説明

ワタアブラムシ耐性遺伝子

本発明は、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するVat遺伝子のクローニング、並びにその遺伝子の新しいマーカーの識別に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は害虫、そして特にアブラムシに対する新しい対抗手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
害虫は農業における主な心配事のうちの一つとなるものである。虫自体によって発生する被害の他に、これらの虫の攻撃により、細菌、ウイルスまたは菌類による病気の、植物への伝搬や感染がしばしば助長されている。
【0003】
害虫の中でも、(アリマキとも呼ばれる)アブラムシが最もよく知られている。それは4000種を越え、中でも最も広く分布しているのがモモアカアブラムシ(Myzus persicae)とワタアブラムシ(Aphis gossypii)である。
【0004】
それぞれの種は、独自の生活環と、特に有利な宿主の集合とを持つ。アリマキは極めて活動的な生物であり、環境条件に迅速に適応する。この迅速な適応の本質は、アリマキによって展開されている多様な生殖戦略によるものである。気候条件により、アリマキは有性生殖または無性生殖によって生殖し、卵生または胎生となる。それらは、植物から植物への移動を容易にする翅を持つこともあれば、持たないときもある。このような高度な適応能力と生殖能力により、屋外栽培、そして温室栽培であればなおのこと、全体への蔓延は極めて早い。一つの個体からは40と100の間に含まれる数の幼虫が生み出される。
【0005】
綿花やメロンにつくワタアブラムシは、北方を除き世界の多くの地域に見られる。アブラムシは成長過程を経て、一週間ほどで生殖を行うことが可能である。適応能力と生殖能力により、気象条件に関係なく、ワンシーズンで多くの子孫が生まれる可能性がある。メロンにつくアブラムシの宿主は広範なものである(約700種の栽培されたまたは野性植物であり、そのうちの五十程がフランス国内にある)。これらの宿主の中でも、最も感受性が高いのは、例えばメロン、ズッキーニ、胡瓜を含むウリ科、綿花やハイビスカスのようなアオイ科の植物、そして割合は低いがナス科と柑橘類のようなミカン科である。
【0006】
メロンにつくアブラムシは主に葉の裏側、芽や新梢につく。師管の中の栄養分を吸い取ることで、アブラムシはその植物の資源を奪い取り弱らせてしまう。コロニーを形成された組織は退緑し、葉は巻き込まれて光合成の効率が下がる。アブラムシは非常に糖分に富んだ甘露を分泌し、それは煤病菌のような腐生菌の栄養素となり、該煤病菌は、葉の表面を黒い膜で覆い、それがまた植物の光合成能力を減退させ、被害を受けた野菜や果物の市場価値を大きく下落させる。その上、アブラムシは数多くのウイルスを媒介し、管を刺したときに、植物の師管にそのようなウイルスを直接導き入れる。
【0007】
化学的対抗法が、現状では依然として最も広く行われている。しかしながら、それには多くの欠点がある。使用する薬剤の作用はしばしば広範囲に及ぶものであり、アブラムシと同時に益虫も駆除してしまう。環境汚染の危険もまた大きい:殺虫剤は、実際のところ、ヒト、益獣および環境にとって最も有毒な薬剤の中に数えられるものである(Recueil des effets non intentionnels des produits phytosanitaires,Acta 1998,256p,BERGER et VAN HOLST,2001,environ.Sci.Pollut.Res.Int.,8,109−112)。また、ワタアブラムシが有機リン酸系、カーバメイト系、ピレスロイド系および有機塩素系として用いられる化合物に対する耐性を発達させてしまった地域もある(LARRY et al.the Journal of Cotton Science,5,22−29,2001;DELORME Pesticide Science,49,90−96,1997)。
【0008】
生物学的対抗法は、要するに、例えばテントウムシ、幾つかの半翅目あるいは病原菌のような、ワタアブラムシの野生の補食動物や寄生生物を用いることである。しかしながら、これは温室栽培でしか用いることができない。
【0009】
もう一つのアプローチは、元からアブラムシに耐性のある品種を研究することや、そのような品種を用いた品種改良や雑種の作成に基づくものである。
【0010】
このようにして、アブラムシに耐性のある品種が、特に小麦、林檎木、エンドウ、レタス、トマト等で見いだされた。
