ワクチン
本発明は、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現が機能的にダウンレギュレートされ、その結果、外膜中のLPSのレベルが野生型グラム陰性菌と比較して減少したグラム陰性菌を開示する。ImpおよびMsbAタンパク質のダウンレギュレーションによってかかる細菌を得ることができる。本発明のグラム陰性菌由来の外膜小胞調製物をワクチンに用いて細菌感染に対する防御を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポ多糖(LPS)の細菌外膜への輸送に関わるタンパク質の発現が機能的にダウンレギュレーションされたグラム陰性菌に関する。かかるタンパク質の例は、ImpおよびMsbAタンパク質である。本発明はまた、外膜へのリポ多糖(LPS)輸送の破壊されたおよび/またはLPS含有量がより低い、突然変異impおよび/またはmsbA遺伝子を含有するナイセリア属(Neisseria)菌株に関する。本発明のさらなる態様は、かかる株から作られた外膜小胞調製物に関する。本発明は突然変異Impタンパク質そして特にキメラImpタンパク質を含む。本発明はまた、突然変異Impタンパク質またはLPSの外膜への輸送の破壊された全細菌もしくは細菌の画分を含有するワクチンおよび免疫原性組成物ならびにナイセリア属菌感染の治療または予防におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
グラム陰性菌はヒトの数多くの病態の原因となる病原体であって、かかる細菌の多くに対して効力を有するワクチンを開発する必要がある。とりわけ、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、羊精巣上体炎菌(Brucella ovis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、大腸菌(Esherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)は、ワクチン接種によって治療しうる病態を引き起こすグラム陰性菌である。
【0003】
髄膜炎菌は、特に子供や若年成人に重要な病原体である。敗血症および髄膜炎は最も生命を脅かす病態の侵襲性髄膜炎菌性疾患(IMD)である。この疾患は、その罹患率および死亡率の高さから、世界的な健康上の問題になっている。
【0004】
13群の髄膜炎菌血清群が、莢膜多糖における抗原性の相違に基づいて同定されているが、最も一般的なものはA、BおよびCであって、これらが世界中の疾患の90%の病因となっている。血清群Bは、欧州、米国およびラテンアメリカの数カ国において最も一般的な髄膜炎菌性疾患の病因である。
【0005】
莢膜多糖に基づく血清群A、C、WおよびYのワクチンはすでに開発されていて、髄膜炎菌性疾患の発生を抑えることが示されている(Peltolaら, 1985 Pediatrics 76; 91-96)。しかし、血清群Bは免疫原性が弱く、主としてIgMアイソタイプの過渡的な免疫応答しか誘導しない(Ala’Aldeen DおよびCartwright K 1996, J. Infect. 33; 153-157)。従って、ほとんどの温帯の国々において疾患の大部分の原因となっている血清群Bの髄膜炎菌に対して現在利用できる、広範に有効なワクチンは存在しない。欧州、オーストラリアおよび米国において主として5歳未満の子供に血清群Bによる疾患の発生が増加しつつあるため、これは特に問題である。血清群B髄膜炎菌に対するワクチンの開発は、その莢膜多糖がヒト神経細胞接着分子と免疫学的に類似しているために免疫原性が弱いので、特に困難となる。従って、ワクチン製造の戦略は、髄膜炎菌外膜の表面露出構造に全力を集中してきたが、上記抗原が株間で著しく変化に富むため、阻まれてきた。
【0006】
さらなる開発によって、細菌膜の正常な成分を構成する多数のタンパク質を含有しうる外膜小胞から作られたワクチンが導入されるに至った。これらの1つは、髄膜炎菌血清群BおよびCに対するVA-MENGOC-BC(登録商標)キューバワクチンである(Rodriguezら, 1999 Mem Inst. Oswaldo Cruz, Rio de Janeiro 94; 433-440)。このワクチンは、莢膜多糖ACワクチンによる予防接種プログラムによって無くすことのできなかった、キューバにおける侵襲性髄膜炎菌性疾患の発生に対抗できるように設計された。流行している血清群はBおよびCであるが、VA-MENGOC-BC(登録商標)ワクチンは、髄膜炎菌血清群Bの株に対して83%の推定ワクチン効率で、発生を抑制することに成功した(Sierraら, 1990 In Neisseria, Walter Gruyter, Berlin, m. Atchmanら, (編) p 129-134;Sierraら, 1991, NIPH Ann 14; 195-210)。このワクチンはある特定の発生に対して有効であったが、誘導された免疫応答は他の髄膜炎菌株に対しては感染防御しないと考えられる。
【0007】
ラテンアメリカにおいて同種および異種の血清群B髄膜炎菌株により引き起こされた流行時に実施されたその後の有効性評価研究は、年長の小児および成人ではある程度の有効性を示したが、感染の危険の最も大きい年少の小児ではその有効性は著しく低かった(Milagresら, 1994, Infect. Immun. 62; 4419-4424)。かかるワクチンが英国のように多株の地方病を有する国々ではどれほど有効であるか疑わしい。異種株に対する免疫原性に関する研究は、特に乳幼児においては、限定された交差反応性血清殺菌活性しか示さなかった(Tapperoら, 1999, JAMA 281; 1520-1527)。
【0008】
第2の外膜小胞ワクチンは、ノルウェーにおいてスカンジナビア地方で流行している株の典型的な血清型Bアイソタイプを用いて開発された(Fredriksenら, 1991, NIPH Ann, 14; 67-80)。このワクチンは臨床試験でテストされ、29ヶ月後に57%の防御効果があることが明らかになった(Bjuneら, 1991, Lancet, 338; 1093-1096)。
【0009】
しかし、外膜小胞をワクチンに使用することはいくつかの問題を伴う。例えば外膜小胞(OMV)は毒性のリポ多糖(LPS)を含有する。ワクチンの毒性反応を防止するために、界面活性剤を用いて処理して大部分のLPSを除去することによって外膜小胞の毒性を低減することができる。この処理は残念なことに他の潜在的に重要なワクチン成分、例えば表面露出リポタンパク質も除去する。
【0010】
imp遺伝子は、グラム陰性菌の外膜タンパク質であるImp/OstAタンパク質をコードする。Imp/OstAは大腸菌において最も徹底した研究が行われていて、外膜透過性にある役割を果たすことが始めて記載された(Sampsonら, 1989 Genetics 122,491-501)。次いでImp/OstAは大腸菌において有機溶媒耐性を決定することが見出された(Aonoら, 1994 Appl. Environ. Microbiol. 60, 4624-4626)。Imp/OstAはn-ヘキサンの流入を低下させることにより大腸菌のn-ヘキサン耐性に寄与することが報じられている(Abeら, 2003, Microbiology 149,1265-1273)。
【0011】
msbA遺伝子は最初、大腸菌において、脂質A生合成(biosynthesis)の最終段階に関わる酵素をコードするhtrB(IpxL)遺伝子における突然変異のマルチコピーサプレッサーとして同定された(KarowおよびGeorgeopoulos, 1993. Mol Microbiol. 7,69-79)。MsbAタンパク質はABC(ATP-結合カセット)輸送体のファミリーに属する。大腸菌の温度感受性突然変異体は、制限増殖温度にシフトすると、内膜中にLPSならびに3種のPLを蓄積すると報じられている(Doerrlerら, 2001 J. Biol. Chem. 276,11461-11464)。この結果は、内膜を横切るLPSおよびPLの移行におけるおよび/または、先に報じられたように(PolissiおよびGeorgopoulos, 1996 Mol. Microbiol. 20,1221-1233)、輸送プロセスの後期段階におけるMsbAの役割を示した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
グラム陰性菌感染、特にナイセリア属菌感染の治療および予防に使用するための改良されたワクチンが必要である。特に重要なことは、全細胞または外膜小胞調製物を含有するワクチンにおけるLPS毒性の問題を解決するとともに、所望の抗原を外膜に保持するのを保証することがである。本出願は、その表面上に野生型株と比較してLPSが減少したかまたはLPSを有しないグラム陰性菌突然変異株、特にナイセリア属菌株、例えば髄膜炎菌などから調製した外膜小胞ワクチンの一般概念を開示する。かかるワクチンは、外膜小胞を低濃度の界面活性剤を使うかまたは界面活性剤を全く使わずに抽出するプロトコルを用いて生産することができ、従って外膜小胞表面上のリポタンパク質などの防御抗原を保持するという利点を有する。これは、低レベル(野生型レベルの50、40、30、20または10%未満)のLPSが突然変異株において維持され、次の利点:i)LPSをそれ自体なお抗原として利用できることおよびii)生産目的用に株がより良く増殖できることのうちの1つまたは両方が実現される場合に特に好ましい。本発明者らは、ImpまたはMsbAタンパク質のいずれかを破壊すると、かかる株および外膜小胞ワクチンを生産しうることを見出した。これらの目的のために特に好ましい突然変異体はimp遺伝子の機能の破壊である。
【0013】
本発明はさらに、突然変異ImpまたはMsbAタンパク質、例えば、Impタンパク質由来の主鎖ポリペプチドと少なくとも1つの異なるタンパク質由来のインサート領域とを含んでなり、少なくとも1つのImp細胞外ループの一部もしくは全てが少なくとも1つのさらなるタンパク質由来の1以上のポリペプチドにより置換えられたキメラタンパク質を提供する。また、少なくとも1つのImp細胞外ループの一部もしくは全てと、Tヘルパーエピトープを与える異なる担体タンパク質とのキメラを含んでなるワクチン成分も提供する。
【0014】
本出願は、LPSのグラム陰性菌外膜への輸送を調節するタンパク質を開示する。特に、ImpにはLPSのグラム陰性菌外膜への輸送を調節するある機能が与えられている。本出願はさらに、MsbAがLPSのナイセリア属菌の外膜への輸送を調節すること、およびこのタンパク質を破壊しても外膜へのリン脂質輸送は破壊されないことを開示する。impもしくはmsbA遺伝子のいずれかの発現のダウンレギュレーションによるかまたはImpもしくはMsbAタンパク質の構造を破壊してLPSを外膜へ輸送しないようにすることのいずれかによるImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションは、図5および10に示したようにほとんどのLPS(しかし全てではない)が細胞表面に到達できないようにする。ImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションはまた、局在化できなかったLPSによるLPS合成のフィードバック抑制によって、細菌内に存在するLPSの量の減少をもたらす。従って、ImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションは、界面活性剤処理後に達成されるレベルと等価かまたはそれより低いレベルのLPSをもつグラム陰性菌(好ましくはナイセリア属菌)を生じる。かかる細菌は低毒性を有する一方、LPSが細菌/ワクチン組成物の免疫原性に寄与しうるのに十分なLPSを保持する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態のさらなる有利な態様は、Impタンパク質を、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌株、より好ましくは髄膜炎菌(N. meningitidis)の外膜上の好都合な異種抗原を提示するための骨格として利用することである。これらの抗原は(表面露出)Impループの1つの部位に位置している。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態のさらなる利点は、Impの細胞外ループのいくつかを本発明のキメラタンパク質中に保持する場合に実現される。細胞外ループのアミノ酸配列はよく保存されていて、Impの細胞外ループに対する抗体は広範囲の細菌、好ましくはナイセリア属菌株と交差反応するに違いない。
【0017】
ある好ましい実施形態において、本発明は、LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質、例えばImpもしくはMsbAがダウンレギュレーションされて外膜へのLPS輸送が破壊されたグラム陰性菌を提供する。
【0018】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の突然変異したまたはキメラタンパク質をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド、本発明のキメラタンパク質をコードする配列を含んでなる発現ベクターおよび上記発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドは細菌ゲノムを包含するものではない。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明は、外膜へのLPS輸送を調節するタンパク質、例えばImpもしくはMsbAの発現がダウンレギュレーションされ、その結果、外膜小胞が、LPSの外膜への輸送が破壊されてない類似のグラム陰性菌株由来の外膜小胞より低いLPS含量を有する、ある株からの外膜小胞調製物を提供する。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のキメラタンパク質または外膜小胞調製物を生産する方法を提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のグラム陰性菌(好ましくはナイセリア属菌)またはその画分もしくは膜、本発明のキメラタンパク質、または本発明の外膜小胞調製物、および製薬上許容される担体を含んでなる医薬調製物、好ましくはワクチンを提供する。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明は、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を治療または予防する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面の説明
(後述の「図面の簡単な説明」を参照のこと。)
詳細な説明
本明細書において、本発明者らは、「含んでなる」、「含む」という用語が、あらゆる場合に、任意に「からなる」という用語で置き換え可能であることを意図している。
【0024】
用語リポ多糖(LPS)とリポオリゴ糖(LOS)とは互換的であって問題の細胞株にとって正しい用語を採用するものとする。
【0025】
外膜へのLPS輸送が低下したグラム陰性菌
本発明の一態様は、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現がダウンレギュレートされ、その結果、外膜中のLPSのレベルが野生型グラム陰性菌と比較して低下したかまたは、その結果、外膜へのLPS輸送が破壊されたグラム陰性菌である。外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の例はImpおよびMsbAである。外膜へのLPS輸送に関わる1、2、3、4または5種以上のタンパク質を機能的にダウンレギュレートすることができる。
【0026】
野生型グラム陰性菌は、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現が破壊されてない対応するグラム陰性菌として定義される。
【0027】
LPS輸送に関わるタンパク質の機能的ダウンレギュレーションは致死性表現型をもたらしてはならない。例えば、MsbAダウンレギュレーションの場合、グラム陰性菌はリン脂質輸送が破壊されている大腸菌の株でないことが好ましい。
【0028】
impおよび/もしくはmsbA遺伝子からの発現のいずれかをダウンレギュレートすることによりまたはImpおよび/もしくはMsbAタンパク質の構造を破壊することによりImpおよび/もしくはMsbA発現がダウンレギュレートされると、その結果、LPSを外膜に効率的に輸送しなくなり、すなわち、その結果、外膜中に存在するLPSの量が低下する。
【0029】
「ダウンレギュレートされる」は「機能的にダウンレギュレートされる」を意味することが好ましい。これは、発現のダウンレギュレーションにより、または遺伝子の破壊により実施して発現が起こらないようにすることができる。これはまた、LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の構造をアミノ酸の欠失、アミノ酸の挿入もしくはアミノ酸の置換により改変して、その結果、得られるタンパク質がLPSを、非突然変異体タンパク質より低い効率でグラム陰性菌の外膜へ輸送することによっても達成することができる。
【0030】
LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の機能的ダウンレギュレーションは、Impおよび/またはMsbAがダウンレギュレートされてないグラム陰性菌の類似の株と比較して、外膜上のLPSの量の少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、好ましくは80%、90%または95%または99%または100%の低下をもたらす。
【0031】
LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の発現レベルを破壊する場合、外膜のLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の量は、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは70%、80%、90%、95%、98%または100%だけ低下する。場合によってはimpとMsbAの両方の発現レベルを破壊する。
【0032】
ある好ましい実施形態においては、本発明のグラム陰性菌は、突然変異したLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えば、Impおよび/またはMsbA)であって、配列の一部を除去して末端切断タンパク質を形成させることにより、または配列を変化させてLPS輸送活性を低下もしくは喪失させることにより、またはタンパク質の配列の一部を欠失させてそれを異なるタンパク質からの配列と置き換えてキメラタンパク質を作ることにより、タンパク質の構造が破壊された上記タンパク質を含んでなる。
【0033】
ある好ましい実施形態においては、Impタンパク質の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループの少なくとも一部分が除去されている。欠失した1以上の配列は場合によっては異なるタンパク質からの配列により置き換えられてキメラタンパク質を作る。本発明者らは、Impタンパク質が異種ペプチドまたはエピトープを有用なコンフォメーションでディスプレイするための非常に優れた足場(scaffold)を、特にImp細胞外ループ中に挿入するかまたは置き換えたときに、提供することを見出した。これらを含有するかかるImpタンパク質および外膜小胞は本発明の独立した態様を形成する。
【0034】
本発明のグラム陰性菌は、好ましくは、下記の本発明の突然変異したまたはキメラタンパク質の少なくとも1つを含んでなる。
【0035】
グラム陰性菌は、グラム陰性菌のいずれかの好適な株から選択する。Imp発現を標的とする場合、野生型グラム陰性菌はImp相同体を発現しなければならない(従って、本発明のこの態様に対するグラム陰性菌は、好熱菌属のThermotoga maritima、双球菌属のDeinococcus radiodurans、Bライム病菌(Borrelia burgdorferi)または梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidium)由来ではない)。MsbA発現を標的とする場合、MsbAダウンレギュレーションは致死表現型をもたらさない、従って、本発明のこの態様に対するグラム陰性菌は大腸菌でない。好ましいグラム陰性菌としては、百日咳菌(Bordetella pertussis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、羊精巣上体炎菌(Brucella ovis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittacci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、大腸菌(Esherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)が挙げられる。最も好ましいグラム陰性菌は髄膜炎菌である。
【0036】
タンパク質およびキメラタンパク質
本発明のさらなる態様は、LPSを外膜へ輸送する機能が破壊されている突然変異MsbAまたはImpタンパク質である。これは、MsbAおよび/またはImpの領域を欠失させて末端切断タンパク質を形成させるかまたはポリペプチド配列内のアミノ酸を突然変異させることにより達成することができる。そのMsbAまたはImpの配列の1以上の領域を他のタンパク質由来の配列と交換したキメラタンパク質も、LPSを外膜へ輸送する機能を破壊するために利用することができる。
【0037】
キメラタンパク質は2種以上の異なるタンパク質由来のポリペプチド配列を含有するタンパク質である。キメラタンパク質は、少なくとも1つの他のタンパク質由来の配列が挿入または付加された骨格ポリペプチドを含有する。典型的には、骨格ポリペプチドがキメラタンパク質の大部分を構成し、本発明の場合にはLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質、例えばImpまたはMsbAタンパク質由来である。いくつかの本発明の実施形態では、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)はキメラタンパク質の小画分を構成しうる。
【0038】
本発明のキメラタンパク質がImp突然変異体であれば、それは
Impタンパク質由来の少なくとも1つの部分(場合によっては少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の部分)および少なくとも1種の異なるタンパク質(場合によっては少なくとも2、3、5、6、7、8、9または10種の異なるタンパク質)由来の少なくとも1つの部分(場合によっては少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の部分)を含んでなる。
【0039】
「から誘導された(または、由来の)」はタンパク質配列の起源を示す。から誘導された(または、由来の)の配列は、完全なタンパク質配列および完全なタンパク質配列の一部分の両方を包含する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、タンパク質の大部分がImpでありかつその細胞外ループを他のタンパク質からのペプチドを運ぶために、場合によっては少なくともいくつかの1以上のImp細胞外ループを欠失させることにより、適合させたキメラタンパク質を含む。これらはまた、異なるタンパク質、好ましくは細菌外膜タンパク質の構造中に組み込まれたImpの少なくとも1つの細胞外ループを含有するキメラタンパク質を含む。これらはまた、T細胞エピトープの担体に連結されたImp由来の少なくとも1つの細胞外ループも含む。その連結は、ペプチド結合、好ましくは以下に記載のコンジュゲーションプロセスにより形成された共有結合、または非共有結合の相互作用であってもよい。
【0041】
場合によっては、キメラタンパク質は本発明のグラム陰性菌から誘導しうる。
【0042】
好ましくは、本発明のグラム陰性菌およびキメラタンパク質は、いずれかのグラム陰性菌由来のImpまたはMsbAポリペプチドを含有し、上記グラム陰性菌は、好ましくは百日咳、モラクセラ・カタラーリス、マルタ熱菌、羊精巣上体炎菌、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチ、大腸菌、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、淋菌、髄膜炎菌、緑膿菌およびエルシニア・エンテロコリチカ由来、最も好ましくは髄膜炎菌由来である。最も好ましくは、本発明のキメラタンパク質は、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%または99%同一性を配列番号1の対応する配列と共有する配列をもつImpポリペプチドを含有する。最も好ましくは、本発明のキメラタンパク質は少なくとも70%、80%、90%、95%または99%同一性を配列番号2の対応する配列と共有する配列をもつMsbAポリペプチドを含有する。キメラタンパク質はタンパク質の配列の一部分しか含有しないので、配列同一性の程度は対応する配列に基づいて計算する。これは、欠失されたおよび/または置換されたImpまたはMsbA配列の部分はこの配列同一性計算に含まれないことを意味する。
【0043】
あるいは、ImpまたはMsbAポリペプチドがキメラタンパク質の少なくとも50%を構成する場合、キメラタンパク質の完全配列は少なくとも40%、50%、60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%または95%同一性を配列番号1または配列番号2の配列と共有する。
【0044】
本発明者らはImpのトポロジーモデルを解明して、9個の(表面露出)ループの存在を示した。Impタンパク質の表面ループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループからの少なくともいくつかのアミノ酸を、インサートとしての非天然、すなわち異種配列により置換することができる。ループのいずれかの少なくともいくつかを異種配列により置換することができる、しかし、挿入する、置換する、改変するまたは欠失させるのが好ましいループはループ3、ループ8、ループ6およびループ2の1個以上である。変えるのが好ましいループの組合わせとしては、ループ3;ループ8;ループ3および8;ループ6;ループ3および6;ループ6および8;ループ3、6および8;ループ2;ループ2および3;ループ2および6;ループ2および8;ループ2、3および6;ループ2、3および8;ループ2、6および8;ループ2、3、6および8が挙げられる。異種配列により置換する(または改変するまたは欠失させる)ループの好ましい組合わせは、場合によってはループ1、4、5、7および9の1個以上の置換(または改変または欠失)と組合わせる。さらなる好ましい実施形態においては、全9個のループの少なくともいくつかを欠失させるかまたは欠失させて異種配列により置換する。
【0045】
細胞外ループの欠失のサイズは、少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸である。欠失した配列は、場合によっては少なくとも6、10、15、20、30、40、50、60または70アミノ酸のインサート配列により置換えられる。
【0046】
好ましいキメラタンパク質は、配列番号1のアミノ酸357-416、648-697、537-576、295-332、252-271、444-455、606-624、482-501、または721-740のうちの1、2、3、4、5、6、7、8または9ループに対応する配列がその骨格ポリペプチドから不在であるImp骨格を含有する。少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸が1以上の上記配列から不在であってもよい。
【0047】
置換配列またはインサート(もし用いるのであれば)は異なるタンパク質由来である。それは細菌の同じ株または異なる株由来であってもよく、好ましくは細菌外膜タンパク質由来である。かかる置換配列は保存されていることおよび/または表面露出されていること、すなわち、免疫応答、好ましくは細菌生物の1以上の株に対する免疫応答を生成できることが好ましい。好ましくは、1つのループまたはその部分は単一タンパク質由来のインサート配列により置換される。複数ループが置換される場合、それらは好ましくは細菌、好ましくはナイセリア属菌の異なる株からの異なるタンパク質または同じタンパク質由来のインサートにより置換される。
【0048】
一実施形態においては、置換配列は、淋菌または髄膜炎菌などのナイセリア属菌外膜タンパク質から誘導される。かかる好適な外膜タンパク質の一例は、TbpAと呼ばれるナイセリア属菌鉄調節タンパク質を記載するUS 5,912,336に与えられている。置換配列は、都合よくTbpAのループ2、3、4、5および8のいずれか1個以上から誘導することができる。これらのループは一般にそれぞれTbpAのアミノ酸226-309;348-395;438-471;512-576および707-723に対応する。好ましくは、ループ4、5および8の1個以上が組み込まれる。インサートはTbpA-高分子量および/またはTbpA-低分子量から誘導される(下記の通り)。ある好ましい実施形態において、TbpA-高分子量のインサートがあるImp細胞外ループの少なくとも一部分を置換しそしてTbpA-低分子量のインサートが異なるImp細胞外ループの少なくとも一部分を置換する。好ましくは、上記の好ましいループ組合わせが置換される。
【0049】
かかる好適な外膜タンパク質の他の例は、髄膜炎菌由来のNhhA(またはHsf)表面抗原を記載するWO01/55182に与えられている。置換配列は都合よく、一般にC2、C3、C4およびC5と呼ばれるNhhAタンパク質の1以上の定常域から誘導することができる。本発明に用いることができる他の置換配列の例はEP 0 586 266に記載されている。
【0050】
Impループ(特にループ3および/または8)と置換することができるさらなるナイセリア属菌OMPループは、
PorAループ4[または可変域2](http//neisseria.org/nm/typing/porA/を参照);
PorAループ5(「病原性ナイセリア種の外膜ポーリンのトポロジー(Topology of outer membrane porins in pathogenic Neisseria spp)」, van der Ley, Poolmanら, Infect Immun 1991, 59, 2963-71に記載;PorA P1.7,16(H44/76)ループ5のその配列はRHANVGRNAFELFLIGSGSDQAKGTDPLKNHである);
LbpA表面露出ループ4、5、7、10および12、これらはアミノ酸210-342、366-441、542-600、726-766および844-871にそれぞれ対応し、12が好ましい(配列KGKNPDELAYLAGDQKRYSTKRASSSWST)[LbpA表面ループのさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるPrinzら, 1999 J Bacter. 181: 4417を参照];
NspA表面露出ループ1、2、3または4、これらはアミノ酸配列25-54、61-87、103-129および149-164にそれぞれ対応し、好ましくはループ2(例えばFAVDYTRYKNYKAPSTDFKLYSIGASA)および/または3(例えばARLSLNRASVDLGGSDSFSQTSIGLGVL)を挿入する(これらのループは全く小さいので、理想的には全てのImpループ2および/または8を除去しないでこれらのループを導入し、そしてもし両方を導入するのであれば、これらをループ2または8に(または逆でも可)導入してNspAのループ2および3の間に存在するコンフォメーショナルエピトープを保存することを試みることが好ましい)[NspAループのさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるVandeputte-Ruttenら, 2003 JBC 278: 24825を参照];
Omp85の表面露出ループ(本明細書に参照により組み入れられるScience 2003 299: 262-5、および支持するオンライン材料、図S4を参照)である。
【0051】
あるいは、細菌糖抗原のペプチドミモトープを上記の方法でImp中に組み込んでもよい。好ましくはナイセリア属菌LOSのミモトープをループ2および/または8中に組み込んで、ワクチンの毒性影響を与えることなくこの重要抗原に対する免疫応答を都合よく刺激する。LOSミモトープは当業界で公知である(本明細書に参照により組み入れられるWO 02/28888とその引用文献を参照)。
【0052】
本発明のある好ましい実施形態においては、キメラタンパク質は少なくとも1つのImp由来の細胞外ループの全てまたは1つを含んでなる。図7に示したように、Impタンパク質はグラム陰性株の間でよく保存されていて、従ってグラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌の色々な株と反応する交差反応性抗体を誘発する抗原である。好ましくは本発明のキメラタンパク質は、Imp細胞外ループ1、2、3、4、5、6、7、8および/または9のうち少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループの少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸を含んでなる。保持すべきImp細胞外ループの好ましい組み合わせは、ループ3および8、ループ3および6、ループ6および8、ループ3、6および8または全9細胞外ループである。
【0053】
本発明の一実施形態においては、1以上のImpの細胞外ループ(好ましくはループの一部でないImp配列を実質的に欠く)を異なるタンパク質由来の配列と共有結合で連結する。これは、少なくとも1つのImp細胞外ループのポリペプチド配列を少なくとも1つの異なるタンパク質(担体として作用する)のポリペプチド配列と連結してキメラタンパク質を形成する、ペプチド結合を介して達成することができる。あるいは、下記のコンジュゲーション法を用いて、1以上の細胞外Impループを、担体分子、好ましくはタンパク質または多糖またはオリゴ糖またはリポ多糖とコンジュゲートする。担体は、好ましくは、T細胞エピトープを含んでなるタンパク質、例えば破傷風トキソイド、破傷風トキソイドフラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、プロテインD(US6342224)である。
【0054】
本発明の突然変異体タンパク質は、通常のタンパク工学技法を用いて調製できることは理解されるであろう。例えば、本発明の、または野生型Impをコードするポリヌクレオチドを、ランダム突然変異誘発、例えばトランスポゾン突然変異誘発を用いて、または位置指定突然変異誘発を用いて突然変異させることができる。
【0055】
本発明のタンパク質配列または本発明において使用するタンパク質配列は、基準として提供されているものであり、本発明は本明細書中に示す特定の配列またはそれらの断片に限定されず、例えば関連する細菌性タンパク質などの任意の供給源から得られる相同配列、および合成ペプチド、ならびに変異体(特に天然変異体)またはその誘導体も含むことは理解されよう。提示したループ配列は、基準としてであって、上記ループ内に存在するエピトープを含むいずれのループ配列も利用できるとが想定される。
【0056】
従って、本発明は、本発明のまたは本発明において使用するためのアミノ酸配列の変異体、相同体もしくは誘導体、ならびに、それらのアミノ酸配列の変異体、相同体もしくは誘導体を包含する。
【0057】
本発明の文脈において、相同配列とは、アミノ酸レベルで少なくとも60、70、80または90%同一であり、好ましくは少なくとも95または98%同一であるアミノ酸配列を含むものとする。本発明の文脈では、相同性は類似性(すなわち、同様の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点からも考えることができるが、相同性は配列同一性として表わすことが好ましい。
【0058】
相同性比較は、目視で行うことができるが、より一般には、容易に利用可能な配列比較プログラムを用いて行うことができる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の%相同性を算出することができる。
【0059】
%相同性は、連続した配列全体にわたって算出することができる。すなわち、一方の配列を他方の配列とアライメントをとり、1回に1残基づつ、一方の配列の各アミノ酸を、他方の配列の対応するアミノ酸と直接比較する。これは「ギャップなし」アライメントと呼ばれる。典型的には、かかるギャップなしアライメントは、比較的少数の残基(例えば50個未満の連続アミノ酸)においてのみ行われる。
【0060】
これは非常に簡単でバラツキのない方法であるが、例えば他の点では同一である一対の配列において、1つの挿入または欠失が、それに続くアミノ酸残基をアライメントからはみ出させてしまい、従って、広域アライメント(global alignment)を行った場合に、%相同性を大きく下げてしまう可能性があることを考慮に入れていない。従って、多くの配列比較方法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを課すことなく、可能性のある挿入および欠失を考慮した、最適なアライメントを得るように設計されている。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して、局所的相同性を最大限にしようと試みることにより達成される。
【0061】
しかし、これらのより煩雑な方法では、アライメント中に存在する各ギャップに「ギャップペナルティー」が割り当てられて、同数の同一のアミノ酸では、できるだけギャップが少ない(2つの比較配列間がより高度に関連していることを反映する)配列アライメントが多数のギャップを含んだ場合よりも高いスコアを達成するようになっている。典型的には、1つのギャップの存在について比較的高いコストを課し、そのギャップ内の後続する各残基についてペナルティーが小さい、「アフィン(Affine)ギャップコスト」が用いられる。これは、最も一般に用いられるギャップスコアリングシステムである。勿論、ギャップペナルティが高ければ、ギャップがより少ない最適化されたアライメントが得られる。多くのアライメントプログラムでは、ギャップペナルティを変えることができる。しかし、配列の比較にそのようなソフトウェアを使用する場合には、デフォルト値を用いることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を用いる場合、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペナルティは1つのギャップについては−12であり、各伸張については−4である。
【0062】
従って、最大%相同性を算出するには、まず、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適なアライメントを得ることが必要である。そのようなアライメントを実行するための好適なコンピュータープログラムは、限定されるものでないが、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereuxら, 1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実行できるその他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら, 1999 同上-Chapter 18を参照)、FASTA(Atschulら, 1990, J. Mol. Biol., 403-410)およびGENEWORKS比較ツールセットが挙げられる。BLASTおよびFASTAは共に、オフライン検索およびオンライン検索の場合に利用できる(Ausubelら, 1999 同上, p.7-58〜7-60を参照)。しかし、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0063】
最終的な%相同性は同一性として測定できるが、アライメントプロセス自体は、典型的にはオール・オア・ナッシングの対比較(pair comparison)に基づくものではない。その代わり、一般には、化学的類似性または進化距離に基づいてそれぞれの対比較にスコアを割り当てる換算類似性スコアマトリックスを用いる。一般に用いられるかかるマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラムセットのデフォルトマトリックス)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公開デフォルト値またはもし供給されていれば顧客向け特注のシンボル比較表を用いる(さらなる詳細はユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージでは公開デフォルト値を、それ以外のソフトウェアではBLOSUM62などのデフォルトマトリックスを用いることが好ましい。
【0064】
ソフトウェアにより最適なアライメントが得られたら、%相同性、好ましくは%配列同一性を算出することができる。ソフトウェアは、典型的には、これを配列比較の一部として行って結果を数値として出す。
【0065】
本明細書中でタンパク質が具体的に述べられている場合、それは好ましくは全長タンパク質について言及するものであるが、(特にサブユニットワクチンの文脈においては)それらの抗原性断片も包含しうる。好ましい断片としては、エピトープを含むものが挙げられる。特に好ましい断片としては、少なくとも1つの表面ループを有するものが挙げられる。本発明の突然変異体に関しては、このループは、好ましくはループ7および/または5以外のものである。これらの断片は、このタンパク質のアミノ酸から連続して採られた、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは20個のアミノ酸、さらに好ましくは30個のアミノ酸、さらに好ましくは40個のアミノ酸、最も好ましくは50個のアミノ酸を含有するか、またはそれらを含んでなる。さらに、抗原性断片とは、ナイセリア属菌タンパク質(またはその他のグラム陰性菌)に対して生じた抗体または哺乳動物宿主がナイセリア属菌に感染することにより生じた抗体と免疫学的に反応性である断片をいう。また、抗原性断片としては、有効量を投与した場合、ナイセリア属菌(またはその他のグラム陰性菌)感染に対して防御性免疫応答を惹起させる断片が挙げられ、さらに好ましくは、それは髄膜炎菌および/または淋菌の感染に対して防御性であり、最も好ましくは、それは髄膜炎菌血清群Bの感染に対して防御性である。
【0066】
本発明にはまた、本明細書に記載したタンパク質の変異体、すなわち、1つの残基が同様の特性を有する他のアミノ酸により置換される保存的アミノ酸置換によって基準物から変化しているタンパク質が含まれる。典型的なかかる置換は、AlaとValとLeuとIleとの間;SerとThrとの間;酸性残基AspとGluとの間;AsnとGlnとの間;および塩基性残基LysとArgとの間;または芳香族性残基PheとTyrとの間で行われる。特に好ましいものは、数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸がいずれかの組合せで置換、欠失または付加されている変異体である。
【0067】
本発明によるキメラタンパク質は好ましくは、少なくともある程度の野生型Impタンパク質の免疫学的活性を示す産物である。好ましくは、それは、次のうちの少なくとも1つを示す:
野生型Impを認識する抗体の産生を誘導する能力(必要であれば、本発明のImpタンパク質を担体に結合させた場合に);
実験的感染に対して防御することができる抗体の産生を誘導する能力;および/または
動物に投与した場合に、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染、例えば髄膜炎菌や淋菌感染に対して防御することができる免疫学的応答の発現を誘導する能力。
【0068】
好ましくは、本発明の突然変異体タンパク質は、交差反応性であり、さらに好ましくは、交差防御性である。
【0069】
本発明のキメラタンパク質は、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌、特に髄膜炎菌により引き起こされる疾患を予防、治療および診断するための予防用、治療用または診断用組成物において有用である。しかし、それは、例えば淋菌またはナイセリア・ラクタミカ菌(Neisseria lactamica)などに関しても同様の用途があり得る。
【0070】
本発明のキメラタンパク質では、それを免疫原およびワクチンとして使用するために、標準的な免疫学的技法を用いることができる。特に、任意の好適な宿主に、薬学上有効な量のキメラタンパク質を注射して、モノクローナルまたはポリクローナル抗Imp抗体を作製したり、あるいは、ナイセリア属菌疾患に対する防御性免疫応答の発現を誘導することができる。キメラタンパク質は、投与の前に、好適なビヒクル中で製剤化することができ、このようにして、薬学的に有効な量の1種以上の本発明のタンパク質を含んでなる医薬組成物を提供する。本明細書中で用いられる「薬学的に有効な量」とは、十分な力価の抗体を生起させて感染を治療または予防するImpタンパク質(または他の本発明のタンパク質)の量をいう。また、本発明の医薬組成物は、疾患の治療または予防に有用な他の抗原を含むことができる。
【0071】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチド、併せて、それらの変異体、誘導体および相同体も提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含むことができる。それらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。それらはまた、内部に合成または改変ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドの多くの異なるタイプの改変は、当業界では公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3'および/または5'末端でのアクリジンまたはポリリシン鎖の付加を含む。本発明の目的のために、本明細書に記載したポリヌクレオチドを、当業界で利用可能なあらゆる方法で改変することができると理解されたい。かかる改変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強する目的で行うことができる。
【0072】
1つの実施形態では、本発明の突然変異体タンパク質を、次の技法のいずれかを用いて作製する:カセット突然変異誘発、単一プライマー伸長、位置指定突然変異誘発のPCR法、例えば、Higuchiら, (1988) Nucleic Acids Res. 16:7351-67の4プライマー法、一方向欠失を含む位置指定突然変異誘発;ランダム突然変異誘発;ならびにファージディスプレイによる突然変異体タンパク質の選定。
【0073】
本発明のヌクレオチド配列に関連する「変異体」、「相同体」または「誘導体」という用語には、その配列からの、またはその配列への1個(またはそれ以上の)核酸の任意の置換、変異、改変、置き換え、欠失または付加が含まれ、但し、得られるヌクレオチド配列は、突然変異体ImpまたはMsbAポリペプチドをコードするものとする。
【0074】
上記のように、配列相同性に関しては、好ましくは、本明細書に示したポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の相同性(好ましくは同一性)があるか、または本明細書に示したポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の相同性(好ましくは同一性)がある。さらに好ましくは、少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の相同性(好ましくは同一性)がある。ヌクレオチドの相同性比較は、上記のように行うことができる。好ましい配列比較プログラムは、上記のGCG Wisconsin Bestfitプログラムである。デフォルトスコアリングマトリックスは、それぞれの同一ヌクレオチドに対して10の適合値(match value)およびそれぞれのミスマッチに対して-9を有する。それぞれのヌクレオチドに対して、デフォルトギャップ作成ペナルティは−50であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティは-3である。
【0075】
本発明はまた、本明細書に示す配列もしくは本明細書に示すポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列、またはそれらの任意の変異体、断片もしくは誘導体、または上記のいずれかの補体も包含する。ヌクレオチド配列は、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは少なくとも20、30、40または50ヌクレオチド長である。
【0076】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は、「核酸の鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合するプロセス」、ならびにポリメラーゼ連鎖反応技法で行われる増幅プロセスを含むものとする。
【0077】
本明細書に示したヌクレオチド配列、本明細書に示したポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、またはそれらの補体に選択的にハイブリダイズすることができる本発明のポリヌクレオチドは、一般に、本明細書に示す対応するヌクレオチド配列と、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25または30個、例えば少なくとも40、60または100個以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80または90%、さらに好ましくは少なくとも95%または98%相同である。好ましい本発明のポリヌクレオチドは、保存された領域をコードするヌクレオチドに対して相同な領域を含み、好ましくは、これらの領域に対して少なくとも80または90%、さらに好ましくは少なくとも95%相同(好ましくは同一)である。
【0078】
用語「選択的にハイブリダイズ可能な」は、プローブとして用いるポリヌクレオチドを、本発明の標的ポリヌクレオチドがバックグラウンドを有意に上回るレベルでそのプローブにハイブリダイズするとわかっている条件下で用いることを意味する。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えばcDNAまたはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングする際に存在する他のポリヌクレオチドによって起こり得る。この事象において、バックグラウンドとは、プローブとライブラリーの非特異的DNAメンバーとの相互作用により生じるシグナルのレベルを意味し、標的DNAにより観察される特異的相互作用と比較して1/10未満、好ましくは1/100未満の強度である。相互作用の強度は、例えば、プローブを32Pなどで放射標識することにより測定できる。
【0079】
ハイブリダイゼーション条件は、BergerおよびKimmel(1987, 「分子クローニング技法入門、酵素学の方法(Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology)」, Vol 152, Academic Press, San Diego CA)の教示のように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づくものであり、次に説明する所定の「ストリンジェンシー」を与える。
【0080】
最大のストリンジェンシーは、典型的にはほぼTm−5℃(プローブのTmよりも5℃低いもの)で;高ストリンジェンシーはTmよりも約5℃〜10℃低いところで、中程度ストリンジェンシーはTmよりも約10℃〜20℃低いところで、そして低ストリンジェンシーはTmよりも約20℃〜25℃低いところで起こる。当業者であれば理解するように、最大ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、同一のポリヌクレオチド配列の同定または検出に用いることができる一方、中程度(または低)ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、ほぼ同様のまたは関連するポリヌクレオチド配列の同定または検出に用いることができる。
【0081】
ある好ましい態様において、本発明は、ストリンジェント条件(例えば、65℃、0.1 x SSC{1 x SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Na3塩、pH 7.0})のもとで本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を包含する。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドが二本鎖である場合、その二本鎖の両方の鎖が、個々に、または組み合わせとして、本発明に包含される。そのポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補配列もまた、本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0083】
本発明の配列に対して100%相同ではないが本発明の範囲に含まれるポリヌクレオチドを、幾つかの方法で得ることができる。本明細書に記載されている配列の他の変異体を、例えば、ある範囲の個体(例えば異なる集団からの個体)から作製したDNAライブラリーを調べることにより得ることができる。さらに、他の細菌性相同体を得ることもでき、かかる相同体およびそれらの断片は、一般に、本明細書の配列表に示す配列に選択的にハイブリダイズすることができる。
【0084】
変異体および株/種相同体はまた、縮重PCRを用いて得ることができる。この縮重PCRは、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変異体および相同体に含まれる配列を標的とするように設計されたプライマーを使用するものである。保存された配列は、例えば、幾つかの変異体/相同体からのアミノ酸配列のアライメントをとることにより推定できる。配列アライメントは、当業界で知られているコンピューターソフトウェアを用いて実行できる。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く用いられている。
【0085】
縮重PCRにおいて用いられるプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、既知の配列に対する単一配列プライマーを用いて配列をクローニングするのに用いられるものよりも低いストリンジェンシー条件で用いられる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、プライマー(例えばPCRプライマー、別の増幅反応用のプライマー)、プローブ(例えば放射性または非放射性標識を用いて慣用の手段による露出する標識で標識したもの)を作製するのに使用してもよいし、あるいは、このポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。かかるプライマー、プローブおよび他の断片は、長さが少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30または40ヌクレオチドであり、本明細書に用いられる本発明のポリヌクレオチドという用語によっても包含される。好ましい断片は、長さが5000、2000、1000、500または200ヌクレオチド未満である。
【0087】
本発明に係るDNAポリヌクレオチドおよびプローブなどのポリヌクレオチドは、組換え、合成、または当業者に利用可能な任意の手段により作製できる。それらはまた、標準的な技法によりクローニングすることも可能である。
【0088】
一般に、プライマーは、一回に1個のヌクレオチドずつ作製する所望の核酸配列の段階的作製に関わる合成手段により作製される。これを自動化方法を用いて達成するための技法は、当業界で容易に利用できる。
