磁石2a,2bによって磁化されるワイヤーロープ4の部分の近傍に配置され、ワイヤーロープ4の部分に生じている損傷部から漏洩する漏洩磁束を検出する磁気センサ3と、ワイヤーロープ4に対して永久磁石2a,2b及び磁気センサ3を位置決めさせる一対の位置決め機構5,6とを備え、位置決め機構5,6は、ワイヤーロープ4の外周の各3箇所で囲むように接触する回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cと、これら回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがワイヤーロープ4に対する密着力を生じさせるコイルばね5d,5e,6d,6eとをそれぞれ備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気探傷法の実施に好適なワイヤーロープの探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーロープはエレベーター、リフト、ケーブルカー、クレーン等に多く使用されているが、使用頻度に応じて疲労や摩耗等による局部的な損傷が発生し、構成要素のワイヤーロープが順次破断する。この破断数は経年的に増加し、破断数が所定の値を超えるとワイヤーロープは寿命に至ったと判断されて交換が行われる。そのため、定期的な検査により、ワイヤーロープの破断数を計測し、ワイヤーロープが安全に使用できるか否かを評価する必要がある。
【0003】
このような使用中のワイヤーロープの破断数を検査するために、簡便に用いることができるワイヤーロープの探傷法として、電磁気探傷法が知られている。この電磁気探傷法を実施する装置として、例えば、永久磁石を用いてワイヤーロープを長手方向に磁化し、ワイヤーロープの破断部から漏洩する漏洩磁束を磁気センサで検出してワイヤーロープの破断を検査するワイヤーロープの探傷装置が従来より知られている。
【0004】
しかしながら、この種のワイヤーロープの探傷装置は、磁束密度の高い永久磁石を備えていることによってワイヤーロープに引き寄せられるので、ワイヤーロープの移動に伴って摺接摩擦力を受ける。一方、この摺接摩擦力はワイヤーロープ表面の油の状態によって変化する。そのため、この種のワイヤーロープの探傷装置はワイヤーロープの移動方向に振動し、磁気センサで検出した漏洩磁束の検出値に影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
そこで、このような摺接摩擦力による振動の影響を緩和するために、ワイヤーロープとの接触部にガイド体としてローラを備えたワイヤーロープの探傷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ブラケットを介して回転可能に取り付けられた一対のローラを備え、これらのローラを回転させて複数のワイヤーロープの表面を同時に清掃することによって、これらワイヤーロープ表面の油の状態を均一にするワイヤーロープの清掃装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−181792号公報
【特許文献2】実開昭59−120772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたワイヤーロープの探傷装置では、ワイヤーロープとの接触部にガイド体として設けられたローラがワイヤーロープの移動方向に対する摺接摩擦力を緩和することによって、この探傷装置がワイヤーロープの長手方向へ振動することを抑えることができるが、ワイヤーロープ又は探傷装置がワイヤーロープの径方向に振動することを防止することができない。そのため、この場合には、ワイヤーロープと探傷装置のワイヤーロープの径方向に対する距離が変化し、この変化に伴って磁気センサの出力が変動するので、漏洩磁束の計測精度が低下しやすいという問題があった。
【0007】
なお、特許文献2に開示されたワイヤーロープの清掃装置では、上述したように、ブラケットを介して取り付けられた一対のローラが複数本のワイヤーロープを両側方から挟み、これらのローラを回転させることによって、複数のワイヤーロープの表面を同時に清掃することができる。しかしながら、ワイヤーロープの振動はワイヤーロープ4本毎で異なっており、これら一対のローラでワイヤーロープがワイヤーロープの径方向に振動することをも抑えようとする場合には、これらローラのワイヤーロープへの押圧力を非常に大きくする必要があり、設置すること自体が困難である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワイヤーロープの径方向に対する押圧力を比較的小さく保ちながらも、このワイヤーロープの振動を抑制することができるワイヤーロープの探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のワイヤーロープの探傷装置は、ワイヤーロープの長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化される前記ワイヤーロープの部分の近傍に配置され、前記ワイヤーロープの部分に生じている損傷部から漏洩する漏洩磁束を検出する磁気センサとを備えたワイヤーロープの探傷装置において、前記ワイヤーロープに対して前記磁化手段及び前記磁気センサを位置決めさせる位置決め機構を備え、この位置決め機構は、前記ワイヤーロープの外周の少なくとも3箇所で囲むように接触する接触部と、この接触部が前記ワイヤーロープに密着する力を生じさせる力発生手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明では、ワイヤーロープが少なくとも3箇所で囲まれた接触部が力発生手段による密着力を受けることによって、本発明の探傷装置がワイヤーロープの径方向の少なくとも3箇所において接触部に囲まれた状態でワイヤーロープに固定されるので、ワイヤーロープに対する押圧力を比較的小さく保ちながらも、このワイヤーロープの振動を抑制することができる。これにより、ワイヤーロープの径方向に対する距離が変化することを抑えることができ、ワイヤーロープの径方向に対する距離を一定に保つことができる。そのため、この距離の変動に伴って生じる磁気センサの出力の変動を抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置では、前記発明において、前記接触部が回転体から成ることを特徴としている。このように構成すると、ワイヤーロープの移動に伴う摺接摩擦力を緩和することができるので、本発明の探傷装置がワイヤーロープの長手方向へ振動することをより抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置では、前記発明において、前記回転体の回転軸と前記ワイヤーロープのストランドの撚り方向とのなす角度が直角又は鋭角となるように前記回転体を配置したことを特徴としている。このように構成すると、ワイヤーロープが本発明の探傷装置を摺接した際に、ワイヤーロープのストランドの凹凸によって探傷装置がワイヤーロープに対して振動することをも抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置では、前記発明において、前記力発生手段が弾性体から成ることを特徴としている。このように構成すると、本発明の探傷装置を容易にワイヤーロープに装着脱することができ、高い利便性を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置では、前記発明において、前記ワイヤーロープと摺接する非金属のガイド部材を備えたことを特徴としている。このように構成すると、ガイド部材で案内することによって、ワイヤーロープの摺接、あるいは相対的な摺接を容易に実施させることができる。
【0015】
また、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置では、前記発明において、前記位置決め機構を2つ設け、これらの位置決め機構の間に前記磁化手段と前記磁気センサを配置したことを特徴としている。このように構成すると、ワイヤーロープの径方向においてワイヤーロープに確実に固定され、2つの位置決め機構の間に位置する前記磁化手段と前記磁気センサがワイヤーロープの径方向においてワイヤーロープに確実に固定されるので、ワイヤーロープのさらに安定した漏洩磁束の検出を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイヤーロープの探傷装置は、ワイヤーロープに対して磁化手段及び磁気センサを位置決めさせる位置決め機構を備え、この位置決め機構は、ワイヤーロープの外周の少なくとも3箇所で囲むように接触する接触部と、この接触部がワイヤーロープに密着する力を生じさせる力発生手段とを備えている。これにより、ワイヤーロープの径方向に対する押圧力を比較的小さく保ちながらも、このワイヤーロープの振動を抑制することができる。したがって、ワイヤーロープの径方向に対する距離の変動に伴って生じる磁気センサの出力の変動を抑えることができ、従来に比べて漏洩磁束の計測精度を向上させることができると共に、漏洩磁束の計測の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るワイヤーロープの探傷装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の第1実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置の構成を示す分解斜視図、図2は本発明の第1実施形態に備えられる位置決め機構を示す正面図、図3は本発明の第1実施形態によって実施されるワイヤーロープの探傷検査における回転体とワイヤーロープの位置関係を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置1は、底板10aと一対の側板10b,10cとによって形成される筐体10と、この筐体10の中央に配置された磁束検出手段1Aと、筐体10の底板10aの上面に取り付けられると共に、磁束検出手段1Aの両側方に一直線上に配置された一対の位置決め機構5,6とを備えている。
【0020】