【0011】
メロン(Cucumis melo)においては、ワタアブラムシに対する耐性を与える優性な遺伝子座が存在することが、極東やインド原産のメロンの系統で発見された。この遺伝子座は、Ag(ワタアブラムシ耐性のもの)またはVat(アブラムシ伝搬ウイルス耐性のもの)と呼ばれており、ワタアブラムシが植物につくことに対する耐性と、媒介動物であるところのこのアブラムシがウイルスを伝搬することに対して抵抗するものという、二つの耐性表現型を与えるものである(KISHABA et al.,J.Econ.Entomol.,64,935−937,1971;BOHN et al.,J.Amer.Soc.Hort.Science,98,37−40,1973;LECOQ et al.,Phytopathology,69,1223−1225,1979;PITRAT et LECOQ,Phytopathology,70,958−961,1980)。
【非特許文献1】KISHABA et al.,J.Econ.Entomol.,64,935−937,1971
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
耐性に望ましいVat遺伝子座を、交配により、市販されている様々な品種のメロンに導入した。しかしながら、通常の品種改良の技術でアブラムシに耐性のある品種のメロンを作成することは依然として時間も費用もかかる。
【0013】
それゆえ、望ましく思われるのは、Vat遺伝子を精確に識別し、そしてクローニングすることにより、特に、つぎのようなことを可能ならしめることである:
・耐性に望ましいVat対立遺伝子を、遺伝子導入により、ワタアブラムシへの感受性が高い品種のメロンに、そして同様に、このアブラムシへの感受性が高く、元からの耐性がみられたことのない他の種、例えば、ズッキーニ、キュウリまたは綿花に、導入すること。耐性に望ましいVat遺伝子の対立遺伝子を、例えばナス科の植物、特にトマトのような、アブラムシによるウイルス伝搬への感受性が高い植物種に導入してもよい;
・Vat遺伝子のオーソログをメロン以外の種で探求すること;
・特に従来の品種選択技法の枠内で使用可能な、新たなマーカーを明らかにし、それにより、耐性のある品種の識別を容易にし、および/または農学的に利点のある品種のその耐性特性の遺伝子移入の検査をやりやすくすること。
【0014】
Vat遺伝子は、メロンの第五染色体のサブテロメア領域にあることがつきとめられた(PERIN et al.,Theor Appl Genet,104,1017−1034,2002)。耐性遺伝子と相同の配列がこの領域にいくつもマッピングされており(KLINGER et al.,J.Amer.Soc.Hort.Sci.,126,56−63,2001;BROTMAN et al.,Theor.Apl.Genet.,104,1055−1063,2002)、Vat遺伝子はNBS−LRRのスーパーファミリーに属しており、そのうちの多数の耐性遺伝子が現にクローニングされているのではないかということが考えられる。
【0015】
このスーパーファミリーに分類される遺伝子には、ヌクレオチドと結合する部位(NBS:nucleotide binding site)が一つとロイシンに富んだ反復配列(LRR:leucine−rich repeats)が含まれている。NBS−LRRと相同の配列がVat遺伝子座に結合しているのが観察された(KLINGER et al.,J.Amer.Soc.Hort.Sci.,126,56−63,2001)。そのような耐性遺伝子のホモログの中でも、NBS−2、NBS46−7、NBS5aおよびNBS5bの位置がそれぞれVatの4.75、7.5、10および11cMであることがつきとめられた。しかしながら、それら相互の間でVat遺伝子座と共分離しているものはない(BROTMAN et al.,Theor.Appl.Genet.,104,1055−1063,2002)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、ワタアブラムシに対する耐性とそれに媒介されるウイルス伝搬に対して耐性に有利に働くVat対立遺伝子についてホモ接合体であるメロンのゲノムDNAに基づき、BAC(bacterial artificial chromosome)バンクを構築した。本発明者らは、それと並行して、先行技術において知られているマーカーよりも高い精度でVat遺伝子座を囲むマーカーを明らかにした。そのようなマーカーを用いてBACバンクをスクリーニングすると、そのVat遺伝子座全体を完全な形で保有するクローンを識別することができた。