【0089】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を用いて、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング法を用いて作製される。これには、クローニングしようとする配列の領域にフランキングする一対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチドのもの)を作製し、それらのプライマーを、動物またはヒトの細胞から得たmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅を起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を(例えば反応混合物をアガロースゲル上で精製することにより)単離し、増幅されたDNAを回収することが含まれる。これらのプライマーは、適切な制限酵素認識部位を含むように設計して、増幅されたDNAを好適なクローニングベクター中にクローニングできるようにすることができる。
【0090】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、少なくともキメラImpまたはMsbAタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むかまたは本発明の低下したLPS輸送体活性をもつ突然変異体ImpまたはMsbAタンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチドを含んでもよいベクターを用いることができる。(細胞のゲノムを改変することができる)本発明のベクターを用いて遺伝子工学的に作製された宿主細胞および組換え技法による突然変異体、好ましくはキメラImpタンパク質の生産がさらなる本発明の態様である。無細胞翻訳系を採用し、かかるタンパク質をDNA構築物由来のRNAを用いて生産することができる。
【0091】
本発明の組換えタンパク質を、当業者に周知の方法により、発現系を含む遺伝子工学的に作製された宿主細胞から調製することができる。
【0092】
本発明のタンパク質を組換え生産するために、宿主細胞を遺伝子遺伝子操作して、本発明の発現系もしくはその一部またはポリヌクレオチドを組み込むことができる。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入は、多数の標準的な実験マニュアル、例えばDavisら, 「分子生物学の基礎的方法(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY)」, (1986)およびSambrookら, 「分子クローニング:実験室マニュアル(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL)」, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載の方法、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング、弾道導入(ballistic introduction)および感染により実施することができる。
【0093】
好適な宿主の代表的な例としては、細菌細胞、例えばストレプトコッカス属(streptococci)、スタフィロコッカス属(staphylococci)、エンテロコッカス属(enterococci)、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス属(streptomyces)、シアノバクテリア(cyanobacteria)、枯草菌(Bacillus subtilis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)および髄膜炎菌の細胞など;真菌細胞、例えば酵母、クルベロミセス(Kluveromyces)、サッカロミセス(Saccharomyces)、担子菌(basidiomycete)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス(Aspergillus)の細胞など;昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)S2およびハスモンヨトウ(Spodoptera)Sf9など;動物細胞、例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV-1およびBowesメラノーマ細胞など;ならびに植物細胞、例えば裸子植物または被子植物の細胞などが挙げられる。
【0094】
本発明のタンパク質の作製には、非常に多種多様な発現系を用いることができる。かかるベクターとしては、特に、染色体由来、エピソーム由来、およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびアルファウイルス)に由来するベクター、ならびに、それらの組合せに由来するベクター、例えばプラスミドおよびコスミドやファージミドなどのバクテリオファージ遺伝子エレメントに由来するものが挙げられる。発現系構築物は、発現を調節したり発現を起こさせる調節領域を含むことができる。一般に、宿主内でのポリヌクレオチドの維持、増殖もしくは発現するおよび/またはタンパク質の発現に適しているいずれの系またはベクターも、これに関する発現に用いることができる。適当なDNA配列を、例えば、Sambrookら, 「分子クローニング、実験室マニュアル(MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL)」(前掲)に記載の種々の周知のルーチンな技法のいずれかにより、この発現系に挿入することができる。
【0095】
真核生物における組換え発現系において、翻訳したタンパク質を小胞体の内腔へ、ペリプラズム腔へ、または細胞外環境への分泌に対して、適当な分泌シグナルをその発現タンパク質中に組み込むことができる。これらのシグナルはタンパク質に対して内在性であってもよいし、あるいは、異種シグナルであってもよい。本発明のタンパク質を組換え細胞培養物から本発明の方法により回収および精製することができる。
【0096】
抗体
本発明のタンパク質を、かかるタンパク質に対して免疫特異的な抗体を産生させるための免疫原として使用することができる。
【0097】
本発明の特定の好ましい実施形態では、本発明のImpもしくはMsbAタンパク質に対する抗体が提供される。
【0098】
本発明のタンパク質に対して生じる抗体は、本発明のタンパク質またはその一方または両方のエピトープ保有断片、その一方または両方の類似体を、ルーチンな経路を用いて動物、好ましくは非ヒトに投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体を製造するためには、連続細胞系培養によって生産される抗体を提供する、当業界で公知の任意の技法を用いることができる。例としては、Kohler, G.およびMilstein, C., Nature 256: 495-497 (1975);Kozborら, Immunology Today 4: 72 (1983);Coleら, pg. 77-96 in 「モノクローナル抗体と癌療法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY)」, Alan R. Liss, Inc. (1985)などに記載の各種技法が挙げられる。
【0099】
一本鎖抗体を生産する技法(米国特許第4,946,778号)を用いて、本発明のタンパク質に対する一本鎖抗体を生産することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物もしくは動物、例えば他の哺乳動物などを用いて、本発明のタンパク質に対して免疫特異的なヒト化抗体を発現させることも可能である。
【0100】
あるいはまた、ファージディスプレイ技法を利用して、抗FrpBを持つものについてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅したv遺伝子のレパートリーから、または天然のライブラリーから、本発明のタンパク質に対して結合活性をもつ抗体遺伝子を選択することができる(McCaffertyら, (1990), Nature 348, 552-554;Marksら, (1992) Biotechnology 10, 779-783)。これらの抗体の親和性はまた、例えばチェーンシャッフリング(Clacksonら, (1991) Nature 352: 628)により向上させることができる。
【0101】
上記の抗体を用いて本発明のキメラまたは突然変異ImpまたはMsbAタンパク質を発現するクローンを単離するかまたは同定し、例えばアフィニティクロマトグラフィーによりタンパク質またはポリヌクレオチドを精製することができる。
【0102】
このようにして、特に、本発明のImpタンパク質に対する抗体を、感染症、特に細菌感染症、好ましくはナイセリア属菌感染症の治療に用いることができる。
【0103】
好ましくは、抗体またはそれらの変異体を、個体における免疫原性が低くなるように改変する。例えば、個体がヒトであれば、その抗体を、最も好ましくは、「ヒト化」することができ、その場合、ハイブリドーマ由来の抗体の1以上の相補性決定領域は、例えばJonesら (1986), Nature 321, 522-525またはTempestら, (1991) Biotechnology 9, 266-273に記載のように、ヒトモノクローナル抗体中に移植されている。
【0104】
本発明のタンパク質をレシピエントに投与することができる。そのレシピエントは、次いで、特定のワクチンからのチャレンジに応答して産生される免疫グロブリンの供給源となる。このように処置された被験体は、慣用の血漿分画法により高度免疫グロブリンが得られる血漿を提供する。この高度免疫グロブリンを別の被験体に投与して、ナイセリア属菌感染に対する抵抗性を付与するかまたはナイセリア属菌感染を治療する。本発明の高度免疫グロブリンは、乳児、免疫不全症の個体における、または治療が必要であって個体がワクチンに応答して抗体を産生する時間がない場合の、ナイセリア属菌疾患の治療または予防に特に有用である。
【0105】
本発明のさらなる態様は、本発明の医薬組成物に対して反応性のモノクローナル抗体(またはそのフラグメント;好ましくはヒトまたはヒト化フラグメント)を含む医薬組成物であり、これは、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌、さらに好ましくは髄膜炎菌もしくは淋菌、そして最も好ましくは髄膜炎菌の血清群Bによる感染の治療または予防に使用することができる。
【0106】
かかる医薬組成物は、本発明の2種以上の抗原に対して特異性を有する任意のクラスの全免疫グロブリン(例えばIgG1-4、IgM、IgA1もしくは2、IgDまたはIgE)であってもよいモノクローナル抗体、キメラ抗体またはハイブリッド抗体を含む。それらはまた、ハイブリッドフラグメントを含むF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、ScFvなどのフラグメントであってもよい。
【0107】
モノクローナル抗体の作製方法は当業界で周知であって、脾細胞と骨髄腫細胞との融合を含むことができる(KohlerおよびMilstein 1975 Nature 256; 495;「抗体-実験室マニュアル(Antibodies - a laboratory manual)」 Harlow and Lane 1988)。あるいは、モノクローナルFvフラグメントは、好適なファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる(Vaughan TJら, 1998 Nature Biotechnology 16; 535)。モノクローナル抗体は、公知の方法によりヒト化または部分ヒト化することができる。
【0108】
ワクチン
本発明の他の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、免疫学的応答を誘導する方法であって、その個体に本発明のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、または本発明のキメラタンパク質または本発明の外膜小胞、または本発明の医薬組成物もしくはワクチンを接種して、抗体および/またはT細胞の免疫応答を十分に引き起こして、上記個体を感染、特に細菌感染、そして最も特には髄膜炎菌感染から防御(または治療)することを含んでなる方法に関する。また、かかる免疫学的応答が細菌複製を遅くする方法も提供される。
【0109】
本発明のさらなる態様は、その体内で免疫学的応答を誘導することができる個体、好ましくはヒトに導入すると、かかる個体内で本発明のキメラタンパク質に対する免疫学的応答を誘導する免疫学的組成物に関する。好ましくはその免疫学的応答はImpエピトープおよび別のタンパク質からの少なくとも1つのインサートエピトープに対するものである。その免疫学的応答は治療目的または予防目的で使用することができるものであり、抗体免疫性および/または細胞免疫性、例えばCTLまたはCD4+ T細胞から惹起する細胞免疫性の形態をとりうる。
【0110】
また、本発明により、組成物、特にワクチン組成物、および本発明のタンパク質およびSato, Y.ら Science 273: 352 (1996)に記載のような免疫賦活性DNA配列を含んでなる方法が提供される。
【0111】
従って、本発明にはまた、本発明のグラム陰性菌もしくはその画分、または本発明のキメラタンパク質または本発明の外膜小胞調製物とともに、好適な担体、例えば製薬上許容される担体を含んでなるワクチン製剤も含まれる。このタンパク質は胃で分解されうるので、それぞれを、例えば皮下、筋肉内、静脈内または皮内投与を含む非経口投与として投与することが好ましい。非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌性化合物、および製剤を個体の体液、好ましくは血液と等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性の無菌注射用液;ならびに懸濁剤または増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回投与容器または複数回投与容器、例えば密閉したアンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、使用直前に無菌の液体担体を添加するだけでよい凍結乾燥条件で保存できる。製剤はまた、粘膜、例えば鼻腔内投与することもできる。
【0112】
本発明のワクチン製剤はまた、製剤の免疫原性を増大させるためのアジュバント系を含むことができる。典型的には、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを用いることができる。好ましくは、そのアジュバント系は、主にTH1型の応答を引き起こす。
【0113】
免疫応答は、2つの極端なカテゴリー、つまり体液性免疫応答または細胞性免疫応答(伝統的に、防御のための抗体によるエフェクター機能および細胞によるエフェクター機構によりそれぞれ特徴付けられる)に大きく区別することができる。これらの応答のカテゴリーは、TH1型応答(細胞性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と名付けられている。
【0114】
過度のTH1型免疫応答は、抗原特異的なハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球の産生およびナチュラルキラー細胞応答によって特徴付けることができる。マウスにおいて、TH1型応答はしばしばIgG2aサブタイプの抗体の生成により特徴付けられる一方、ヒトにおいて、これらはIgG1型抗体に相当する。TH2型免疫応答は、マウスにおけるIgG1、IgAおよびIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成によって特徴付けられる。
【0115】
これら2つのタイプの免疫応答の生起の背後にある駆動力はサイトカインであると考えられる。高レベルのTH1型サイトカインは、所与の抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促進する傾向がある一方、高レベルのTH2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。
【0116】
TH1型およびTH2型免疫応答の区別は絶対的なものではない。現実には、個人は、TH1型優位またはTH2型優位といわれる免疫応答を保持する。しかし、Mosmannおよび CoffmanによりマウスCD4+ve T細胞クローンにおいて記載された観点で、サイトカインのファミリーを考慮することがしばしば好都合である(Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) 「TH1とTH2細胞:色々なリンホカイン分泌のパターンが色々な機能的特性を生じる(TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties.)」 Annual Review of Immunology, 7, p145-173)。伝統的に、TH1型応答は、Tリンパ球によるINF-γおよびIL-2サイトカインの産生と関連付けられている。TH1型免疫応答の誘導としばしば直接関連付けられる他のサイトカイン、例えばIL-12はT細胞によって産生されない。これに対し、TH2型応答は、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-13の分泌と関連付けられている。
【0117】
ある特定のワクチンアジュバントはTH1型もしくはTH2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激に特に適していることが分かっている。伝統的に、ワクチン接種後または感染後の免疫応答のTH1:TH2バランスを最も良く示す指標としては、抗原による再刺激後の、in vitroでのTリンパ球によるTH1もしくはTH2サイトカインの産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体反応のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0118】
このように、TH1型アジュバントは、in vitroで抗原で再刺激されたときに、単離されたT細胞集団を選択的に刺激して高レベルのTH1型サイトカインを産生し、そしてCD8+細胞傷害性Tリンパ球とTH1型アイソタイプに関連付けられる抗原特異的免疫グロブリン反応との両方の発生を促進するものである。
【0119】
TH1細胞応答を優先的に刺激することができるアジュバントは、WO 94/00153およびWO 95/17209に記載されている。
【0120】
3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3 De-O-acylated monophosphoryl lipid A;3D-MPL)は、かかるアジュバントの1つであり、好ましいものである。これは、GB 2220211(Ribi)により公知である。化学的にはこれは3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAと4-、5-もしくは6-アシル化鎖との混合物であり、Ribi Immunochem, Montanaにより製造されている。3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許第0 689 454 B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。あるいは、LPSの他の非毒性誘導体を使用してもよい。
【0121】
好ましくは、3D-MPLの粒子は、0.22ミクロンのメンブレンを通して滅菌濾過するのに十分な程度小さい(欧州特許第0 689 454号)。3D-MPLは、1用量あたり、10μg〜100μg、好ましくは25〜50μgの範囲で存在し、その場合、抗原は典型的には1用量あたり2〜50μgの範囲で存在する。
【0122】
他の好ましいアジュバントは、キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られるHPLCで精製した非毒性画分であるQS21を含む。場合により、これを3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MDL)または他の非毒性LPS誘導体と混合してもよく、場合により担体を一緒に混合してもよい。
【0123】
QS21の製造方法は米国特許第5,057,540号に記載されている。
【0124】
QS21を含有する非反応原性(non-reactogenic)アジュバント製剤は、先に記載されている(WO 96/33739)。QS21およびコレステロールを含むかかる製剤は、抗原と一緒に製剤化したときに、優れたTH1刺激性アジュバントであることが分かっている。
【0125】
TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるさらなるアジュバントとしては、免疫調節性オリゴヌクレオチド(例えばWO96/02555に開示された非メチル化(unmethylated)CpG配列)が挙げられる。
【0126】
上記のものなどの色々なTH1刺激性アジュバントの組合せも、TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるアジュバントを提供するものと考えられる。例えば、QS21は、3D-MPLと一緒に製剤化することができる。QS21:3D-MPLの比率は、典型的には1:10〜10:1のオーダー、好ましくは1:5〜5:1のオーダー、そしてしばしば実質的に1:1である。最適な相乗効果のために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1の3D-MPL:QS21である。
【0127】
好ましくは、本発明のワクチン組成物中に担体も存在する。担体は水中油型エマルションであってもよいし、またはリン酸アルミニウムや水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩であってもよい。
【0128】
好適な水中油型エマルションは、スクアレン、αトコフェロールおよびTween 80などの代謝可能な油を含む。特に好ましい態様において、本発明のワクチン組成物中の抗原は、かかるエマルション中でQS21および3D-MPLと組み合わせる。さらに、水中油型エマルションは、スパン85(span 85)および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリン(tricaprylin)を含み得る。
【0129】
典型的には、ヒト投与の場合は、QS21および3D-MPLはワクチン中に1用量あたり1μg〜200μgの範囲、例えば10〜100μg、好ましくは10μg〜50μgで存在する。典型的には、この油含有水は2〜10%のスクアレン、2〜10%のαトコフェロール、および0.3〜3%のTween 80を含む。好ましくは、スクアレン:αトコフェロールの比率は、より安定なエマルションを提供するように、1以下である。スパン85(span 85)も1%のレベルで存在しうる。いくつかの事例では、本発明のワクチンがさらに安定化剤を含むことが有利でありうる。
【0130】
非毒性水中油型エマルションは、好ましくは水性担体中に非毒性油(例えばスクワランやスクアレン等)、乳化剤(例えばTween80等)を含む。水性担体は例えばリン酸緩衝生理食塩水であってもよい。
【0131】
水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に効力の高いアジュバント製剤がWO95/17210に記載されている。
【0132】
本発明はまた、本発明のワクチン製剤と他の抗原、特に癌、自己免疫疾患および関連する症状に有用な抗原を組み合わせて含む多価ワクチン組成物を提供する。かかる多価ワクチン組成物は、前述したTH-1誘導型アジュバントを含みうる。
【0133】
外膜小胞調製物
本発明の好ましい実施形態は、本発明のいずれか1つのグラム陰性菌から誘導されたかまたは本発明のキメラタンパク質を含んでなる外膜小胞調製物である。
【0134】
髄膜炎菌血清群B(menB)は、外膜ブレブを、工業的規模でのその製造を可能にするのに十分な量で排出する。外膜小胞も、細菌細胞を界面活性剤抽出する方法により製造することができる(例えば、EP 11243を参照)。
【0135】
従って、本発明の外膜小胞調製物は、Impエピトープおよび異種タンパク質からのエピトープ(グラム陰性菌からのその他の抗原の文脈内で)を含む多数の抗原を提供する好都合な方法である。
【0136】
好ましくは、本発明の外膜小胞調製物は、LPS輸送活性の喪失によって低下したLPSレベルを有する。好ましくは、本発明のキメラタンパク質または低下したLPS輸送活性をもつImpおよび/またはMsbAタンパク質の存在によって、Impがダウンレギュレートされてないグラム陰性菌の類似の株から誘導される外膜小胞調製物と比較して、少なくとも50%、60%、70%、好ましくは80%、90%またはより好ましくは95%または99%または100%の外膜上のLPS量の減少がもたらされる。これは、好ましくは、界面活性剤抽出段階なしに(または0.1、0.05または0.01%以下のDOCを用いて)外膜小胞を単離することによって実現される。
【0137】
最も好ましくは、本発明の外膜小胞調製物は十分に低いLPSのレベルを含有し、その結果、毒性は、患者に接種するときに外膜小胞調製物が容認しうるレベルの反応原性を有するレベルまで低下する。
【0138】
外膜調製物のさらなる特徴
外膜小胞調製物は、好ましくは、さらなる抗原がより高いレベルの発現を有するように、組換えによりそれらの発現をアップレギュレートすることにより遺伝子操作されている。本発明のキメラタンパク質に加えて、かかる外膜小胞調製物においてアップレギュレートしうる抗原の具体例としては、NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAが挙げられる。場合により、かかる調製物はLPS免疫型L2およびLPS免疫型L3のうちの一方または両方も含みうる。
【0139】
ナイセリア属菌株からのブレブ調製物の製造は、当業者に周知の方法のいずれかにより達成することができる。好ましくは、EP 301992、US 5,597,572、EP 11243号またはUS 4,271,147、Frederiksonら(NIPH Annals [1991], 14:67-80)、Zollingerら(J. Clin. Invest. [1979], 63:836-848)、Saundersら(Infect. Immun. [1999], 67:113-119)、Drabickら(Vaccine [2000], 18:160-172)またはWO 01/09350(実施例8)に開示されている方法を用いる。一般には、OMVを界面活性剤、好ましくはデオキシコラートにより抽出し、核酸を場合によっては酵素的に除去する。精製を、超遠心および場合によってはそれに続くサイズ排除クロマトグラフィーにより達成する。2以上の本発明の異なるブレブが含まれる場合、それらを単一の容器内で組合わせて本発明の多価調製物を形成させることができる(なお、もし本発明の異なるブレブが別々の容器内の別々の組成物であっても、それらが宿主に同時に[1回の通院で]投与されれば、その調製物も多価であるとみなされる)。OMV調製物は、通常、0.2μmフィルターで濾過滅菌し、好ましくは、該ブレブ調製物を安定化することが知られているスクロース溶液(例えば、3%)中で保存する。
【0140】
外膜小胞調製物中のタンパク質のアップレギュレーションは、OMV調製物が由来するナイセリア属菌株内への遺伝子の過剰コピーの挿入により達成することができる。あるいは、遺伝子のプロモーターを、OMV調製物が由来するナイセリア属菌株における、より強力なプロモーターで置換することができる。かかる技術はWO 01/09350に記載されている。遺伝子の追加コピーを導入するのであれば、過剰発現のために機能的に連結された非天然強力プロモーターも有することができる。タンパク質のアップレギュレーションは、OMV中に存在するタンパク質のレベルを、未改変髄膜炎菌(例えば、株H44/76)に由来するOMV中に存在するタンパク質のレベルよりも上昇させる。好ましくは、該レベルは1.5、2、3、4、5、7、10または20倍高くなる。
【0141】
本発明のキメラタンパク質の存在が外膜小胞調製物中に存在するLPSのレベルを十分低下させずかつLPSがOMV中のさらなる抗原として意図される場合には、好ましくは、低濃度の抽出用界面活性剤(例えば、デオキシコラートまたはDOC)を使用するプロトコルをOMC製造法に用いて、結合LPSを高レベルで維持する一方、特に毒性の、不十分に結合したLPSを除去することができる。使用するDOCの濃度は、好ましくは0〜0.3% DOC、より好ましくは0.05〜0.2% DOC、最も好ましくはおよそ0.1% DOCである。
【0142】
「強力なプロモーター配列」は、目的の抗原をコードする遺伝子の転写を増強する調節制御エレメントを意味する。
【0143】
「発現のアップレギュレーション」は、未改変(すなわち、天然の)ブレブの発現に比べて、目的の抗原の発現を増強するための任意の手段を意味する。「アップレギュレーション」の量は個々の目的の抗原に応じて変わるが、ブレブの膜完全性を破壊する量を超えないと理解される。抗原のアップレギュレーションは、未改変ブレブの発現より少なくとも10%高い発現を意味する。好ましくは、それは少なくとも50%高い。より好ましくは、それは少なくとも100%(2倍)高い。あるいはまたはさらに、特にFrpB、TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBの場合、発現のアップレギュレーションを、発現を代謝性または栄養性変化に対して非条件付き(non-conditional)にすることを意味しうる。一般に、FrpBをブレブにおいて過剰発現させる場合、これはプロモーターから調節配列(regulatory sequences)を除去することにより、またはそのプロモーターを強力な非調節性プロモーター(non-regulated promoter)例えばPorAと置換することにより行うことができる。
【0144】
再び意味を明確にするために説明すると、用語「上記抗原の産生量が減少するように細菌株を遺伝子操作する」またはダウンレギュレーションは、目的の抗原の発現(または機能的遺伝子産物の発現)を、未改変(すなわち、天然のブレブ)の発現と比較して低下させるための任意の手段を意味し、好ましくは、かかる発現が未改変ブレブより少なくとも10%低くなるような欠失により行う。好ましくは、それを少なくとも50%低くなるように、最も好ましくは全く存在しないように行う。ダウンレギュレーションされるタンパク質が酵素または機能的タンパク質である場合、該ダウンレギュレーションは、酵素活性または機能活性の10%、20%、50%、80%または好ましくは100%の低下をもたらす1以上の突然変異を導入することにより達成することができる。
【0145】
ナイセリア属菌タンパク質の発現をモジュレートするのに必要な遺伝子操作工程は、当業者に公知の種々の方法により行うことができる。例えば、配列(例えば、プロモーターまたはオープンリーディングフレーム)を挿入することが可能であり、トランスポゾン挿入の技術によりプロモーター/遺伝子を破壊することができる。例えば、遺伝子の発現をアップレギュレートするために、トランスポゾンを介して、該遺伝子の開始コドンの上流2kbまで(より好ましくは200〜600bp上流、最も好ましくは約400bp上流)に、強力なプロモーターを挿入することができる。点突然変異または欠失を利用することも可能である(特に、遺伝子の発現をダウンレギュレートするために)。
【0146】
しかし、かかる方法は非常に不安定または不確実でありうるので、相同組換え事象を介してその遺伝子操作工程を行うことが好ましい。好ましくは、その事象は、細菌染色体上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(組換え発生領域)と、株内の形質転換されたベクター上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(もう1つの組換え発生領域)との間で生じる。好ましくは、その領域は40〜1000ヌクレオチド、より好ましくは100〜800ヌクレオチド、最も好ましくは500ヌクレオチドである。これらの組換え発生領域は、高度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしうるのに十分な程度に類似していなければならない。
【0147】
本明細書に記載の遺伝子改変事象(例えば、組換え事象およびナイセリア属菌ゲノム中へのさらなる遺伝子配列の導入による遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)を行うために利用する方法はWO01/09350に記載されている。ナイセリア属菌に組込むことができる典型的な強力なプロモーターとしては、porA、porB、lgtF、Opa、p110、lstおよびhpuABが挙げられる。PorAおよびPorBは、強力な構成的プロモーターとして好ましい。PorBプロモーター活性は、porBの開始コドンの上流のヌクレオチド-1〜-250に対応する断片中に含まれることが確認されている。
【0148】
可変性および非防御免疫優性抗原のダウンレギュレーション/除去
多数の表面抗原は細菌株間で可変性であり、その結果、密接に関連した株の、限られた組に対してのみ、防御性であるに過ぎない。本発明の1つの態様は、他のタンパク質の発現が減少した本発明の外膜小胞を含む、あるいは好ましくは、可変性表面タンパク質をコードする遺伝子が欠失している。かかる欠失により得られる細菌株が産生するブレブをワクチンに投与されると、(外膜上に保持されている)保存タンパク質によってもたらされるワクチン被接種者の免疫系への影響がより大きいため、種々の株に対する交差反応性をより強く示す。本発明のブレブ免疫原性組成物においてダウンレギュレーションすることができるナイセリア属菌のかかる可変性抗原の具体例には、PorA、PorB、Opaが含まれる。
【0149】
ダウンレギュレートまたはスイッチオフすることができる他のタイプの遺伝子は、in vivoで、細菌により容易にスイッチインする(発現させる)またはオフすることができる遺伝子である。かかる遺伝子にコードされる外膜タンパク質は細菌上に常に存在するわけではないので、ブレブ調製物中のかかるタンパク質の存在は、上記の理由で、ワクチンの有効性に悪影響を及ぼしうる。ダウンレギュレーションまたは欠失すべき好ましい一例は、ナイセリア属菌Opcタンパク質である。Opc含有ブレブワクチンにより誘導される抗Opc免疫は、感染生物が容易にOpc-となりうるので、限られた防御能しか有さないであろう。
【0150】
例えば、これらの可変性または非防御性遺伝子は、発現をダウンレギュレートしたり、または一時的にスイッチオフすることができる。これは、ブレブの外表面上に少量で存在するより良好な抗原に、免疫系を集中する利点を有する。ダウンレギュレーションはまた、上記外膜タンパク質の表面露出可変性の免疫優性ループを改変または欠失させて、生じる外膜タンパク質の免疫優性を低下させうることも意味する。
【0151】
発現をダウンレギュレートする方法はWO 01/09350に開示されている。本発明のブレブ免疫原性組成物においてダウンレギュレートすべきタンパク質の好ましい組合せには、PorAとOpA;PorAとOpC;OpAとOpC;PorAとOpAとOpCが含まれる。
【0152】
LPSの解毒
本発明の特定の実施形態において、外膜小胞調製物がLPSの存在によってあまりにも高いレベルの毒性を有する場合、外膜小胞調製をWO 01/09350に開示されているLPSの解毒方法により解毒することができる。特に、本発明のLPSの解毒方法は、WO 01/09350に開示されているhtrBおよび/またはmsbB酵素のダウンレギュレーションに関わる。かかる方法を、好ましくは、低レベルのDOC、好ましくは0〜0.3% DOC、より好ましくは0.05%〜0.2% DOC、最も好ましくはおよそ0.1% DOCを使用するブレブ抽出の方法と組み合わせる。
【0153】
交差反応性多糖
被包性グラム陰性菌からの細菌外膜ブレブの単離は、しばしば、莢膜多糖の同時精製をもたらす。いくつかの事例では、この「混入」物質が有用となりうる。なぜなら、多糖は、他のブレブ成分によりもたらされる免疫応答を増強しうるからである。しかし、他の事例では、細菌ブレブ調製物中の混入多糖物質の存在は、ワクチンにおけるブレブの使用に有害となりうる。例えば、少なくとも髄膜炎菌の場合には、血清群B莢膜多糖は防御免疫を付与せず、ヒトにおいて有害な自己免疫応答を誘導しやすいことが示されている。従って、本発明の外膜小胞を、莢膜多糖を含有しないように遺伝子操作された、ブレブ製造用の細菌株から単離することができる。そのブレブは従ってヒトにおける使用に好適であろう。かかるブレブ調製物の特に好ましい一例は、莢膜多糖を欠く髄膜炎菌血清群B由来のものである。
【0154】
これは、莢膜の生合成および/または輸送に必要な遺伝子が損なわれた改変ブレブ産生株を使用することにより達成することができる。莢膜多糖の生合成または搬出をコードする遺伝子の不活性化は、制御領域およびコード領域のうちの一方または両方の突然変異(点突然変異、欠失または挿入)により(好ましくは、前記の相同組換え技術を用いて)、あるいはかかる遺伝子の酵素機能を低下させる任意の他の方法により達成することができる。さらに、莢膜生合成遺伝子の不活性化はまた、アンチセンス過剰発現またはトランスポゾン突然変異誘発によっても達成することができる。好ましい方法は、多糖の生合成および搬出に必要な髄膜炎菌cps遺伝子の一部または全部の欠失である。この目的には、置換プラスミドpMF121(Froshら 1990, Mol. Microbiol. 4:1215-1218に記載)を用いて、cpsCAD(+galE)遺伝子クラスターを欠失させる突然変異を送達することができる。
【0155】
好ましくは、siaD遺伝子の発現が欠失しているかまたはダウンレギュレートされているか、あるいは遺伝子産物が任意のほかの手段により酵素的に不活化されている(髄膜炎菌siaD遺伝子は、莢膜多糖およびLOSの合成に必要な酵素である、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードする)。この突然変異は、好ましくは本発明の調製物中に保存されたLPSエピトープに対する破壊を最小限にするために好ましい。
【0156】
ブレブ調製物、特に、低濃度のDOCで抽出した調製物においては、本発明の免疫原性組成物中の抗原としてLPSを使用することができる。しかし、ヒト様ラクト-N-ネオテトラオース構造を除去するために、lgtEまたは好ましくはlgtB遺伝子/遺伝子産物の酵素機能をダウンレギュレーション/欠失/不活性化することが有利である。LPSオリゴ糖構造の生合成のためのlgt遺伝子を含むナイセリア属菌遺伝子座(およびその配列)は当技術分野において公知である(Jenningsら Microbiology 1999 145; 3013-3021)。lgtB(または機能的遺伝子産物)のダウンレギュレーション/欠失が好ましい。なぜなら、それはLPS防御エピトープを無傷のまま残すからである。本発明の髄膜炎菌血清群Bブレブ調製物において、siaDとlgtBの両方のダウンレギュレーション/欠失が好ましく、これは最適な安全性およびLPS防御性エピトープ保持を示すブレブ調製物をもたらす。
【0157】
本発明の医薬組成物は、場合によっては、少なくとも1、2、3、4または5個の異なる外膜小胞調製物を含みうる。2個以上のOMV調製物が含まれている場合、それぞれのOMVで少なくとも1つの抗原が好ましくはアップレギュレートされる。かかるOMV調製物は、同じ種および血清群のナイセリア属菌株、あるいは好ましくは、異なるクラス、血清群、血清型、亜血清型または免疫型のナイセリア属菌株から誘導することができる。例えば、ある免疫原性組成物は、免疫型L2のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物と、免疫型L3のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物とを含んでもよい。L2またはL3 OMV調製物は、好ましくは、LPSオリゴ糖合成遺伝子座において最小限の相可変性を有する安定株から誘導する。
【0158】
組み合わせ
本発明の医薬組成物はまた、以下の少なくとも1種以上を含んでもよい:
(a)1種以上のサブユニットワクチン;
(b)1種以上の抗原がアップレギュレートされた1種以上の外膜小胞;および
(c)(a)と(b)の混合物。
【0159】
従って、本発明の医薬組成物はまた、サブユニット組成物と外膜小胞の両方を含んでもよい。
【0160】
外膜小胞調製物は、外膜小胞中に組換えによりアップレギュレートされた以下に掲げた抗原から選択される少なくとも1種の異なる抗原を有しうる:NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、NadA、TspA、TspB、PilQおよびPldA;そして、場合によっては、免疫タイプL2のLPSおよび免疫タイプL3のLPSの一方または両方を含んでもよい。
【0161】
その可溶性のためにサブユニット組成物中に含有させるのに特に好適な抗原がいくつかある。かかるタンパク質の例としては、FhaB、NspA、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、OMP85、FrpA、FrpC、TbpB、LbpB、PilQが挙げられる。
【0162】
ナイセリア属菌感染は幾つかの異なる段階を経て進行する。例えば、髄膜炎菌の生活環は、鼻咽腔コロニー形成、粘膜付着、血流内への侵入、血液中での増殖、毒素ショックの誘発、血液/脳関門の通過、ならびに脳脊髄液および/または髄膜内での増殖を含む。細菌の表面上の異なる分子が感染サイクルの異なる段階に関与しうる。ナイセリア属菌感染の異なる過程に関わる特定の抗原の組合せの有効量に対する免疫応答を標的とすることにより、驚くべき高い有効性を有するナイセリア属菌ワクチンが得られる。
【0163】
特に、異なるクラスの特定のナイセリア属菌抗原の組合せが、多段階の感染から防御する免疫応答を惹起しうる。驚くべきことに、かかる抗原の組合せは、ナイセリア属菌感染に対するワクチン有効性の相乗的改善をもたらすことが可能であり、この場合、該細菌の2以上の機能が該免疫応答により最適に標的化される。含有することができるさらなる抗原は、宿主細胞への付着に関わるものであってもよいし、鉄獲得(iron acquisition)に関わるものであってもよいし、自己輸送体(autotransporter)や毒素であってもよい。
【0164】
ワクチンの有効性は種々のアッセイにより評価することができる。動物モデルにおける防御アッセイは当技術分野でよく知られている。さらに、血清殺菌アッセイ(SBA)は、髄膜炎菌ワクチンの有効性を評価するための最も一般に認められている免疫学的指標である(Perkinsら J Infect Dis. 1998, 177:683-691)。
【0165】
抗原の組合せには、動物モデルアッセイにおける防御の改善、および/または、相乗的に、より高いSBA力価をもたらしうるものがある。理論に束縛されるものではないが、抗原のかかる相乗的組合せは、かかる抗原の組合せに対する免疫応答の多数の特性により可能となる。抗原自体は、通常、ナイセリア属菌細胞の表面に露出しており保存されている傾向にあるが、同時に、その抗原のみに対して惹起される抗体により最適な殺菌応答が生じるのに十分な量で表面細胞上に存在しない傾向にある。本発明の抗原の組合せは、臨界的閾値を超えてナイセリア属菌細胞と相互作用する殺菌性抗体の好都合な組合せを惹起する製剤を与えることができる。この臨界レベルにおいて、十分な量の十分な抗体が該細菌の表面に結合して、補体による効率的な殺菌を可能にし、その結果、はるかに高い殺菌作用が認められる。血清殺菌アッセイ(SBA)はワクチン候補の有効性を厳密に表すので、抗原の組合せによる良好なSBA力価の達成は、抗原のその組合せを含有するワクチンの防御の有効性の良好な指標となる。
【0166】
本発明のさらなる利点は、免疫原性組成物中の種々のタンパク質ファミリーからの本発明の抗原の組合せが、より広範囲の株に対する防御を可能にしうることである。
【0167】
本発明は従ってまた、ナイセリア属菌において異なる機能を果たす少なくとも2つの異なるカテゴリーのタンパク質から選択される複数のタンパク質を含む免疫原性組成物に関する。かかるカテゴリーのタンパク質の具体例は、付着因子、自己輸送体タンパク質、毒素、およびFe獲得タンパク質である。本発明のワクチン組合せ物は、同種ナイセリア属菌株(抗原が由来する株)に対する、そしてまた好ましくは異種ナイセリア属菌株に対するワクチンの有効性における驚くべき改善を示す。
【0168】
特に、以下から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのタンパク質群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6,7、8、9または10の異なる追加ナイセリア属菌抗原(FrpBに対して)を含んでなる免疫原性組成物を提供する:
FhaB、Hsf、NspA、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995およびNMB1119からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌付着因子;
Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspAおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌自己輸送体;
FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM-ADPRT、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌毒素;
高分子量TbpA、低分子量TbpA、高分子量TbpB、低分子量TbpB、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌Fe獲得タンパク質;ならびに
PldA、TspA、FhaC、NspA、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、HpuB、TdfH、PorB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA、MltA、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TspB、PilQおよびOMP85からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌膜結合タンパク質、好ましくは外膜タンパク質;
そして好ましくは
(a)FhaB、HsfおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌付着因子;
(b)Hsf、HapおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌自己輸送体;
(c)FrpA、FrpC、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌毒素;
(d)TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌Fe獲得タンパク質;ならびに
(e)TspA、TspB、NspA、PilQ、OMP85およびPldAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌外膜タンパク質。
【0169】
好ましくは、最初の4つ(最も好ましくは5つ全て)の群の抗原が本発明の医薬組成物に含まれる。
【0170】
前述したように、本明細書においてあるタンパク質を具体的に挙げる場合、好ましくは、天然の完全長タンパク質を意味するが、(特にサブユニットワクチンの場合)その抗原性断片も包含しうる。これらは、そのタンパク質のアミノ酸配列から連続的に選ばれる少なくとも10アミノ酸、好ましくは20アミノ酸、より好ましくは30アミノ酸、より好ましくは40アミノ酸、最も好ましくは50アミノ酸を含有するまたは含む断片である。さらに、抗原性断片は、ナイセリア属菌タンパク質に対して産生された抗体または哺乳類宿主のナイセリア属菌感染により産生された抗体と免疫学的に反応性である断片を意味する。抗原性断片はまた、有効量で投与されるとナイセリア属菌感染に対して防御免疫応答を惹起する断片を含み、より好ましくは、髄膜炎菌および/または淋菌感染に対して防御性であり、最も好ましくは、髄膜炎菌血清群B感染に対して防御性である。
【0171】
本発明にはまた、本発明のナイセリア属菌タンパク質またはその断片の組換え融合タンパク質が含まれる。これらは、同じタンパク質中で、異なるナイセリア属菌タンパク質またはそれらの断片を組み合わせて有する。あるいは、本発明はまた、ナイセリア属菌タンパク質またはその断片の個々の融合タンパク質を、T細胞エピトープの供与体のような異種配列、またはウイルス表面タンパク質、例えばインフルエンザウイルス赤血球凝集素、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197との融合タンパク質として含む。
【0172】
本発明の付加抗原
NMBに対する言及は、www.neisseria.orgからアクセス可能な配列の参照番号を示す。
【0173】
1.付着因子(adhesin)
付着因子としては、FhaB(WO98/02547)、NadA(J. Exp.Med (2002) 195:1445; NMB 1994)、NhhAとしても公知のHsf(NMB 0992)(WO99/31132)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873)、NspA(WO96/29412)、MafA(NMB 0652)およびMafB(NMB 0643)(Annu Rev Cell Dev Biol. 16; 423-457 (2000);Nature Biotech 20; 914-921 (2002))、Omp26 (NMB 0181)、NMB 0315、NMB 0995、NMB 1119およびPilC(Mol. Microbiol.1997, 23; 879-892)が挙げられる。これらは、宿主細胞の表面へのナイセリア属菌の結合に関わるタンパク質である。Hsfは付着因子の一例であるとともに自己輸送体タンパク質でもある。従って、本発明の免疫原性組成物はHsfと他の自己輸送体タンパク質との組合せを含むことが可能であり、その場合、Hsfが付着因子としてその能力を発揮する。これらの付着因子は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来してもよい。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の付着因子も包含する。
【0174】
FhaB
この抗原はWO98/02547の配列番号38(ヌクレオチド3083-9025)に記載されている(NMB0497も参照されたい)。本発明者らは、FhaBが、単独でおよび特に本発明の他の抗原と共に、抗接着抗体を特に有効に誘導することを見出した。完全長FhaBを使用することは可能であるが、驚くべきことに、本発明者らは、特定のC末端末端切断型が、交差株作用(cross-strain effect)の点で、それと少なくとも同等に有効である、好ましくは、それより有効であることを見出した。また、好都合にも、かかる末端切断型は、クローニングが遥かに容易であることが示されている。本発明のFhaB末端切断型は、典型的には、FhaB分子のN末端側の3分の2に相当し、好ましくは、新たなC末端は1200-1600位、より好ましくは1300-1500位、最も好ましくは1430-1440位に置かれる。特定の実施形態は1433または1436位にC末端を有する。従って、本発明のかかるFhaB末端切断型、およびかかる末端切断型を含むワクチンは、本発明の組合せ免疫原性組成物の好ましい成分である。N末端も、10、20、30、40または50個までのアミノ酸を末端切断しうる。
【0175】
2.自己輸送体タンパク質
自己輸送体タンパク質は、典型的には、シグナル配列、パッセンジャードメイン、および外膜への結合のためのアンカードメインから構成される。自己輸送体タンパク質の具体例としては、Hsf(WO99/31132)(NMB 0992)、HMW、Hia(van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873;van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、UspA、UspA2、NadA(NMB 1994)(Comanducciら J. Exp. Med. 2002 195; 1445-1454)、AspA (Infection and Immunity 2002, 70(8); 4447-4461;NMB 1029)、Aida-1様タンパク質、SSh-2およびTshが挙げられる。NadA(J. Exp.Med (2002) 195:1445)は、自己輸送体タンパク質のもう1つの例であるとともに、付着因子でもある。本発明の免疫原性組成物は、従ってNadAと付着因子との組合せを含むことが可能であり、その場合、NadAが自己輸送体タンパク質としてその能力を発揮する。これらのタンパク質は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の自己輸送体タンパク質も包含する。
【0176】
Hsf
Hsfは、自己輸送体タンパク質に共通の構造を有する。例えば、髄膜炎菌株H44/76由来のHsfは、アミノ酸1-51から構成されるシグナル配列、表面に露出しており可変領域(アミノ酸52-106、121-124、191-210および230-234)を含有する成熟タンパク質のアミノ末端の頭部領域(アミノ酸52-479)、ネック部領域(アミノ酸480-509)、疎水性αへリックス領域(アミノ酸518-529)、および4個の膜貫通鎖が外膜にかかるアンカードメイン(アミノ酸539-591)からなる。
【0177】
本発明の免疫原性組成物中で完全長Hsfを使用することは可能であるが、種々のHsf末端切断型および欠失体も、ワクチンのタイプに応じて有利に使用しうる。
【0178】
Hsfをサブユニットワクチン中で使用する場合、可溶性パッセンジャードメインの一部、例えばアミノ酸52-479の完全ドメイン、最も好ましくはその保存された部分、例えばアミノ酸134-479の特に有利な配列を使用することが好ましい。好ましいHsfの形態は、WO01/55182に開示されたタンパク質の可変領域を欠失するように末端切断されたものでありうる。好ましい変異体は、WO01/55182に記載されている1、2、3、4または5個の可変領域の欠失を含むであろう。上記の配列および下記の配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10または15個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0179】
従って、Hsfの好ましい断片は、Hsfの頭部領域の全体、好ましくはアミノ酸52-473を含有する該領域を含む。Hsfのさらなる好ましい断片としては、アミノ酸配列52-62、76-93、116-134、147-157、157-175、199-211、230-252、252-270、284-306、328-338、362-391、408-418、430-440および469-479のうちの1以上を含む該頭部の表面露出領域が挙げられる。
【0180】
Hsfが外膜小胞調製物中に存在する場合、それは完全長タンパク質として、好ましくは、アミノ酸1-51とアミノ酸134-591(アミノ酸配列134からC末端までの成熟外膜タンパク質をもたらす)との融合体から構成される好ましい変異体として発現されうる。Hsfの好ましい形態は、WO01/55182に開示されているタンパク質の可変領域を欠失するよう末端切断されていることができる。好ましい変異体は、WO01/55182に記載されている1、2、3、4または5個の可変領域の欠失を含むであろう。好ましくは、第1および第2の可変領域が欠失している。好ましい変異体は、アミノ酸配列52-237または54-237の間の残基、より好ましくはアミノ酸52-133または55-133の間の残基を欠失しているであろう。成熟タンパク質はシグナルペプチドを欠いているであろう。
【0181】
Hap