磁束検出手段1Aは、中央に配置されたヨーク9と、このヨーク9の上面に取り付けられた磁気センサ3と、ヨーク9の両端に取り付けられた磁化手段、例えば一対の永久磁石2a,2bと、これら永久磁石2a,2bの上面にそれぞれ取り付けられて非磁性体8が配置される一対の連結体15a,15bとを備えている。また、これら連結体15a,15bはそれぞれ凹部を有し、これら連結体15a,15bの凹部にワイヤーロープ4に摺接するU字型のガイド部材7が非磁性体8を介して係合される。なお、ガイド部材7は低摩擦の樹脂から構成されている。
【0021】
図2に示すように、位置決め機構5は、筐体10の底板10aの上面に取り付けられる固定体18aと、この固定体18aの上面両端に各ヒンジ16a,16bを介してそれぞれ回転可能に取り付けられた側板17a,17bとを備え、固定体18a及び側板17a,17bは、各中央にワイヤーロープ4の外周の例えば3箇所で囲むように接触する接触部を構成する長尺形状の回転体5a,5b,5cをそれぞれ有している。また、側板17a,17bには、回転体5a,5b,5cをワイヤーロープ4に密着する力を生じさせる力発生手段、例えば、弾性体であるコイルばね5d,5eの一端がそれぞれ接続されており、これらコイルばね5d,5eの他端は筐体10の側板10b,10cにそれぞれ接続されている。
【0022】
同様に、位置決め機構6は、筐体10の底板10aの上面に取り付けられる固定体18bと、この固定体18bの上面両端に各ヒンジ19a,19bを介してそれぞれ回転可能に取り付けられた側板20a,20bとを備え、固定体18b及び側板20a,20bは、各中央にワイヤーロープ4の外周の例えば3箇所で囲むように接触する接触部を構成する長尺形状の回転体6a,6b,6cをそれぞれ有している。また、側板20a,20bには、回転体6a,6b,6cをワイヤーロープ4に密着させる力を生じさせる力発生手段、例えば、コイルばね6d,6eの一端がそれぞれ接続されており、これらコイルばね6d,6eの他端はそれぞれ筐体10の側板10b,10cにそれぞれ接続されている。
【0023】
ここで、ワイヤーロープ4をガイド部材7及び位置決め機構5,6に配置した際に、回転体5b,5c,6b,6cがコイルばね5d,5e,6d,6eからそれぞれ内向きに働く力を受けてワイヤーロープ4に接触するようにコイルばね5d,5e,6d,6eの長さが予め調整されている。さらに図3に示すように、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの回転軸の方向とワイヤーロープ4のストランドの撚り方向とのなす角が、鋭角又は直角、例えばそれぞれ直角となるように配置されている。
【0024】
本発明の第1実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置1を用いてワイヤーロープ4の探傷検査を行う場合、まず、探傷装置1の位置決め機構5,6の側板17a,17b,20a,20bをワイヤーロープ4のそれぞれによって形成させる開口部30,31から挿入する。このとき、コイルばね5d,5e,6d,6eの力に抗して側板17a,17b,20a,20bが開き、ワイヤーロープ4の挿入後には、コイルばね5d,5e,6d,6eの力によって側板17a,17b,20a,20bが閉じる方向に回動する。次に、ワイヤーロープ4を各固定体18a,18bの回転体5a,6a及びガイド部材7に接触させる。このとき、回転体5b,5c,6b,6cがコイルばね5d,5e,6d,6eからそれぞれ内向きに働く力を受けて元の位置に戻ろうとすることによって、ワイヤーロープ4が回転体5b,5c,6b,6cによって押圧される。そして、ワイヤーロープ4をガイド部材7に沿って移動させると、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがワイヤーロープ4との摩擦によって回転すると共に、磁気センサ3が一対の永久磁石2a,2bで磁化されたワイヤーロープ4から漏洩した漏洩磁束を検出する。これによって、ワイヤーロープ4に損傷部が生じている場合には、その損傷部が存在することが検出される。
【0025】
なお、ワイヤーロープ4の方向とストランドの撚り方向とのなす角を撚り角θとすると、この撚り角θが例えば17.7°のとき、探傷装置1のワイヤーロープ4に対する摩擦力Fをストランドの撚り方向成分Fx及び各回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの回転軸方向成分Fyに分けると、Fxはcos(17.7°)、Fyはsin(17.7°)となる。ここで、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがない場合と比較すると、Fxは95%、Fyは30%となり、各回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの回転軸方向成分Fyは30%存在するものの、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがない場合に比べて摩擦が低減する。