【0017】
そのようなクローンのうちの一つをサブクローニングすると、Vat遺伝子を含む約11000bpのゲノムDNA断片が一つ得られた。この断片の配列は(4つのエクソンは灰色で上線を付け、3つのイントロンは下線を付けて)図1に示しており、それと並んで、添付の配列表にSEQ ID NO:1という番号を付けて示している。対応するcDNA配列も得られ、対応するポリペプチド配列も決定された。cDNA配列とポリペプチド配列は、それぞれ添付の配列表にSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3という番号で示されている。
【0018】
Vat遺伝子のパラログを、以後、Vat−likeと呼ぶことにするが、それもまた、BACバンクから単離された。この得られたVat−like遺伝子の配列は、添付の配列表にSEQ ID NO:4という番号で示されている。cDNA配列と推定されるポリペプチド配列はそれぞれSEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6という番号で示されている。
【0019】
図2は、VatのcDNAとVat−likeのcDNAとの間の配列のアラインメントを示している。VatのcDNAは4422bpからなるが、一方、Vat−likeのcDNAが4233bpしか含まないのは、Vatの配列の3014位と3210位との間に位置する195bpが欠失し、Vat−likeの配列の3649位と3656位との間に位置する6bpが付加されているからである。VatとVat−likeの配列の間で92.4%が一致していることが示されている。
【0020】
図3は、それぞれ1473個のアミノ酸と1410個のアミノ酸からなる、得られたVATタンパク質配列とVAT−likeタンパク質配列のアラインメントを示している。VATとVAT−likeの配列の間の90%が一致していることが示されている。
【0021】
Vat遺伝子とVat−like遺伝子は遺伝的にも物理的にも(17kbの隔たりはあるが)つながりがある。遺伝子組換え植物を、VatとVat−likeとの間で遺伝子解析により識別した。Vat−like遺伝子のみを有する植物はワタアブラムシにコロニー形成されたり、それによりウイルスを伝搬されたりすることに感受性がある。逆にVat遺伝子のみを有する植物はワタアブラムシにコロニー形成されたり、それによりウイルスを伝搬されたりすることに耐性を有する。それゆえ、Vat遺伝子は前述の二つの表現型を与えるのに必要かつ十分である。
【0022】
本発明が対象とする単離したポリヌクレオチドは以下のいずれかから選択されたものである:
a)ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドであり、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%そして更に好ましくは少なくとも95%がSEQ ID NO:3のポリペプチドと一致しているポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
b)ポリヌクレオチドa)に相補的なポリヌクレオチド、
c)ポリヌクレオチドa)またはポリヌクレオチドb)と、ストリンジェントな条件の下で、選択的にハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド。
【0023】
そうでないと断っている場合は別としてヌクレオチド配列またはペプチド配列についてここで示されている同一配列の割合は、基準配列の全体で構成される比較ウィンドウについて得られた値に関連するものであり、該値は、ソフトウエアBLASTシリーズ(ALTSCHUL et al.,Nucleic Acids Res.,25,3389−3402,1997)によって、基準配列の全体で構成されている比較ウィンドウについての初期設定のパラメーターを用いることで得られる。
【0024】
前記ポリペプチドの合成を可能にするゲノム情報を含む一切のポリヌクレオチドを、所定のポリペプチドを「コードする」ポリヌクレオチドとして定義する。
【0025】
このように、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドをコードする本発明にかなうポリヌクレオチドは、特に、配列SEQ ID NO:1のポリヌクレオチドおよび配列SEQ ID NO:2のポリヌクレオチドを含む。
【0026】
