説明

ワクチンの製造方法

本出願は、カルボジイミド縮合化学を用いて糖類-タンパク質コンジュゲーション反応を行う改善された方法を含む、免疫原性組成物を作製する方法を開示する。関与する糖類またはタンパク質担体の性質に応じて、反応混合物に反応成分の1つをゆっくりと添加することにより、コンジュゲートの品質を改善することができる。開示される方法により作製された糖類-タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性組成物がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド縮合反応を行うことにより免疫原性組成物を作製する改良された方法に関する。具体的には、本発明は、カルボジイミド縮合を用いる糖類(特に、ブドウ球菌の糖類)とタンパク質のコンジュゲーションに関する。本発明はまた、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートを含む、作製することができる免疫原性組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
細菌莢膜多糖類の使用は、細菌疾患の予防のために長年に渡って免疫学において広く用いられてきた。しかしながら、そのような使用に関する問題は、免疫応答のT依存的性質である。かくして、これらの抗原は幼児においては免疫原性が低い。多糖類抗原をタンパク質担体(Tヘルパーエピトープの起源)にコンジュゲートさせた後、これを用いて、人生の1年目においても、T依存的免疫応答を引き出すことにより、この問題を克服した。
【0003】
様々なコンジュゲーション技術は、当業界で公知である。コンジュゲートを、米国特許第4,365,170号(Jennings)および米国特許第4,673,574号(Anderson)に記載の直接還元的アミノ化方法により調製することができる。他の方法は、EP-0-161-188、EP-208375およびEP-0-477508に記載されている。あるいは、コンジュゲーション方法は、シアン酸エステルを形成するための1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いる糖類のヒドロキシル基の活性化に依存してもよい。かくして、活性化された糖類を、直接的に、またはスペーサー(リンカー)基を介して、担体タンパク質上のアミノ基にカップリングさせることができる。例えば、シアン酸エステルを、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(ADHもしくはAH)とカップリングさせ、アミノ誘導体化糖類を、タンパク質担体上のカルボキシル基を介して、カルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)化学を用いて担体タンパク質にコンジュゲートさせる。そのようなコンジュゲートは、PCT公開出願WO 93/15760 (Uniformed Services University)ならびにWO 95/08348およびWO 96/29094に記載されている。また、Chu C.ら、Infect. Immunity, 1983, 245-256も参照されたい。
【0004】
一般的には、タンパク質担体上の以下の型の化学基:
A)カルボジイミド化学を用いて糖部分上の天然もしくは誘導体化アミノ基にコンジュゲートさせることができるカルボキシル基(例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸を介する);
B)カルボジイミド化学を用いて糖部分上の天然もしくは誘導体化カルボキシル基にコンジュゲートさせることができるアミノ基(例えば、リジンを介する);
C)スルフヒドリル基(例えば、システインを介する);
D)ヒドロキシル基(例えば、チロシンを介する);
E)イミダゾリル基(例えば、ヒスチジンを介する);
F)グアニジル基(例えば、アルギニンを介する);および
G)インドリル基(例えば、トリプトファンを介する)、
を、カップリング/コンジュゲーションに用いることができる。
【0005】
一般的には、糖上の以下の基:OH、COOHまたはNH2をカップリングに用いることができる。ブドウ球菌の糖類、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)の莢膜糖類(血清型5および/または8に由来するものなど)は、OHおよびCOOH基を含む。ペリオデート、酸加水分解、過酸化水素などの当業界で公知の様々な処理の後に、アルデヒド基を作製することができる。
【0006】
直接的カップリング手法:
糖類-OH + CNBrまたはCDAP→シアン酸エステル + NH2-Prot→コンジュゲート
糖類-アルデヒド + NH2-Prot→シッフ塩基 + NaCNBH3→コンジュゲート
糖類-COOH + NH2-Prot + EDAC→コンジュゲート
糖類-NH2 + COOH-Prot + EDAC→コンジュゲート。
【0007】
スペーサー(リンカー)手法を介する間接的カップリング:
糖類-OH + CNBrまたはCDAP→シアン酸エステル + NH2----NH2→糖類----NH2 + COOH-Prot + EDAC→コンジュゲート
糖類-OH + CNBrまたはCDAP→シアン酸エステル + NH2----SH→糖類----SH + SH-Prot (露出したシステインを含む天然タンパク質または例えば、SPDPによるタンパク質のアミノ基の改変後に得られる)→糖類S-S-Prot
糖類-OH + CNBrまたはCDAP→シアン酸エステル + NH2----SH→糖類----SH +マレイミド-Prot(アミノ基の改変)→コンジュゲート
糖類-COOH + EDAC + NH2----NH2→糖類----NH2 + EDAC + COOH-Prot→コンジュゲート
糖類-COOH + EDAC + NH2----SH→糖類----SH + SH-Prot(露出したシステインを含む天然タンパク質または例えば、SPDPによるタンパク質のアミノ基の改変後に得られる)→糖類-S-S-Prot
糖類-COOH + EDAC + NH2----SH→糖類----SH + マレイミド-Prot (アミノ基の改変)→コンジュゲート
糖類-アルデヒド + NH2----NH2→糖類---NH2 + EDAC + COOH-Prot→コンジュゲート。
【0008】
観察することができるように、カルボジイミド化学(例えば、EDACを用いる)は、天然に存在するか、または誘導体化により容易に挿入することができる糖類および/またはタンパク質上の基を利用できるため、コンジュゲーション反応にとって非常に便利である。また有利には、それはペプチド結合を介して部分を連結する。
【0009】
カルボジイミド(RN=C=NR')は、アレン構造を有する不飽和化合物である(NakajimaおよびIkada 1995 Bioconjugate Chem. 6 :123-130; HoareおよびKoshland 1967 JBC 242:2447-2453)。この化合物は、その反応pH(4.5-6.5)で比較的不安定であり、従って、糖類/タンパク質/カルボジイミドコンジュゲーション反応の全ての成分は、当業界では一緒に添加される傾向がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、コンジュゲートさせる糖類およびタンパク質の性質に応じて、ワクチン使用のための最終的なコンジュゲートのより良好な特性を、反応の特定の成分を混合物にゆっくりと添加することにより達成することができることを見出した。そうすることにおいて、コンジュゲート中の糖類の収率、コンジュゲートの滅菌濾過性、コンジュゲーションのより良好な制御、より容易な再現性、および/または部分内架橋の防止などの1つ以上の利益/改善を実現することができる。
【0011】
従って、一実施形態においては、カルボジイミド縮合化学を用いて、糖類をタンパク質担体にコンジュゲートさせて、糖類-タンパク質コンジュゲートを作製するコンジュゲーション工程を含み、該糖類が、アミノおよび/もしくはカルボキシル基を含む(例えば、その反復単位の一部として)か、または含むように誘導体化されたものであり、該タンパク質担体が、アミノおよび/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、
I)タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、糖類がアミノ基もしくはカルボキシル基を含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要な糖類およびカルボジイミドのアリコートを混合する工程、ならびに
b)必要とされるタンパク質担体のアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加して、糖類-タンパク質コンジュゲートを形成する工程;
II)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基もしくはカルボキシル基を含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要なタンパク質担体およびカルボジイミドのアリコートを混合する工程、ならびに
b)必要とされる糖類のアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加して、糖類-タンパク質コンジュゲートを形成する工程;または
III)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含む場合、
a)タンパク質担体と糖類を混合する工程、ならびに
b)コンジュゲーションを実施するのに必要なカルボジイミドのアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加して、糖類-タンパク質コンジュゲートを形成する工程;
を含み、並びに、糖類-タンパク質コンジュゲート(そのように形成された)を、抗原(例えば、ブドウ球菌抗原)と混合するI、IIもしくはIIIのさらなる工程を付加することを含む、免疫原性組成物を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1−1】好ましいタンパク質のポリペプチド配列を示す。表2は、それぞれの配列番号により表されるタンパク質に関する情報を提供する。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図1−3】図1−2の続きである。
【図1−4】図1−3の続きである。
【図1−5】図1−4の続きである。
【図1−6】図1−5の続きである。
【図1−7】図1−6の続きである。
【図1−8】図1−7の続きである。
【図1−9】図1−8の続きである。
【図1−10】図1−9の続きである。
【図1−11】図1−10の続きである。
【図1−12】図1−11の続きである。
【図1−13】図1−12の続きである。
【図2−1】好ましいタンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。表2は、それぞれの配列番号によりコードされるタンパク質に関する情報を提供する。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図2−3】図2−2の続きである。
【図2−4】図2−3の続きである。
【図2−5】図2−4の続きである。
【図2−6】図2−5の続きである。
【図2−7】図2−6の続きである。
【図2−8】図2−7の続きである。
【図2−9】図2−8の続きである。
【図2−10】図2−9の続きである。
【図2−11】図2−10の続きである。
【図2−12】図2−11の続きである。
【図2−13】図2−12の続きである。
【図2−14】図2−13の続きである。
【図2−15】図2−14の続きである。
【図2−16】図2−15の続きである。
【図2−17】図2−16の続きである。
【図2−18】図2−17の続きである。
【図2−19】図2−18の続きである。
【図2−20】図2−19の続きである。
【図2−21】図2−20の続きである。
【図2−22】図2−21の続きである。
【図2−23】図2−22の続きである。
【図2−24】図2−23の続きである。
【図2−25】図2−24の続きである。
【図2−26】図2−25の続きである。
【図2−27】図2−26の続きである。
【図2−28】図2−27の続きである。
【図2−29】図2−28の続きである。
【図2−30】図2−29の続きである。
【図2−31】図2−30の続きである。
【図2−32】図2−31の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水性媒体中で糖類とタンパク質をコンジュゲートさせることができる限り、任意の好適なカルボジイミドをコンジュゲーション工程において用いることができる。一実施形態においては、カルボジイミドはEDAC(1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド)[EDCとしても知られる]であってもよく、またはそれはEDAC以外のカルボジイミドであってもよい。
【0014】
本明細書を通して、用語「糖類」は、多糖類またはオリゴ糖を指し、その両方を含んでもよい。それはリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)を含んでもよい。使用前に、多糖類(細菌多糖類など)を起源株(例えば、細菌の)から単離するか、または起源株から単離し、公知の方法(例えば、EP497524およびEP497525;Shousun Chen Szuら、Carbohydrate Research Vol 152 p7-20(1986))、例えば、微小流体化によりある程度までサイズ化することができる。多糖類をサイズ化して、多糖類サンプル中の粘度を低下させ、および/またはコンジュゲートされた生成物の濾過性を改善することができる。オリゴ糖は、少数の反復単位(典型的には、5〜30個の反復単位)を有し、典型的には加水分解された多糖類である。
【0015】
用語「タンパク質担体」は、小さいペプチドと大きいポリペプチド(>10 kDa)の両方をカバーすることを意図する。明らかに大きいポリペプチドは、任意の改変を含まない反応性アミノ基およびカルボキシル基の両方を含む可能性が高い。
【0016】
本発明の目的のために、「天然多糖類」とは、その目的が糖類のサイズを低下させることであるプロセスにかけられていない糖類を指す。多糖類は、通常の精製手順の間にサイズがわずかに低下するようになってよい。そのような糖類は依然として天然である。多糖類がサイズ化技術に供された場合のみ、当該多糖類は天然ではないと考えられる。
【0017】
本発明の目的のために、「最大でx2の係数によりサイズ化される」とは、糖類が、糖類のサイズを低下させるが、天然多糖類のサイズの半分を超えるサイズを保持するように意図されるプロセスに供されることを意味する。x3、x4などは同じように解釈されるべきであり、すなわち、糖類が、多糖類のサイズを低下させるが、天然多糖類のサイズの1/3、1/4などを超えるサイズを保持するように意図されるプロセスに供される。
【0018】
「糖類-タンパク質コンジュゲートをブドウ球菌抗原と混合するさらなる工程」とは、糖類-タンパク質コンジュゲート(それ自身、ブドウ球菌糖類および/またはブドウ球菌タンパク質を含んでもよい)を、糖類-タンパク質コンジュゲート中に存在しないさらなるブドウ球菌抗原と混合することを意味する。
【0019】
最終成分の完全なアリコートの添加のための方法の工程b)における35秒〜6時間の時間は、50秒〜5時間、1分〜4時間、2分〜3時間、3分〜2時間、4〜60分、5〜50分、6〜40分、7〜30分または8〜20分であってよい。それは、1分〜5時間、10分〜4時間、20分〜3時間、30分〜2時間、40〜90分、または50〜70分であってよい。この時間を、コンジュゲートさせる正確な糖類とタンパク質に従って調整することができる。
【0020】
一実施形態においては、コンジュゲーション工程の最終成分(例えば、カルボジイミド、糖類またはタンパク質)のアリコートを、前記時間の間に一定速度で反応混合物に添加する(一定速度で運転するポンプを用いて、これを都合良く達成する)。あるいは、それを一定時間に渡って段階的に添加することができる。これを多くの方法で行うことができるが、一般的には、アリコートの一部を前記期間を通して添加すべきである。例えば、アリコートの少なくとも1/4を、前記期間の最初の半分に渡って添加し、アリコートの少なくとも1/4を前記期間の2番目の半分に渡って添加することができる。例えば、mLまたはmgで測定されるアリコート「a」の総量を、前記期間を通して4〜100の段階(「s」)で添加することができる。一実施形態においては、等量(a/s)が全ての段階で導入されるように、前記段階を配置する。一実施形態においては、前記段階を、前記期間「p」(秒)を通して等間隔にする。かくして、1つの段階が期間「p」の時間0で起こる場合、それぞれそれに続く段階はp/(s-1)である時間に起こってもよい。所望の時間内に反応物にアリコートを添加するのが容易であるという点で、工程b)で添加される最終成分のアリコートの容量を調整することができる。カルボジイミドを、水溶液(典型的には、反応物に添加する前にpH 7.5で緩衝化する)として、または固形粉末(例えば、EDACは水性媒体中では高度に可溶性である)として添加することができる。勿論、カルボジイミドが反応物に添加される最後の成分である場合(状況III、工程b)、粉末の全アリコートが、一度に揃って反応物に添加されるが、それが、アリコートが反応物にとって利用可能になる所望の期間と一致する速度で溶解するように、ゆっくりと溶解するカルボジイミドを用いることができる。
【0021】
タンパク質および/または糖類がアミノ基もしくはカルボキシル基を有さない(またはこれらの一方のみを有する)場合、それを誘導体化して、一方を与える(またはそれが既に有していない他方を与える)ことができる。例えば、反応性ヒドロキシル基のみを含む糖類(例えば、髄膜炎菌血清群A莢膜糖類)については、EDAC縮合を行うことができるように、アミノ基またはカルボキシル基を誘導体化するためにそのような基を用いるべきである。これは、反復サブユニット内で起こってもよく、または糖類分子の末端にのみ存在する基であってよい。
【0022】
誘導体化を行う場合、部分を部分的にのみ誘導体化するのが有益であり得ることに留意すべきである。反復サブユニットを有する糖類については、標的エピトープが各反復中に存在してもよい。従って、部分的誘導体化が起こる場合(これについて、標的化される反応基の0.5〜20、1〜15、3〜12、または5〜10%が実際に誘導体化されることを意味する)、これはエピトープの大部分を保存し、多すぎる架橋を防止する利益を有し得る。
【0023】
糖類またはタンパク質が既にアミノ基またはカルボキシル基のみ(例えば、天然にカルボキシル基を有するが、アミノ基を有さないチフス菌(Salmonella typhi)に由来するVi糖類)を有する場合、誘導体化を行って、他方の型の基(すなわち、Viについてはアミノ基)を与えることができる。しかしながら、誘導体化は部分的であってよいため、この作用は本発明の好ましい反応をI型からIII型に変化させることができることに留意すべきである。例えば、Vi糖類を、アミノ基とカルボキシル基の両方を含むタンパク質担体にコンジュゲートさせる場合、状況Iは工程b)でタンパク質のアリコートをゆっくりと添加する。Vi糖類のカルボキシル基をアミノ基で部分的に誘導体化する場合、それはカルボキシル基とアミノ基の両方を有し、かくして、工程b)でカルボジイミドのアリコートをゆっくりと添加する状況IIIが最も関連するようになる。
【0024】
誘導体化を、ヘテロまたはホモ二官能性リンカーの付加を通して行うことができる。それを、糖類-タンパク質コンジュゲーション工程に関して上記と類似する化学(例えば、CDAPまたはカルボジイミド化学)を用いて行うことができる。このリンカーは、4〜20、4〜12、または5〜10個の炭素原子を有してもよい。それは2個の反応性アミノ基、2個の反応性カルボキシル基、またはそれぞれの一方(例えば、ヘキサンジアミン、6-アミノカプロン酸、もしくはアジピン酸ジヒドラジド)を有してもよい。典型的には、大過剰のリンカーと、誘導体化しようとする糖類および/またはタンパク質担体とを反応させることにより、誘導体化を行うことができる。これにより、最小の部分内架橋(さもなければ、例えば、糖類上のカルボキシル基を、カルボジイミド縮合を用いて、アミノ基で誘導体化する場合に可能になる)を用いる誘導体化を行うことができる。過剰のリンカーを、ダイアフィルトレーションなどの技術を用いて容易に除去することができる。
【0025】
一実施形態においては、糖類は、リンカー上のアミノ基を介して(例えば、CDAP化学で)部分的に誘導体化される、その反復単位の一部として反応性ヒドロキシル基を含む。別の実施形態においては、糖類はリンカー上のカルボキシル基を介して(例えば、カルボジイミド化学で)部分的に誘導体化される、その反復単位の一部として反応性アミノ基を含む。さらなる実施形態においては、糖類は、リンカー上のアミノ基を介して(例えば、カルボジイミド化学で)部分的に誘導体化される、その反復単位の一部として反応性カルボキシル基を含む。
【0026】
コンジュゲーション(本発明の反応の工程a)またはb)に存在する場合)を実施するのに必要なカルボジイミドのアリコートは、糖類1mg当たり0.01〜3、0.05〜2、または0.09〜1 mgのカルボジイミドである。これらの数を、カルボジイミドであるEDACについて算出するが、任意の他のカルボジイミドを用いる場合、その範囲の数に(他のカルボジイミドの分子量)/(EDACの分子量)をかけることにより、これらの数を調整することができる。
【0027】
一般的には、糖類を、工程b)において0.5〜50 mg/mlの最終濃度で本発明の方法において存在させることができる。これは、糖類のサイズおよび性質、ならびに任意の誘導体化の程度に依存するであろう。例えば、オリゴ糖については、より高い濃度が必要であろうが、大きい多糖類については、より小さい濃度がより好適であろう。それがアミノ基またはカルボキシル基で部分的に誘導体化された高い方の端に向かう場合、架橋の可能性を低下させるためには、より小さい濃度が好適であるかもしれない。タンパク質担体を、工程b)において1〜50 mg/mlの最終濃度で存在させることができる。
【0028】
本発明の方法におけるタンパク質担体:糖類の初期比は、5:1〜1:5、4:1〜1:1、または3:1〜2:1(w/w)であってよい。再度、これは糖類のサイズおよび性質、ならびに任意の誘導体化の程度に依存するであろう。
【0029】
塩条件(例えば、NaCl)を、糖類/タンパク質の性質に従って変化させることもできる。通常、約0.2 M NaClが、本発明の方法の工程b)に存在してもよいが、0〜2、0.1〜1または0.2〜0.5 Mであってもよい。
【0030】
本発明の方法の工程b)におけるpHに関して、反応pHはカルボジイミドを活性化する場合、任意のpH、例えば、pH 4.5〜6.5、4.7〜6.0、または5〜5.5であってよい。典型的には、このpHを、必要に応じて酸/塩基の添加により反応を通して維持する。EDACは通常、pH 7.5で安定であるが、コンジュゲーションを、より高いpHで行う必要がある場合、反応中間体を安定に保持することが知られる化合物(N-ヒドロキシスクシンイミドなど)を工程b)における反応中に存在させることもでき、この場合、工程b)における反応pHをpH 4.5〜7.5に維持することができる。
【0031】
本発明の方法の工程b)の間の反応温度は、4〜37、10〜32、17〜30、または22〜27℃であってよく、典型的には、反応を通してこれを維持する。
【0032】
本発明の方法においては、一度、アリコート全体を工程b)において添加したら、典型的には、反応をさらに10分〜72時間、20分〜48時間、30分〜24時間、40分〜12時間、50分〜6時間、または1〜3時間維持する。一度、反応が完了したら、pHを7.5〜9(N-ヒドロキシスクシンイミドが存在する場合、この高い方の端に向かう)に調整して、カルボジイミドの安定なpH範囲に戻す。
【0033】
一度コンジュゲートさせたら、糖類-タンパク質コンジュゲートを、サイズ排除クロマトグラフィーカラム(例えば、Sephacryl S400HR, Pharmacia)に注入することにより、それを未反応成分、遊離糖類などから精製することができる。典型的には、これを2〜8℃で行う。コンジュゲートを滅菌濾過した後、保存することができる。究極的には、有効用量(例えば、1〜20、2〜15、または3〜10μgの糖類/用量)の糖類-タンパク質コンジュゲートを、製薬上許容し得る賦形剤(例えば、塩またはアジュバント)と共に製剤化して、免疫原性組成物またはワクチンを製造することができる。
【0034】
本発明の糖類に関しては、ウイルス、菌類、細菌または真核生物起源の任意の糖類を、本発明の方法のコンジュゲーション工程を用いてコンジュゲートさせることができる。それはチフス菌由来のVi糖類、またはVi以外の糖類であってよい。それはB型インフルエンザ菌(H. influenzae)に由来する莢膜糖類Hib、またはHib以外の糖類であってよい。一実施形態においては、糖類は、例えば、髄膜炎菌(N. meningitidis)血清群A (MenA)、B (MenB)、C (MenC)、W135 (MenW)もしくはY (MenY)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fもしくは33F、B群連鎖球菌群Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、もしくはVII、5型黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、8型黄色ブドウ球菌、チフス菌(Salmonella typhi) (Vi糖類)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、またはB型インフルエンザ菌(H. influenzae)からなる一覧より選択される細菌から誘導された細菌莢膜糖類である。
【0035】
糖類の重量平均分子量は、1000〜2000000、5000〜1000000、10000〜500000、50000〜400000、75000〜300000、または100000〜200000であってよい。本明細書に記載の糖類の分子量または平均分子量は、コンジュゲーションの前に測定された糖類の重量平均分子量(Mw)を指し、MALLSにより測定される。MALLS技術は当業界でよく知られており、典型的には、実施例2に記載のように実行する。糖類のMALLS分析のために、2個のカラム(TSKG6000および5000PWxl)を組み合わせて使用することができ、糖類を水中に溶出させる。光散乱検出器(例えば、488 nmの10 mWアルゴンレーザーを装備したWyatt Dawn DSP)および干渉屈折計(例えば、P100セルおよび498 nmの赤色フィルターを装備したWyatt Otilab DSP)を用いて、糖類を検出する。一実施形態においては、糖類の多分散性は、1〜1.5、1〜1.3、1〜1.2、1〜1.1または1〜1.05であり、担体タンパク質へのコンジュゲーション後、コンジュゲートの多分散性は、1.0〜2.5、1.0〜2.0、1.0〜1.5、1.0〜1.2、1.5〜2.5、1.7〜2.2または1.5〜2.0である。全ての多分散性測定値は、MALLSによるものである。
【0036】
糖類は天然の多糖類であるか、または2、4、6、8、10もしくは20倍以下(例えば、微小流体化[例えば、Emulsiflex C-50装置による]もしくは他の公知の技術[例えば、加熱方法、化学的方法、酸化的方法、超音波的方法]による)の係数によりサイズ化されたものであってよい。オリゴ糖は、実質的にさらにサイズ化されたものであってよい[例えば、公知の加熱方法、化学的方法、または酸化的方法による]。
【0037】
これらの糖類の多くの構造が公知であり、従って、それらが天然にカルボジイミド化学のための任意のアミノ基もしくはカルボキシル基、またはアミノ基もしくはカルボキシル基で誘導体化することができる任意の他の反応基を有するかどうかが公知である(以下の表1を参照)。
【表1】

