説明

ワクチン投与方法

【課題】イヌ疾患に関してイヌに治療有効量のワクチンを投与することにより治療する方法の提供。
【解決手段】ワクチンが、ウイルス性抗原、バクテリンまたはそれら両方を含み、該ウイルス抗原は、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス2型、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌパルボウイルス、およびイヌコロナウイルスのうちの1種または複数を含み、該バクテリンは、Leptospira canicolaおよびBordetella bronchiseptica等から選択される1種または複数を含み、第1回用量では皮下または経口投与で、第2回用量では経口で、場合による第3回用量では経口で、年1回用量では経口で投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌ疾患に関してイヌを治療する方法に関し、これは、前記イヌに治療有効量のワクチンを投与することを含み、ここで、前記ワクチンは、ウイルス抗原、バクテリンまたはこれら両方を含み、前記ワクチンを、本明細書に示されているスケジュールに従い皮下または経口投与する。
【背景技術】
【0002】
主なイヌ感染症に対するワクチンは、30年から40年間利用されていて、イヌにおけるこれらの感染症の発生率を著しく低下させている(Appel,MJ.1999.Adv Vet Med.41:309〜324)。Pfizer Animal Healthは、イヌにおける様々なウイルス性および細菌性疾患に伴う疾患を予防するための数種のワクチンを販売している。イヌのコアワクチンを含むワクチンのVANGUARD(登録商標)ラインは、イヌジステンパー(CD)ウイルスが原因のイヌジステンパー(CD)、イヌアデノウイルス1型(CAV−1)が原因の感染性イヌ肝炎(ICH)、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)が原因の呼吸器疾患、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルスが原因のイヌパラインフルエンザ(CPI)およびイヌパルボウイルス(CPV)が原因のイヌパルボウイルス腸炎を予防する際の補助として、6週齢以上の健康なイヌにワクチン接種するために使用されている(Mouzin DEら、2004、JAVMA、224:55〜60)。
【0003】
CDは、世界中のワクチン接種されていないイヌ集団で生じる高い罹患率、高い死亡率のウイルス性疾患である。ワクチン接種されてなく、免疫のないイヌがCDVに感染すると、その約50%が臨床症状を示し、それらのイヌの約90%が死亡する(Swango LJ.1983.Norden News 58:4〜10)。CAV−1が原因のICHは、肝臓および全身内皮病変により特徴づけられるイヌの汎発性で、時に致死性のウイルス疾患である。CAV−2が原因の呼吸器疾患は、重度の場合には、肺炎および気管支肺炎を含むことがある。CAV−2ワクチンは、CAV−1が原因のICHに対して干渉効果を示すことが判明している(Bass EPら、1980、JAVMA、177:234〜242)。CPIウイルスが原因の上気道疾患は、軽度か、無症状のこともあるが、他の呼吸性病原との同時感染が存在する場合には、徴候はより重度になる。CPVが原因の腸疾患は、往々にして出血性の嘔吐および下痢の突然の発症により特徴づけられ、白血球減少症を伴うこともある(Appel MJら、1979、VetRec、105:156〜159)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主な動物健康関連会社は、イヌのコアワクチンを、そのコンパニオン動物ワクチンフランチャイズで販売している。しかしながら、これらのワクチンは全て、非経口経路、特に皮下注射により送達されている。容易に送達することができるイヌワクチンは、ペット、獣医師およびペットの飼い主にワクチン送達の高い利便性をもたらし、非経口投与技術に未習熟のヒトが動物にイヌのコアワクチンを送達することを可能にするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
イヌ疾患に関してイヌを治療する方法を本明細書では提供し、これは、前記イヌに治療有効量のワクチンを投与することを含み、ここで、前記ワクチンは、ウイルス抗原、バクテリンまたはこれら両方を含み、前記ワクチンを、第1回用量では皮下または経口用量で、第2回用量では経口で、場合による第3回用量では経口で、1回または複数回の年1回投与では経口で投与する。ウイルス抗原は、1)イヌジステンパー(CD)ウイルス、2)イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、3)イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、4)イヌパルボウイルス(CPV)、5)およびイヌコロナウイルス(CCV)のうちの1種または複数を含み、前記バクテリンは、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.Pomona、L.bratislavaおよびBordetella bronchisepticaのうちの1種または複数ならびにこれらのウイルス抗原およびバクテリンの任意の組合せを含む。
【0006】
さらに、イヌ疾患に関してイヌを治療する方法を本明細書では提供し、これは、前記イヌに治療有効量のワクチンを投与することを含み、ここで、前記ワクチンは、ウイルス抗原、バクテリンまたはこれら両方を含み、前記ワクチンを、第1回および第2回用量では皮下で、第3回用量では経口で、1回または複数回の年1回用量では経口で投与する。前記ウイルス抗原は、1)CDウイルス、2)CAV−2、3)CPIウイルス、4)CPV、5)およびCCVのうちの1種または複数を含み、前記バクテリンは、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.Pomona、L.bratislavaおよびBordetella bronchisepticaのうちの1種または複数ならびにこれらのウイルス抗原およびバクテリンの任意の組合せを含む。
【0007】
一実施形態では、ワクチンは、1種もしくは複数の生ウイルス、1種もしくは複数の修飾されている生ウイルス、1種もしくは複数の不活化ウイルスまたはこれらの組合せを含む。
【0008】
一実施形態では、ウイルス抗原は、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルスおよびCPVである。他の実施形態では、これら4種のウイルス抗原を、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaからなるバクテリンと組み合わせる。さらに他の実施形態では、これら4種のウイルス抗原を、Bordetella bronchisepticaからなるバクテリンと組み合わせる。さらに他の実施形態では、これら4種のウイルス抗原を、CCV抗原ならびにLeptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaからなるバクテリンと組み合わせる。