本発明はまた、少なくとも10bp、好ましくは少なくとも20bpそしてさらに好ましい仕方では少なくとも50bpの上記ポリヌクレオチドa)またはb)の断片、あるいは上記ポリヌクレオチドa)またはb)とストリンジェントな条件の下で選択的にハイブリダイズすることのできるあらゆる断片を含む。好ましい断片は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:5の配列のヌクレオチドのうちのいずれか一つ、あるいはこれらのポリヌクレオチドまたはそれに相補的なもののいずれか一つとストリンジェントな条件の下で選択的にハイブリダイズすることのできる断片である。他の好ましい断片は、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:5のポリヌクレオチドに存在しない、SEQ ID NO:1かSEQ ID NO:2のポリヌクレオチドのいずれか一つの断片、または、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:5のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることなく、SEQ ID NO:1かSEQ ID NO:2のポリヌクレオチドのうちのいずれか一つと選択的にハイブリダイズすることのできる断片である。
【0027】
所定のポリヌクレオチドについての、ストリンジェントなハイブリダイズ条件は、ポリヌクレオチドの大きさと塩基組成、並びにハイブリダイゼーションの混合物の組成(特にpHとイオン強度)に応じて、当業者によって識別される。一般的には、所定の大きさと配列のポリヌクレオチドについては、ストリンジェントな条件は、同一の反応混合物におけるポリヌクレオチドとその相補配列によって形成されたハイブリッドの融解温度(Tm)よりも、約5℃から10℃低い温度で作業することによって得られる。
【0028】
これにおいて、本発明にかなうポリヌクレオチドa)またはポリヌクレオチドb)と選択的にハイブリダイズすることのできるあらゆるポリヌクレオチドを規定するが、該ポリヌクレオチドは、メロンの核酸バンク(特にゲノムDNAまたはcDNAのバンク)とストリンジェントな条件でハイブリダイズする際に、前記ポリヌクレオチドとの検出可能な(つまりバックグラウンドノイズの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍大きな)ハイブリダイゼーションシグナルを生成するが、前記バンクの他の配列とは、そして特にNBS−LRRファミリーの他のタンパク質をコードする配列とは、検出可能なシグナルを全く生成しない。
【0029】
本発明はまた、本発明にかなうポリヌクレオチドa)もしくはb)またはそれらのポリヌクレオチドの断片から得られるポリヌクレオチドプローブまたは増幅プライマーも対象としている。
【0030】
本発明はまた、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドであって、本発明のプローブかプライマーを用いて前記バンクをスクリーニングすることによって、植物のゲノムDNAバンクまたはcDNAバンクから得ることができるポリペプチドをコードする、あらゆるポリヌクレオチドも含む。
【0031】
これにおいて、特にメロンのVAT遺伝子とは別の対立遺伝子、そして特にワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を与える能力のある他の対立遺伝子、並びにメロン以外の植物、特にズッキーニやキュウリのような他の瓜科植物、そして更に一般的には(例えば綿花などのアオイ科のような)ワタアブラムシがつきやすく、および/または(例えばトマトのようなナス科の)前記アブラムシによるウイルス伝搬に感受性のある植物におけるVat遺伝子のオルトログが含まれる。
【0032】
本発明はまた、植物、そして特にメロンに、ワタアブラムシによるコロニー形成に対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子の有無を検出することのできる遺伝子マーカーも含む。
【0033】
本発明にかなう遺伝子マーカーは、特に以下のマーカーを含む:L273、L246、V681、V1684、V432、GRP805、M8、マーカーE、マーカーD。
【0034】
マーカーEおよびDは、特にPI161375におけるVat遺伝子とVat−like遺伝子を判別するために使用可能なものである。
【0035】
これらのマーカーは、瓜科植物、とりわけメロンにおいて使用可能である。該マーカーEおよびDは、他の植物、例えば綿花のようなアオイ科、またはハイビスカスやトマトのようなナス科植物においても使用可能である。
