説明

ワクチン送達組成物および使用法

本発明は、ヒトおよび他の哺乳動物における様々な病原生物および腫瘍細胞に対する免疫応答を刺激するための、ポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)、およびポリエステル尿素(PEU)ポリマーに基づく合成ワクチン送達組成物を提供する。ワクチン送達組成物は、生物または腫瘍細胞タンパク質由来のクラスIまたはクラスII抗原ペプチドを含むポリマー粒子または分子の分散液として製剤化され、これは哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれ哺乳動物において免疫応答を誘導する。本発明の組成物において病原生物または腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般には免疫原性組成物、特にMHC対立遺伝子に結合するワクチン送達組成物に関する。
【0002】
関連出願
本出願は§35 U.S.C. 119(e)の下に以下の仮出願からの優先権を主張する:2005年2月1日提出の第60/649,289号;2005年6月8日提出の第60/689,003号;2005年12月2日提出の第60/742,188号;2005年12月7日提出の第60/748,486号;2005年9月22日提出の第60/719,950号;2005年6月3日提出の第60/687,570号;2006年1月13日提出の第60/759,179号。
【背景技術】
【0003】
背景情報
ワクチンの開発および投与においては著しい進歩が遂げられているが、ワクチン製剤の有効性および安全性を増強する代替アプローチはまだ研究中である。組換えタンパク質、合成ペプチド、および多糖-ペプチド結合体などのサブユニットワクチンが新規ワクチン候補として現れつつある。しかし、弱毒病原体および不活化全微生物からなる伝統的ワクチンは、これらのサブユニットワクチンにはない、アジュバントとして作用することができる不純物および細菌成分を含む。したがって、単独型製剤として送達される高純度サブユニットワクチンの有効性は、強力なアジュバントの添加を必要とすることになる。
【0004】
現在のところ、アルミニウム化合物が米国で唯一のヒトワクチン用にFDA認可されたアジュバントである。安全性記録は良好であるが、これらは比較的弱いアジュバントで、防御免疫に関連する抗体レベルを誘発するには複数の投与法を必要とすることが多い。したがって、アルミニウム化合物はサブユニットワクチンへの防御免疫応答誘導のためには理想的なアジュバントではないと考えられる。多くの候補アジュバントが現在研究中であるが、これらはヒトにおける毒性や抗原を取り込むための洗練された技術の必要性を含むいくつかの欠点がある。
【0005】
ワクチンにおけるペプチド抗原の使用は、哺乳動物および他の動物における免疫系、特に主要組織適合複合体(MHC)の操作の知識に基づいている。MHC分子は体内のほとんどの細胞によって合成され、提示される。MHCは特定の型のT細胞(例えば、細胞障害性T細胞)と協調的にはたらいて、体から「非自己」または外来ウイルスタンパク質を除去する。T細胞上の抗原受容体は、結合したペプチドおよびそれに隣接する溝を構成するアルファヘリックスの一部のモザイクであるエピトープを認識する。外来タンパク質の切断によりペプチド断片を生成した後、MHC分子がペプチド断片を提示することにより、抗原限定細胞障害性T細胞が「非自己」または外来ウイルスタンパク質を発現する細胞を探査することが可能となる。機能性T細胞は、T細胞が特異的である結合ペプチド抗原を含むMHC分子を認識した後、細胞障害性免疫応答を示すことになる。
【0006】
外来性抗原は体外の細胞からの抗原である。例には、細菌、遊離ウイルス、酵母、原生動物、および毒素が含まれる。これらの外来性抗原は、食作用を通じて抗原提示細胞すなわちAPC(マクロファージ、樹状細胞、およびB-リンパ球)に入る。微生物は飲み込まれ、タンパク質抗原がプロテアーゼによって一連のペプチドに分解される。これらのペプチドは最終的にMHC-II分子の溝に結合し、APCの表面へと輸送される。次いで、T4-リンパ球はそれらのT細胞受容体(TCR)およびCD4分子によりペプチド/MHC-II複合体を認識することができる。MHCクラスIIのAPCによって提示されるペプチドは約10から約30アミノ酸、例えば、約12から約24アミノ酸の長さである(Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59(非特許文献1))。活性化T4-リンパ球の効果器機能には、B細胞による抗体の産生およびマクロファージの殺微生物活性が含まれ、これらは細胞外または貪食された微生物が破壊される主なメカニズムである。
【0007】
ウイルス、細胞内細菌、および癌に対する体の主な防御の一つは、内因性感染細胞および腫瘍細胞の細胞障害性T-リンパ球すなわちCTLによる破壊である。これらのCTLは、細胞性免疫におけるT8-リンパ球由来の効果器細胞である。しかし、CTLになるためには、先天性T8-リンパ球はAPCによって産生されるサイトカインによって活性化されなければならない。このAPCと先天性T8-リンパ球との間の相互作用は主にリンパ節、リンパ小節、および脾臓で起こる。このプロセスは、感染細胞、腫瘍細胞、および死滅した感染および腫瘍細胞の残留物を飲み込み、分解する、樹状細胞およびマクロファージを含む。この様式で、罹患細胞からの内因性抗原はAPCに入ることができ、ここでプロテアーゼおよびペプチダーゼがタンパク質を約8から約10、おそらくは約8から約11、または約8から約12アミノ酸の長さの一連のペプチドに切断すると考えられる。ペプチドが結合したMHCクラスI分子はAPCの表面に現れ、そこで相補的形状のTCRおよびCD8分子を有する先天性T8-リンパ球によって認識されうる。このTCRによるペプチドエピトープの認識は、先天性T8-リンパ球を細胞性免疫機能について活性化するための第一のシグナルとして役立つ。一つの細胞はその表面上にエピトープが結合したMHC-I分子を250,000個も有すると考えられる。
【0008】
したがって、MHCクラスIおよびクラスII対立遺伝子によって特定される病原微生物に対する個人の免疫応答を誘導するための、不活化病原体ではなくペプチド抗原を用いた新しく、よりよいワクチン送達組成物およびそれらの使用法が、当技術分野においてまだ必要とされている。
【0009】
【非特許文献1】Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、特定のポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)(PEUR)、およびポリ(エステル尿素)(PEU)ポリマーなどのポリマー鎖中にアミノ酸を含む生分解性ポリマーを用いて、ヒトおよび他の動物における様々な病原生物に対する免疫応答を刺激するための、完全に合成的で、したがって生成が容易なワクチン送達組成物を製剤化しうるという前提に基づいている。
【0011】
したがって、一つの態様において、本発明は、モノマーあたり少なくとも一つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも一つの型のアミノ酸を含む生分解性ポリマー分子または粒子内に分散した、5から約30アミノ酸を含む少なくとも一つのMHCクラスIまたはクラスIIペプチド抗原の有効量を含む、ワクチン送達組成物を提供する。
【0012】
もう一つの態様において、本発明は、5から約30アミノ酸を含む少なくとも一つのMHCクラスIまたはクラスIIペプチド抗原の有効量に結合したポリマー粒子または分子の分散液の形で投与するために製剤化したワクチン送達組成物であって、生分解性PEAは構造式(I)で記載される構造式を有するか、

式中、nは約5から約150の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より独立に選択され;

またはPEAポリマーは構造式IIIで記載される化学式を有する組成物を提供する:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から0.9の範囲であり:pは約0.9から0.1の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせからなる群より独立に選択される。
【0013】
もう一つの態様において、ポリマーは構造式(IV)で記載される化学式を有するPEURポリマー:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片;およびその組み合わせからなる群より選択され、かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択され;
または一般構造式(V)で記載される化学式を有するPEURポリマーである:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から約0.9の範囲であり:pは約0.9から約0.1の範囲であり;R2は水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、または保護基から独立に選択され;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片ならびにその組み合わせからなる群より選択され;かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和治療的ジオールの残基の有効量、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0014】
さらにもう一つの態様において、ポリマーは一般構造式(VI)で記載される化学式を有する生分解性PEUポリマー:

式中、nは約10から約150であり;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基;または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立に選択され;
または構造式(VII)で記載される化学式を有するPEUである:

式中、mは約0.1から約1.0であり;pは約0.9から約0.1であり;nは約10から約150であり;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルまたは(C6-C10)アリールであり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4はそれぞれ(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基;構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0015】
さらにもう一つの態様において、本発明は哺乳動物において免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に本発明のワクチン送達組成物を、クラスIまたはクラスIIペプチド抗原の有効量に結合している、構造式IおよびIII〜VIIで記載されるポリマーの粒子または分子の分散液の形で投与することによる方法を提供する。この組成物は哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれて、哺乳動物において免疫応答を誘導する。
【0016】
さらにもう一つの態様において、本発明はワクチンを哺乳動物に送達する方法であって、哺乳動物に本発明のワクチン送達組成物を、クラスIまたはクラスIIペプチド抗原に結合している、構造式IおよびIII〜VIIで記載されるポリマーの粒子または分子の分散液の形で投与することによる方法を提供する。この組成物は哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれて、哺乳動物にクラスIまたはクラスIIペプチド抗原を送達する。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、モノマーあたり少なくとも一つのアミノ酸を含む生分解性ポリマーを用いて、大量に再生可能で、安全(弱毒ウイルスを含まない)、安定、かつ輸送および保存のために凍結乾燥可能な、皮下もしくは筋肉内注射または粘膜投与用の合成ワクチン送達組成物を製造しうるとの発見に基づいている。用いるポリマーの構造特性により、ワクチン送達組成物はコピー数および局所密度が高い抗原を提供する。
【0018】
ポリマーは、異なる特性を有するワクチン送達組成物に製剤化することができる。一つの態様において、ポリマーは、ペプチド抗原を放出する徐放性ポリマーデポーとして作用し、抗原-ポリマー断片はAPCによって取り込まれ、ポリマーデポーがインビボで生分解されるとMHCクラスIまたはクラスII対立遺伝子によって提示される。他の態様において、ポリマーはペプチド抗原のAPC内への担体として作用し、ペプチド抗原は細胞内で提示のために放出される。ポリマーは実際はポリマー-抗原結合体の食作用を誘導することにより、APCを刺激すると考えられる。
【0019】
さらにもう一つの態様において、本発明は、哺乳動物において免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に本発明のワクチン送達組成物の有効量を投与することによる方法を提供し、この組成物は哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれて、哺乳動物において免疫応答を誘導する。
【0020】
ヒトの治療に加えて、本発明のワクチン送達組成物は、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、およびフェレット)、家畜(例えば、ブタ、ウマ、ラバ、乳牛および肉牛)および競走馬などの、様々な哺乳動物患者の獣医学的治療における使用も意図される。
【0021】
直接送達されるか、またはインビボポリマーデポーから放出される、ポリマー粒子またはポリマー分子は、抗原提示細胞(APC)によって容易に取り込まれるようなサイズに調節され、ポリマー粒子中に分散した、またはポリマー分子上の官能基に結合したペプチド抗原、および任意にアジュバントを含む。APCはペプチド抗原をMHC複合体を介して提示し、細胞障害性T細胞などのT細胞によって認識されて内因性免疫応答を発生および増強し、対応する、または類似の抗原を有する病原細胞の破壊を引き起こす。本発明のワクチン送達組成物において用いるポリマーは、ポリマーデポー、分子および粒子の生分解の速度を調節して、ペプチド抗原が抗原提示細胞と選択した期間持続的に接触するよう設計することができる。例えば、典型的には、ポリマーデポーは約24時間、約7日間、約30日間、もしくは約90日間、またはそれ以上から選択される期間にわたって分解することになる。適当な免疫応答を得るためにワクチンを繰り返し注射する必要のない、植え込み可能なワクチン送達組成物を提供するために、より長い期間が特に適している。
【0022】
本発明は、粘膜により伝播される病原体を含む、様々な病原体に対する免疫応答を誘発するために、生分解性ポリマーによる送達技術を用いる。組成物は、抗原がそれ自体弱い免疫原性である場合でさえ、激しい免疫応答を提供する。本明細書に記載のワクチン送達組成物の個々の成分および方法は公知であったが、そのような組み合わせが抗原の効率を、成分を別々に用いた場合に得られるレベルを超えて増強すると思われること、およびさらにいくつかの場合にはワクチン送達組成物を調製する際に用いるポリマーによって追加のアジュバントの必要性がなくなると思われることは予想外かつ驚くことであった。
【0023】
本発明は、前述の病原体のいずれかに対する免疫応答を提供するために広く適用することができるが、本明細書においてはインフルエンザウイルスおよびHIVに言及することにより本発明を例示する。
【0024】
本発明の方法は、細胞性免疫、および/または液性抗体応答を提供する。したがって、本発明の方法は、抗体、ヘルパーT細胞活性およびT細胞の細胞障害活性を誘導しうるウイルス、細菌、真菌および寄生生物病原体由来の抗原を含む、細胞性および/または液性免疫応答が望まれる任意の抗原と共に使用されることになる。したがって、本明細書において用いられる「免疫応答」とは、用いるペプチド抗原に特異的な抗体の産生、ヘルパーT細胞活性またはT細胞の細胞障害活性を意味する。そのような抗原には、ヒトおよび動物病原体によりコードされるものが含まれるが、それらに限定されるわけではなく、構造または非構造タンパク質、多糖-ペプチド結合体、またはDNAのいずれかに対応しうる。
【0025】
例えば、本発明は、HSV-1およびHSV-2糖タンパク質gB、gDおよびgHなどの単純疱疹ウイルス(HSV)1型および2型由来のタンパク質;水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)およびCMV gBおよびgHを含むサイトメガロウイルス(CMV)由来の抗原;ならびにHHV6およびHHV7などの他のヒト疱疹ウイルス由来の抗原を含む、疱疹ウイルスファミリーからの広範なタンパク質に対する免疫応答を刺激するために使用されることになる。(例えば、サイトメガロウイルスのタンパク質コード成分の総説については、Chee et al., Cytomegaloviruses (J. K. McDougall, ed., Springer-Verlag 1990) pp. 125-169;様々なHSV-1コードタンパク質の議論については、McGeoch et al., J. Gen. Virol. (1988) 69:1531-1574;HSV-1およびHSV-2 gBおよびgDタンパク質ならびにそれらをコードする遺伝子の議論については、米国特許第5,171,568号;EBVゲノムにおけるタンパク質コード配列の同定については、Baer et al., Nature (1984) 310:207-211;およびVZVの総説については、Davison and Scott, J. Gen. Virol. (1986) 67:1759-1816参照されたい。)
【0026】
A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む、肝炎ウイルスファミリーからの抗原は、本明細書に記載の技術において都合よく用いることもできる。例として、HCVのウイルスゲノム配列は、配列を得るための方法と同じく公知である。例えば、国際公開公報第89/04669号;同第90/11089号;および同第90/14436号を参照されたい。HCVゲノムは、E1(Eとしても知られている)およびE2(E2/NSIとしても知られている)ならびにN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と呼ぶ)を含むいくつかのウイルスタンパク質をコードする(E1およびE2を含むHCVタンパク質の議論については、Houghton et al., Hepatology (1991) 14:381-388参照)。これらのタンパク質、ならびにその抗原断片はそれぞれ、本発明の方法において使用されることになる。同様に、HDVからのδ抗原の配列も公知で(例えば、米国特許第5,378,814号参照)、この抗原も本発明の方法において都合よく用いることができる。加えて、コア抗原、表面抗原、sAg、ならびに前表面配列、pre-S1およびpre-S2(以前はpre-Sと呼ばれていた)、ならびにsAg/pre-S1、sAg/pre-S2、sAg/pre-S1/pre-S2、およびpre-S1/pre-S2などの前述の組み合わせなどのHBV由来の抗原も、本明細書において使用されることになる。例えば、HBV構造の議論については、"HBV Vaccines-from the laboratory to license: a case study" in Mackett, M. and Williamson, J. D., Human Vaccines and Vaccination, pp. 159-176;ならびに米国特許第4,722,840号、第5,098,704号、第5,324,513号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる);Beames et al., J. Virol. (1995) 69:6833-6838, Birnbaum et al., J. Virol. (1990) 64:3319-3330;およびZhou et al., J. Virol. (1991) 65:5457-5464を参照されたい。
【0027】
特にピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリチウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、おたふくかぜウイルス、はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスA、BおよびC型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えば、単離ウイルスHIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMNからの抗原を含むが、それらに限定されるわけではない、HTLV-I;HTLV-II;HIV-I(HTLV-III LAV、ARV、hTLRなどとしても知られている));HIV-1CM235、HIV-1US4;HIV-2;サル免疫不全症候群ウイルス(SIV)のメンバーからのタンパク質などであるが、それらに限定されるわけではない、他のウイルス由来の抗原も本発明の方法において使用されることになる。加えて、抗原はヒトパピローマウイルス(HPV)およびダニ媒介性脳炎ウイルス由来であってもよい。これらおよび他のウイルスの記載については、例えば、Virology, 3rd Edition (W. K. Joklik ed. 1988);Fundamental Virology, 2nd Edition (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds. 1991)を参照されたい。
【0028】
特に、HIVの様々な遺伝子サブタイプのメンバーを含む、前述のHIV単離ウイルスのいずれかからのエンベロープタンパク質が公知で、報告されており(様々なHIV単離ウイルスのエンベロープ配列の比較については、例えば、Myers et al., Los Alamos Database, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, N.Mex. (1992);Myers et al., Human Retroviruses and Aids, 1990, Los Alamos, N.Mex.: Los Alamos National Laboratory;およびModrow et al., J. Virol. (1987) 61:570-578を参照されたい)、これらの単離ウイルスのいずれか由来の抗原は本発明の方法において使用されることになる。具体的には、gp120のV3ループ由来で、配列RIQRGPGRAFVTIGK(SEQ ID NO:1)を有する、合成ペプチド、R15K(Nehete et al. Antiviral Res. (2002) 56:233-251)は、本発明の組成物および方法において用いられることになる。さらに、本発明は、gp160およびgp41などの様々なエンベロープタンパク質、p24gagおよびp55gagなどのgag抗原、ならびにpol領域由来のタンパク質のいずれかを含む、様々なHIV単離ウイルスのいずれか由来の他の免疫原性タンパク質にも同等に適用可能である。さらに、ポリマー-ペプチド結合体の複数のエピトープカクテルを、HIVタンパク質からの様々なエピトープを用いて構想することもできる。例えば、gp120およびgp41からの6つの保存ペプチドがウイルス量を減少させ、アカゲザル/SHIVモデルにおいて伝播を防止することが明らかにされている:

(Nehete et al. Vaccine (2001) 20:813-)。本発明の組成物および方法において出願者らが試験した抗原のアミノ酸配列はIFPGKRTIVAGQRGR(SEQ ID NO:8)であり、ここですべてのアミノ酸は天然、L-アミノ酸である。
【0029】
前述のとおり、インフルエンザウイルスは本発明が特に有用であると思われるウイルスのもう一つの例である。具体的には、A型インフルエンザのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、核タンパク質と同様、免疫応答を生成するために特に興味深い。A型インフルエンザの多くのHAサブタイプが同定されている(Kawaoka et al., Virology (1990) 12:759-767;Webster et al., "Antigenic variation among type A influenza viruses," p. 127-168. In: P. Palese and D. W. Kingsbury (ed.), Genetics of influenza viruses. Springer-Verlag, New York)。したがって、これらの単離ウイルスのいずれか由来のタンパク質は、本明細書に記載の免疫化技術において用いることもできる。特に、HAの保存13アミノ酸配列を本発明のワクチン送達組成物および方法において用いることができる。現行のワクチン製剤で用いられるH3株において、このアミノ酸配列はPRYVKQNTLKLAT(SEQ ID NO:9)、およびH5株においては、主にPKYVKSNRLVLAT(SEQ ID NO:10)である。
【0030】
本明細書に記載の方法は、髄膜炎菌A、BおよびC、B型インフルエンザ菌(HIB)、ならびにピロリ菌を含むが、それらに限定されるわけではない、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎を引き起こす生物、および他の病原生物由来のものなどの、多くの細菌抗原と共に使用されることにもなる。寄生生物抗原の例には、マラリアおよびライム病の原因となる生物由来のものが含まれる。
【0031】
さらに、本明細書に記載の方法は、様々な悪性癌を治療する手段も提供する。例えば、本発明の組成物は、活性化癌遺伝子、胎児抗原、または活性化マーカーなどの問題の癌に特異的な特定のタンパク質に対する液性および細胞性免疫応答の両方を開始するために用いることもできる。そのような腫瘍抗原には特に、MAGE 1、2、3、4、などを含む様々なMAGE(黒色腫関連抗原E)のいずれか(Boon, T. Scientific American (March 1993):82-89);様々なチロシナーゼのいずれか;MART 1(T細胞によって認識される黒色腫抗原)、突然変異体ras;突然変異体p53;p97黒色腫抗原;CEA(癌胎児抗原)が含まれる。本発明の組成物および組成物において有用な他の黒色腫ペプチド抗原には下記が含まれる:

*GP100は黒色腫関連ME20抗原とも呼ばれる。
【0032】
本発明を広範な疾患を予防または治療するために用いうることは容易に明らかとなる。
【0033】
本発明のワクチン送達組成物中のポリマー内に分散したペプチド抗原は任意の適当な長さを有することができるが、ペプチド制限Tリンパ球によって認識される8から約30アミノ酸のペプチド抗原セグメントを組み込んでもよい。具体的には、対応するクラスIペプチド制限細胞障害性T細胞によって認識されるペプチド抗原セグメントは、8から約12アミノ酸、例えば、9から約11アミノ酸を含み、対応するクラスIIペプチド制限ヘルパーT細胞によって認識されるペプチド抗原セグメントは、8から約30アミノ酸、例えば、約12から約24アミノ酸を含む。
【0034】
自然のT細胞性免疫はMHC分子(APCの表面上の)によるペプチドエピトープの提示を介してはたらくが、MHCはペプチド付加物、特にグリコール-ペプチドおよび脂肪-ペプチドを提示することができ、ここでペプチド部分がMHCによって保持されて糖または脂質部分をT細胞に提示する。いくつかの腫瘍は糖誘導体化タンパク質または脂肪誘導体化タンパク質を過剰発現し、これらの糖または脂肪誘導体化ペプチド断片は、いくつかの場合には、強力なT細胞エピトープでありうるため、前述の考えは癌ワクチン学において特に適切である。さらに、そのようなT細胞エピトープの脂質は糖脂質でありうる。
【0035】
通常のペプチド単独提示とは異なり、これらの場合にはT細胞認識はペプチド上の糖または脂質基が主体であり、そういうわけでMHCに高い親和性で結合するが、腫瘍タンパク質由来ではなく、さらに腫瘍関連糖または脂質分子が合成的に共有結合している、短い合成ペプチドがペプチド抗原としてうまく用いられている。天然の腫瘍細胞系統に対する人工的T細胞エピトープ構築に対するこのアプローチは、最近Franco et al., J. Exp. Med (2004) 199(5):707-716により採用された。したがって、合成ペプチド誘導体、およびペプチド様物質でさえも、本発明のワクチン送達組成物中のペプチド抗原と置き換わって、ペプチド側鎖および非ペプチド抗原をT細胞に提示するためのプラットフォームを形成する高親和性MHC結合リガンドとして作用することができる。
【0036】
したがって、本明細書において用いられる「ペプチド抗原」なる用語は、ペプチド、全体的にペプチド誘導体(分枝ペプチドなど)およびペプチドの共有結合ヘテロ(糖-および脂肪-および糖脂肪-など)誘導体を意味する。特異的抗体または特異的Tリンパ球によって特に結合されるそのような材料の断片を含むことも意図される。
【0037】
ペプチド抗原は、当技術分野において公知の任意の技術を用いて合成することができる。ペプチド抗原は、「ペプチド様物質」も含みうる。ペプチド類縁体は、鋳型ペプチドと類似の特性を有する非ペプチド生物活性薬剤として、製薬産業において一般に用いられている。これらの型の非ペプチド化合物は「ペプチド様物質(peptide mimetics)」または「ペプチド様物質(peptidomimetics)」と呼ばれる。Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392;およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem., 30:1229;通常はコンピューター分子モデリングによって開発される。一般に、ペプチド様物質は典型的ポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似であるが、当技術分野において公知で、下記の参照文献にさらに記載されている方法により、--CH2NH--、--CH2S--、CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群より選択される結合で任意に置き換えられた一つまたは複数のペプチドを有する:Spatola, A.F. in "Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins," B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983);Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, "Peptide Backbone Modifications"(一般的総説);Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp. 463-468(一般的総説);Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185(--CH2NH--、CH2CH2--);Spatola, A.F. et al., Life Sci., (1986) 38:1243-1249(--CH2-S--);Harm, M. M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314(--CH=CH--、シスおよびトランス);Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem., (1980) 23:2533(--COCH2--);Jennings-Whie, C. et al., Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533(--COCH2--);Szelke, M. et al., European Appln., EP 45665 (1982) CA:97:39405 (1982)(--CH(OH)CH2--);Holladay, M. W. et al., Tetrahedron Lett., (1983) 24:4401-4404(--C(OH)CH2--);およびHruby, V.J., Life Sci., (1982) 31:189-199(-CH2-S-)。そのようなペプチド様物質は、例えば、より経済的な製造、より高い安定性、薬理特性増強(半減期、吸収、効力、有効性など)、特異性変更(例えば、広域生物活性)、抗原性低下などを含む、ポリペプチド態様に比べて有意な利点を有すると考えられる。
【0038】
加えて、ペプチド内の一つまたは複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なペプチドおよび内因性プロテアーゼに抵抗性のペプチドを生成してもよい。または、例えば、生分解性ポリマーに共有結合している合成ペプチド抗原をD-アミノ酸から調製することもでき、これらはインベルソペプチドと呼ばれる。ペプチドが天然ペプチド配列の反対方向に配列される場合、これはレトロペプチドと呼ばれる。一般に、D-アミノ酸から調製したペプチドは酵素加水分解に対して非常に安定である。レトロ-インベルソまたは部分的レトロ-インベルソペプチドについて生物活性が保存されている多くの例が報告されている(米国特許第6,261,569 B1およびその中の引用文献;B. Fromme et al., Endocrinology (2003) 144:3262-3269。
【0039】
後に哺乳動物被験者に投与するために、選択したペプチド抗原を、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで生分解性ポリマーと結合させる。本発明のワクチン送達組成物は、静脈内、粘膜、筋肉内、または皮下送達のために調製することができる。例えば、本明細書に記載の方法において有用なポリマーには、本明細書に記載のPEA、PEURおよびPEUポリマーが含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらのポリマーは様々な分子量で作成することができ、所与の抗原と共に用いるための適当な分子量は当業者によって容易に決定される。したがって、例えば、適当な分子量は約5,000から約300,000、例えば、約5,000から約250,000、または約75,000から約200,000、または約100,000から約150,000程度であると思われる。
【0040】
いくつかの態様において、ポリマー組成物自体によるペプチドの持続性、保護、およびAPC内への送達は、アジュバント活性を提供するのに十分であると考えられる。他の態様において、本発明のワクチン送達組成物は、可溶性タンパク質抗原に対する免疫応答、特に細胞性免疫応答を、抗原の送達を増大する、サイトカイン産生を刺激する、および/または抗原提示細胞を刺激することにより増強することができるアジュバントを含んでいてもよい。アジュバントは、それをペプチド抗原と共にポリマー基質中に分散することにより、例えば、アジュバントを抗原に結合させることにより、投与することができる。または、アジュバントは本発明のワクチン送達組成物と同時に、例えば、同じ組成物中または別の組成物中で投与することもできる。例えば、アジュバントは本発明のワクチン送達組成物の前または後に投与することもできる。さらにまたは、アジュバントもしくはアジュバント/ペプチド抗原は同時送達のために本明細書に記載のポリマーに化学結合させることもできる。そのようなアジュバントには下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:(1)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);(2)例えば(a)Model 110Yミクロ流体化装置(Microfluidics, Newton, Mass.)などのミクロ流体化装置を用いてミクロン未満の粒子に製剤化した、5%スクアレン、0.5%登録商標トゥイーン80、および0.5%スパン85を含み、任意に様々な量のMTP-PBを含む、MF59(国際公開公報第90/14837)、(b)ミクロン未満の乳濁液にミクロ流体化したか、またはより大きい粒径の乳濁液を生成するためにボルテックスにかけた、10%スクアレン、0.4%登録商標トゥイーン80、5%プルロニック-ブロックポリマーL121、およびthr-MDPを含む、SAF、および(c)2%スクアレン、0.2%登録商標トゥイーン80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群より一つまたは複数の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(登録商標Detox)を含む、登録商標Ribiアジュバント組成物(RAS)(Ribi Immunochem, Hamilton, Mont.)などの水中油乳濁液製剤(ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁成分などの他の特定の免疫刺激剤を含む、または含まない);(3)登録商標Stimulon(Cambridge Bioscience, Worcester, Mass.)などのサポニンアジュバントを用いてもよく、またはISCOM(免疫刺激複合体)などのそれらから生成した粒子;(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)インターロイキン(IL-1、IL-2など)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;(6)コレラトキシン(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌熱不安定毒素(LT)などの細菌ADP-リボシル化トキシンの解毒変異体、特にLT-K63(63位の野生型アミノ酸がリジンで置換されている)LT-R72(72位の野生型アミノ酸がアルギニンで置換されている)、CT-S109(109位の野生型アミノ酸がセリンで置換されている)、およびPT-K9/G129(9位の野生型アミノ酸がリジンで置換され、129位がグリシンで置換されている)(例えば、国際公開公報第93/13202号および同第92/19265号参照);および(7)細胞性および液性免疫応答を増強するための、サポニンの精製型であるQS21およびリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体である3D-モノホスホリルリピドA(MPL)(Moore, et al., Vaccine. 1999 Jun 4;17(20-21):2517-27)。組成物の有効性を増強するために、免疫刺激剤として作用する他の物質も用いることができる。
【0041】
本発明の実施における使用に適したポリマーは、ペプチド抗原、アジュバント、または抗原-アジュバント結合体のポリマーへの容易な共有結合を可能にする官能基を有する。例えば、カルボキシル基を有するポリマーはアミノ部分と容易に反応し、それにより得られるアミド基を介してペプチドをポリマーに共有結合することができる。本明細書に記載するとおり、生分解性ポリマーおよびペプチドまたはアジュバントは、ペプチド抗原および/またはアジュバントを生分解性ポリマーに共有結合させるために用いることができる多くの相補的官能基を含みうる。
【0042】
本発明のワクチン送達組成物中のポリマーは、ペプチド抗原および任意のアジュバントを注射部位で、個人の免疫細胞がペプチド抗原および任意のアジュバントと相互作用して免疫プロセスを行うことを可能にするのに十分な時間保持することにより、植え込み部位での内因性免疫プロセスにおいて活発な役割を果たす一方で、ポリマーの生分解中にそのような薬剤を含む粒子またはポリマー分子をゆっくり放出する。脆弱な生物学的ペプチド抗原をよりゆっくり生分解するポリマーによって保護して、抗原の半減期および持続性を増大させる。
【0043】
ポリマー自体は、ポリマー-抗原組成物の食作用を刺激することにより、抗原のAPCへの送達においても活発な役割を有すると考えられる。加えて、本明細書において開示するポリマー(例えば、構造式(IおよびIII〜VIII)を有するものは、酵素分解後、細胞に栄養供給する必須アミノ酸を提供する一方、他の分解産物は脂肪酸および糖類が代謝される様式で代謝されうる。抗原を含むポリマーの取り込みは安全で、試験によりAPCは生存し、正常に機能し、ポリマー分解産物を代謝/排出しうることが明らかにされている。これらのポリマーおよびワクチン送達組成物は、したがって、注射自体による外傷以外は、被験者にとって注射部位および全身の両方で実質的に非炎症性である。さらに、APCによるポリマーの能動的取り込みの場合、ポリマーは抗原のアジュバントとして作用することもあり、したがってアジュバントを別に製剤化する不可欠な必要性はない。
【0044】
本発明の生体適合性ワクチン送達組成物を生成する際に有用な生分解性ポリマーには、モノマーあたり少なくとも一つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも一つのアミノ酸を含むものが含まれる。本明細書において用いられる「非アミノ酸部分」なる用語は様々な化学部分を含むが、特に本明細書に記載のアミノ酸誘導体およびペプチド様物質を除外する。加えて、少なくとも一つのアミノ酸を含むポリマーは、特に記載がないかぎり、天然ポリペプチドを含むポリアミノ酸セグメントを含むことは企図されていない。一つの態様において、モノマー中の非アミノ酸は二つの隣接するアミノ酸の間にある。もう一つの態様において、非アミノ酸部分は疎水性である。ポリマーはブロックコポリマーであってもよい。
【0045】
本発明の組成物および方法において用いるために好ましいのは、主鎖上に組込み官能基を有するポリエステルアミド(PEA)およびポリエステルウレタン(PEUR)で、これらの組込み官能基は他の化学物質と反応し、追加の官能基を組み込んでPEAまたはPEURの官能基をさらに拡大することができる。したがって、本発明の方法において用いるそのようなポリマーは、水溶性を高めるための親水性構造を有する他の化学物質、ならびにペプチド抗原、アジュバント、および他の薬剤と、あらかじめ改変する必要なしに、容易に反応する。
【0046】
加えて、本発明のワクチン送達組成物において用いるポリマーは、食塩水(PBS)媒質中で試験した場合、加水分解を示さないが、キモトリプシンすなわちCTなどの酵素水溶液中では、均質な侵食挙動が観察されている。
【0047】
一つの態様において、ポリマーは構造式(I)で記載される化学式を有するPEA:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より独立に選択され;