【0009】
治療されるイヌ疾患は、1)CDウイルスが原因のCD;2)CAV−1が原因の感染性イヌ肝炎;3)CAV−2または呼吸器CCVが原因の呼吸器疾患;4)CPIウイルスが原因のCPI;5)CCVまたはCPVが原因の腸炎;6)Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.pomonaまたはL.Bratislavaが原因のレプトスピラ症;および7)Bordetella bronchisepticaが原因の感染性気管気管支炎(「ケンネルコフ」)のうちの1種または複数を含む。
【0010】
一実施形態では、治療される疾患は、1)CDウイルスが原因のCD;2)CAV−1が原因の感染性イヌ肝炎;3)CAV−2が原因の呼吸器疾患;4)CPIウイルスが原因のCPI;5)およびCPVが原因のイヌパルボウイルス腸炎を含む。
【0011】
一実施形態では、第2回用量を、前記第1回用量の約7日以上から約35日以下の後に投与する。さらに具体的な実施形態では、第2回用量を、前記第1回用量の約3週間後に投与する。他の実施形態では、第3回用量を、前記第2回用量の約7日以上から約35日以下の後に投与する。さらに具体的な実施形態では、第3回用量を、前記第2回用量の約3週間後に投与する。さらに他の実施形態では、年1回用量を、前記第1回用量の約1年後に投与する。さらに他の実施形態では、前記年1回用量の後に投与される年1回用量を、直前の年1回用量の約1年後に繰り返し投与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義および略語
測定可能な数値変数に関連して使用される場合、「約」または「ほぼ」は、示されている変数の値および示されている値の実験誤差の範囲内(例えば平均値に関して95%の信頼区間内)または示されている値の10%の範囲内で、いずれにしろより高い変数の値全てを指しているが、ただし、週での時間隔に関して約が使用される場合を除き、この場合には、「約3週間」は17から25日であり、約2から約4週間は10から40日である。
【0013】
「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を高める薬学的に許容できる物質または組成物を意味している。
【0014】
「抗体」は、抗原に対する免疫応答の結果として特異性抗原に結合しうる免疫グロブリン分子を指している。免疫グロブリンは、「定常」領域および「可変」領域を有する「軽」および「重」ポリペプチド鎖からなる血清タンパク質であり、定常領域の組成に基づき、群(例えばIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)に分類されている。
【0015】
「抗原」および「免疫原」は、対象に曝露すると、抗原に特異的な免疫応答を誘発する1種または複数のエピトープ(リニア、コンフォーメーショナルまたはそれら両方)を含む分子を指している。エピトープは、T細胞受容体または特異性抗体に結合する抗原の特異的な部位であり、通常は、約3個のアミノ酸残基から約20個のアミノ酸残基を含む。抗原との用語は、死滅、弱毒化または不活化細菌またはウイルスを指している。抗原との用語はさらに、抗イディオタイプ抗体またはその断片などの抗体を指しており、さらに抗原または抗原決定基(エピトープ)を模倣しうる合成ペプチドミモトープを指している。
【0016】
「賦形剤」は、抗原ではないワクチンの任意の成分を指している。
【0017】
「用量」は、対象に与えられるワクチンまたは免疫原性組成物を指している。「第1回用量」または「初回ワクチン」は、0日目に与えられた組成物などの用量を指している。「第2回用量」または「第3回用量」または「年1回用量」は、第1回用量と同じワクチンまたは免疫原性組成物であってもなくてもよい、第1回用量の後に与えられた組成物の量を指している。
【0018】
対象における「免疫応答」は、抗原に対する体液性免疫応答、細胞性免疫応答または体液性および細胞性免疫応答の展開を指している。「体液性免疫応答」は、抗体により仲介されるものを指している。「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球または他の白血球またはそれら両方により仲介されるものであり、サイトカイン、ケモカインならびに活性化T細胞、白血球またはそれら両方により産生される同様の分子の産生を含む。免疫応答は、当分野で知られている標準的な免疫アッセイおよび中和アッセイを使用して決定することができる。
【0019】
抗原の「免疫学的保護量」または「免疫応答を生じさせるために有効な量」は、受容体において免疫原性応答を誘発するために有効な量である。免疫原性応答は、診断目的または他の試験に関して十分であればよいか、疾患因子への感染が原因の有害な健康作用またはその合併症を含む疾患の徴候または症状を予防するために適していればよい。体液性免疫もしくは細胞仲介免疫またはそれら両方を誘発すればよい。免疫原性組成物に対する動物の免疫原性応答は例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、または野生型株での攻撃の後の徴候および症状の監視を介して直接的に評価することができる一方で、ワクチンがもたらした保護的免疫は、例えば対象の死亡、罹患、温度値、全身状態ならびに健康状態および動作全体などの臨床徴候の減少を測定することにより評価することができる。免疫応答は、限定ではないが、細胞性および/または体液性免疫の誘発を含んでよい。
【0020】
「免疫原性」は、免疫応答の誘発または抗原性を意味している。したがって、免疫原性組成物は、免疫応答を誘発する任意の組成物である。
【0021】
「鼻腔内」は、鼻の内部を意味している。したがって鼻腔内投与は、可能な場合には例えば1滴または複数滴を鼻に入れることにより、鼻で、または鼻経由で対象の体内にワクチンなどの物質を導入することを指している。これは、主に鼻および鼻咽頭粘膜での物質の送達を含む。
【0022】
イベントの後の「N日」、時間の「N」間隔もしくは期間または「M日」はそれぞれ、イベントの後のN日目またはM日目の任意の時間を指している。例えば、第1回ワクチンの投与の後21日目での対象への第2回ワクチンのワクチン接種は、第2回ワクチンを、第1回ワクチンの後21日目の任意の時間に投与することを意味している。この記載は往々にして、第1回および第2回ワクチン接種の間隔または第2回および第3回ワクチン接種の間隔にも当てはまる。
【0023】
「口」または「経口」投与は、口で、または口を介して対象の体内にワクチンなどの物質を導入することを指しており、嚥下もしくは口腔粘膜(例えば舌下または頬吸収)での送達またはそれら両方を含む。
【0024】
「口鼻」投与は、行う場合には、例えば鼻に1滴または複数滴を入れることにより、鼻および口で、または鼻および口を介して対象の体内にワクチンなどの物質を導入することを指している。口鼻投与は、経口および鼻腔内投与に関連する送達方法を含む。
【0025】
「非経口投与」は、消化管を含まない経路で、またはその経路を介して対象の体内にワクチンなどの物質を導入することを指している。非経口投与には、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、皮内投与、腹腔内投与、眼内投与および静脈内投与が含まれる。この開示の目的では、非経口投与は、口、鼻、気管および肺の粘膜組織での物質の送達を主に含む投与経路を除外する。
【0026】
「薬学的に許容できる」とは、正常な医学的判断の範囲内であり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに対象の組織と接触させて使用するために適しており、合理的な便益−リスク比に相応し、その意図した使用に有効である物質を指している。
【0027】
「対象」は、イヌを指している。
【0028】
「TCID50」は、「組織培養感染用量」を指しており、接種細胞培養の所与のバッチの50%を感染させるために必要なウイルスの希釈と定義される。当業者に知られている様々な方法を、TCID50を算出するために使用することができ、この明細書を通して利用されるSpearman−Karber法が含まれる。Spearman−Karber法の記載に関しては、B.W.Mahy & H.O.Kangro、Virology Methods Manual 25〜46(1996)参照。
【0029】
本開示の内容における「治療有効量」は、抗原またはワクチンを投与された対象において、ウイルスまたは細菌などの病原体への感染が原因の有害な健康作用またはその合併症を含む疾患の徴候または症状を防ぐために十分な免疫応答を誘発するだろう抗原またはワクチンの量を指している。体液性免疫もしくは細胞仲介免疫または体液性免疫および細胞仲介免疫の両方を誘発すればよい。ワクチンに対する動物の免疫原性応答は例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、または野生型株での攻撃の後の徴候および症状の監視を介して直接的に評価することができる。ワクチンがもたらした保護的免疫は、例えば対象の死亡、罹患、温度値、全身状態ならびに健康状態および動作全体などの臨床徴候の減少を測定することにより評価することができる。治療に有効なワクチンの量は、使用される特定のウイルスまたは対象の状態に応じて変動し、獣医師であれば決定することができる。
【0030】
「治療する」は、このような用語が適用される障害、状態または疾患を予防すること;またはこのような障害、状態または疾患の1種または複数の症状を予防すること;またはこのような障害、状態または疾患の進行を逆転、緩和または阻害することを指している。
【0031】
「治療」は、前記で定義された「治療する」の行為を指している。
【0032】
「ワクチン」は、本明細書に定義されている抗原を含む組成物を指している。対象へのワクチンの投与は、通常は1種または複数の特定の疾患に対する免疫応答をもたらす。治療に有効なワクチンの量は、使用される特定のウイルスまたはイヌの状態に応じて変動し、獣医師であれば決定することができる。ワクチンは、投与の皮下、経口、口鼻または鼻腔内経路によって対象に直接導入することができる。
【0033】
「VANGUARD(登録商標)Plus5」は、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルスおよびイヌパルボウイルス(CPV)を含む市販のワクチンである。「VANGUARD(登録商標)Plus5L4」は、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPVおよびLeptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaを含む市販のワクチンである。「VANGUARD(登録商標)Plus5L4CV」は、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV、イヌコロナウイルス(CCV)ならびにLeptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaを含む市販のワクチンである。VANGUARD(登録商標)の名称は、登録されており、Pfizer,Incにより所有されている。
【0034】
本発明の説明
本明細書には、動物の罹患率および死亡率を低減し、ペット、獣医師および動物所有者にワクチン投与の高い容易性をもたらすワクチン接種計画が提供されている。動物が高齢である場合、注射を必要としない方法を使用して、ワクチンを投与することが極めて望ましい。さらに、経口ワクチンは、非経口ワクチン接種の後に見られることのある望ましくない副作用をおそらく誘発しにくい。経口ワクチンは、物質を非経口投与(即ち針およびシリンジを介して)することに未習熟の個人が投与することもできるので、ワクチン接種の考えられる回数および疾患からの保護を高める。
【0035】
本発明は、これらに限られないが1)イヌジステンパー(CD)ウイルスが原因のイヌジステンパー(CD);2)イヌアデノウイルス1型(CAV−1)が原因の感染性イヌ肝炎(ICH);3)イヌアデノウイルス2型(CAV−2)が原因の呼吸器疾患;4)イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルスが原因のイヌパラインフルエンザおよび5)イヌパルボウイルス(CPV)が原因のイヌパルボウイルス腸炎を含む毒性ウイルスまたは細菌株が原因の疾患を予防または治療する際の補助としてのワクチンまたは免疫原性組成物をイヌにワクチン接種する方法を提供する。下記に記載の他のイヌ疾患も、本発明により治療することができる。
【0036】
方法は、治療有効量で、対象において免疫応答を誘発しうる組成物の第1回用量、第2回用量および場合によって第3回用量をイヌに投与することを含む。さらに、年1回の追加免疫として第1回用量の約1年後に、投与する。第1回用量は、皮下または経口投与することができる。第2回用量は、第1回ワクチンの投与の約N日後に経口投与する。ここで、Nは、約7以上から約35以下の整数であるが、通常は、約14以上から約28以下の整数である。第1回および第2回用量の間の間隔はさらに、約2から約4週間であってもよく、好ましい間隔は、約3週間である。
【0037】
方法はさらに、第2回用量の投与のM日後に経口投与される、場合による第3回用量を含む。ここで、Mは、約7以上から約35以下の整数であるが、通常は、約14以上から約28以下の整数である。第2回および第3回用量の間の間隔はさらに、約2から約4週間であってもよく、好ましい間隔は、約3週間である。したがって、0日目(第1回用量の投与日)からだと、Mは、約28以上から約56以下までの整数であるが、通常は、約35以上から約49以下までの整数である。第1および第3回用量の間の間隔は、約5から約7週間までであってよく、好ましい間隔は約6週間である。
【0038】
さらに方法は、第1回ワクチンの投与の約1年後に与えられるワクチンの年1回経口投与を含む。通常、この用量は、第1回ワクチンの1周年の約4週間前から約4週間後までに与える。担当の獣医師が、動物の生活様式および曝露の危険性を元に、任意の後続の追加免疫ワクチンの必要性および頻度を決定するはずである。
【0039】
方法は、イヌにおいて免疫応答を誘発しうる任意のワクチンを使用することができる。ワクチンのための投与経路には、皮下、経口、口鼻および鼻腔内が含まれる。第1回ワクチンは、経口または皮下投与されるために適している。第2回、第3回および年1回の用量は、経口投与されるために適している。任意の適切なデバイスを使用して、ワクチンを投与することができるが、これには、シリンジ、ドロッパー、無針注射デバイスなどが含まれる。経口投与では、カニューレを備えたシリンジを使用して、ワクチンの用量をイヌの口内に入れることができる。