【0036】
本発明のマーカーはそれぞれ以下のようなプライマーによって規定される。
L273:
F2−B2:GGAGAGAGAATCCGGGACTAAGTGACT(SEQ ID NO:7)
F2−Br:TAACCACCTTTTCCGATCAAATTTCGTAC(SEQ ID NO:8)
L246:
F2−B2 Eco:ATTGATGAATCTACACTCCTCGATCTCTTC(SEQ ID NO:9)
F2 Eco:GAGTTCAATCCATTTCAATGATTTAAGATA(SEQ ID NO:10)
V681:
V681:GGAATCTTGTTGAGGCCGAGAGGG(SEQ ID NO:11)
V681R:GTTGTATATGGCTTCCCTGTAGCC(SEQ ID NO:12)
V1684:
V588:CAACAGGCTCAACAGTGTATTCGG(SEQ ID NO:13)
V551R:GAAGAAGGTGACGAGAGAGATGCC(SEQ ID NO:14)
V432:
V432:AACTTCTCCAACTCCCTCCACTGC(SEQ ID NO:15)
V432R:TTAGAGTGGCAAAGGGAAGATGGG(SEQ ID NO:16)
GRP805:
GRP805:ATCCCCTGTTTCCTTCAACAACCC(SEQ ID NO:17)
GRP805R:AACCCCCAAGAAGAAGAACAACCC(SEQ ID NO:18)
M8:
M8:CCGACGCATCTCCCGACGCGTTGTTG(SEQ ID NO:19)
M8R:TCGTGAAGGGTTTTGGAGAGTGAGAA(SEQ ID NO:20)
マーカーE:
LRR1:CCTTAGAAGAAGATGAAGTCTCCC(SEQ ID NO:21)
LRR842R:CTCCACTCAGAATTGGTAGGTGCC(SEQ ID NO:22)
マーカーD:
LRR915:AACAACTTAGAACCATCTCCCAGC(SEQID NO:23)
LRR1R:GTTGTTGAGAGCAATAGTGTACCC(SEQ ID NO:24)
【0037】
ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有する他の遺伝子マーカーもまた、配列SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2と、ワタアブラムシおよび/またはこのアブラムシによるウイルス伝搬に感受性のある植物から得られたそれらの相同配列とを比較することにより、配列SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2で規定することができ、それにより、これらの配列の間に存在する多型性を検出し、耐性に関連する型と感受性に関連する型とを決定することができる。
【0038】
そのような多型性は、Vat遺伝子のコード領域内に位置し、VATタンパク質のペプチド配列が改変したものとして翻訳される可能性がある。それはまた、Vat遺伝子のコードしない5’領域またはイントロンに位置する多型性である可能性もあり、または、コードは行うがVATタンパク質の配列が改変されたものとしては翻訳されな領域に位置する多型性である可能性もある。
【0039】
このように多型性が識別された場合、それを耐性または感受性の遺伝子マーカーとして用い、そしてこれらの様々な型を判別することができる(核酸プローブ、増幅プライマー、制限酵素のような)手段を規定することも可能である。
【0040】
本発明はまた、本発明にかなう少なくとも一つのポリヌクレオチドまたは少なくとも一つの遺伝子マーカーの利用をも含むものであり、これは、植物にワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子の存在を検出するものである。
【0041】
本発明は特に、植物のワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性または感受性の評価方法を対象とするものであり、該方法は前記植物に存在するVat遺伝子の対立遺伝子型を決定することが含まれていることを特徴とする。
【0042】
本発明はまた上記に規定された検出方法の実施に使用可能なオリゴヌクレオチドプライマーをも対象とするものである。
【0043】
特に本発明は以下のことを対象とする:
・ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性または感受性に関連する少なくとも一つの多型性を含むVat遺伝子の領域を増幅することのできる、一対のあらゆるプライマー、