【0038】
タンパク質担体は、任意のペプチドまたはタンパク質であってよい。一実施形態においては、それは、必要に応じて、以下に列挙されるブドウ球菌タンパク質から選択される、ブドウ球菌タンパク質である。それは1個以上のTヘルパーエピトープを含んでもよい。本発明の一実施形態においては、前記タンパク質担体を、TT、DT、CRM197、TTの断片C、インフルエンザ菌のDタンパク質、肺炎球菌のPhtD、および肺炎球菌のニューモリシンからなる群より選択する。担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、破傷風トキソイド断片C、破傷風毒素の非毒性変異体[TTのそのような変異体は全て、本発明の目的にとって同じ型の担体タンパク質であると考えられることに留意されたい]、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、ジフテリア毒素の他の非毒性変異体[CRM176、CRM197、CRM228、CRM45(Uchidaら、J. Biol. Chem. 218; 3838-3844, 1973);CRM9、CRM45、CRM102、CRM103およびCRM107ならびにNichollsおよびYoule、Genetically Engineered Toxins、Frankel(編)、Maecel Dekker Inc, 1992により記載された他の突然変異;Glu-148からAsp、GlnもしくはSerならびに/またはAla 158からGlyへの欠失または突然変異ならびに米国特許第4,709,017号もしくは米国特許第4,950,740号に開示された他の突然変異;Lys 516、Lys 526、Phe 530および/もしくはLys 534の少なくとも1個以上の残基の突然変異ならびに米国特許第5,917,017号もしくは米国特許第6,455,673号に開示された他の突然変異;または米国特許第5,843,711号に開示された断片](DTのそのような変異体は全て、本発明の目的にとって同じ型の担体タンパク質であると考えられることに留意されたい)、肺炎球菌のニューモリシン(Kuoら(1995) Infect Immun 63; 2706-13)、OMPC (髄膜炎菌外膜タンパク質-通常は髄膜炎菌血清群Bから抽出される-EP0372501)、合成ペプチド (EP0378881、EP0427347)、熱ショックタンパク質(WO 93/17712、WO 94/03208)、百日咳タンパク質 (WO 98/58668、EP0471177)、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子もしくはホルモン(WO 91/01146)、様々な病原体に由来する抗原に由来する複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質 (Falugiら(2001) Eur J Immunol 31; 3816-3824)、例えば、N19タンパク質(Baraldoiら(2004) Infect Immun 72; 4884-7)、肺炎球菌表面タンパク質PspA (WO 02/091998)、鉄取込みタンパク質(WO 01/72337)、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)の毒素AもしくはB (WO 00/61761)、インフルエンザ菌のDタンパク質(EP594610およびWO 00/56360)、肺炎球菌PhtA (WO 98/18930、Sp36とも呼ばれる)、肺炎球菌PhtD (WO 00/37105に開示、Sp036Dとも呼ばれる)、肺炎球菌PhtB (WO 00/37105に開示、Sp036Bとも呼ばれる)、またはPhtE (WO00/30299に開示、BVH-3とも呼ばれる)であってもよい。
【0039】
本発明の方法は、糖類-タンパク質コンジュゲートを、抗原、例えば、ブドウ球菌抗原と混合するさらなる工程を含む。ブドウ球菌抗原を、以下に記載の抗原から選択することができるが、この一覧はブドウ球菌に由来する他の抗原を排除するものではない。一実施形態においては、ブドウ球菌抗原は、いずれも必要に応じて、本明細書に記載のコンジュゲーション方法を用いて、必要に応じてコンジュゲートされた、糖類、テイコ酸またはリポテイコ酸(LTA)である。一実施形態においては、ブドウ球菌抗原は、必要に応じて本明細書に記載のようなタンパク質である。
【0040】
黄色ブドウ球菌に由来する莢膜糖類
一実施形態においては、本発明の方法は、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートを、黄色ブドウ球菌莢膜糖類(例えば、5型および/または8型黄色ブドウ球菌に由来する莢膜糖類)と混合する工程を含む。さらなる実施形態においては、本発明の方法は、黄色ブドウ球菌莢膜糖類(例えば、5型および/または8型黄色ブドウ球菌に由来する莢膜糖類)を、タンパク質にコンジュゲートさせて、本発明に従う糖類-タンパク質コンジュゲートを作製する。
【0041】
ヒトにおいて感染を引き起こす黄色ブドウ球菌の多くの株は、5型または8型多糖を含む。約60%のヒト株が8型であり、約30%が5型である。5型および8型莢膜多糖の構造は、Moreauら、Carbohydrate Res. 201; 285 (1990)およびFournierら、Infect. Immun. 45; 87 (1984)に記載されている。両方とも、その反復単位中にFucNAcpならびにManNAcAを有し、これを用いてスルフヒドリル基を導入することができる。
【0042】
最近(Jones Carbohydrate Research 340, 1097-1106 (2005))、NMR分光法により当該莢膜多糖の構造が以下のように修正された:
5型
→4)-β-D-ManNAcA-(1→4)-α-L-FucNAc(3OAc)-(1→3)-β-D-FucNAc-(1→
8型
→3)-β-D-ManNAcA(4OAc)-(1→3)-α-L-FucNAc(1→3)-α-D-FucNAc(1→
【0043】
糖類を、例えば、米国特許第6,294,177号に記載のような当業者にはよく知られる方法を用いて、黄色ブドウ球菌の好適な株から抽出することができる。例えば、ATCC 12902は、5型黄色ブドウ球菌株であり、ATCC 12605は、8型黄色ブドウ球菌株である。
【0044】
糖類は天然のサイズのものであるか、またはあるいは、例えば、微小流体化、超音波照射もしくは化学的処理によりサイズ化することができる。本発明はまた、黄色ブドウ球菌に由来する5型および8型多糖から誘導されたオリゴ糖もカバーする。
【0045】
前記糖類の重量平均分子量は、1000〜2000000、5000〜1000000、10000〜500000、50000〜400000、75000〜300000、または100000〜200000であってよい。本明細書に記載の糖類の分子量または平均分子量とは、コンジュゲーションの前に測定された糖類の重量平均分子量(Mw)を指し、MALLSにより測定する。MALLS技術は当業界でよく知られており、典型的には、実施例2に記載のように実行する。糖類のMALLS分析のために、2個のカラム(TSKG6000および5000PWxl)を組み合わせて使用し、糖類を水中に溶出させる。光散乱検出器(例えば、488 nmの10 mWアルゴンレーザーを装備したWyatt Dawn DSP)および干渉屈折計(例えば、P100セルおよび498 nmの赤色フィルターを装備したWyatt Otilab DSP)を用いて、糖類を検出する。一実施形態においては、糖類の多分散性は、1〜1.5、1〜1.3、1〜1.2、1〜1.1または1〜1.05であり、担体タンパク質へのコンジュゲーション後、コンジュゲートの多分散性は、1.0〜2.5、1.0〜2.0、1.0〜1.5、1.0〜1.2、1.5〜2.5、1.7〜2.2または1.5〜2.0である。全ての多分散性測定値は、MALLSによるものである。
【0046】
本発明の方法または免疫原性組成物に含まれる5型および/または8型莢膜多糖またはオリゴ糖を、必要に応じて、O-アセチル化する。一実施形態においては、5型莢膜多糖またはオリゴ糖のO-アセチル化の程度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。一実施形態においては、8型莢膜多糖またはオリゴ糖のO-アセチル化の程度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。一実施形態においては、5型および8型莢膜多糖またはオリゴ糖のO-アセチル化の程度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。一実施形態においては、5型および/または8型莢膜糖類を、脱O-アセチル化する。
【0047】
前記多糖またはオリゴ糖のO-アセチル化の程度を、当業界で公知の任意の方法、例えば、プロトンNMR(LemercinierおよびJones 1996, Carbohydrate Resarch 296; 83-96, WO 05/033148またはWO 00/56357)により決定することができる。
【0048】
O-アセチル基を、加水分解、例えば、無水ヒドラジンなどの塩基を用いる処理(Konaduら、1994; Infect. Immun. 62; 5048-5054)または0.1N NaOHを用いる1〜8時間の処理により除去することができる。5型および/または8型多糖またはオリゴ糖上で高レベルのO-アセチル化を維持するために、O-アセチル基の加水分解を誘導し得る処理を最小化する。例えば、極端なpHでの処理を最小化する。
【0049】
一実施形態においては、上記のO-アセチル化ブドウ球菌糖類を、本発明の方法のコンジュゲーション工程を用いてコンジュゲートさせ、本発明の方法においてさらなるブドウ球菌抗原と混合する。
【0050】
ポリN-アセチル化グルコサミン(PNAG)
一実施形態においては、本発明の方法は、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートを、ポリN-アセチル化グルコサミン(PNAG)抗原と混合する工程を含む。
【0051】
PNAGは、多糖類細胞間付着因子であり、必要に応じて、N-アセチルおよびO-スクシニル構成要素で置換されたβ-(1→6)結合グルコサミンのポリマーから構成される。この多糖類は、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)の両方に存在し、いずれかの起源から単離することができる(Joyceら、2003, Carbohydrate Research 338; 903; Maira-Litranら、2002, Infect. Imun. 70; 4433)。例えば、PNAGを、黄色ブドウ球菌株MN8m(WO 04/43407)から単離することができる。
【0052】
以前はポリ-N-スクシニル-β-(1→6)-グルコサミン(PNSG)として知られた多糖類は、最近、N-スクシニル化の同定が不正確であるため、予想された構造を有さないことが示された(Maira-Litranら、2002, Infect. Imun. 70; 4433)。従って、正式にはPNSGとして知られ、今はPNAGであると判明した多糖類も、用語「PNAG」により包含される。
【0053】
PNAGは400 kDa以上、75〜400 kDa、10〜75 kDaから、最大で30個の(必要に応じて、N-アセチルおよびO-スクシニル構成要素で置換された、β(1→6)結合グルコサミンの)反復単位から構成されるオリゴ糖まで変化する様々なサイズのものであってよい。任意のサイズのPNAG多糖またはオリゴ糖を、本発明の免疫原性組成物中で用いることができ、例えば、40 kDaを超えるサイズを用いることができる。サイズ化を、当業界で公知の任意の方法、例えば、微小流体化、超音波照射または化学的切断(WO 03/53462、EP497524、EP497525)により達成することができる。
【0054】
PNAGのサイズ範囲は、例えば、40〜400 kDa、50〜350 kDa、40〜300 kDa、60〜300 kDa、50〜250 kDaおよび60〜200 kDaである。
【0055】
PNAGは、アセテートによるアミノ基上の置換に起因して、様々な程度のアセチル化を有してもよい。in vitroで製造されたPNAGは、アミノ基上でほぼ完全に置換されている(95〜100%)。あるいは、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満のN-アセチル化を有する脱アセチル化されたPNAGを用いることができる。脱アセチル化されたPNAGの使用により、グラム陽性細菌、好ましくは、黄色ブドウ球菌および/または表皮ブドウ球菌のオプソニン殺傷が可能になる(WO 04/43405)。一実施形態においては、PNAGは40 kDa〜300 kDaのサイズを有し、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満のアミノ基がN-アセチル化されるように脱アセチル化される。
【0056】
一実施形態においては、PNAGはO-スクシニル化されておらず、25、20、15、10、5、2、1または0.1%未満の残基上でO-スクシニル化されている。
【0057】
用語「脱アセチル化されたPNAG(dPNAG)」とは、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満のアミノ基がアセチル化されたPNAG多糖またはオリゴ糖を指す。
【0058】
本明細書で用いられる用語「PNAG」は、当該糖類のアセチル化された形態と脱アセチル化された形態の両方を包含する。
【0059】
一実施形態においては、PNAGを脱アセチル化して、天然多糖を化学的に処理することによりdPNAGを形成する。例えば、天然PNAGを、pHが10以上に上昇するような塩基溶液で処理する。例えば、PNAGを、0.1〜5 M、0.2〜4 M、0.3〜3 M、0.5〜2 M、0.75〜1.5 Mまたは1 MのNaOH、KOHまたはNH4OHで処理する。処理は、20〜100、25〜80、30〜60または30〜50または35〜45℃の温度で、少なくとも10もしくは30分、または1、2、3、4、5、10、15もしくは20時間である。dPNAGを、WO 04/43405に記載のように調製することができる。
【0060】
一実施形態においては、本発明の方法に含まれる多糖類を、以下に記載のように担体タンパク質にコンジュゲートさせるか、またはあるいはコンジュゲートさせない。
【0061】
黄色ブドウ球菌336抗原
一実施形態においては、本発明の方法は、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートを、黄色ブドウ球菌336抗原(米国特許第6,294,177号に記載)と混合する工程を含む。
【0062】
336抗原は、β結合ヘキソサミンを含み、O-アセチル基を含まず、ATCC 55804の下で寄託された黄色ブドウ球菌336型に対する抗体に特異的に結合する。
【0063】
一実施形態においては、336抗原は天然のサイズのものであるか、またはあるいは、例えば、微小流体化、超音波照射もしくは化学的処理によりサイズ化することができる多糖類である。本発明はまた、336抗原から誘導されたオリゴ糖もカバーする。
【0064】
本発明の方法に含まれる場合、336抗原を、好ましくは、以下に記載の担体タンパク質にコンジュゲートさせるか、またはあるいはコンジュゲートさせない。
【0065】
表皮ブドウ球菌のATCC-31432、SE-360およびSE-10株は、それぞれ、I型、II型およびIII型の3つの異なる莢膜型に特徴的である(IchimanおよびYoshida 1981, J. Appl. Bacteriol. 51; 229)。それぞれの血清型の表皮ブドウ球菌から抽出された莢膜多糖は、I、IIおよびIII型多糖を構成する。多糖類を、米国特許第4,197,290号に記載の方法またはIchimanら、1991, J. Appl. Bacteriol. 71; 176に記載の方法などのいくつかの方法により抽出することができる。
【0066】
本発明の一実施形態においては、前記プロセスは、糖類-タンパク質コンジュゲートを、表皮ブドウ球菌に由来するI型および/またはII型および/またはIII型多糖またはオリゴ糖と混合することを含む。
【0067】
多糖類は天然のサイズのものであるか、またはあるいは、例えば、微小流体化、超音波照射もしくは化学的切断によりサイズ化することができる。本発明はまた、表皮ブドウ球菌株から抽出されたオリゴ糖もカバーする。
【0068】
これらの多糖類をコンジュゲートさせないか、または好ましくは、本明細書に記載のようにコンジュゲートさせる。
【0069】
多糖類のコンジュゲーション
ワクチン接種における多糖類の使用に関連する問題は、多糖類自体が弱い免疫原であるという事実である。免疫原性に関するこの欠点を克服するように設計された戦略としては、バイスタンダー(bystander)T細胞ヘルプを提供する大きいタンパク質担体への前記多糖類の連結が挙げられる。本発明において用いられる多糖類を、バイスタンダーT細胞ヘルプを提供するタンパク質担体に連結するのが好ましい。多糖またはオリゴ糖免疫原への結合のために用いることができるこれらの担体の例としては、ジフテリアおよび破傷風トキソイド(DT、DT Crm197およびTT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エキソタンパク質A(rEPA)ならびにツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、インフルエンザ菌に由来するDタンパク質、ニューモリシンまたは上記のいずれかの断片が挙げられる。使用にとって好適な断片としては、T-ヘルパーエピトープを包含する断片が挙げられる。特に、Dタンパク質断片は、好ましくは、該タンパク質のN末端の1/3を含むであろう。Dタンパク質は、インフルエンザ菌に由来するIgD-結合タンパク質である(EP 0 594 610 B1)。
【0070】
本発明の方法における使用に対する代替的な担体タンパク質は、単一のブドウ球菌タンパク質もしくはその断片または以下の節に列挙されるブドウ球菌タンパク質もしくはその断片の少なくとも、もしくは正確に1、2、3もしくは4個以上を含む融合タンパク質である。
【0071】
ブドウ球菌ワクチンの内容における使用にとって特に有利である新しい担体タンパク質は、ブドウ球菌αトキソイドである。コンジュゲーションのプロセスが毒性を低下させるため、天然の形態を多糖類にコンジュゲートさせることができる。残留毒性がより低いため、好ましくは、His35LeuまたはHis35Arg変異体などの遺伝的に解毒されたα毒素を担体として用いる。あるいは、架橋試薬、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを用いる処理により、α毒素を化学的に解毒する。好ましくは、架橋試薬、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを用いる処理により、遺伝的に解毒されたα毒素を、必要に応じて化学的に解毒して、毒性をさらに低下させる。
【0072】
タンパク質
必要に応じて、本発明の方法は、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートを、ブドウ球菌タンパク質、例えば、黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌に由来するタンパク質と混合する工程を含む。本発明のいくつかの実施形態は、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の両方に由来するタンパク質を含む。
【0073】
本発明の方法の独立した実施形態においては、ブドウ球菌タンパク質を、糖類を本発明の方法においてコンジュゲートさせるタンパク質担体として用いる。
【0074】
従って、本発明は、カルボジイミド縮合化学を用いて糖類をブドウ球菌タンパク質担体にコンジュゲートさせる方法であって、該糖類が(例えば、その反復単位の一部として)、アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、該タンパク質担体が、アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、
I)ブドウ球菌タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、糖類がアミノ基もしくはカルボキシル基を含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要な糖類およびカルボジイミドのアリコートを混合する工程、ならびに
b)必要とされるブドウ球菌タンパク質担体のアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加する工程;
II)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基もしくはカルボキシル基を含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要なブドウ球菌タンパク質担体およびカルボジイミドのアリコートを混合する工程、ならびに
b)必要とされる糖類のアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加する工程;
III)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含む場合、
a)ブドウ球菌タンパク質担体と糖類を混合する工程、ならびに
b)コンジュゲーションを実施するのに必要なカルボジイミドのアリコートを、35秒間〜6時間に渡って添加する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0075】
一実施形態においては、本発明の方法は、図1の任意の配列のものに対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97〜99%又は正確な同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質を使用する。
【0076】
タンパク質を本明細書に具体的に言及する場合、それは、必要に応じて、天然もしくは組換えの完全長タンパク質または必要に応じて、任意のシグナル配列が除去された成熟タンパク質に対する参照である。このタンパク質を、ブドウ球菌株から直接単離するか、または組換えDNA技術により製造することができる。前記タンパク質の免疫原性断片を、本発明の免疫原性組成物中に組込むことができる。これらは、前記タンパク質のアミノ酸配列から隣接して取得された、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは、20個のアミノ酸、より好ましくは、30個のアミノ酸、より好ましくは、40個のアミノ酸または50個のアミノ酸、最も好ましくは、100個のアミノ酸を含む断片である。さらに、そのような免疫原性断片は、典型的には、ブドウ球菌タンパク質に対して生成された抗体もしくは哺乳動物宿主のブドウ球菌への感染により生成された抗体と免疫学的に反応するか、またはT細胞エピトープを含む。免疫原性断片はまた、有効用量で(単独で、もしくは担体に結合したハプテンとして)投与された場合、ブドウ球菌感染に対する防御免疫応答を引き出す断片も含み、必要に応じて、それは黄色ブドウ球菌および/または表皮ブドウ球菌感染に対して防御的である。そのような免疫原性断片としては、例えば、N末端リーダー配列および/または膜貫通ドメインおよび/またはC末端アンカードメインを欠くタンパク質が挙げられる。一実施形態においては、本発明に従う免疫原性断片は、断片配列の全長に渡って、図1から選択される配列のものに対して、少なくとも85%、90%、95%、97%または99%の同一性を有するタンパク質の細胞外ドメインの実質的に全部を含む。
【0077】
一実施形態においては、本発明の方法は、ブドウ球菌タンパク質の融合タンパク質、またはブドウ球菌タンパク質の断片を使用してもよい。そのような融合タンパク質を、組換え的に作製することができ、少なくとも2、3、4、5または6種のブドウ球菌タンパク質の一部を含んでもよい。あるいは、融合タンパク質は、少なくとも2、3、4または5種のブドウ球菌タンパク質の複数の部分を含んでもよい。これらは、同じタンパク質中に異なるブドウ球菌タンパク質またはその断片を組み合わせても良い。あるいは、本発明はまた、T細胞エピトープもしくは精製タグの提供因子、例えば、β-ガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、FLAG、mycタグ、ポリヒスチジンなどのエピトープタグ、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニンなどのウイルス表面タンパク質、または破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197などの細菌タンパク質などの異種配列との融合タンパク質として、ブドウ球菌タンパク質またはその断片の個々の融合タンパク質をも含む。
【0078】
タンパク質
一実施形態においては、本発明の方法は、以下に記載の1種以上のタンパク質を使用する。これらのタンパク質の多くは、細胞外成分結合タンパク質、輸送タンパク質または毒素およびビルレンスの調節因子のカテゴリー内にある。本発明の方法は、必要に応じて、ブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質またはブドウ球菌輸送タンパク質またはブドウ球菌毒素またはビルレンスの調節因子を使用する。
【0079】
本発明の方法は、必要に応じて、ブドウ球菌タンパク質の少なくともまたは正確に1、2、3、4、5もしくは6種のブドウ球菌タンパク質を使用する。
【0080】
以下の表(表2)は、それぞれ図1および図2に認められるタンパク質配列およびDNA配列の配列番号を記載する。SAは黄色ブドウ球菌に由来する配列を示し、SEは表皮ブドウ球菌に由来する配列を示す。
【表2】