髄膜炎菌由来のHap様タンパク質のコンピューター解析は少なくとも3つの構造ドメインを示している。株H44/76由来のHap様配列を基準配列とすると、アミノ酸1-42を含むドメイン1は、自己輸送体ファミリーに特徴的なsec依存性シグナルペプチドをコードしており、アミノ酸43-950を含むドメイン2は、表面に露出しており免疫系に接近しうると考えられるパッセンジャードメインをコードしており、残基951からC末端(1457)までを含むドメイン3は、バレル様構造に組み立てられ外膜内に繋ぎ止められるらしいβ鎖をコードすると推定される。ドメイン2は表面に露出していると考えられ、よく保存されており(試験した全ての株において80%を上回る)、大腸菌(E. coli)内でサブユニット抗原として産生されうるため、それは興味深いワクチン候補の1つである。ドメイン2および3は表面に露出していると考えられ、よく保存されているため(Pizzaら (2000), Science 287: 1816-1820)、それらは興味深いワクチン候補の1つである。ドメイン2はパッセンジャードメインとして公知である。
【0182】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくはOMV調製物中に組み入れられた完全長Hapタンパク質を含みうる。本発明の免疫原性組成物はまた、株H44/76においてアミノ酸残基43-950から構成されるHapのパッセンジャードメインも含みうる。Hapのこの断片は本発明のサブユニット組成物中で特に有利に使用されるであろう。Hapのパッセンジャードメインの上記配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0183】
3.鉄獲得タンパク質
鉄獲得タンパク質としては、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467、US 5912336、WO93/06861およびEP586266)、TbpB(NMB 0460)(WO93/06861およびEP586266)、LbpA(NMB 1540)(Med Microbiol (1999) 32:1117)、TbpB(NMB 1541)(WO/99/09176)、Hue(U73112.2)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、Hub(NC_003116.1)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、XthAとしても公知のP2086(NMB 0399)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002)、FbpA(NMB 0634)、FbpB、BfrA(NMB 1207)、BfrB(NMB 1206)、GNA2132としても公知のLipo28(NMB 2132)、Sibp(NMB 1882)、HmbR、HemH、Bcp(NMB 0750)、鉄(III)ABC輸送体-パーミアーゼタンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、鉄(III)ABC輸送体-ペリプラスミック(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、TonB依存性受容体(NMB 0964およびNMB 0293)(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)およびトランスフェリン結合タンパク質関連タンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)が挙げられる。これらのタンパク質は髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)または淋菌(Neisseria gonorrhoeae)または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の鉄獲得タンパク質も包含する。
【0184】
TbpA
TbpAはTbpBと相互作用してナイセリア属菌の外膜上にタンパク質複合体を形成し、これがトランスフェリンに結合する。構造上は、TbpAは、TonBボックスをもつ細胞内N末端ドメインおよびプラグ(plug)ドメイン、短い細胞内ループおよびより長い細胞外ループにより連結された複数の膜貫通β鎖を含有する。
【0185】
高い分子量および低い分子量をそれぞれ有するTbpBの2つのファミリーが識別されている。TbpBの高分子量形態および低分子量形態は、相同性に基づいて区別されうる異なるファミリーのTbpAと会合する。これらのTbpAファミリーは類似した分子量であるにもかかわらず、高分子量ファミリーおよび低分子量ファミリーとして公知である。なぜなら、これらはTbpBの高分子量形態または低分子量形態に会合するからである(Rokbiら FEMS Microbiol. Lett. 100; 51, 1993)。これらの2つの形態のTbpAを表すために用語TbpA(高)およびTbpA(低)が用いられ、そしてTbpBも同様である。本発明の免疫原性組成物は、髄膜炎菌血清群A、B、C、YおよびW-135由来のTbpAおよびTbpB、ならびに淋菌を含む他の細菌に由来する鉄獲得タンパク質を含みうる。トランスフェリン結合タンパク質TbpAおよびTbpBはそれぞれTbp1およびTbp2とも呼ばれる(Cornelissenら Infection and Immunity 65; 822, 1997)。
【0186】
TbpAは幾つかの異なる領域を含有する。例えば、髄膜炎菌株H44/76由来のTbpAの場合には、アミノ末端の186アミノ酸が内部球状ドメインを形成し、22個のβ鎖が該膜を横切ってβバレル構造を形成している。これらは、短い細胞内ループおよびより大きな細胞外ループにより連結されている。細胞外ループ2、3および5は最高度の配列可変性を有し、ループ5は表面に露出している。ループ5および4はリガンドの結合に関わる。
【0187】
TbpAの好ましい断片はTbpAの細胞外ループを含む。髄膜炎菌株H44/76由来のTbpAの配列を用いると、これらのループでは、ループ1はアミノ酸200-202に対応し、ループ2はアミノ酸226-303に対応し、ループ3はアミノ酸348-395に対応し、ループ4はアミノ酸438-471に対応し、ループ5はアミノ酸512-576に対応し、ループ6はアミノ酸609-625に対応し、ループ7はアミノ酸661-671に対応し、ループ8はアミノ酸707-723、ループ9はアミノ酸769-790に対応し、ループ10はアミノ酸814-844に対応し、ループ11はアミノ酸872-903に対応する。配列アライメントの後の他のTbpタンパク質における対応配列も、好ましい断片を構成するであろう。最も好ましい断片は、Tbpのループ2、ループ3、ループ4またはループ5を構成するアミノ酸配列を含むであろう。
【0188】
本発明の免疫原性組成物がTbpAを含む場合、TbpA(高)およびTbpA(低)の両方を含むのが好ましい。
【0189】
TbpAは、好ましくは、OMVワクチン中に存在するが、それはサブユニットワクチンの一部であってもよい。例えば、本発明の免疫原性組成物中に導入されうる単離された鉄獲得タンパク質は当技術分野においてよく知られている(WO00/25811)。それらを細菌宿主内で発現させ、界面活性剤(例えば、2% Elugent)を使用して抽出し、アフィニティークロマトグラフィーによりまたは当技術分野においてよく知られた標準的なカラムクロマトグラフィー技術(Oakhillら Biochem J. 2002 364; 613-6)を用いて精製することができる。
【0190】
TbpAがOMVワクチン中に存在する場合、その発現を本明細書またはWO01/09350号に記載の遺伝子工学的技術によりアップレギュレーションすることが可能であり、あるいは好ましくは、鉄制限条件下の親株の増殖によりアップレギュレーションすることができる。この方法は、免疫優性となりうる可変性鉄調節タンパク質(特に野生型FrpB)のアップレギュレーションをも引き起こす。従って、広範なナイセリア属菌株において存在する抗原に対する免疫応答を本発明の免疫原性組成物が惹起するのが保証されるよう、WO01/09350号に記載の通りかかるタンパク質(特に野生型FrpB)の発現をダウンレギュレーションする(かかるタンパク質をコードする遺伝子を欠失させる)または上述したように免疫優性ループを除去するのが有利である。野生型FrpBを欠失する場合、非免疫優性突然変異体FrpB遺伝子の追加コピーを細胞に導入しうる。TbpA(高)およびTbpA(低)の両方を該免疫原性組成物中に存在させるのが好ましく、これは、好ましくは、かかる別形態のTbpAを発現する2つの株に由来するOMVを組み合わせることにより達成される。
【0191】
4.毒素
毒素には、FrpA(NMB 0585;NMB 1405)、FrpA/C(定義については下記参照)、FrpC(NMB 1415;NMB 1405)(WO92/01460)、NM-ADPRT(NMB 1343)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002, Masignaniら, p135)、VapD(NMB 1753)、リポ多糖(LPS;リポオリゴ糖またはLOSとも称される)免疫型L2およびLPS免疫型L3が包含される。FrpAおよびFrpCは、これらの2つのタンパク質間で保存された領域を含有し、これらのタンパク質の好ましい断片は、この保存断片を含有するポリペプチド、好ましくは、FrpA/Cの配列のアミノ酸227-1004を含むポリペプチドであろう。これらの抗原は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の毒素を包含する。
【0192】
代わりの実施形態においては、毒素には、毒性の調節に関わる抗原、例えば、リポ多糖の合成において機能するOstAが含まれうる。
【0193】
FrpAおよびFrpC
髄膜炎菌は、鉄制限の際に分泌される、FrpAおよびFrpCと称される2つのRTXタンパク質をコードしている(Thompsonら, (1993) J. Bacteriol. 175:811-818; Thompsonら, (1993) Infect. Immun.. 61:2906-2911)。RTX(Repeat ToXin)タンパク質ファミリーは共通して、それらのC末端付近に、コンセンサス配列Leu Xaa Gly Gly Xaa Gly (Asn/Asp) Asp Xaa (LXGGXGN/DDX)をもつ一連の9アミノ酸の反復配列を有する。大腸菌(E. coli)HlyAにおける反復配列はCa2+の結合部位であると考えられる。図4に示すとおり、株FAM20において特徴づけられている髄膜炎菌FrpAおよびFrpCタンパク質は、それらの中央領域およびC末端領域においてはかなりのアミノ酸類似性を共有するが、N末端においては(有するとしても)非常に限られた類似性しか有さない。さらに、FrpAとFrpCとの間で保存された領域は、9アミノ酸モチーフの反復(FrpAにおいては13回およびFrpCにおいては43回)によるいくらかの多型を示す。
【0194】
本発明の免疫原性組成物は完全長FrpAおよび/またはFrpCを含むことが可能であり、好ましくは、FrpAとFrpCとの間で保存された配列を含む断片を含む。保存配列は9アミノ酸の反復単位から構成される。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、3個を超える反復、10個を超える反復、13個を超える反復、20個を超える反復、または23個を超える反復を含む。
【0195】
かかる末端切断型は完全長分子より有利な特性を有し、かかる抗原を含むワクチンは、本発明の免疫原性組成物に含まれることが好ましい。
【0196】
FrpAとFrpCとの間で保存された配列はFrpA/Cと称され、FrpAまたはFrpCが本発明の免疫原性組成物の構成成分に相当する場合には、FrpA/Cが有利に使用されうるであろう。FrpA配列のアミノ酸277-1004は好ましい保存領域である。上記配列はN末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0197】
LPS
LPS(リポ多糖;LOS(リポオリゴ糖)としても知られる)はナイセリア属菌の外膜上の内毒素である。LPSの多糖部分は殺菌抗体を誘導することが公知である。
【0198】
LPSのオリゴ糖部分内の不均一性は種々のナイセリア属菌株間に構造および抗原性の多様性をもたらす(Griffissら Inf. Immun. 1987; 55: 1792-1800)。これは、髄膜炎菌株を12個の免疫型に細分するのに利用されている(Scholtanら J Med Microbiol 1994, 41:236-243)。免疫型L3、L7およびL9は免疫学的に同一であり、構造的に類似しており(あるいはさらには同一であり)、従ってL3,7,9と称される(あるいは、本明細書の目的においては「L3」と総称される)。髄膜炎菌LPS L3,7,9 (L3)、L2およびL5はシアル酸化によりまたはシチジン5'-一リン酸-N-アセチルノイラミン酸の付加により修飾されうる。L2、L4およびL6 LPSは免疫学的に区別されうるが、それらは構造的には類似しており、本明細書中でL2に言及する場合には、所望により、本発明の範囲内で、L2の代わりにL4またはL6のいずれかを用いることができる。LPSの構造および不均一性のさらなる説明は、M. P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびMol Microbiol 2002, 43:931-43を参照されたい。
【0199】
LPS、好ましくは髄膜炎菌LPSが本発明のワクチン中に含まれている場合、好ましくはおよび有利には、免疫型L2およびL3の一方または両方が存在する。LPSは、好ましくは、外膜小胞(好ましくは、その場合、小胞は低パーセントの界面活性剤、より好ましくは0〜0.5%、0.02〜0.4%、0.04〜0.3%、0.06〜0.2%、0.08〜0.15%または0.1%の界面活性剤、最も好ましくはデオキシコラート[DOC]で抽出されている)中に存在するが、サブユニットワクチンの一部であってもよい。LPSは、熱水-フェノール法(WesphalおよびJann Meth. Carbo. Chem. 5; 83-91 1965)を含む周知の方法を用いて単離することができる。Galanosら 1969, Eur J Biochem 9:245-249およびWuら 1987, Anal Bio Chem 160:281-289も参照されたい。LPSは、無修飾(plain)、あるいは破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM-197またはOMV外膜タンパク質のようなT細胞エピトープ源にコンジュゲートして使用することができる。単離されたLOSをコンジュゲートするための技術も公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れるEP 941738を参照されたい)。
【0200】
LOS(特に、本発明のLOS)がブレブ(bleb)製剤中に存在する場合、好ましくは、LOSを、LOSのコンジュゲーションを可能にする方法により、同様にブレブ調製物上に存在する1以上の外膜タンパク質(例えば、髄膜炎菌におけるPorAまたはPorB)にin situでコンジュゲートさせる。
【0201】
この方法は、ブレブ製剤中のLOS抗原の安定性および/または免疫原性(T細胞ヘルプをもたらす)および/または抗原性を有利に増強し、従って髄膜炎菌外膜の表面上の天然環境におけるLOSと同様に、T依存性オリゴ糖免疫原にT細胞ヘルプをその最も防御的なコンホメーションで与えることができる。さらに、LOSのブレブ内のコンジュゲーションはLOSの解毒をもたらことができる(リピドA部分が外膜内に安定に埋もれることにより、毒性の生じる可能性が減少する)。従って、本明細書に記載のhtrB-またはmsbB-突然変異体からブレブを単離する解毒法、あるいはポリミキシンB[リピドAに対して高いアフィニティーを有する分子]の無毒性ペプチド機能等価体を組成物に加えることによる解毒法(ポリミキシンBの無毒性ペプチド機能等価体、特にペプチドSEAP 2[2個のシステインがジスルフィド架橋を形成する配列KTKCKFLKKC]の使用のさらなる詳細は、WO 93/14115、WO 95/03327、Velucchiら (1997) J Endotoxin Res 4: 1-12およびEP 976402を参照されたい)は必要ないかもしれない(しかし、念のために、併せて加えてもよい)。従って、本発明者らは、ブレブ中に存在するLOSがブレブ中に存在する外膜タンパク質とブレブ内様式でコンジュゲートしているブレブを含んでなる組成物は、ブレブが由来する生物により引き起こされた疾患の治療または予防用のワクチンのベースを形成することができ、その場合、かかるワクチンは実質的に無毒性でありかつ天然環境のLOSに対してT依存性殺菌応答を誘導しうることを見出した。
【0202】
かかるブレブ調製物を、目的の細菌から単離し(WO 01/09350を参照)、ついで公知のコンジュゲーション化学で処理して、LOSのオリゴ糖部分の官能基(例えば、NH2またはCOOH)をブレブ外膜タンパク質の官能基(例えば、NH2またはCOOH)に連結することができる。グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド/ホルムアルデヒド混合物を使用する架橋技術を用いることができるが、EDACまたはEDAC/NHSのような、より選択的な化学を用いることが好ましい(J.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle. 「N-ヒドロキシスクシンイミドによる水溶性カルボジイミド媒介カップリング反応の促進(Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions)」, Analytical chemistry 156: 220-222 (1986);ならびに「バイオコンジュゲート技術(Bioconjugates Techniques)」, Greg T. Hermanson (1996) pp173-176)。LOSと使用しうるタンパク質分子との間に共有結合を作製することができる他のコンジュゲーション化学または処理が欧州特許941738号に記載されている。
【0203】
好ましくは、該ブレブ調製物を莢膜多糖の非存在下でコンジュゲートさせる。ブレブを、(天然でまたは下記の突然変異により)莢膜多糖を産生しない株から単離してもよいし、あるいはほとんど、好ましくは全ての混入している莢膜多糖から精製してもよい。この方法では、ブレブ内LOSコンジュゲーション反応は遥かに効率的である。
【0204】
好ましくは、該ブレブ中に存在するLOSの10、20、30、40、50、60、70、80、90または95%以上が架橋/コンジュゲートしている。
【0205】
ブレブ内コンジュゲーションは、好ましくは、以下の処理工程の1、2または3つ全てを含む:コンジュゲーションpHはpH 7.0より大きく、好ましくはpH 7.5以上(最も好ましくはpH 9未満)であるべきであり;1〜5%、好ましくは2〜4%、最も好ましくは約3%スクロースの条件を反応の間、維持すべきであり;NaClはコンジュゲーション反応の間、最小限に、好ましくは0.1M未満、0.05M未満、0.01M未満、0.005M未満、0.001M未満で存在するように、最も好ましくは全く存在しないようにすべきである。これらの処理上の特徴は全て、ブレブがコンジュゲーションの過程全体にわたり安定でかつ溶液中に維持されることを保証する。
【0206】
EDAC/NHSコンジュゲーション法は、ブレブ内結合のための好ましい方法である。EDAC/NHSは、過度に架橋して濾過性に悪影響を及ぼしうるホルムアルデヒドよりも好ましい。EDACはカルボン酸(例えば、LOS中のKDO)と反応して活性エステル中間体を与える。アミン求核試薬(例えば、PorBのような外膜タンパク質中のリシンなど)の存在のもとでアミド結合が生成され、イソ尿素副産物が放出される。しかし、EDAC媒介反応の効率は、スルホ-NHSエステル中間体の生成を通じて増加しうる。スルホ-NHSエステルは水溶液中で、EDACのみとカルボキシラートとの反応から生成した活性エステルより長く存続する。従って、この2段階法を用いることにより、より高い収率のアミド結合形成を達成することができる。EDAC/NHSコンジュゲーションはJ.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle, 「N-ヒドロキシスクシンイミドによる水溶性カルボジイミド媒介カップリング反応の促進(Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions)」, Analytical chemistry 156: 220-222 (1986)ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) pp173-176に考察されている。反応においては、好ましくは、ブレブ1mg当たり0.01〜5mgのEDAC、より好ましくは、ブレブ1mg当たり0.05〜1mgのEDACを使用する。EDACの使用量は、サンプル中に存在するLOSの量に依存し、そしてこれは、ブレブを抽出するために使用するデオキシコラート(DOC)のパーセンテージ(%)に依存する。低い%(例えば、0.1%)のDOCの場合は、多量(1mg/mg以上)のEDACを使用するが、より高い%(例えば、0.5%)のDOCでは、過度のブレブ内架橋を防ぐために、より少量(0.025〜0.1mg/mg)のEDACを使用する。
【0207】
従って、本発明の好ましい方法は(好ましくは髄膜炎菌の)ブレブ内コンジュゲートしたLOSを製造する方法であって、EDAC/NHSの存在のもとで、pH 7.0〜pH 9.0(好ましくは、pH約7.5)のpHで、1〜5%(好ましくは約3%)スクロース中で、および場合によってはNaClを実質的に含有しない条件で(前記の通り)、ブレブをコンジュゲートさせ、そしてコンジュゲートしたブレブを反応混合物から単離する工程を含んでなる上記方法である。
【0208】
反応を、該反応混合物のウエスタン分離ゲル上で、抗LOS(例えば、抗L2または抗L3)mAbを使用して追跡し、反応時間が経過するにつれてブレブ中のLOSの割合が増えてLOSの分子量が増加するのを示すことができる。
【0209】
かかる技術を用いて、収率99%でブレブを回収することができる。
【0210】
EDACは、LOSのT依存性免疫原性の改善に十分な程度にLOSをOMPに架橋するが、乏しい濾過性、凝集およびブレブ間架橋のような問題が生じるほど過度に架橋しない。EDACはその点で優れたブレブ内架橋剤であることが判った。生成したブレブの形態学的特徴はコンジュゲートしてないブレブのそれに類似している(電子顕微鏡による)。さらに、上記プロトコルは、過度の架橋(これは、該ブレブの表面上に天然の防御性OMP、例えばTbpAまたはHsfの免疫原性を減少させうる)が生じるのを防いだ。
【0211】
ブレブが由来する髄膜炎菌株は、莢膜多糖を産生し得ない突然変異株(特にsiaD-)であることが好ましい。また、髄膜炎菌性疾患に対して有効な免疫原性組成物はL2およびL3の両方のブレブを含んでおり、その場合、L2およびL3 LOSは共に、ブレブ外膜タンパク質にコンジュゲートしていることが好ましい。さらに、ブレブ内コンジュゲートしたブレブ内のLOS構造は、lgtE-または好ましくはlgtB-髄膜炎菌株に由来するそれと合致することが好ましい。最も好ましくは、免疫原性組成物は、莢膜多糖を産生し得ないでかつlgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するブレブ内コンジュゲートしたブレブを含んでなり;莢膜多糖を産生し得ない突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなるか;lgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなるか;または最も好ましくは、莢膜多糖を産生し得ないかつlgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなる。
【0212】
本発明に使用しうる典型的なL3髄膜炎菌株はH44/76 menB株である。典型的なL2株はB16B6 menB株または39E髄膜炎菌C型株である。
【0213】
前記の通り、本発明のブレブは、コンジュゲーションの作用によりある程度解毒されており、それ以上解毒する必要はないが、安全性を高めるためにさらなる解毒法を用いてもよく、例えば、htrB-またはmsbB-である髄膜炎菌株に由来するブレブを使用したり、あるいはポリミキシンB[リピドAに対して高いアフィニティーを有する分子]の無毒性ペプチド機能等価体(好ましくはSEAP 2)をブレブ組成物に加えることができる(前記の通り)。
【0214】
上記の方法で、重要な抗原として、実質的に無毒性であり、自己免疫の問題を伴わず、T依存性を有し、その天然環境中に存在し、そして(L2+L3組成物の場合には)髄膜炎菌株の90%以上に対する殺菌抗体応答を誘導しうるLOSを有する髄膜炎菌ブレブおよびブレブ含有免疫原性組成物が提供される。
【0215】
5.内在性外膜タンパク質
他のカテゴリーのナイセリア属菌タンパク質も、本発明のナイセリア属菌ワクチン中に含有させる候補となる可能性があり、驚くべきほど有効に他の抗原と組み合わせることができる。膜結合タンパク質、特に内在性膜タンパク質、最も有利には外膜タンパク質、特に内在性外膜タンパク質を、本発明の組成物中で使用することができる。かかるタンパク質の一例は、ナイセリア属菌ホスホリパーゼ外膜タンパク質である、Omp1A(NMB 0464)(WO00/15801)としても公知のPldAである。さらなる具体例としては、TspA(NMB 0341)(Infect. Immun. 1999, 67; 3533-3541)およびTspB(T細胞刺激性タンパク質)(WO 00/03003; NMB 1548, NMB 1628 またはNMB 1747)が挙げられる。さらなる具体例には、PilQ (NMB 1812) (WO99/61620)、D15としても公知のOMP85(NMB 0182)(WO00/23593)、NspA(U52066)(WO96/29412)、FhaC(NMB 0496またはNMB 1780)、PorB(NMB 2039)(Mol. Biol. Evol. 12; 363-370, 1995)、HpuB(NC_003116.1)、TdfH(NMB 1497)(Microbiology 2001, 147; 1277-1290)、OstA(NMB 0280)、GNA33およびLipo30としても公知のMltA(NMB0033)、HtrA(NMB 0532;WO 99/55872)、HimD(NMB 1302)、HisD(NMB 1581)、GNA 1870(NMB 1870)、HlpA(NMB 1946)、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467)(前記の鉄獲得タンパク質の説明も参照されたい)ならびにLbpA(NMB 1541)が挙げられる。
【0216】
OMP85
OMP85/D15は、シグナル配列、N末端表面露出ドメインおよび外膜に付着するための内在性膜ドメインを有する外膜タンパク質である。本発明の免疫原性組成物は完全長OMP85を、好ましくはOMV調製物の一部として含みうる。本発明の免疫原性組成物においては、OMP85の断片も使用することが可能であり、特に、アミノ酸残基1-475または50-475から構成されるOMP85のN末端表面露出ドメインを、好ましくは、本発明の免疫原性組成物のサブユニット成分中に含有させる。OMP85の表面露出ドメインの上記配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。シグナル配列はOMP85断片から除去するのが好ましい。
【0217】
OstA
OstAはリポ多糖の輸送において機能し、毒性の調節因子であるとみなされうる。毒素カテゴリーが毒性の調節因子ならびに毒素を含有するまで拡張された場合、OstAは、場合によっては、毒素のカテゴリーに含まれる。
【0218】
好ましくは、サブユニット組成物は、本発明のキメラImp/OstAタンパク質と以下とを一緒に含むものである:
i)以下のリストから選択される少なくとも1種のさらなる抗原:FhaB、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、NadA、OMP85のN末端表面露出ドメイン、FrpA、FrpC、FrpA/C、TpbA、TbpB、LpbA、LbpB、PldA、PilQ、NspA、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方;ならびに/あるいは
ii)少なくとも1種のナイセリア属菌(好ましくは髄膜炎菌)外膜小胞(OMV)調製物。
【0219】
好ましくは、OMV調製物は、外膜小胞中の組換えによりアップレギュレートされている以下のリストから選択される少なくとも1種の抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する:FhaB、Hsf、NspA、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995、NMB1119、IgAプロテアーゼ、AspA、TbpA(高)、TbpA(低)、TbpB(高)、TbpB(低)、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293。
【0220】
i)が存在する場合には、追加の抗原は上述したタンパク質の1以上の群から選択されることが好ましい。
【0221】
他の実施形態において、本発明の外膜小胞は、外膜小胞において組換えによりアップレギュレートされ、かつ以下のリスト:NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAから選択され、そして場合によりL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方を含んでもよい少なくとも1種のさらなる抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する。この外膜小胞は、外膜小胞において組換えによりアップレギュレートされ、かつ以下のリスト:FrpB、NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAから選択され、そして場合によってはL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方を含んでもよい少なくとも1種のさらなる抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する、1種以上のさらなる外膜小胞と共に使用することができる。
【0222】
本発明の免疫原性組成物は、髄膜炎菌血清群A、B、C、Y、W-135または淋菌に由来する抗原(タンパク質、LPSおよび多糖)を含みうる。
【0223】
さらなる組み合わせ
本発明の医薬組成物はさらに、細菌莢膜多糖またはオリゴ糖を含みうる。該莢膜多糖またはオリゴ糖は、髄膜炎菌血清群A、C、Yおよび/またはW-135、インフルエンザ菌b(Haemophilus influenzae b)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A群連鎖球菌(Group A Streptococci)、B群連鎖球菌(Group B Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のうち1以上に由来しうる。
【0224】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗原性組成物と、ウイルスまたはグラム陽性菌に関連した病態を含む特定の病態に対して有利に使用される他の抗原とを含むワクチンの組合せである。
【0225】
1つの好ましい組合せにおいては、本発明の抗原性組成物は、無修飾(plain)であってもよいしタンパク質担体にコンジュゲートしていてもよい髄膜炎菌莢膜多糖またはオリゴ糖A、C、YまたはW-135のうち1、2、3または好ましくは4個全てとともに製剤化される。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、AおよびC;またはC;またはCおよびYとともに製剤化される。髄膜炎菌血清群Bに由来するタンパク質を含有するかかるワクチンは、包括的髄膜炎菌ワクチンとして有利に使用することができる。
【0226】
さらなる好ましい実施形態においては、本発明の抗原性組成物、好ましくは、無修飾のまたはコンジュゲートさせた髄膜炎菌莢膜多糖またはオリゴ糖A、C、YまたはW-135の1、2、3または4個全てとともに製剤化される抗原性組成物(前記の通り)は、コンジュゲートさせたインフルエンザ菌b莢膜多糖(もしくはオリゴ糖)、および/または1以上の無修飾のもしくはコンジュゲートさせた肺炎球菌多糖(もしくはオリゴ糖)(例えば以下に記載するもの)を使用して製剤化される。場合によっては、ワクチンは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)感染に対して宿主を防御しうる1以上のタンパク質抗原をも含みうる。かかるワクチンは包括的な髄膜炎ワクチンとして有利に使用することができる。
【0227】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌b(Haemophilus influenzae b)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A群連鎖球菌(Group A Streptococci)、B群連鎖球菌(Group B Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のうち1以上に由来しうる莢膜多糖またはオリゴ糖を使用して製剤化される。肺炎球菌莢膜多糖またはオリゴ糖抗原は、好ましくは、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F(最も好ましくは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F)から選ばれる。さらなる好ましい実施形態はインフルエンザ菌のPRP莢膜多糖またはオリゴ糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態は黄色ブドウ球菌5型、8型または336型莢膜多糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態は表皮ブドウ球菌I型、II型またはIII型莢膜多糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態はB群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型またはIII型莢膜多糖を含有しうる。さらなる実施形態はA群連鎖球菌の莢膜多糖を含有し、好ましくはさらに、少なくとも1つのMタンパク質を含み、より好ましくは、複数の型のMタンパク質を含みうる。
【0228】
本発明のかかる莢膜多糖またはオリゴ糖はコンジュゲートしていなくも、あるいは破傷風トキソイド、破傷風トキソイド断片C、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、プロテインD(US 6342224)のような担体タンパク質にコンジュゲートしていてもよい。多糖またはオリゴ糖結合体は任意の公知カップリング技術により製造することができる。例えば、多糖をチオエーテル結合を介してカップリングすることができる。このコンジュゲーション方法は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジミウムテトラフルオロボラート(CDAP)で多糖を活性化してシアン酸エステルを生成することに基づく。従って、活性化多糖を、直接的にまたはスペーサー基を介して、担体タンパク質上のアミノ基にカップリングすることができる。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンにカップリングし、アミノ誘導体化多糖を、チオエーテル結合の形成を含むヘテロ連結化学法を用いて担体タンパク質にコンジュゲートさせる。かかるコンジュゲートはUniformed Services UniversityのPCT公開出願WO93/15760に記載されている。
【0229】
コンジュゲートはまた、US 4365170(Jennings)およびUS 4673574(Anderson)に記載の直接還元アミノ化法によっても製造することができる。他の方法はEP-0-161-188、EP-208375およびEP-0-477508に記載されている。さらなる方法は、アジピン酸ヒドラジド(ADH)により誘導体化された臭化シアン活性化多糖の、カルボジイミド縮合(Chu C.ら Infect. Immunity, 1983 245 256)によるタンパク質担体へのカップリングを含む。
【0230】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、(肺炎球菌の生活環の少なくとも一部において宿主の免疫系により認識されうる)肺炎球菌の外表面上に露出した肺炎球菌タンパク質、あるいは肺炎球菌により分泌または放出されるタンパク質である。最も好ましくは、タンパク質は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の毒素、付着因子、2成分シグナルトランスデューサーもしくはリポタンパク質またはそれらの断片である。特に好ましいタンパク質としては、限定されるものでないが、ニューモリシン(好ましくは、化学処理または突然変異により解毒されているもの)[Mitchellら Nucleic Acids Res. 1990 Jul 11; 18(13): 4010 「肺炎連鎖球菌1型と2型由来のニューモリシン遺伝子とタンパク質の比較(Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumoniae types 1 and 2.)」, Mitchellら Biochim Biophys Acta 1989 Jan 23; 1007(1): 67-72 「大腸菌におけるニューモリシン遺伝子の発現:迅速な精製と生物学的特性(Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli: rapid purification and biological properties)」、WO 96/05859(A. Cyanamid)、WO 90/06951(Patonら)、WO 99/03884(NAVA)];PspAおよびその膜貫通欠失変異体(US 5804193-Brilesら);PspCおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/09994-Brilesら);PsaAおよびその膜貫通欠失変異体(Berry & Paton、Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255-62 「PsaAの配列不均一性、肺炎連鎖球菌の病原性に必須の37キロダルトン推定付着因子(Sequence heterogeneity of PsaA、a 37-kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae)」);肺炎球菌コリン結合タンパク質およびその膜貫通欠失変異体;CbpAおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/41151;WO 99/51266);グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Infect. Immun. 1996 64:3544);HSP70(WO 96/40928);PcpA(Sanchez-Beatoら, FEMS Microbiol Lett 1998、164:207-14);M様タンパク質(EP 0837130)および付着因子18627,(EP 0834568)が挙げられる。さらなる好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO 98/18931に開示されているもの、特に、WO 98/18930およびPCT/US 99/30390において選ばれているものである。
【0231】
本発明の医薬組成物/ワクチンはまた、場合によっては、他のグラム陰性菌、例えばモラクセラ・カタラーリスまたはインフルエンザ菌から作られた外膜小胞調製物を含みうる。
【0232】
組成物、キットおよび投与
ワクチンは、宿主に投与した場合に免疫応答を誘導することができる少なくとも1種の抗原を含む。好ましくは、かかるワクチンは、ナイセリア属菌、好ましくは髄膜炎菌および/または淋菌感染に対する防御性の免疫応答を誘導することができる。
【0233】
本発明はまた、本明細書に考察したグラム陰性菌、キメラタンパク質または外膜小胞調製物を含んでなる組成物に関する。本発明のかかる組成物は、細胞、組織または生物に使用するための1以上の非滅菌もしくは滅菌担体、例えば個体への投与に適した医薬用担体などと組み合わせて用いることができる。かかる組成物は、例えば媒質添加剤または治療上有効な量の本発明のタンパク質、および製薬上許容される担体もしくは賦形剤を含む。かかる担体としては、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。製剤は、投与形式に適合させる必要がある。本発明はさらに、前述の本発明の組成物の成分の1種以上を入れた1以上の容器を含む診断および医薬用パックおよびキットに関する。
【0234】
本発明の医薬組成物は、単独で、または治療用化合物などの他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0235】
医薬組成物は、任意の有効な好都合な方法で投与することができ、なかでも、例えば、局所、経口、肛門,膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内または皮内経路により投与することができる。
【0236】
治療または予防として、注射可能な組成物、例えば滅菌水性分散液、好ましくは等張液として有効成分を個体に投与することができる。
【0237】
組成物は、例えば全身経路または経口経路による投与経路に適合させることができる。全身投与の好ましい形態には、注射、典型的には静脈注射が含まれる。他の注射経路、例えば皮下、筋肉内または腹腔内経路も用いることができる。全身投与のための代わりの手段としては、浸透液、例えば胆汁塩もしくはフシジン酸または他の界面活性剤などを用いる経粘膜および経皮投与が挙げられる。さらに、本発明のタンパク質または他の化合物が腸溶製剤または被包製剤として製剤できれば、経口投与もまた可能である。これらの化合物の投与はまた、軟膏、ペースト、ゲル剤、溶剤、粉剤などの形態で局所および/または局所化して投与することも可能である。
【0238】
哺乳動物、特にヒトへの投与のために、有効成分の日用量は、0.01mg/kg〜10mg/kg、典型的にはおよそ1mg/kgであると予想される。いずれの場合でも医師は、個体にとって最適な実際の投与量を決定することができ、またそれは特定の個体の年齢、体重および反応性に応じて変わりうる。上記の投与量は平均の場合の例示である。当然のことながら、個体の中にはより高用量または低用量の範囲が有効である場合もあり、それもまた本発明の範囲内である。
【0239】
必要な投与量は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、被験体の症状の性質、および実施する医師の判断により異なる。しかし好適な投与量は、0.1〜100μg/kg被験体の範囲である。
【0240】
ワクチン組成物は注射可能な形態であるのが好都合である。慣用のアジュバントを用いて免疫応答を高めることができる。ワクチン接種の好適な単位用量は、0.5〜5μg/kg抗原であり、その用量を、好ましくは1〜3週間間隔で1〜3回投与する。示した容量範囲で、本発明の化合物について適切な個体への投与を妨げる有害な毒性作用は観察されないであろう。
【0241】
利用可能な多種多様の化合物の点から、また種々の投与経路の有効性の違いから必要とされる投与量は広範囲で変化することが予想される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高用量を必要とすることが予想される。これらの投与量レベルの変化は、最適化のための標準の経験的作業を用いて調節することができ、当技術分野では周知である。
【0242】
本明細書に引用した全ての参考文献または特許出願は、本明細書に参照により組み入れられる。
【実施例】
【0243】
本発明の好ましい特徴および実施形態を、以下の非限定の実施例を参照してさらに説明する。
【0244】
実施例1 一般的方法
細菌株と増殖条件
髄膜炎菌(Nme)H44/76、血清型B株は本発明者らの実験室のコレクションを用いた。H44/76 IpxA突然変異体(Steeghsら, 1998; Nature 392; 449-450)およびIpxA発現がtacプロモーターにより制御されるH44/76由来の株HA3003(Steeghsら、2001; EMBO J. 24; 6937- 6945)は、L. Steeghsおよびvan der Ley(Netherlands Vaccine Institute (NVI), Bilthoven, The Netherlands)より好意的に提供されたものである。Nmeは、キャンドル・ジャー(candle jar)中のVitox(Oxoid)および適宜、抗生物質(カナマイシン100gμg/ml、クロラムフェニコール5gμg/ml)を含有するGC寒天(Becton Dickinson)プレート上で37℃にて増殖した。液培養物は、プラスチックフラスコに入ったトリプシン・ソイブロス(tryptic soy broth)(TSB)中で37℃にて振盪しながら増殖した。シアリル化実験のために、80μMシチジン5'モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸(CMP-NANA、Sigma)を、対数期最中の増殖している細菌の培地に2時間加えた。大腸菌株DH5αまたはTOP10F'(Invitrogen)をルーチンのクローニングに用いた。大腸菌はLBプレート上で増殖させた。抗生物質を次の濃度:カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール25μg/mlおよびエリスロマイシン 200μg/mlで加えた。
【0245】
ゲル電気泳動と免疫ブロット
変性または半未変性条件のもとでのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および免疫ブロットを、記載の通り実施した(Voulhouxら 2003 Science 299; 262-265)。LPSを評価するために、サンプルをSDS-PAGEサンプルバッファー中で煮沸し、次いで0.5mg/mlプロテイナーゼKとともに55℃にて1時間インキュベートした。10分間煮沸後、ライセートを16%トリシン-SDS-PAGE上で電気泳動し(Lesseら, 1990, J. Immunol. Methods. 126; 109-117)、そして銀を用いて染色した(Tsaiら, 1982, Anal. Biochem. 119; 115-119)。
【0246】
ノイラミニダーゼ処理
対数期最中まで増殖した細菌の1mlをペレット化し、バッファーA(20mM Na2HPO4/NaH2PO4、150mM NaCl、5mM MgCl2、5mM CaCl2、pH 6.0)を用いて洗浄した。細菌を0.5mlバッファーAに再懸濁し、0.2U/mlのノイラミニダーゼ(V型、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)、Sigma N-2876)を60分間37℃にて加えた。次に、細菌をペレット化し、そしてトリシン-SDS-PAGEのための処理をした。細胞エンベロープをバッファーAに希釈し、0.2U/mlのノイラミニダーゼとともに60分間37℃にてインキュベートした。
【0247】
細胞画分の単離
細胞エンベロープを(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)に記載の通り調製した。内膜と外膜を等密度スクロース-勾配遠心分離により、MassonおよびHolbein(MassonおよびHolbein 1983, J. Bacteriol. 154; 728-736)に従ってまたは、代わりに、Shellら(Shellら, 2002, Infect. Immun. 70; 3744-3751)の方法に従って分離した。スクロース-勾配画分中の乳酸脱水素酵素活性を、直接測定した(WestphalおよびJann 1965; Method. Carbohydr. Chem. 5; 83-91)。各画分の等容積を7%トリクロロ酢酸(TCA)を用いて沈降させ、タンパク質をSDS-PAGEによりそしてLPSをトリシン-SDS-PAGEにより分析した。細胞外増殖培地を得るために、細菌を懸濁液から遠心分離(15分間、6000g)により取り除いた。上清を2時間100,000gにて遠心機にかけた。タンパク質とLPSを上清から7%TCAを用いて沈降させた。沈降物を遠心分離により20,000gにて30分間回収し、次いでアセトンにより洗浄した。
【0248】
LPS定量
細胞エンベロープのLPS含量を、3-デオキシ−D-マンノ-オクツロン酸(KDO)測定により定量した(Vanら, 1978; J. Bacteriol. 134; 1089-1098)。
【0249】
抗体
H44/76の細胞エンベロープ中のImpタンパク質の過剰発現は、プラスミドpEN11-Impを運ぶimp突然変異体を1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)とともに増殖することにより達成した。これらの誘導された細胞を用いて外膜小胞(Fredriksenら, 1991, NIPH Annals 14,67-79)を調製し、これをマウス中に注射して抗血清を産生させた。次に、特異的抗Imp抗体を血清の精製impタンパク質への吸着により精製した。その目的で、株BL21 pET11a-Impからの封入体を精製し(Dekkerら, 1995; Eur. J. Biochem. 232; 214-219)、20mM Tris/HCI、100mMグリシン、6M尿素、pH 8に溶解し、8% SDS-PAGEゲル中で電気泳動し、そしてニトロセルロース上へブロットした。Impタンパク質を、1%酢酸中の0.25% Ponceau S(Acros Organics)を用いてブロット上で可視化した。Impタンパク質を含有するストリップをブロットから切り取って免疫感作したマウスの血清から得た特異的抗Imp抗体を吸着させた。結合した抗体を5分間0.2MグリシンpH 3.0を用いる洗浄により溶出し、次いで1M Tris pH 10.8を用いて中和した。溶出した抗体をブロット上のImpの特異的検出に用いた。マウスモノクローナル抗FbpAおよび抗PorA(MN23G2.38)抗体はB. Kuipers(NVI, Bilthoven, The Netherlands)から提供を受けた。
【0250】
PL組成の分析
一夜、プレート上で増殖した細胞を収穫し、そしてTSB中に再懸濁した。次いで5ml TSB中に0.1のOD550まで希釈した後、細胞を7時間、2μCi[1-14C]酢酸ナトリウムを用いて37℃にて標識した。リン脂質を1.4mlの培養物から単離し(Bligh and Dyer, 1959 Can. J. Med. Sci 37; 911-917)、TLCにより分離し、そしてプレート(シリカゲル60、20 x 10cm、Merck)を、65:25:10の比のクロロホルム/メタノール/酢酸を用いて現像し、そしてオートラジオグラフィーで処理した。
【0251】
LPSおよびリン脂質単離と定量
変性条件下のSDS-PAGEを(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)に記載の通り実施した。LPS分析のため、サンプルをSDS-PAGEサンプルバッファー中で煮沸し、次いで0.5mg/mlプロテイナーゼKを用いて1時間インキュベートした。10分間煮沸後、ライセートを16%トリシン-SDS-PAGE上で分析し(Lesseら, 1990 J. Immunol. Methods 126; 109-117)、銀を用いて染色した(Tsai and Frasch, 1982 Anal. Biochem. 119; 115-119)。細胞エンベロープを先に記載の通り単離した(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。細胞エンベロープのLPS含量をKDO測定により記載の通り定量した(van Alphenら, 1978 J. Bacteriol. 134; 1089-1098)。細胞をプレートから収穫し、バッファー(0.238%の酸を含まないHEPES、0.04% KCl、0.85% NaCl、0.01% MgCl2.6H20、0.09%無水グルコース、および0.5mM CaCl2を含有し、NaOHによりpH 7.4に調節した)を用いて洗浄した。リン脂質を記載の通り単離し(BlighおよびDyer, 1959 Can. J. Med. Sci 37; 911-917)、そしてその量をリン含量を定量することにより数値化した(Rouser 1970 Lipids 5; 494-496)。
【0252】
電子顕微鏡
細胞をプレートから収穫し、そして化学的に固定し、ゼラチンに埋込んで冷凍切片を作製した。超薄切片をTechnai 10 EMを用いて100kVにて観察した。
【0253】
実施例2:Impは髄膜炎菌に必須ではない
ナイセリア属菌imp突然変異体を、株H44/76中のimp遺伝子と欠失-挿入突然変異を含有するコピーとの対立遺伝子置換によって構築した(図1A)。本発明者らは、株MC58由来のNMB0279およびNMB0280の配列(http://www.tigr.org)を用いてプライマーを設計してクローニングし、次いでNme株H44/76中のimp遺伝子を欠失させた(図1A)。簡単に説明すると、impの上流の遺伝子の一部、NMB0279をH44/76 DNAから、プライマーAおよびBを用いてクローニングした(表1)。imp遺伝子の3'末端は、PCRによりプライマーCおよびDを用いて取得した。両方のPCR産物をpCR2.1-TOPO(Invitrogen)中にクローニングすると、プラスミドpCR2.1-NMB0279およびpCR2-3'Impが得られる。pCR2.1-NMB0279の1つのAccI-Xbal断片を、Accl-Xbalで制限切断したpCR2-3'Imp中にライゲートした。得られるプラスミドをAcclにより切断してカナマイシン-耐性カセットの挿入が可能になった。このカセットをプラスミドpACYC177(New England Biolabs)からプライマーEおよびF(表1)を用いてPCR増幅し、末端AccI部位およびナイセリア属菌DNA取り込み配列を導入した。pMB25と呼ばれる最終構築物はimp遺伝子の転写方向と同じ方向でカナマイシン-耐性カセットを含有した。pMB25からプライマーAおよびDを用いて増幅したPCR産物のほぼ200ngを野生型H44/76細菌に加え、TSB+10mMMgCl2中で6時間増殖した。細菌をカナマイシンを含有するGCプレート上にまいた。形質転換体を、PCRによりプライマー対(primer pair)AD、AFおよびDEを用いてスクリーニングした。補完実験として、本発明者らはH44/76ゲノムDNA由来のimp遺伝子をPCRによりプライマー対DおよびG(表1)を用いてクローニングした。
【表1】
【0254】
PCR産物をpCR2.1-TOPOにクローニングし、切断し、そしてNdelおよびAstll制限部位を用いてpEN11中にライゲートして、プラスミドpEN11-Impを得た。プラスミドpEN11、ナイセリア属菌複製プラスミドはRV2100の誘導体であって、直列lacプロモーター-オペレーター(tac-lacUV5)配列の後方にH44/76 omp85遺伝子を含有する(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。pEN11において、omp85遺伝子のATG開始コドンはNdel部位により置き換えられていて遺伝子の交換を促進する。imp突然変異体をpEN-Impを用いて、細菌のプラスミドとの6時間プレート上の同時インキュベーションにより、形質転換した(Voulhouxら, Science 299; 262-265)。形質転換体をクロラムフェニコールを含有するプレート上で選択し、pEN11-Impおよび染色体imp::kan対立遺伝子の存在についてPCRにより試験した。そのシグナル配列を伴わないH44/76 imp遺伝子をpET11a(Novagen)に、プライマーHおよびI(表1)を用いてクローニングした。得られるプラスミドpET11a-Impを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)中に導入してpET11a中に存在するT7 プロモーターから末端切断されたimp遺伝子の発現を可能にした。