・上記のマーカーL273、L246、V681、V1684、V432、GRP805、M8、マーカーE、あるいはマーカーDのうちの一つを増幅できるような一対のあらゆるプライマー。
【0044】
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットも対象としている。これらのキットは、場合によっては、増幅反応を行うことのできる試薬に、増幅産物を検出する手段に、一つまたは複数の制限酵素に、および/または増幅のポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロールに関連する、本発明にかなう少なくとも一対のプライマーを含む。
【0045】
本発明はまた、以下も対象とするものである:
・本発明にかなうポリヌクレオチド、そして特に、適切なプロモーターの転写制御の下に置かれた状態で、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、一つの発現カセット、
・本発明にかなう一つのポリヌクレオチドまたは一つの発現カセットを、適切な宿主ベクターに導入することから生じる組換えベクター。
【0046】
本発明はまた、組換えポリペプチドの製造方法をも含んでおり、該方法は、原核細胞または真核細胞である宿主細胞を、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドをコードする本発明にかなうポリヌクレオチドによって形質転換することと、前記細胞によって産生された前記ポリペプチドを回収することを含むことを特徴とする。
【0047】
本発明はまたワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドを対象としており、該ポリペプチドは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%そして更に好ましくは少なくとも95%がSEQ ID NO:3のポリペプチドと一致しており、且つ、前記ポリペプチドの少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、そして更に好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸断片を有している。
【0048】
本発明はまた、本発明にかなうポリヌクレオチドまたは発現カセットによって遺伝的形質転換された宿主細胞をも含むものである。
【0049】
そのような宿主細胞は、真核細胞でも原核細胞でもよい。例として挙げれば、細菌、特に大腸菌またはアグロバクテリウム、例えばサッカロマイセスなどの酵母、動物細胞または、好ましくは、植物細胞である。
【0050】
本発明はまた、本発明にかなうポリヌクレオチドで遺伝的形質転換されたトランスジェニック植物をも含むものである。
【0051】
組換えベクターを構築し、宿主となる細胞または生物を形質転換し、そして組換えタンパク質を産生する従来の技術は、本発明を実施するためにも使用可能である。
【0052】
宿主ベクターと発現を調節する配列の選択は、選択された宿主細胞または宿主生物、そして目的の用途に応じて行われる。
【0053】
本発明にかなうポリヌクレオチドで植物を遺伝的に形質転換することにより、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有するトランスジェニック植物を得ることができる。
【0054】
そういうわけで、本発明は、本発明にかなうポリヌクレオチドを用いて植物のワタアブラムシに対する耐性を増強することをも対象とする。
【0055】
そういうわけで、本発明は更にとりわけワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有するトランスジェニック植物の作成方法をも対象とするものであり、該方法は、前記植物を本発明にかなうポリヌクレオチドで遺伝的形質転換することを含むことを特徴とする。
【0056】
前記植物は、ワタアブラムシに弱い種、特にメロン、胡瓜またはズッキーニのような瓜科植物、または綿花やハイビスカスのようなアオイ科の植物、あるいはワタアブラムシが伝搬するウイルスに感受性が高い種、特にトマトやトウガラシのようなナス科の植物から、有利には選択される。
【0057】