【0026】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、ワイヤーロープ4が3箇所で囲まれた位置決め機構5の回転体5a,5b,5cからコイルばね5d,5eによる密着力を受け、さらに別の3箇所で囲まれた位置決め機構6の回転体6a,6b,6cからコイルばね6d,6eによる密着力を受けることによって、本発明の探傷装置1がワイヤーロープ4の径方向の3箇所において回転体5a,5b,5cに囲まれた状態でワイヤーロープ4に固定され、さらにワイヤーロープ4の径方向の別の3箇所において回転体6a,6b,6cに囲まれた状態でワイヤーロープ4に固定される。そのため、ワイヤーロープ4に対する押圧力を比較的小さく保ちながらも、このワイヤーロープ4の振動を抑制することができる。これにより、ワイヤーロープ4の径方向に対する距離が変化することを抑えることができ、ワイヤーロープ4の径方向に対する距離を一定に保つことができる。従って、この距離の変動に伴って生じる磁気センサ3の出力の変動を抑えることができ、漏洩磁束の計測精度を向上させることができると共に、漏洩磁束の計測の信頼性を高めることができる。
【0027】
また、本発明の第1実施形態では、ワイヤーロープ4をガイド部材7に沿って移動させると、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがワイヤーロープ4との摩擦によって回転するので、ワイヤーロープ4の移動に伴う摺接摩擦力を緩和することができる。そのため、本発明の探傷装置1がワイヤーロープ4の長手方向へ振動することをより抑えることができ、漏洩磁束の計測精度をより向上させることができる。
【0028】
また、本発明の第1実施形態では、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの回転軸の方向とワイヤーロープ4のストランドの撚り方向とのなす角が直角となっており、各回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cがワイヤーロープ4のストランドの凸部の少なくとも1箇所と常に接触するので、ワイヤーロープ4が本発明の探傷装置1を摺接した際に、ワイヤーロープ4のストランドの凹凸によって探傷装置1がワイヤーロープ4に対して振動することをも抑えることができ、漏洩磁束の計測精度をさらに向上させることができる。
【0029】
また、本発明の第1実施形態では、探傷装置1の位置決め機構5,6の側板17a,17b,20a,20bをワイヤーロープ4に押し込むだけで装着でき、また探傷装置1をワイヤーロープ4から引っ張るだけで取り外すことができるので、本発明の探傷装置1を容易にワイヤーロープ4に着脱することができ、高い利便性を確保することができる。
【0030】
また、本発明の第1実施形態では、ガイド部材7でワイヤーロープ4を案内することによって、ワイヤーロープ4の摺接、あるいは相対的な摺接を容易に実施させることができる。
【0031】
また、本発明の第1実施形態では、ワイヤーロープ4に2つの位置決め機構5,6の回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cで固定することによって、これら位置決め機構5,6の間に位置する磁束検出手段1Aはワイヤーロープ4の径方向においてワイヤーロープ4に確実に固定され、微小な振動をも抑えることができるので、ワイヤーロープ4のさらに安定した漏洩磁束の検出を実現することができる。
【0032】
なお、本発明の第1実施形態では、2つの位置決め機構5,6を備えた場合について説明したが、位置決め機構が1つ又は3つ以上あってもよい。位置決め機構の数が多いほどワイヤーロープ4に固定する支点が増えるので、より漏洩磁束の計測精度を向上させることができる。
【0033】
また、前記では、例えば位置決め機構5の固定体18a及び側板17a,17bの各中央にワイヤーロープ4の外周の3箇所で囲むように回転体5a,5b,5cをそれぞれ有した場合について説明したが、位置決め機構がこれら固定体18a及び側板17a,17bにワイヤーロープ4の外周の4箇所以上で囲むように回転体を複数有してもよい。この場合、位置決め機構にワイヤーロープ4の振動を抑える支点が増えるので、漏洩磁束の検出の安定性を高めることができる。
【0034】
図4は本発明の第2実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置の要部を構成する位置決め機構を示す正面図であり、図1ないし図3と対応する部分には同一符号を付してある。
【0035】