【0081】
細胞外成分結合タンパク質
細胞外成分結合タンパク質は、宿主の細胞外成分に結合するタンパク質である。この用語は、限定されるものではないが、付着因子を含む。
【0082】
細胞外成分結合タンパク質の例としては、ラミニン受容体(Naiduら、J. Med. Microbiol. 1992, 36; 177)、プロテインA、SitC/MntC/唾液結合タンパク質(米国特許第5801234号、Wiltshire and Foster Infec. Immun. 2001, 69; 5198)、EbhA (Williamsら、Infect. Immun. 2002, 70; 6805)、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS) (Parkら、1999, J. Biol. Chem. 274; 2845)、EFB (FIB) (WastfeltおよびFlock 1995, J. Clin. Microbiol. 33; 2347)、SBI (Zhangら、FEMS Immun. Med. Microbiol. 2000, 28; 211)、プロテインA(PCT/EP2006/069944)、オートリシン(Ruppら、2001, J. Infect. Dis. 183; 1038)、ClfA (米国特許第6008341号、McDevittら、Mol. Microbiol. 1994, 11; 237)、SdrC (WO 99/27109)、SdrD (WO 99/27109)、SdrE (WO 99/27109)、SdrG (McCreaら、Microbiology 2000, 146; 1535)、SdrH (McCreaら、Microbiology 2000, 146; 1535)、リパーゼGehD (US2002/0169288)、SasA (WO 06/121664、Mazmanianら、Molecular Microbiology 40; 1049, 2001およびWO 06/121664)、FnbA (Flockら、Mol Microbiol. 1994, 12; 599、米国特許第6054572号)、FnbB (WO 97/14799, Boothら、2001 Infec. Immun. 69; 345)、コラーゲン結合タンパク質Cna (Visaiら、2000, J. Biol. Chem. 275; 39837)、ClfB (WO 99/27109)、FbpA (Phonimdaengら、1988 J. Gen Microbiol.134; 75)、Npase (Flock 2001 J. Bacteriol. 183; 3999)、IsaA/PisA (Lonenzら、FEMS Immuno. Med. Microbiol. 2000, 29; 145)、SsaA (Langら、FEMS Immunol. Med. Microbiol. 2000, 29; 213)、EPB (Hussain and Hermann symposium on Staph Denmark 14-17th 2000)、SasH (Robertsonら、Antimicrobial agents and chemotherapy 47; 3926, 2003)、SSP-1 (Veenstraら、1996, J. Bacteriol. 178; 537)、SSP-2 (Veenstraら、1996, J. Bacteriol. 178; 537)、17 kDaヘパリン結合タンパク質HBP (Fallgrenら、2001, J. Med. Microbiol. 50; 547)、ビトロネクチン結合タンパク質(Liら、2001, Curr. Microbiol. 42; 361)、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素、Fig (WO 97/48727)およびMAP (米国特許第5648240号)が挙げられる。
【0083】
SitC/MntC/唾液結合タンパク質
これは、肺炎連鎖球菌における付着因子PsaAの相同体であるABC輸送タンパク質である。それは、細菌の細胞壁を通して分布する免疫原性の高い32 kDaのリポタンパク質である(Cockayneら、Infect. Immun. 1998 66; 3767)。それは、32 kDaのリポタンパク質として黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌中で発現され、40 kDaの相同体はスタフィロコッカス・ホミニス(S. hominis)中に存在する。表皮ブドウ球菌においては、それは鉄に調節されるオペロンの成分である。それは、ストレプトコッカス・パラサンギス(Streptococcus parasanguis)のFimAなどの付着因子、証明された、もしくは推定金属鉄輸送機能を有するABC輸送因子のファミリーのリポタンパク質の両方に対してかなりの相同性を示す。従って、SitCは、細胞外結合タンパク質として、および金属イオン輸送因子として含まれる。
【0084】
米国特許第5,801,234号に開示された唾液結合タンパク質はまた、SitCの形態であり、本発明の免疫原性組成物中に含有させることができる。
【0085】
ClfAおよびClfB
これらのタンパク質は、フィブリノゲン結合活性を有し、黄色ブドウ球菌が血漿の存在下でクランプを形成するのを誘発する。それらは、細胞壁関連タンパク質にとって共通のLPXTGモチーフを含む。
【0086】
ClfAは米国特許第6,008,341号に記載され、ClfBはWO 99/27109に記載されている。
【0087】
凝固酵素(FbpA)
これは、黄色ブドウ球菌が血漿の存在下でクランプを形成するのを誘発するフィブリノゲン結合タンパク質である。それは凝固酵素に関連する参考文献に記載されている:Phonimdaengら(J. Gen. Microbio. 1988, 134:75-83)、Phonimdaengら(Mol Microbiol 1990; 4:393-404)、Cheungら(Infect Immun 1995; 63:1914-1920)およびShopsinら(J. CLin. Microbiol. 2000; 38:3453-3456)。
【0088】
本発明の免疫原性組成物への含有のための好ましい断片としては、シグナルペプチドが除去された(C末端のアミノ酸27)成熟タンパク質が挙げられる。
【0089】
凝固酵素は3つの異なるドメインを有する。コイルドコイル領域であるアミノ酸59〜297、プロリンおよびグリシンリッチ領域であるアミノ酸326〜505ならびにβシートコンフォメーションを有するアミノ酸506〜645のC末端ドメインである。これらのドメインはそれぞれ、本発明の免疫原性組成物中に組込むことができる断片である。
【0090】
SdrG
このタンパク質はWO 00/12689に記載されている。SdrGは、凝固酵素陰性ブドウ球菌中に認められ、LPXTG配列を含む細胞壁関連タンパク質である。
【0091】
SdrGは、シグナルペプチド(アミノ酸1〜51)、フィブリノゲン結合部位およびコラーゲン結合部位を含む領域(アミノ酸51〜825)、2個のCnaBドメイン(アミノ酸627〜698および738〜809)、SD反復領域(アミノ酸825〜1000)ならびにアンカードメイン(アミノ酸1009〜1056)を含む。
【0092】
SdrGの好ましい断片は、シグナルペプチドおよび/またはSD反復とアンカードメインが除去されたポリペプチドを含む。これらは、配列番号70または20または21のアミノ酸50〜825、アミノ酸50〜633、アミノ酸50〜597(WO 03/76470の配列番号2)、アミノ酸273〜597(WO 03/76470の配列番号4)、アミノ酸273〜577(WO 03/76470の配列番号6)、アミノ酸1〜549、アミノ酸219〜549、アミノ酸225〜549、アミノ酸219〜528、アミノ酸225〜528を含むか、またはそれらからなるポリペプチドを含む。
【0093】
好ましくは、配列番号70、20または21の配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または100%相同な配列を有するSdrGポリペプチドを、本発明の免疫原性組成物中に組込む。
【0094】
本発明の組成物は、必要に応じて、上記のSdrGポリペプチドの断片を含む。
【0095】
一実施形態においては、断片は、欠失したシグナルペプチドおよび/またはSD反復ドメインおよび/またはアンカードメインを有する。例えば、配列番号70のアミノ酸1〜713、1〜549、225〜549、225〜529、24〜717、1〜707、1〜690、1〜680、1〜670、1〜660、1〜650、1〜640、1〜630、1〜620、1〜610、1〜600、34〜707、44〜697、36〜689に対応する配列または配列番号70もしくは20もしくは21に対して85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有する配列である。
【0096】
一実施形態においては、シグナルペプチドが欠失した断片は、正確な翻訳を確保するために該断片のN末端にメチオニン残基を有する。
【0097】
一実施形態においては、前記断片は以下の配列を有する:

【0098】
EbhAおよびEbhB
EbhAおよびEbhBは、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の両方において発現されるタンパク質であり(ClarkeおよびFoster Infect. Immun. 2002, 70; 6680, Williamsら、Infect. Immun. 2002, 20; 6805)、フィブロネクチンに結合する。フィブロネクチンは細胞外マトリックスの重要な成分であるため、EbhAおよびEbhBはブドウ球菌を宿主の細胞外マトリックスに付着させる重要な機能を有する。
【0099】
Ebhタンパク質は、1.1メガダルトンの分子量を有する大きなタンパク質である。製造および製剤化が容易であるため、完全な配列よりもむしろEbhタンパク質の断片を使用することが有利である。該タンパク質の中央領域は、フィブロネクチン結合部位を含む不完全な反復を含む。以下に記載の1個以上の反復ドメインを含む断片が、本発明の免疫原性組成物への組込みにとって好ましい断片である。
【0100】
Ebhタンパク質は、共通配列:
L.G.{10}A.{13}Q.{26}L...M..L.{33}A
または
.{19}L.G.{10}A.{13}Q.{26}L...M..L.{33}A.{12}
または
.....I/V..A...I/V..AK.ALN/DG..NL..AK..A.{6}L..LN.AQK..L..QI/V..A..V..V.{6}A..LN/D.AM..L...I/V.D/E...TK.S.NY/F.N/DAD..K..AY/F..AV..A..I/V.N/D.......
(式中、「.」は任意のアミノ酸を意味し、「.{10}」は任意の10個のアミノ酸を意味し、I/Vはアミノ酸の代替的な選択を示す)
を含むことを特徴とする、長さ127個のアミノ酸の不完全な反復単位を含む。
【0101】
Kurodaら(2001) Lancet 357; 1225-1240、および表3に開示された配列を参照することにより、Ebhタンパク質内の反復配列を容易に推定することができる。
【0102】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物に含有させようとする断片は、当該127アミノ酸反復単位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個以上を含有するタンパク質を含む。そのような断片は、当該127アミノ酸反復領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の反復からなるか、または該断片のいずれかの末端もしくは両方の末端に存在するさらなるアミノ酸残基を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の反復からなってもよい。必要に応じて、前記断片は、Clarkeら、Infection and Immunity 70, 6680-6687, 2002に記載の約44 kDaに及ぶ3個の反復のH2ポリペプチド(アミノ酸3202〜3595)である。そのような断片は、フィブロネクチンに結合し、および/または全Ebhタンパク質に対して反応性である抗体を引き出すことができるのが好ましいであろう。
【0103】
Ebhタンパク質は、フィブロネクチンに結合することができる。これらのポリペプチド配列の好ましい断片は、フィブロネクチンに結合する能力を保持する。フィブロネクチンへの結合を、Clarkeら(Infection and Immunity 70; 6680-6687 2002)により記載されたELISAにより評価することができる。
【0104】
一実施形態においては、前記断片は、B細胞またはTヘルパーエピトープ、例えば、表4および5に記載の断片/ペプチドを含むものである。
【表3】