または構造式IIIで記載される化学式を有するPEAポリマーである:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から0.9の範囲であり:pは約0.9から0.1の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせからなる群より独立に選択される。
【0048】
もう一つの態様において、ポリマーは構造式(IV)で記載される化学式を有するPEURポリマーである:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片;およびその組み合わせからなる群より選択され、かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0049】
もう一つの態様において、ポリマーは一般構造式(V)で記載される化学構造を有するPEURである:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から約0.9の範囲であり:pは約0.9から約0.1の範囲であり;R2は水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、または保護基から独立に選択され;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片ならびにその組み合わせからなる群より選択され;かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和治療的ジオールの残基の有効量、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0050】
さらにもう一つの態様において、ポリマーは一般構造式(VI)で記載される化学式を有する生分解性PEUポリマーである:

式中、nは約10から約150であり;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基;または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立に選択される。
【0051】
さらにもう一つの態様において、ポリマーは構造式(VII)で記載される化学式を有するPEUである:

式中、mは約0.1から約1.0であり;pは約0.9から約0.1であり;nは約10から約150であり;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルまたは(C6-C10)アリールであり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4はそれぞれ(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基;構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0052】
例えば、本発明の粒子送達組成物において用いるPEAポリマーの一つの代替態様において、少なくとも一つのR1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基であり、かつR4は一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。もう一つの代替態様において、PEAポリマーにおけるR1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'--(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基のいずれかである。さらにもう一つの代替態様において、PEAポリマーにおいてR1は残基1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)などのα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸または4,4'-(アジポイルジオキシ)二ケイ皮酸であり、かつR4はDASなどの一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0053】
もう一つの態様において、ポリマーは構造式(IV)で記載される化学式を有するPEUR:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群より選択され:かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和治療的ジオールの残基の有効量、およびその組み合わせから独立に選択され;
または一般構造式(V)で記載される化学構造を有するPEURポリマーである:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から約0.9の範囲であり:pは約0.9から約0.1の範囲であり;R2は水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、または保護基から独立に選択され;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群より選択され;かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択される。
【0054】
PEURポリマーの一つの代替態様において、R4の少なくとも一つは1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(式(II))の二環式断片であり;またはR6は1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。PEURポリマーのさらなる代替態様において、R4および/またはR6は1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0055】
さらにもう一つの態様において、本発明の粒子送達組成物におけるポリマーは一般構造式(VI)で記載される化学式を有するPEUポリマー:

式中、nは約10から約150であり;個々のnモノマーにおけるR3はそれぞれ水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基の有効量;または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立に選択され;
または構造式(VII)で記載される化学式を有するPEUである:

式中、mは約0.1から約1.0であり;pは約0.9から約0.1であり;nは約10から約150であり;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリールまたは他の保護基であり;かつ個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、-(CH2)3-および-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基の有効量;または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立に選択される。
【0056】
本発明の実施における使用に適した保護基には、当技術分野において公知のt-ブチルおよび他の保護基が含まれる。適当な1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片は、D-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールなどの糖アルコール由来でありうる。例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(イソソルビド、DAS)は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片として用いるために特に適している。
【0057】
これらのPEUポリマーは、様々な薬学的および生物学的活性薬剤をヒトおよび他の哺乳動物に送達するための、本発明のワクチン送達組成物を調製するために有用な高分子量ポリマーとして作成することができる。本発明のPEUは、ポリマー鎖中に加水分解により切断可能なエステル基およびα-アミノ酸を含む非毒性天然モノマーを組み込む。PEUの最終生分解産物はα-アミノ酸(生物学的であろうとなかろうと)、ジオール、およびCO2である。PEAおよびPEURとは対照的に、本発明のPEUは結晶または半結晶であり、完全に合成的製剤を可能にする有利な機械的、化学的および生分解特性を有し、したがって結晶および半結晶ポリマー粒子、例えばナノ粒子を製造するのが容易である。
【0058】
例えば、本発明のワクチン送達組成物において用いるPEUポリマーは高い機械的強度を有し、PEUポリマーの表面侵食は生理的条件で存在する、加水分解酵素などの酵素によって触媒されうる。
【0059】
PEUポリマーの一つの代替態様において、少なくとも一つのR1は1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0060】
本発明の実施における使用に適した保護基には、当技術分野において公知のt-ブチルおよび他の保護基が含まれる。適当な1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片は、D-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールなどの糖アルコール由来でありうる。例えば、ジアンヒドロソルビトールは1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片として用いるために特に適している。
【0061】
一つの代替態様において、少なくとも一つのnモノマーにおけるR3はCH2Phであり、合成に用いるα-アミノ酸はL-フェニルアラニンである。モノマー中のR3が-CH2-CH(CH3)2である代替態様において、ポリマーはα-アミノ酸、ロイシンを含む。R3を変えることにより、他のα-アミノ酸、例えば、グリシン(R3が-Hである場合)、プロリン(R3がエチレンアミドである場合);アラニン(R3が-CH3である場合)、バリン(R3が-CH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3が-CH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3が-CH2-C6H5である場合);リジン(R3が-(CH2)4-NH2である場合);またはメチオニン(R3が-(CH2)2S(CH3)である場合)を用いることもできる。
【0062】
ポリマーが式IまたはIII〜VIIのPEA、PEURまたはPEUであるさらなる態様において、R3の少なくとも一つはさらに-(CH2)3-であることができ、R3の少なくとも一つは環化して下記の構造式で記載される化学構造を形成する:

【0063】
R3が-(CH2)3である場合、ピロリジン-2-カルボン酸(プロリン)に類似のα-イミノ酸を用いる。
【0064】
PEA、PEURおよびPEUは、実質的に酵素作用により生分解する生分解性ポリマーであり、したがって分散されたペプチド抗原および任意のアジュバントを経時的に放出する。用いるポリマーの構造的特性によって、本発明のワクチン送達組成物はペプチド抗原および任意のアジュバントを安定に負荷する一方で、その三次元構造を保存し、したがって生物活性を保存する。
【0065】
本明細書において用いられる「アミノ酸」および「α-アミノ酸」なる用語は、アミノ基、カルボキシル基および本明細書において定義するR3基などの側鎖R基を含む化合物を意味する。本明細書において用いられる「生物学的α-アミノ酸」なる用語は、合成に用いるアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、またはその混合物から選択されることを意味する。
【0066】
本発明を実施する際に有用なPEA、PEURおよびPEUポリマーにおいて、一つのポリマー分子中で複数の異なるα-アミノ酸を用いることができる。これらのポリマーは反復単位ごとに少なくとも2つの異なるアミノ酸を含んでいてもよく、一つのポリマー分子は分子のサイズに応じてポリマー分子中に複数の異なるα-アミノ酸を含んでいてもよい。一つの代替態様において、本発明のポリマーの作成において用いるα-アミノ酸の少なくとも一つは生物学的α-アミノ酸である。
【0067】
例えば、R3がCH2Phである場合、合成に用いる生物学的α-アミノ酸はL-フェニルアラニンである。R3がCH2-CH(CH3)2である代替態様において、ポリマーは生物学的α-アミノ酸、L-ロイシンを含む。本明細書に記載のコモノマー中のR3を変えることにより、他の生物学的α-アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHである場合)、アラニン(R3がCH3である場合)、バリン(R3がCH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3がCH2-C6H5である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2S(CH3)である場合)、およびその混合物を用いることもできる。2-ピロリジンカルボン酸(プロリン)におけるようなR3が-(CH2)3-である場合、生物学的α-イミノ酸を用いることができる。さらにもう一つの代替態様において、本発明のワクチン送達組成物優に含まれる様々なα-アミノ酸はすべて、本明細書に記載の生物学的α-アミノ酸である。
【0068】
ポリマー分子はリンカーを介してそれに結合されている、または分子間のクロスリンカーに組み込まれているペプチド抗原を有していてもよい。例えば、一つの態様において、ポリマーは構造式VIIIを有するポリマー-抗原結合体に含まれる:

式中、n、m、p、R1、R3、およびR4は前述のとおりであり、R5は-O-、-S-、および-NR8-からなる群より選択され、ここでR8はHまたは(C1-C8)アルキルであり;かつR7はペプチド抗原である。
【0069】
さらにもう一つの態様において、構造式(IX)のポリマーの二分子を架橋して-R5-R7-R5-結合体を提供することができる。もう一つの態様において、下記の構造式IXに示すとおり、ペプチド抗原は構造式IVの一つのポリマー分子の二つの部分に-R5-R7-R5-結合体を通じて共有結合し、R5は-O-、-S-、および-NR8-からなる群より独立に選択され、ここでR8はHまたは(C1-C8)アルキルであり;かつR7はペプチド抗原である。

【0070】
または、下記の構造式(X)に示すとおり、リンカー、-X-Y-、を構造式(VIII)の分子中のR5とペプチド抗原R7との間に挿入することができ、ここでXは(C1-C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3-C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、N、およびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5-6員複素環系、置換複素環、(C2-C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1-C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1-C4)アルキル、-S(C1-C6)アルキル、-S[(=O)(C1-C6)アルキル]、-S[(O2)(C1-C6)アルキル]、-C[(=O)(C1-C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1-C6)アルキル]、-S(O2)[N(R9R10)]、-NH[(C=O)(C1-C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)、-N(R9R10)の群より選択され;ここでR9およびR10は独立にHまたは(C1-C6)アルキルであり;かつYは-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-NR8-、-C(=O)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NR8C(=O)-、-C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-、および-NR8C(=S)NR8-からなる群より選択される。

【0071】
もう一つの態様において、一つのペプチド抗原の二つの部分は-R5-R7-Y-X-R5-架橋を通じて生物活性薬剤に共有結合する(式XI):

式中、Xは(C1-C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3-C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、N、およびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5-6員複素環系、置換複素環、(C2-C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、(C6-C10)アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1-C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1-C6)アルキル、-S(C1-C6)アルキル、-S[(=O)(C1-C6)アルキル]、-S[(O2)(C1-C6)アルキル]、-C[(=O)(C1-C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1-C6)アルキル]、-S(O2)[N(R9R10)]、-NH[(C=O)(C1-C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)(ここでR9およびR10は独立にHまたは(C1-C6)アルキルである)、および-N(R11R12)(ここでR11およびR12は(C2-C20)アルキレンおよび(C2-C20)アルケニレンから独立に選択される)からなる群より選択される。
【0072】
さらにもう一つの態様において、ワクチン送達組成物は4分子のポリマーを含むが、4分子のうちの2分子だけはR7を持たず、架橋して一つの-R5-X-R5-結合体を提供する。
【0073】
「アリール」なる用語は、本明細書における構造式に関して、フェニル基または少なくとも一つの環が芳香族である、約9から10個の環原子を有するオルト縮合二環式炭素環基を示すために用いる。特定の態様において、一つまたは複数の環原子は一つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換することができる。アリールの例には、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0074】
「アルケニレン」なる用語は、本明細書における構造式に関して、主鎖または側鎖に少なくとも一つの不飽和結合を含む、二価分枝または非分枝炭化水素鎖を意味するために用いる。
【0075】
本明細書において用いられる「治療的ジオール」とは、合成的に生成されようと、天然(例えば、内因性)であろうと、ヒトなどの哺乳動物に投与した場合、治療的または対症的様式でその哺乳動物個体の生物学的プロセスに影響をおよぼす、任意のジオール分子を意味する。
【0076】
本明細書において用いられる「治療的ジオールの残基」なる用語は、本明細書に記載の治療的ジオールの一部を意味し、この部分はジオールの2個のヒドロキシル基は除外する。その「残基」を含む対応する治療的ジオールをポリマー組成物の合成において用いる。治療的ジオールの残基は、組成物を作成するために選択したPEA、PEURまたはPEUポリマーの特性(これらの特性は当技術分野において公知で、本明細書に記載のとおりである)に応じて制御された様式での生分解によりポリマーの主鎖から放出された後、インビボで(またはpH、水性媒質などの類似の条件下で)対応するジオールに再構成される。
【0077】
本発明の組成物において用いるPEA、PEURおよびPEUポリマーは汎用性であるため、ポリマー主鎖中に組み込まれる治療的ジオールの量は、ポリマーの構築ブロックの比率を変えることによって制御することができる。例えば、PEAの組成に応じて、17β-エストラジオールの40重量%までの負荷を達成することができる。17β-エストラジオールの様々な負荷比を有する三つの異なる規則的直鎖PEAを以下のスキーム1に例示する:
「ホモポリ」-ビス-Leu-エストラジオールアジペート(ポリマー上に40重量%エストラジオール)