【0255】
カナマイシン耐性形質転換体をPCRにより、imp遺伝子の無傷のコピーの不在およびimp::kan対立遺伝子の存在について試験した。正しい形質転換体が容易に得られ、大腸菌(Braun & Silhavy, 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)とは対照的に、impはNme中の必須遺伝子でないことを実証した。突然変異体中のImpタンパク質の不在は免疫ブロットにより確認した(図1B)。
【0256】
実施例3:ナイセリア属菌imp突然変異体の表現型
形質転換体の著しい特徴は、野生型コロニー(図2A、B)と比較してその強いコロニー乳白度であって、LPS欠損突然変異体(図2C)にも見られる特性である。さらに、LPS欠損株(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937- 6945)と同様に、imp突然変異体細菌は増殖が遅く、野生型細菌より低い最終光学的密度までしか増殖しない(図2D)。変性または半未変性SDS-PAGEにおける全細胞(データは示してない)または細胞エンベロープ(図3A)のタンパク質プロファイルの分析は野生型とimp突然変異体細菌との間に著しい相違を示した。Nmeの主なOMPは三量体ポーリンPorAおよびPorBである。これらの三量体は非常に安定であって半非変性SDS-PAGEにおいて単量体に解離しない(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。本発明者らが半非変性条件でimp突然変異体の細胞エンベロープを分析すると、ほとんどのPorAタンパク質は、免疫ブロットにより示されるように三量体型で存在した(図3B)。IpxA突然変異体のプロファイルと類似のimp突然変異体にはほんの少量の単量体porAしか検出されなかった(図3B)(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937-6945)。従って、PorAおよびPorBなどのOMPは正常なレベルで存在し、正しくアセンブルされている。対照的に、トリシン-SDS-PAGE分析は、細胞LPS含量がimp突然変異体において著しく減少していることを示す(図3C)。KDO(核領域の内因性成分)のレベルを測定することによるLPSの定量測定値は、この結果を立証した:imp突然変異体細胞エンベロープはわずかに6.4nmol KDO/mgタンパク質しか含有しなかったが、野生型レベルは95nmol KDO/mgタンパク質であった。imp突然変異体のLPSはゲル中で、野生型LPS(図3C)と類似した位置まで移動し、類似のサイズであることを示した。LPSがimp突然変異体細菌により放出された可能性を、細胞外増殖培地をトリシンSDS-PAGE上で分析することにより研究した。imp突然変異体細菌によるLPSの放出の増強は見出されなかった(データは示してない)。対照的に、野生型およびimp突然変異体は非常に異なるタンパク質プロファイルを示した(図3D)。突然変異体の培地中に存在する主要タンパク質はほぼ35-kDaタンパク質であって、免疫ブロットによりFbpA(データは示してない)、周辺質鉄輸送体(periplasmic iron transpoter)と同定することができた(Ferreirosら, 1999. Comp. Biochem. Physio. 123; 1-7)。類似した高いレベルのFbpAがIpxA突然変異体の細胞外培地中に見出された(図3D)。これらの結果は、impおよびIpxA突然変異体に起こっている周辺質漏出を示し、これはLPSの発現量の低下した大腸菌突然変異体についても報じられている現象である(Nurminenら, Microbiology 143; 1533-1537)。IPTG調節プロモーターの制御下にあるプラスミド上のimp遺伝子のimp突然変異体中への導入によりimp突然変異を補償すると、IPTGの存在のもとで上記全ての野生型表現形質の完全な回復をもたらし、imp突然変異遺伝子表現型はimp欠損と直接関係することを実証する。従って、imp突然変異体はIpxA突然変異体と類似の表現型を実証し、これはLPSバイオジェネシスにおけるImpの役割を示すものである。しかし、IpxA突然変異体とは対照的に、imp突然変異体は明らかに低い量の全長LPSをなお産生した。無傷のLPS分子の存在はimp突然変異体におけるLPS生合成の欠損と相反する。見出された低いレベルのLPSはむしろ局在化しなかったLPSによるLPS合成に対するフィードバック抑制から生じたのかもしれない。
【0257】
実施例4:膜分離による、imp突然変異体株内のLPSの局在化
imp突然変異体により産生されたLPSの局在化を確認するために、本発明者らはスクロース-勾配密度遠心分離を実施して内膜と外膜とを分離した。色々なプロトコルを用いる多数の試みに関わらず、本発明者らは野生型細胞でさえ満足な膜分離を得ることができなかった。予想通り、内膜マーカーである乳酸脱水素酵素はより軽い密度画分に分画された(図4A)が、OMポーリンはより重い密度画分にほとんど分画された(図4B)。しかし、LPSは勾配のほとんど全ての画分に見出され(図4C)、ポーリンと共分画されなかった。ナイセリア属菌膜分離の難しいことは従来も認められていた(Masson & Holbein 1983, J. Bioteriol. 154; 728-736)。imp突然変異体のLPSをスクロース勾配で、野生型株のLPSと同じ様に分画したが(データは示してない)、結論の得られない結果であったので、本発明者らはこれらの結果からなんらかの結論を引き出すつもりはない。その代わりに、本発明者らは代わりの方法を設計してimp突然変異体内のLPSを評価した。
【0258】
実施例5:LPSの表面アクセシビリティ(accessibility)
ナイセリア属菌はO-抗原を合成しない。ナイセリア属菌LPSのコアの末端オリゴ糖部分は、関わるグリコシルトランスフェラーゼの増殖期可変性発現(phase-variable expression)によって可変性である。その結果、多数の異なるいわゆるLPS免疫型が存在する。L3免疫型はα鎖の末端オリゴ糖として、ラクト-N-ネオテトラオース単位を含有し、このα鎖はさらにシアル酸残基により伸長されうる。髄膜炎菌は、内因的に産生されるCMP-NANAを基質ドナーとして用いるかまたは増殖培地に添加された場合はこのヌクレオチド糖を利用することによりラクト-N-ネオテトラオース単位をシアリル化することができる(Kahler & Stephens 1998, Crit. Rev. Microbiol. 24; 281-334)。シアル酸残基は、無傷の細菌をノイラミニダーゼを用いて処理することによりLPSから取り除くことができる(Ramら, 1998, J. Exp. Med. 187; 743-752)。本発明者らはこの特徴を利用してLPSの細胞表面配置を評価した。これまでに記載した結果はシアリル化できないNme L8免疫型について得られた。ノイラミニダーゼアッセイを開発するために、本発明者らはL3バックグラウンドにimp突然変異体を構築した。コロニー乳白度、増殖特性、周辺質タンパク質の放出(データは示してない)およびLPS含量(図5A)を用いて表わしたこの突然変異体の表現型は、L8 imp突然変異体の表現型と同一であった。L3 imp突然変異体のLPSは、銀染色したトリシン-SDS-PAGEゲルにおいて2つのバンドとして現れた(図5A、B)。細胞エンベロープのノイラミニダーゼ処理後、全てのLPSはより低い位置に移動し(図5B)、高い方のバンドはシアリル化LPSに対応することを実証した。CMP-NANAの存在のもとでの突然変異体の増殖後、全てのLPSは高い方の位置に移動し、そして細胞エンベロープをノイラミニダーゼ処理すると完全により低い移動形態に転化された(図5B)。従って、L3 imp突然変異体は全長α鎖をもつLPSを産生し、このLPSは完全にシアリル化することができ、その後ノイラミニダーゼを用いて脱シアリル化することができる。野生型細菌は、CMP-NANAを増殖培地に加えたときだ
けシアリル化LPSを産生し(図5B);通常の高レベルのLPSを産生するとき、明らかに内因性CMP-NANAレベルが律速である。
【0259】
LPSが細胞表面上に露出されているかどうかを試験するために、本発明者らはCMP-NANAの存在で増殖した無傷の細菌をノイラミニダーゼにより処理した。無傷のimp突然変異体細胞内でLPSのわずかな部分だけしか脱シアリル化されず、これはほとんどのLPSが細胞表面上のノイラミニダーゼにアクセスできなかったことを示す(図5C)。アクセスできた少量のLPSは、恐らく突然変異体細胞の漏出性から得られたのであり、観察されたタンパク質放出の増強により表わされている(図3D)。対照的に、野生型細胞に存在するシアリル化LPSは完全に脱シアリル化され、従って予想された通り、全て細胞表面に露出されている(図5C)。野生型とimp突然変異体細菌との間のノイラミニダーゼ・アクセシビリティの差が、いずれかの方法で、存在する全LPSの大きな差による影響を受けるのかどうかを確かめるために、本発明者らは同様なアッセイを、IpxA発現がIPTGにより調節可能である株において実施した(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937-6945)。この株をCMP-NANAおよび様々な濃度のIPTGの存在のもとで増殖した。LPSの発現は使用した濃度に依存したが、本発明者らはIPTGの不在のもとでもいくらかのLPSを検出し(図5D);明らかにIPTG誘導プロモーターは完全にサイレントでなかった。それにも関わらず、無傷の細胞におけるノイラミニダーゼに対するそのフルアクセシビリティから推測されるように、全ての異なる細胞LPSレベルにおいてLPSの細胞表面局在化は明らかであった(図5D)。これらのデータはさらに使用したアッセイを確証し、従って、LPSがimp突然変異体の細胞表面からほとんど不在であるという本発明者らの結論を強調するものであった。従って、ImpはOMの外側リーフレットへのLPS輸送に機能する。
【0260】
実施例6:他の細菌のimp相同体
Nme MC58 imp遺伝子NWB0280の配列(http://www.tigr.org)を問合せ(query)として使いBLASTを用いてimp相同体の微生物ゲノムを検索した。LPSなどのよく保存された構造のバイオジェネシスに関わる分子は高度に保存されているであろう。これは全くimp遺伝子にあてはまる、というのは相同性はほとんどのグラム陰性菌では見出されるが、グラム陽性菌では見出されないからである(Braun & Silhavy 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)。いくつかのグラム陰性菌におけるimp相同体の不在は、LPSの不在と相関があるように見える、というのは本発明者らは、外膜を持つがLPS生合成遺伝子を欠く細菌、例えば、好熱菌属Thermotoga maritima、双球菌属Deinococcusおよびスピロヘータ属spirochaetes Borreliaおよび梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidium)にimp相同体を見出せなかったからである(Raetzら, 2002, Annu. Rev. Biochem. 71; 635-700)。この観察はさらにImpがLPS輸送体として機能するという考えを強化するものである。
【0261】
実施例7:Impのトポロジーモデル
Impが媒介するLPS輸送の機構を理解するために、ナイセリア属菌impのトポロジーモデルを作った。本発明者らのトポロジーモデルは、短い周辺質ターンおよびいくつかの非常に長い(60アミノ酸残基)ループを持つ、18個の膜貫通β鎖を予想する(図6A)。長いループは全く注目すべきものであって、それらはナイセリア属菌Impタンパク質のなかで非常によく保存されている(図7)。
【0262】
考察
LPSは、ほとんどのグラム陰性菌外膜の必須成分でありかつヒトの重篤な敗血症性ショックの原因物質である。そのバイオジェネシスは長い間研究されており、その生合成に関わる多数のタンパク質が同定されている。しかしLPSバイオジェネシスの最終段階、すなわち、IMの周辺質リーフレット(periplasmic leaflet)から細菌細胞表面への完成LPS分子の輸送は捉えどころのないまま残されていた。この度、本発明者らは初めて、このLPS輸送経路に必要なタンパク質を同定した。作製したナイセリア属菌imp突然変異体は、全長LPSの量が劇的に低減した。本発明者らはimp突然変異体に蓄積したLPSの限られた量の細胞配置を正確に決定することができなかったが、膨大なこのLPSの大部分が細胞表面においてアクセスできないことを、ノイラミニダーゼ・アクセシビリティアッセイは明確に示した。Imp自体は、精製した大腸菌外膜における存在により示されかつβ-バレルOMPの典型である芳香族残基のその高い含量により示されるように、OMPである(Braun & 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)ので、ImpはLPSのOMを越えるフリップフロップを媒介する輸送体であると思われるが、Impの周辺質を横切る輸送におけるさらなる役割をこの段階で排除することはできない。imp突然変異体中のLPSの量の著しい減少は局在化しないLPSによるLPS生合成のフィードバック抑制によるのかもしれない。
【0263】
BraunおよびSilhavy(Braun & 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)は、条件付大腸菌突然変異体内のImpの欠損はスクロース勾配分画に見出された新規の、高密度膜の外観を生じることを報じた。この高密度はタンパク質対脂質比の増加に因るものでありうる。首尾一貫して、OMPアセンブリーはImp欠損の影響を受けないように見えるが、大腸菌(Braun & Silhavy 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)とNme(本発明の研究)の両方において、Imp欠損はOM中のLPSレベルの低下をもたらし、従ってタンパク質対脂質比を変えることを本発明者らはこの度、実証した。また、大腸菌imp遺伝子のミスセンス突然変異は疎水性作用薬に対する感受性の増加をもたらしたという観察(Sampsonら, 1989 Genetics 122; 491-501;Alonoら, 1994, Appl. Environ. Microbiol. 60; 4624-4626)もこれで理解することができる:これらの遺伝子は、OMの完全性(integrity)に影響を与えることが公知の特性であるLPSレベルの低下の影響を受けたと思われる(Nurminenら, 1997, Microbiology 143; 1533-1537)。
【0264】
従来、他の必須OMPであるOmp85がLPS輸送に関わることが示唆されている(Nurminenら, 1997, Microbiology 143; 1533-1537)。しかし、本発明者らは、Omp85欠損株における強いOMPアセンブリー欠陥を実証した(Nurminenら, 2003 Science 299; 262-265)。従って、OMP85のLPSバイオジェネシスに与えるなんらかの効果はImpのミスアセンブリーの結果でありうる。さらに、Omp85の非天然ポーリンとの相互作用の実証(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262- 265)、LPS生合成を欠くグラム陰性菌におけるomp85相同体の存在、およびLPS生合成遺伝子を欠くものを除外してグラム陰性菌におけるimpの高保存(本研究)は、全て、Omp85のOMPアセンブリーおよびImpのLPS輸送における直接の役割を主張するものである。Omp85とImpの機能の同定によって、今や、細菌外膜のバイオジェネシスの理解に大きな進歩がなされうる。
【0265】
Impタンパク質は、高保存、細胞表面局在化およびほとんどのグラム陰性菌における必須の役割を照らし合わせると、新規の抗微生物物質を開発するための魅力的な標的である。さらに、ナイセリア属菌imp突然変異体株はワクチン株として有用でありうる。ナイセリア属菌ワクチンは、界面活性剤を用いて処理して大部分のLPSを除去し、ワクチン受給者における毒性反応を防止する処理が施されている外膜小胞から成る。この処置は残念ながら潜在的に重要なワクチン成分、例えば細胞表面露出リポタンパク質も除去する。この方法で調整したワクチンは正常なLPSレベルのほぼ7%を含有する(Fredriksenら, 1991, NIPH Annals 14, 67-79)。本発明者らのデータは、これがimp突然変異体に残るLPSのレベルであることを示す。従って、ワクチン株内のimp遺伝子を欠失することにより、界面活性剤抽出の必要性とそれによる重要なワクチン成分損失の可能性が無くなる。
【0266】
Impタンパク質はimpミスセンス突然変異体の表現型(増加した膜透過性(increased membrane permeability))にちなんで名付けられた。本発明者らがImpの機能を確立した今となっては、本発明者らはこの名称を変更することを提案する。本発明者らは本遺伝子をlpxZと名付けることを示唆し、ここで、呼称lpxをLPSバイオジェネシス遺伝子として使用しかつZはimp遺伝子がLPSバイオジェネシスの最終段階を媒介することを意味するものである。
【0267】
実施例8:プラスミドの構築とMsbA突然変異体株
髄膜炎菌のmsbA遺伝子を破壊するために、本発明者らは株MC58(Tettelin 2000 Science 287 ; 1809-1815)の利用しうるゲノム配列を用いてPCRプライマー(図9)を設計した。簡単に説明すると、msbAの上流および下流の遺伝子の部分(それぞれNMB1918およびNMB1920と呼ぶ)を、PCRによりH44/76のゲノムDNA由来のTaqポリメラーゼおよびプライマー対(primer pair)A/BおよびC/Dを用いてそれぞれ設計した(図9)。両方のPCR産物をpCRII-TOPO中にクローニングしてプラスミドpCRIINMB1918およびpCRIINMB1920をそれぞれ得た。pCRIINMB1918のAccl-Kpnl断片を、Accl-Kpnlで消化したpCRIINMB1920の断片中にライゲートした。得られるプラスミドをAcclを用いて切断してpMB25由来のカナマイシン-耐性カセットの挿入を可能にした(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)。最終構築物はpBTmsbA::kanと呼ばれ、カナマイシン-耐性カセットを元来のmsbA遺伝子と同じ方向で含有した。これをテンプレートとして用いて、PCRによりプライマー対A/Dにより破壊断片を増幅した(図9)。このPCR産物のほぼ200ngを、5mMと共にH44/76またはHB-1細菌に加え、その後これらをプレート上で6時間増殖した。その後、細菌をカナマイシンを含有するプレートに移した。カナマイシン耐性形質転換体における正しい遺伝子置換えをPCRによりプライマー対A/Dを用いて確認した。
【0268】
実験を補完するために、本発明者らは、H44/76ゲノムDNA由来の遺伝子をPCRによりプライマー対E/Fを用い(図9)、High Fidelityキット(Roche)を利用して製造業者のプロトコルに従いクローニングした。PCR産物をpCRII-TOPO中にクローニングし、pEN11(Bosら, 2004)中にNdlおよびAatll制限酵素切断部位の後ろにライゲートしてプラスミドpEN11-msbAを得た。株H44/76由来のmsbA突然変異体をプラスミドおよび5mM MgCl2とともに6時間プレート上で同時インキュベーションすることにより、pEN11-msbAを用いて形質転換した。形質転換体をクロラムフェニコールを含有するプレート上で選択し、そして100μMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを含有するプレート上で繰り返し再ストリークした後、補完実験を行った。全ての酵素は、特に断らない限り、Fermentasから提供を受けた。
【0269】
実施例9:MsbAは髄膜炎菌にとって必須でない
髄膜炎菌株MC58(Tettelinら, 2000)のゲノムおよびZ2491(Parkhillら, 2000 Nature 404; 502-506)をtBlastnプログラム(Altschulら, 1997 Nucleic Acids Res. 25; 3389-3402)のデフォールトサーチマトリックスにより大腸菌MsbAのアミノ酸配列をプローブとして用いて検索した(http://www.ncbi.nih.gov/blast)。MC58遺伝子NMB1919がコードする推定MsbAタンパク質のアミノ酸配列は大腸菌MsbAのそれと32%同一性および52%類似性を提示した。類似の程度の相同性(31%同一性および52%類似性)がZ2491の推定MsbAタンパク質に対して見出された。1つのmsbA突然変異体を髄膜炎菌株H44/76における対立遺伝子置換により構築した(図9)。カナマイシン耐性形質転換体をPCRにより分析してmsbA遺伝子の無傷のコピーの不在およびmsbA::kan対立遺伝子の存在を立証した。正しい形質転換体を高頻度で得たので、大腸菌(Zhouら, 1998 J. Biol. Chem. 273; 12466-12475)とは対照的に、髄膜炎菌においてMsbAは生存にとって必須でないと思われる。
【0270】
実施例10:突然変異体のLPS含量
野生型およびmsbA突然変異体細胞の両方由来のほぼ2.107細胞(550nmにおける1の光学密度(OD550)が1.109細胞/mlを表わす評価法に基づく)から得たプロテイナーゼK-処理した細胞ライセートをトリシン-SDS-PAGEにより分析した(図10A)。野生型株由来の細胞ライセート中のゲル上には明らかにLPSを検出できたが、msbA突然変異体株の細胞ライセート中にはほとんど見られなかった(図10A)。明らかに、msbA突然変異はLPS合成に強い影響を与え、恐らくimp突然変異体で先に観察された輸送経路に留まるLPSにより引き起こされたなんらかのフィードバック抑制機構(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)に因るのであろう。LPS含量を定量するために、本発明者らは、野生型および突然変異体細胞中の3-デオキシ−D-マンノ-2-オクツロン酸(KDO)(LPSの典型的な構造成分)の量を測定した。msbA突然変異体細胞の細胞エンベロープは野生型細胞と比較すると7%のLPS対タンパク質比を含有し、そしてimp突然変異体のLPS対タンパク質比と類似している(図10B)。推定転写ターミネーターがmsbA遺伝子の直ぐ下流に存在するので(図9)、msbA突然変異体中のLPS含量の減少はmsbA遺伝子の不活性の直接の結果であり、下流に位置する遺伝子の突然変異のいずれかの極性効果でないと予想される。この推定を実験で確認した。野生型msbA遺伝子を運ぶプラスミドpEN11-msbAをmsbA突然変異体中に導入すると、LPS対タンパク質比はほぼ野生型レベルに回復する(図10B)。
【0271】
実施例11:増殖の特徴
従来lpxA突然変異体(Steeghs et 1998 Nature 392; 449-450)およびimp突然変異体(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)について記載されているように、msbAヌル突然変異体の作製時間は、指数増殖期中、野生型と比較して著しく低下し、培養物は野生型株と同じ最終ODに到達しなかった(図11)。さらに、16時間、37℃における増殖後に、突然変異体のコロニーはIpxAおよびimp突然変異体のそれらのように(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)野生型のそれらより小さく、そしてそれらはまた野生型により形成されたそれらと比較して乳白色の外観を有した(データは示してない)。興味深いことに、msbA突然変異体のコロニーは、平滑に縁取りされた(smooth-edged)または裂片状に縁取りされた(lobated-edged)コロニーをもつ不均一なものであった(データは示してない)。これらの2つの型のコロニーの比は、指数増殖期に色々なポイントで採取すると、後者が優勢でほぼ1〜ほぼ20まで増加するようであった。液培養中で増殖した髄膜炎菌細胞は、定常増殖期に入った数時間後に図11に示すように自己分解を起こす。これはOMホスホリパーゼA(OMPLA)の活性の結果であると記載されている(M.P. Bosによる提出済みOMPLA報文)。msbA突然変異体の場合、自己分解は遅かった(図11)。細胞は最終的に溶解するが、長いインキュベーション期間の後であって(データは示してない)、この表現型はimp突然変異体についても観察された(研究結果は未開示である)。恐らく、OMPLAは、先に他のOM酵素、すなわち大腸菌のプロテアーゼOmpTについて記載された(Kramerら, 2002 Eur. J. Biochem. 269; 1746-1752)ように、活性のためにLPSが必要であると思われる。
【0272】
実施例12:電子顕微鏡と細胞エンベロープタンパク質プロファイル
突然変異体細胞がなお二重膜を有するかどうかを確認するために、本発明者らは超薄切片を作製してそれらを電子顕微鏡により試験した(図12A、B)。実に、二重膜が明確に観察され、IMとOMが両方ともなお存在することを示した。msbA突然変異が外膜形成を妨げないことは明らかである。さらに細胞エンベロープタンパク質プロファイルを分析すると、msbA突然変異体において主なOMタンパク質PorAおよびPorBの発現が減弱されないことが示された(図12C)。これらの結果はlpxA(Steeghsら, 1998 Nature 392; 449-450)およびimp(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)突然変異体について得られた結果と同程度である。結論として、msbA突然変異体はなおOMをアセンブルすることができ、PL輸送がmsbA突然変異体で減弱されないことを示す。
【0273】
実施例13:msbA突然変異体のリン脂質組成物
全ての主なPL種がmsbA突然変異体において産生されるかどうかを研究するために、細胞を[14C]酢酸ナトリウムを用いて標識し、PLを抽出して薄層クロマトグラフィ(TLC)により分析した(図13A)。髄膜炎菌は従来、多量のホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルグリセロール(PG)、少量のホスファチジン酸(PA)および微量のカルジオリピン(CL)を産生すると報じられている(Rahmanら, 2000 Microbiology 146; 1901-1911)。msbA突然変異体のPLプロファイルを野生型株のそれと比較すると、PE含量の大きな変化は観察されなかった(図13A)。しかし、TLC系の同じ位置で泳動させたPAおよびCLの量と比較したPGの量は、明らかに減少した(図13A)同じ特徴はimp突然変異体についても見出された(データは示していない)。LPSバイオジェネシス突然変異体のOM中のLPSの不足が、OMを形成する他の脂質成分により補償されたに違いない。msbA突然変異体が野生型細胞より多量のPLを産生するかどうかを研究するために、PLをプレート上で増殖した細胞から抽出し、リンを測定して数値化した。莢膜を持つ野生型H44/76株由来のmsbA突然変異体はPL全量の増加を示さなかった(データは示していない)。しかし、注目すべきは、莢膜を持たないHB-1株のmsbA突然変異体は、その親株と比較して全量PLにかなりの増加(p<0.06)を示した(図13B)。明らかに、この株では、PLレベルの増加はLPSの不足を補償するが、H44/76株のmsbA突然変異体においてはLPSの不足は、外膜の外側リーフレット中の脂質テールを介してアンカリングされた莢膜量の増加により補償されるのであろう。
【0274】
実施例14:大腸菌の温度感受性突然変異体の補完
以上報じた結果は、髄膜炎菌においてMsbAはLPS輸送だけに必要であることを示唆するが、大腸菌においてはMsbAはLPSとPLの両方の輸送に必要であると報じられている(Zhou ら, 1998 J. Biol. Chem. 273; 12466-12475)。この相違は、2種のMsbAタンパク質が重複していて、しかし異なる機能を有すると仮定することにより説明できる。この可能性を試験するために、本発明者らは髄膜炎菌msbAが大腸菌msbA突然変異を補完しうるかどうかを研究した。大腸菌K-12温度感受性msbA株WD2の増殖は44℃にて停止する(Doerrierら, 2001 J. Biol. Chem. 276; 11461-11464)。髄膜炎菌のmsbA遺伝子を含有するpEN11-msbAをWD2中に導入すると、増殖は野生型レベルで完全に回復した(データは示していない)。明らかに、ナイセリア属菌MsbAタンパク質は機能的に大腸菌MsbAを補完することができる。
【0275】
考察
大腸菌の温度感受性msbA突然変異体の分析に基づいて、MsbAはLPSおよびPL輸送の両方に関わることが示唆された(Zhouら, 1998 J. Chem. 273; 12466-12475)。しかし、最近のin vitro分析は、いくつかの他の内在性IMタンパク質とは対照的に、タンパクリポソーム中で再構成されたMsbAはPLフリップ-フロップを刺激しないことを示した(Kolら, 2003 J. Biol. Chem. 278; 24586-24593)。少数の膜貫通へリックスにより特徴付けられるタンパク質のサブセットはタンパク質-脂質界面を経由する脂質移行を促進することが説明された(Kolら, 2004 Biochemistry 43; 2673-2681)。これらのタンパク質は、よりダイナミックな挙動を発揮し、大きい膜タンパク質よりも安定性の低いタンパク質-脂質に作用するので、このプロセスに関わりうる(Kol 2004 Biochemistry 43; 2673-2681)。しかし、その後の周辺質を通過してOMへ輸送するために、IMの外側リーフレットからのPLの放出のためにMsbAが必要である可能性が残る。MsbAがPL輸送にある役割を果たすかどうかを研究するために、本発明者らは、髄膜炎菌がLPS無しで生存する能力を利用した。もしMsbAタンパク質がPLの輸送に必須の役割を有すれば、msbA突然変異体を作製することは不可能であるが、もしその産物がLPS輸送だけに関わるのであれば、その遺伝子は不必要であろうという予想であった。本発明者らは、msbA破壊突然変異体を作製することができ、従ってMsbAのPL輸送における必須な役割は排除されることを見出した。突然変異体はLPSレベルを著しく低下させ、MsbAがLPSバイオジェネシスにある役割を果たすことと一致した。msbA突然変異体におけるLPSのレベルの低下は、imp突然変異体に対して先に報じられたのと同様に、輸送経路に留まるLPS分子によるLPS合成に対するフィードバック調節の結果でありうる(Bos 2004 Proc, Natl. Acad. Sci. USA)。増殖速度は明らかにMsbA突然変異の影響を受けたが、OMはなお存在しかつ主なOMタンパク質プロファイルは野生型のそれと類似であった。全ての主なPLはmsbA突然変異体において産生された。PGの量はいくらか減少したと思われるが、PAとCLの全量はいくらか増加したと思われる。PLプロファイルの変化は、OMからのLPSの損失に対する応答でありうる、というのはimp突然変異体がこの点について同じ表現型を示したからである。さらに、莢膜を欠くHB-1由来のmsbA突然変異体において、PLは過剰生産され、それらはOMの外側リーフレットを形成し、それによりLPSと置換わることができた。同様に、LPSバイオジェネシス遺伝子、htrB(lpxL)(Karowら, 1992 J. Bacteriol. 174; 7407-7418)およびIpxC(Kloserら, 1998 Mol. Microbiol. 27; 1003-1008)における突然変異がより高いPLレベルを生じることが先に大腸菌において示されている。しかし、かかるPL含量の増加は莢膜産生株H44/76のmsbA突然変異体に観察されなかった。先に、莢膜を欠く髄膜炎菌株においてlpxA突然変異を作製することは不可能であることが報じられた(Steeghs 2001 EMBO J. 20; 6937-6945)。恐らく、msbA突然変異体においてなお作られる少量のLPSがこのバックグラウンドで、これらのLPS分子が正しく局在化していなくても、msbA突然変異体の構築を可能にしたと思われる。重要なこととして、髄膜炎菌のmsbA遺伝子を含有する低コピーベクターは大腸菌の温度感受性msbA突然変異体を補完しうる。髄膜炎菌MsbAはLPS輸送だけに関わるので、この結果は大腸菌のMsbAもPL輸送体に必要でないことを示唆する。制限温度にてかかる大腸菌において観察されたIM中のPLの蓄積(Doerrlerら, 2001 J. Biol. Chem. 276; 11461-11464)は、従ってLPS輸送の欠陥の第2の効果として説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】図1はimp突然変異株の構築を示す。(A)野生型(WT)およびimp突然変異体のimp遺伝子座のゲノム組織。NMB0279は、MC58データベース(http://www.tigr.org)において、保存された仮想タンパク質という注釈が付いている。surA遺伝子(生存タンパク質A(survival protein A))はOMPバイオジェネシス(biogenesis)に関わる周辺質シャペロン(periplasmic chaperon)をコードする。rnb:リボヌクレアーゼII。矢印は形質転換に用いたDNA領域を示す。(B)8%SDS-PAGE上で分離しかつ抗Imp抗体を用いて探索した野生型(レーン1)およびimp突然変異体(レーン2)の細胞エンベロープの免疫ブロット。分子量マーカーはkDaで示した。
【図2】図2はNme imp突然変異体の特徴を示す。(A-C)は野生型(A)、imp突然変異体(B)およびIpxA突然変異体(C)細菌のコロニー形態である。コロニーを両眼顕微鏡によりフレキシブルミラーの光る側(shiny side)を用いて観察した。(D)TSB中の野生型(-黒四角-)およびimp突然変異体(-黒三角-)細菌の増殖曲線。
【図3】図3は野生型(レーン1)、imp突然変異体(レーン2)およびipxA突然変異体(レーン3)細菌のタンパク質およびLPSプロファイルを示す。(A、B)細胞エンベロープを、10%SDS-PAGEにより変性(95℃+)または半未変性条件(95℃-)で分析した。ゲルをクーマシーブルーにより染色する(A)かまたはブロットして抗PorA抗体を用いて探索した(B)。(C)等量のプロテイナーゼK処理した全細胞をトリシン-SDS-PAGEで処理し、銀を用いて染色してLPSを可視化した。(D)等容量の増殖培地(100000g上清)をTCAを用いて沈降させ、11%SDS-PAGEで処理してクーマシーブルーを用いて染色した。分子量マーカーを(kDaで)示した。
【図4】図4は野生型Nme膜の等密度スクロース勾配遠心分離後に得た画分の分析を示す。(A)色々な画分中の、屈折計で測定した%スクロース(-黒三角-)およびLDH活性(-黒四角-)。(B、C)それぞれの画分の等容量をTCAにより沈降させ、変性SDS-PAGEで分離して次いでクーマシーブルー染色をするか(B)またはトリシンSDS-PAGEで分離して次いで銀染色によりLPSを可視化した(C)。主要OMPであるPorAおよびPorBの位置を示す。分子量マーカーをkDaで示す。
【図5】図5はLPSの表面アクセシビリティ(surface accessibility)を示す。全てのパネルは、プロテイナーゼK処理を供給前に施したサンプルを含有する銀染色トリシンSDS-PAGEゲルを示す。(A)示した株の全細胞ライセートの等量を同じゲル上に供給した。(B)80μM CMP-NANAの存在もしくは不在のもとで増殖した細菌の細胞エンベロープ。示したものは、細胞エンベロープを電気泳動前にノイラミニダーゼを用いて処理した。(C)80μM CMP-NANAの存在のもとで増殖した無処理の細菌をノイラミニダーゼにより処理し、次いでトリシン-SDS-PAGEで処理した。パネルBおよびCにおいて、野生型サンプルと比較して5倍量のimp突然変異体サンプルを供給した。野生型およびimp突然変異体サンプルは別々のゲル上で電気泳動で処理し、染色して両方の変異体のLPSバンドの光学的可視度を得た。(D)誘導しうるIpxA突然変異体を、示したIPTG濃度+80μM CMP-NANAの存在のもとで増殖した。無傷の細胞を、示したようにノイラミニダーゼで処理した。等量の細胞ライセートを同じゲル上で泳動した。
【図6】図6はナイセリア属菌Impのトポロジーモデルを示す。
【図7】図7は9つの細胞外ループの位置を示すImp(配列番号1)の配列を示す。
【図8】図8は髄膜炎菌Imp配列のアラインメントを示す。
【図9】図9は野生型株および構築したmsbA突然変異体内のmsbA遺伝子座の遺伝組織を示す。突然変異体において、カナマイシン-耐性カセット(KAN)は3'末端の131bp(M)だけを残してmsbAと置き換わる。msbAの破壊処理およびクローニングのために用いるプライマーを矢印で示す。プライマー配列は(A)CCCAAAGCGAAGTGGTCGAA;(B)GTCGACTATCGGTAGGGCGGGAACTG(AccI制限部位に下線を引く);(C)GTCGACGACCGCATCATCGTGATGGA(AccI制限部位に下線を引く);(D)TTCGTCGCTGCCGACCTGTT;(E)TTCATATGATAGAAAAACTGACTTTCGG(NdeI制限部位に下線を引く) ;(F)GACGTCCCATTTCGGACGGCATTTTGT(AatII制限部位に下線を引く)である。予想プロモーター(P)およびターミネーター(T)配列を示す。NMB1918およびNMB1920を用いて示したORFは恐らく、マロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼおよびGMPシンターゼをそれぞれコードする。
【図10】図10はmsbA突然変異体中のLPS含量を示す。A.株HB-1(WT)由来の細胞およびそのmsbA-突然変異体誘導体(ΔmsbA)をプレートから再懸濁し、LPS含量をトリシン-SDS-PAGEにより分析した。B.KDOおよびタンパク質濃度を、H44/76由来の色々な株から単離した細胞エンベロープから測定した。測定したKDO濃度をIpxA突然変異体で測定したバックグラウンド値に対して補正し、そして野生型株におけるLPSとタンパク質濃度の比を100%に設定した。
【図11】図11はmsbA突然変異体の増殖を示す。株HB-1(野生型)およびそのmsbA突然変異体誘導体をプレート上で一夜増殖して5mlのTSBに再懸濁した。OD550を、37℃で180rpmにて攪拌しながらインキュベーション中に毎時間測定した。
【図12】図12はmsbA突然変異体の形態学および細胞エンベロープタンパク質プロファイルを示す。A.H44/76由来のmsbA突然変異体の超薄切片の電子顕微鏡写真を示す。白線で囲んだ矩形内領域を拡大してパネルBに示す。内膜(IM)および外膜(OM)を矢印で示す。スケールは100nmである。C.野生型株H44/76(レーン1)、そのmsbA突然変異体誘導体(レーン2)およびpEN11-msbAを補ったmsbA突然変異体(レーン3)の細胞エンベロープタンパク質プロファイルを示す。PorAおよびPorBを左に示す。
【図13】図13は野生型およびmsbA突然変異体株のリン脂質分析を示す。A.HB-1株(WT)由来の細胞およびそのmsbA突然変異体誘導体(ΔmsbA)を[14C]酢酸を用いて標識し、そしてリン脂質を単離してTLCにより分析した。主要PL種の位置を示す。B.プレート上に増殖した細胞を再懸濁し、そしてOD550に基づいて等量の細胞をPL単離に用いた。PLのリン含量を定量した。野生型量を100%に設定してmsbA突然変異体から単離された量と比較した。平均値は6独立実験値から求めた。
【図14】図14Aは髄膜炎菌由来のMsbAのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。図14BはB. parapertussis由来のMsbAのアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図15A】図15Aは髄膜炎菌由来のMsbAの核酸配列(配列番号3)を示す。
【図15B】図15BはB. parapertussis由来のMsbAの核酸配列(配列番号5)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポ多糖(LPS)の細菌外膜への輸送に関わるタンパク質の発現が機能的にダウンレギュレーションされたグラム陰性菌に関する。かかるタンパク質の例は、ImpおよびMsbAタンパク質である。本発明はまた、外膜へのリポ多糖(LPS)輸送の破壊されたおよび/またはLPS含有量がより低い、突然変異impおよび/またはmsbA遺伝子を含有するナイセリア属(Neisseria)菌株に関する。本発明のさらなる態様は、かかる株から作られた外膜小胞調製物に関する。本発明は突然変異Impタンパク質そして特にキメラImpタンパク質を含む。本発明はまた、突然変異Impタンパク質またはLPSの外膜への輸送の破壊された全細菌もしくは細菌の画分を含有するワクチンおよび免疫原性組成物ならびにナイセリア属菌感染の治療または予防におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
グラム陰性菌はヒトの数多くの病態の原因となる病原体であって、かかる細菌の多くに対して効力を有するワクチンを開発する必要がある。とりわけ、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、羊精巣上体炎菌(Brucella ovis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、大腸菌(Esherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)は、ワクチン接種によって治療しうる病態を引き起こすグラム陰性菌である。
【0003】
髄膜炎菌は、特に子供や若年成人に重要な病原体である。敗血症および髄膜炎は最も生命を脅かす病態の侵襲性髄膜炎菌性疾患(IMD)である。この疾患は、その罹患率および死亡率の高さから、世界的な健康上の問題になっている。
【0004】
13群の髄膜炎菌血清群が、莢膜多糖における抗原性の相違に基づいて同定されているが、最も一般的なものはA、BおよびCであって、これらが世界中の疾患の90%の病因となっている。血清群Bは、欧州、米国およびラテンアメリカの数カ国において最も一般的な髄膜炎菌性疾患の病因である。
【0005】
莢膜多糖に基づく血清群A、C、WおよびYのワクチンはすでに開発されていて、髄膜炎菌性疾患の発生を抑えることが示されている(Peltolaら, 1985 Pediatrics 76; 91-96)。しかし、血清群Bは免疫原性が弱く、主としてIgMアイソタイプの過渡的な免疫応答しか誘導しない(Ala’Aldeen DおよびCartwright K 1996, J. Infect. 33; 153-157)。従って、ほとんどの温帯の国々において疾患の大部分の原因となっている血清群Bの髄膜炎菌に対して現在利用できる、広範に有効なワクチンは存在しない。欧州、オーストラリアおよび米国において主として5歳未満の子供に血清群Bによる疾患の発生が増加しつつあるため、これは特に問題である。血清群B髄膜炎菌に対するワクチンの開発は、その莢膜多糖がヒト神経細胞接着分子と免疫学的に類似しているために免疫原性が弱いので、特に困難となる。従って、ワクチン製造の戦略は、髄膜炎菌外膜の表面露出構造に全力を集中してきたが、上記抗原が株間で著しく変化に富むため、阻まれてきた。
【0006】
さらなる開発によって、細菌膜の正常な成分を構成する多数のタンパク質を含有しうる外膜小胞から作られたワクチンが導入されるに至った。これらの1つは、髄膜炎菌血清群BおよびCに対するVA-MENGOC-BC(登録商標)キューバワクチンである(Rodriguezら, 1999 Mem Inst. Oswaldo Cruz, Rio de Janeiro 94; 433-440)。このワクチンは、莢膜多糖ACワクチンによる予防接種プログラムによって無くすことのできなかった、キューバにおける侵襲性髄膜炎菌性疾患の発生に対抗できるように設計された。流行している血清群はBおよびCであるが、VA-MENGOC-BC(登録商標)ワクチンは、髄膜炎菌血清群Bの株に対して83%の推定ワクチン効率で、発生を抑制することに成功した(Sierraら, 1990 In Neisseria, Walter Gruyter, Berlin, m. Atchmanら, (編) p 129-134;Sierraら, 1991, NIPH Ann 14; 195-210)。このワクチンはある特定の発生に対して有効であったが、誘導された免疫応答は他の髄膜炎菌株に対しては感染防御しないと考えられる。
【0007】
ラテンアメリカにおいて同種および異種の血清群B髄膜炎菌株により引き起こされた流行時に実施されたその後の有効性評価研究は、年長の小児および成人ではある程度の有効性を示したが、感染の危険の最も大きい年少の小児ではその有効性は著しく低かった(Milagresら, 1994, Infect. Immun. 62; 4419-4424)。かかるワクチンが英国のように多株の地方病を有する国々ではどれほど有効であるか疑わしい。異種株に対する免疫原性に関する研究は、特に乳幼児においては、限定された交差反応性血清殺菌活性しか示さなかった(Tapperoら, 1999, JAMA 281; 1520-1527)。
【0008】
第2の外膜小胞ワクチンは、ノルウェーにおいてスカンジナビア地方で流行している株の典型的な血清型Bアイソタイプを用いて開発された(Fredriksenら, 1991, NIPH Ann, 14; 67-80)。このワクチンは臨床試験でテストされ、29ヶ月後に57%の防御効果があることが明らかになった(Bjuneら, 1991, Lancet, 338; 1093-1096)。
【0009】
しかし、外膜小胞をワクチンに使用することはいくつかの問題を伴う。例えば外膜小胞(OMV)は毒性のリポ多糖(LPS)を含有する。ワクチンの毒性反応を防止するために、界面活性剤を用いて処理して大部分のLPSを除去することによって外膜小胞の毒性を低減することができる。この処理は残念なことに他の潜在的に重要なワクチン成分、例えば表面露出リポタンパク質も除去する。
【0010】
imp遺伝子は、グラム陰性菌の外膜タンパク質であるImp/OstAタンパク質をコードする。Imp/OstAは大腸菌において最も徹底した研究が行われていて、外膜透過性にある役割を果たすことが始めて記載された(Sampsonら, 1989 Genetics 122,491-501)。次いでImp/OstAは大腸菌において有機溶媒耐性を決定することが見出された(Aonoら, 1994 Appl. Environ. Microbiol. 60, 4624-4626)。Imp/OstAはn-ヘキサンの流入を低下させることにより大腸菌のn-ヘキサン耐性に寄与することが報じられている(Abeら, 2003, Microbiology 149,1265-1273)。
【0011】
msbA遺伝子は最初、大腸菌において、脂質A生合成(biosynthesis)の最終段階に関わる酵素をコードするhtrB(IpxL)遺伝子における突然変異のマルチコピーサプレッサーとして同定された(KarowおよびGeorgeopoulos, 1993. Mol Microbiol. 7,69-79)。MsbAタンパク質はABC(ATP-結合カセット)輸送体のファミリーに属する。大腸菌の温度感受性突然変異体は、制限増殖温度にシフトすると、内膜中にLPSならびに3種のPLを蓄積すると報じられている(Doerrlerら, 2001 J. Biol. Chem. 276,11461-11464)。この結果は、内膜を横切るLPSおよびPLの移行におけるおよび/または、先に報じられたように(PolissiおよびGeorgopoulos, 1996 Mol. Microbiol. 20,1221-1233)、輸送プロセスの後期段階におけるMsbAの役割を示した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
グラム陰性菌感染、特にナイセリア属菌感染の治療および予防に使用するための改良されたワクチンが必要である。特に重要なことは、全細胞または外膜小胞調製物を含有するワクチンにおけるLPS毒性の問題を解決するとともに、所望の抗原を外膜に保持するのを保証することがである。本出願は、その表面上に野生型株と比較してLPSが減少したかまたはLPSを有しないグラム陰性菌突然変異株、特にナイセリア属菌株、例えば髄膜炎菌などから調製した外膜小胞ワクチンの一般概念を開示する。かかるワクチンは、外膜小胞を低濃度の界面活性剤を使うかまたは界面活性剤を全く使わずに抽出するプロトコルを用いて生産することができ、従って外膜小胞表面上のリポタンパク質などの防御抗原を保持するという利点を有する。これは、低レベル(野生型レベルの50、40、30、20または10%未満)のLPSが突然変異株において維持され、次の利点:i)LPSをそれ自体なお抗原として利用できることおよびii)生産目的用に株がより良く増殖できることのうちの1つまたは両方が実現される場合に特に好ましい。本発明者らは、ImpまたはMsbAタンパク質のいずれかを破壊すると、かかる株および外膜小胞ワクチンを生産しうることを見出した。これらの目的のために特に好ましい突然変異体はimp遺伝子の機能の破壊である。
【0013】
本発明はさらに、突然変異ImpまたはMsbAタンパク質、例えば、Impタンパク質由来の主鎖ポリペプチドと少なくとも1つの異なるタンパク質由来のインサート領域とを含んでなり、少なくとも1つのImp細胞外ループの一部もしくは全てが少なくとも1つのさらなるタンパク質由来の1以上のポリペプチドにより置換えられたキメラタンパク質を提供する。また、少なくとも1つのImp細胞外ループの一部もしくは全てと、Tヘルパーエピトープを与える異なる担体タンパク質とのキメラを含んでなるワクチン成分も提供する。
【0014】
本出願は、LPSのグラム陰性菌外膜への輸送を調節するタンパク質を開示する。特に、ImpにはLPSのグラム陰性菌外膜への輸送を調節するある機能が与えられている。本出願はさらに、MsbAがLPSのナイセリア属菌の外膜への輸送を調節すること、およびこのタンパク質を破壊しても外膜へのリン脂質輸送は破壊されないことを開示する。impもしくはmsbA遺伝子のいずれかの発現のダウンレギュレーションによるかまたはImpもしくはMsbAタンパク質の構造を破壊してLPSを外膜へ輸送しないようにすることのいずれかによるImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションは、図5および10に示したようにほとんどのLPS(しかし全てではない)が細胞表面に到達できないようにする。ImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションはまた、局在化できなかったLPSによるLPS合成のフィードバック抑制によって、細菌内に存在するLPSの量の減少をもたらす。従って、ImpもしくはMsbAのダウンレギュレーションは、界面活性剤処理後に達成されるレベルと等価かまたはそれより低いレベルのLPSをもつグラム陰性菌(好ましくはナイセリア属菌)を生じる。かかる細菌は低毒性を有する一方、LPSが細菌/ワクチン組成物の免疫原性に寄与しうるのに十分なLPSを保持する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態のさらなる有利な態様は、Impタンパク質を、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌株、より好ましくは髄膜炎菌(N. meningitidis)の外膜上の好都合な異種抗原を提示するための骨格として利用することである。これらの抗原は(表面露出)Impループの1つの部位に位置している。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態のさらなる利点は、Impの細胞外ループのいくつかを本発明のキメラタンパク質中に保持する場合に実現される。細胞外ループのアミノ酸配列はよく保存されていて、Impの細胞外ループに対する抗体は広範囲の細菌、好ましくはナイセリア属菌株と交差反応するに違いない。
【0017】
ある好ましい実施形態において、本発明は、LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質、例えばImpもしくはMsbAがダウンレギュレーションされて外膜へのLPS輸送が破壊されたグラム陰性菌を提供する。
【0018】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の突然変異したまたはキメラタンパク質をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド、本発明のキメラタンパク質をコードする配列を含んでなる発現ベクターおよび上記発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドは細菌ゲノムを包含するものではない。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明は、外膜へのLPS輸送を調節するタンパク質、例えばImpもしくはMsbAの発現がダウンレギュレーションされ、その結果、外膜小胞が、LPSの外膜への輸送が破壊されてない類似のグラム陰性菌株由来の外膜小胞より低いLPS含量を有する、ある株からの外膜小胞調製物を提供する。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のキメラタンパク質または外膜小胞調製物を生産する方法を提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のグラム陰性菌(好ましくはナイセリア属菌)またはその画分もしくは膜、本発明のキメラタンパク質、または本発明の外膜小胞調製物、および製薬上許容される担体を含んでなる医薬調製物、好ましくはワクチンを提供する。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明は、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を治療または予防する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面の説明
(後述の「図面の簡単な説明」を参照のこと。)
詳細な説明
本明細書において、本発明者らは、「含んでなる」、「含む」という用語が、あらゆる場合に、任意に「からなる」という用語で置き換え可能であることを意図している。
【0024】
用語リポ多糖(LPS)とリポオリゴ糖(LOS)とは互換的であって問題の細胞株にとって正しい用語を採用するものとする。
【0025】
外膜へのLPS輸送が低下したグラム陰性菌
本発明の一態様は、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現がダウンレギュレートされ、その結果、外膜中のLPSのレベルが野生型グラム陰性菌と比較して低下したかまたは、その結果、外膜へのLPS輸送が破壊されたグラム陰性菌である。外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の例はImpおよびMsbAである。外膜へのLPS輸送に関わる1、2、3、4または5種以上のタンパク質を機能的にダウンレギュレートすることができる。
【0026】
野生型グラム陰性菌は、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現が破壊されてない対応するグラム陰性菌として定義される。
【0027】
LPS輸送に関わるタンパク質の機能的ダウンレギュレーションは致死性表現型をもたらしてはならない。例えば、MsbAダウンレギュレーションの場合、グラム陰性菌はリン脂質輸送が破壊されている大腸菌の株でないことが好ましい。
【0028】
impおよび/もしくはmsbA遺伝子からの発現のいずれかをダウンレギュレートすることによりまたはImpおよび/もしくはMsbAタンパク質の構造を破壊することによりImpおよび/もしくはMsbA発現がダウンレギュレートされると、その結果、LPSを外膜に効率的に輸送しなくなり、すなわち、その結果、外膜中に存在するLPSの量が低下する。
【0029】