【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
本発明のタンパク質の断片を、ペプチド合成により対応する完全長ポリペプチドを製造するために用いることができ;従って、これらの断片を、本発明の完全長タンパク質を製造するための中間体として用いることができる。
【0108】
一実施形態においては、いくつかの、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失、または付加された変異体を用いる。
【0109】
エラスチン結合タンパク質(EbpS)
EbpSは、83 kDaの分子量を有する486個のアミノ酸を含むタンパク質である。それは、黄色ブドウ球菌の細胞質膜に結合し、膜中に該タンパク質を保持する3個の疎水性領域を有する(Downerら、2002, J. Biol. Chem. 277; 243; Parkら、1996, J. Biol. Chem. 271; 15803)。
【0110】
アミノ酸1〜205と343〜486の2個の領域は、細胞質膜の外面上に表面露出している。EbpSのリガンド結合ドメインは、N末端の残基14〜34の間に位置する(Parkら、1999, J. Biol. Chem. 274; 2845)。
【0111】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物に組込まれる断片は、エラスチン結合領域を含む表面露出された断片(アミノ酸1〜205)である。必要に応じて、該断片は、露出したループ全体を含まないが、エラスチン結合領域(アミノ酸14〜34)を含むべきである。用いることができる代替的な断片は、第2の表面露出されたループ(アミノ酸343〜486)を形成するアミノ酸からなる。一方の末端または両方の末端に最大で1、2、5、10、20、50個未満のアミノ酸を含む代替的な断片も可能である。
【0112】
ラミニン受容体
黄色ブドウ球菌のラミニン受容体は、病原性において重要な役割を果たす。感染の特徴は、広範囲の転移性膿瘍形成を可能にする血流侵襲である。血流侵襲には、血管基底膜を横断して侵出する能力が必要である。これは、ラミニン受容体を介するラミニンへの結合によって達成される(Lopesら、Science 1985, 229; 275)。
【0113】
ラミニン受容体は、表面露出しており、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌などのブドウ球菌の多くの株に存在する。
【0114】
SBI
Sbiは、プロテインAに加えて第2のIgG結合タンパク質であり、黄色ブドウ球菌の多くの株において発現される(Zhangら、1998, Microbiology 144; 985)。
【0115】
Sbiの配列のN末端は、アミノ酸29の後ろに切断部位を有する典型的なシグナル配列を有する。従って、本発明の免疫原性組成物において用いることができるSbiの断片は、アミノ酸残基30、31、32または33で開始し、例えば、配列番号26のSbiのC末端まで続く。
【0116】
SbiのIgG結合ドメインを、アミノ酸41〜92からタンパク質のN末端に向かう領域として同定した。このドメインは、プロテインAのIgG結合ドメインと相同である。
【0117】
Sbiの最小のIgG結合ドメインは、以下の配列:

(*はIgG結合ドメイン間で類似するアミノ酸を表す)
を含む。
【0118】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物中に含有させるSbiの断片は、IgG結合ドメインを含む。この断片は、上記配列中に示される*により指定されるIgG結合ドメインの共通配列を含む。必要に応じて、この断片は上記に示される完全配列を含むか、またはそれからなる。必要に応じて、この断片は、例えば、配列番号26のSbiのアミノ酸30〜92、33〜92、30〜94、33〜94、30〜146、33〜146、30〜150、33〜150、30〜160、33〜160、33〜170、33〜180、33〜190、33〜200、33〜205もしくは33〜210を含むか、またはそれからなる。
【0119】
断片は、示される配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換を含んでもよい。
【0120】
断片は、IgG結合ドメインの複数の反復(2、3、4、5、6、7、8、9または10個)を含んでもよい。
【0121】
EFB-FIB
Fibは、黄色ブドウ球菌により細胞外培地に分泌される19 kDaのフィブリノゲン結合タンパク質である。それは試験した全ての黄色ブドウ球菌単離物により産生される(WastfeltおよびFlock 1995, J. Clin. Microbiol. 33; 2347)。
【0122】
黄色ブドウ球菌はフィブリノゲンの存在下で凝集し、フィブリノゲンで被覆された表面に結合する。この能力は、カテーテルおよび内皮細胞のブドウ球菌コロニー化を容易にする。
【0123】
Fibは、アミノ酸30あたりで推定切断部位を有する該タンパク質のN末端にシグナル配列を含む。一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、成熟タンパク質の配列(タンパク質のアミノ酸30あたりからC末端まで)を含むか、またはそれからなる。
【0124】
Fbe-EfB/FIG
Fbeは、表皮ブドウ球菌の多くの単離物に認められるフィブリノゲン結合タンパク質であり、119 kDaの推定分子量を有する(Nilssonら、1998. Infect. Immun. 66; 2666)。その配列は、黄色ブドウ球菌に由来するクランピング因子(ClfA)のものと関連する。Fbeに対する抗体は、フィブリノゲンで被覆されたプレートおよびカテーテルへの表皮ブドウ球菌の結合を阻害することができる(PeiおよびFlock 2001, J. Infect. Dis. 184; 52)。
【0125】
Fbeは、アミノ酸51と52の間の切断部位を有する推定シグナル配列を有する。従って、Fbeの好ましい断片は、アミノ酸52からC末端(アミノ酸1,092)まで伸長する成熟形態のFbeを含む。
【0126】
アミノ酸52からアミノ酸825までのFbeのドメインは、フィブリノゲン結合を担う。一実施形態においては、Fbeの断片は、アミノ酸52〜825からなるか、またはそれを含む。
【0127】
Fbeのアミノ酸373〜516の領域は、FbeとClfAの間で最も高い保存を示す。一実施形態においては、この断片は、Fbeのアミノ酸373〜516を含む。
【0128】
Fbeのアミノ酸825〜1041は、縦列反復されたアスパラギン酸とセリン残基から構成される高度に反復的な領域を含む。
【0129】
IsaA/PisA
IsaAは、PisAとしても知られる29 kDaのタンパク質であり、入院患者の敗血症における免疫優性のブドウ球菌タンパク質であることが示されている(Lorenzら、2000, FEMS Immunol. Med. Microb. 29; 145)。
【0130】
IsaA配列の最初の29アミノ酸は、シグナル配列であると考えられる。一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物に含有させようとするIsaAの断片は、コード配列の末端に向かうアミノ酸残基30個を含む。
【0131】
フィブロネクチン結合タンパク質
フィブロネクチン結合タンパク質Aは、フィブロネクチンへの結合に関与するいくつかのドメインを含む(WO 94/18327)。これらはD1、D2、D3およびD4と呼ばれる。一実施形態においては、フィブロネクチン結合タンパク質AまたはBの断片は、D1、D2、D3、D4、D1-D2、D2-D3、D3-D4、D1-D3、D2-D4またはD1-D4を含むか、またはそれからなる。
【0132】
フィブロネクチン結合タンパク質は、36アミノ酸のシグナル配列を含み、例えば、
VKNNLRYGIRKHKLGAASVFLGTMIVVGMGQDKEAA
である。
【0133】
必要に応じて、このシグナル配列を省略する成熟タンパク質を本発明の免疫原性組成物中に含有させる。
【0134】
輸送体タンパク質
グラム陽性細菌の細胞壁は、細菌中への代謝物の自由な拡散を防止する障壁として働く。タンパク質のファミリーは細菌中への必須栄養素の通過を調整し、従って、細菌の生存能力にとって必須である。用語「輸送体タンパク質」は、鉄などの代謝物に結合する最初の工程に関与するタンパク質ならびに細菌中に代謝物を実際に輸送するのに関与するものをカバーする。
【0135】
分子鉄は、細菌増殖にとって必須のコファクターである。遊離鉄に結合した後、細胞質膜を横断する輸送のために鉄を送達する細菌表面受容体により捕捉されるシデロフォアが分泌される。鉄の獲得は、ヒト感染の確立にとって重要であり、このクラスのタンパク質に対する免疫応答はブドウ球菌の生存能力の喪失を誘導する。
【0136】
輸送体タンパク質の例としては、免疫優性ABC輸送体(Burnieら、2000 Infect. Imun. 68; 3200)、IsdA (Mazmanianら、2002 PNAS 99; 2293)、IsdB (Mazmanianら、2002 PNAS 99; 2293, WO 05/09378)、IsdC (WO 06/59247)、- IsdH/HarA (Pilpaら、2006, J. Mol. Biol. 360; 435; WO 05/09379)、Mg2+輸送体、SitC (WiltshireおよびFoster 2001 Infect. Immun. 69; 5198)ならびにNi ABC輸送体が挙げられる。
【0137】
免疫優性ABC輸送体
免疫優性ABC輸送体は、様々なブドウ球菌株に対して交差防御的である免疫応答を生成することができるよく保存されたタンパク質である(Meiら、1997, Mol. Microbiol. 26; 399)。このタンパク質に対する抗体は、敗血症を有する患者において見出された(Burnieら、2000, Infect. Immun. 68; 3200)。
【0138】
免疫優性ABC輸送体の任意の断片は、これらの配列がヒト免疫系により認識されるエピトープを含むため、ペプチドDRHFLN、GNYD、RRYPF、KTTLLK、GVTTSLS、VDWLR、RGFL、より好ましくは、KIKVYVGNYDFWYQS、TVIVVSHDRHFLYNNVおよび/またはTETFLRGFLGRMLFSを含むであろう。
【0139】
IsdA-IsdB
黄色ブドウ球菌のisd遺伝子(鉄調節性表面決定因子)は、ヘモグロビン結合および細胞質へのヘム鉄の通過を担うタンパク質をコードし、必須栄養素として働く。IsdAおよびIsdBは、ブドウ球菌の細胞壁に位置する。IsdAはプロテイナーゼK消化を受けやすいため、細菌の表面上に露出されるようである。IsdBは部分的に消化されたが、これはそれが細菌の表面上に部分的に露出されることを示唆している(Mazmanianら、2003 Science 299; 906)。
【0140】
IsdAおよびIsdBは共に、ヘムに結合する29 kDaのタンパク質である。それらの発現は、Furリプレッサーを介する鉄の利用性により調節される。それらの発現は、鉄の濃度が低い宿主における感染の間は高いであろう。
【0141】
それらはまた、FrpAおよびFrpBとしても知られる(Morrisseyら、2002, Infect. Immun. 70; 2399)。FrpAおよびFrpBは、高い電荷を有する主要な表面タンパク質である。それらは、プラスチックへの付着に主に寄与することが示された。
【0142】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、WO 01/98499またはWO 03/11899に記載されたIsdAおよび/またはIsdBの断片を含む。
【0143】
HarA
HarAは、さらなる鉄調節性タンパク質である。それは、アミノ酸1〜40のシグナルペプチドを含む。必要に応じて、本発明の免疫原性組成物中に存在するHarAはシグナルペプチドを省略する。
【0144】
HarAは、アミノ酸101〜232、アミノ酸341〜471およびアミノ酸539〜664の3個のNEATドメインを含む。例えば、HarAの断片は、必要に応じて、配列番号69の配列の、アミノ酸101〜232、101〜471、101〜664、341〜471、341〜664もしくは539〜664を含むか、またはそれからなる。
【0145】
HarAは、アミノ酸853〜アミノ酸892のグラムプラスアンカードメインを含む。必要に応じて、HarAの断片は、このドメインを省略する。
【0146】
シグナルペプチドの長さ:40アミノ酸−配列の1行目で下線付。
NEATドメイン−3個の下線付内部領域。
グラム+アンカードメイン−配列の最後の行の下線付領域。