【0040】
前記投与スケジュールに加えて、方法はさらに、第1回用量を皮下投与する投与スケジュールを含む。第2回用量は、第1回ワクチンの投与の約N日後に皮下投与する。ここで、Nは、約7以上から約35以下の整数であるが、通常は、約14以上から約28以下の整数である。第1回および第2回用量の間の間隔はさらに、約2から約4週間であってもよく、好ましい間隔は、約3週間である。第3回用量は、第2回用量の投与のM日後に経口投与する。ここで、Mは、約7以上から約35以下の整数であるが、通常は、約14以上から約28以下の整数である。第2回および第3回用量の間の間隔はさらに、約2から約4週間であってもよく、好ましい間隔は、約3週間である。ワクチンの年1回経口投与は、第1回ワクチンの投与の約1年後に与える。通常、この用量は、第1回ワクチンの1周年の約4週間前から約4週間後までに与えられる。担当の獣医師が、動物の生活様式および曝露の危険性を元に、任意の後続の追加免疫ワクチンの必要性および頻度を決定するはずである。この投与スケジュールでは、第1回および第2回用量は、皮下投与に適している。第3回および年1回投与は、経口投与に適している。
【0041】
第1回、第2回、第3回および年1回用量は、同じか、異なるワクチンまたは免疫原性組成物であってよく、それぞれ独立に、1種または複数の抗原を含む。ワクチンは、生または死滅ウイルスおよび死滅細菌株を元にしている。したがって有用なワクチンは、生ウイルスワクチン、修飾された生ウイルスワクチンおよび不活化ウイルスワクチンを単独で、またはそれらの組合せで含む。生および修飾された生ワクチンは、イヌにおいて疾患をもたらさず、非毒性形態で単離されているか、適切な細胞系での連続継代または紫外線もしくは化学的突然変異原への曝露を含む当分野でよく知られている方法を使用して弱毒化されている株を含む。不活化または死滅ワクチンは、ホルマリン、ベータプロプリオラクトン(betapropriolactone)(BPL)、二成分エチレンイミン(BEI)での処理または当業者に知られている他の方法を含む、知られている方法により不活化されている株を含む。
【0042】
ワクチンは、これらに限られないが1)イヌジステンパーウイルスが原因のイヌジステンパー;2)イヌアデノウイルス1型が原因の感染性イヌ肝炎;3)イヌアデノウイルス2型またはイヌ呼吸器コロナウイルスが原因の呼吸器疾患;4)イヌパラインフルエンザウイルスが原因のイヌパラインフルエンザ;5)イヌコロナウイルスまたはイヌパルボウイルスが原因の腸炎;6)leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.pomonaまたはL.Bratislavaが原因のレプトスピラ症;および7)Bordetella bronchisepticaが原因の感染性気管気管支炎(「ケンネルコフ」)を含む疾患に対して保護するか、これらの疾患を治療するためにイヌを免疫化する抗原を含むことができる。適切なワクチンの例には、VANGUARD(登録商標)製品ラインのものが含まれ、これらに限られないがVANGUARD(登録商標)Plus5、VANGUARD(登録商標)Plus5L4およびVANGUARD(登録商標)Plus5L4CVが含まれる。あるワクチンを、他のワクチンと組み合わせて、他の病原体が原因の幅広い様々な疾患に対してイヌを保護することができる多価ワクチン製品を製造することもできる。現在では、イヌワクチンの商業生産、さらに最終使用者も、多価ワクチン製品を好む。
【0043】
修飾された生ウイルスまたは弱毒化ウイルスを含むワクチンでは、治療有効用量は通常、約10TCID50以上から約1010TCID50以下の範囲である。特定のウイルスでは、治療有効用量は通常、次の範囲である:CDウイルスでは、約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;CAV−2では約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPVでは約10TCID50以上から約1010TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;およびCPIウイルスでは約10TCID50以上から約1010TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下;または約10TCID50以上から約10TCID50以下である。不活化ウイルス製剤中のCCVの量は、1用量当たり少なくとも約100相対単位、好ましくは1用量当たり約1000から約4500相対単位の範囲であるべきである。
【0044】
バクテリンを含有するワクチンでは、ワクチン中の各Leptospiral種での治療有効用量は通常、ワクチン1用量当たり約100比濁単位(NU)から約3500NUの範囲、好ましくは1用量当たり約200NUから約2000NUの範囲である。ワクチン中のBordetella bronchisepticaでの治療有効用量は、通常細胞約3×10個以上から約3×1011個以下の範囲;または細胞約3×10個以上から約3×1010個以下の範囲;または細胞約3×10個以上から約3×10個以下の範囲内である。
【0045】
ワクチンの他の成分は、担体、溶媒および希釈剤を含む薬学的に許容できる賦形剤、等張剤、緩衝剤、安定剤、防腐剤、免疫調節剤(例えばインターロイキン、インターフェロンおよび他のサイトカイン)、血管収縮剤、抗菌剤、抗カビ剤などを含むことができる。通常の担体、溶媒および希釈剤には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれる。代表的な等張剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが含まれる。有用な安定剤には、ゼラチン、アルブミンなどが含まれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体」には、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、アジュバント、安定剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤および抗カビ剤、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。本発明の成分と相容性であり、免疫化される対象に対して有害でないという意味において、担体は「許容でき」なければならない。通常、担体は、無菌および発熱物質不含であり、使用される投与方法を元に選択される。ワクチンを含有する薬学的に許容できる担体のための好ましい製剤は、米国(US)農務省または米国以外の国における相当する政府機関により公布された適切な規制で承認された薬学的担体であることは、当業者にはよく知られている。したがって、ワクチンを商業生産するための薬学的に許容される担体は、USまたは外国の適切な政府機関により既に承認されているか、承認されるだろう担体である。
【0047】
ワクチン組成物は、薬学的媒体、賦形剤または媒質として役立つワクチン相容性の薬学的に許容できる(即ち無菌および非毒性)液体、半固体または固体希釈剤を場合により含むこともできる。希釈剤には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれうる。等張剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースなどが含まれうる。安定剤には、アルブミンなどが含まれる。
【0048】
ワクチンをさらに、薬学的に許容できる1種または複数のアジュバントと混合することができる。当分野では、多くのこのようなアジュバントが知られている。代表的なアジュバントには、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントなどのオイルベースのアジュバント、ミコール酸エステルベースのアジュバント(例えば二ミコール酸トレハロース)、細菌性リポ多糖類、ペプチドグリカン(即ちムレイン、ムコペプチドまたはN−Opaca、ムラミールジペプチドもしくはその類似体などの糖タンパク質)、プロテオグリカン(例えばKlebsiella pneumoniaeから抽出)、連鎖球菌製剤(例えばOK432)、BIOSTIM(登録商標)(例えば01K2)、Iscoms(例えば欧州特許出願EP第109942号明細書、EP第180564号明細書およびEP第231039号明細書)、水酸化アルミニウム、サポニン、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン、中性油(例えばミグリオール)、植物油(例えば落花生油)、リポソーム、PLURONIC(登録商標)ポリオールが含まれる。他のアジュバントには、RIBIアジュバント系、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル、コレステロール、水中油型エマルション、油中水型エマルション、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta GA)、SAF−M(Chiron、Emeryville CA)、油中レシチン(例えばAMPHIGEN(登録商標)アジュバント)、サポニン、Quil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals、Inc.Birmingham、AL)または他のサポニンフラクション、モノホスホリル脂質A、Avridine脂質アミンアジュバント、Escherichia coliからの非耐熱性エンテロトキシン(組換え型またはその他)、コレラ毒素またはムラミールジペプチドなどが含まれる。
【0049】
免疫原性組成物はさらに、例えばインターロイキン、インターフェロンまたは他のサイトカインなどの1種または複数の他の免疫調節剤を含むことができる。免疫原性組成物はさらに、ゲンタマイシンおよびマーシオレートを含む抗生物質を含むことができる。
【0050】
ワクチンの用量規模は通常、約1/10mL以上から約5mL以下の範囲である。通常、約1mLの用量を、経口ワクチンでは使用する。各用量は、1種または複数の抗原の治療有効量を含み、これは、イヌの年齢および全身状態、投与経路、抗原の性質ならびに他のファクターに応じて変動しうる。ワクチンの他の成分の量および濃度を調節して、ワクチンの物理的および化学的特性を変えることができ、これは、熟練した専門家であれば容易に決定することができる。例えば、アジュバントは通常、1mL用量のうち、約25μg以上から約1000μg以下を占める。同様に、抗生物質は通常、1mL用量のうち、約1μg以上から約60μg以下を占める。
【0051】
当業者であれば、ワクチンを容易に製剤することができる。ワクチンは、無菌および発熱物質不含で提供される。免疫原性組成物は、投与経路、貯蔵の必要性などに応じて、様々な形態で製造することができる。例えば、免疫原性組成物を、注射可能な使用に適した無菌水溶液または分散液の形態で製造することもできるし、凍結乾燥技術を使用して凍結乾燥形態で製造することもできる。凍結乾燥された免疫原性組成物は使用前に、アジュバントを伴うか伴わない安定化溶液、例えば生理食塩水および/またはHEPES中で再構成することができる。
【0052】
ワクチン接種に適している対象には、約4週間齢以上のイヌが含まれる。したがって、第1回用量を、約4週間齢目にイヌに与え、本明細書に記載の予定表に従い後続の用量を続ける。一定の商業的に調製されたワクチンは、移行抗体干渉の潜在性を元に、投与のタイミングおよび用量数に関する指示を提供している。例えば、VANGUARD(登録商標)Plus5L4(Pfizer Inc)のための製品ラベルは、9週齢未満で第1回ワクチンを受けたイヌは、第2回用量の後、約3週間目に第3回経口投与1ml用量を投与されるべきであることを記載している。
【0053】
次の実施例は、詳述を意図しており、非限定的であり、本発明のいくつかの具体的な実施例を示している。
【実施例1】
【0054】
この試験は、ワクチンを第1回用量では皮下で、次いで第2回および第3回用量では経口で投与した場合に、セロコンバージョン(例えば抗体を有さない状態から、特異性抗原に対して比較的高い濃度の抗体を有する状態へ)をもたらす修飾された生ワクチンの能力を評価した。
【0055】
該当する抗原は、イヌアデノウイルス1型(CAV−1)、イヌパルボウイルス(CPV)およびイヌジステンパーウイルス(CDV)である。CAV−1、CPVまたはCDVに対する抗体を有さなかった試験開始時に6週から9週齢の33匹の子イヌを、それぞれ11匹のイヌからなる3つの治療群に無作為に分けた。治療群T01のイヌには偽薬ワクチンを3回、3週間ごとに与えた。この治療群は、実験的ワクチン接種を介して以外、何ら該当するウイルスに動物が曝露されていないことを保証するために含めた。治療群T02およびT03の動物には、実験ワクチンを第1回は皮下で(0日目)、次いで同じワクチンを経口で3週間後(21日目)および6週間後(42日目)に与えた。T02とT03との唯一の違いは、投与されるワクチン中のウイルスの量であり、T02は、比較的低い用量を受け、T03は、比較的高い用量を受けた。血液試料を毎週採取して、特異性抗体の濃度(例えば力価)を測定した。血清試料を、標準的な手順に従いCDV、CPVおよびCAV1に対する血清抗体に関して分析した。実験計画および研究用動物用製品(IVP)の詳細を表1および2に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
T01の動物は全て、該当する抗原に対する抗体を実質的に含まないままであり、このことは、これらのウイルスに対する環境曝露がなかったことを示していた。T02およびT03の動物は、ワクチンに対して同様に応答し、このことは、用量が応答パターンに著しい影響を及ぼさないことを示していた。抗原に関わらず、実験ワクチンを与えられた動物(T02群およびT03群)は、第1回(皮下投与された)ワクチン用量に対してしっかりと応答した。比較および展望のために、動物がCAV−1では1:16以上、CDVでは1:32以上、CPVでは1:80以上の抗体力価を有する場合には、動物が疾患から保護されていると考える。
【0059】