「ダウンレギュレートされる」は「機能的にダウンレギュレートされる」を意味することが好ましい。これは、発現のダウンレギュレーションにより、または遺伝子の破壊により実施して発現が起こらないようにすることができる。これはまた、LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の構造をアミノ酸の欠失、アミノ酸の挿入もしくはアミノ酸の置換により改変して、その結果、得られるタンパク質がLPSを、非突然変異体タンパク質より低い効率でグラム陰性菌の外膜へ輸送することによっても達成することができる。
【0030】
LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の機能的ダウンレギュレーションは、Impおよび/またはMsbAがダウンレギュレートされてないグラム陰性菌の類似の株と比較して、外膜上のLPSの量の少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、好ましくは80%、90%または95%または99%または100%の低下をもたらす。
【0031】
LPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の発現レベルを破壊する場合、外膜のLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)の量は、少なくとも20%、30%、40%、好ましくは70%、80%、90%、95%、98%または100%だけ低下する。場合によってはimpとMsbAの両方の発現レベルを破壊する。
【0032】
ある好ましい実施形態においては、本発明のグラム陰性菌は、突然変異したLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質(例えば、Impおよび/またはMsbA)であって、配列の一部を除去して末端切断タンパク質を形成させることにより、または配列を変化させてLPS輸送活性を低下もしくは喪失させることにより、またはタンパク質の配列の一部を欠失させてそれを異なるタンパク質からの配列と置き換えてキメラタンパク質を作ることにより、タンパク質の構造が破壊された上記タンパク質を含んでなる。
【0033】
ある好ましい実施形態においては、Impタンパク質の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループの少なくとも一部分が除去されている。欠失した1以上の配列は場合によっては異なるタンパク質からの配列により置き換えられてキメラタンパク質を作る。本発明者らは、Impタンパク質が異種ペプチドまたはエピトープを有用なコンフォメーションでディスプレイするための非常に優れた足場(scaffold)を、特にImp細胞外ループ中に挿入するかまたは置き換えたときに、提供することを見出した。これらを含有するかかるImpタンパク質および外膜小胞は本発明の独立した態様を形成する。
【0034】
本発明のグラム陰性菌は、好ましくは、下記の本発明の突然変異したまたはキメラタンパク質の少なくとも1つを含んでなる。
【0035】
グラム陰性菌は、グラム陰性菌のいずれかの好適な株から選択する。Imp発現を標的とする場合、野生型グラム陰性菌はImp相同体を発現しなければならない(従って、本発明のこの態様に対するグラム陰性菌は、好熱菌属のThermotoga maritima、双球菌属のDeinococcus radiodurans、Bライム病菌(Borrelia burgdorferi)または梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidium)由来ではない)。MsbA発現を標的とする場合、MsbAダウンレギュレーションは致死表現型をもたらさない、従って、本発明のこの態様に対するグラム陰性菌は大腸菌でない。好ましいグラム陰性菌としては、百日咳菌(Bordetella pertussis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、羊精巣上体炎菌(Brucella ovis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittacci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、大腸菌(Esherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)が挙げられる。最も好ましいグラム陰性菌は髄膜炎菌である。
【0036】
タンパク質およびキメラタンパク質
本発明のさらなる態様は、LPSを外膜へ輸送する機能が破壊されている突然変異MsbAまたはImpタンパク質である。これは、MsbAおよび/またはImpの領域を欠失させて末端切断タンパク質を形成させるかまたはポリペプチド配列内のアミノ酸を突然変異させることにより達成することができる。そのMsbAまたはImpの配列の1以上の領域を他のタンパク質由来の配列と交換したキメラタンパク質も、LPSを外膜へ輸送する機能を破壊するために利用することができる。
【0037】
キメラタンパク質は2種以上の異なるタンパク質由来のポリペプチド配列を含有するタンパク質である。キメラタンパク質は、少なくとも1つの他のタンパク質由来の配列が挿入または付加された骨格ポリペプチドを含有する。典型的には、骨格ポリペプチドがキメラタンパク質の大部分を構成し、本発明の場合にはLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質、例えばImpまたはMsbAタンパク質由来である。いくつかの本発明の実施形態では、外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質(例えばImpまたはMsbA)はキメラタンパク質の小画分を構成しうる。
【0038】
本発明のキメラタンパク質がImp突然変異体であれば、それは
Impタンパク質由来の少なくとも1つの部分(場合によっては少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の部分)および少なくとも1種の異なるタンパク質(場合によっては少なくとも2、3、5、6、7、8、9または10種の異なるタンパク質)由来の少なくとも1つの部分(場合によっては少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の部分)を含んでなる。
【0039】
「から誘導された(または、由来の)」はタンパク質配列の起源を示す。から誘導された(または、由来の)の配列は、完全なタンパク質配列および完全なタンパク質配列の一部分の両方を包含する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、タンパク質の大部分がImpでありかつその細胞外ループを他のタンパク質からのペプチドを運ぶために、場合によっては少なくともいくつかの1以上のImp細胞外ループを欠失させることにより、適合させたキメラタンパク質を含む。これらはまた、異なるタンパク質、好ましくは細菌外膜タンパク質の構造中に組み込まれたImpの少なくとも1つの細胞外ループを含有するキメラタンパク質を含む。これらはまた、T細胞エピトープの担体に連結されたImp由来の少なくとも1つの細胞外ループも含む。その連結は、ペプチド結合、好ましくは以下に記載のコンジュゲーションプロセスにより形成された共有結合、または非共有結合の相互作用であってもよい。
【0041】
場合によっては、キメラタンパク質は本発明のグラム陰性菌から誘導しうる。
【0042】
好ましくは、本発明のグラム陰性菌およびキメラタンパク質は、いずれかのグラム陰性菌由来のImpまたはMsbAポリペプチドを含有し、上記グラム陰性菌は、好ましくは百日咳、モラクセラ・カタラーリス、マルタ熱菌、羊精巣上体炎菌、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチ、大腸菌、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、淋菌、髄膜炎菌、緑膿菌およびエルシニア・エンテロコリチカ由来、最も好ましくは髄膜炎菌由来である。最も好ましくは、本発明のキメラタンパク質は、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%または99%同一性を配列番号1の対応する配列と共有する配列をもつImpポリペプチドを含有する。最も好ましくは、本発明のキメラタンパク質は少なくとも70%、80%、90%、95%または99%同一性を配列番号2の対応する配列と共有する配列をもつMsbAポリペプチドを含有する。キメラタンパク質はタンパク質の配列の一部分しか含有しないので、配列同一性の程度は対応する配列に基づいて計算する。これは、欠失されたおよび/または置換されたImpまたはMsbA配列の部分はこの配列同一性計算に含まれないことを意味する。
【0043】
あるいは、ImpまたはMsbAポリペプチドがキメラタンパク質の少なくとも50%を構成する場合、キメラタンパク質の完全配列は少なくとも40%、50%、60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%または95%同一性を配列番号1または配列番号2の配列と共有する。
【0044】
本発明者らはImpのトポロジーモデルを解明して、9個の(表面露出)ループの存在を示した。Impタンパク質の表面ループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループからの少なくともいくつかのアミノ酸を、インサートとしての非天然、すなわち異種配列により置換することができる。ループのいずれかの少なくともいくつかを異種配列により置換することができる、しかし、挿入する、置換する、改変するまたは欠失させるのが好ましいループはループ3、ループ8、ループ6およびループ2の1個以上である。変えるのが好ましいループの組合わせとしては、ループ3;ループ8;ループ3および8;ループ6;ループ3および6;ループ6および8;ループ3、6および8;ループ2;ループ2および3;ループ2および6;ループ2および8;ループ2、3および6;ループ2、3および8;ループ2、6および8;ループ2、3、6および8が挙げられる。異種配列により置換する(または改変するまたは欠失させる)ループの好ましい組合わせは、場合によってはループ1、4、5、7および9の1個以上の置換(または改変または欠失)と組合わせる。さらなる好ましい実施形態においては、全9個のループの少なくともいくつかを欠失させるかまたは欠失させて異種配列により置換する。
【0045】
細胞外ループの欠失のサイズは、少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸である。欠失した配列は、場合によっては少なくとも6、10、15、20、30、40、50、60または70アミノ酸のインサート配列により置換えられる。
【0046】
好ましいキメラタンパク質は、配列番号1のアミノ酸357-416、648-697、537-576、295-332、252-271、444-455、606-624、482-501、または721-740のうちの1、2、3、4、5、6、7、8または9ループに対応する配列がその骨格ポリペプチドから不在であるImp骨格を含有する。少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸が1以上の上記配列から不在であってもよい。
【0047】
置換配列またはインサート(もし用いるのであれば)は異なるタンパク質由来である。それは細菌の同じ株または異なる株由来であってもよく、好ましくは細菌外膜タンパク質由来である。かかる置換配列は保存されていることおよび/または表面露出されていること、すなわち、免疫応答、好ましくは細菌生物の1以上の株に対する免疫応答を生成できることが好ましい。好ましくは、1つのループまたはその部分は単一タンパク質由来のインサート配列により置換される。複数ループが置換される場合、それらは好ましくは細菌、好ましくはナイセリア属菌の異なる株からの異なるタンパク質または同じタンパク質由来のインサートにより置換される。
【0048】
一実施形態においては、置換配列は、淋菌または髄膜炎菌などのナイセリア属菌外膜タンパク質から誘導される。かかる好適な外膜タンパク質の一例は、TbpAと呼ばれるナイセリア属菌鉄調節タンパク質を記載するUS 5,912,336に与えられている。置換配列は、都合よくTbpAのループ2、3、4、5および8のいずれか1個以上から誘導することができる。これらのループは一般にそれぞれTbpAのアミノ酸226-309;348-395;438-471;512-576および707-723に対応する。好ましくは、ループ4、5および8の1個以上が組み込まれる。インサートはTbpA-高分子量および/またはTbpA-低分子量から誘導される(下記の通り)。ある好ましい実施形態において、TbpA-高分子量のインサートがあるImp細胞外ループの少なくとも一部分を置換しそしてTbpA-低分子量のインサートが異なるImp細胞外ループの少なくとも一部分を置換する。好ましくは、上記の好ましいループ組合わせが置換される。
【0049】
かかる好適な外膜タンパク質の他の例は、髄膜炎菌由来のNhhA(またはHsf)表面抗原を記載するWO01/55182に与えられている。置換配列は都合よく、一般にC2、C3、C4およびC5と呼ばれるNhhAタンパク質の1以上の定常域から誘導することができる。本発明に用いることができる他の置換配列の例はEP 0 586 266に記載されている。
【0050】
Impループ(特にループ3および/または8)と置換することができるさらなるナイセリア属菌OMPループは、
PorAループ4[または可変域2](http//neisseria.org/nm/typing/porA/を参照);
PorAループ5(「病原性ナイセリア種の外膜ポーリンのトポロジー(Topology of outer membrane porins in pathogenic Neisseria spp)」, van der Ley, Poolmanら, Infect Immun 1991, 59, 2963-71に記載;PorA P1.7,16(H44/76)ループ5のその配列はRHANVGRNAFELFLIGSGSDQAKGTDPLKNHである);
LbpA表面露出ループ4、5、7、10および12、これらはアミノ酸210-342、366-441、542-600、726-766および844-871にそれぞれ対応し、12が好ましい(配列KGKNPDELAYLAGDQKRYSTKRASSSWST)[LbpA表面ループのさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるPrinzら, 1999 J Bacter. 181: 4417を参照];
NspA表面露出ループ1、2、3または4、これらはアミノ酸配列25-54、61-87、103-129および149-164にそれぞれ対応し、好ましくはループ2(例えばFAVDYTRYKNYKAPSTDFKLYSIGASA)および/または3(例えばARLSLNRASVDLGGSDSFSQTSIGLGVL)を挿入する(これらのループは全く小さいので、理想的には全てのImpループ2および/または8を除去しないでこれらのループを導入し、そしてもし両方を導入するのであれば、これらをループ2または8に(または逆でも可)導入してNspAのループ2および3の間に存在するコンフォメーショナルエピトープを保存することを試みることが好ましい)[NspAループのさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるVandeputte-Ruttenら, 2003 JBC 278: 24825を参照];
Omp85の表面露出ループ(本明細書に参照により組み入れられるScience 2003 299: 262-5、および支持するオンライン材料、図S4を参照)である。
【0051】
あるいは、細菌糖抗原のペプチドミモトープを上記の方法でImp中に組み込んでもよい。好ましくはナイセリア属菌LOSのミモトープをループ2および/または8中に組み込んで、ワクチンの毒性影響を与えることなくこの重要抗原に対する免疫応答を都合よく刺激する。LOSミモトープは当業界で公知である(本明細書に参照により組み入れられるWO 02/28888とその引用文献を参照)。
【0052】
本発明のある好ましい実施形態においては、キメラタンパク質は少なくとも1つのImp由来の細胞外ループの全てまたは1つを含んでなる。図7に示したように、Impタンパク質はグラム陰性株の間でよく保存されていて、従ってグラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌の色々な株と反応する交差反応性抗体を誘発する抗原である。好ましくは本発明のキメラタンパク質は、Imp細胞外ループ1、2、3、4、5、6、7、8および/または9のうち少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9ループの少なくとも6、10、15、20、30、40または50アミノ酸を含んでなる。保持すべきImp細胞外ループの好ましい組み合わせは、ループ3および8、ループ3および6、ループ6および8、ループ3、6および8または全9細胞外ループである。
【0053】
本発明の一実施形態においては、1以上のImpの細胞外ループ(好ましくはループの一部でないImp配列を実質的に欠く)を異なるタンパク質由来の配列と共有結合で連結する。これは、少なくとも1つのImp細胞外ループのポリペプチド配列を少なくとも1つの異なるタンパク質(担体として作用する)のポリペプチド配列と連結してキメラタンパク質を形成する、ペプチド結合を介して達成することができる。あるいは、下記のコンジュゲーション法を用いて、1以上の細胞外Impループを、担体分子、好ましくはタンパク質または多糖またはオリゴ糖またはリポ多糖とコンジュゲートする。担体は、好ましくは、T細胞エピトープを含んでなるタンパク質、例えば破傷風トキソイド、破傷風トキソイドフラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、プロテインD(US6342224)である。
【0054】
本発明の突然変異体タンパク質は、通常のタンパク工学技法を用いて調製できることは理解されるであろう。例えば、本発明の、または野生型Impをコードするポリヌクレオチドを、ランダム突然変異誘発、例えばトランスポゾン突然変異誘発を用いて、または位置指定突然変異誘発を用いて突然変異させることができる。
【0055】
本発明のタンパク質配列または本発明において使用するタンパク質配列は、基準として提供されているものであり、本発明は本明細書中に示す特定の配列またはそれらの断片に限定されず、例えば関連する細菌性タンパク質などの任意の供給源から得られる相同配列、および合成ペプチド、ならびに変異体(特に天然変異体)またはその誘導体も含むことは理解されよう。提示したループ配列は、基準としてであって、上記ループ内に存在するエピトープを含むいずれのループ配列も利用できるとが想定される。
【0056】
従って、本発明は、本発明のまたは本発明において使用するためのアミノ酸配列の変異体、相同体もしくは誘導体、ならびに、それらのアミノ酸配列の変異体、相同体もしくは誘導体を包含する。
【0057】
本発明の文脈において、相同配列とは、アミノ酸レベルで少なくとも60、70、80または90%同一であり、好ましくは少なくとも95または98%同一であるアミノ酸配列を含むものとする。本発明の文脈では、相同性は類似性(すなわち、同様の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点からも考えることができるが、相同性は配列同一性として表わすことが好ましい。
【0058】
相同性比較は、目視で行うことができるが、より一般には、容易に利用可能な配列比較プログラムを用いて行うことができる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の%相同性を算出することができる。
【0059】
%相同性は、連続した配列全体にわたって算出することができる。すなわち、一方の配列を他方の配列とアライメントをとり、1回に1残基づつ、一方の配列の各アミノ酸を、他方の配列の対応するアミノ酸と直接比較する。これは「ギャップなし」アライメントと呼ばれる。典型的には、かかるギャップなしアライメントは、比較的少数の残基(例えば50個未満の連続アミノ酸)においてのみ行われる。
【0060】
これは非常に簡単でバラツキのない方法であるが、例えば他の点では同一である一対の配列において、1つの挿入または欠失が、それに続くアミノ酸残基をアライメントからはみ出させてしまい、従って、広域アライメント(global alignment)を行った場合に、%相同性を大きく下げてしまう可能性があることを考慮に入れていない。従って、多くの配列比較方法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを課すことなく、可能性のある挿入および欠失を考慮した、最適なアライメントを得るように設計されている。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して、局所的相同性を最大限にしようと試みることにより達成される。
【0061】
しかし、これらのより煩雑な方法では、アライメント中に存在する各ギャップに「ギャップペナルティー」が割り当てられて、同数の同一のアミノ酸では、できるだけギャップが少ない(2つの比較配列間がより高度に関連していることを反映する)配列アライメントが多数のギャップを含んだ場合よりも高いスコアを達成するようになっている。典型的には、1つのギャップの存在について比較的高いコストを課し、そのギャップ内の後続する各残基についてペナルティーが小さい、「アフィン(Affine)ギャップコスト」が用いられる。これは、最も一般に用いられるギャップスコアリングシステムである。勿論、ギャップペナルティが高ければ、ギャップがより少ない最適化されたアライメントが得られる。多くのアライメントプログラムでは、ギャップペナルティを変えることができる。しかし、配列の比較にそのようなソフトウェアを使用する場合には、デフォルト値を用いることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を用いる場合、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペナルティは1つのギャップについては−12であり、各伸張については−4である。
【0062】
従って、最大%相同性を算出するには、まず、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適なアライメントを得ることが必要である。そのようなアライメントを実行するための好適なコンピュータープログラムは、限定されるものでないが、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereuxら, 1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実行できるその他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら, 1999 同上-Chapter 18を参照)、FASTA(Atschulら, 1990, J. Mol. Biol., 403-410)およびGENEWORKS比較ツールセットが挙げられる。BLASTおよびFASTAは共に、オフライン検索およびオンライン検索の場合に利用できる(Ausubelら, 1999 同上, p.7-58〜7-60を参照)。しかし、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0063】
最終的な%相同性は同一性として測定できるが、アライメントプロセス自体は、典型的にはオール・オア・ナッシングの対比較(pair comparison)に基づくものではない。その代わり、一般には、化学的類似性または進化距離に基づいてそれぞれの対比較にスコアを割り当てる換算類似性スコアマトリックスを用いる。一般に用いられるかかるマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラムセットのデフォルトマトリックス)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公開デフォルト値またはもし供給されていれば顧客向け特注のシンボル比較表を用いる(さらなる詳細はユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージでは公開デフォルト値を、それ以外のソフトウェアではBLOSUM62などのデフォルトマトリックスを用いることが好ましい。
【0064】
ソフトウェアにより最適なアライメントが得られたら、%相同性、好ましくは%配列同一性を算出することができる。ソフトウェアは、典型的には、これを配列比較の一部として行って結果を数値として出す。
【0065】
本明細書中でタンパク質が具体的に述べられている場合、それは好ましくは全長タンパク質について言及するものであるが、(特にサブユニットワクチンの文脈においては)それらの抗原性断片も包含しうる。好ましい断片としては、エピトープを含むものが挙げられる。特に好ましい断片としては、少なくとも1つの表面ループを有するものが挙げられる。本発明の突然変異体に関しては、このループは、好ましくはループ7および/または5以外のものである。これらの断片は、このタンパク質のアミノ酸から連続して採られた、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは20個のアミノ酸、さらに好ましくは30個のアミノ酸、さらに好ましくは40個のアミノ酸、最も好ましくは50個のアミノ酸を含有するか、またはそれらを含んでなる。さらに、抗原性断片とは、ナイセリア属菌タンパク質(またはその他のグラム陰性菌)に対して生じた抗体または哺乳動物宿主がナイセリア属菌に感染することにより生じた抗体と免疫学的に反応性である断片をいう。また、抗原性断片としては、有効量を投与した場合、ナイセリア属菌(またはその他のグラム陰性菌)感染に対して防御性免疫応答を惹起させる断片が挙げられ、さらに好ましくは、それは髄膜炎菌および/または淋菌の感染に対して防御性であり、最も好ましくは、それは髄膜炎菌血清群Bの感染に対して防御性である。
【0066】
本発明にはまた、本明細書に記載したタンパク質の変異体、すなわち、1つの残基が同様の特性を有する他のアミノ酸により置換される保存的アミノ酸置換によって基準物から変化しているタンパク質が含まれる。典型的なかかる置換は、AlaとValとLeuとIleとの間;SerとThrとの間;酸性残基AspとGluとの間;AsnとGlnとの間;および塩基性残基LysとArgとの間;または芳香族性残基PheとTyrとの間で行われる。特に好ましいものは、数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸がいずれかの組合せで置換、欠失または付加されている変異体である。
【0067】
本発明によるキメラタンパク質は好ましくは、少なくともある程度の野生型Impタンパク質の免疫学的活性を示す産物である。好ましくは、それは、次のうちの少なくとも1つを示す:
野生型Impを認識する抗体の産生を誘導する能力(必要であれば、本発明のImpタンパク質を担体に結合させた場合に);
実験的感染に対して防御することができる抗体の産生を誘導する能力;および/または
動物に投与した場合に、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染、例えば髄膜炎菌や淋菌感染に対して防御することができる免疫学的応答の発現を誘導する能力。
【0068】
好ましくは、本発明の突然変異体タンパク質は、交差反応性であり、さらに好ましくは、交差防御性である。
【0069】
本発明のキメラタンパク質は、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌、特に髄膜炎菌により引き起こされる疾患を予防、治療および診断するための予防用、治療用または診断用組成物において有用である。しかし、それは、例えば淋菌またはナイセリア・ラクタミカ菌(Neisseria lactamica)などに関しても同様の用途があり得る。
【0070】
本発明のキメラタンパク質では、それを免疫原およびワクチンとして使用するために、標準的な免疫学的技法を用いることができる。特に、任意の好適な宿主に、薬学上有効な量のキメラタンパク質を注射して、モノクローナルまたはポリクローナル抗Imp抗体を作製したり、あるいは、ナイセリア属菌疾患に対する防御性免疫応答の発現を誘導することができる。キメラタンパク質は、投与の前に、好適なビヒクル中で製剤化することができ、このようにして、薬学的に有効な量の1種以上の本発明のタンパク質を含んでなる医薬組成物を提供する。本明細書中で用いられる「薬学的に有効な量」とは、十分な力価の抗体を生起させて感染を治療または予防するImpタンパク質(または他の本発明のタンパク質)の量をいう。また、本発明の医薬組成物は、疾患の治療または予防に有用な他の抗原を含むことができる。
【0071】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチド、併せて、それらの変異体、誘導体および相同体も提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含むことができる。それらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。それらはまた、内部に合成または改変ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドの多くの異なるタイプの改変は、当業界では公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3'および/または5'末端でのアクリジンまたはポリリシン鎖の付加を含む。本発明の目的のために、本明細書に記載したポリヌクレオチドを、当業界で利用可能なあらゆる方法で改変することができると理解されたい。かかる改変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強する目的で行うことができる。
【0072】
1つの実施形態では、本発明の突然変異体タンパク質を、次の技法のいずれかを用いて作製する:カセット突然変異誘発、単一プライマー伸長、位置指定突然変異誘発のPCR法、例えば、Higuchiら, (1988) Nucleic Acids Res. 16:7351-67の4プライマー法、一方向欠失を含む位置指定突然変異誘発;ランダム突然変異誘発;ならびにファージディスプレイによる突然変異体タンパク質の選定。
【0073】
本発明のヌクレオチド配列に関連する「変異体」、「相同体」または「誘導体」という用語には、その配列からの、またはその配列への1個(またはそれ以上の)核酸の任意の置換、変異、改変、置き換え、欠失または付加が含まれ、但し、得られるヌクレオチド配列は、突然変異体ImpまたはMsbAポリペプチドをコードするものとする。
【0074】
上記のように、配列相同性に関しては、好ましくは、本明細書に示したポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の相同性(好ましくは同一性)があるか、または本明細書に示したポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の相同性(好ましくは同一性)がある。さらに好ましくは、少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の相同性(好ましくは同一性)がある。ヌクレオチドの相同性比較は、上記のように行うことができる。好ましい配列比較プログラムは、上記のGCG Wisconsin Bestfitプログラムである。デフォルトスコアリングマトリックスは、それぞれの同一ヌクレオチドに対して10の適合値(match value)およびそれぞれのミスマッチに対して-9を有する。それぞれのヌクレオチドに対して、デフォルトギャップ作成ペナルティは−50であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティは-3である。
【0075】
本発明はまた、本明細書に示す配列もしくは本明細書に示すポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列、またはそれらの任意の変異体、断片もしくは誘導体、または上記のいずれかの補体も包含する。ヌクレオチド配列は、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは少なくとも20、30、40または50ヌクレオチド長である。
【0076】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は、「核酸の鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合するプロセス」、ならびにポリメラーゼ連鎖反応技法で行われる増幅プロセスを含むものとする。
【0077】
本明細書に示したヌクレオチド配列、本明細書に示したポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、またはそれらの補体に選択的にハイブリダイズすることができる本発明のポリヌクレオチドは、一般に、本明細書に示す対応するヌクレオチド配列と、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25または30個、例えば少なくとも40、60または100個以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80または90%、さらに好ましくは少なくとも95%または98%相同である。好ましい本発明のポリヌクレオチドは、保存された領域をコードするヌクレオチドに対して相同な領域を含み、好ましくは、これらの領域に対して少なくとも80または90%、さらに好ましくは少なくとも95%相同(好ましくは同一)である。
【0078】
用語「選択的にハイブリダイズ可能な」は、プローブとして用いるポリヌクレオチドを、本発明の標的ポリヌクレオチドがバックグラウンドを有意に上回るレベルでそのプローブにハイブリダイズするとわかっている条件下で用いることを意味する。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えばcDNAまたはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングする際に存在する他のポリヌクレオチドによって起こり得る。この事象において、バックグラウンドとは、プローブとライブラリーの非特異的DNAメンバーとの相互作用により生じるシグナルのレベルを意味し、標的DNAにより観察される特異的相互作用と比較して1/10未満、好ましくは1/100未満の強度である。相互作用の強度は、例えば、プローブを32Pなどで放射標識することにより測定できる。
【0079】
ハイブリダイゼーション条件は、BergerおよびKimmel(1987, 「分子クローニング技法入門、酵素学の方法(Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology)」, Vol 152, Academic Press, San Diego CA)の教示のように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づくものであり、次に説明する所定の「ストリンジェンシー」を与える。
【0080】
最大のストリンジェンシーは、典型的にはほぼTm−5℃(プローブのTmよりも5℃低いもの)で;高ストリンジェンシーはTmよりも約5℃〜10℃低いところで、中程度ストリンジェンシーはTmよりも約10℃〜20℃低いところで、そして低ストリンジェンシーはTmよりも約20℃〜25℃低いところで起こる。当業者であれば理解するように、最大ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、同一のポリヌクレオチド配列の同定または検出に用いることができる一方、中程度(または低)ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、ほぼ同様のまたは関連するポリヌクレオチド配列の同定または検出に用いることができる。
【0081】
ある好ましい態様において、本発明は、ストリンジェント条件(例えば、65℃、0.1 x SSC{1 x SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Na3塩、pH 7.0})のもとで本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を包含する。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドが二本鎖である場合、その二本鎖の両方の鎖が、個々に、または組み合わせとして、本発明に包含される。そのポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補配列もまた、本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0083】
本発明の配列に対して100%相同ではないが本発明の範囲に含まれるポリヌクレオチドを、幾つかの方法で得ることができる。本明細書に記載されている配列の他の変異体を、例えば、ある範囲の個体(例えば異なる集団からの個体)から作製したDNAライブラリーを調べることにより得ることができる。さらに、他の細菌性相同体を得ることもでき、かかる相同体およびそれらの断片は、一般に、本明細書の配列表に示す配列に選択的にハイブリダイズすることができる。
【0084】
変異体および株/種相同体はまた、縮重PCRを用いて得ることができる。この縮重PCRは、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変異体および相同体に含まれる配列を標的とするように設計されたプライマーを使用するものである。保存された配列は、例えば、幾つかの変異体/相同体からのアミノ酸配列のアライメントをとることにより推定できる。配列アライメントは、当業界で知られているコンピューターソフトウェアを用いて実行できる。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く用いられている。
【0085】
縮重PCRにおいて用いられるプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、既知の配列に対する単一配列プライマーを用いて配列をクローニングするのに用いられるものよりも低いストリンジェンシー条件で用いられる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、プライマー(例えばPCRプライマー、別の増幅反応用のプライマー)、プローブ(例えば放射性または非放射性標識を用いて慣用の手段による露出する標識で標識したもの)を作製するのに使用してもよいし、あるいは、このポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。かかるプライマー、プローブおよび他の断片は、長さが少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30または40ヌクレオチドであり、本明細書に用いられる本発明のポリヌクレオチドという用語によっても包含される。好ましい断片は、長さが5000、2000、1000、500または200ヌクレオチド未満である。
【0087】
本発明に係るDNAポリヌクレオチドおよびプローブなどのポリヌクレオチドは、組換え、合成、または当業者に利用可能な任意の手段により作製できる。それらはまた、標準的な技法によりクローニングすることも可能である。
【0088】
一般に、プライマーは、一回に1個のヌクレオチドずつ作製する所望の核酸配列の段階的作製に関わる合成手段により作製される。これを自動化方法を用いて達成するための技法は、当業界で容易に利用できる。
【0089】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を用いて、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング法を用いて作製される。これには、クローニングしようとする配列の領域にフランキングする一対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチドのもの)を作製し、それらのプライマーを、動物またはヒトの細胞から得たmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅を起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を(例えば反応混合物をアガロースゲル上で精製することにより)単離し、増幅されたDNAを回収することが含まれる。これらのプライマーは、適切な制限酵素認識部位を含むように設計して、増幅されたDNAを好適なクローニングベクター中にクローニングできるようにすることができる。
【0090】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、少なくともキメラImpまたはMsbAタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むかまたは本発明の低下したLPS輸送体活性をもつ突然変異体ImpまたはMsbAタンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチドを含んでもよいベクターを用いることができる。(細胞のゲノムを改変することができる)本発明のベクターを用いて遺伝子工学的に作製された宿主細胞および組換え技法による突然変異体、好ましくはキメラImpタンパク質の生産がさらなる本発明の態様である。無細胞翻訳系を採用し、かかるタンパク質をDNA構築物由来のRNAを用いて生産することができる。
【0091】
本発明の組換えタンパク質を、当業者に周知の方法により、発現系を含む遺伝子工学的に作製された宿主細胞から調製することができる。
【0092】
本発明のタンパク質を組換え生産するために、宿主細胞を遺伝子遺伝子操作して、本発明の発現系もしくはその一部またはポリヌクレオチドを組み込むことができる。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入は、多数の標準的な実験マニュアル、例えばDavisら, 「分子生物学の基礎的方法(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY)」, (1986)およびSambrookら, 「分子クローニング:実験室マニュアル(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL)」, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載の方法、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング、弾道導入(ballistic introduction)および感染により実施することができる。
【0093】
好適な宿主の代表的な例としては、細菌細胞、例えばストレプトコッカス属(streptococci)、スタフィロコッカス属(staphylococci)、エンテロコッカス属(enterococci)、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス属(streptomyces)、シアノバクテリア(cyanobacteria)、枯草菌(Bacillus subtilis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)および髄膜炎菌の細胞など;真菌細胞、例えば酵母、クルベロミセス(Kluveromyces)、サッカロミセス(Saccharomyces)、担子菌(basidiomycete)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス(Aspergillus)の細胞など;昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)S2およびハスモンヨトウ(Spodoptera)Sf9など;動物細胞、例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV-1およびBowesメラノーマ細胞など;ならびに植物細胞、例えば裸子植物または被子植物の細胞などが挙げられる。
【0094】
本発明のタンパク質の作製には、非常に多種多様な発現系を用いることができる。かかるベクターとしては、特に、染色体由来、エピソーム由来、およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびアルファウイルス)に由来するベクター、ならびに、それらの組合せに由来するベクター、例えばプラスミドおよびコスミドやファージミドなどのバクテリオファージ遺伝子エレメントに由来するものが挙げられる。発現系構築物は、発現を調節したり発現を起こさせる調節領域を含むことができる。一般に、宿主内でのポリヌクレオチドの維持、増殖もしくは発現するおよび/またはタンパク質の発現に適しているいずれの系またはベクターも、これに関する発現に用いることができる。適当なDNA配列を、例えば、Sambrookら, 「分子クローニング、実験室マニュアル(MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL)」(前掲)に記載の種々の周知のルーチンな技法のいずれかにより、この発現系に挿入することができる。
【0095】
真核生物における組換え発現系において、翻訳したタンパク質を小胞体の内腔へ、ペリプラズム腔へ、または細胞外環境への分泌に対して、適当な分泌シグナルをその発現タンパク質中に組み込むことができる。これらのシグナルはタンパク質に対して内在性であってもよいし、あるいは、異種シグナルであってもよい。本発明のタンパク質を組換え細胞培養物から本発明の方法により回収および精製することができる。
【0096】
抗体
本発明のタンパク質を、かかるタンパク質に対して免疫特異的な抗体を産生させるための免疫原として使用することができる。
【0097】
本発明の特定の好ましい実施形態では、本発明のImpもしくはMsbAタンパク質に対する抗体が提供される。
【0098】
本発明のタンパク質に対して生じる抗体は、本発明のタンパク質またはその一方または両方のエピトープ保有断片、その一方または両方の類似体を、ルーチンな経路を用いて動物、好ましくは非ヒトに投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体を製造するためには、連続細胞系培養によって生産される抗体を提供する、当業界で公知の任意の技法を用いることができる。例としては、Kohler, G.およびMilstein, C., Nature 256: 495-497 (1975);Kozborら, Immunology Today 4: 72 (1983);Coleら, pg. 77-96 in 「モノクローナル抗体と癌療法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY)」, Alan R. Liss, Inc. (1985)などに記載の各種技法が挙げられる。
【0099】
一本鎖抗体を生産する技法(米国特許第4,946,778号)を用いて、本発明のタンパク質に対する一本鎖抗体を生産することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物もしくは動物、例えば他の哺乳動物などを用いて、本発明のタンパク質に対して免疫特異的なヒト化抗体を発現させることも可能である。
【0100】
あるいはまた、ファージディスプレイ技法を利用して、抗FrpBを持つものについてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅したv遺伝子のレパートリーから、または天然のライブラリーから、本発明のタンパク質に対して結合活性をもつ抗体遺伝子を選択することができる(McCaffertyら, (1990), Nature 348, 552-554;Marksら, (1992) Biotechnology 10, 779-783)。これらの抗体の親和性はまた、例えばチェーンシャッフリング(Clacksonら, (1991) Nature 352: 628)により向上させることができる。
【0101】
上記の抗体を用いて本発明のキメラまたは突然変異ImpまたはMsbAタンパク質を発現するクローンを単離するかまたは同定し、例えばアフィニティクロマトグラフィーによりタンパク質またはポリヌクレオチドを精製することができる。
【0102】
このようにして、特に、本発明のImpタンパク質に対する抗体を、感染症、特に細菌感染症、好ましくはナイセリア属菌感染症の治療に用いることができる。
【0103】
好ましくは、抗体またはそれらの変異体を、個体における免疫原性が低くなるように改変する。例えば、個体がヒトであれば、その抗体を、最も好ましくは、「ヒト化」することができ、その場合、ハイブリドーマ由来の抗体の1以上の相補性決定領域は、例えばJonesら (1986), Nature 321, 522-525またはTempestら, (1991) Biotechnology 9, 266-273に記載のように、ヒトモノクローナル抗体中に移植されている。
【0104】
本発明のタンパク質をレシピエントに投与することができる。そのレシピエントは、次いで、特定のワクチンからのチャレンジに応答して産生される免疫グロブリンの供給源となる。このように処置された被験体は、慣用の血漿分画法により高度免疫グロブリンが得られる血漿を提供する。この高度免疫グロブリンを別の被験体に投与して、ナイセリア属菌感染に対する抵抗性を付与するかまたはナイセリア属菌感染を治療する。本発明の高度免疫グロブリンは、乳児、免疫不全症の個体における、または治療が必要であって個体がワクチンに応答して抗体を産生する時間がない場合の、ナイセリア属菌疾患の治療または予防に特に有用である。
【0105】
本発明のさらなる態様は、本発明の医薬組成物に対して反応性のモノクローナル抗体(またはそのフラグメント;好ましくはヒトまたはヒト化フラグメント)を含む医薬組成物であり、これは、グラム陰性菌、好ましくはナイセリア属菌、さらに好ましくは髄膜炎菌もしくは淋菌、そして最も好ましくは髄膜炎菌の血清群Bによる感染の治療または予防に使用することができる。
【0106】
かかる医薬組成物は、本発明の2種以上の抗原に対して特異性を有する任意のクラスの全免疫グロブリン(例えばIgG1-4、IgM、IgA1もしくは2、IgDまたはIgE)であってもよいモノクローナル抗体、キメラ抗体またはハイブリッド抗体を含む。それらはまた、ハイブリッドフラグメントを含むF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、ScFvなどのフラグメントであってもよい。
【0107】
モノクローナル抗体の作製方法は当業界で周知であって、脾細胞と骨髄腫細胞との融合を含むことができる(KohlerおよびMilstein 1975 Nature 256; 495;「抗体-実験室マニュアル(Antibodies - a laboratory manual)」 Harlow and Lane 1988)。あるいは、モノクローナルFvフラグメントは、好適なファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる(Vaughan TJら, 1998 Nature Biotechnology 16; 535)。モノクローナル抗体は、公知の方法によりヒト化または部分ヒト化することができる。
【0108】
ワクチン
本発明の他の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、免疫学的応答を誘導する方法であって、その個体に本発明のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、または本発明のキメラタンパク質または本発明の外膜小胞、または本発明の医薬組成物もしくはワクチンを接種して、抗体および/またはT細胞の免疫応答を十分に引き起こして、上記個体を感染、特に細菌感染、そして最も特には髄膜炎菌感染から防御(または治療)することを含んでなる方法に関する。また、かかる免疫学的応答が細菌複製を遅くする方法も提供される。
【0109】
本発明のさらなる態様は、その体内で免疫学的応答を誘導することができる個体、好ましくはヒトに導入すると、かかる個体内で本発明のキメラタンパク質に対する免疫学的応答を誘導する免疫学的組成物に関する。好ましくはその免疫学的応答はImpエピトープおよび別のタンパク質からの少なくとも1つのインサートエピトープに対するものである。その免疫学的応答は治療目的または予防目的で使用することができるものであり、抗体免疫性および/または細胞免疫性、例えばCTLまたはCD4+ T細胞から惹起する細胞免疫性の形態をとりうる。
【0110】
また、本発明により、組成物、特にワクチン組成物、および本発明のタンパク質およびSato, Y.ら Science 273: 352 (1996)に記載のような免疫賦活性DNA配列を含んでなる方法が提供される。
【0111】
従って、本発明にはまた、本発明のグラム陰性菌もしくはその画分、または本発明のキメラタンパク質または本発明の外膜小胞調製物とともに、好適な担体、例えば製薬上許容される担体を含んでなるワクチン製剤も含まれる。このタンパク質は胃で分解されうるので、それぞれを、例えば皮下、筋肉内、静脈内または皮内投与を含む非経口投与として投与することが好ましい。非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌性化合物、および製剤を個体の体液、好ましくは血液と等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性の無菌注射用液;ならびに懸濁剤または増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回投与容器または複数回投与容器、例えば密閉したアンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、使用直前に無菌の液体担体を添加するだけでよい凍結乾燥条件で保存できる。製剤はまた、粘膜、例えば鼻腔内投与することもできる。
【0112】
本発明のワクチン製剤はまた、製剤の免疫原性を増大させるためのアジュバント系を含むことができる。典型的には、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを用いることができる。好ましくは、そのアジュバント系は、主にTH1型の応答を引き起こす。
【0113】
免疫応答は、2つの極端なカテゴリー、つまり体液性免疫応答または細胞性免疫応答(伝統的に、防御のための抗体によるエフェクター機能および細胞によるエフェクター機構によりそれぞれ特徴付けられる)に大きく区別することができる。これらの応答のカテゴリーは、TH1型応答(細胞性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と名付けられている。
【0114】
過度のTH1型免疫応答は、抗原特異的なハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球の産生およびナチュラルキラー細胞応答によって特徴付けることができる。マウスにおいて、TH1型応答はしばしばIgG2aサブタイプの抗体の生成により特徴付けられる一方、ヒトにおいて、これらはIgG1型抗体に相当する。TH2型免疫応答は、マウスにおけるIgG1、IgAおよびIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成によって特徴付けられる。
【0115】
これら2つのタイプの免疫応答の生起の背後にある駆動力はサイトカインであると考えられる。高レベルのTH1型サイトカインは、所与の抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促進する傾向がある一方、高レベルのTH2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。
【0116】
TH1型およびTH2型免疫応答の区別は絶対的なものではない。現実には、個人は、TH1型優位またはTH2型優位といわれる免疫応答を保持する。しかし、Mosmannおよび CoffmanによりマウスCD4+ve T細胞クローンにおいて記載された観点で、サイトカインのファミリーを考慮することがしばしば好都合である(Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) 「TH1とTH2細胞:色々なリンホカイン分泌のパターンが色々な機能的特性を生じる(TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties.)」 Annual Review of Immunology, 7, p145-173)。伝統的に、TH1型応答は、Tリンパ球によるINF-γおよびIL-2サイトカインの産生と関連付けられている。TH1型免疫応答の誘導としばしば直接関連付けられる他のサイトカイン、例えばIL-12はT細胞によって産生されない。これに対し、TH2型応答は、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-13の分泌と関連付けられている。