【0147】
毒素およびビルレンスの調節因子
このファミリーのタンパク質のメンバーとしては、α毒素、溶血素、腸毒素B、Panton Valentine Leucocidin (VPL) (Morinagaら、Microbiol. Immunol. 47; 81-90, 2003)およびTSST-1ならびにRAPなどの毒素の産生を調節するタンパク質が挙げられる。
【0148】
α毒素(Hla)
α毒素は、黄色ブドウ球菌の多くの株により産生される重要なビルレンス決定因子である。それは、溶血活性を有する孔形成毒素である。α毒素に対する抗体は、動物モデルにおいてα毒素の有害かつ致死的な作用を中和することが示された(Adlamら、1977 Infect. Immun. 17; 250)。ヒト血小板、内皮細胞および単核細胞は、α毒素の作用を受けやすい。
【0149】
α毒素の高い毒性は、それを免疫原として用いる前に解毒すべきであることを要する。これを、化学的処理により、例えば、他の架橋試薬のホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドを用いる処理により、またはそれを以下に記載の細菌多糖類に化学的にコンジュゲートさせることにより達成することができる。
【0150】
毒性を除去するさらなる方法は、毒素の抗原性を保持しながら、毒性を除去する点突然変異を導入することである。ヒスチジン残基がロイシン残基で置換されたα毒素のアミノ酸35での点突然変異の導入は、免疫原性を保持しながら毒性の除去をもたらす(MenziesおよびKernodle 1996; Infect. Immun. 64; 1839)。ヒスチジン35は、孔形成にとって必要な適切なオリゴマー化にとって重要であるようであり、この残基の突然変異は毒性の喪失を誘導する。
【0151】
本発明の免疫原性組成物中に組込む場合、必要に応じて、α毒素を、His 35の突然変異により、例えば、His 35をLeuまたはArgで置換することにより解毒する。代替的な実施形態においては、免疫原性組成物の他の成分、例えば、莢膜多糖類またはPNAG、最も好ましくは、5型黄色ブドウ球菌多糖および/もしくは8型黄色ブドウ球菌多糖および/またはPNAGへのコンジュゲーションにより、α毒素を解毒する。
【0152】
RNA III活性化タンパク質(RAP)
RAPはそれ自体は毒素ではないが、ビルレンス因子の発現の調節因子である。RAPはブドウ球菌により産生および分泌される。それは、他のブドウ球菌のagr調節系を活性化し、溶血素、腸毒素BおよびTSST-1などのビルレンス因子の発現およびその後の放出を活性化する。
【0153】
他の免疫優性タンパク質
蓄積関連タンパク質(Aap)
Aapは、表面上での表皮ブドウ球菌株の蓄積にとって必須である140 kDaのタンパク質である(Hussainら、Infect. Immun. 1997, 65; 519)。このタンパク質を発現する株は、有意に大量の生物膜を産生し、Aapは生物膜形成に関与するようである。Aapに対する抗体は、生物膜形成を阻害し、表皮ブドウ球菌の蓄積を阻害することができる。ワクチンに添加することができた配列は、WO 05/86663に開示されている。
【0154】
ブドウ球菌分泌抗原SsaA
SsaAは、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の両方に認められる30 kDaの強力な免疫原性タンパク質である(Langら、2000 FEMS Immunol. Med. Microbiol. 29; 213)。心内膜炎の間のその発現は、感染症の発症に特異的なビルレンスの役割を示唆していた。
【0155】
SsaAは、N末端リーダー配列とシグナルペプチダーゼ切断部位を含む。リーダーペプチドの後は残基30〜残基130の約100個のアミノ酸の親水性領域が続く。
【0156】
本発明の免疫原性組成物中に組込まれるSsaAの任意の断片を、成熟タンパク質(アミノ酸27からC末端またはアミノ酸30からC末端)から作製する。
【0157】
さらなる任意的断片は、アミノ酸30からアミノ酸130までのSsaAの親水性領域を含む。さらなる任意的配列および断片は、WO 05/115113に開示されている。
【0158】
ペニシリン結合タンパク質4
ペニシリン結合タンパク質4は、Henzeら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 38: 2415, 1995およびWO 06/33918に記載されている。
【0159】
好ましい組合せ
ブドウ球菌感染は、いくつかの異なる段階を通して進行する。例えば、ブドウ球菌の生活環は、片利共生的コロニー化、隣接する組織もしくは血流への接近による感染の開始、血液中での嫌気的増殖、黄色ブドウ球菌ビルレンス決定因子と宿主の防御機構との相互作用ならびに心内膜炎、転移性膿瘍形成および敗血症候群などの合併症の誘導を含む。細菌の表面上の様々な分子が、感染周期の様々な工程に関与するであろう。ブドウ球菌感染の様々なプロセスに関与する特定抗原の組合せに対する免疫応答を標的化することにより、ブドウ球菌機能の複数の態様が影響され、これは良好なワクチン効果をもたらし得る。
【0160】
特に、いくつかは宿主細胞への付着に関与し、いくつかは鉄獲得もしくは他の輸送体機能に関与し、いくつかは毒素もしくはビルレンスの調節因子および免疫優性抗原である、異なるクラスに由来する特定の抗原の組合せは、複数の段階の感染に対して防御する免疫応答を引き出すことができる。
【0161】
いくつかの組合せの抗原は、免疫応答の誘導において特に有効である。これを、実施例に記載の動物モデルアッセイにおいて、および/または実施例に記載のオプソニン食作用アッセイを用いて測定することができる。理論により束縛されることを望むものではないが、そのような有効な組合せの抗原は、抗原組合せに対する免疫応答のいくつかの特徴により可能になると考えられる。これらの抗原自身は通常、ブドウ球菌細胞の表面上に露出し、それらは保存される傾向があるが、単一の抗原に対して引き出された抗体を用いて起こる最適な殺菌応答にとって表面細胞上に十分な量で存在しない傾向も有する。本発明の抗原を組み合わせることにより、臨界閾値を超えてブドウ球菌細胞と相互作用する抗体の有利な組合せを引き出す製剤を得ることができる。この臨界レベルで、十分な質を有する十分な抗体は、細菌の表面に結合して、補体による効率的殺傷または細菌の中和が可能になる。これを、実施例に記載の動物チャレンジモデルまたはオプソニン化アッセイにおいて測定することができる。
【0162】
一実施形態においては、本発明の方法は、ブドウ球菌内で異なる機能を有する、少なくとも2個の異なるカテゴリーのタンパク質から選択される複数のタンパク質を混合する。そのようなカテゴリーのタンパク質の例は、細胞外結合タンパク質、Fe獲得タンパク質などの輸送体タンパク質、毒素もしくはビルレンスの調節因子および他の免疫優性タンパク質であり、かくして、本発明の免疫原性組成物を作製する。
【0163】
一実施形態においては、本発明の方法または免疫原性組成物はさらに、
・a)群:細胞外成分結合タンパク質;
・b)群:輸送体タンパク質;
・c)群:毒素またはビルレンスの調節因子、
から選択される2または3個の異なる群から選択される2、3、4、5または6個以上の多数のタンパク質を使用する/含む。
【0164】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物はさらに、下記群:
・a)群:ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、プロテインA、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、オートリシン、ClfA、SdrC、SdeD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、SasH、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素、FigおよびMAPからなる群より選択される少なくとも1種のブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質もしくはその断片;
・b)群:免疫優性ABC輸送体、IsdA、IsdB、IsdH/HarA Mg2+輸送体、SitCおよびNi ABC輸送体からなる群より選択される少なくとも1種のブドウ球菌輸送体タンパク質もしくはその断片;
・c)群:α毒素(Hla)、α毒素H35R変異体、RNA III活性化タンパク質(RAP)からなる群より選択される少なくとも1種のブドウ球菌のビルレンスの調節因子、毒素もしくはその断片;
・d)群:MRPIIおよびオートリシンからなる群より選択される少なくとも1種のブドウ球菌構造タンパク質もしくはその免疫原性断片、
の2個または3個から選択される2、3、4、5または6個以上の多数のタンパク質を含む。
【0165】
これらの特定の免疫原性組成物は、組合せを完了するために、本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートの一部として少なくとも1種のブドウ球菌糖類および/もしくはタンパク質ならびに本発明の糖類-タンパク質コンジュゲートの一部ではない少なくとも1種のブドウ球菌抗原を含んでもよい。
【0166】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、a)群から選択される少なくとも1種のタンパク質ならびにb)群および/またはc)群から選択されるさらなるタンパク質を含む。
【0167】
さらなる実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、b)群から選択される少なくとも1種の抗原ならびにc)群および/またはa)群から選択されるさらなるタンパク質を含む。
【0168】
さらなる実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、c)群から選択される少なくとも1種の抗原ならびにa)群および/またはb)群から選択されるさらなるタンパク質を含む。
【0169】
さらなる実施形態においては、本発明の方法は、WO 02/59148、WO 05/09378、WO 05/09379、WO 05/86663、WO 05/115113、WO 06/33918、WO 06/78680、WO 06/121664、WO 07/01361、WO 02/94868、米国特許第6380370号、WO 04/87746、WO 01/98499またはWO 03/11899に列挙されたブドウ球菌タンパク質のいずれかの添加を含む。
【0170】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、投与される用量あたり、0.1〜20μg、2〜10μg、2〜6μgまたは4〜7μgの糖類の各糖類コンジュゲートの用量を含む。一実施形態においては、本発明の方法は、0.1〜20μg、2〜10μg、2〜6μgまたは4〜7μgの各糖類を混合する。
【0171】
「およそ」または「約」は、本発明の目的のために、所与の数値の10%以上または以下の範囲内と定義される。
【0172】
一実施形態においては、本発明の免疫原性組成物を、pH 7.0〜8.0、pH 7.2〜7.6またはおよそもしくは正確にpH 7.4に調整するか、もしくはそこで緩衝化するか、または調整する。
【0173】
必要に応じて、本発明の免疫原性組成物またはワクチンを、安定化剤、例えば、スクロースまたはトレハロースなどのポリオールの存在下で凍結乾燥する。
【0174】
必要に応じて、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、免疫原に対する免疫応答を増強するのに十分なアジュバントの量を含む。好適なアジュバントとしては、限定されるものではないが、アルミニウム塩(リン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム)、スクアレン混合物(SAF-1)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調製物、モノホスホリルリピドA、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、ならびにTakahashiら(1990) Nature 344:873-875により記載のものなどの免疫刺激複合体(ISCOM)が挙げられる。同様に、本発明の方法は必要に応じて、上記アジュバントの少なくとも1種を添加する工程を含む。
【0175】
全ての免疫原性組成物またはワクチンと同様、免疫原の免疫学的に有効な量を経験的に決定しなければならない。考慮すべき因子としては、免疫原性、免疫原がアジュバントもしくは担体タンパク質もしくは他の担体と複合体化するか否か、または共有結合されるか否か、投与経路ならびに投与すべき免疫用量の数が挙げられる。
【0176】
本発明の医薬組成物またはワクチン中に、様々な濃度の活性剤を存在させることができる。典型的には、当該物質の最小濃度は、その使用目的を達成するのに必要な量であるが、最大濃度は、溶液中で保持するか、または最初の混合物内に均一に懸濁される最大量である。例えば、治療剤の最小量は、必要に応じて、単回治療上有効用量を提供するものである。生物活性物質については、最小濃度は、再構成の際に生物活性にとって必要な量であり、最大濃度は、均一な懸濁液を維持することができない点である。単回用量単位の場合、その量は単回治療適用のものである。一般的には、各用量は1〜100μgのタンパク質抗原、必要に応じて、5〜50μgまたは5〜25μgを含むと予想される。例えば、細菌糖類の用量は、コンジュゲート中の10〜20μg、5〜10μg、2.5〜5μgまたは1〜2.5μgの糖類である。
【0177】
本発明のワクチン調製物を用いて、全身または粘膜経路を介して該ワクチンを投与することにより、感染に罹りやすい哺乳動物(例えば、ヒト患者)を防御するか、または治療することができる。ヒト患者は、必要に応じて、乳児(12ヶ月以下)、幼児(12〜24、12〜16もしくは12〜14ヶ月)、小児(2〜10、3〜8もしくは3〜5歳)、青年(12〜21、14〜20もしくは15〜19歳)または成人である。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路を介する注入;または口腔/消化管、気管、尿生殖路への粘膜投与を含んでもよい。肺炎または中耳炎の治療のためのワクチンの鼻内投与が好ましい(肺炎球菌の鼻咽頭運搬をより効率的に防止し、かくして、その最も早い段階で感染を弱めることができるため)。本発明のワクチンを単回用量として投与することができるが、その成分を同時に、または異なる時点で一緒に同時投与することもできる(例えば、糖類がワクチン中に存在する場合、これらを同時に、または互いに関して免疫応答の最適な協調のために細菌タンパク質ワクチンの投与の1〜2週間後に、別々に投与することができる)。単一の投与経路に加えて、2つの異なる投与経路を用いてもよい。例えば、ウイルス抗原を、ID(皮内)投与することができ、一方、細菌タンパク質をIM(筋肉内)またはIN(鼻内)投与することができる。糖類が存在する場合、それらをIM(またはID)投与し、細菌タンパク質をIN(またはID)投与することができる。さらに、本発明のワクチンを、初回用量についてはIM投与、追加用量についてはIN投与することができる。
【0178】
ワクチン調製物は、Vaccine Design (「サブユニットおよびアジュバント手法(The subunit and adjuvant approach)」(Powell M.F. & Newman M.J.(編)) (1995) Plenum Press New York)に一般的に記載されている。リポソーム内への封入は、Fullerton、米国特許第4,235,877号により記載されている。
【0179】
本発明のさらなる態様においては、本発明の方法により取得可能であるか、または取得された糖類-タンパク質担体コンジュゲートおよびブドウ球菌抗原を含む免疫原性組成物が提供される。
【0180】
疾患の予防もしくは治療のための医薬の製造における本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンの使用、ならびに有効用量の本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンを、それを必要とする患者に投与する工程を含む疾患を予防もしくは治療する方法がさらに提供される。この使用または方法は、前記疾患が髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、モラキセラ・カタラリス(M. catarrhalis)、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌(Salmonella typhi)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、大腸菌、およびインフルエンザ菌からなる一覧より選択される細菌により引き起こされるようなものであってよい。
【0181】
本明細書に記載の用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、全ての例において、それぞれ用語「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」と必要に応じて置換可能であると本発明者らにより意図される。
【0182】
本明細書内で引用される全ての参考文献または特許出願は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0183】
本発明を、添付の実施例において例示する。以下の実施例を、さもなければ詳細に説明される場合を除いて、当業者にはよく知られ、日常的である標準的な技術を用いて実行する。実施例は例示的であるが、本発明を限定するものではない。
【0184】
(実施例)
【実施例1】
【0185】
多糖類コンジュゲートの調製
黄色ブドウ球菌莢膜多糖8型-TTコンジュゲート:
PS誘導体化
活性化およびカップリングを、連続攪拌下、室温で実施した。30 mgの天然多糖類を希釈して、水中で5 mg/mlの最終多糖類濃度を取得した。溶液を0.5 NのHClでpH 5.0に調整した後、66μgのADHを添加した(2.2 mg/mg PS)。完全に溶解した後、60 mgのEDACを添加した(2 mg/mgのPS)。70分後、pHを1 NのNaOHでpH 7.5に上昇させて、反応を停止させた。遊離ADHを、Sephacryl S100HR (XK 16/40)上での精製により除去した。溶出バッファーとして0.2 M NaClを用いて60 ml/hに流速を固定した。サイズ低下を、millexフィルター(0.22μm)上での滅菌濾過を可能にする15分の超音波処理により行った。
【0186】
カップリング
破傷風トキソイドを、0.2 MのNaCl中の5〜10 mgの誘導体化多糖類に添加し、0.5 NのHClの添加によりpHをpH 5.0またはpH 6.0に調整した。EDACを0.1M TrisバッファーpH 7.5に溶解した後、10分間に渡って添加した(1/5容量、各2分)。用いる条件に従って(表6を参照)、30〜180分後、1M Tris-HCl pH 7.5の添加により、反応を停止させた。Sephacryl S400HR上での精製の前に、5μmのMinisartフィルターを用いてコンジュゲートを清澄化した。あるいは、5分間の超音波処理工程により、コンジュゲートを清澄化した。次いで、コンジュゲートをSephacryl S400HR (XK50/100)上に注入した。溶出バッファーとして150 mM NaClを用いて30 ml/hに流速を固定した。溶出プールをレゾルシノールおよびμBCAプロフィールに基づいて選択した(それぞれ、多糖およびタンパク質用量を測定する)。コンジュゲートを、10 ml/分で0.22μm滅菌膜(Millipack 20)上で濾過した。
【表6】