コポリマー:Leu(ED)3Lys(OEt)Adip4、38重量%エストラジオール負荷

【0078】
同様に、PEURおよびPEUへの治療的ジオールの負荷も、ポリマーの複数の構築ブロックの量を変えることにより変動させることができる。
【0079】
加えて、4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンドロステンジオール)などのテストステロンまたはコレステロールに基づく合成ステロイド性ジオールは、本発明のPEAおよびPEURポリマーの主鎖に組み込むのに適している。さらに、本発明のワクチン送達組成物の調製において用いるのに適した治療的ジオール化合物には、例えば、アミカシン;アンホテリシンB;アピサイクリン;アプラマイシン;アルベカシン;アジダムフェニコール;バンベルマイシン;ブチロシン;カルボマイシン;セフピラミド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;クリンダマイシン;クロモサイクリン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エリスロマイシン;フォーチミシン;ゲンタマイシン;グルコスルホン ソラスルホン;グアメサイクリン;イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;ライムサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パロマイシン;ピパサイクリン;ポドフィリニック酸2-エチルヒドラジン;プリマイシン;リボスタマイシン;リファミド;リファンピン;ラファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;テイコプラニン;テトラサイクリン;チアンフェニコール;テイオストレプトン;トブラマイシン;トロスペクトマイシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルブセンソマイシン;ライムサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パラモマイシン;ピパサイクリン;ポドフィリニック酸2-エチルヒドラジン;プリイシン;リボスタマイジン;リファミド;リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトン;オトブラマイシン;トロスペクトマイシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン;メパルチシン;マイスタチン;オリゴマイシン;エリマイシンA;ツベルシジン;6-アザウリジン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシタジン;ブレオマイシン カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン;クロモムシン;ドキシフルリジン;エノシタビン;エピルビシン;ゲムシタビン;マンノムスチン;メノガリル;アトルバシ プラバスタチン;クラリスロマイシン;ロイプロリン;パクリタキセル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;プレドニムスチン;プロマイシン;ラニムスチン;ツベルシジン;ビネシン;ゾルビシン;クメタロール;ジクマロール;ビスクマセタートエチル;エチリジンジクマロール;イロプロスト;タプロステン;チオクロマロール;アミプリロース;ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;サリチルアルコール;ブロモサリゲニン;ジタゾール;フェプラジノール;ゲンチシン酸;グルカメタシン;オルサラジン;S-アデノシルメチオニン;アジスロマイシン;サルメテロール;ブデソニド;アルブテアル;インジナビル;フルバスタチン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;ペントスタチン;メトキサントロン;シタラビン;フルダラビンホスファート;フロキシウリジン;クラドリイン;カペシタビエン;ドセタキセル;エトポシド;トポテカン;ビンブラスチン;テニポシドなどが含まれる。治療的ジオールは飽和または不飽和ジオールのいずれかであるように選択することができる。
【0080】
本明細書における分子量および多分散性をポリスチレン標準を用いてのゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により調べる。特に、数および重量平均分子量(MnおよびMw)を、例えば、高圧液体クロマトグラフィポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を備えたModel 510ゲル浸透クロマトグラフィ(Water Associates, Inc., Milford, MA)を用いて調べる。テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離剤として用いる(1.0mL/分)。狭い分子量分布を有するポリスチレンまたはポリ(メタクリル酸メチル)標準を較正用に用いた。
【0081】
本明細書において用いられる「アミノ酸」および「α-アミノ酸」なる用語は、アミノ基、カルボキシル基および本明細書において定義するR3基などの側鎖R基を含む化合物を意味する。本明細書において用いられる「生物学的α-アミノ酸」なる用語は、合成に用いるアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、またはその混合物から選択されることを意味する。
【0082】
一般式中にα-アミノ酸を含む構造式(I)および(III〜VII)のポリマーの製造法は当技術分野において公知である。例えば、R4がα-アミノ酸に組み込まれている構造式(I)のポリマーの態様について、ポリマー合成のために、例えば、側鎖R3を含むα-アミノ酸をジオールHO-R4-OHと縮合することにより、側鎖R3を有するα-アミノ酸をエステル化を通してビス-α,ω-ジアミンに変換することができる。その結果、反応性α,ω-アミノ基を有するジエステルモノマーが生じる。次いで、ビス-α,ω-ジアミンはセバシン酸などの二酸、またはそのビス-活性エステル、もしくはビス-塩化アシルとの重縮合反応に入り、エステルとアミド結合の両方を有する最終ポリマー(PEA)を得る。または、PEURについては、二酸の代わりに、R6は上で定義されており、R13は独立にニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシの一つまたは複数で置換されていてもよい(C6-C10)アリールである、式(XII)のジカルボン酸誘導体を用いる。

【0083】
特に、

かつ/または(b)R4は-CH2-CH=CH-CH2-である、上で開示した構造式(I)の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステル-アミド)(UPEA)の合成を記載する。(a)が存在し、(b)が存在しない場合、(I)におけるR4は-C4H8-または-C6H12-である。(a)が存在せず、(b)が存在する場合、(I)におけるR1は-C4H8-または-C8H16-である。
【0084】
UPEAは(1)R4中に少なくとも一つの二重結合を含むビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステル、または(2)R4中に二重結合を含まないビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と不飽和ジカルボン酸のジニトロフェニルエステル、または(3)R4中に少なくとも一つの二重結合を含むビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と不飽和ジカルボン酸のジニトロフェニルエステルのいずれかの溶液重縮合により調製することができる。
【0085】
p-トルエンスルホン酸の塩は、アミノ酸残基を含むポリマーを合成する際に使用されることが公知である。ビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルのアリールスルホン酸塩は再結晶を通じて容易に精製され、後処理の間、アミノ基を非反応性のアンモニウムトシラートとするため、遊離塩基の代わりにアリールスルホン酸塩を用いる。重縮合反応において、求核性のアミノ基はトリエチルアミンなどの有機塩基の添加を通して容易に現れ、したがってポリマー生成物が高収率で得られる。
【0086】
不飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルは、p-ニトロフェノールおよび不飽和ジカルボン酸塩化物から、例えば、トリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールをアセトン中に溶解し、不飽和ジカルボン酸塩化物を-78℃で撹拌しながら滴下し、水に注いで生成物を沈澱させることにより合成することができる。この目的に適した酸塩化物には、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、エテニル-ブタン二酸および2-プロペニル-ブタン二酸塩化物が含まれる。
【0087】
ビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルのジアリールスルホン酸塩は、トルエン中のアルファ-アミノ酸、p-アリールスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸一水和物)、および飽和または不飽和ジオールを混合し、水の発生が最小になるまで加熱還流し、次いで冷却することにより、調製することができる。この目的のために有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。ジカルボン酸の飽和ジ-p-ニトロフェニルエステルおよびビス(アルファ-アミノ酸)ジエステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538 B1号に記載のとおりに調製することができる。
【0088】
上で開示した構造式(I)の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステル-アミド)(UPEA)の合成をここで記載する。構造式(I)を有するUPEAは、米国特許第6,503,538号の(III)のR4および/または第6,503,538号の(V)のR1が前述の(C2-C20)アルケニレンである以外は、米国特許第6,503,538 B1号の化合物(VII)と類似の様式で調製することができる。反応は、例えば、無水トリエチルアミンを無水N,N-ジメチルアセトアミド中の前記第6,503,538号の(III)および(IV)ならびに前記第6,503,538号の(V)の混合物中に室温で加え、次いで温度を80℃まで上げて16時間撹拌し、次いで反応溶液を室温まで冷却し、エタノールで希釈し、水に注ぎ、ポリマーを分離し、分離したポリマーを水で洗浄し、減圧下、約30℃で乾燥し、次いでp-ニトロフェノールおよびp-トルエンスルホン酸塩についての試験結果が陰性となるまで精製することにより実施する。好ましい反応物(IV)はリジンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩で、ベンジルエステル保護基を好ましくは(II)から除去して生分解性を付与するが、水素化分解は所望の二重結合を飽和すると思われるため、これは米国特許第6,503,538号の実施例22のように水素化分解によって除去すべきではなく、それよりもベンジルエステル基を不飽和を保存すると思われる方法により酸基に変換すべきである。または、リジン反応物(IV)を、最終生成物において不飽和を保護しながら容易に除去することができる、ベンジル以外の保護基で保護することもでき、例えば、リジン反応物をt-ブチルで保護することもでき(すなわち、反応物はリジンのt-ブチルエステルでありうる)、t-ブチルは生成物(II)を酸で処理することにより、不飽和を保存しつつHに変換することができる。
【0089】
構造式(I)を有する化合物の実用例は、第6,503,538号の実施例1における(III)をビス(L-フェニルアラニン)2-ブテン-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩で置換することにより、または第6,503,538号の実施例1における(V)をフマル酸ジ-p-ニトロフェニルで置換することにより、または第6,503,538号の実施例1におけるIIIをL-フェニルアラニン2-ブテン-1,3-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩で置換することにより、また第6,503,538号の実施例1における(V)をフマル酸デ-p-ニトロフェニルで置換することにより提供される。
【0090】
構造式(I)または(III)のいずれかを有する不飽和化合物において、以下があてはまる:アミノキシル基、例えば、4-アミノTEMPOを、縮合剤としてカルボニルジイミダゾールまたは適当なカルボジイミドを用いて結合することができる。本明細書に記載のペプチド抗原、アジュバントおよびペプチド抗原/アジュバント結合体を、二重結合官能基を介して結合することができる。ポリ(エチレングリコール)ジアクリラートに結合することにより親水性を付与することができる。
【0091】
さらにもう一つの局面において、本発明のワクチン送達系の生成における使用が企図されるポリマーには、米国特許第5,516,881号;第6,476,204号;第6,503,538号;ならびに米国特許出願第10/096,435号;第10/101,408号;第10/143,572号;および第10/194,965号に示されるものが含まれ;これらそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
生分解性PEA、PEURおよびPEUポリマーおよびコポリマーは、モノマーあたり2個までのアミノ酸、ポリマー分子あたり複数のアミノ酸を含んでいてもよく、好ましくは10,000から125,000の範囲の重量平均分子量を有し;これらのポリマーおよびコポリマーは典型的には、標準的粘度測定法により測定して、25℃で0.3から4.0の範囲、例えば、0.5から3.5の範囲の固有の粘度を有する。
【0093】
本発明の実施における使用が企図されるポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法によって合成することができる。例えば、トリブチルスズ(IV)触媒はポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを生成するために一般的に用いられる。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを生成するために、広範な触媒を用いうることが理解される。
【0094】
本発明の実施における使用が企図されるPEAおよびPEURポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法によって合成することができる。例えば、トリブチルスズ(IV)触媒はポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを生成するために一般的に用いられる。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを生成するために、広範な触媒を用いうることが理解される。
【0095】
そのような使用が企図されるポリ(カプロラクトン)は下記の例示的構造式(XIII)を有する:

【0096】
使用が企図されるポリ(グリコリド)は下記の例示的構造式(XIV)を有する:

【0097】
使用が企図されるポリ(ラクチド)は下記の例示的構造式(XV)を有する:

【0098】
アミノキシル部分を含む適当なポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的合成を以下に示す。第一段階は、構造式(XVI)のポリマーを生成するための、第一スズオクトアートを触媒として用い、ベンジルアルコール存在下でのラクチドとε-カプロラクトンとの重合を含む。

【0099】
次いで、ヒドロキシ末端ポリマー鎖を無水マレイン酸でキャップして、構造式(XVII)を有するポリマーを生成する:

【0100】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシをカルボキシル末端基と反応させて、4-アミノ基とカルボン酸末端基との間の反応により生じるアミド結合を介してアミノキシル部分をコポリマーに共有結合させることができる。または、マレイン酸キャップコポリマーにポリアクリル酸を接木して、後にさらなるアミノキシル基を結合するための追加のカルボン酸部分を提供することもできる。
【0101】
PEUのための構造式(VII)を有する不飽和化合物において、以下があてはまる:アミノ置換アミノキシル(N-オキシド)基を有する基、例えば、4-アミノTEMPOを、縮合剤としてカルボニルジイミダゾールまたは適当なカルボジイミドを用いて結合することができる。本明細書に記載の追加の生物活性薬剤を、二重結合を介して任意に結合することができる。
【0102】
例えば、構造式(VI)を有する本発明の高分子量半結晶PEUを、下記の反応スキーム(2)に示すとおり、クロロホルム/水系においてビス-求電子モノマーとしてホスゲンを用いることにより層間で調製することができる。

【0103】
L-リジンエステルを含み、構造式(VII)を有するコポリ(エステル尿素)(PEU)の合成を類似のスキーム(3)によって実施することができる:

【0104】
例えば、トルエン中ホスゲン(ClCOCl)(高毒性)の20%溶液(市販されている(Fluka Chemie, GMBH, Buchs, Switzerland)をジホスゲン(クロロギ酸トリクロロメチル)またはトリホスゲン(ビス(トリクロロメチル)カーボネート)のいずれかで置き換えることができる。ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンの代わりに毒性の低いカルボニルジイミダゾールをビス-求電子モノマーとして用いることもできる。
【0105】
PEU合成の一般法
高分子量のPEUを得るためには、モノマーの冷却溶液を用いる必要がある。例えば、水150ml中のビス(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液に、無水炭酸ナトリウムを加え、室温で約30分間撹拌し、約2〜0℃に冷却して第一溶液を生成する。並行して、クロロホルム中のホスゲンの第二溶液を約15〜10℃に冷却する。第一溶液を層間重縮合のための反応器に入れ、第二溶液を一度に速やかに加え、約15分間激しく撹拌する。次いで、クロロホルム層を分離し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過することができる。得られた溶液をさらなる使用のために保存することができる。
【0106】
作成したすべての例示的PEUポリマーはクロロホルム溶液として得、これらの溶液は保存中安定である。しかし、いくつかのポリマー、例えば、1-Phe-4は分離後クロロホルムに不溶となる。この問題を克服するために、ポリマーを平滑な疎水性表面上にキャストし、クロロホルムを蒸発乾固させることにより、クロロホルム溶液から分離することができる。得られたPEUのそれ以上の精製は必要ない。この方法によって得られる例示的PEUの収率および特徴づけを、本明細書の表1にまとめている。
【0107】
多孔性PEU調製の一般法
一般式中にα-アミノ酸を含むPEUポリマーの調製法を記載する。例えば、式(I)または(II)のポリマーの態様のために、α-アミノ酸をビス-(α-アミノ酸)-α,ω-ジオール-ジエステルモノマーに、例えば、α-アミノ酸をジオールHO-R1-OHと縮合することにより変換することができる。その結果、エステル結合が形成される。次いで、炭酸の酸塩化物(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン)がビス-(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩との重縮合反応に入り、エステルおよび尿素結合の両方を有する最終ポリマーを得る。
【0108】
不飽和PEUを、R1に少なくとも一つの二重結合を含む、ビス-(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の層間溶液縮合により調製することができる。この目的のために有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。不飽和モノマーを反応前にアルカリ性水溶液、例えば、水酸化ナトリウム溶液に溶解することができる。次いで、水溶液を、等モル量の単量体、二量体または三量体ホスゲンを含む有機溶媒層、例えば、クロロホルムと共に、外部冷却下で激しく撹拌することができる。発熱反応が速やかに進行し、(ほとんどの場合)有機溶媒中に溶解したままのポリマーを得る。有機層を水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させことができる。約75%〜85%の収率の不飽和PEUを減圧下、例えば、約45℃で乾燥することができる。
【0109】
多孔性で、強い材料である、1-L-Leu-4および1-L-Leu-6などのL-Leuを基本とするPEUを、下記の一般法を用いて作成することができる。そのような方法は、L-Pheを基本とするPEUに適用すると、多孔性で、強い材料の生成において成功率が低くなる。
【0110】
層間重縮合の直後に得られる、クロロホルム中のPEUの反応溶液または乳濁液(約100mL)を、ガラスビーカー、好ましくはビーカー壁へのPEUの付着を減らすためにジメチルジクロルシランで疎水性としたビーカー中の約80℃〜85℃の水1,000mLに撹拌しながら滴下する。ポリマー溶液を水中で小さい液滴に分散させ、クロロホルムをやや激しく蒸発させる。クロロホルムが蒸発するにつれ、徐々に、小さい液滴は一緒になって緻密なタール様の塊になり、これは粘着性のゴム様生成物に変換される。このゴム様生成物をビーカーから取り出し、疎水性化した円柱状ガラス試験管に入れ、これを約24時間サーモスタットで約80℃に制御する。次いで、試験管をサーモスタットから取り出し、室温まで冷却し、割ってポリマーを得る。得られた多孔性の棒を減圧乾燥器に入れ、約80℃で約24時間減圧乾燥する。加えて、多孔性ポリマー材料を得るために当技術分野において公知の任意の方法も用いることができる。
【0111】
前述の方法により調製した高分子量多孔性PEUの特性は表1にまとめる結果となった。
【0112】
(表1) 式(VI)および(VII)のPEUポリマーの特性

*一般式(VI)のPEUで、
1-L-Leu-4:R4=(CH2)4、R3=i-C4H9
1-L-Leu-6:R4=(CH2)6、R3=i-C4H9
1-L-Phe-6:R4=(CH2)6、R3=-CH2-C6H5
1-L-Leu-DAS:R4=1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、R3=i-C4H
a)粘性低下をDMF中25℃、濃度0.5g/dLで測定した。
b)GPC測定をDMF、(PMMA)中で実施した。
c)DSC測定からの第二の加熱曲線から得たTg(加熱速度10℃/分)
d)GPC測定をDMAc、(PS)中で実施した。
【0113】
例示的合成PEUの引張り強さを測定し、結果を表2にまとめている。引張り強さの測定はダンベル型PEUフィルム(4×1.6cm)を用いて行った。このフィルムはクロロホルム溶液からキャストした平均厚さ0.125mmのもので、Nexygen FMソフトウェア(Amtek, Largo, FL)を用いるPCを組み込んだ引張り強さ測定器(Chatillon TDC200)上、クロスヘッド速度60mm/分で、引張り試験にかけた。本明細書において示す例は以下の機械的特性を有すると予想することができる:
1. 約30℃から約90℃の範囲、例えば、約35℃から約70℃の範囲のガラス転移温度;
2. 平均厚さ約1.6cmのポリマーのフィルムは、約20Mpaから約150Mpa、例えば、約25Mpaから約60Mpaの降伏時の引張り応力を有する;
3. 平均厚さ約1.6cmのポリマーのフィルムは、約10%から約200%、例えば、約50%から約150%の伸びパーセントを有する;および
4. 平均厚さ約1.6cmのポリマーのフィルムは、約500MPaから約2000MPaの範囲のヤング率を有する。以下の表2にこの型の例示的PEUの特性をまとめている。
【0114】
(表2) PEUの機械的特性