【0117】
ある特定のワクチンアジュバントはTH1型もしくはTH2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激に特に適していることが分かっている。伝統的に、ワクチン接種後または感染後の免疫応答のTH1:TH2バランスを最も良く示す指標としては、抗原による再刺激後の、in vitroでのTリンパ球によるTH1もしくはTH2サイトカインの産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体反応のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0118】
このように、TH1型アジュバントは、in vitroで抗原で再刺激されたときに、単離されたT細胞集団を選択的に刺激して高レベルのTH1型サイトカインを産生し、そしてCD8+細胞傷害性Tリンパ球とTH1型アイソタイプに関連付けられる抗原特異的免疫グロブリン反応との両方の発生を促進するものである。
【0119】
TH1細胞応答を優先的に刺激することができるアジュバントは、WO 94/00153およびWO 95/17209に記載されている。
【0120】
3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3 De-O-acylated monophosphoryl lipid A;3D-MPL)は、かかるアジュバントの1つであり、好ましいものである。これは、GB 2220211(Ribi)により公知である。化学的にはこれは3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAと4-、5-もしくは6-アシル化鎖との混合物であり、Ribi Immunochem, Montanaにより製造されている。3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許第0 689 454 B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。あるいは、LPSの他の非毒性誘導体を使用してもよい。
【0121】
好ましくは、3D-MPLの粒子は、0.22ミクロンのメンブレンを通して滅菌濾過するのに十分な程度小さい(欧州特許第0 689 454号)。3D-MPLは、1用量あたり、10μg〜100μg、好ましくは25〜50μgの範囲で存在し、その場合、抗原は典型的には1用量あたり2〜50μgの範囲で存在する。
【0122】
他の好ましいアジュバントは、キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られるHPLCで精製した非毒性画分であるQS21を含む。場合により、これを3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MDL)または他の非毒性LPS誘導体と混合してもよく、場合により担体を一緒に混合してもよい。
【0123】
QS21の製造方法は米国特許第5,057,540号に記載されている。
【0124】
QS21を含有する非反応原性(non-reactogenic)アジュバント製剤は、先に記載されている(WO 96/33739)。QS21およびコレステロールを含むかかる製剤は、抗原と一緒に製剤化したときに、優れたTH1刺激性アジュバントであることが分かっている。
【0125】
TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるさらなるアジュバントとしては、免疫調節性オリゴヌクレオチド(例えばWO96/02555に開示された非メチル化(unmethylated)CpG配列)が挙げられる。
【0126】
上記のものなどの色々なTH1刺激性アジュバントの組合せも、TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるアジュバントを提供するものと考えられる。例えば、QS21は、3D-MPLと一緒に製剤化することができる。QS21:3D-MPLの比率は、典型的には1:10〜10:1のオーダー、好ましくは1:5〜5:1のオーダー、そしてしばしば実質的に1:1である。最適な相乗効果のために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1の3D-MPL:QS21である。
【0127】
好ましくは、本発明のワクチン組成物中に担体も存在する。担体は水中油型エマルションであってもよいし、またはリン酸アルミニウムや水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩であってもよい。
【0128】
好適な水中油型エマルションは、スクアレン、αトコフェロールおよびTween 80などの代謝可能な油を含む。特に好ましい態様において、本発明のワクチン組成物中の抗原は、かかるエマルション中でQS21および3D-MPLと組み合わせる。さらに、水中油型エマルションは、スパン85(span 85)および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリン(tricaprylin)を含み得る。
【0129】
典型的には、ヒト投与の場合は、QS21および3D-MPLはワクチン中に1用量あたり1μg〜200μgの範囲、例えば10〜100μg、好ましくは10μg〜50μgで存在する。典型的には、この油含有水は2〜10%のスクアレン、2〜10%のαトコフェロール、および0.3〜3%のTween 80を含む。好ましくは、スクアレン:αトコフェロールの比率は、より安定なエマルションを提供するように、1以下である。スパン85(span 85)も1%のレベルで存在しうる。いくつかの事例では、本発明のワクチンがさらに安定化剤を含むことが有利でありうる。
【0130】
非毒性水中油型エマルションは、好ましくは水性担体中に非毒性油(例えばスクワランやスクアレン等)、乳化剤(例えばTween80等)を含む。水性担体は例えばリン酸緩衝生理食塩水であってもよい。
【0131】
水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に効力の高いアジュバント製剤がWO95/17210に記載されている。
【0132】
本発明はまた、本発明のワクチン製剤と他の抗原、特に癌、自己免疫疾患および関連する症状に有用な抗原を組み合わせて含む多価ワクチン組成物を提供する。かかる多価ワクチン組成物は、前述したTH-1誘導型アジュバントを含みうる。
【0133】
外膜小胞調製物
本発明の好ましい実施形態は、本発明のいずれか1つのグラム陰性菌から誘導されたかまたは本発明のキメラタンパク質を含んでなる外膜小胞調製物である。
【0134】
髄膜炎菌血清群B(menB)は、外膜ブレブを、工業的規模でのその製造を可能にするのに十分な量で排出する。外膜小胞も、細菌細胞を界面活性剤抽出する方法により製造することができる(例えば、EP 11243を参照)。
【0135】
従って、本発明の外膜小胞調製物は、Impエピトープおよび異種タンパク質からのエピトープ(グラム陰性菌からのその他の抗原の文脈内で)を含む多数の抗原を提供する好都合な方法である。
【0136】
好ましくは、本発明の外膜小胞調製物は、LPS輸送活性の喪失によって低下したLPSレベルを有する。好ましくは、本発明のキメラタンパク質または低下したLPS輸送活性をもつImpおよび/またはMsbAタンパク質の存在によって、Impがダウンレギュレートされてないグラム陰性菌の類似の株から誘導される外膜小胞調製物と比較して、少なくとも50%、60%、70%、好ましくは80%、90%またはより好ましくは95%または99%または100%の外膜上のLPS量の減少がもたらされる。これは、好ましくは、界面活性剤抽出段階なしに(または0.1、0.05または0.01%以下のDOCを用いて)外膜小胞を単離することによって実現される。
【0137】
最も好ましくは、本発明の外膜小胞調製物は十分に低いLPSのレベルを含有し、その結果、毒性は、患者に接種するときに外膜小胞調製物が容認しうるレベルの反応原性を有するレベルまで低下する。
【0138】
外膜調製物のさらなる特徴
外膜小胞調製物は、好ましくは、さらなる抗原がより高いレベルの発現を有するように、組換えによりそれらの発現をアップレギュレートすることにより遺伝子操作されている。本発明のキメラタンパク質に加えて、かかる外膜小胞調製物においてアップレギュレートしうる抗原の具体例としては、NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAが挙げられる。場合により、かかる調製物はLPS免疫型L2およびLPS免疫型L3のうちの一方または両方も含みうる。
【0139】
ナイセリア属菌株からのブレブ調製物の製造は、当業者に周知の方法のいずれかにより達成することができる。好ましくは、EP 301992、US 5,597,572、EP 11243号またはUS 4,271,147、Frederiksonら(NIPH Annals [1991], 14:67-80)、Zollingerら(J. Clin. Invest. [1979], 63:836-848)、Saundersら(Infect. Immun. [1999], 67:113-119)、Drabickら(Vaccine [2000], 18:160-172)またはWO 01/09350(実施例8)に開示されている方法を用いる。一般には、OMVを界面活性剤、好ましくはデオキシコラートにより抽出し、核酸を場合によっては酵素的に除去する。精製を、超遠心および場合によってはそれに続くサイズ排除クロマトグラフィーにより達成する。2以上の本発明の異なるブレブが含まれる場合、それらを単一の容器内で組合わせて本発明の多価調製物を形成させることができる(なお、もし本発明の異なるブレブが別々の容器内の別々の組成物であっても、それらが宿主に同時に[1回の通院で]投与されれば、その調製物も多価であるとみなされる)。OMV調製物は、通常、0.2μmフィルターで濾過滅菌し、好ましくは、該ブレブ調製物を安定化することが知られているスクロース溶液(例えば、3%)中で保存する。
【0140】
外膜小胞調製物中のタンパク質のアップレギュレーションは、OMV調製物が由来するナイセリア属菌株内への遺伝子の過剰コピーの挿入により達成することができる。あるいは、遺伝子のプロモーターを、OMV調製物が由来するナイセリア属菌株における、より強力なプロモーターで置換することができる。かかる技術はWO 01/09350に記載されている。遺伝子の追加コピーを導入するのであれば、過剰発現のために機能的に連結された非天然強力プロモーターも有することができる。タンパク質のアップレギュレーションは、OMV中に存在するタンパク質のレベルを、未改変髄膜炎菌(例えば、株H44/76)に由来するOMV中に存在するタンパク質のレベルよりも上昇させる。好ましくは、該レベルは1.5、2、3、4、5、7、10または20倍高くなる。
【0141】
本発明のキメラタンパク質の存在が外膜小胞調製物中に存在するLPSのレベルを十分低下させずかつLPSがOMV中のさらなる抗原として意図される場合には、好ましくは、低濃度の抽出用界面活性剤(例えば、デオキシコラートまたはDOC)を使用するプロトコルをOMC製造法に用いて、結合LPSを高レベルで維持する一方、特に毒性の、不十分に結合したLPSを除去することができる。使用するDOCの濃度は、好ましくは0〜0.3% DOC、より好ましくは0.05〜0.2% DOC、最も好ましくはおよそ0.1% DOCである。
【0142】
「強力なプロモーター配列」は、目的の抗原をコードする遺伝子の転写を増強する調節制御エレメントを意味する。
【0143】
「発現のアップレギュレーション」は、未改変(すなわち、天然の)ブレブの発現に比べて、目的の抗原の発現を増強するための任意の手段を意味する。「アップレギュレーション」の量は個々の目的の抗原に応じて変わるが、ブレブの膜完全性を破壊する量を超えないと理解される。抗原のアップレギュレーションは、未改変ブレブの発現より少なくとも10%高い発現を意味する。好ましくは、それは少なくとも50%高い。より好ましくは、それは少なくとも100%(2倍)高い。あるいはまたはさらに、特にFrpB、TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBの場合、発現のアップレギュレーションを、発現を代謝性または栄養性変化に対して非条件付き(non-conditional)にすることを意味しうる。一般に、FrpBをブレブにおいて過剰発現させる場合、これはプロモーターから調節配列(regulatory sequences)を除去することにより、またはそのプロモーターを強力な非調節性プロモーター(non-regulated promoter)例えばPorAと置換することにより行うことができる。
【0144】
再び意味を明確にするために説明すると、用語「上記抗原の産生量が減少するように細菌株を遺伝子操作する」またはダウンレギュレーションは、目的の抗原の発現(または機能的遺伝子産物の発現)を、未改変(すなわち、天然のブレブ)の発現と比較して低下させるための任意の手段を意味し、好ましくは、かかる発現が未改変ブレブより少なくとも10%低くなるような欠失により行う。好ましくは、それを少なくとも50%低くなるように、最も好ましくは全く存在しないように行う。ダウンレギュレーションされるタンパク質が酵素または機能的タンパク質である場合、該ダウンレギュレーションは、酵素活性または機能活性の10%、20%、50%、80%または好ましくは100%の低下をもたらす1以上の突然変異を導入することにより達成することができる。
【0145】
ナイセリア属菌タンパク質の発現をモジュレートするのに必要な遺伝子操作工程は、当業者に公知の種々の方法により行うことができる。例えば、配列(例えば、プロモーターまたはオープンリーディングフレーム)を挿入することが可能であり、トランスポゾン挿入の技術によりプロモーター/遺伝子を破壊することができる。例えば、遺伝子の発現をアップレギュレートするために、トランスポゾンを介して、該遺伝子の開始コドンの上流2kbまで(より好ましくは200〜600bp上流、最も好ましくは約400bp上流)に、強力なプロモーターを挿入することができる。点突然変異または欠失を利用することも可能である(特に、遺伝子の発現をダウンレギュレートするために)。
【0146】
しかし、かかる方法は非常に不安定または不確実でありうるので、相同組換え事象を介してその遺伝子操作工程を行うことが好ましい。好ましくは、その事象は、細菌染色体上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(組換え発生領域)と、株内の形質転換されたベクター上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(もう1つの組換え発生領域)との間で生じる。好ましくは、その領域は40〜1000ヌクレオチド、より好ましくは100〜800ヌクレオチド、最も好ましくは500ヌクレオチドである。これらの組換え発生領域は、高度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしうるのに十分な程度に類似していなければならない。
【0147】
本明細書に記載の遺伝子改変事象(例えば、組換え事象およびナイセリア属菌ゲノム中へのさらなる遺伝子配列の導入による遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)を行うために利用する方法はWO01/09350に記載されている。ナイセリア属菌に組込むことができる典型的な強力なプロモーターとしては、porA、porB、lgtF、Opa、p110、lstおよびhpuABが挙げられる。PorAおよびPorBは、強力な構成的プロモーターとして好ましい。PorBプロモーター活性は、porBの開始コドンの上流のヌクレオチド-1〜-250に対応する断片中に含まれることが確認されている。
【0148】
可変性および非防御免疫優性抗原のダウンレギュレーション/除去
多数の表面抗原は細菌株間で可変性であり、その結果、密接に関連した株の、限られた組に対してのみ、防御性であるに過ぎない。本発明の1つの態様は、他のタンパク質の発現が減少した本発明の外膜小胞を含む、あるいは好ましくは、可変性表面タンパク質をコードする遺伝子が欠失している。かかる欠失により得られる細菌株が産生するブレブをワクチンに投与されると、(外膜上に保持されている)保存タンパク質によってもたらされるワクチン被接種者の免疫系への影響がより大きいため、種々の株に対する交差反応性をより強く示す。本発明のブレブ免疫原性組成物においてダウンレギュレーションすることができるナイセリア属菌のかかる可変性抗原の具体例には、PorA、PorB、Opaが含まれる。
【0149】
ダウンレギュレートまたはスイッチオフすることができる他のタイプの遺伝子は、in vivoで、細菌により容易にスイッチインする(発現させる)またはオフすることができる遺伝子である。かかる遺伝子にコードされる外膜タンパク質は細菌上に常に存在するわけではないので、ブレブ調製物中のかかるタンパク質の存在は、上記の理由で、ワクチンの有効性に悪影響を及ぼしうる。ダウンレギュレーションまたは欠失すべき好ましい一例は、ナイセリア属菌Opcタンパク質である。Opc含有ブレブワクチンにより誘導される抗Opc免疫は、感染生物が容易にOpc-となりうるので、限られた防御能しか有さないであろう。
【0150】
例えば、これらの可変性または非防御性遺伝子は、発現をダウンレギュレートしたり、または一時的にスイッチオフすることができる。これは、ブレブの外表面上に少量で存在するより良好な抗原に、免疫系を集中する利点を有する。ダウンレギュレーションはまた、上記外膜タンパク質の表面露出可変性の免疫優性ループを改変または欠失させて、生じる外膜タンパク質の免疫優性を低下させうることも意味する。
【0151】
発現をダウンレギュレートする方法はWO 01/09350に開示されている。本発明のブレブ免疫原性組成物においてダウンレギュレートすべきタンパク質の好ましい組合せには、PorAとOpA;PorAとOpC;OpAとOpC;PorAとOpAとOpCが含まれる。
【0152】
LPSの解毒
本発明の特定の実施形態において、外膜小胞調製物がLPSの存在によってあまりにも高いレベルの毒性を有する場合、外膜小胞調製をWO 01/09350に開示されているLPSの解毒方法により解毒することができる。特に、本発明のLPSの解毒方法は、WO 01/09350に開示されているhtrBおよび/またはmsbB酵素のダウンレギュレーションに関わる。かかる方法を、好ましくは、低レベルのDOC、好ましくは0〜0.3% DOC、より好ましくは0.05%〜0.2% DOC、最も好ましくはおよそ0.1% DOCを使用するブレブ抽出の方法と組み合わせる。
【0153】
交差反応性多糖
被包性グラム陰性菌からの細菌外膜ブレブの単離は、しばしば、莢膜多糖の同時精製をもたらす。いくつかの事例では、この「混入」物質が有用となりうる。なぜなら、多糖は、他のブレブ成分によりもたらされる免疫応答を増強しうるからである。しかし、他の事例では、細菌ブレブ調製物中の混入多糖物質の存在は、ワクチンにおけるブレブの使用に有害となりうる。例えば、少なくとも髄膜炎菌の場合には、血清群B莢膜多糖は防御免疫を付与せず、ヒトにおいて有害な自己免疫応答を誘導しやすいことが示されている。従って、本発明の外膜小胞を、莢膜多糖を含有しないように遺伝子操作された、ブレブ製造用の細菌株から単離することができる。そのブレブは従ってヒトにおける使用に好適であろう。かかるブレブ調製物の特に好ましい一例は、莢膜多糖を欠く髄膜炎菌血清群B由来のものである。
【0154】
これは、莢膜の生合成および/または輸送に必要な遺伝子が損なわれた改変ブレブ産生株を使用することにより達成することができる。莢膜多糖の生合成または搬出をコードする遺伝子の不活性化は、制御領域およびコード領域のうちの一方または両方の突然変異(点突然変異、欠失または挿入)により(好ましくは、前記の相同組換え技術を用いて)、あるいはかかる遺伝子の酵素機能を低下させる任意の他の方法により達成することができる。さらに、莢膜生合成遺伝子の不活性化はまた、アンチセンス過剰発現またはトランスポゾン突然変異誘発によっても達成することができる。好ましい方法は、多糖の生合成および搬出に必要な髄膜炎菌cps遺伝子の一部または全部の欠失である。この目的には、置換プラスミドpMF121(Froshら 1990, Mol. Microbiol. 4:1215-1218に記載)を用いて、cpsCAD(+galE)遺伝子クラスターを欠失させる突然変異を送達することができる。
【0155】
好ましくは、siaD遺伝子の発現が欠失しているかまたはダウンレギュレートされているか、あるいは遺伝子産物が任意のほかの手段により酵素的に不活化されている(髄膜炎菌siaD遺伝子は、莢膜多糖およびLOSの合成に必要な酵素である、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードする)。この突然変異は、好ましくは本発明の調製物中に保存されたLPSエピトープに対する破壊を最小限にするために好ましい。
【0156】
ブレブ調製物、特に、低濃度のDOCで抽出した調製物においては、本発明の免疫原性組成物中の抗原としてLPSを使用することができる。しかし、ヒト様ラクト-N-ネオテトラオース構造を除去するために、lgtEまたは好ましくはlgtB遺伝子/遺伝子産物の酵素機能をダウンレギュレーション/欠失/不活性化することが有利である。LPSオリゴ糖構造の生合成のためのlgt遺伝子を含むナイセリア属菌遺伝子座(およびその配列)は当技術分野において公知である(Jenningsら Microbiology 1999 145; 3013-3021)。lgtB(または機能的遺伝子産物)のダウンレギュレーション/欠失が好ましい。なぜなら、それはLPS防御エピトープを無傷のまま残すからである。本発明の髄膜炎菌血清群Bブレブ調製物において、siaDとlgtBの両方のダウンレギュレーション/欠失が好ましく、これは最適な安全性およびLPS防御性エピトープ保持を示すブレブ調製物をもたらす。
【0157】
本発明の医薬組成物は、場合によっては、少なくとも1、2、3、4または5個の異なる外膜小胞調製物を含みうる。2個以上のOMV調製物が含まれている場合、それぞれのOMVで少なくとも1つの抗原が好ましくはアップレギュレートされる。かかるOMV調製物は、同じ種および血清群のナイセリア属菌株、あるいは好ましくは、異なるクラス、血清群、血清型、亜血清型または免疫型のナイセリア属菌株から誘導することができる。例えば、ある免疫原性組成物は、免疫型L2のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物と、免疫型L3のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物とを含んでもよい。L2またはL3 OMV調製物は、好ましくは、LPSオリゴ糖合成遺伝子座において最小限の相可変性を有する安定株から誘導する。
【0158】
組み合わせ
本発明の医薬組成物はまた、以下の少なくとも1種以上を含んでもよい:
(a)1種以上のサブユニットワクチン;
(b)1種以上の抗原がアップレギュレートされた1種以上の外膜小胞;および
(c)(a)と(b)の混合物。
【0159】
従って、本発明の医薬組成物はまた、サブユニット組成物と外膜小胞の両方を含んでもよい。
【0160】
外膜小胞調製物は、外膜小胞中に組換えによりアップレギュレートされた以下に掲げた抗原から選択される少なくとも1種の異なる抗原を有しうる:NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、NadA、TspA、TspB、PilQおよびPldA;そして、場合によっては、免疫タイプL2のLPSおよび免疫タイプL3のLPSの一方または両方を含んでもよい。
【0161】
その可溶性のためにサブユニット組成物中に含有させるのに特に好適な抗原がいくつかある。かかるタンパク質の例としては、FhaB、NspA、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、OMP85、FrpA、FrpC、TbpB、LbpB、PilQが挙げられる。
【0162】
ナイセリア属菌感染は幾つかの異なる段階を経て進行する。例えば、髄膜炎菌の生活環は、鼻咽腔コロニー形成、粘膜付着、血流内への侵入、血液中での増殖、毒素ショックの誘発、血液/脳関門の通過、ならびに脳脊髄液および/または髄膜内での増殖を含む。細菌の表面上の異なる分子が感染サイクルの異なる段階に関与しうる。ナイセリア属菌感染の異なる過程に関わる特定の抗原の組合せの有効量に対する免疫応答を標的とすることにより、驚くべき高い有効性を有するナイセリア属菌ワクチンが得られる。
【0163】
特に、異なるクラスの特定のナイセリア属菌抗原の組合せが、多段階の感染から防御する免疫応答を惹起しうる。驚くべきことに、かかる抗原の組合せは、ナイセリア属菌感染に対するワクチン有効性の相乗的改善をもたらすことが可能であり、この場合、該細菌の2以上の機能が該免疫応答により最適に標的化される。含有することができるさらなる抗原は、宿主細胞への付着に関わるものであってもよいし、鉄獲得(iron acquisition)に関わるものであってもよいし、自己輸送体(autotransporter)や毒素であってもよい。
【0164】
ワクチンの有効性は種々のアッセイにより評価することができる。動物モデルにおける防御アッセイは当技術分野でよく知られている。さらに、血清殺菌アッセイ(SBA)は、髄膜炎菌ワクチンの有効性を評価するための最も一般に認められている免疫学的指標である(Perkinsら J Infect Dis. 1998, 177:683-691)。
【0165】
抗原の組合せには、動物モデルアッセイにおける防御の改善、および/または、相乗的に、より高いSBA力価をもたらしうるものがある。理論に束縛されるものではないが、抗原のかかる相乗的組合せは、かかる抗原の組合せに対する免疫応答の多数の特性により可能となる。抗原自体は、通常、ナイセリア属菌細胞の表面に露出しており保存されている傾向にあるが、同時に、その抗原のみに対して惹起される抗体により最適な殺菌応答が生じるのに十分な量で表面細胞上に存在しない傾向にある。本発明の抗原の組合せは、臨界的閾値を超えてナイセリア属菌細胞と相互作用する殺菌性抗体の好都合な組合せを惹起する製剤を与えることができる。この臨界レベルにおいて、十分な量の十分な抗体が該細菌の表面に結合して、補体による効率的な殺菌を可能にし、その結果、はるかに高い殺菌作用が認められる。血清殺菌アッセイ(SBA)はワクチン候補の有効性を厳密に表すので、抗原の組合せによる良好なSBA力価の達成は、抗原のその組合せを含有するワクチンの防御の有効性の良好な指標となる。
【0166】
本発明のさらなる利点は、免疫原性組成物中の種々のタンパク質ファミリーからの本発明の抗原の組合せが、より広範囲の株に対する防御を可能にしうることである。
【0167】
本発明は従ってまた、ナイセリア属菌において異なる機能を果たす少なくとも2つの異なるカテゴリーのタンパク質から選択される複数のタンパク質を含む免疫原性組成物に関する。かかるカテゴリーのタンパク質の具体例は、付着因子、自己輸送体タンパク質、毒素、およびFe獲得タンパク質である。本発明のワクチン組合せ物は、同種ナイセリア属菌株(抗原が由来する株)に対する、そしてまた好ましくは異種ナイセリア属菌株に対するワクチンの有効性における驚くべき改善を示す。
【0168】
特に、以下から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのタンパク質群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6,7、8、9または10の異なる追加ナイセリア属菌抗原(FrpBに対して)を含んでなる免疫原性組成物を提供する:
FhaB、Hsf、NspA、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995およびNMB1119からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌付着因子;
Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspAおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌自己輸送体;
FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM-ADPRT、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌毒素;
高分子量TbpA、低分子量TbpA、高分子量TbpB、低分子量TbpB、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌Fe獲得タンパク質;ならびに
PldA、TspA、FhaC、NspA、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、HpuB、TdfH、PorB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA、MltA、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TspB、PilQおよびOMP85からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌膜結合タンパク質、好ましくは外膜タンパク質;
そして好ましくは
(a)FhaB、HsfおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌付着因子;
(b)Hsf、HapおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌自己輸送体;
(c)FrpA、FrpC、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌毒素;
(d)TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌Fe獲得タンパク質;ならびに
(e)TspA、TspB、NspA、PilQ、OMP85およびPldAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア属菌外膜タンパク質。
【0169】
好ましくは、最初の4つ(最も好ましくは5つ全て)の群の抗原が本発明の医薬組成物に含まれる。
【0170】
前述したように、本明細書においてあるタンパク質を具体的に挙げる場合、好ましくは、天然の完全長タンパク質を意味するが、(特にサブユニットワクチンの場合)その抗原性断片も包含しうる。これらは、そのタンパク質のアミノ酸配列から連続的に選ばれる少なくとも10アミノ酸、好ましくは20アミノ酸、より好ましくは30アミノ酸、より好ましくは40アミノ酸、最も好ましくは50アミノ酸を含有するまたは含む断片である。さらに、抗原性断片は、ナイセリア属菌タンパク質に対して産生された抗体または哺乳類宿主のナイセリア属菌感染により産生された抗体と免疫学的に反応性である断片を意味する。抗原性断片はまた、有効量で投与されるとナイセリア属菌感染に対して防御免疫応答を惹起する断片を含み、より好ましくは、髄膜炎菌および/または淋菌感染に対して防御性であり、最も好ましくは、髄膜炎菌血清群B感染に対して防御性である。
【0171】
本発明にはまた、本発明のナイセリア属菌タンパク質またはその断片の組換え融合タンパク質が含まれる。これらは、同じタンパク質中で、異なるナイセリア属菌タンパク質またはそれらの断片を組み合わせて有する。あるいは、本発明はまた、ナイセリア属菌タンパク質またはその断片の個々の融合タンパク質を、T細胞エピトープの供与体のような異種配列、またはウイルス表面タンパク質、例えばインフルエンザウイルス赤血球凝集素、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197との融合タンパク質として含む。
【0172】
本発明の付加抗原
NMBに対する言及は、www.neisseria.orgからアクセス可能な配列の参照番号を示す。
【0173】
1.付着因子(adhesin)
付着因子としては、FhaB(WO98/02547)、NadA(J. Exp.Med (2002) 195:1445; NMB 1994)、NhhAとしても公知のHsf(NMB 0992)(WO99/31132)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873)、NspA(WO96/29412)、MafA(NMB 0652)およびMafB(NMB 0643)(Annu Rev Cell Dev Biol. 16; 423-457 (2000);Nature Biotech 20; 914-921 (2002))、Omp26 (NMB 0181)、NMB 0315、NMB 0995、NMB 1119およびPilC(Mol. Microbiol.1997, 23; 879-892)が挙げられる。これらは、宿主細胞の表面へのナイセリア属菌の結合に関わるタンパク質である。Hsfは付着因子の一例であるとともに自己輸送体タンパク質でもある。従って、本発明の免疫原性組成物はHsfと他の自己輸送体タンパク質との組合せを含むことが可能であり、その場合、Hsfが付着因子としてその能力を発揮する。これらの付着因子は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来してもよい。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の付着因子も包含する。
【0174】
FhaB
この抗原はWO98/02547の配列番号38(ヌクレオチド3083-9025)に記載されている(NMB0497も参照されたい)。本発明者らは、FhaBが、単独でおよび特に本発明の他の抗原と共に、抗接着抗体を特に有効に誘導することを見出した。完全長FhaBを使用することは可能であるが、驚くべきことに、本発明者らは、特定のC末端末端切断型が、交差株作用(cross-strain effect)の点で、それと少なくとも同等に有効である、好ましくは、それより有効であることを見出した。また、好都合にも、かかる末端切断型は、クローニングが遥かに容易であることが示されている。本発明のFhaB末端切断型は、典型的には、FhaB分子のN末端側の3分の2に相当し、好ましくは、新たなC末端は1200-1600位、より好ましくは1300-1500位、最も好ましくは1430-1440位に置かれる。特定の実施形態は1433または1436位にC末端を有する。従って、本発明のかかるFhaB末端切断型、およびかかる末端切断型を含むワクチンは、本発明の組合せ免疫原性組成物の好ましい成分である。N末端も、10、20、30、40または50個までのアミノ酸を末端切断しうる。
【0175】
2.自己輸送体タンパク質
自己輸送体タンパク質は、典型的には、シグナル配列、パッセンジャードメイン、および外膜への結合のためのアンカードメインから構成される。自己輸送体タンパク質の具体例としては、Hsf(WO99/31132)(NMB 0992)、HMW、Hia(van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873;van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、UspA、UspA2、NadA(NMB 1994)(Comanducciら J. Exp. Med. 2002 195; 1445-1454)、AspA (Infection and Immunity 2002, 70(8); 4447-4461;NMB 1029)、Aida-1様タンパク質、SSh-2およびTshが挙げられる。NadA(J. Exp.Med (2002) 195:1445)は、自己輸送体タンパク質のもう1つの例であるとともに、付着因子でもある。本発明の免疫原性組成物は、従ってNadAと付着因子との組合せを含むことが可能であり、その場合、NadAが自己輸送体タンパク質としてその能力を発揮する。これらのタンパク質は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の自己輸送体タンパク質も包含する。
【0176】
Hsf
Hsfは、自己輸送体タンパク質に共通の構造を有する。例えば、髄膜炎菌株H44/76由来のHsfは、アミノ酸1-51から構成されるシグナル配列、表面に露出しており可変領域(アミノ酸52-106、121-124、191-210および230-234)を含有する成熟タンパク質のアミノ末端の頭部領域(アミノ酸52-479)、ネック部領域(アミノ酸480-509)、疎水性αへリックス領域(アミノ酸518-529)、および4個の膜貫通鎖が外膜にかかるアンカードメイン(アミノ酸539-591)からなる。
【0177】
本発明の免疫原性組成物中で完全長Hsfを使用することは可能であるが、種々のHsf末端切断型および欠失体も、ワクチンのタイプに応じて有利に使用しうる。
【0178】
Hsfをサブユニットワクチン中で使用する場合、可溶性パッセンジャードメインの一部、例えばアミノ酸52-479の完全ドメイン、最も好ましくはその保存された部分、例えばアミノ酸134-479の特に有利な配列を使用することが好ましい。好ましいHsfの形態は、WO01/55182に開示されたタンパク質の可変領域を欠失するように末端切断されたものでありうる。好ましい変異体は、WO01/55182に記載されている1、2、3、4または5個の可変領域の欠失を含むであろう。上記の配列および下記の配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10または15個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0179】
従って、Hsfの好ましい断片は、Hsfの頭部領域の全体、好ましくはアミノ酸52-473を含有する該領域を含む。Hsfのさらなる好ましい断片としては、アミノ酸配列52-62、76-93、116-134、147-157、157-175、199-211、230-252、252-270、284-306、328-338、362-391、408-418、430-440および469-479のうちの1以上を含む該頭部の表面露出領域が挙げられる。
【0180】
Hsfが外膜小胞調製物中に存在する場合、それは完全長タンパク質として、好ましくは、アミノ酸1-51とアミノ酸134-591(アミノ酸配列134からC末端までの成熟外膜タンパク質をもたらす)との融合体から構成される好ましい変異体として発現されうる。Hsfの好ましい形態は、WO01/55182に開示されているタンパク質の可変領域を欠失するよう末端切断されていることができる。好ましい変異体は、WO01/55182に記載されている1、2、3、4または5個の可変領域の欠失を含むであろう。好ましくは、第1および第2の可変領域が欠失している。好ましい変異体は、アミノ酸配列52-237または54-237の間の残基、より好ましくはアミノ酸52-133または55-133の間の残基を欠失しているであろう。成熟タンパク質はシグナルペプチドを欠いているであろう。
【0181】
Hap
髄膜炎菌由来のHap様タンパク質のコンピューター解析は少なくとも3つの構造ドメインを示している。株H44/76由来のHap様配列を基準配列とすると、アミノ酸1-42を含むドメイン1は、自己輸送体ファミリーに特徴的なsec依存性シグナルペプチドをコードしており、アミノ酸43-950を含むドメイン2は、表面に露出しており免疫系に接近しうると考えられるパッセンジャードメインをコードしており、残基951からC末端(1457)までを含むドメイン3は、バレル様構造に組み立てられ外膜内に繋ぎ止められるらしいβ鎖をコードすると推定される。ドメイン2は表面に露出していると考えられ、よく保存されており(試験した全ての株において80%を上回る)、大腸菌(E. coli)内でサブユニット抗原として産生されうるため、それは興味深いワクチン候補の1つである。ドメイン2および3は表面に露出していると考えられ、よく保存されているため(Pizzaら (2000), Science 287: 1816-1820)、それらは興味深いワクチン候補の1つである。ドメイン2はパッセンジャードメインとして公知である。
【0182】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくはOMV調製物中に組み入れられた完全長Hapタンパク質を含みうる。本発明の免疫原性組成物はまた、株H44/76においてアミノ酸残基43-950から構成されるHapのパッセンジャードメインも含みうる。Hapのこの断片は本発明のサブユニット組成物中で特に有利に使用されるであろう。Hapのパッセンジャードメインの上記配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0183】
3.鉄獲得タンパク質
鉄獲得タンパク質としては、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467、US 5912336、WO93/06861およびEP586266)、TbpB(NMB 0460)(WO93/06861およびEP586266)、LbpA(NMB 1540)(Med Microbiol (1999) 32:1117)、TbpB(NMB 1541)(WO/99/09176)、Hue(U73112.2)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、Hub(NC_003116.1)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、XthAとしても公知のP2086(NMB 0399)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002)、FbpA(NMB 0634)、FbpB、BfrA(NMB 1207)、BfrB(NMB 1206)、GNA2132としても公知のLipo28(NMB 2132)、Sibp(NMB 1882)、HmbR、HemH、Bcp(NMB 0750)、鉄(III)ABC輸送体-パーミアーゼタンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、鉄(III)ABC輸送体-ペリプラスミック(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、TonB依存性受容体(NMB 0964およびNMB 0293)(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)およびトランスフェリン結合タンパク質関連タンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)が挙げられる。これらのタンパク質は髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)または淋菌(Neisseria gonorrhoeae)または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の鉄獲得タンパク質も包含する。
【0184】
TbpA
TbpAはTbpBと相互作用してナイセリア属菌の外膜上にタンパク質複合体を形成し、これがトランスフェリンに結合する。構造上は、TbpAは、TonBボックスをもつ細胞内N末端ドメインおよびプラグ(plug)ドメイン、短い細胞内ループおよびより長い細胞外ループにより連結された複数の膜貫通β鎖を含有する。
【0185】
高い分子量および低い分子量をそれぞれ有するTbpBの2つのファミリーが識別されている。TbpBの高分子量形態および低分子量形態は、相同性に基づいて区別されうる異なるファミリーのTbpAと会合する。これらのTbpAファミリーは類似した分子量であるにもかかわらず、高分子量ファミリーおよび低分子量ファミリーとして公知である。なぜなら、これらはTbpBの高分子量形態または低分子量形態に会合するからである(Rokbiら FEMS Microbiol. Lett. 100; 51, 1993)。これらの2つの形態のTbpAを表すために用語TbpA(高)およびTbpA(低)が用いられ、そしてTbpBも同様である。本発明の免疫原性組成物は、髄膜炎菌血清群A、B、C、YおよびW-135由来のTbpAおよびTbpB、ならびに淋菌を含む他の細菌に由来する鉄獲得タンパク質を含みうる。トランスフェリン結合タンパク質TbpAおよびTbpBはそれぞれTbp1およびTbp2とも呼ばれる(Cornelissenら Infection and Immunity 65; 822, 1997)。
【0186】
TbpAは幾つかの異なる領域を含有する。例えば、髄膜炎菌株H44/76由来のTbpAの場合には、アミノ末端の186アミノ酸が内部球状ドメインを形成し、22個のβ鎖が該膜を横切ってβバレル構造を形成している。これらは、短い細胞内ループおよびより大きな細胞外ループにより連結されている。細胞外ループ2、3および5は最高度の配列可変性を有し、ループ5は表面に露出している。ループ5および4はリガンドの結合に関わる。
【0187】
TbpAの好ましい断片はTbpAの細胞外ループを含む。髄膜炎菌株H44/76由来のTbpAの配列を用いると、これらのループでは、ループ1はアミノ酸200-202に対応し、ループ2はアミノ酸226-303に対応し、ループ3はアミノ酸348-395に対応し、ループ4はアミノ酸438-471に対応し、ループ5はアミノ酸512-576に対応し、ループ6はアミノ酸609-625に対応し、ループ7はアミノ酸661-671に対応し、ループ8はアミノ酸707-723、ループ9はアミノ酸769-790に対応し、ループ10はアミノ酸814-844に対応し、ループ11はアミノ酸872-903に対応する。配列アライメントの後の他のTbpタンパク質における対応配列も、好ましい断片を構成するであろう。最も好ましい断片は、Tbpのループ2、ループ3、ループ4またはループ5を構成するアミノ酸配列を含むであろう。
【0188】
本発明の免疫原性組成物がTbpAを含む場合、TbpA(高)およびTbpA(低)の両方を含むのが好ましい。
【0189】
TbpAは、好ましくは、OMVワクチン中に存在するが、それはサブユニットワクチンの一部であってもよい。例えば、本発明の免疫原性組成物中に導入されうる単離された鉄獲得タンパク質は当技術分野においてよく知られている(WO00/25811)。それらを細菌宿主内で発現させ、界面活性剤(例えば、2% Elugent)を使用して抽出し、アフィニティークロマトグラフィーによりまたは当技術分野においてよく知られた標準的なカラムクロマトグラフィー技術(Oakhillら Biochem J. 2002 364; 613-6)を用いて精製することができる。
【0190】
TbpAがOMVワクチン中に存在する場合、その発現を本明細書またはWO01/09350号に記載の遺伝子工学的技術によりアップレギュレーションすることが可能であり、あるいは好ましくは、鉄制限条件下の親株の増殖によりアップレギュレーションすることができる。この方法は、免疫優性となりうる可変性鉄調節タンパク質(特に野生型FrpB)のアップレギュレーションをも引き起こす。従って、広範なナイセリア属菌株において存在する抗原に対する免疫応答を本発明の免疫原性組成物が惹起するのが保証されるよう、WO01/09350号に記載の通りかかるタンパク質(特に野生型FrpB)の発現をダウンレギュレーションする(かかるタンパク質をコードする遺伝子を欠失させる)または上述したように免疫優性ループを除去するのが有利である。野生型FrpBを欠失する場合、非免疫優性突然変異体FrpB遺伝子の追加コピーを細胞に導入しうる。TbpA(高)およびTbpA(低)の両方を該免疫原性組成物中に存在させるのが好ましく、これは、好ましくは、かかる別形態のTbpAを発現する2つの株に由来するOMVを組み合わせることにより達成される。
【0191】
4.毒素
毒素には、FrpA(NMB 0585;NMB 1405)、FrpA/C(定義については下記参照)、FrpC(NMB 1415;NMB 1405)(WO92/01460)、NM-ADPRT(NMB 1343)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002, Masignaniら, p135)、VapD(NMB 1753)、リポ多糖(LPS;リポオリゴ糖またはLOSとも称される)免疫型L2およびLPS免疫型L3が包含される。FrpAおよびFrpCは、これらの2つのタンパク質間で保存された領域を含有し、これらのタンパク質の好ましい断片は、この保存断片を含有するポリペプチド、好ましくは、FrpA/Cの配列のアミノ酸227-1004を含むポリペプチドであろう。これらの抗原は髄膜炎菌または淋菌または他のナイセリア属菌株に由来しうる。本発明はまた、ナイセリア属菌由来の他の毒素を包含する。
【0192】
代わりの実施形態においては、毒素には、毒性の調節に関わる抗原、例えば、リポ多糖の合成において機能するOstAが含まれうる。
【0193】
FrpAおよびFrpC
髄膜炎菌は、鉄制限の際に分泌される、FrpAおよびFrpCと称される2つのRTXタンパク質をコードしている(Thompsonら, (1993) J. Bacteriol. 175:811-818; Thompsonら, (1993) Infect. Immun.. 61:2906-2911)。RTX(Repeat ToXin)タンパク質ファミリーは共通して、それらのC末端付近に、コンセンサス配列Leu Xaa Gly Gly Xaa Gly (Asn/Asp) Asp Xaa (LXGGXGN/DDX)をもつ一連の9アミノ酸の反復配列を有する。大腸菌(E. coli)HlyAにおける反復配列はCa2+の結合部位であると考えられる。図4に示すとおり、株FAM20において特徴づけられている髄膜炎菌FrpAおよびFrpCタンパク質は、それらの中央領域およびC末端領域においてはかなりのアミノ酸類似性を共有するが、N末端においては(有するとしても)非常に限られた類似性しか有さない。さらに、FrpAとFrpCとの間で保存された領域は、9アミノ酸モチーフの反復(FrpAにおいては13回およびFrpCにおいては43回)によるいくらかの多型を示す。
【0194】
本発明の免疫原性組成物は完全長FrpAおよび/またはFrpCを含むことが可能であり、好ましくは、FrpAとFrpCとの間で保存された配列を含む断片を含む。保存配列は9アミノ酸の反復単位から構成される。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、3個を超える反復、10個を超える反復、13個を超える反復、20個を超える反復、または23個を超える反復を含む。
【0195】
かかる末端切断型は完全長分子より有利な特性を有し、かかる抗原を含むワクチンは、本発明の免疫原性組成物に含まれることが好ましい。
【0196】
FrpAとFrpCとの間で保存された配列はFrpA/Cと称され、FrpAまたはFrpCが本発明の免疫原性組成物の構成成分に相当する場合には、FrpA/Cが有利に使用されうるであろう。FrpA配列のアミノ酸277-1004は好ましい保存領域である。上記配列はN末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。
【0197】
LPS
LPS(リポ多糖;LOS(リポオリゴ糖)としても知られる)はナイセリア属菌の外膜上の内毒素である。LPSの多糖部分は殺菌抗体を誘導することが公知である。
【0198】
LPSのオリゴ糖部分内の不均一性は種々のナイセリア属菌株間に構造および抗原性の多様性をもたらす(Griffissら Inf. Immun. 1987; 55: 1792-1800)。これは、髄膜炎菌株を12個の免疫型に細分するのに利用されている(Scholtanら J Med Microbiol 1994, 41:236-243)。免疫型L3、L7およびL9は免疫学的に同一であり、構造的に類似しており(あるいはさらには同一であり)、従ってL3,7,9と称される(あるいは、本明細書の目的においては「L3」と総称される)。髄膜炎菌LPS L3,7,9 (L3)、L2およびL5はシアル酸化によりまたはシチジン5'-一リン酸-N-アセチルノイラミン酸の付加により修飾されうる。L2、L4およびL6 LPSは免疫学的に区別されうるが、それらは構造的には類似しており、本明細書中でL2に言及する場合には、所望により、本発明の範囲内で、L2の代わりにL4またはL6のいずれかを用いることができる。LPSの構造および不均一性のさらなる説明は、M. P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびMol Microbiol 2002, 43:931-43を参照されたい。
【0199】
LPS、好ましくは髄膜炎菌LPSが本発明のワクチン中に含まれている場合、好ましくはおよび有利には、免疫型L2およびL3の一方または両方が存在する。LPSは、好ましくは、外膜小胞(好ましくは、その場合、小胞は低パーセントの界面活性剤、より好ましくは0〜0.5%、0.02〜0.4%、0.04〜0.3%、0.06〜0.2%、0.08〜0.15%または0.1%の界面活性剤、最も好ましくはデオキシコラート[DOC]で抽出されている)中に存在するが、サブユニットワクチンの一部であってもよい。LPSは、熱水-フェノール法(WesphalおよびJann Meth. Carbo. Chem. 5; 83-91 1965)を含む周知の方法を用いて単離することができる。Galanosら 1969, Eur J Biochem 9:245-249およびWuら 1987, Anal Bio Chem 160:281-289も参照されたい。LPSは、無修飾(plain)、あるいは破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM-197またはOMV外膜タンパク質のようなT細胞エピトープ源にコンジュゲートして使用することができる。単離されたLOSをコンジュゲートするための技術も公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れるEP 941738を参照されたい)。
【0200】
LOS(特に、本発明のLOS)がブレブ(bleb)製剤中に存在する場合、好ましくは、LOSを、LOSのコンジュゲーションを可能にする方法により、同様にブレブ調製物上に存在する1以上の外膜タンパク質(例えば、髄膜炎菌におけるPorAまたはPorB)にin situでコンジュゲートさせる。
【0201】
この方法は、ブレブ製剤中のLOS抗原の安定性および/または免疫原性(T細胞ヘルプをもたらす)および/または抗原性を有利に増強し、従って髄膜炎菌外膜の表面上の天然環境におけるLOSと同様に、T依存性オリゴ糖免疫原にT細胞ヘルプをその最も防御的なコンホメーションで与えることができる。さらに、LOSのブレブ内のコンジュゲーションはLOSの解毒をもたらことができる(リピドA部分が外膜内に安定に埋もれることにより、毒性の生じる可能性が減少する)。従って、本明細書に記載のhtrB-またはmsbB-突然変異体からブレブを単離する解毒法、あるいはポリミキシンB[リピドAに対して高いアフィニティーを有する分子]の無毒性ペプチド機能等価体を組成物に加えることによる解毒法(ポリミキシンBの無毒性ペプチド機能等価体、特にペプチドSEAP 2[2個のシステインがジスルフィド架橋を形成する配列KTKCKFLKKC]の使用のさらなる詳細は、WO 93/14115、WO 95/03327、Velucchiら (1997) J Endotoxin Res 4: 1-12およびEP 976402を参照されたい)は必要ないかもしれない(しかし、念のために、併せて加えてもよい)。従って、本発明者らは、ブレブ中に存在するLOSがブレブ中に存在する外膜タンパク質とブレブ内様式でコンジュゲートしているブレブを含んでなる組成物は、ブレブが由来する生物により引き起こされた疾患の治療または予防用のワクチンのベースを形成することができ、その場合、かかるワクチンは実質的に無毒性でありかつ天然環境のLOSに対してT依存性殺菌応答を誘導しうることを見出した。
【0202】