【0187】
得られるコンジュゲートは、表7に示される以下の特徴を有する。
【表7】

【0188】
また、黄色ブドウ球菌多糖類8型を、ADHを用いる誘導体化の前の微小流体化により処理した。
【0189】
PS誘導体化
活性化およびカップリングを、連続攪拌下、室温で実施する。200 mgのサイズ化された多糖を希釈して、水中で10 mg/mlの最終PS濃度を取得する。次いで、440 mgのADHを添加した(2.2 mg/mgのPS)。溶液を1N HClを用いてpH 4.7に調整した後、400 mgのEDACを添加した(2 mg/mgのPS)。60分後、pHを5M NaOHでpH 7.5に上昇させて、反応を停止させた。混合物をAmicon Ultra(カットオフ10.000 MWCO)上で濃縮した。Sephacryl S200HR (XK16/100)上での精製の前に、5μmのMinisartフィルターを用いてコンジュゲートを清澄化した。溶出バッファーとして0.150 MのNaClを用いて流速を30 ml/hに固定した。
【0190】
カップリング
100 mgのTTを、0.15 MのNaCl中の50 mgの誘導体化多糖に添加した。0.3 NのHClの添加により、pHをpH 5.0±0.02に調整した。EDACを0.1 M TrisバッファーpH 7.5に溶解した後、10分間に渡って添加した(1/10容量、各分)。用いる条件に従って(表8を参照)、1 MのTris-HCl pH 7.5の添加により、30〜180分後に反応を停止させた。Sephacryl S400HR上での精製の前に、5μmのMinisartフィルターを用いてコンジュゲートを清澄化した。次いで、コンジュゲートをSephacryl S400HR (XK50/100)上に注入した。溶出バッファーとして150 mM NaClを用いて流速を60 ml/hに固定した。溶出プールをレゾルシノールおよびμBCAプロフィール(それぞれ、多糖およびタンパク質用量を測定する)に基づいて選択した。次いで、0.22μmの滅菌膜(Millipack 20)上で10 ml/分でコンジュゲートを濾過した。
【表8】

【0191】
【表9】

【0192】
実施例1a−本発明に従う髄膜炎菌MenAおよびMenC莢膜多糖の調製
MenC-TTコンジュゲートを、天然多糖(MALLSにより測定される場合、150 kDaを超えるもの)を用いて製造するか、またはわずかに微小流体化した。MenA-TTコンジュゲートを、天然多糖または実施例2に記載のMALLS方法により測定された場合、60 kDaを超えるわずかに微小流体化された多糖を用いて製造した。サイジングは、ホモジェナイザーEmulsiflex C-50装置を用いる微小流体化によるものであった。次いで、この多糖を0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0193】
スペーサーを介して破傷風トキソイドにMenA莢膜多糖をコンジュゲートさせるために、以下の方法を用いた。該多糖とスペーサー(ADH)との共有結合を、該多糖をシアニル化剤、1-シアノ-4-ジメチルアミノ-ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)による制御された条件下で活性化するカップリング化学により実行する。このスペーサーは、そのヒドラジノ基を介してシアニル化されたPSと反応して、スペーサーと多糖との間の安定なイソウレア結合を形成する。
【0194】
MenA (pH 6.0)[3.5 g]の10 mg/ml溶液を、アセトニトリル/水(50/50 (v/v))中のCDAPの新鮮に調製された100 mg/ml溶液で処理して、0.75(w/w)のCDAP/MenA比を得た。1.5分後、pHをpH 10.0に上昇させた。3分後、ADHを添加して、8.9のADH/MenA比を得た。溶液のpHを8.75に低下させ、このpHを維持しながら2時間、反応を進行させた(温度は25℃に保持)。
【0195】
PSAAH溶液をその最初の容量の1/4に濃縮した後、10 kDaのカットオフを有するFiltron Omega膜を用いて30倍容量の0.2 M NaClでダイアフィルトレーションし、滞留物を濾過した。
【0196】
コンジュゲーション(カルボジイミド縮合)反応の前に、精製されたTT溶液およびPSAAH溶液を希釈して、PSAAHについては10 mg/mlおよびTTについては10 mg/mlの濃度を達成した。
【0197】
EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド)をPSAH溶液(2 gの糖類)に添加して、0.9 mg EDAC/mg PSAAHの最終比率を達成した。pHを5.0に調整した。精製された破傷風トキソイドを蠕動ポンプを用いて添加し(60分で)、2 mg TT/mg PSAAHを達成した。得られた溶液を攪拌下、+25℃で60分間静置して、120分の最終カップリング時間を得た。1M Tris-HCl pH 7.5 (最終容量の1/10)の添加により溶液を中和し、+25℃で30分間静置した後、+2℃〜+8℃で一晩静置した。
【0198】
コンジュゲートを10μmフィルターを用いて清澄化し、Sephacryl S400HRカラム(Pharmacia, Sweden)を用いて精製した。カラムを10 mM Tris-HCl (pH 7.0)、0.075 M NaCl中で平衡化し、コンジュゲート(約660 mL)をカラム(+2℃〜+8℃)上に載せた。溶出プールを、280 nmでの光学密度の関数として選択した。
【0199】
吸光度が0.05に増加した時、回収を開始した。Kdが0.30に達するまで回収を継続した。コンジュゲートを+20℃で濾過滅菌した後、+2℃〜+8℃で保存した。得られたコンジュゲートは1:2〜1:4(w/w)の多糖:タンパク質比を有していた。
【0200】
スペーサーを介して破傷風トキソイドにMenC莢膜多糖をコンジュゲートするために、以下の方法を用いた。多糖とスペーサー(ADH)との共有結合を、該多糖をシアニル化剤、1-シアノ-4-ジメチルアミノ-ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)による制御された条件下で活性化するカップリング化学により実行する。このスペーサーは、そのヒドラジノ基を介してシアニル化されたPSと反応して、スペーサーと多糖との間の安定なイソウレア結合を形成する。
【0201】
MenC (pH 6.0)(3.5 g)の20 mg/ml溶液を、アセトニトリル/水(50/50 (v/v))中のCDAPの新鮮に調製された100 mg/ml溶液で処理して、1.5(w/w)のCDAP/MenC比を得た。1.5分後、pHをpH 10.0に上昇させた。活性化pHで、5 M NaClを添加して、2 M NaClの最終濃度を達成した。3分後、ADHを添加して、8.9のADH/MenC比を得た。溶液のpHを8.75に低下させ、2時間、反応を進行させた(25℃に保持)。
【0202】
PSCAH溶液を最小で150 mLに濃縮した後、10 kDaのカットオフを有するFiltron Omega膜を用いて30倍容量の0.2 M NaClでダイアフィルトレーションし、滞留物を濾過した。
【0203】
コンジュゲーション反応の前に、精製されたTT溶液およびPSCAH溶液(2 gスケール)を0.2 M NaCl中で希釈して、PSCAHについては15 mg/mlおよびTTについては20 mg/mlの濃度を達成した。
【0204】
精製された破傷風トキソイドをPSCAH溶液に添加して、2 mg TT/mg PSCAHを達成した。pHを5.0に調整した。EDAC(Tris 0.1 M pH 7.5中、16.7 mg/ml)を蠕動ポンプを用いて添加し(10分で)、0.5 mg EDAC/mg PSCAHの最終比率を達成した。得られた溶液を攪拌かつpH調節下、+25℃で110分間静置して、120分の最終カップリング時間を得た。次いで、1M Tris-HCl pH 9.0(最終容量の1/10)の添加により溶液を中和し、+25℃で30分間静置した後、+2℃〜+8℃で一晩静置した。
【0205】
コンジュゲートを10μmフィルターを用いて清澄化し、Sephacryl S400HRカラム(Pharmacia, Sweden)を用いて精製した。カラムを10 mM Tris-HCl (pH 7.0)、0.075 M NaCl中で平衡化し、コンジュゲート(約460 mL)をカラム(+2℃〜+8℃)上に載せた。溶出プールを、280 nmでの光学密度の関数として選択した。吸光度が0.05に増加した時、回収を開始した。Kdが0.20に達するまで回収を継続した。コンジュゲートを+20℃で濾過滅菌した後、+2℃〜+8℃で保存した。得られたコンジュゲートは1:2〜1:4(w/w)の多糖:タンパク質比を有していた。
【0206】
10〜45分間に渡ってEDACを添加する様々な実験を行った。各事例において、良好な品質のMenCコンジュゲートが得られた。しかしながら、TT担体をMenC-ADH + EDACミックスに最後にゆっくりと添加した場合、精製することができなかったゲル-コンジュゲートを生じた。
【0207】
また、EDACを全て同時に反応物に添加する実験も行ったが、コンジュゲートの最終TT/PS比(2.7/1)(w/w)は、EDACを10分間に渡って添加する反応を介して得られたコンジュゲート(3.3/1)についてより低かった;さらに、αTTおよびαPS抗原性は両方とも、EDACを10分間に渡って添加する反応により作製されたコンジュゲートに関して測定されたものよりも低かった。
【0208】
多糖類のおよその誘導体化率(%)に関する注記
MenCAH:ADHを用いるCDAP処理後、約3.47%のヒドロキシル基をADHで誘導体化した(反復サブユニットあたり2個の利用可能なヒドロキシル基の見積もり)。MenAについて:約11.5%のヒドロキシル基をADHで誘導体化した(反復単位あたり1個のみの利用可能なヒドロキシル基が存在することを考慮する)。
【実施例2】
【0209】
MALLSを用いる分子量の決定
検出器を、サンプルを溶出させるHPLCサイズ排除カラムに接続した。一方、レーザー光散乱検出器は、大分子溶液により16°の角度で散乱された光強度を測定し、他方、オンラインで配置された干渉屈折計により、溶出したサンプルの量の決定が可能になった。これらの強度から、溶液中の大分子のサイズおよび形状を決定することができる。
【0210】
重量での平均分子量(Mw)を、そのそれぞれの分子量を乗算した全ての種の重量の合計に、全ての種の重量の合計で除算したものとして定義する。
【0211】
a)重量平均分子量:-Mw-