【0115】
本発明のワクチン送達組成物の様々な成分は広範な比率で存在しうる。例えば、ポリマー反復単位:抗原は典型的には1:50から50:1、例えば、1:10から10:1、約1:3から3:1、または約1:1の比率で用いる。しかし、特定の抗原の特定のポリマーへの組込みが難しく、かつ特定の抗原が低い免疫原性を有する場合などの、特定の目的のためには他の比率がより適当であることもあり、その場合、より高い相対量のペプチド抗原が必要とされる。
【0116】
特定の態様において、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物は、当技術分野において公知で、本明細書に記載のいくつかの技術を用いて、粒子内に物理的に組み込んだ(分散した)、または任意にリンカーを用いてポリマー官能基に結合した、ペプチド抗原/アジュバント結合体、またはアジュバントを伴う、もしくは伴わない抗原を含む粒子として提供することができる。粒子はAPCによる取り込みのためにサイズ調節し、例えば、約10ナノメートルから約1000ミクロンの範囲、または約10ナノメートルから約10ミクロンの範囲の平均直径を有する。任意に、粒子はそれらの生分解の制御を助けるためにポリマーの薄い被膜をさらに含むこともできる。典型的にはそのような粒子はポリマー分子あたり約5から約150のペプチド抗原を含む。
【0117】
PEA、PEURおよびPEUポリマーなどの本発明のワクチン送達組成物において用いるポリマーは、表面で酵素作用により生分解する。したがって、ポリマー、例えばその粒子は抗原を被験者に制御された放出速度で投与し、その速度は特有で、長期間にわたって一定である。加えて、PEA、PEURおよびPEUポリマーはインビボで加水分解酵素により有害な副産物を生成することなく分解するため、本発明のワクチン送達組成物は実質的に非炎症性である。本明細書において用いられるとおり、本発明のワクチン送達組成物中のポリマーを説明するために用いる「生分解性」とは、ポリマーが体の正常な機能において無害な生成物に分解されうることを意味する。一つの態様において、ワクチン送達組成物全体は生分解性である。好ましい生分解性ポリマーは生分解性を提供する加水分解可能なエステル結合を有し、典型的には鎖の末端は主にアミノ基である。
【0118】
本明細書において用いられる「分散(された)」とは、本明細書に開示されているペプチド抗原またはアジュバントがポリマー中に分散、混合、溶解、ホモジナイズ、および/または共有結合されている(「分散」または負荷されている)ことを意味し、このポリマーは粒子に形成されていても、いなくてもよい。
【0119】
ペプチド抗原および任意のアジュバントはポリマー担体への化学結合なしにポリマー基質中に分散させることができるが、抗原および/または抗原-アジュバント結合体は生分解性ポリマーに種々の適当な官能基を介して共有結合しうることも企図される。例えば、生分解性ポリマーがポリエステルである場合、鎖末端カルボキシル基を用いて、ヒドロキシ、アミノ、チオなどの、抗原またはアジュバントの相補的部分と反応させることができる。種々の適当な試薬および反応条件が、例えば、March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, Second Edition, Larock (1999)に開示されている。
【0120】
他の態様において、抗原および/またはアジュバントを構造(I)または(III〜VII)のポリマーのいずれかにアミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド結合を通じて結合することができる。そのような結合は適当に官能基を有する出発原料から、当技術分野において公知の合成法を用いて形成することができる。
【0121】
例えば、一つの態様において、ポリマーをペプチド抗原またはアジュバントにポリマーの末端または側鎖カルボキシル基(例えば、COOH)を介して結合することができる。具体的には、構造III、VおよびVIIの化合物をペプチド抗原のアミノ官能基またはヒドロキシル官能基と反応させて、それぞれアミド結合またはカルボン酸エステル結合を介して結合されたペプチド抗原を有する生分解性ポリマーを提供することができる。もう一つの態様において、ポリマーのカルボキシル基をハロゲン化アシル、酸無水物/「混合」無水物、または活性エステルに変換することができる。他の態様において、ポリマー分子の遊離-NH2末端をアシル化して、ペプチド抗原が、ポリマーの遊離末端ではなく、ポリマーのカルボキシル基を介してのみ結合することを確実にすることができる。例えば、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物を、N-末端の遊離アミノ基が、例えば、無水物RCOOCOR(R=(C1-C24)アルキル)でアシル化されているPEA、PEUR、またはPEUから調製して、生物活性薬剤がポリマーの遊離末端ではなく、ポリマーのカルボキシル基を介してのみ結合することを確実にすることができる。
【0122】
または、ペプチド抗原またはアジュバントをポリマーに、例えば、構造式(VIII〜XI)に記載のリンカー分子を介して結合させてもよい。事実、生分解性ポリマーの表面の疎水性を改善するため、生分解性ポリマーの酵素活性化への到達しやすさを改善するため、および生分解性ポリマーの放出特性を改善するため、リンカーを用いてペプチド抗原および/またはアジュバントを生分解性ポリマーに間接的に結合してもよい。特定の態様において、リンカー化合物には、約44から約10,000、好ましくは44から2000の分子量(Mw)を有するポリ(エチレングリコール);セリンなどのアミノ酸;1から100の反復単位を有するポリペプチド;および任意の他の適当な低分子量ポリマーが含まれる。リンカーは典型的にはペプチド抗原をポリマーから、約5オングストロームから約200オングストロームだけ分離する。
【0123】
さらなる態様において、リンカーは式W-A-Qの二価の基であり、ここでAは(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C3-C8)シクロアルキル、または(C6-C10)アリールであり、かつWおよびQはそれぞれ独立に-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、ここでRはそれぞれ独立にHまたは(C1-C6)アルキルである。
【0124】
前述のリンカーを説明するために用いられる「アルキル」なる用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。
【0125】
本明細書において用いられるとおり、リンカーを説明するために用いられる「アルケニル」とは、一つまたは複数の二重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。
【0126】
本明細書において用いられるとおり、リンカーを説明するために用いられる「アルキニル」とは、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。
【0127】
本明細書において用いられるとおり、リンカーを説明するために用いられる「アリール」とは、6から14個までの範囲の炭素原子を有する芳香族基を意味する。
【0128】
特定の態様において、リンカーは約2から約25までのアミノ酸を有するポリペプチドであってもよい。使用が企図される適当なペプチドには、ポリ-L-リジン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リジン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン-L-チロシンなどが含まれる。
【0129】
一つの態様において、ペプチド抗原はポリマーを共有結合により架橋することができ、すなわち、抗原は複数のポリマー分子に結合している。この共有結合による架橋は追加のポリマー-抗原リンカーを用いて、または用いずに行うことができる。
【0130】
ペプチド抗原分子は、一つの高分子の二つの部分の間の共有結合により分子間架橋を形成することもできる。
【0131】
直鎖ポリマーペプチド結合体は、抗原主鎖上の求核剤の可能性がある部分を保護し、ポリマーまたはポリマーリンカー作成物に結合する一つの反応性基だけを残すことにより調製する。脱保護は当技術分野において周知のペプチドの脱保護(例えば、BocおよびFmoc化学)に従って行う。
【0132】
本発明の一つの態様において、ペプチド抗原はレトロ-インベルソまたは部分レトロ-インベルソペプチドとして提示される。
【0133】
他の態様において、ペプチド抗原を基質中でポリマーの光架橋可能なものと混合し、架橋後、材料を貪食可能なサイズ、すなわち0.1〜10μmに分散(粉砕)する。
【0134】
リンカーはまずポリマーまたはペプチド抗原もしくはアジュバントに結合することができる。合成中、リンカーは非保護型、または当業者には周知の様々な保護基を用いた保護型のいずれかでありうる。保護リンカーの場合、リンカーの非保護末端をまずポリマーまたはペプチド抗原に結合することができる。次いで、保護基をPd/H2水素化分解、緩和な酸もしくは塩基加水分解、または任意の他の当技術分野において公知の一般的脱保護法を用いて脱保護することができる。次いで、脱保護したリンカーをペプチド抗原、アジュバント、またはアジュバント/ペプチド抗原結合体に結合することができる。
【0135】
本発明の生分解性ポリマーの例示的合成(結合する分子はアミノキシルである)を以下に示す。ポリエステルをアミノ置換N-オキシドフリーラジカル(アミノキシル)を有する基、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと、N,N'-カルボニルジイミダゾール存在下で反応させて、ポリエステルの鎖末端のカルボン酸部分をアミノ置換アミノキシル含有基へのアミド結合に置き換えることができ、したがってアミノ部分がポリマーのカルボキシル基のカルボニル残基の炭素に共有結合する。N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適当なカルボジイミドはポリエステルの鎖末端のカルボキシル基におけるヒドロキシル部分をアミノキシル、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応することになる中間体生成物の部分に変換する。アミノキシル反応物は典型的には反応物:ポリエステルを1:1から100:1の範囲のモル比で用いる。N,N'-カルボニルジイミダゾール:アミノキシルのモル比は好ましくは約1:1である。
【0136】
典型的反応は以下の通りである。ポリエステルを反応溶媒に溶解し、反応を溶解に用いた温度で容易に実施する。反応溶媒はポリエステルが溶解するいかなるものであってもよい。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比が50:50よりも大きい)である場合、115℃から130℃の高度に精製した(純度99.9+%)ジメチルスルホキシドまたは室温のジメチルスルホキシド(DMSO)がポリエステルを適当に溶解する。ポリエステルがポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比が50:50以下)である場合、室温から50℃のテトラヒドロフラン、塩化メチレンおよびクロロホルムがポリエステルを適当に溶解する。
【0137】
ポリマー/ペプチド抗原結合
一つの態様において、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物を調製するために用いるポリマーは、ポリマーに直接結合している少なくとも一つのペプチド抗原を有する。ポリマーの残基は一つまたは複数のペプチド抗原の残基に結合することができる。例えば、ポリマーの一つの残基をペプチド抗原の一つの残基に直接結合することができる。ポリマーおよびペプチド抗原はそれぞれ一つの空き原子価を有することができる。または、複数のペプチド抗原、多数のペプチド抗原、または異なる病原生物からのペプチド抗原の混合物をポリマーに直接結合することができる。しかし、それぞれのペプチド抗原の残基は対応するポリマーの残基に結合させうるため、一つまたは複数のペプチド抗原の残基の数はポリマーの残基上の空き原子価の数に対応しうる。
【0138】
本明細書において用いられる「ポリマーの残基」とは、一つまたは複数の空き原子価を有するポリマーの基を意味する。基をペプチド抗原の残基に結合した場合、生物活性は実質的に保持されるとの条件で、本発明のポリマー(例えば、ポリマー主鎖または側鎖上)の任意の合成的に可能な一つの原子、複数の原子、または官能基を除去して、空き原子価を提供することができる。加えて、基をペプチド抗原の残基に結合した場合、生物活性は実質的に保持されるとの条件で、任意の合成的に可能な官能基(例えば、カルボキシル)をポリマー(例えば、ポリマー主鎖または側鎖上)に作って、空き原子価を提供することもできる。望まれる結合に基づき、当業者であれば、当技術分野において公知の方法を用いて、本発明のポリマーから誘導しうる適当な官能基を有する出発原料を選択することができる。
【0139】
本明細書において用いられる「構造式(*)の化合物の残基」とは、一つまたは複数の空き原子価を有する、本明細書に記載の式(I)および(III〜VII)のポリマーの化合物の基を意味する。基をペプチド抗原の残基に結合した場合、生物活性は実質的に保持されるとの条件で、化合物(例えば、ポリマー主鎖または側鎖上)の任意の合成的に可能な一つの原子、複数の原子、または官能基を除去して、空き原子価を提供することができる。加えて、基をペプチド抗原の残基に結合した場合、生物活性は実質的に保持されるとの条件で、任意の合成的に可能な官能基(例えば、カルボキシル)を式(I)および(III〜VII)の化合物(例えば、ポリマー主鎖または側鎖上)に作って、空き原子価を提供することもできる。望まれる結合に基づき、当業者であれば、当技術分野において公知の方法を用いて、式(I)および(III〜VII)の化合物から誘導しうる適当な官能基を有する出発原料を選択することができる。
【0140】
例えば、ペプチド抗原の残基を構造式(I)および(III〜VII)の化合物の残基に、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)結合を通じて結合することができ、ここでRはそれぞれ独立にHまたは(C1-C6)アルキルである。そのような結合は、当技術分野において公知の合成法を用いて、適当な官能基を有する出発原料から形成することができる。望まれる結合に基づき、当業者であれば、当技術分野において公知の方法を用いて、構造式(I)および(III〜VII)のいずれか一つの化合物の残基から、およびペプチド抗原またはアジュバントの所与の残基から誘導しうる適当な官能基を有する出発原料を選択することができる。ペプチド抗原またはアジュバントの残基は構造式(I)および(III〜VII)のいずれか一つの化合物の残基における任意の合成的に可能な位置に結合することができる。加えて、本発明は、構造式(I)および(III〜VII)のいずれか一つの化合物に直接結合しているペプチド抗原またはアジュバント生物活性薬剤の複数の残基を有する化合物も提供する。
【0141】
ポリマー分子に結合しうるペプチド抗原の数は典型的にはポリマーの分子量に依存しうる。例えば、nが約5から約150、好ましくは約5から約70である、構造式(I)または(III)の化合物に対しては、ペプチド抗原をポリマーの末端基と反応させることにより、約150までのペプチド抗原(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合することができる。不飽和ポリマーにおいて、ペプチド抗原をポリマーの二重(または三重)結合と反応させることもできる。
【0142】
本明細書に記載のPEA、PEURおよびPEUポリマーは容易に水分を吸収し(ポリマーフィルム上で5から25重量%の水分吸収)、親水性分子がそれらを通って容易に拡散できるようにする。この特徴により、PEA、PEURおよびPEUポリマーは放出速度を制御するための粒子のオーバーコーティングとして用いるのに適している。水分吸収はポリマー、およびそのようなポリマーを基剤とするワクチン送達組成物のバイオアベイラビリティも増強する。加えて、PEA、PEURおよびPEUポリマーの親水性により、インビボで送達される場合に粒子は、特にインビボの温度で粘着性となり、凝集する。したがって、ポリマー粒子を、皮下針または無針注射などにより、局所送達のために皮下または筋肉内に注射すると、自然にポリマーデポーを形成する。体内循環をさせないサイズの、約1ミクロンから約100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子が、インビボでそのようなポリマーデポーを形成するのに適している。または、経口投与の場合、胃腸管ははるかに大きい粒子、例えば、平均直径約1ミクロンから約1000ミクロンまでの微小粒子を耐容することができる。
【0143】
例えば、典型的には、ポリマーデポーは約24時間、約7日間、約30日間、もしくは約90日間、またはそれ以上から選択される期間にわたって分解することになる。適当な免疫応答を得るためにワクチンを繰り返し注射する必要のない、植え込み可能なワクチン送達組成物を提供するために、より長い期間が特に適している。
【0144】
本発明のワクチン送達組成物において用いるのに適した粒子は、不混和性溶媒技術を用いて調製することができる。一般に、これらの方法は二つの不混和性液体の乳濁液調製を必要とする。一重乳濁液法を用いて、疎水性アジュバントおよびペプチド抗原、またはその結合体を組み込むポリマー粒子を調製することができる。一重乳濁液法において、まず粒子に組み込む分子を溶媒中のポリマーと混合し、次いで界面活性剤などの表面安定剤と共に水溶液中で乳化する。この様式で、疎水性アジュバント、ペプチド抗原、またはアジュバント/ペプチド抗原結合体を含むポリマー粒子を形成して、水溶液中に懸濁し、ここで粒子中の疎水性結合体は水溶液中に著しく溶出することなく安定であるが、そのような分子は筋組織などの体内組織内に溶出することになる。
【0145】
合成ペプチド抗原を含むほとんどの生物製剤は親水性である。二重乳濁液法を用いて、中に液体または親水性アジュバント/ペプチド抗原が分散されているポリマー粒子を調製することができる。二重乳濁液法において、まず水に溶解した液体または親水性アジュバント/ペプチド抗原をポリマー溶液に乳化し、乳濁液全体を水に加えて再度乳化し、外側がポリマーコーティングされ、内部に液体アジュバント/ペプチド抗原を含む粒子を形成する。両方の乳化法において粒子の凝集を防ぐために界面活性剤を用いることができる。水に混和しないクロロホルムまたはジクロロメタン(DCM)をPEAおよびPEURポリマーの溶媒として用いるが、調製の後半で溶媒を当技術分野において公知の方法を用いて除去する。
【0146】
しかし、水溶性が低い特定のペプチド抗原またはアジュバントに対しては、これら二つの乳濁液法は限界がある。この文脈において、「低い水溶性」とは、タキソールなどの真に親油性の薬物よりは疎水性が低いが、多くの生物製剤などの真に水溶性の薬物よりも親水性が低い活性薬剤を意味する。これらの型の中間体化合物は一重乳濁液粒子への高い負荷および安定な基質化のためには親水性が高すぎるが、二重乳濁液内の高い負荷および安定性のためには疎水性が高すぎる。そのような場合、ポリマー層をポリマーおよび水溶性が低い薬物でできた粒子上に、三回の乳化工程によりコーティングする。この方法では薬物負荷は比較的低くなる(約10重量%)が、構造安定性と制御された薬物放出速度が得られる。
【0147】
第一の乳濁液は、活性薬剤をポリマー溶液に混合し、混合物を界面活性剤またはジ(ヘキサデカノイル)ホスファチジルコリン(DHPC;天然脂質の短鎖誘導体)などの脂質と共に水溶液中で乳化することにより調製する。この様式で、活性薬剤を含む粒子を生成し、水中に懸濁して、第一の乳濁液を生成する。第二の乳濁液は、第一の乳濁液をポリマー溶液中に加え、混合物を乳化することにより生成し、ポリマー溶液中で内部にポリマー/薬物粒子を含む水滴が生じる。水と界面活性剤または脂質は粒子を分離し、ポリマー溶液中に粒子を溶解する。次いで、第三の乳濁液を、第二の乳濁液を界面活性剤または脂質を含む水中に加え、混合物を乳化することにより生成し、水中に最終の粒子を得る。図1に例示するとおり、得られる粒子構造は中心にポリマーとアジュバントを伴う、または伴わないペプチド抗原からなる一つまたは複数の粒子を有し、これらは水および界面活性剤または脂質などの表面安定剤で取り囲まれ、純粋なポリマー殻で覆われることになる。表面安定剤および水はポリマーコーティング中の溶媒がコーティング内部の粒子と接触してそれらを溶解することを防止すると思われる。
【0148】
三重乳濁液法によりペプチド抗原またはアジュバントなどの活性薬剤の負荷を高めるために、ポリマーコーティングせず、活性薬剤を水中に溶解せずに、水溶性が低い活性薬剤を第一の乳濁液中の表面安定剤でコーティングすることもできる。この第一の乳濁液において、水、表面安定剤および活性薬剤は、類似の体積、またはそれぞれ(1から3):(0.2から約2):1の範囲の体積比を有する。この場合、水を活性薬剤を溶解するためではなく、表面安定剤の助けと共に活性薬剤を保護するために用いる。次いで、二重および三重乳濁液を前述のとおりに調製する(図1)。
【0149】
多くの乳化技術は粒子の製造において用いる乳濁液を調製する際に役立つ。しかし、現在のところ好ましい乳濁液調製法は、水に混和しない溶媒の使用によるものである。乳化法はポリマーを溶媒で溶解する段階と、アジュバント/ペプチド抗原分子と混合する段階と、水に加える段階と、次いで混合器および/または超音波処理器で撹拌する段階とからなる。粒径は、撹拌速度ならびに/またはポリマー、アジュバント/ペプチド抗原分子、および表面安定剤の濃度を制御することにより制御することができる。コーティングの厚さは、第二の乳濁液と第三の乳濁液との比率を調節することで制御可能である。前述の粒子生成法のいずれにおいても、抗原ペプチドおよび任意のアジュバントは、粒子生成後に粒子中のポリマーに結合することにより、粒子の表面上のコーティングを形成することができる。
【0150】
適当な乳濁液安定剤は、モノオレイン酸マンノイド、デキストラン70,000、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテルなどの、非イオン性界面活性剤を含んでいてもよく、これらはすべて、例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.から容易に購入可能である。界面活性剤は約0.3%から約10%、好ましくは約0.5%から約8%、より好ましくは約1%から約5%の濃度で含まれることになる。
【0151】
アジュバント/ペプチド抗原の組成物からの放出速度は、コーティングの厚さ、粒子の外部を覆う抗原の数、粒径、構造、およびコーティングの密度を調節することにより制御することができる。コーティングの密度は、コーティング中のアジュバント/ペプチド抗原の負荷を調節することにより調節可能である。コーティングがアジュバント/ペプチド抗原を含まない場合、ポリマーコーティングは最も密度が高く、アジュバント/ペプチド抗原はコーティングを通って最もゆっくり溶出する。これとは対照的に、アジュバント/ペプチド抗原がコーティング中に負荷されている場合、コーティングはアジュバント/ペプチド抗原が溶出した後に多孔性となり、これはコーティングの外側表面から始まり、したがって粒子の中心のアジュバント/ペプチド抗原は速い速度で溶出することができる。薬物負荷が高いほど、コーティング層の密度は低く、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/ペプチド抗原の負荷は、外側コーティングの下の粒子内部のものよりも低くなりうる。粒子からのアジュバント/ペプチド抗原の放出速度は、前述のとおりに調製した異なる放出速度の粒子を混合することによって制御することもできる。
【0152】
二重および三重乳濁液ポリマーの調製法の詳細な記載は、Pierre Autant et al, Medicinal and/or nutritional microcapsules for oral administration、米国特許第6,022,562号;Iosif Daniel Rosca et al., Microparticle formation and its mechanism in single and double emulsion solvent evaporation, Journal of Controlled Release(2004) 99:271-280;L. Mu and S.S. Feng, A novel controlled release formulation for the anticancer drug paclitaxel (Taxol): PLGA nanoparticles containing vitamin E (TPGS, J. Control. Release (2003) 86:33-48;Somatosin containing biodegradable microspheres prepared by a modified solvent evaporation method based on W/O/W-multiple emulsions, Int. J. Pharm. (1995) 126:129-138 and F. Gabor et al., Ketoprofenpoly(d,l-lactic-co-glycolic acid) microspheres: influence of manufacturing parameters and type of polymer on the release characteristics, J. Microencapsul. (1999) 16 (1):1-12に見いだすことができ、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0153】
水溶性ペプチド抗原および/またはアジュバント送達のためのさらなる態様において、粒子を循環への送達のために約20nmから約200nmの平均直径を有するナノ粒子に調製することができる。ナノ粒子は、ペプチド抗原をその中に分散して、すなわち本明細書に記載のとおり乳濁液中に混合、またはポリマーに結合して、一重乳濁液法により調製することができる。ナノ粒子は、本明細書に記載のPEAまたはPEURポリマーを含むミセルとして提供することもできる。ミセルを水中で形成し、任意のアジュバントタンパク質を伴う水溶性抗原を溶媒なしで同時にミセル中に負荷する。