図4に示すように、本発明の第2実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置が本発明の第1実施形態と異なるのは、コイルばね5d,5e,6d,6e及び側板17a,17b,20a,20bを設ける代わりに、位置決め機構5,6が固定体18a,18bの上面両端に配置される板ばね21a,21b,22a,22bをそれぞれ備えている。また、固定体18a,18b及び板ばね21a,21b,22a,22bが、各中央にワイヤーロープ4の外周の各3箇所で囲むように接触する接触部、例えば回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cをそれぞれ有している。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0036】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる他、位置決め機構5,6を容易に作製することができる。これにより、必要に応じて位置決め機構を容易に増やすことができる。
【0037】
なお、前記各実施形態では、接触部として長尺形状の回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cを設けてあるが、これらの回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの支持部は、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの両端面に設けることができる。一般に、ワイヤーロープ4のストランド間の谷部には油や塵埃等が溜まり易い。前述のように、長尺形状からなる回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの支持部はワイヤーロープ4のストランド間の谷部よりも離れたところに位置させることができる。従って、回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの支持部に、ワイヤーロープ4のストランド間の谷部に溜まった油や塵埃等が付着することを防止でき、支持部を含めた回転体5a,5b,5c,6a,6b,6cの耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に備えられる位置決め機構を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によって実施されるワイヤーロープの探傷検査における回転体とワイヤーロープの位置関係を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るワイヤーロープの探傷装置の要部を構成する位置決め機構を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ワイヤーロープの探傷装置
1A 磁束検出手段
2a,2b 永久磁石
3 磁気センサ
4 ワイヤーロープ
5,6 位置決め機構
5a,5b,5c,6a,6b,6c 回転体
5d,5e,6d,6e コイルばね
7 ガイド部材
8 非磁性体
9 ヨーク
10 筐体
10a 底板
10b,10c,17a,17b,20a,20b 側板
15a,15b 連結体
16a,16b,19a,19b ヒンジ
18a,18b 固定体
21a,21b,22a,22b 板ばね
30,31 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープの長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化される前記ワイヤーロープの部分の近傍に配置され、前記ワイヤーロープの部分に生じている損傷部から漏洩する漏洩磁束を検出する磁気センサとを備えたワイヤーロープの探傷装置において、
前記ワイヤーロープに対して前記磁化手段及び前記磁気センサを位置決めさせる位置決め機構を備え、この位置決め機構は、前記ワイヤーロープの外周の少なくとも3箇所で囲むように接触する接触部と、この接触部が前記ワイヤーロープに密着する力を生じさせる力発生手段とを備えたことを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーロープの探傷装置において、
前記接触部が回転体から成ることを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤーロープの探傷装置において、
前記回転体の回転軸と前記ワイヤーロープのストランドの撚り方向とのなす角度が直角又は鋭角となるように前記回転体を配置したことを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤーロープの探傷装置において、
前記力発生手段が弾性体から成ることを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイヤーロープの探傷装置において、
前記ワイヤーロープと摺接する非金属のガイド部材を備えたことを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイヤーロープの探傷装置において、
前記位置決め機構を2つ設け、これらの位置決め機構の間に前記磁化手段と前記磁気センサを配置したことを特徴とするワイヤーロープの探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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