かかるブレブ調製物を、目的の細菌から単離し(WO 01/09350を参照)、ついで公知のコンジュゲーション化学で処理して、LOSのオリゴ糖部分の官能基(例えば、NH2またはCOOH)をブレブ外膜タンパク質の官能基(例えば、NH2またはCOOH)に連結することができる。グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド/ホルムアルデヒド混合物を使用する架橋技術を用いることができるが、EDACまたはEDAC/NHSのような、より選択的な化学を用いることが好ましい(J.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle. 「N-ヒドロキシスクシンイミドによる水溶性カルボジイミド媒介カップリング反応の促進(Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions)」, Analytical chemistry 156: 220-222 (1986);ならびに「バイオコンジュゲート技術(Bioconjugates Techniques)」, Greg T. Hermanson (1996) pp173-176)。LOSと使用しうるタンパク質分子との間に共有結合を作製することができる他のコンジュゲーション化学または処理が欧州特許941738号に記載されている。
【0203】
好ましくは、該ブレブ調製物を莢膜多糖の非存在下でコンジュゲートさせる。ブレブを、(天然でまたは下記の突然変異により)莢膜多糖を産生しない株から単離してもよいし、あるいはほとんど、好ましくは全ての混入している莢膜多糖から精製してもよい。この方法では、ブレブ内LOSコンジュゲーション反応は遥かに効率的である。
【0204】
好ましくは、該ブレブ中に存在するLOSの10、20、30、40、50、60、70、80、90または95%以上が架橋/コンジュゲートしている。
【0205】
ブレブ内コンジュゲーションは、好ましくは、以下の処理工程の1、2または3つ全てを含む:コンジュゲーションpHはpH 7.0より大きく、好ましくはpH 7.5以上(最も好ましくはpH 9未満)であるべきであり;1〜5%、好ましくは2〜4%、最も好ましくは約3%スクロースの条件を反応の間、維持すべきであり;NaClはコンジュゲーション反応の間、最小限に、好ましくは0.1M未満、0.05M未満、0.01M未満、0.005M未満、0.001M未満で存在するように、最も好ましくは全く存在しないようにすべきである。これらの処理上の特徴は全て、ブレブがコンジュゲーションの過程全体にわたり安定でかつ溶液中に維持されることを保証する。
【0206】
EDAC/NHSコンジュゲーション法は、ブレブ内結合のための好ましい方法である。EDAC/NHSは、過度に架橋して濾過性に悪影響を及ぼしうるホルムアルデヒドよりも好ましい。EDACはカルボン酸(例えば、LOS中のKDO)と反応して活性エステル中間体を与える。アミン求核試薬(例えば、PorBのような外膜タンパク質中のリシンなど)の存在のもとでアミド結合が生成され、イソ尿素副産物が放出される。しかし、EDAC媒介反応の効率は、スルホ-NHSエステル中間体の生成を通じて増加しうる。スルホ-NHSエステルは水溶液中で、EDACのみとカルボキシラートとの反応から生成した活性エステルより長く存続する。従って、この2段階法を用いることにより、より高い収率のアミド結合形成を達成することができる。EDAC/NHSコンジュゲーションはJ.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle, 「N-ヒドロキシスクシンイミドによる水溶性カルボジイミド媒介カップリング反応の促進(Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions)」, Analytical chemistry 156: 220-222 (1986)ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) pp173-176に考察されている。反応においては、好ましくは、ブレブ1mg当たり0.01〜5mgのEDAC、より好ましくは、ブレブ1mg当たり0.05〜1mgのEDACを使用する。EDACの使用量は、サンプル中に存在するLOSの量に依存し、そしてこれは、ブレブを抽出するために使用するデオキシコラート(DOC)のパーセンテージ(%)に依存する。低い%(例えば、0.1%)のDOCの場合は、多量(1mg/mg以上)のEDACを使用するが、より高い%(例えば、0.5%)のDOCでは、過度のブレブ内架橋を防ぐために、より少量(0.025〜0.1mg/mg)のEDACを使用する。
【0207】
従って、本発明の好ましい方法は(好ましくは髄膜炎菌の)ブレブ内コンジュゲートしたLOSを製造する方法であって、EDAC/NHSの存在のもとで、pH 7.0〜pH 9.0(好ましくは、pH約7.5)のpHで、1〜5%(好ましくは約3%)スクロース中で、および場合によってはNaClを実質的に含有しない条件で(前記の通り)、ブレブをコンジュゲートさせ、そしてコンジュゲートしたブレブを反応混合物から単離する工程を含んでなる上記方法である。
【0208】
反応を、該反応混合物のウエスタン分離ゲル上で、抗LOS(例えば、抗L2または抗L3)mAbを使用して追跡し、反応時間が経過するにつれてブレブ中のLOSの割合が増えてLOSの分子量が増加するのを示すことができる。
【0209】
かかる技術を用いて、収率99%でブレブを回収することができる。
【0210】
EDACは、LOSのT依存性免疫原性の改善に十分な程度にLOSをOMPに架橋するが、乏しい濾過性、凝集およびブレブ間架橋のような問題が生じるほど過度に架橋しない。EDACはその点で優れたブレブ内架橋剤であることが判った。生成したブレブの形態学的特徴はコンジュゲートしてないブレブのそれに類似している(電子顕微鏡による)。さらに、上記プロトコルは、過度の架橋(これは、該ブレブの表面上に天然の防御性OMP、例えばTbpAまたはHsfの免疫原性を減少させうる)が生じるのを防いだ。
【0211】
ブレブが由来する髄膜炎菌株は、莢膜多糖を産生し得ない突然変異株(特にsiaD-)であることが好ましい。また、髄膜炎菌性疾患に対して有効な免疫原性組成物はL2およびL3の両方のブレブを含んでおり、その場合、L2およびL3 LOSは共に、ブレブ外膜タンパク質にコンジュゲートしていることが好ましい。さらに、ブレブ内コンジュゲートしたブレブ内のLOS構造は、lgtE-または好ましくはlgtB-髄膜炎菌株に由来するそれと合致することが好ましい。最も好ましくは、免疫原性組成物は、莢膜多糖を産生し得ないでかつlgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するブレブ内コンジュゲートしたブレブを含んでなり;莢膜多糖を産生し得ない突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなるか;lgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなるか;または最も好ましくは、莢膜多糖を産生し得ないかつlgtB-である突然変異髄膜炎菌株に由来するL2およびL3ブレブを含んでなる。
【0212】
本発明に使用しうる典型的なL3髄膜炎菌株はH44/76 menB株である。典型的なL2株はB16B6 menB株または39E髄膜炎菌C型株である。
【0213】
前記の通り、本発明のブレブは、コンジュゲーションの作用によりある程度解毒されており、それ以上解毒する必要はないが、安全性を高めるためにさらなる解毒法を用いてもよく、例えば、htrB-またはmsbB-である髄膜炎菌株に由来するブレブを使用したり、あるいはポリミキシンB[リピドAに対して高いアフィニティーを有する分子]の無毒性ペプチド機能等価体(好ましくはSEAP 2)をブレブ組成物に加えることができる(前記の通り)。
【0214】
上記の方法で、重要な抗原として、実質的に無毒性であり、自己免疫の問題を伴わず、T依存性を有し、その天然環境中に存在し、そして(L2+L3組成物の場合には)髄膜炎菌株の90%以上に対する殺菌抗体応答を誘導しうるLOSを有する髄膜炎菌ブレブおよびブレブ含有免疫原性組成物が提供される。
【0215】
5.内在性外膜タンパク質
他のカテゴリーのナイセリア属菌タンパク質も、本発明のナイセリア属菌ワクチン中に含有させる候補となる可能性があり、驚くべきほど有効に他の抗原と組み合わせることができる。膜結合タンパク質、特に内在性膜タンパク質、最も有利には外膜タンパク質、特に内在性外膜タンパク質を、本発明の組成物中で使用することができる。かかるタンパク質の一例は、ナイセリア属菌ホスホリパーゼ外膜タンパク質である、Omp1A(NMB 0464)(WO00/15801)としても公知のPldAである。さらなる具体例としては、TspA(NMB 0341)(Infect. Immun. 1999, 67; 3533-3541)およびTspB(T細胞刺激性タンパク質)(WO 00/03003; NMB 1548, NMB 1628 またはNMB 1747)が挙げられる。さらなる具体例には、PilQ (NMB 1812) (WO99/61620)、D15としても公知のOMP85(NMB 0182)(WO00/23593)、NspA(U52066)(WO96/29412)、FhaC(NMB 0496またはNMB 1780)、PorB(NMB 2039)(Mol. Biol. Evol. 12; 363-370, 1995)、HpuB(NC_003116.1)、TdfH(NMB 1497)(Microbiology 2001, 147; 1277-1290)、OstA(NMB 0280)、GNA33およびLipo30としても公知のMltA(NMB0033)、HtrA(NMB 0532;WO 99/55872)、HimD(NMB 1302)、HisD(NMB 1581)、GNA 1870(NMB 1870)、HlpA(NMB 1946)、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467)(前記の鉄獲得タンパク質の説明も参照されたい)ならびにLbpA(NMB 1541)が挙げられる。
【0216】
OMP85
OMP85/D15は、シグナル配列、N末端表面露出ドメインおよび外膜に付着するための内在性膜ドメインを有する外膜タンパク質である。本発明の免疫原性組成物は完全長OMP85を、好ましくはOMV調製物の一部として含みうる。本発明の免疫原性組成物においては、OMP85の断片も使用することが可能であり、特に、アミノ酸残基1-475または50-475から構成されるOMP85のN末端表面露出ドメインを、好ましくは、本発明の免疫原性組成物のサブユニット成分中に含有させる。OMP85の表面露出ドメインの上記配列は、N末端またはC末端の一方または両方において1、3、5、7、10、15、20、25または30個までのアミノ酸を伸長または末端切断しうる。シグナル配列はOMP85断片から除去するのが好ましい。
【0217】
OstA
OstAはリポ多糖の輸送において機能し、毒性の調節因子であるとみなされうる。毒素カテゴリーが毒性の調節因子ならびに毒素を含有するまで拡張された場合、OstAは、場合によっては、毒素のカテゴリーに含まれる。
【0218】
好ましくは、サブユニット組成物は、本発明のキメラImp/OstAタンパク質と以下とを一緒に含むものである:
i)以下のリストから選択される少なくとも1種のさらなる抗原:FhaB、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、NadA、OMP85のN末端表面露出ドメイン、FrpA、FrpC、FrpA/C、TpbA、TbpB、LpbA、LbpB、PldA、PilQ、NspA、ならびにL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方;ならびに/あるいは
ii)少なくとも1種のナイセリア属菌(好ましくは髄膜炎菌)外膜小胞(OMV)調製物。
【0219】
好ましくは、OMV調製物は、外膜小胞中の組換えによりアップレギュレートされている以下のリストから選択される少なくとも1種の抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する:FhaB、Hsf、NspA、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995、NMB1119、IgAプロテアーゼ、AspA、TbpA(高)、TbpA(低)、TbpB(高)、TbpB(低)、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293。
【0220】
i)が存在する場合には、追加の抗原は上述したタンパク質の1以上の群から選択されることが好ましい。
【0221】
他の実施形態において、本発明の外膜小胞は、外膜小胞において組換えによりアップレギュレートされ、かつ以下のリスト:NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAから選択され、そして場合によりL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方を含んでもよい少なくとも1種のさらなる抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する。この外膜小胞は、外膜小胞において組換えによりアップレギュレートされ、かつ以下のリスト:FrpB、NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAから選択され、そして場合によってはL2免疫タイプのLPSとL3免疫タイプのLPSの一方または両方を含んでもよい少なくとも1種のさらなる抗原(より好ましくは2、3、4または5種)を有する、1種以上のさらなる外膜小胞と共に使用することができる。
【0222】
本発明の免疫原性組成物は、髄膜炎菌血清群A、B、C、Y、W-135または淋菌に由来する抗原(タンパク質、LPSおよび多糖)を含みうる。
【0223】
さらなる組み合わせ
本発明の医薬組成物はさらに、細菌莢膜多糖またはオリゴ糖を含みうる。該莢膜多糖またはオリゴ糖は、髄膜炎菌血清群A、C、Yおよび/またはW-135、インフルエンザ菌b(Haemophilus influenzae b)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A群連鎖球菌(Group A Streptococci)、B群連鎖球菌(Group B Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のうち1以上に由来しうる。
【0224】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗原性組成物と、ウイルスまたはグラム陽性菌に関連した病態を含む特定の病態に対して有利に使用される他の抗原とを含むワクチンの組合せである。
【0225】
1つの好ましい組合せにおいては、本発明の抗原性組成物は、無修飾(plain)であってもよいしタンパク質担体にコンジュゲートしていてもよい髄膜炎菌莢膜多糖またはオリゴ糖A、C、YまたはW-135のうち1、2、3または好ましくは4個全てとともに製剤化される。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、AおよびC;またはC;またはCおよびYとともに製剤化される。髄膜炎菌血清群Bに由来するタンパク質を含有するかかるワクチンは、包括的髄膜炎菌ワクチンとして有利に使用することができる。
【0226】
さらなる好ましい実施形態においては、本発明の抗原性組成物、好ましくは、無修飾のまたはコンジュゲートさせた髄膜炎菌莢膜多糖またはオリゴ糖A、C、YまたはW-135の1、2、3または4個全てとともに製剤化される抗原性組成物(前記の通り)は、コンジュゲートさせたインフルエンザ菌b莢膜多糖(もしくはオリゴ糖)、および/または1以上の無修飾のもしくはコンジュゲートさせた肺炎球菌多糖(もしくはオリゴ糖)(例えば以下に記載するもの)を使用して製剤化される。場合によっては、ワクチンは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)感染に対して宿主を防御しうる1以上のタンパク質抗原をも含みうる。かかるワクチンは包括的な髄膜炎ワクチンとして有利に使用することができる。
【0227】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、インフルエンザ菌b(Haemophilus influenzae b)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A群連鎖球菌(Group A Streptococci)、B群連鎖球菌(Group B Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のうち1以上に由来しうる莢膜多糖またはオリゴ糖を使用して製剤化される。肺炎球菌莢膜多糖またはオリゴ糖抗原は、好ましくは、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F(最も好ましくは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F)から選ばれる。さらなる好ましい実施形態はインフルエンザ菌のPRP莢膜多糖またはオリゴ糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態は黄色ブドウ球菌5型、8型または336型莢膜多糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態は表皮ブドウ球菌I型、II型またはIII型莢膜多糖を含有しうる。さらなる好ましい実施形態はB群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型またはIII型莢膜多糖を含有しうる。さらなる実施形態はA群連鎖球菌の莢膜多糖を含有し、好ましくはさらに、少なくとも1つのMタンパク質を含み、より好ましくは、複数の型のMタンパク質を含みうる。
【0228】
本発明のかかる莢膜多糖またはオリゴ糖はコンジュゲートしていなくも、あるいは破傷風トキソイド、破傷風トキソイド断片C、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、プロテインD(US 6342224)のような担体タンパク質にコンジュゲートしていてもよい。多糖またはオリゴ糖結合体は任意の公知カップリング技術により製造することができる。例えば、多糖をチオエーテル結合を介してカップリングすることができる。このコンジュゲーション方法は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジミウムテトラフルオロボラート(CDAP)で多糖を活性化してシアン酸エステルを生成することに基づく。従って、活性化多糖を、直接的にまたはスペーサー基を介して、担体タンパク質上のアミノ基にカップリングすることができる。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンにカップリングし、アミノ誘導体化多糖を、チオエーテル結合の形成を含むヘテロ連結化学法を用いて担体タンパク質にコンジュゲートさせる。かかるコンジュゲートはUniformed Services UniversityのPCT公開出願WO93/15760に記載されている。
【0229】
コンジュゲートはまた、US 4365170(Jennings)およびUS 4673574(Anderson)に記載の直接還元アミノ化法によっても製造することができる。他の方法はEP-0-161-188、EP-208375およびEP-0-477508に記載されている。さらなる方法は、アジピン酸ヒドラジド(ADH)により誘導体化された臭化シアン活性化多糖の、カルボジイミド縮合(Chu C.ら Infect. Immunity, 1983 245 256)によるタンパク質担体へのカップリングを含む。
【0230】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、(肺炎球菌の生活環の少なくとも一部において宿主の免疫系により認識されうる)肺炎球菌の外表面上に露出した肺炎球菌タンパク質、あるいは肺炎球菌により分泌または放出されるタンパク質である。最も好ましくは、タンパク質は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の毒素、付着因子、2成分シグナルトランスデューサーもしくはリポタンパク質またはそれらの断片である。特に好ましいタンパク質としては、限定されるものでないが、ニューモリシン(好ましくは、化学処理または突然変異により解毒されているもの)[Mitchellら Nucleic Acids Res. 1990 Jul 11; 18(13): 4010 「肺炎連鎖球菌1型と2型由来のニューモリシン遺伝子とタンパク質の比較(Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumoniae types 1 and 2.)」, Mitchellら Biochim Biophys Acta 1989 Jan 23; 1007(1): 67-72 「大腸菌におけるニューモリシン遺伝子の発現:迅速な精製と生物学的特性(Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli: rapid purification and biological properties)」、WO 96/05859(A. Cyanamid)、WO 90/06951(Patonら)、WO 99/03884(NAVA)];PspAおよびその膜貫通欠失変異体(US 5804193-Brilesら);PspCおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/09994-Brilesら);PsaAおよびその膜貫通欠失変異体(Berry & Paton、Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255-62 「PsaAの配列不均一性、肺炎連鎖球菌の病原性に必須の37キロダルトン推定付着因子(Sequence heterogeneity of PsaA、a 37-kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae)」);肺炎球菌コリン結合タンパク質およびその膜貫通欠失変異体;CbpAおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/41151;WO 99/51266);グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Infect. Immun. 1996 64:3544);HSP70(WO 96/40928);PcpA(Sanchez-Beatoら, FEMS Microbiol Lett 1998、164:207-14);M様タンパク質(EP 0837130)および付着因子18627,(EP 0834568)が挙げられる。さらなる好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO 98/18931に開示されているもの、特に、WO 98/18930およびPCT/US 99/30390において選ばれているものである。
【0231】
本発明の医薬組成物/ワクチンはまた、場合によっては、他のグラム陰性菌、例えばモラクセラ・カタラーリスまたはインフルエンザ菌から作られた外膜小胞調製物を含みうる。
【0232】
組成物、キットおよび投与
ワクチンは、宿主に投与した場合に免疫応答を誘導することができる少なくとも1種の抗原を含む。好ましくは、かかるワクチンは、ナイセリア属菌、好ましくは髄膜炎菌および/または淋菌感染に対する防御性の免疫応答を誘導することができる。
【0233】
本発明はまた、本明細書に考察したグラム陰性菌、キメラタンパク質または外膜小胞調製物を含んでなる組成物に関する。本発明のかかる組成物は、細胞、組織または生物に使用するための1以上の非滅菌もしくは滅菌担体、例えば個体への投与に適した医薬用担体などと組み合わせて用いることができる。かかる組成物は、例えば媒質添加剤または治療上有効な量の本発明のタンパク質、および製薬上許容される担体もしくは賦形剤を含む。かかる担体としては、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。製剤は、投与形式に適合させる必要がある。本発明はさらに、前述の本発明の組成物の成分の1種以上を入れた1以上の容器を含む診断および医薬用パックおよびキットに関する。
【0234】
本発明の医薬組成物は、単独で、または治療用化合物などの他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0235】
医薬組成物は、任意の有効な好都合な方法で投与することができ、なかでも、例えば、局所、経口、肛門,膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内または皮内経路により投与することができる。
【0236】
治療または予防として、注射可能な組成物、例えば滅菌水性分散液、好ましくは等張液として有効成分を個体に投与することができる。
【0237】
組成物は、例えば全身経路または経口経路による投与経路に適合させることができる。全身投与の好ましい形態には、注射、典型的には静脈注射が含まれる。他の注射経路、例えば皮下、筋肉内または腹腔内経路も用いることができる。全身投与のための代わりの手段としては、浸透液、例えば胆汁塩もしくはフシジン酸または他の界面活性剤などを用いる経粘膜および経皮投与が挙げられる。さらに、本発明のタンパク質または他の化合物が腸溶製剤または被包製剤として製剤できれば、経口投与もまた可能である。これらの化合物の投与はまた、軟膏、ペースト、ゲル剤、溶剤、粉剤などの形態で局所および/または局所化して投与することも可能である。
【0238】
哺乳動物、特にヒトへの投与のために、有効成分の日用量は、0.01mg/kg〜10mg/kg、典型的にはおよそ1mg/kgであると予想される。いずれの場合でも医師は、個体にとって最適な実際の投与量を決定することができ、またそれは特定の個体の年齢、体重および反応性に応じて変わりうる。上記の投与量は平均の場合の例示である。当然のことながら、個体の中にはより高用量または低用量の範囲が有効である場合もあり、それもまた本発明の範囲内である。
【0239】
必要な投与量は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、被験体の症状の性質、および実施する医師の判断により異なる。しかし好適な投与量は、0.1〜100μg/kg被験体の範囲である。
【0240】
ワクチン組成物は注射可能な形態であるのが好都合である。慣用のアジュバントを用いて免疫応答を高めることができる。ワクチン接種の好適な単位用量は、0.5〜5μg/kg抗原であり、その用量を、好ましくは1〜3週間間隔で1〜3回投与する。示した容量範囲で、本発明の化合物について適切な個体への投与を妨げる有害な毒性作用は観察されないであろう。
【0241】
利用可能な多種多様の化合物の点から、また種々の投与経路の有効性の違いから必要とされる投与量は広範囲で変化することが予想される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高用量を必要とすることが予想される。これらの投与量レベルの変化は、最適化のための標準の経験的作業を用いて調節することができ、当技術分野では周知である。
【0242】
本明細書に引用した全ての参考文献または特許出願は、本明細書に参照により組み入れられる。
【実施例】
【0243】
本発明の好ましい特徴および実施形態を、以下の非限定の実施例を参照してさらに説明する。
【0244】
実施例1 一般的方法
細菌株と増殖条件
髄膜炎菌(Nme)H44/76、血清型B株は本発明者らの実験室のコレクションを用いた。H44/76 IpxA突然変異体(Steeghsら, 1998; Nature 392; 449-450)およびIpxA発現がtacプロモーターにより制御されるH44/76由来の株HA3003(Steeghsら、2001; EMBO J. 24; 6937- 6945)は、L. Steeghsおよびvan der Ley(Netherlands Vaccine Institute (NVI), Bilthoven, The Netherlands)より好意的に提供されたものである。Nmeは、キャンドル・ジャー(candle jar)中のVitox(Oxoid)および適宜、抗生物質(カナマイシン100gμg/ml、クロラムフェニコール5gμg/ml)を含有するGC寒天(Becton Dickinson)プレート上で37℃にて増殖した。液培養物は、プラスチックフラスコに入ったトリプシン・ソイブロス(tryptic soy broth)(TSB)中で37℃にて振盪しながら増殖した。シアリル化実験のために、80μMシチジン5'モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸(CMP-NANA、Sigma)を、対数期最中の増殖している細菌の培地に2時間加えた。大腸菌株DH5αまたはTOP10F'(Invitrogen)をルーチンのクローニングに用いた。大腸菌はLBプレート上で増殖させた。抗生物質を次の濃度:カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール25μg/mlおよびエリスロマイシン 200μg/mlで加えた。
【0245】
ゲル電気泳動と免疫ブロット
変性または半未変性条件のもとでのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および免疫ブロットを、記載の通り実施した(Voulhouxら 2003 Science 299; 262-265)。LPSを評価するために、サンプルをSDS-PAGEサンプルバッファー中で煮沸し、次いで0.5mg/mlプロテイナーゼKとともに55℃にて1時間インキュベートした。10分間煮沸後、ライセートを16%トリシン-SDS-PAGE上で電気泳動し(Lesseら, 1990, J. Immunol. Methods. 126; 109-117)、そして銀を用いて染色した(Tsaiら, 1982, Anal. Biochem. 119; 115-119)。
【0246】
ノイラミニダーゼ処理
対数期最中まで増殖した細菌の1mlをペレット化し、バッファーA(20mM Na2HPO4/NaH2PO4、150mM NaCl、5mM MgCl2、5mM CaCl2、pH 6.0)を用いて洗浄した。細菌を0.5mlバッファーAに再懸濁し、0.2U/mlのノイラミニダーゼ(V型、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)、Sigma N-2876)を60分間37℃にて加えた。次に、細菌をペレット化し、そしてトリシン-SDS-PAGEのための処理をした。細胞エンベロープをバッファーAに希釈し、0.2U/mlのノイラミニダーゼとともに60分間37℃にてインキュベートした。
【0247】
細胞画分の単離
細胞エンベロープを(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)に記載の通り調製した。内膜と外膜を等密度スクロース-勾配遠心分離により、MassonおよびHolbein(MassonおよびHolbein 1983, J. Bacteriol. 154; 728-736)に従ってまたは、代わりに、Shellら(Shellら, 2002, Infect. Immun. 70; 3744-3751)の方法に従って分離した。スクロース-勾配画分中の乳酸脱水素酵素活性を、直接測定した(WestphalおよびJann 1965; Method. Carbohydr. Chem. 5; 83-91)。各画分の等容積を7%トリクロロ酢酸(TCA)を用いて沈降させ、タンパク質をSDS-PAGEによりそしてLPSをトリシン-SDS-PAGEにより分析した。細胞外増殖培地を得るために、細菌を懸濁液から遠心分離(15分間、6000g)により取り除いた。上清を2時間100,000gにて遠心機にかけた。タンパク質とLPSを上清から7%TCAを用いて沈降させた。沈降物を遠心分離により20,000gにて30分間回収し、次いでアセトンにより洗浄した。
【0248】
LPS定量
細胞エンベロープのLPS含量を、3-デオキシ−D-マンノ-オクツロン酸(KDO)測定により定量した(Vanら, 1978; J. Bacteriol. 134; 1089-1098)。
【0249】
抗体
H44/76の細胞エンベロープ中のImpタンパク質の過剰発現は、プラスミドpEN11-Impを運ぶimp突然変異体を1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)とともに増殖することにより達成した。これらの誘導された細胞を用いて外膜小胞(Fredriksenら, 1991, NIPH Annals 14,67-79)を調製し、これをマウス中に注射して抗血清を産生させた。次に、特異的抗Imp抗体を血清の精製impタンパク質への吸着により精製した。その目的で、株BL21 pET11a-Impからの封入体を精製し(Dekkerら, 1995; Eur. J. Biochem. 232; 214-219)、20mM Tris/HCI、100mMグリシン、6M尿素、pH 8に溶解し、8% SDS-PAGEゲル中で電気泳動し、そしてニトロセルロース上へブロットした。Impタンパク質を、1%酢酸中の0.25% Ponceau S(Acros Organics)を用いてブロット上で可視化した。Impタンパク質を含有するストリップをブロットから切り取って免疫感作したマウスの血清から得た特異的抗Imp抗体を吸着させた。結合した抗体を5分間0.2MグリシンpH 3.0を用いる洗浄により溶出し、次いで1M Tris pH 10.8を用いて中和した。溶出した抗体をブロット上のImpの特異的検出に用いた。マウスモノクローナル抗FbpAおよび抗PorA(MN23G2.38)抗体はB. Kuipers(NVI, Bilthoven, The Netherlands)から提供を受けた。
【0250】
PL組成の分析
一夜、プレート上で増殖した細胞を収穫し、そしてTSB中に再懸濁した。次いで5ml TSB中に0.1のOD550まで希釈した後、細胞を7時間、2μCi[1-14C]酢酸ナトリウムを用いて37℃にて標識した。リン脂質を1.4mlの培養物から単離し(Bligh and Dyer, 1959 Can. J. Med. Sci 37; 911-917)、TLCにより分離し、そしてプレート(シリカゲル60、20 x 10cm、Merck)を、65:25:10の比のクロロホルム/メタノール/酢酸を用いて現像し、そしてオートラジオグラフィーで処理した。
【0251】
LPSおよびリン脂質単離と定量
変性条件下のSDS-PAGEを(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)に記載の通り実施した。LPS分析のため、サンプルをSDS-PAGEサンプルバッファー中で煮沸し、次いで0.5mg/mlプロテイナーゼKを用いて1時間インキュベートした。10分間煮沸後、ライセートを16%トリシン-SDS-PAGE上で分析し(Lesseら, 1990 J. Immunol. Methods 126; 109-117)、銀を用いて染色した(Tsai and Frasch, 1982 Anal. Biochem. 119; 115-119)。細胞エンベロープを先に記載の通り単離した(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。細胞エンベロープのLPS含量をKDO測定により記載の通り定量した(van Alphenら, 1978 J. Bacteriol. 134; 1089-1098)。細胞をプレートから収穫し、バッファー(0.238%の酸を含まないHEPES、0.04% KCl、0.85% NaCl、0.01% MgCl2.6H20、0.09%無水グルコース、および0.5mM CaCl2を含有し、NaOHによりpH 7.4に調節した)を用いて洗浄した。リン脂質を記載の通り単離し(BlighおよびDyer, 1959 Can. J. Med. Sci 37; 911-917)、そしてその量をリン含量を定量することにより数値化した(Rouser 1970 Lipids 5; 494-496)。
【0252】
電子顕微鏡
細胞をプレートから収穫し、そして化学的に固定し、ゼラチンに埋込んで冷凍切片を作製した。超薄切片をTechnai 10 EMを用いて100kVにて観察した。
【0253】
実施例2:Impは髄膜炎菌に必須ではない
ナイセリア属菌imp突然変異体を、株H44/76中のimp遺伝子と欠失-挿入突然変異を含有するコピーとの対立遺伝子置換によって構築した(図1A)。本発明者らは、株MC58由来のNMB0279およびNMB0280の配列(http://www.tigr.org)を用いてプライマーを設計してクローニングし、次いでNme株H44/76中のimp遺伝子を欠失させた(図1A)。簡単に説明すると、impの上流の遺伝子の一部、NMB0279をH44/76 DNAから、プライマーAおよびBを用いてクローニングした(表1)。imp遺伝子の3'末端は、PCRによりプライマーCおよびDを用いて取得した。両方のPCR産物をpCR2.1-TOPO(Invitrogen)中にクローニングすると、プラスミドpCR2.1-NMB0279およびpCR2-3'Impが得られる。pCR2.1-NMB0279の1つのAccI-Xbal断片を、Accl-Xbalで制限切断したpCR2-3'Imp中にライゲートした。得られるプラスミドをAcclにより切断してカナマイシン-耐性カセットの挿入が可能になった。このカセットをプラスミドpACYC177(New England Biolabs)からプライマーEおよびF(表1)を用いてPCR増幅し、末端AccI部位およびナイセリア属菌DNA取り込み配列を導入した。pMB25と呼ばれる最終構築物はimp遺伝子の転写方向と同じ方向でカナマイシン-耐性カセットを含有した。pMB25からプライマーAおよびDを用いて増幅したPCR産物のほぼ200ngを野生型H44/76細菌に加え、TSB+10mMMgCl2中で6時間増殖した。細菌をカナマイシンを含有するGCプレート上にまいた。形質転換体を、PCRによりプライマー対(primer pair)AD、AFおよびDEを用いてスクリーニングした。補完実験として、本発明者らはH44/76ゲノムDNA由来のimp遺伝子をPCRによりプライマー対DおよびG(表1)を用いてクローニングした。
【表1】
【0254】
PCR産物をpCR2.1-TOPOにクローニングし、切断し、そしてNdelおよびAstll制限部位を用いてpEN11中にライゲートして、プラスミドpEN11-Impを得た。プラスミドpEN11、ナイセリア属菌複製プラスミドはRV2100の誘導体であって、直列lacプロモーター-オペレーター(tac-lacUV5)配列の後方にH44/76 omp85遺伝子を含有する(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。pEN11において、omp85遺伝子のATG開始コドンはNdel部位により置き換えられていて遺伝子の交換を促進する。imp突然変異体をpEN-Impを用いて、細菌のプラスミドとの6時間プレート上の同時インキュベーションにより、形質転換した(Voulhouxら, Science 299; 262-265)。形質転換体をクロラムフェニコールを含有するプレート上で選択し、pEN11-Impおよび染色体imp::kan対立遺伝子の存在についてPCRにより試験した。そのシグナル配列を伴わないH44/76 imp遺伝子をpET11a(Novagen)に、プライマーHおよびI(表1)を用いてクローニングした。得られるプラスミドpET11a-Impを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)中に導入してpET11a中に存在するT7 プロモーターから末端切断されたimp遺伝子の発現を可能にした。
【0255】
カナマイシン耐性形質転換体をPCRにより、imp遺伝子の無傷のコピーの不在およびimp::kan対立遺伝子の存在について試験した。正しい形質転換体が容易に得られ、大腸菌(Braun & Silhavy, 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)とは対照的に、impはNme中の必須遺伝子でないことを実証した。突然変異体中のImpタンパク質の不在は免疫ブロットにより確認した(図1B)。
【0256】
実施例3:ナイセリア属菌imp突然変異体の表現型
形質転換体の著しい特徴は、野生型コロニー(図2A、B)と比較してその強いコロニー乳白度であって、LPS欠損突然変異体(図2C)にも見られる特性である。さらに、LPS欠損株(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937- 6945)と同様に、imp突然変異体細菌は増殖が遅く、野生型細菌より低い最終光学的密度までしか増殖しない(図2D)。変性または半未変性SDS-PAGEにおける全細胞(データは示してない)または細胞エンベロープ(図3A)のタンパク質プロファイルの分析は野生型とimp突然変異体細菌との間に著しい相違を示した。Nmeの主なOMPは三量体ポーリンPorAおよびPorBである。これらの三量体は非常に安定であって半非変性SDS-PAGEにおいて単量体に解離しない(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262-265)。本発明者らが半非変性条件でimp突然変異体の細胞エンベロープを分析すると、ほとんどのPorAタンパク質は、免疫ブロットにより示されるように三量体型で存在した(図3B)。IpxA突然変異体のプロファイルと類似のimp突然変異体にはほんの少量の単量体porAしか検出されなかった(図3B)(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937-6945)。従って、PorAおよびPorBなどのOMPは正常なレベルで存在し、正しくアセンブルされている。対照的に、トリシン-SDS-PAGE分析は、細胞LPS含量がimp突然変異体において著しく減少していることを示す(図3C)。KDO(核領域の内因性成分)のレベルを測定することによるLPSの定量測定値は、この結果を立証した:imp突然変異体細胞エンベロープはわずかに6.4nmol KDO/mgタンパク質しか含有しなかったが、野生型レベルは95nmol KDO/mgタンパク質であった。imp突然変異体のLPSはゲル中で、野生型LPS(図3C)と類似した位置まで移動し、類似のサイズであることを示した。LPSがimp突然変異体細菌により放出された可能性を、細胞外増殖培地をトリシンSDS-PAGE上で分析することにより研究した。imp突然変異体細菌によるLPSの放出の増強は見出されなかった(データは示してない)。対照的に、野生型およびimp突然変異体は非常に異なるタンパク質プロファイルを示した(図3D)。突然変異体の培地中に存在する主要タンパク質はほぼ35-kDaタンパク質であって、免疫ブロットによりFbpA(データは示してない)、周辺質鉄輸送体(periplasmic iron transpoter)と同定することができた(Ferreirosら, 1999. Comp. Biochem. Physio. 123; 1-7)。類似した高いレベルのFbpAがIpxA突然変異体の細胞外培地中に見出された(図3D)。これらの結果は、impおよびIpxA突然変異体に起こっている周辺質漏出を示し、これはLPSの発現量の低下した大腸菌突然変異体についても報じられている現象である(Nurminenら, Microbiology 143; 1533-1537)。IPTG調節プロモーターの制御下にあるプラスミド上のimp遺伝子のimp突然変異体中への導入によりimp突然変異を補償すると、IPTGの存在のもとで上記全ての野生型表現形質の完全な回復をもたらし、imp突然変異遺伝子表現型はimp欠損と直接関係することを実証する。従って、imp突然変異体はIpxA突然変異体と類似の表現型を実証し、これはLPSバイオジェネシスにおけるImpの役割を示すものである。しかし、IpxA突然変異体とは対照的に、imp突然変異体は明らかに低い量の全長LPSをなお産生した。無傷のLPS分子の存在はimp突然変異体におけるLPS生合成の欠損と相反する。見出された低いレベルのLPSはむしろ局在化しなかったLPSによるLPS合成に対するフィードバック抑制から生じたのかもしれない。
【0257】
実施例4:膜分離による、imp突然変異体株内のLPSの局在化
imp突然変異体により産生されたLPSの局在化を確認するために、本発明者らはスクロース-勾配密度遠心分離を実施して内膜と外膜とを分離した。色々なプロトコルを用いる多数の試みに関わらず、本発明者らは野生型細胞でさえ満足な膜分離を得ることができなかった。予想通り、内膜マーカーである乳酸脱水素酵素はより軽い密度画分に分画された(図4A)が、OMポーリンはより重い密度画分にほとんど分画された(図4B)。しかし、LPSは勾配のほとんど全ての画分に見出され(図4C)、ポーリンと共分画されなかった。ナイセリア属菌膜分離の難しいことは従来も認められていた(Masson & Holbein 1983, J. Bioteriol. 154; 728-736)。imp突然変異体のLPSをスクロース勾配で、野生型株のLPSと同じ様に分画したが(データは示してない)、結論の得られない結果であったので、本発明者らはこれらの結果からなんらかの結論を引き出すつもりはない。その代わりに、本発明者らは代わりの方法を設計してimp突然変異体内のLPSを評価した。
【0258】
実施例5:LPSの表面アクセシビリティ(accessibility)
ナイセリア属菌はO-抗原を合成しない。ナイセリア属菌LPSのコアの末端オリゴ糖部分は、関わるグリコシルトランスフェラーゼの増殖期可変性発現(phase-variable expression)によって可変性である。その結果、多数の異なるいわゆるLPS免疫型が存在する。L3免疫型はα鎖の末端オリゴ糖として、ラクト-N-ネオテトラオース単位を含有し、このα鎖はさらにシアル酸残基により伸長されうる。髄膜炎菌は、内因的に産生されるCMP-NANAを基質ドナーとして用いるかまたは増殖培地に添加された場合はこのヌクレオチド糖を利用することによりラクト-N-ネオテトラオース単位をシアリル化することができる(Kahler & Stephens 1998, Crit. Rev. Microbiol. 24; 281-334)。シアル酸残基は、無傷の細菌をノイラミニダーゼを用いて処理することによりLPSから取り除くことができる(Ramら, 1998, J. Exp. Med. 187; 743-752)。本発明者らはこの特徴を利用してLPSの細胞表面配置を評価した。これまでに記載した結果はシアリル化できないNme L8免疫型について得られた。ノイラミニダーゼアッセイを開発するために、本発明者らはL3バックグラウンドにimp突然変異体を構築した。コロニー乳白度、増殖特性、周辺質タンパク質の放出(データは示してない)およびLPS含量(図5A)を用いて表わしたこの突然変異体の表現型は、L8 imp突然変異体の表現型と同一であった。L3 imp突然変異体のLPSは、銀染色したトリシン-SDS-PAGEゲルにおいて2つのバンドとして現れた(図5A、B)。細胞エンベロープのノイラミニダーゼ処理後、全てのLPSはより低い位置に移動し(図5B)、高い方のバンドはシアリル化LPSに対応することを実証した。CMP-NANAの存在のもとでの突然変異体の増殖後、全てのLPSは高い方の位置に移動し、そして細胞エンベロープをノイラミニダーゼ処理すると完全により低い移動形態に転化された(図5B)。従って、L3 imp突然変異体は全長α鎖をもつLPSを産生し、このLPSは完全にシアリル化することができ、その後ノイラミニダーゼを用いて脱シアリル化することができる。野生型細菌は、CMP-NANAを増殖培地に加えたときだ
けシアリル化LPSを産生し(図5B);通常の高レベルのLPSを産生するとき、明らかに内因性CMP-NANAレベルが律速である。
【0259】
LPSが細胞表面上に露出されているかどうかを試験するために、本発明者らはCMP-NANAの存在で増殖した無傷の細菌をノイラミニダーゼにより処理した。無傷のimp突然変異体細胞内でLPSのわずかな部分だけしか脱シアリル化されず、これはほとんどのLPSが細胞表面上のノイラミニダーゼにアクセスできなかったことを示す(図5C)。アクセスできた少量のLPSは、恐らく突然変異体細胞の漏出性から得られたのであり、観察されたタンパク質放出の増強により表わされている(図3D)。対照的に、野生型細胞に存在するシアリル化LPSは完全に脱シアリル化され、従って予想された通り、全て細胞表面に露出されている(図5C)。野生型とimp突然変異体細菌との間のノイラミニダーゼ・アクセシビリティの差が、いずれかの方法で、存在する全LPSの大きな差による影響を受けるのかどうかを確かめるために、本発明者らは同様なアッセイを、IpxA発現がIPTGにより調節可能である株において実施した(Steeghsら, 2001; EMBO J. 24; 6937-6945)。この株をCMP-NANAおよび様々な濃度のIPTGの存在のもとで増殖した。LPSの発現は使用した濃度に依存したが、本発明者らはIPTGの不在のもとでもいくらかのLPSを検出し(図5D);明らかにIPTG誘導プロモーターは完全にサイレントでなかった。それにも関わらず、無傷の細胞におけるノイラミニダーゼに対するそのフルアクセシビリティから推測されるように、全ての異なる細胞LPSレベルにおいてLPSの細胞表面局在化は明らかであった(図5D)。これらのデータはさらに使用したアッセイを確証し、従って、LPSがimp突然変異体の細胞表面からほとんど不在であるという本発明者らの結論を強調するものであった。従って、ImpはOMの外側リーフレットへのLPS輸送に機能する。
【0260】
実施例6:他の細菌のimp相同体
Nme MC58 imp遺伝子NWB0280の配列(http://www.tigr.org)を問合せ(query)として使いBLASTを用いてimp相同体の微生物ゲノムを検索した。LPSなどのよく保存された構造のバイオジェネシスに関わる分子は高度に保存されているであろう。これは全くimp遺伝子にあてはまる、というのは相同性はほとんどのグラム陰性菌では見出されるが、グラム陽性菌では見出されないからである(Braun & Silhavy 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)。いくつかのグラム陰性菌におけるimp相同体の不在は、LPSの不在と相関があるように見える、というのは本発明者らは、外膜を持つがLPS生合成遺伝子を欠く細菌、例えば、好熱菌属Thermotoga maritima、双球菌属Deinococcusおよびスピロヘータ属spirochaetes Borreliaおよび梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidium)にimp相同体を見出せなかったからである(Raetzら, 2002, Annu. Rev. Biochem. 71; 635-700)。この観察はさらにImpがLPS輸送体として機能するという考えを強化するものである。
【0261】
実施例7:Impのトポロジーモデル
Impが媒介するLPS輸送の機構を理解するために、ナイセリア属菌impのトポロジーモデルを作った。本発明者らのトポロジーモデルは、短い周辺質ターンおよびいくつかの非常に長い(60アミノ酸残基)ループを持つ、18個の膜貫通β鎖を予想する(図6A)。長いループは全く注目すべきものであって、それらはナイセリア属菌Impタンパク質のなかで非常によく保存されている(図7)。
【0262】
考察
LPSは、ほとんどのグラム陰性菌外膜の必須成分でありかつヒトの重篤な敗血症性ショックの原因物質である。そのバイオジェネシスは長い間研究されており、その生合成に関わる多数のタンパク質が同定されている。しかしLPSバイオジェネシスの最終段階、すなわち、IMの周辺質リーフレット(periplasmic leaflet)から細菌細胞表面への完成LPS分子の輸送は捉えどころのないまま残されていた。この度、本発明者らは初めて、このLPS輸送経路に必要なタンパク質を同定した。作製したナイセリア属菌imp突然変異体は、全長LPSの量が劇的に低減した。本発明者らはimp突然変異体に蓄積したLPSの限られた量の細胞配置を正確に決定することができなかったが、膨大なこのLPSの大部分が細胞表面においてアクセスできないことを、ノイラミニダーゼ・アクセシビリティアッセイは明確に示した。Imp自体は、精製した大腸菌外膜における存在により示されかつβ-バレルOMPの典型である芳香族残基のその高い含量により示されるように、OMPである(Braun & 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)ので、ImpはLPSのOMを越えるフリップフロップを媒介する輸送体であると思われるが、Impの周辺質を横切る輸送におけるさらなる役割をこの段階で排除することはできない。imp突然変異体中のLPSの量の著しい減少は局在化しないLPSによるLPS生合成のフィードバック抑制によるのかもしれない。
【0263】
BraunおよびSilhavy(Braun & 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)は、条件付大腸菌突然変異体内のImpの欠損はスクロース勾配分画に見出された新規の、高密度膜の外観を生じることを報じた。この高密度はタンパク質対脂質比の増加に因るものでありうる。首尾一貫して、OMPアセンブリーはImp欠損の影響を受けないように見えるが、大腸菌(Braun & Silhavy 2002, Mol. Microbiol. 45; 1289-1302)とNme(本発明の研究)の両方において、Imp欠損はOM中のLPSレベルの低下をもたらし、従ってタンパク質対脂質比を変えることを本発明者らはこの度、実証した。また、大腸菌imp遺伝子のミスセンス突然変異は疎水性作用薬に対する感受性の増加をもたらしたという観察(Sampsonら, 1989 Genetics 122; 491-501;Alonoら, 1994, Appl. Environ. Microbiol. 60; 4624-4626)もこれで理解することができる:これらの遺伝子は、OMの完全性(integrity)に影響を与えることが公知の特性であるLPSレベルの低下の影響を受けたと思われる(Nurminenら, 1997, Microbiology 143; 1533-1537)。
【0264】
従来、他の必須OMPであるOmp85がLPS輸送に関わることが示唆されている(Nurminenら, 1997, Microbiology 143; 1533-1537)。しかし、本発明者らは、Omp85欠損株における強いOMPアセンブリー欠陥を実証した(Nurminenら, 2003 Science 299; 262-265)。従って、OMP85のLPSバイオジェネシスに与えるなんらかの効果はImpのミスアセンブリーの結果でありうる。さらに、Omp85の非天然ポーリンとの相互作用の実証(Voulhouxら, 2003 Science 299; 262- 265)、LPS生合成を欠くグラム陰性菌におけるomp85相同体の存在、およびLPS生合成遺伝子を欠くものを除外してグラム陰性菌におけるimpの高保存(本研究)は、全て、Omp85のOMPアセンブリーおよびImpのLPS輸送における直接の役割を主張するものである。Omp85とImpの機能の同定によって、今や、細菌外膜のバイオジェネシスの理解に大きな進歩がなされうる。
【0265】
Impタンパク質は、高保存、細胞表面局在化およびほとんどのグラム陰性菌における必須の役割を照らし合わせると、新規の抗微生物物質を開発するための魅力的な標的である。さらに、ナイセリア属菌imp突然変異体株はワクチン株として有用でありうる。ナイセリア属菌ワクチンは、界面活性剤を用いて処理して大部分のLPSを除去し、ワクチン受給者における毒性反応を防止する処理が施されている外膜小胞から成る。この処置は残念ながら潜在的に重要なワクチン成分、例えば細胞表面露出リポタンパク質も除去する。この方法で調整したワクチンは正常なLPSレベルのほぼ7%を含有する(Fredriksenら, 1991, NIPH Annals 14, 67-79)。本発明者らのデータは、これがimp突然変異体に残るLPSのレベルであることを示す。従って、ワクチン株内のimp遺伝子を欠失することにより、界面活性剤抽出の必要性とそれによる重要なワクチン成分損失の可能性が無くなる。
【0266】
Impタンパク質はimpミスセンス突然変異体の表現型(増加した膜透過性(increased membrane permeability))にちなんで名付けられた。本発明者らがImpの機能を確立した今となっては、本発明者らはこの名称を変更することを提案する。本発明者らは本遺伝子をlpxZと名付けることを示唆し、ここで、呼称lpxをLPSバイオジェネシス遺伝子として使用しかつZはimp遺伝子がLPSバイオジェネシスの最終段階を媒介することを意味するものである。