T02およびT03でそれぞれ1:3499および1:3668の平均力価で、CDV特異性抗体は、第1回ワクチン接種の後28日目にピークになった(図1参照)。皮下ワクチン接種の後のCDV特異性力価の場合には、抗体のこの濃度は、経口投与されたワクチンに対して後で反応する動物の能力を妨害するために十分に高かったかもしれない。CPVに対する特異性抗体は、同様のパターンに従ったが、ピーク抗体力価は、T02のイヌでは、第1回経口ワクチン接種の2週間後に(36日目で1:5702の平均力価)、T03のイヌでは第1回経口ワクチン接種の1週間後に(28日目に1:5613の平均力価)生じた(図2参照)。
【0060】
CDVおよびCPVピーク抗体濃度のタイミングの差により、このパターンは、経口ワクチン接種に対する免疫応答と解釈することができるが、当初の高い抗体力価が再び、解釈を難しくしている。しかしながら、CAV−1に対する特異性抗体は明らかに、この抗原の経口投与に対するしっかりとした免疫応答が存在することを示している(図3参照)。第1回経口ワクチン接種の日である21日目に、T02の動物は、1:5のCAV−1特異性抗体の平均力価を有し、T03の動物は、1:16の平均力価を有した。2週間後に、イヌは、T02およびT03群でそれぞれ1:25および1:118の平均抗体力価を有した。さらにいっそう顕著なことに、第2回経口投与ワクチンの2週間後、56日目に、動物は、T02およびT03でそれぞれ1:83および1:150の平均力価を有した。慣例的に、CAV−1抗体力価は、皮下ワクチン接種が原因の妨害の可能性を低下させたかもしれない他の2種の抗原よりも低い。
【0061】
皮下ワクチン接種の後のCDVおよびCPVに対して特異的な抗体の高い力価が、CDVおよびCPVの経口投与の有効性の明確な解釈を困難にしているが、この試験による結論は、イヌは皮下ワクチン接種、続く経口ワクチン接種に応答してセロコンバージョンしうるということである。二次的な結論は、経口ワクチン接種は、イヌへのワクチン投与の実際的かつ有効でありうる経路であるということである。
【実施例2】
【0062】
この試験は、ワクチンを第1回用量では皮下または経口投与し、次いで第2回および第3回用量では経口投与した場合、セロコンバージョン(例えば抗体を有さない状態から、特異性抗原に対して比較的高い濃度の抗体を有する状態へ)をもたらす修飾された生ワクチンの能力を評価した。
【0063】
イヌアデノウイルス1型(CAV−1)、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌジステンパーウイルス(CDV)またはイヌパラインフルエンザ(CPI)に対する抗体を有さなかった試験開始時に6週齢から10週齢の39匹の子イヌを、それぞれ13匹のイヌからなる3つの治療群に無作為に分けた。治療群T01のイヌには偽薬ワクチンを3回、3週間ごとに経口投与した。この治療群は、実験的ワクチン接種を介して以外、何ら該当するウイルスに動物が曝露されていないことを保証するために含めた。治療群T02の動物には、同じ実験ワクチンを0、21および42日目に経口投与した。治療群T03の動物には、実験ワクチンを0日目に皮下で、次いで同じワクチンを3週間後(21日目)および6週間後(42日目)に経口で投与した。T02とT03との唯一の違いは、T02は第1回用量を経口で受け、T03は第1回用量を皮下で受けたことである。血液試料を毎週採取して、特異性抗体の濃度(例えば力価)を測定した。血清試料を、標準的な手順に従いCDV、CPVおよびCAV−1に対する血清抗体に関して分析した。(CAV−2をワクチン接種された動物はCAV−1と交差反応する抗体を生じた)。CAV−1では1:16以上、CDVでは1:32以上およびCPVでは1:16以上の抗体力価を有する場合に、動物を陽性応答体(即ち疾患から保護されている)とみなした。実験計画および研究用動物用製品(IVP)の詳細を表3および4に示した。
【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
表5に示されているように、T03群(SQ、経口、経口)の動物は全て、63日目までに3種の測定ウイルスに対してセロコンバージョンした。T02群(経口、経口、経口)の動物は全て、63日目までにCPVおよびCAV−1に対してセロコンバージョンした。T02群の動物の約半数が、63日目までにCDVに対してセロコンバージョンしたが、このことは、本製剤への変更が可能であることを示唆している。したがって、これらの結果は、経口投与がワクチン接種のための有効な手法であることを証明している。
【0067】
【表5】

【実施例3】
【0068】
この概念的実験では、イヌジステンパーアデノウイルス2型−パラインフルエンザ−パルボウイルス修飾された生ウイルスワクチンのイヌへの投与を記載している。ラベルの指示に従って、ワクチンの凍結乾燥製剤を、無菌希釈剤で無菌的に再水和させ、十分に振盪する。このようなワクチンの例は、VANGUARD(登録商標)Plus5(Pfizer Inc)である。このワクチンは、樹立イヌ細胞系で増殖させたCDウイルス(約10TCID50)、CAV−2(約10TCID50)、CPIウイルス(約10TCID50)およびCPV(約10TCID50)の弱毒化株を含む。
【0069】
4週間齢以上の健康なイヌに、再構成されたワクチン1mlの第1回用量を経口または皮下で投与する。イヌに、第1回ワクチンの約3週間後に1mlの第2回用量を経口で、続いて第2回用量の約3週間後に第3回経口投与1ml用量を与える。イヌに、第1回ワクチンの約1年後に年1回経口投与1mlの追加免疫ワクチンを与えた。担当の獣医師が、動物のライフスタイルおよび曝露の危険性に基づき、任意の後続の追加免疫ワクチンの必要性および頻度を決定する。
【実施例4】
【0070】
この概念的実施例は、Leptospira Canicola−Grippotyphosa−Icterohaemorrhagiae−Pomonaバクテリンを含むイヌジステンパーアデノウイルス2型−パラインフルエンザ−パルボウイルス修飾された生ウイルスワクチンのイヌへの投与を記載している。ラベルの指示に従って、ワクチンの凍結乾燥製剤を、無菌希釈剤で無菌的に再水和させ、十分に振盪する。このようなワクチンの例は、VANGUARD(登録商標)Plus5L4(Pfizer Inc)である。このワクチンは、凍結乾燥CDウイルス(約10TCID50)、CAV−2(約10TCID50)、CPIウイルス(約10TCID50)、CPV(約10TCID50)製剤の弱毒化株およびL.canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaの不活化全培養を含む。アジュバント付与された無菌ゲルを使用して、凍結乾燥された成分を再水和し、これを、真空の代わりに不活性ガスを使用してパッケージングした。
【0071】
4週間齢以上の健康なイヌに、再構成されたワクチン1mlの第1回用量を経口または皮下で投与する。イヌに、第1回の約3週間後に1mlの第2回用量を経口投与する。9週齢未満の第1回ワクチンを受けたイヌに、第2回用量の約3週間後に第3回経口投与1ml用量を投与する。イヌに、第1回ワクチンの約1年後に年1回経口投与1mlの追加免疫ワクチンを与えた。担当の獣医師が、動物のライフスタイルおよび曝露の危険性に基づき、任意の後続の追加免疫ワクチンの必要性および頻度を決定する。
【実施例5】
【0072】