更に、Vat遺伝子の高いレベルでの過剰発現は、メロンあるいは(瓜科、ナス科またはアオイ科の)他の植物種において、更に多様な病原体に対する、植物の構成的な耐性を生じさせることができる。例えば、この過剰発現により、植物は、ワタアブラムシから系統発生的に離れたアブラムシを認識できるようになり、または、一般的な病原体の感染周期を遅らせることのできる弱い構成的な耐性をもたらすことができる。そのために、作成可能なトランスジェニック植物は、Vat遺伝子を強いプロモーター(35S)の制御の下で発現させることができ、そしてそれゆえに、それ自身のプロモーターの制御の下にある場合よりも高いレベルでそれを発現することができる。しかしながら、(例えば細胞死のような)植物の生命活動に有害な影響を避けるために、必然的に遺伝子の発現をそれ自身の最も妥当なレベルに制御する必要がある。
【0058】
植物の遺伝的形質転換は、それ自体、業界では周知の従来の方法によって行うことができる。
【0059】
非制限的な例として、瓜科植物、特にメロンの形質転換についてはGUIS et al.が説明している技術を用いることができる(Biotechnology and Genetic Engineering Reviews,15,289−311,1998;Scientia horticulturae,84,91−99,2000)。綿花の形質転換については、PANNETIER et al.が説明している技術を用いることができる(Euphytica,96,163−166,1997)。トマトの形質転換については、HAMZAおよびCHUPEAUが説明している手順を用いることが可能である(J.Exp.Bot.,44,1837−1845,1993)。
【0060】
他の方法としては、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する増強された耐性を有する植物は、突然変異誘発して、このような耐性をもたらすために必要な改変を前記植物に存在するVat遺伝子の対立遺伝子内に導入することにより、得ることができる。
【0061】
本発明の範囲内で使用可能な突然変異誘発方法は、それ自体、業界では知られている。例えば、D.TAGU(eds INRA 1999)の著作によって説明されている。
【0062】
本発明はまた、本発明にかなう遺伝子導入方法または突然変異誘発方法により得られた形質転換植物、並びにこれらの植物の子孫に関するものである。本発明はまた、これらの植物から得られるもの、例えば植物の器官または組織、細胞、種子などをも含む。
【0063】
本発明は、Vat遺伝子に関連するマーカーの定義、この遺伝子のクローニング、そして前記遺伝子を用いることによってワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有する植物が得られることを示す非制限的な例を参照しつつ、以下の補足説明を読むことにより、更によく理解される。
【実施例1】
【0064】
遺伝的アプローチによるVAT遺伝子の識別:
【0065】
・BACバンクの作成
【0066】
約29個のゲノム相当物を有するメロン(ワタアブラムシおよび/またはこのアブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有する品種PI161375)のゲノムDNAのBACバンクを構築した。BACバンクの第一の部分は66048個のクローン(BamHI、HindIIIで消化されるDNA)を、第二の部分は56448個のクローン(EcoRIで消化されるDNA)を有する。
【0067】
・BACバンクのスクリーニングとVat遺伝子座を有するBACクローンの選択
【0068】
Vat遺伝子を有するクローンを識別するために、バンクを、Vat遺伝子座の両脇にあるマーカーを用いてスクリーニングした。Vat遺伝子座をカバーする複数のBACクローンを識別してアラインした。これらのBACクローンから新しいマーカーを作成した。Vat遺伝子座を含む170kbのインサートを有するBACクローン3.18.9を、Vat遺伝子の識別のために選択し、ついで配列決定した。このクローンは、Vat遺伝子座を囲むマーカーL273およびL246を含む。戻し交配の個体群〔(Vedrantais(感受性あり)×PI161375(耐性あり))×Vedrantais〕から得られた6000の植物のうち、マーカーL273とVat遺伝子の間では十本の組換え植物が識別されたのに対し、マーカーL246とVat遺伝子の間では一つの組換え植物だけが識別された。
【0069】
マーカーL273は、以下のプライマーによって規定される:
F2−B2:GGAGAGAGAATCCGGGACTAAGTGACT(SEQ ID NO:7)およびF2−Br:TAACCACCTTTTCCGATCAAATTTCGTAC(SEQ ID NO:8)。