【0267】
実施例8:プラスミドの構築とMsbA突然変異体株
髄膜炎菌のmsbA遺伝子を破壊するために、本発明者らは株MC58(Tettelin 2000 Science 287 ; 1809-1815)の利用しうるゲノム配列を用いてPCRプライマー(図9)を設計した。簡単に説明すると、msbAの上流および下流の遺伝子の部分(それぞれNMB1918およびNMB1920と呼ぶ)を、PCRによりH44/76のゲノムDNA由来のTaqポリメラーゼおよびプライマー対(primer pair)A/BおよびC/Dを用いてそれぞれ設計した(図9)。両方のPCR産物をpCRII-TOPO中にクローニングしてプラスミドpCRIINMB1918およびpCRIINMB1920をそれぞれ得た。pCRIINMB1918のAccl-Kpnl断片を、Accl-Kpnlで消化したpCRIINMB1920の断片中にライゲートした。得られるプラスミドをAcclを用いて切断してpMB25由来のカナマイシン-耐性カセットの挿入を可能にした(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)。最終構築物はpBTmsbA::kanと呼ばれ、カナマイシン-耐性カセットを元来のmsbA遺伝子と同じ方向で含有した。これをテンプレートとして用いて、PCRによりプライマー対A/Dにより破壊断片を増幅した(図9)。このPCR産物のほぼ200ngを、5mMと共にH44/76またはHB-1細菌に加え、その後これらをプレート上で6時間増殖した。その後、細菌をカナマイシンを含有するプレートに移した。カナマイシン耐性形質転換体における正しい遺伝子置換えをPCRによりプライマー対A/Dを用いて確認した。
【0268】
実験を補完するために、本発明者らは、H44/76ゲノムDNA由来の遺伝子をPCRによりプライマー対E/Fを用い(図9)、High Fidelityキット(Roche)を利用して製造業者のプロトコルに従いクローニングした。PCR産物をpCRII-TOPO中にクローニングし、pEN11(Bosら, 2004)中にNdlおよびAatll制限酵素切断部位の後ろにライゲートしてプラスミドpEN11-msbAを得た。株H44/76由来のmsbA突然変異体をプラスミドおよび5mM MgCl2とともに6時間プレート上で同時インキュベーションすることにより、pEN11-msbAを用いて形質転換した。形質転換体をクロラムフェニコールを含有するプレート上で選択し、そして100μMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを含有するプレート上で繰り返し再ストリークした後、補完実験を行った。全ての酵素は、特に断らない限り、Fermentasから提供を受けた。
【0269】
実施例9:MsbAは髄膜炎菌にとって必須でない
髄膜炎菌株MC58(Tettelinら, 2000)のゲノムおよびZ2491(Parkhillら, 2000 Nature 404; 502-506)をtBlastnプログラム(Altschulら, 1997 Nucleic Acids Res. 25; 3389-3402)のデフォールトサーチマトリックスにより大腸菌MsbAのアミノ酸配列をプローブとして用いて検索した(http://www.ncbi.nih.gov/blast)。MC58遺伝子NMB1919がコードする推定MsbAタンパク質のアミノ酸配列は大腸菌MsbAのそれと32%同一性および52%類似性を提示した。類似の程度の相同性(31%同一性および52%類似性)がZ2491の推定MsbAタンパク質に対して見出された。1つのmsbA突然変異体を髄膜炎菌株H44/76における対立遺伝子置換により構築した(図9)。カナマイシン耐性形質転換体をPCRにより分析してmsbA遺伝子の無傷のコピーの不在およびmsbA::kan対立遺伝子の存在を立証した。正しい形質転換体を高頻度で得たので、大腸菌(Zhouら, 1998 J. Biol. Chem. 273; 12466-12475)とは対照的に、髄膜炎菌においてMsbAは生存にとって必須でないと思われる。
【0270】
実施例10:突然変異体のLPS含量
野生型およびmsbA突然変異体細胞の両方由来のほぼ2.107細胞(550nmにおける1の光学密度(OD550)が1.109細胞/mlを表わす評価法に基づく)から得たプロテイナーゼK-処理した細胞ライセートをトリシン-SDS-PAGEにより分析した(図10A)。野生型株由来の細胞ライセート中のゲル上には明らかにLPSを検出できたが、msbA突然変異体株の細胞ライセート中にはほとんど見られなかった(図10A)。明らかに、msbA突然変異はLPS合成に強い影響を与え、恐らくimp突然変異体で先に観察された輸送経路に留まるLPSにより引き起こされたなんらかのフィードバック抑制機構(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)に因るのであろう。LPS含量を定量するために、本発明者らは、野生型および突然変異体細胞中の3-デオキシ−D-マンノ-2-オクツロン酸(KDO)(LPSの典型的な構造成分)の量を測定した。msbA突然変異体細胞の細胞エンベロープは野生型細胞と比較すると7%のLPS対タンパク質比を含有し、そしてimp突然変異体のLPS対タンパク質比と類似している(図10B)。推定転写ターミネーターがmsbA遺伝子の直ぐ下流に存在するので(図9)、msbA突然変異体中のLPS含量の減少はmsbA遺伝子の不活性の直接の結果であり、下流に位置する遺伝子の突然変異のいずれかの極性効果でないと予想される。この推定を実験で確認した。野生型msbA遺伝子を運ぶプラスミドpEN11-msbAをmsbA突然変異体中に導入すると、LPS対タンパク質比はほぼ野生型レベルに回復する(図10B)。
【0271】
実施例11:増殖の特徴
従来lpxA突然変異体(Steeghs et 1998 Nature 392; 449-450)およびimp突然変異体(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)について記載されているように、msbAヌル突然変異体の作製時間は、指数増殖期中、野生型と比較して著しく低下し、培養物は野生型株と同じ最終ODに到達しなかった(図11)。さらに、16時間、37℃における増殖後に、突然変異体のコロニーはIpxAおよびimp突然変異体のそれらのように(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)野生型のそれらより小さく、そしてそれらはまた野生型により形成されたそれらと比較して乳白色の外観を有した(データは示してない)。興味深いことに、msbA突然変異体のコロニーは、平滑に縁取りされた(smooth-edged)または裂片状に縁取りされた(lobated-edged)コロニーをもつ不均一なものであった(データは示してない)。これらの2つの型のコロニーの比は、指数増殖期に色々なポイントで採取すると、後者が優勢でほぼ1〜ほぼ20まで増加するようであった。液培養中で増殖した髄膜炎菌細胞は、定常増殖期に入った数時間後に図11に示すように自己分解を起こす。これはOMホスホリパーゼA(OMPLA)の活性の結果であると記載されている(M.P. Bosによる提出済みOMPLA報文)。msbA突然変異体の場合、自己分解は遅かった(図11)。細胞は最終的に溶解するが、長いインキュベーション期間の後であって(データは示してない)、この表現型はimp突然変異体についても観察された(研究結果は未開示である)。恐らく、OMPLAは、先に他のOM酵素、すなわち大腸菌のプロテアーゼOmpTについて記載された(Kramerら, 2002 Eur. J. Biochem. 269; 1746-1752)ように、活性のためにLPSが必要であると思われる。
【0272】
実施例12:電子顕微鏡と細胞エンベロープタンパク質プロファイル
突然変異体細胞がなお二重膜を有するかどうかを確認するために、本発明者らは超薄切片を作製してそれらを電子顕微鏡により試験した(図12A、B)。実に、二重膜が明確に観察され、IMとOMが両方ともなお存在することを示した。msbA突然変異が外膜形成を妨げないことは明らかである。さらに細胞エンベロープタンパク質プロファイルを分析すると、msbA突然変異体において主なOMタンパク質PorAおよびPorBの発現が減弱されないことが示された(図12C)。これらの結果はlpxA(Steeghsら, 1998 Nature 392; 449-450)およびimp(Bosら, 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA)突然変異体について得られた結果と同程度である。結論として、msbA突然変異体はなおOMをアセンブルすることができ、PL輸送がmsbA突然変異体で減弱されないことを示す。
【0273】
実施例13:msbA突然変異体のリン脂質組成物
全ての主なPL種がmsbA突然変異体において産生されるかどうかを研究するために、細胞を[14C]酢酸ナトリウムを用いて標識し、PLを抽出して薄層クロマトグラフィ(TLC)により分析した(図13A)。髄膜炎菌は従来、多量のホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルグリセロール(PG)、少量のホスファチジン酸(PA)および微量のカルジオリピン(CL)を産生すると報じられている(Rahmanら, 2000 Microbiology 146; 1901-1911)。msbA突然変異体のPLプロファイルを野生型株のそれと比較すると、PE含量の大きな変化は観察されなかった(図13A)。しかし、TLC系の同じ位置で泳動させたPAおよびCLの量と比較したPGの量は、明らかに減少した(図13A)同じ特徴はimp突然変異体についても見出された(データは示していない)。LPSバイオジェネシス突然変異体のOM中のLPSの不足が、OMを形成する他の脂質成分により補償されたに違いない。msbA突然変異体が野生型細胞より多量のPLを産生するかどうかを研究するために、PLをプレート上で増殖した細胞から抽出し、リンを測定して数値化した。莢膜を持つ野生型H44/76株由来のmsbA突然変異体はPL全量の増加を示さなかった(データは示していない)。しかし、注目すべきは、莢膜を持たないHB-1株のmsbA突然変異体は、その親株と比較して全量PLにかなりの増加(p<0.06)を示した(図13B)。明らかに、この株では、PLレベルの増加はLPSの不足を補償するが、H44/76株のmsbA突然変異体においてはLPSの不足は、外膜の外側リーフレット中の脂質テールを介してアンカリングされた莢膜量の増加により補償されるのであろう。
【0274】
実施例14:大腸菌の温度感受性突然変異体の補完
以上報じた結果は、髄膜炎菌においてMsbAはLPS輸送だけに必要であることを示唆するが、大腸菌においてはMsbAはLPSとPLの両方の輸送に必要であると報じられている(Zhou ら, 1998 J. Biol. Chem. 273; 12466-12475)。この相違は、2種のMsbAタンパク質が重複していて、しかし異なる機能を有すると仮定することにより説明できる。この可能性を試験するために、本発明者らは髄膜炎菌msbAが大腸菌msbA突然変異を補完しうるかどうかを研究した。大腸菌K-12温度感受性msbA株WD2の増殖は44℃にて停止する(Doerrierら, 2001 J. Biol. Chem. 276; 11461-11464)。髄膜炎菌のmsbA遺伝子を含有するpEN11-msbAをWD2中に導入すると、増殖は野生型レベルで完全に回復した(データは示していない)。明らかに、ナイセリア属菌MsbAタンパク質は機能的に大腸菌MsbAを補完することができる。
【0275】
考察
大腸菌の温度感受性msbA突然変異体の分析に基づいて、MsbAはLPSおよびPL輸送の両方に関わることが示唆された(Zhouら, 1998 J. Chem. 273; 12466-12475)。しかし、最近のin vitro分析は、いくつかの他の内在性IMタンパク質とは対照的に、タンパクリポソーム中で再構成されたMsbAはPLフリップ-フロップを刺激しないことを示した(Kolら, 2003 J. Biol. Chem. 278; 24586-24593)。少数の膜貫通へリックスにより特徴付けられるタンパク質のサブセットはタンパク質-脂質界面を経由する脂質移行を促進することが説明された(Kolら, 2004 Biochemistry 43; 2673-2681)。これらのタンパク質は、よりダイナミックな挙動を発揮し、大きい膜タンパク質よりも安定性の低いタンパク質-脂質に作用するので、このプロセスに関わりうる(Kol 2004 Biochemistry 43; 2673-2681)。しかし、その後の周辺質を通過してOMへ輸送するために、IMの外側リーフレットからのPLの放出のためにMsbAが必要である可能性が残る。MsbAがPL輸送にある役割を果たすかどうかを研究するために、本発明者らは、髄膜炎菌がLPS無しで生存する能力を利用した。もしMsbAタンパク質がPLの輸送に必須の役割を有すれば、msbA突然変異体を作製することは不可能であるが、もしその産物がLPS輸送だけに関わるのであれば、その遺伝子は不必要であろうという予想であった。本発明者らは、msbA破壊突然変異体を作製することができ、従ってMsbAのPL輸送における必須な役割は排除されることを見出した。突然変異体はLPSレベルを著しく低下させ、MsbAがLPSバイオジェネシスにある役割を果たすことと一致した。msbA突然変異体におけるLPSのレベルの低下は、imp突然変異体に対して先に報じられたのと同様に、輸送経路に留まるLPS分子によるLPS合成に対するフィードバック調節の結果でありうる(Bos 2004 Proc, Natl. Acad. Sci. USA)。増殖速度は明らかにMsbA突然変異の影響を受けたが、OMはなお存在しかつ主なOMタンパク質プロファイルは野生型のそれと類似であった。全ての主なPLはmsbA突然変異体において産生された。PGの量はいくらか減少したと思われるが、PAとCLの全量はいくらか増加したと思われる。PLプロファイルの変化は、OMからのLPSの損失に対する応答でありうる、というのはimp突然変異体がこの点について同じ表現型を示したからである。さらに、莢膜を欠くHB-1由来のmsbA突然変異体において、PLは過剰生産され、それらはOMの外側リーフレットを形成し、それによりLPSと置換わることができた。同様に、LPSバイオジェネシス遺伝子、htrB(lpxL)(Karowら, 1992 J. Bacteriol. 174; 7407-7418)およびIpxC(Kloserら, 1998 Mol. Microbiol. 27; 1003-1008)における突然変異がより高いPLレベルを生じることが先に大腸菌において示されている。しかし、かかるPL含量の増加は莢膜産生株H44/76のmsbA突然変異体に観察されなかった。先に、莢膜を欠く髄膜炎菌株においてlpxA突然変異を作製することは不可能であることが報じられた(Steeghs 2001 EMBO J. 20; 6937-6945)。恐らく、msbA突然変異体においてなお作られる少量のLPSがこのバックグラウンドで、これらのLPS分子が正しく局在化していなくても、msbA突然変異体の構築を可能にしたと思われる。重要なこととして、髄膜炎菌のmsbA遺伝子を含有する低コピーベクターは大腸菌の温度感受性msbA突然変異体を補完しうる。髄膜炎菌MsbAはLPS輸送だけに関わるので、この結果は大腸菌のMsbAもPL輸送体に必要でないことを示唆する。制限温度にてかかる大腸菌において観察されたIM中のPLの蓄積(Doerrlerら, 2001 J. Biol. Chem. 276; 11461-11464)は、従ってLPS輸送の欠陥の第2の効果として説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】図1はimp突然変異株の構築を示す。(A)野生型(WT)およびimp突然変異体のimp遺伝子座のゲノム組織。NMB0279は、MC58データベース(http://www.tigr.org)において、保存された仮想タンパク質という注釈が付いている。surA遺伝子(生存タンパク質A(survival protein A))はOMPバイオジェネシス(biogenesis)に関わる周辺質シャペロン(periplasmic chaperon)をコードする。rnb:リボヌクレアーゼII。矢印は形質転換に用いたDNA領域を示す。(B)8%SDS-PAGE上で分離しかつ抗Imp抗体を用いて探索した野生型(レーン1)およびimp突然変異体(レーン2)の細胞エンベロープの免疫ブロット。分子量マーカーはkDaで示した。
【図2】図2はNme imp突然変異体の特徴を示す。(A-C)は野生型(A)、imp突然変異体(B)およびIpxA突然変異体(C)細菌のコロニー形態である。コロニーを両眼顕微鏡によりフレキシブルミラーの光る側(shiny side)を用いて観察した。(D)TSB中の野生型(-黒四角-)およびimp突然変異体(-黒三角-)細菌の増殖曲線。
【図3】図3は野生型(レーン1)、imp突然変異体(レーン2)およびipxA突然変異体(レーン3)細菌のタンパク質およびLPSプロファイルを示す。(A、B)細胞エンベロープを、10%SDS-PAGEにより変性(95℃+)または半未変性条件(95℃-)で分析した。ゲルをクーマシーブルーにより染色する(A)かまたはブロットして抗PorA抗体を用いて探索した(B)。(C)等量のプロテイナーゼK処理した全細胞をトリシン-SDS-PAGEで処理し、銀を用いて染色してLPSを可視化した。(D)等容量の増殖培地(100000g上清)をTCAを用いて沈降させ、11%SDS-PAGEで処理してクーマシーブルーを用いて染色した。分子量マーカーを(kDaで)示した。
【図4】図4は野生型Nme膜の等密度スクロース勾配遠心分離後に得た画分の分析を示す。(A)色々な画分中の、屈折計で測定した%スクロース(-黒三角-)およびLDH活性(-黒四角-)。(B、C)それぞれの画分の等容量をTCAにより沈降させ、変性SDS-PAGEで分離して次いでクーマシーブルー染色をするか(B)またはトリシンSDS-PAGEで分離して次いで銀染色によりLPSを可視化した(C)。主要OMPであるPorAおよびPorBの位置を示す。分子量マーカーをkDaで示す。
【図5】図5はLPSの表面アクセシビリティ(surface accessibility)を示す。全てのパネルは、プロテイナーゼK処理を供給前に施したサンプルを含有する銀染色トリシンSDS-PAGEゲルを示す。(A)示した株の全細胞ライセートの等量を同じゲル上に供給した。(B)80μM CMP-NANAの存在もしくは不在のもとで増殖した細菌の細胞エンベロープ。示したものは、細胞エンベロープを電気泳動前にノイラミニダーゼを用いて処理した。(C)80μM CMP-NANAの存在のもとで増殖した無処理の細菌をノイラミニダーゼにより処理し、次いでトリシン-SDS-PAGEで処理した。パネルBおよびCにおいて、野生型サンプルと比較して5倍量のimp突然変異体サンプルを供給した。野生型およびimp突然変異体サンプルは別々のゲル上で電気泳動で処理し、染色して両方の変異体のLPSバンドの光学的可視度を得た。(D)誘導しうるIpxA突然変異体を、示したIPTG濃度+80μM CMP-NANAの存在のもとで増殖した。無傷の細胞を、示したようにノイラミニダーゼで処理した。等量の細胞ライセートを同じゲル上で泳動した。
【図6】図6はナイセリア属菌Impのトポロジーモデルを示す。
【図7】図7は9つの細胞外ループの位置を示すImp(配列番号1)の配列を示す。
【図8】図8は髄膜炎菌Imp配列のアラインメントを示す。
【図9】図9は野生型株および構築したmsbA突然変異体内のmsbA遺伝子座の遺伝組織を示す。突然変異体において、カナマイシン-耐性カセット(KAN)は3'末端の131bp(M)だけを残してmsbAと置き換わる。msbAの破壊処理およびクローニングのために用いるプライマーを矢印で示す。プライマー配列は(A)CCCAAAGCGAAGTGGTCGAA;(B)GTCGACTATCGGTAGGGCGGGAACTG(AccI制限部位に下線を引く);(C)GTCGACGACCGCATCATCGTGATGGA(AccI制限部位に下線を引く);(D)TTCGTCGCTGCCGACCTGTT;(E)TTCATATGATAGAAAAACTGACTTTCGG(NdeI制限部位に下線を引く) ;(F)GACGTCCCATTTCGGACGGCATTTTGT(AatII制限部位に下線を引く)である。予想プロモーター(P)およびターミネーター(T)配列を示す。NMB1918およびNMB1920を用いて示したORFは恐らく、マロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼおよびGMPシンターゼをそれぞれコードする。
【図10】図10はmsbA突然変異体中のLPS含量を示す。A.株HB-1(WT)由来の細胞およびそのmsbA-突然変異体誘導体(ΔmsbA)をプレートから再懸濁し、LPS含量をトリシン-SDS-PAGEにより分析した。B.KDOおよびタンパク質濃度を、H44/76由来の色々な株から単離した細胞エンベロープから測定した。測定したKDO濃度をIpxA突然変異体で測定したバックグラウンド値に対して補正し、そして野生型株におけるLPSとタンパク質濃度の比を100%に設定した。
【図11】図11はmsbA突然変異体の増殖を示す。株HB-1(野生型)およびそのmsbA突然変異体誘導体をプレート上で一夜増殖して5mlのTSBに再懸濁した。OD550を、37℃で180rpmにて攪拌しながらインキュベーション中に毎時間測定した。
【図12】図12はmsbA突然変異体の形態学および細胞エンベロープタンパク質プロファイルを示す。A.H44/76由来のmsbA突然変異体の超薄切片の電子顕微鏡写真を示す。白線で囲んだ矩形内領域を拡大してパネルBに示す。内膜(IM)および外膜(OM)を矢印で示す。スケールは100nmである。C.野生型株H44/76(レーン1)、そのmsbA突然変異体誘導体(レーン2)およびpEN11-msbAを補ったmsbA突然変異体(レーン3)の細胞エンベロープタンパク質プロファイルを示す。PorAおよびPorBを左に示す。
【図13】図13は野生型およびmsbA突然変異体株のリン脂質分析を示す。A.HB-1株(WT)由来の細胞およびそのmsbA突然変異体誘導体(ΔmsbA)を[14C]酢酸を用いて標識し、そしてリン脂質を単離してTLCにより分析した。主要PL種の位置を示す。B.プレート上に増殖した細胞を再懸濁し、そしてOD550に基づいて等量の細胞をPL単離に用いた。PLのリン含量を定量した。野生型量を100%に設定してmsbA突然変異体から単離された量と比較した。平均値は6独立実験値から求めた。
【図14】図14Aは髄膜炎菌由来のMsbAのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。図14BはB. parapertussis由来のMsbAのアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図15A】図15Aは髄膜炎菌由来のMsbAの核酸配列(配列番号3)を示す。
【図15B】図15BはB. parapertussis由来のMsbAの核酸配列(配列番号5)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現が機能的にダウンレギュレートされて外膜中のLPSのレベルが野生型グラム陰性菌と比較して低下したグラム陰性菌。
【請求項2】
但し、グラム陰性菌がImpを発現しかつLPS輸送に関わるタンパク質がImpである、請求項1に記載のグラム陰性菌。
【請求項3】
Imp発現が、imp遺伝子からの発現をダウンレギュレートすることにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項2に記載のグラム陰性菌。
【請求項4】
Imp発現が、Impタンパク質の構造を破壊することにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項2または3に記載のグラム陰性菌。
【請求項5】
Impタンパク質の少なくとも1つの細胞外ループが、異なるタンパク質からの配列を上記ループ中に挿入してキメラタンパク質を作ることにより破壊された、請求項4に記載のグラム陰性菌。
【請求項6】
Impタンパク質の構造が、Impタンパク質の配列の一部分を除去しかつ場合によっては上記配列の一部分を異なるタンパク質からの配列により置き換えてキメラタンパク質を作ることにより破壊された、請求項4または5に記載のグラム陰性菌。
【請求項7】
Impタンパク質の少なくとも1つの細胞外ループの少なくとも一部分が除去されかつ場合によってはキメラタンパク質を作るために異なるタンパク質からの配列により置換えられた、請求項6に記載のグラム陰性菌。
【請求項8】
但し、グラム陰性菌が大腸菌でなくかつLPS輸送に関わるタンパク質がMsbAである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグラム陰性菌。
【請求項9】
MsbA発現が、msbA遺伝子からの発現をダウンレギュレートすることにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項8に記載のグラム陰性菌。
【請求項10】
MsbA発現が、MsbAタンパク質の構造を破壊することにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項8または9に記載のグラム陰性菌。
【請求項11】
細菌がナイセリア属菌株、好ましくは髄膜炎菌である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグラム陰性菌。
【請求項12】
Impタンパク質由来の少なくとも1つの部分および少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分を含んでなる、キメラタンパク質。
【請求項13】
少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がImpの少なくとも1つの細胞外ループ中に挿入された、請求項12に記載のキメラタンパク質。
【請求項14】
Impからの少なくとも1つの細胞外ループの少なくとも1つの部分が欠失しかつ少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分により置換された、請求項13に記載のキメラタンパク質。
【請求項15】
少なくとも1種の異なるタンパク質からのポリペプチド配列に連結されたImpタンパク質からの少なくとも1つの細胞外ループを含んでなる、請求項12に記載のキメラタンパク質。
【請求項16】
Impタンパク質がナイセリア属菌株、好ましくは髄膜炎菌由来である、請求項12〜15のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項17】
キメラタンパク質のImpタンパク質部分が配列番号1の対応する配列と少なくとも80%同一性を共有する配列を有する、請求項12〜16のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項18】
配列番号1の配列と少なくとも60%同一性を共有する配列を有する、請求項12〜17のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項19】
異なるタンパク質由来の一部分がナイセリア属菌タンパク質に対する免疫応答を産生することができるエピトープを含んでなる、請求項12〜18のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項20】
キメラタンパク質が、それが由来する野生型Impタンパク質のLPS輸送体機能と比較して、損なわれたLPS輸送体機能を有する、請求項12〜19のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項21】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ3中に挿入されかつ場合によってはループ3の少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜20のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項22】
配列番号1のアミノ酸357-416に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜21のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項23】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ8中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜22のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項24】
配列番号1のアミノ酸648-697に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜23のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項25】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ6中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜24のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項26】
配列番号1のアミノ酸537-576に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜25のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項27】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ2中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜26のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項28】
配列番号1のアミノ酸295-332に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜27のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項29】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ1中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜28のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項30】
配列番号1のアミノ酸252-271に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜29のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項31】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ5中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜30のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項32】
配列番号1のアミノ酸482-501に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜31のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項33】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ9中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜32のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項34】
配列番号1のアミノ酸721-740に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の1つの部分により置換された、請求項12〜33のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項35】
異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がナイセリア属菌、好ましくは髄膜炎菌タンパク質である、請求項12〜34のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項36】
少なくとも1つの部分がPorA由来である、請求項35に記載のキメラタンパク質。
【請求項37】
2つ以上の部分が髄膜炎菌の異なる血清亜型からの2種以上のPorAタンパク質由来である、請求項36に記載のキメラタンパク質。
【請求項38】
少なくとも1つの部分がHsf由来である、請求項35〜37のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項39】
少なくとも1つの部分がTbpA由来である、請求項35〜38のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項40】
少なくとも1つの部分がTbpA-高分子量由来でありかつ少なくとも1つの異なる部分がTbpA-低分子量由来である、請求項35〜39のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項41】
少なくとも1つのインサート部分がNspA由来である、請求項35〜40のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項42】
少なくとも1つの部分がナイセリア属菌LOSのペプチドミモトープである、請求項35〜41のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項43】
少なくとも1つの部分がHap由来である、請求項35〜42のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項44】
少なくとも1つの部分が肺炎連鎖球菌タンパク質由来である、請求項12〜43のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項45】
異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がその由来する細菌株で表面露出されている、請求項12〜44のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項46】
請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項47】
請求項46に記載のポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクター。
【請求項48】
請求項47に記載の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項49】
LPSのレベルが野生型親株由来の外膜小胞調製物中のLPSレベルと比較して低下し、そして機能的にダウンレギュレートされた、親グラム陰性菌でLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質を含有する外膜小胞調製物。
【請求項50】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のグラム陰性菌もしくは請求項48に記載の宿主細胞由来であるかまたは請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質を含んでなる外膜小胞調製物。
【請求項51】
ImpまたはMsbAが機能的に破壊されていない髄膜炎菌株由来の外膜小胞調製物中のLPSの量と比較して外膜小胞中のLPSの量が低下した髄膜炎菌由来の請求項49または請求項50に記載の外膜小胞調製物。
【請求項52】
LPSのレベルが十分に低いので、毒性が患者に接種するときに容認しうるレベルの反応原性であるレベルまで低下した、請求項49〜51のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項53】
外膜小胞中に存在するLPSが外膜小胞中の外膜タンパク質と小胞内架橋している、請求項49〜52のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項54】
外膜小胞中のリポタンパク質の濃度が界面活性剤を用いない抽出法由来の外膜小胞からのリポタンパク質の濃度と等価である、請求項49〜53のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項55】
キメラタンパク質が発現される条件下で請求項48に記載の宿主細胞を培養する工程および発現されたキメラタンパク質を回収する工程を含んでなる、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質を生産する方法。
【請求項56】
請求項48に記載の宿主細胞または請求項1〜11に記載のグラム陰性菌を培養する工程を含んでなる、請求項49〜54に記載の外膜小胞調製物を生産する方法。
【請求項57】
請求項1〜11に記載のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物、および製薬上許容される担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項58】
ワクチンの形態である、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
さらに1種以上の細菌莢膜多糖またはオリゴ糖を含んでなる、請求項57または58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
1種以上の莢膜多糖またはオリゴ糖が髄膜炎菌血清群A、C、Yおよび/またはW-135、インフルエンザ菌b、肺炎連鎖球菌からなる群から選択される細菌由来であり、そして好ましくはT-ヘルパーエピトープの供給源とコンジュゲートした、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
請求項12〜45のいずれか1項のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれか1項の外膜小胞調製物または請求項57〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することにより、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を予防または治療する方法。
【請求項62】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれ1項に記載の外膜小胞調製物の、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を治療または予防するための医薬品の調製における使用。
【請求項1】
外膜へのLPS輸送に関わるタンパク質の発現が機能的にダウンレギュレートされて外膜中のLPSのレベルが野生型グラム陰性菌と比較して低下したグラム陰性菌。
【請求項2】
但し、グラム陰性菌がImpを発現しかつLPS輸送に関わるタンパク質がImpである、請求項1に記載のグラム陰性菌。
【請求項3】
Imp発現が、imp遺伝子からの発現をダウンレギュレートすることにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項2に記載のグラム陰性菌。
【請求項4】
Imp発現が、Impタンパク質の構造を破壊することにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項2または3に記載のグラム陰性菌。
【請求項5】
Impタンパク質の少なくとも1つの細胞外ループが、異なるタンパク質からの配列を上記ループ中に挿入してキメラタンパク質を作ることにより破壊された、請求項4に記載のグラム陰性菌。
【請求項6】
Impタンパク質の構造が、Impタンパク質の配列の一部分を除去しかつ場合によっては上記配列の一部分を異なるタンパク質からの配列により置き換えてキメラタンパク質を作ることにより破壊された、請求項4または5に記載のグラム陰性菌。
【請求項7】
Impタンパク質の少なくとも1つの細胞外ループの少なくとも一部分が除去されかつ場合によってはキメラタンパク質を作るために異なるタンパク質からの配列により置換えられた、請求項6に記載のグラム陰性菌。
【請求項8】
但し、グラム陰性菌が大腸菌でなくかつLPS輸送に関わるタンパク質がMsbAである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグラム陰性菌。
【請求項9】
MsbA発現が、msbA遺伝子からの発現をダウンレギュレートすることにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項8に記載のグラム陰性菌。
【請求項10】
MsbA発現が、MsbAタンパク質の構造を破壊することにより機能的にダウンレギュレートされた、請求項8または9に記載のグラム陰性菌。
【請求項11】
細菌がナイセリア属菌株、好ましくは髄膜炎菌である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグラム陰性菌。
【請求項12】
Impタンパク質由来の少なくとも1つの部分および少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分を含んでなる、キメラタンパク質。
【請求項13】
少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がImpの少なくとも1つの細胞外ループ中に挿入された、請求項12に記載のキメラタンパク質。
【請求項14】
Impからの少なくとも1つの細胞外ループの少なくとも1つの部分が欠失しかつ少なくとも1種の異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分により置換された、請求項13に記載のキメラタンパク質。
【請求項15】
少なくとも1種の異なるタンパク質からのポリペプチド配列に連結されたImpタンパク質からの少なくとも1つの細胞外ループを含んでなる、請求項12に記載のキメラタンパク質。
【請求項16】
Impタンパク質がナイセリア属菌株、好ましくは髄膜炎菌由来である、請求項12〜15のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項17】
キメラタンパク質のImpタンパク質部分が配列番号1の対応する配列と少なくとも80%同一性を共有する配列を有する、請求項12〜16のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項18】
配列番号1の配列と少なくとも60%同一性を共有する配列を有する、請求項12〜17のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項19】
異なるタンパク質由来の一部分がナイセリア属菌タンパク質に対する免疫応答を産生することができるエピトープを含んでなる、請求項12〜18のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項20】
キメラタンパク質が、それが由来する野生型Impタンパク質のLPS輸送体機能と比較して、損なわれたLPS輸送体機能を有する、請求項12〜19のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項21】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ3中に挿入されかつ場合によってはループ3の少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜20のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項22】
配列番号1のアミノ酸357-416に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜21のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項23】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ8中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜22のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項24】
配列番号1のアミノ酸648-697に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜23のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項25】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ6中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜24のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項26】
配列番号1のアミノ酸537-576に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜25のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項27】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ2中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜26のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項28】
配列番号1のアミノ酸295-332に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜27のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項29】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ1中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜28のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項30】
配列番号1のアミノ酸252-271に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜29のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項31】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ5中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜30のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項32】
配列番号1のアミノ酸482-501に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の一部分により置換された、請求項12〜31のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項33】
異なるタンパク質由来の一部分がImpのループ9中に挿入されかつ場合によってはそのループの少なくとも一部分が欠失した、請求項12〜32のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項34】
配列番号1のアミノ酸721-740に対応するImp配列またはその一部分が欠失しかつ場合によっては異なるタンパク質由来の1つの部分により置換された、請求項12〜33のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項35】
異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がナイセリア属菌、好ましくは髄膜炎菌タンパク質である、請求項12〜34のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項36】
少なくとも1つの部分がPorA由来である、請求項35に記載のキメラタンパク質。
【請求項37】
2つ以上の部分が髄膜炎菌の異なる血清亜型からの2種以上のPorAタンパク質由来である、請求項36に記載のキメラタンパク質。
【請求項38】
少なくとも1つの部分がHsf由来である、請求項35〜37のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項39】
少なくとも1つの部分がTbpA由来である、請求項35〜38のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項40】
少なくとも1つの部分がTbpA-高分子量由来でありかつ少なくとも1つの異なる部分がTbpA-低分子量由来である、請求項35〜39のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項41】
少なくとも1つのインサート部分がNspA由来である、請求項35〜40のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項42】
少なくとも1つの部分がナイセリア属菌LOSのペプチドミモトープである、請求項35〜41のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項43】
少なくとも1つの部分がHap由来である、請求項35〜42のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項44】
少なくとも1つの部分が肺炎連鎖球菌タンパク質由来である、請求項12〜43のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項45】
異なるタンパク質由来の少なくとも1つの部分がその由来する細菌株で表面露出されている、請求項12〜44のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項46】
請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項47】
請求項46に記載のポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクター。
【請求項48】
請求項47に記載の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項49】
LPSのレベルが野生型親株由来の外膜小胞調製物中のLPSレベルと比較して低下し、そして機能的にダウンレギュレートされた、親グラム陰性菌でLPSの外膜への輸送に関わるタンパク質を含有する外膜小胞調製物。
【請求項50】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のグラム陰性菌もしくは請求項48に記載の宿主細胞由来であるかまたは請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質を含んでなる外膜小胞調製物。
【請求項51】
ImpまたはMsbAが機能的に破壊されていない髄膜炎菌株由来の外膜小胞調製物中のLPSの量と比較して外膜小胞中のLPSの量が低下した髄膜炎菌由来の請求項49または請求項50に記載の外膜小胞調製物。
【請求項52】
LPSのレベルが十分に低いので、毒性が患者に接種するときに容認しうるレベルの反応原性であるレベルまで低下した、請求項49〜51のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項53】
外膜小胞中に存在するLPSが外膜小胞中の外膜タンパク質と小胞内架橋している、請求項49〜52のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項54】
外膜小胞中のリポタンパク質の濃度が界面活性剤を用いない抽出法由来の外膜小胞からのリポタンパク質の濃度と等価である、請求項49〜53のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物。
【請求項55】
キメラタンパク質が発現される条件下で請求項48に記載の宿主細胞を培養する工程および発現されたキメラタンパク質を回収する工程を含んでなる、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質を生産する方法。
【請求項56】
請求項48に記載の宿主細胞または請求項1〜11に記載のグラム陰性菌を培養する工程を含んでなる、請求項49〜54に記載の外膜小胞調製物を生産する方法。
【請求項57】
請求項1〜11に記載のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれか1項に記載の外膜小胞調製物、および製薬上許容される担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項58】
ワクチンの形態である、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
さらに1種以上の細菌莢膜多糖またはオリゴ糖を含んでなる、請求項57または58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
1種以上の莢膜多糖またはオリゴ糖が髄膜炎菌血清群A、C、Yおよび/またはW-135、インフルエンザ菌b、肺炎連鎖球菌からなる群から選択される細菌由来であり、そして好ましくはT-ヘルパーエピトープの供給源とコンジュゲートした、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
請求項12〜45のいずれか1項のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれか1項の外膜小胞調製物または請求項57〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することにより、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を予防または治療する方法。
【請求項62】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のグラム陰性菌またはその画分もしくは膜、請求項12〜45のいずれか1項に記載のキメラタンパク質または請求項49〜54のいずれ1項に記載の外膜小胞調製物の、グラム陰性菌感染、好ましくはナイセリア属菌感染を治療または予防するための医薬品の調製における使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2007−515180(P2007−515180A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546095(P2006−546095)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014770
【国際公開番号】WO2005/064021
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【出願人】(505071664)ユトレヒト ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014770
【国際公開番号】WO2005/064021
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【出願人】(505071664)ユトレヒト ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】
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