この概念的実施例は、Leptospira Canicola−Grippotyphosa−Icterohaemorrhagiae−Pomonaバクテリンを含むイヌジステンパーアデノウイルス2型−コロナウイルス−パラインフルエンザ−パルボウイルスワクチンのイヌへの投与を記載している。
【0073】
ラベルの指示に従って、Leptospira Canicola−Grippotyphosa−Icterohaemorrhagiae−Pomonaバクテリンを含む凍結乾燥されたイヌジステンパーアデノウイルス2型−パラインフルエンザ−パルボウイルス修飾された生ウイルスワクチン(例えばVANGUARD(登録商標)Plus5L4、実施例4参照)を、液体コロナウイルスワクチンで無菌的に再水和させ、十分に振盪する。このようなコロナウイルスワクチンの例は、アジュバントを伴う不活化イヌコロナウイルス(CCV)の液体製剤である。VANGUARD(登録商標)Plus5L4とCCVワクチンとの組合せは、PfizerからVANGUARD(登録商標)Plus5L4CVとして販売されている。
【0074】
4週間齢以上の健康なイヌに、再構成されたワクチンの1mlの第1回ワクチンを経口または皮下で投与する。イヌに、第1回ワクチンの約3週間後に組合せワクチンの1mlの第2回用量を経口投与する。イヌに、第2回用量の約3週間後にコロナウイルスワクチンのみ1ml用量を経口投与する。9週齢未満の第1回ワクチンを受けたイヌに、第2回ワクチンの約3週間後に組合せワクチン(コロナウイルスワクチンの代わりに)の第2回経口投与1ml用量を与える。イヌに、初回ワクチンの約1年後に組合せワクチンの年1回経口投与1mlの追加免疫を与える。担当の獣医師が、動物のライフスタイルおよび曝露の危険性に基づき、任意の後続の追加免疫ワクチンの必要性および頻度を決定する。
【実施例6】
【0075】
この概念的実施例は、Bordetella bronchisepticaバクテリンを含むイヌジステンパーアデノウイルス2型−パラインフルエンザ−パルボウイルス修飾された生ウイルスワクチンのイヌへの投与を記載している。ラベルの指示に従って、ワクチンの凍結乾燥製剤を、B.bronchisepticaの不活化全培養を含む液体希釈剤で無菌的に再水和させ、十分に振盪する。このようなワクチンの例は、VANGUARD(登録商標)Plus5(実施例4参照)である。このような希釈剤の例は、B.bronchisepticaの不活化培養の液体製剤である。
【0076】
4週間齢以上の健康なイヌに、再構成されたワクチンの1mlの第1回ワクチンを経口または皮下で投与する。イヌに、第1回ワクチンの約2から約4週間後にワクチンの1mlの第2回用量を経口投与する。4ヶ月齢未満で第1回ワクチンを受けたイヌに、約4ヶ月齢目にワクチンの第3回経口投与1ml用量を与える。イヌに、初回ワクチンの約1年後にワクチンの年1回経口投与1mlの追加免疫を与える。続く経口1mlの追加免疫ワクチンを年1回投与する。ブリーディング、ボーディングおよびショーイング環境などのB.bronchisepticaおよびイヌウイルス曝露がありうる場合には、付加的な追加免疫が指示されることがあるか、年1回再ワクチン接種がこれらのイベントの2から4週間前に設定されるべきである。
【0077】
本明細書および添付の請求項において使用される場合、「a」、「an」および「the」などの単数冠詞は、文脈で他に明確に記載されていない限り、1個の対象または複数の対象を指しうることを特記する。したがって例えば、「(a)化合物」を含む組成物に関する言及は、単一化合物または2種以上の化合物を含みうる。
【0078】
前記の実施例および説明は、詳述を意図しており、制限的ではないことを理解されたい。前記の説明を読めば、当業者には、多くの実施形態が明らかであろう。したがって本発明の範囲は、添付の請求項と共に、このような請求項が権利を有する同等の全範囲により決定されるべきである。
【0079】
本明細書に開示および請求されている方法は全て、本開示を考慮すれば、過度の実験を伴わずに実行することができる。本発明の方法を様々な実施形態で記載したが、本発明の概念、意図および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法およびステップまたはステップの順番に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に記載の薬剤を、化学的および生理学的に関連する一定の薬剤に代えても、同じか類似の結果を達成することができるであろうことは、明らかであろう。当業者には明らかなこのような類似の置換および変更全てを、添付の請求項により定義されている本発明の意図、範囲および概念の範囲内であると考える。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】CDVに対する血清応答(SN)(平均力価)を示すグラフ。治療群T02およびT03の動物に、実験ワクチンを第1回目には皮下で(0日目)、次いで同じワクチンを3週間後(21日目)および6週間後(42日目)に経口で投与した。T02群の動物は、比較的低い用量を受け、T03群の動物は比較的高い用量を受けた。血液試料を毎週採取して、CDVの濃度(例えば力価)を測定した。
【図2】CPVに対する血清応答(SN)(平均力価)を示すグラフ。動物を図1での記載と同様に処置した。血液試料を毎週採取して、CPVの濃度(例えば力価)を測定した。
【図3】CAV−1に対する血清応答(平均力価)を示すグラフ。動物を図1での記載と同様に処置した。血液試料を毎週採取して、CAV−1の濃度(例えば力価)を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ疾患に関してイヌを治療する方法であって、前記イヌに治療有効量のワクチンを投与することを含み、ここで、前記ワクチンは、ウイルス抗原、バクテリンまたはこれら両方を含み、前記ワクチンを、第1回用量では皮下または経口投与で、第2回用量では経口で、場合による第3回用量では経口で、1回または複数回の年1回用量では経口で投与し、前記ウイルス抗原は、1)イヌジステンパー(CD)ウイルス、2)イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、3)イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、4)イヌパルボウイルス(CPV)、5)およびイヌコロナウイルス(CCV)のうちの1種または複数を含み、前記バクテリンは、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.pomona、L.bratislavaおよびBordetella bronchisepticaから選択される1種または複数の細菌およびウイルス抗原とこれらの細菌との任意の組合せを含む方法。
【請求項2】
イヌ疾患に関してイヌを治療する方法であって、前記イヌに治療有効量のワクチンを投与することを含み、ここで、前記ワクチンは、ウイルス抗原、バクテリンまたはこれら両方を含み、前記ワクチンを、第1回および第2回用量では皮下で、第3回用量では経口で、1回または複数回の年1回投与では経口で投与し、前記ウイルス抗原は、1)CDウイルス、2)CAV−2、3)CPIウイルス、4)CPV、5)およびCCVのうちの1種または複数を含み、前記バクテリンは、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.pomona、L.bratislavaおよびBordetella bronchisepticaから選択される1種または複数の細菌およびウイルス抗原とこれらの細菌との任意の組合せを含む方法。