【0154】
特に、図2に例示する生分解性ミセルを疎水性ポリマー鎖に結合した水溶性イオン化ポリマー鎖で形成する。ミセルの外側部分は主にポリマーの水溶性イオン化部分からなる一方で、ポリマーの疎水性部分は主にミセルの内部に分配され、ポリマー分子をまとめる。
【0155】
ミセルを調製するために用いるポリマーの生分解性疎水性部分は、本明細書に記載のPEA、PEURまたはPEUポリマーでできている。疎水性が強いPEA、PEURまたはPEUポリマーのために、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールのジ-L-ロイシンエステルまたはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンのような硬性の芳香族二酸をポリマー反復単位に含むことができる。これとは対照的に、ポリマーの水溶性部分はポリエチレングリコール、ポリグリコサミノグリカンまたは多糖と少なくとも一つのイオン化可能または極性アミノ酸との反復交互単位を含み、ここで反復交互単位は実質的に類似の分子量を有し、かつポリマーの分子量は約10kDaから約300kDaの範囲である。水溶性部分の分子量が高いほど、ミセルの多孔度は大きく、より長い鎖は水溶性抗原および任意のアジュバントの高い負荷を可能にする。加えて、ポリアミノ酸は一つのアミノ酸よりも免疫原性が高い。
【0156】
反復交互単位は約300Dから約700Dの範囲の実質的に類似の分子量を有しうる。ポリマーの分子量が10kDよりも大きい一つの態様において、アミノ酸単位の少なくとも一つはセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびアルギニンから選択されるイオン化可能または極性アミノ酸である。一つの態様において、イオン化可能アミノ酸の単位は、グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩などのイオン化可能ポリ(アミノ酸)の少なくとも一つのブロックを含み、ポリマーに含まれうる。本発明のミセル組成物は、ポリマーの水溶性部分におけるイオン化可能アミノ酸の少なくとも一部がイオン化されるpH値を有する、薬学的に許容される水性媒質をさらに含んでいてもよい。
【0157】
生分解性疎水性ポリマー鎖は、本明細書に記載のPEA、PEURまたはPEUポリマーでできている。疎水性が強いPEA、PEURまたはPEUポリマーのために、1,3-ビス(-4-カルボキシレート-フェノキシ)-プロパン(CPP)および/または-1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール-D-ソルビトールのビス(-L-ロイシン)ジエステル(DAS)などの成分を疎水性ポリマー鎖に含むことができる。これとは対照的に、水溶性の鎖はポリエチレングリコール(PEG)および(ポリ)リジンまたは(ポリ)グルタメートなどのイオン化可能アミノ酸の多くの反復単位でできており、ここでPEG単位およびイオン化可能アミノ酸単位は類似の分子量、例えば、数百kDを有する(すなわち、PEG単位はこの範囲内の実質的に任意の値の分子量を有する)。しかし、ポリマーの水溶性部分の総分子量は、例えば、約10kDaから約300kDaの範囲である。水溶性部分の分子量が高いほど、ミセルの多孔度は大きく、より長い鎖は水溶性抗原および任意のアジュバントの高い負荷を可能にする。加えて、ポリアミノ酸は一つのアミノ酸よりも免疫原性が高い。
【0158】
ミセル中の荷電部分は水中で互いに部分的に分離し、ペプチド抗原および任意のタンパク質アジュバントなどの水溶性薬剤を吸収するための空間を作り出す。同じ型の電荷を有するイオン化した鎖は互いに反発し、さらに空間を作り出すことになる。また、イオン化ポリマーはペプチド抗原を引きつけ、基質に安定性をもたらす。加えて、水溶性のミセル外部はイオン化部位が治療薬によって取られた後、ミセルが体液中のタンパク質に付着するのを防止する。この型のミセルは多孔度が非常に高く、ミセル体積の95%にも達して、ペプチド抗原および抗原などの水溶性生物製剤の高い負荷を可能にする。ミセルの粒径の範囲は約20nmから約200nmで、血中での循環のためには約20nmから約100nmが好ましい。
【0159】
アジュバント/ペプチド抗原の組成物からの放出速度は、コーティングの厚さ、粒径、構造、およびコーティングの密度を調節することにより制御することができる。コーティングの密度は、コーティング中のアジュバント/ペプチド抗原の負荷を変えることにより調節可能である。コーティングがペプチド抗原またはアジュバントを含まない場合、ポリマーコーティングは最も密度が高く、ペプチド抗原および任意のアジュバントのコーティングを通っての溶出は最も遅くなる。これとは対照的に、ペプチド抗原またはアジュバントがコーティング中に負荷されている場合、コーティングはペプチド抗原またはアジュバントが溶出した後に多孔性となり、これはコーティングの外側表面から始まり、したがって粒子の中心の活性薬剤は速い速度で溶出することができる。コーティング層の薬物負荷が高いほど、密度は低く、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/ペプチド抗原の負荷は、外側コーティングの下の粒子内部のものよりも低くなりうる。粒子からのアジュバント/ペプチド抗原の放出速度は、前述のとおりに調製した異なる放出速度の粒子を混合することによって制御することもできる。
【0160】
粒径は、例えば、ヘリウム-ネオンレーザーを組み込んでいる分光計を用いてのレーザー光散乱によってもとめることができる。一般に、粒径は室温で測定し、問題となる試料を複数回(例えば、5〜10回)分析して、粒径の平均値を出す。粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて容易にもとめることもできる。そのために、乾燥粒子を金/パラジウム混合物で約100オングストロームの厚さにスパッターコーティングし、次いで走査電子顕微鏡を用いて検査する。または、ペプチド抗原を化学結合せずにポリマー中に取り込む(「負荷」または「基質化」)のではなく、粒子またはそれ以外の形のポリマーを、当技術分野において公知かつ本明細書に記載のいくつかの方法のいずれかを用いて、ペプチド抗原に直接共有結合することもできる。ペプチド抗原の含有量は一般に、ポリマーに対して約0.1重量%から約40重量%のペプチド抗原、より好ましくは約1重量%から約25重量%のペプチド抗原、さらにより好ましくは約2重量%から約20重量%のペプチド抗原となる量である。ペプチド抗原のパーセンテージは、以下により詳細に論じるとおり、所望の用量および治療中の状態に依存することになる。アジュバントを伴う、または伴わないペプチド抗原が負荷された粒子またはポリマー分子の調製に続き、組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を免疫化の前に適当な媒体に懸濁することができる。
【0161】
ワクチン送達組成物中に含まれる、ペプチド抗原およびアジュバントを含む免疫原性粒子またはポリマー分子の、任意の適当かつ有効な量を、ポリマー粒子(インビボで形成されるポリマーデポー内のものを含む)から経時的に放出することができ、これは典型的には、例えば、特定のポリマー、ペプチド抗原、アジュバントまたは存在する場合にはポリマー/ペプチド抗原結合に依存することになる。典型的には、ポリマー粒子または分子の約100%までをポリマーデポーから放出することができる。具体的には、その約90%まで、75%まで、50%まで、または25%までをポリマーデポーから放出することができる。ポリマーからの放出速度に典型的に影響をおよぼす因子は、ポリマーの性質および量、ポリマー/ペプチド抗原結合および/またはポリマー/生物活性薬剤結合の型、ならびに製剤中に含まれる追加の物質の性質および量である。
【0162】
本発明のワクチン送達組成物を前述のとおりにいったん調製した後、組成物を続く粘膜または皮下送達のために製剤化する。組成物は一般には、水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどの、粘膜または皮下送達に適した、一つまたは複数の「薬学的に許容される賦形剤または媒体」を含むことになる。加えて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質などの補助物質も、そのような媒体中に含まれうる。
【0163】
例えば、鼻内および肺製剤は通常、鼻粘膜に刺激を引き起こさず、繊毛機能を著しく妨害もしない媒体を含む。水、食塩水または他の公知の物質などの希釈剤を、本発明と共に用いることができる。鼻製剤は、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムなどであるが、それらに限定されるわけではない、保存剤を含んでいてもよい。鼻粘膜による吸収を促進するために、界面活性剤を含んでいてもよい。
【0164】
直腸および尿道坐剤のために、媒体は、カカオバター(カカオ脂)または他のトリグリセリド、エステル化、水素添加および/または分別により改変された植物油、グリセリン処理ゼラチン、ポリアルカリグリコール、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物ならびにポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの、伝統的な結合剤および担体を含むことになる。
【0165】
膣送達のために、本発明の製剤は、ポリエチレントリグリセリドの混合物を含むものなどの膣坐剤基剤に組み込む、またはコロイドシリカを任意に含む、トウモロコシ油またはゴマ油などの油中に懸濁することができる。例えば、Richardson et al., Int. J. Pharm. (1995) 115:9-15を参照されたい。
【0166】
特定の送達様式で用いるのに適した媒体のさらなる議論については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照されたい。当業者であれば、特定の抗原および送達部位に対して用いるのに適当な媒体を容易に決定することができる。
【0167】
本発明の方法において用いる組成物は、対象となるペプチド抗原の「有効量」を含みうる。すなわち、症状を予防、軽減または除去するために被験者に十分な免疫応答を起こさせる抗原の量が、組成物に含まれることになる。必要とされる厳密な量は、様々な因子の中でも特に、治療中の被験者;治療する被験者の年齢および全身状態;被験者の免疫系が抗体を合成する能力;望まれる保護の程度;治療中の状態の重症度;選択した特定の抗原およびその投与様式に応じて変動することになる。適当な有効量は当業者であれば容易に決定することができる。したがって、「有効量」は日常的試験によって決定することができる、比較的広い範囲となる。例えば、本発明の目的のために、有効用量は典型的には1用量あたり送達する抗原約1μgから約100mg、例えば約5μgから約1mg、または約10μgから約500μgの範囲となる。
【0168】
いったん製剤化した後、本発明の組成物を、標準の技術を用いて、注射により粘膜または皮下に投与する。例えば、鼻内、肺、膣および直腸送達技術を含む、粘膜送達技術については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995、ならびに鼻内投与については、欧州特許第517,565号およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい。
【0169】
投与処置は、当技術分野において公知のとおり、本発明の徐放性ワクチン送達組成物の一回投与でもよく、または複数回投与スケジュールでもよい。追加免疫は初回免疫応答のために投与した同じ製剤で行ってもよく、または抗原を含む異なる製剤で行ってもよい。投与法は、少なくとも部分的には、被験者の必要性によっても決定され、医師の判断に依存する。さらに、疾患の予防が望まれる場合、ワクチン送達組成物は一般には対象となる病原体による最初の感染前に投与する。治療、例えば、症状または再発の軽減が望まれる場合、ワクチン送達組成物は一般には最初の感染後に投与する。
【0170】
本発明の組成物は、皮下または粘膜送達の試験用に開発されたいくつかの動物モデルにおいてインビボで試験することができる。例えば、意識のあるヒツジモデルは、物質の鼻内送達を試験するための当技術分野において認められたモデルである。例えば、Longenecker et al., J. Pharm. Sci. (1987) 76:351-355およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい。一般には粉末化された凍結乾燥型のワクチン送達組成物を鼻腔内に吹き込む。血液試料を、前述のとおり、当技術分野において公知の標準技術を用いて、抗体価について検定することができる。細胞性免疫応答も前述のとおりにモニターすることができる。
【0171】
現在のところ、供与者からの細胞を用いる、細胞性免疫応答に対する一連のインビトロ検定がある。検定は、細胞が供与者からのものである状況を含むが、多くの検定は他の供給源、例えば、B細胞株からの抗原提示細胞の供給源を提供する。これらのインビトロ検定には、細胞障害性Tリンパ球検定;リンパ球増殖検定、例えば、三重水素化チミジン取り込み;タンパク質キナーゼ検定、イオン輸送検定およびリンパ球遊走阻害機能検定が含まれる(Hickling, J. K. et al. (1987) J. Virol., 61: 3463;Hengel, H. et al. (1987) J. Immunol., 139: 4196;Thorley-Lawson, D. A. et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 5384;Kadival, G. J. et al. (1987) J. Immunol, 139:2447;Samuelson, L. E. et al. (1987) J. Immunol, 139:2708;Cason, J. et al. (1987) J. Immunol. Meth., 102:109;およびTsein, R. J. et al. (1982) Nature, 293: 68。これらの検定は、細胞性免疫活性に対する真の特異性を欠く可能性があり、同じMHC型のAPCによる抗原処理および提示を必要とし、遅く(時に数日間続く)、かつ一部は主観的かつ/または放射性同位体の使用を必要とする点で不利である。
【0172】
T細胞によって認識されたペプチドがT細胞を活性化して免疫応答を引き起こすかどうかを試験するために、いわゆる「機能試験」を用いる。酵素結合免疫スポット(ELISpot)法が、マイクロプレート上のサイトカインまたはエフェクター分子に特異的なモノクローナル抗体の結合により、特定のサイトカインまたは他のエフェクター分子を分泌する個々の細胞を検出するために改変されている。抗原によって刺激された細胞を固定化した抗体と接触させる。細胞および結合していない物質があればそれらを洗浄した後、標識ポリクローナル抗体または、しばしば、同じサイトカインまたは他のエフェクター分子に特異的なモノクローナル抗体をウェルに加える。洗浄後、サイトカイン局在部位に青-黒色の沈澱(またはスポット)が生成するように、標識抗体に結合する着色料を加える。スポットを手動で、または自動ELISpot読み取り器で計数して、応答を定量することができる。試験ペプチドによるT細胞活性化の最終確認には、例えば、マウスまたは他の動物モデルにおけるインビボ試験が必要となることもある。
【0173】
容易に明らかとなるとおり、本発明のワクチン送達組成物は、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌によって引き起こされる様々な疾患および感染症を治療および/または予防するため、ならびに様々な腫瘍抗原に対する免疫応答を刺激するために、そのような病原体に対する免疫応答を誘発するために有用である。組成物は前述のとおり治療的または予防的に用いうるだけでなく、組成物は、例えば、診断目的、ならびに対象となる抗原の免疫精製のために、ポリクローナルおよびモノクローナル両方の抗体を調製するためにも用いることができる。ポリクローナル抗体が望まれる場合、選択した哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を本発明の組成物で免疫する。動物を2〜6週後に抗原の一回または複数回投与により任意に追加免疫する。次いで、免疫した動物からポリクローナル抗血清を得、公知の方法により処理する。例えば、Jurgens et al. (1985) J. Chrom. 348:363-370を参照されたい。
【0174】
モノクローナル抗体は一般にはKohler and Milstein, Nature (1975) 256:495-96、またはその改変法を用いて調製する。典型的には、マウスまたはラットを前述のとおりに免疫する。しかし、血清を抽出するために動物から採血するのではなく、脾臓(および任意にいくつかの大きいリンパ節)を摘出し、単一の細胞に分離する。望まれる場合には、脾細胞の懸濁液をタンパク質抗原でコーティングしたプレートまたはウェルに加えて、脾細胞をスクリーニングしてもよい(非特異的付着細胞の除去後)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、懸濁液の残りと共に洗い流されることはない。次いで、得られるB細胞、またはすべての分離脾細胞を、骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを形成するよう誘導し、選択した培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)中で培養する。得られるハイブリドーマを限界希釈により播種し、免疫抗原に特異的に結合する(および無関係の抗原には結合しない)抗体の産生について検定する。次いで、選択したモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマをインビトロ(例えば、組織培養瓶または中空繊維反応器中)またはインビボ(マウスの腹水など)のいずれかで培養する。例えば、M. Schreier et al., Hybridoma Techniques (1980);Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas (1981);Kennett et al., Monoclonal Antibodies (1980)を参照されたく;米国特許第4,341,761号;第4,399,121号;4,427,783号;第4,444,887号;第4,466,917号;第4,472,500号、第4,491,632号;および第4,493,890号も参照されたい。対象となるポリペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルを、様々な特性、すなわち、アイソタイプ、エピトープ、親和性などについでスクリーニングすることができる。
【0175】
以下の実施例は例示を意味するもので、本発明を制限するものではない。
【0176】
実施例1
PEA-抗原結合体の合成
PEAスクシンイミジルエステル(PEA-OSu)の合成。すべての実施例はN-アセチル化ポリマー(A)からである。PEA 1.392g、754μM、反復単位あたりのMW計算値=1845(式I、R1=(CH2)8;R2=H;R3=(CH3)2CHCH2;R4=(CH2)6;n=70;m/m+p=0.75およびp/m+p=0.25)を無水DMF(7ml)に撹拌しながら溶解した。PEAのわずかに粘性の溶液にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、0.110g、955μMを固体で加えた。1-エチル-3-(3'-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、146mg、759.8μMをDMF中の懸濁液として移した。反応用のDMFの全量は10mlであった。反応を室温、窒素雰囲気下で24時間実施した。
【0177】
PEA-インフルエンザペプチド結合体の合成
B1)PEA-ペプチド結合体(式IV、R1=(CH2)8;;R3=(CH3)2CHCH2;R4=(CH2)6;R5=NH;n=70;m/m+p=0.75およびp/m+p=0.25ならびにR7=PKYVKQNTLKLAT)の合成を、DMF中の活性エステル(A)の49.5μM量およびトリフルオロ酢酸塩としてのH-PKYVKQNTLKLAT-OH 96mg(49.5μM)により実施した。ペプチドを溶解し、DMSO(5ml)中の活性エステルに移した。1当量、すなわち49.5μMのエチル-ジイソプロピルアミンを加え、反応を窒素雰囲気下で24時間続けた。DMSO(300μl)中の蒸留水30μlを加え、室温でさらに4時間撹拌を続けた。
【0178】
反応混合物をジエチルエーテル(60ml)中で沈澱させ、遠心分離後、得られた材料をジエチルエーテル(15ml)で三回洗浄した。風乾後、得られた生成物を3×5mlの蒸留水で1分間超音波にかけて処理した。遠心分離後、得られた材料を凍結乾燥した。収率86mg、47%。
【0179】
B2)PEA-ペプチド結合体(式IX、R5-R7-R5を通じて架橋、R1=(CH2)8;R3=(CH3)2CHCH2;R4=(CH2)6;R5=NH;n=70;m/m+p=0.75およびp/m+p=0.25ならびにR7=PKYVKQNTLKLAT)の合成を、DMF(600μl)中の活性エステル(A)の37.7μM量およびトリフルオロ酢酸塩としてのH-PKYVKQNTLKLAT-OH 74mg(37.7μM)により実施した。ペプチドを溶解し、DMSO(ジメチルスルホキシド)(0.8ml)中の活性エステルに移した。4当量、すなわち198μMのエチル-ジイソプロピルアミンを加え、反応を窒素雰囲気下で48時間続けた。透明のゲル様材料を有機溶媒からデカンテーションにより分離した。2〜3mmの大きい断片に切断後、生成物を蒸留水17mlにより+4℃で18時間処理した。遠心分離およびデカンテーションをした後、材料を蒸留水17mlで二回(各回3時間)処理し、最後の遠心分離後、生成物を凍結乾燥した。収率:75mg、53%。
【0180】
B3)PEA-ペプチド結合体(式IX、R5-R7-R5を通じて架橋、R1=(CH2)8;R3=(CH3)2CHCH2;R4=(CH2)6;R5=NH;n=8;m/m+p=0.75およびp/m+p=0.25ならびにR7=PKYVKQNTLKLAT)の合成を、DMF(600μl)中の(A)と同様の様式で合成した活性エステル41.2μMおよびトリフルオロ酢酸塩としてのH-PKYVKQNTLKLAT-OH 40mg(20.6μM)により実施した。ペプチドを溶解し、DMSO(5ml)中の活性エステルに移した。4当量、すなわち80μMのエチル-ジイソプロピルアミンを加え、反応を窒素雰囲気下で72時間続けた。DMSO(300μl)中の蒸留水75μl(4.2mM)を加え、さらに24時間撹拌を続けた。次いで、反応混合物を水/アセトン(1:1 v/v、24ml)中で沈澱させた。得られた沈殿を蒸留水(4×12ml)により+4℃で各回約1時間処理した後、遠心分離した。最後の遠心分離後、生成物を凍結乾燥した。収率50mg、45%。
【0181】
インビトロヒトT細胞応答プロトコルの概要
CD4+ T細胞および単球をヒト供与者の末梢血から単離する。単球を、サイトカインを多く含む培地中で48時間培養して、樹状細胞(抗原提示細胞)への分化を誘導する。培養24時間後に、PEAまたはPEA-ヘマグルチニンペプチド(307〜319)結合体を培地に加える。樹状細胞およびT細胞の共培養開始の2時間前に、遊離ペプチドを対照ウェルに加える。樹状細胞と一緒に培養したT細胞を、48時間、72時間、および96時間の時点で増殖およびサイトカイン分泌により活性化について測定する。T細胞応答プロトコルの概略図を本明細書の図3に例示する。
【0182】
ポリマー-ペプチド結合体に曝露した樹状細胞に応答してのT細胞活性化を、前述のプロトコルを用いて試験した。図4Aは、96時間のT細胞増殖を示し、PEA-ペプチド結合体はペプチドまたはPEA単独に比べて有意な増殖を刺激した。図4Bは、96時間のT細胞IL-2分泌を示し、PEA-ペプチド(式III、実施例B1)はペプチドまたはPEA単独に比べて有意なIL-2分泌を刺激した。
【0183】
すべての出版物、特許、および特許文書は、個々に参照により組み入れられるがごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本発明を様々な特定の好ましい態様および技術に関して記載してきた。しかし、本発明の精神および範囲内のままで、多くの変更および改変を行いうることが理解されるべきである。
【0184】
本発明を前述の実施例に関して記載してきたが、改変および変更も本発明の精神および範囲内に含まれることが理解されると思われる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本明細書に記載の二重および三重乳濁液法による、ペプチド抗原などの様々な活性薬剤がその中に分散している、PEA、PEURまたはPEUの粒子の生成を例示する概略図である。
【図2】本明細書に記載の分散したペプチド抗原を含む本発明のミセルを例示する概略図である。
【図3】本発明のワクチンを製造し、本発明のワクチンに対するインビトロでのヒトT細胞応答を試験する方法のフローチャートである。
【図4】図4A〜Bは、ポリマー-ペプチド結合体に曝露した樹状細胞に応答してのT細胞活性化を示すグラフである。図4Aは、96時間のT細胞増殖を示し、PEA-ペプチド結合体はペプチドまたはPEA単独に比べて有意な増殖を刺激した。図4Bは、96時間のT細胞IL-2分泌を示し、PEA-ペプチド(式III、実施例B1)はペプチドまたはPEA単独に比べて有意なIL-2分泌を刺激した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリマーの粒子または分子に結合している、少なくとも一つのMHCクラスIまたはクラスIIペプチド抗原の有効量を含むワクチン送達組成物:
構造式(I)で記載される化学構造を有する生分解性ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマー:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より独立に選択され;