b)数平均分子量:-Mn-

c)二乗平均平方根半径:-Rw-およびR2wは、

により定義される二乗半径である。
【0212】
(-mi-は散乱中心iの質量であり、-ri-は散乱中心iと大分子の重力中心との間の距離である)
d)多分散性を比-Mw/Mn-として定義する。
【0213】
髄膜炎菌多糖を、組み合わせて用いた2本のHPLCカラム(TSKG6000および5000PWxl)上に載せることによりMALLSによって分析した。25μlの多糖をカラム上に載せ、0.75 mlの濾過された水を用いて溶出させた。多糖を光散乱検出器(488 nmの10 mWアルゴンレーザーを装備したWyatt Dawn DSP)および干渉屈折計(P100セルと498 nmの赤色フィルターを装備したWyatt Otilab DSP)を用いて検出する。
【0214】
分子量多分散性およびサンプルの回収を、Astra 4.72ソフトウェア中で1の多項式フィットオーダーを用いるDebye方法により算出した。
【実施例3】
【0215】
黄色ブドウ球菌PS8-TTおよびdPNAG-TTコンジュゲートの免疫原性
30匹のマウスの群に、0、14、28および42日目に、アジュバント化せずに、またはアジュバントAと組み合わせて、3μgの糖用量で黄色ブドウ球菌PS8-TTコンジュゲートを皮下的に接種した。0日目に、マウスは0.001〜0.013μgの第1の糖用量を受容した。さらに3回の免疫を、塩水中の0.3μgの用量を用いて行った。55日目に、血清をマウスから回収し、各血清サンプルをELISAにより試験して、PS8に対する免疫応答を評価した。10匹のマウスの群を対照群において使用し、これらに塩水またはアジュバントAを含む塩水を接種した。
【0216】
精製されたPS8を、高結合マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp)上、4℃で一晩、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に2μg/mlでコーティングした。プレートを振とうしながら室温で30分間、PBS-BSA 1%でブロックした。マウス抗血清を1/100に予め希釈した後、さらに2倍希釈液をマイクロプレート中で作製し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、結合したマウス抗体を、PBS-tween 0.05%中で1:5000に希釈されたJackson ImmunoLaboratories Inc.ペルオキシダーゼ結合affiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(ref: 115-035-003)を用いて検出した。検出抗体を、振とうしながら室温で30分間インキュベートした。暗室中、室温で15分間、10 mlのpH 4.5 0.1 Mクエン酸バッファーあたり4 mg OPD (Sigma) + 5μl H2O2を用いて、発色させた。反応を50μlのHClで停止させ、光学密度を650 nmに対する490 nmで読み取った。
【0217】
結果を中点力価で表し、GMTを30個のサンプルについて算出した(対照については10個)。その結果を以下の表14に示す。
【表14】

【0218】
30匹のマウスの群に、アジュバント化せずに、またはアジュバントAと組み合わせて、200 mMのNaCl中の0.3μgの糖用量で黄色ブドウ球菌dPNAG-TTコンジュゲート(10%〜30%がN-アセチル化されたdPNAGを含む)を皮下的に接種した。このマウスは、0、14および28日目に3回の接種を受容した。41または42日目に、血清をマウスから回収し、各血清サンプルをELISAにより試験して、PNAGに対する免疫応答を評価した。10匹のマウスの群を、対照群において使用し、これらに塩水またはアジュバントのみを接種した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド縮合化学を用いて糖類をタンパク質担体にコンジュゲートさせて、糖類-タンパク質コンジュゲートを作製するコンジュゲーション工程を含む免疫原性組成物を作製する方法であって、該糖類が(例えば、その反復単位の一部として)、アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、該タンパク質担体が、アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、
I)タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、糖類がアミノ基もしくはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要な糖類とカルボジイミドのアリコートとを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡って必要とされるタンパク質担体のアリコートを添加する工程;
II)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基もしくはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要なタンパク質担体とカルボジイミドのアリコートとを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡って必要とされる糖類のアリコートを添加する工程;
III)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含む場合、
a)タンパク質担体と糖類とを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡ってコンジュゲーションを実施するのに必要とされるカルボジイミドのアリコートを添加する工程、
ならびに糖類-タンパク質コンジュゲートを、ブドウ球菌抗原と混合するさらなる工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程b)において、前記期間が50秒〜5時間、1分〜4時間、2分〜3時間、3分〜2時間、4〜60分間、5〜50分間、6〜40分間、7〜30分間または8〜20分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)において、前記期間が1分〜5時間、10分〜4時間、20分〜3時間、30分〜2時間、40〜90分間、または50〜70分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カルボジイミドがEDAC(1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド)またはEDAC以外のカルボジイミドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
コンジュゲーションを実施するのに必要とされるカルボジイミドのアリコートが、糖類1mg当たり0.01〜3 mg、0.05〜2 mgまたは0.09〜1 mgである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記糖類および/またはタンパク質担体がアミノ基またはカルボキシル基を含むように誘導体化されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記誘導体化がヘテロ-またはホモ-二官能性リンカーの付加によるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカーが4〜12個の炭素原子を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リンカーが2個の反応性アミノ基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーがADHである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記リンカーが2個の反応性カルボン酸基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
前記リンカーが一方の末端に反応性アミノ基を有し、他方の末端に反応性カルボン酸基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項13】
前記誘導体化が、大過剰のリンカーを、誘導体化しようとする糖類および/またはタンパク質担体と反応させることを介して起こる、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記糖類がリンカー上のアミノ基を介して部分的に誘導体化されるその反復単位の一部として反応性ヒドロキシル基を含む、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記糖類をCDAP化学を用いて部分的に誘導体化する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記糖類がリンカー上のカルボキシル基を介して部分的に誘導体化されるその反復単位の一部として反応性アミノ基を含む、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記糖類をカルボジイミド縮合化学を用いて部分的に誘導体化する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記糖類がリンカー上のアミノ基を介して部分的に誘導体化されるその反復単位の一部として反応性カルボキシル基を含む、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記糖類を、カルボジイミド化学を用いて部分的に誘導体化する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程b)において、カルボジイミド、糖類またはタンパク質担体のアリコートを、ポンプを用いて一定の速度で添加する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
工程b)において、カルボジイミド、糖類またはタンパク質担体のアリコートを、前記期間に渡って段階的に添加する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記アリコートの少なくとも1/4を前記期間の最初の半分に渡って添加し、前記期間の第2の半分に渡って該アリコートの少なくとも1/4を添加する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アリコート「a」を、4〜100段階「s」で添加する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記アリコートのa/sを各段階で添加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1段階が前記期間「p」の時間0で起こる場合に、それぞれその後の段階がp/(s-1)である時間で起こる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記糖類が工程b)中で0.5〜50 mg/mlの最終濃度で存在する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
タンパク質担体:糖類の初期比が5:1〜1:5、4:1〜1:1、または3:1〜2:1 (w/w)である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
工程b)中に存在する塩、例えば、NaClの濃度が0〜2 M、0.1〜1 Mまたは0.2〜0.5 Mである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質担体が工程b)中に1〜50 mg/mlの最終濃度で存在する、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
工程b)中の反応pHを、pH 4.5〜6.5、4.7〜6.0、または5〜5.5に維持する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
N-ヒドロキシスクシンイミドも工程b)における反応中に存在し、工程b)における反応pHをpH 4.5〜7.5に維持する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
工程b)における反応の温度を、4〜37℃、10〜32℃、17〜30℃、または22〜27℃に維持する、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記アリコートを工程b)において全部添加した後、反応をさらに10分〜72時間、20分〜48時間、30分〜24時間、40分〜12時間、50分〜6時間、または1〜3時間維持する、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
一度、反応が完了したら、pHを7.5〜9に調整する、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
5または8型黄色ブドウ球菌糖類-タンパク質コンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィーカラム上で精製する、後続の工程c)を含む、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
5または8型黄色ブドウ球菌糖類-タンパク質コンジュゲートを滅菌濾過する、後続の工程d)を含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
有効用量の糖類-タンパク質コンジュゲートを、製薬上許容し得る賦形剤と共に製剤化して、免疫原性組成物またはワクチンを製造する、後続の工程e)を含む、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
5または8型黄色ブドウ球菌糖類が、10〜90%の反復単位上でO-アセチル化されている、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記糖類の重量平均分子量が1000〜2000000、5000〜1000000、10000〜500000、50000〜400000、75000〜300000、または100000〜200000である、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記糖類が天然の多糖類であるか、またはx10以下の係数により(例えば、微小流体化によって)サイズ化される、請求項1〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記糖類が黄色ブドウ球菌に由来し、且つ100〜200 kDaのサイズに微小流体化されたものである、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質担体が1以上のTヘルパーエピトープを含む、請求項1〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質担体が、TT、DT、CRM197、TTの断片C、インフルエンザ菌のDタンパク質、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌ニューモリシンおよびブドウ球菌タンパク質、例えば、ClfAもしくはSdrGまたはα毒素もしくはその免疫原性断片からなる群より選択される、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ブドウ球菌抗原が黄色ブドウ球菌に由来するものである、請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ブドウ球菌抗原がPNAGである、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記PNAGが少なくとも40%脱N-アセチル化されたものである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ブドウ球菌抗原が5または8型黄色ブドウ球菌に由来する莢膜糖類である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記ブドウ球菌抗原が、必要に応じて、ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、プロテインA、オートリシン、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素、FigおよびMAP、免疫優性ABC輸送体、IsdA、IsdB、IsdC、IsdH/HarA、SasA、ペニシリン結合タンパク質4、MRPII Mg2+輸送体、SitCおよびNi ABC輸送体、VPL、α毒素(Hla)、α毒素H35R変異体ならびにRNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択される、タンパク質、またはその免疫原性断片もしくはその融合タンパク質である、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ブドウ球菌抗原が336抗原である、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
カルボジイミド縮合化学を用いて糖類をブドウ球菌タンパク質担体にコンジュゲートさせる方法であって、該糖類が(例えば、その反復単位の一部として)、アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、該タンパク質担体がアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、または含むように誘導体化されたものであり、
I)ブドウ球菌タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、糖類がアミノ基もしくはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要な糖類とカルボジイミドのアリコートとを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡って必要とされるブドウ球菌タンパク質担体のアリコートを添加する工程;
II)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基もしくはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
a)コンジュゲーションを実施するのに必要なブドウ球菌タンパク質担体とカルボジイミドのアリコートとを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡って必要とされる糖類のアリコートを添加する工程;
III)糖類がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含み、タンパク質担体がアミノ基およびカルボキシル基の両方を含む場合、
a)ブドウ球菌タンパク質担体と糖類とを混合する工程、および
b)35秒間〜6時間に渡ってコンジュゲーションを実施するのに必要とされるカルボジイミドのアリコートを添加する工程、
を含む、前記方法。
【請求項51】
前記ブドウ球菌タンパク質が、ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、プロテインA、オートリシン、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、SasH、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素、FigおよびMAP、免疫優性ABC輸送体、IsdA、IsdB、IsdC、IsdH/HarA、Mg2+輸送体、SitCおよびNi ABC輸送体、SasA、MRPII、ペニシリン結合タンパク質4、VPL、α毒素(Hla)、α毒素H35R変異体ならびにRNA III活性化タンパク質 (RAP)またはその免疫原性断片もしくは融合タンパク質からなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
請求項50または51に記載の方法により得られる糖類-タンパク質担体コンジュゲート。
【請求項53】
請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法により得られる免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項54】
疾患の予防または治療のための医薬の製造における請求項53に記載の免疫原性組成物またはワクチンの使用。
【請求項55】
請求項52または53に記載の有効用量の糖類-タンパク質担体コンジュゲート、免疫原性組成物またはワクチンを、それを必要とする患者に投与する工程を含む、疾患を予防または治療する方法。
【請求項56】
前記疾患が、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、モラキセラ・カタラリス(M. catarrhalis)、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌、コレラ菌、大腸菌、およびインフルエンザ菌からなる一覧より選択される細菌により引き起こされる、請求項54または55に記載の使用または方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図1−13】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図2−19】
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【図2−20】
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【図2−21】
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【図2−22】
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【図2−23】
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【図2−24】
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【図2−25】
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【図2−26】
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【図2−27】
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【図2−28】
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【図2−29】
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【図2−30】
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【図2−31】
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【図2−32】
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【公表番号】特表2010−514817(P2010−514817A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544404(P2009−544404)
【出願日】平成20年1月2日(2008.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050011
【国際公開番号】WO2008/081014
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】