【請求項3】
前記ウイルス抗原が、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルスおよびCPVである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス抗原が、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルスおよびCPVであり、前記バクテリン中の細菌が、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaである請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス抗原が、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPVおよびCCVであり、前記バクテリン中の細菌が、Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.pomonaである請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス抗原が、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルスおよびCPVであり、前記バクテリン中の細菌が、Bordetella bronchisepticaである請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記イヌ疾患が、1)CDウイルスが原因のCD;2)CAV−1が原因の感染性イヌ肝炎;3)CAV−2または呼吸器CCVが原因の呼吸器疾患;4)CPIウイルスが原因のCPI;5)CCVまたはCPVが原因の腸炎;6)Leptospira canicola、L.grippotyphosa、L.icterohaemorrhagiae、L.pomonaまたはL.Bratislavaが原因のレプトスピラ症;および7)Bordetella bronchisepticaが原因の感染性気管気管支炎(「ケンネルコフ」)のうちの1種または複数を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患が、1)CDウイルスが原因のCD;2)CAV−1が原因の感染性イヌ肝炎;3)CAV−2が原因の呼吸器疾患;4)CPIウイルスが原因のCPI;5)およびCPVが原因のイヌパルボウイルス腸炎を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス抗原が、CDウイルスでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;CAV−2では約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPVでは約10TCID50以上から約1010TCID50以下;CPIウイルスでは約10TCID50以上から約1010TCID50以下;およびCCVでは1用量当たり少なくとも約100相対単位(RU)の範囲の量で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス抗原が、CDウイルスでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;CAV−2では約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPVでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPIウイルスでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;およびCCVでは1用量当たり約1000RUから約4500RUの範囲の量で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルス抗原が、CDウイルスでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;CAV−2では約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPVでは約10TCID50以上から約10TCID50以下;CPIウイルスでは約10TCID50以上から約10TCID50以下の範囲の量で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
各Leptospiraが、ワクチン1用量当たり約100比濁単位(NU)から約3500NUの範囲の量で存在し、前記Bordetella bronchisepticaが細胞約3×10個以上から約3×1011個以下の範囲で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
各Leptospiraが、1用量当たり約200NUから約2000NUの範囲の量で存在し、前記Bordetella bronchisepticaが細胞約3×10個以上から約3×1010個以下の範囲で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記Bordetella bronchisepticaが細胞約3×10個以上から約3×10個以下の範囲で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記第2回用量を、前記第1回用量の7日以上から35日以下の後に投与する請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記第2回用量を、前記第1回用量の約3週間後に投与する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3回用量を、前記第2回用量の7日以上から35日以下の後に投与する請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記第3回用量を、前記第2回用量の約3週間後に投与する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記年1回用量を、前記第1回用量の約1年後に投与する請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記年1回用量の後に投与される年1回用量を、直前の年1回用量の約1年後に繰り返し投与する請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−169207(P2008−169207A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−326969(P2007−326969)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】