または構造式(III)で記載される化学式を有するPEAポリマー:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から0.9の範囲であり:pは約0.9から0.1の範囲であり;R1はα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、(C2-C20)アルキレン、または(C2-C20)アルケニレンの残基から独立に選択され;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;かつR4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせからなる群より独立に選択され、
または構造式(IV)で記載される化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR)ポリマー:

式中、nは約5から約150の範囲であり;R3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片;およびその組み合わせからなる群より選択され、かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択され;
または一般構造式(V)で記載される化学構造を有するPEURポリマー:

式中、nは約5から約150の範囲であり、mは約0.1から約0.9の範囲であり:pは約0.9から約0.1の範囲であり;R2は水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、または保護基から独立に選択され;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、飽和または不飽和治療的ジオールの残基および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片ならびにその組み合わせからなる群より選択され;かつR6は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンまたはアルキルオキシ、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和治療的ジオールの残基の有効量、およびその組み合わせから独立に選択され;
または一般構造式(VI)で記載される化学式を有するポリ(エステル尿素)(PEU):

式中、nは約10から約150であり;個々のnモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4は(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和治療的ジオールの残基;または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立に選択され;
または構造式(VII)で記載される化学式を有するPEU:

式中、mは約0.1から約1.0であり;pは約0.9から約0.1であり;nは約10から約150であり;R2はそれぞれ独立に水素、(C1-C12)アルキルまたは(C6-C10)アリールであり;個々のmモノマーにおけるR3は水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立に選択され;R4はそれぞれ(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和または不飽和治療的ジオールの残基;構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせから独立に選択される;
または(III)。
【請求項2】
ペプチド抗原が5から約30アミノ酸を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリマー粒子または分子の分散液として製剤化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ポリマーが構造式(I)または(III)で記載されるPEAである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一つのR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、もしくは4,4'(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基であるか、または少なくとも一つのR4が構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つのR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、またはその混合物であり、かつ少なくとも一つのR4が構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
ポリマーが構造式(IV)または(V)で記載されるPEURである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一つのR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基であるか、または少なくとも一つのR4が構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一つのR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、もしくは4,4'(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、またはその混合物であり、かつ少なくとも一つのR4が構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーが構造式(VI)または(VII)で記載されるPEUである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つのR1が構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
インビボで投与した場合に徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
24時間、約7日間、約30日間、または約90日間にわたって生分解する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
約10ナノメートルから約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子の形であり、少なくとも一つのペプチド抗原が粒子の各ポリマー分子中に分散している、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
粒子がポリマーの被膜をさらに含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
粒子が約10ナノメートルから約10ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
粒子がポリマー分子あたり約5から約150のペプチド抗原を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
ポリマー分子が約5,000から約300,000の範囲の平均分子量を有し、少なくとも一つのペプチド抗原がポリマー分子に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
ポリマー分子がそれに結合している約5から約70のペプチド抗原を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
ポリマーが構造式(VIII)の化学構造を有するポリマー-抗原結合体に含まれる、請求項1記載の組成物:

式中、n、m、p、R1、R3、およびR4は前述のとおりであり、R5は-O-、-S-、および-NR8-からなる群より選択され、ここでR8はHまたは(C1-C8)アルキルであり;かつR7はペプチド抗原である。
【請求項21】
ポリマーの2つ以上の分子が架橋して-R5-R7-R5-結合体を提供する、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
抗原がポリマーの一つの分子に-R5-R7-R5-結合体を通じて共有結合し、かつR5が-O-、-S-、および-NR8-からなる群より独立に選択され、ここでR8はHまたはアルキルである(式(IX))、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
R1が独立に(C2-C20)アルキレンまたは(C2-C20)アルケニレンであり、R5の一つが-X-Y-であり、ここでXは(C1-C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3-C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、N、およびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜6員複素環系、置換複素環、(C2-C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1-C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1-C4)アルキル、-S(C1-C6)アルキル、-S[(=O)(C1-C6)アルキル)]、-S[(O2)(C1-C6)アルキル]、-C[(=O)(C1-C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1-C6)アルキル)]、-S(O2)[N(R9R10)、-NH[(C=O)(C1-C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)、および-N(R9R10)からなる群より選択され;ここでR9およびR10は独立にHまたは(C1-C6)アルキルであり、かつYは-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-NR8-、-C(=O)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NR8C(=O)-、-C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-、および-NR8C(=S)NR8-からなる群より選択される、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
R5がそれぞれ-X-Y-である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
4つの反復単位の2つがR7を持たず、架橋して一つの-R5-X-R5-結合体を提供し、ここでXは(C1-C18)アルキル、置換アルキル、(C3-C8)シクロアルキル、置換シクロアルキル、O、N、およびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜6員複素環系、置換複素環、(C2-C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1-C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1-C4)アルキル、-S(C1-C6)アルキル、-S[(=O)(C1-C6)アルキル)]、-S[(O2)(C1-C6)アルキル]、-C[(=O)(C1-C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1-C6)アルキル)]、-S(O2)[N(R9R10)、-NH[(C=O)(C1-C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)、および-N(R9R10)からなる群より選択され;ここでR9およびR10は独立にHまたは(C1-C6)アルキル)である、ポリマーの二分子を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
ポリマーの二分子が部分的に架橋して-R5-X-Y-R7-R5-結合体を提供する、請求項20記載の組成物。
【請求項27】
ポリマーの一分子が-R5-R7-Y-X-R5-架橋を通じて抗原に共有結合する(式XI)、請求項22記載の組成物:

式中、Xは(C1-C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3-C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、N、およびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜6員複素環系、置換複素環、(C2-C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1-C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1-C4)アルキル、-S(C1-C6)アルキル、-S[(=O)(C1-C6)アルキル]、-S[(O2)(C1-C6)アルキル]、-C[(=O)(C1-C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1-C6)アルキル]、-S(O2)[N(R9R10)、-NH[(C=O)(C1-C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)、-N(R11R12)からなる群より選択され、ここでR9およびR10は独立にHまたは(C1-C6)アルキルであり、R11およびR12は独立に(C2-C20)アルキレンまたは(C2-C20)アルケニレンである。
【請求項28】
ペプチド抗原が約8から約12アミノ酸のクラスIエピトープを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
アジュバントをさらに含む、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
アジュバントがポリマーに共有結合している、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
アジュバントおよび抗原が同じポリマーに結合している、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
ペプチド抗原が約8から約30アミノ酸のクラスIIエピトープを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項33】
ペプチド抗原がウイルス、細菌、真菌または腫瘍細胞表面抗原のエピトープを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項34】
抗原がレトロ-インベルソペプチドである、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
抗原が部分的にレトロ-インベルソペプチドである、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
ペプチド抗原がウイルスエピトープを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項37】
ウイルスエピトープがHIVまたはインフルエンザウイルスエピトープである、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
HIVエピトープがSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を有する、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
インフルエンザエピトープがSEQ ID NO: 9または10のアミノ酸配列を有する、請求項37記載の組成物。
【請求項40】
薬学的に許容される媒体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項41】
ミスト中の分散液滴の形である、請求項1記載の組成物。
【請求項42】
ミストをネブライザーによって生成する、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
媒体の分散液滴を含むミストを生成するために作動可能なネブライザー内に含まれる、請求項1記載の組成物。
【請求項44】
注射によって組成物を投与するために作動可能である注射装置内に含まれる、請求項1記載の組成物。
【請求項45】
下記の段階を含む、哺乳動物において免疫応答を誘導する方法:
哺乳動物に、ポリマー粒子または分子の分散液の形の、請求項1記載のワクチン送達組成物の免疫刺激量を投与し、これが哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれて哺乳動物における免疫応答を誘導する段階。
【請求項46】
組成物が、インビボで投与された場合に徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
組成物が、24時間、約7日間、約30日間、または約90日間にわたって生分解する、請求項45記載の方法。
【請求項48】
組成物が約10ナノメートルから約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子の形であり、少なくとも一つのペプチド抗原が粒子中に分散されている、請求項45記載の方法。
【請求項49】
粒子が約10ナノメートルから約10ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項45記載の方法。
【請求項50】
粒子がポリマーの被膜をさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項51】
粒子がポリマー分子あたり約5から約150のペプチド抗原を含む、請求項45記載の方法。
【請求項52】
ポリマー分子が約5,000から約300,000の範囲の平均分子量を有し、少なくとも一つのペプチド抗原がポリマー分子に結合している、請求項45記載の方法。
【請求項53】
ポリマー分子がそれに結合している約5から約70のペプチド抗原を有する、請求項45記載の方法。
【請求項54】
ペプチド抗原が約8から約12アミノ酸のクラスIエピトープを含む、請求項45記載の方法。
【請求項55】
アジュバントをさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項56】
アジュバントがポリマーに共有結合している、請求項55記載の方法。
【請求項57】
アジュバントおよび抗原が同じポリマーに結合している、請求項55記載の方法。
【請求項58】
ペプチド抗原が約8から約30アミノ酸のクラスIIエピトープを含む、請求項45記載の方法。
【請求項59】
ペプチド抗原がウイルス、細菌、真菌または腫瘍細胞表面抗原のエピトープを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
ワクチンを被験者に送達する方法であって、被験者に請求項1記載のワクチン送達組成物を投与し、その結果ワクチンが被験者の抗原提示細胞によって取り込まれる段階を含む方法。
【請求項61】
モノマーあたり少なくとも一つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも一つの型のアミノ酸を含む生分解性ポリマー内に分散された、少なくとも一つのMHCクラスIまたはクラスIIペプチド抗原の有効量を含む、ワクチン送達組成物。
【請求項62】
非アミノ酸部分が二つの隣接するアミノ酸の間にある、請求項61記載の組成物。
【請求項63】
非アミノ酸部分が疎水性である、請求項61記載の組成物。
【請求項64】
ペプチド抗原が5から約30アミノ酸を含む、請求項61記載の組成物。
【請求項65】
ポリマーが少なくとも二つの異なるアミノ酸を含む、請求項61記載の組成物。
【請求項66】
ポリマーが液体中でミセルを形成するブロックコポリマーである、請求項61記載の組成物。
【請求項67】
下記の段階を含む、哺乳動物において免疫応答を誘導する方法:
哺乳動物に、ポリマー粒子または分子の分散液の形の、請求項61記載のワクチン送達組成物を投与し、これが哺乳動物の抗原提示細胞によって取り込まれて哺乳動物における免疫応答を誘導する段階。
【請求項68】
少なくとも一つのモノマーにおけるR3がさらに-(CH2)3-であってもよく、R3の少なくとも一つが環化して構造式(XVIII)で記載される化学構造を形成する、請求項1記載の組成物:


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−532929(P2008−532929A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553357(P2007−553357)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/003412
【国際公開番号】WO2006/083874
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507277424)メディバス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】