【0070】
(ワタアブラムシに感受性がある)品種Vedrantais(Vilmorin)または(ワタアブラムシに耐性がある)品種PI161375(INRAが増殖した韓国のアクセッション)番号のゲノムDNAから得られた増幅産物の長さは、210bpである。増幅産物は、品種PI161375に制限部位BsiWIを有し、それにより、181bpと29bpの二つの断片が得られる。他方、酵素BsrGIによる消化は、Vedrantaisの増幅産物を三つの断片、即ち153bp、28bpおよび29bpに小さくし、PI161375の増幅産物を、二つの断片、即ち182bpと28bpに小さくする。
【0071】
マーカーL246は、以下のプライマーによって規定される:
F2−B2 Eco:ATTGATGAATCTACACTCCTCGATCTCTTC(SEQ ID NO:9)およびF2 Eco:GAGTTCAATCCATTTCAATGATTTAAGATA(SEQ ID NO:10)。
【0072】
品種Vedrantaisまたは品種PI161375のゲノムDNAから得られた増幅産物の長さは、173bpである。品種PI161375の増幅産物は、それぞれ144bpと29bpの二つの断片を得ることを可能にする酵素EcoRVの制限部位を有する。
【0073】
間隔を狭め、Vat遺伝子の範囲を精確に限定するために、二つのマーカーL273とL246を有するBACクローン3−18−9から、これらの二つのマーカーの間に含まれる領域内のオリゴヌクレオチド(表1)を指定した。
【0074】
マーカーV432は、以下のプライマーによって規定される:
V432:AACTTCTCCAACTCCCTCCACTGC(SEQ ID NO:15)およびV432R:TTAGAGTGGCAAAGGGAAGATGGG(SEQ ID NO:16)。
【0075】
品種Vedrantaisまたは品種PI161375のゲノムDNAから得られた増幅産物の長さは、432bpである。品種PI161375の増幅産物は、それぞれ223bpと209bpの二つの断片を得ることを可能にする酵素HaeIIの制限部位を有する。
【0076】
この制限部位は品種Vedrantaisにはないものである。
【0077】
マーカーV681は、以下のプライマーによって規定される:
V681:GGAATCTTGTTGAGGCCGAGAGGG(SEQ ID NO:11)およびV681R:GTTGTATATGGCTTCCCTGTAGCC(SEQ ID NO:12)。
【0078】
品種Vedrantaisまたは品種PI161375のゲノムDNAから得られた増幅産物の長さは、681bpである。品種PI161375の増幅産物は、それぞれ435bp、221bpおよび25bpの三つの断片を得ることを可能にする、二つの酵素RsaI制限部位を有する。これらの制限部位は品種Vedrantaisにはないものである。
【0079】
マーカーV1684は、以下のプライマーによって規定される:
V588:CAACAGGCTCAACAGTGTATTCGG(SEQ ID NO:13)およびV551R:GAAGAAGGTGACGAGAGAGATGCC(SEQ ID NO:14)。
【0080】
品種Vedrantaisで増幅された断片の長さは約1300bpであるのに対し、品種PI161375では増幅産物の長さは1684bpである。この場合、大きさに多型性があることが問題である。
【0081】
そのようなマーカー並びにマーカーD、E、およびM8(以下の実施例4参照)とそれらを規定するオリゴヌクレオチドは、以下の表1に示されている。
【0082】
【表1】

【0083】
これらのオリゴヌクレオチドの組み合わせ(表2)を、交配〔F1(Vedrantais×PI161375)×Vedrantais〕により生じ、Vat遺伝子座(locus Vat)の近傍で組換えが発生する、戻し交配した植物のDNAを増幅するために用いた。
【0084】
その結果を以下の表2と図4に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
このような結果により以下のことが明らかになる。
植物P26 64は、マーカーV432とVat遺伝子との間に組換えが発生していることを示す。
植物P49 40では、マーカーL246とVat遺伝子との間に組換えが発生していることを示す。
植物P10 35は、マーカーV1684とVat遺伝子との間に組換えが発生していることを示す。マーカーV1684にVat遺伝子のATGが含まれているため、この植物は、遺伝子の機能を無効にする遺伝子内組換えを示す。
マーカーV681はVat遺伝子と共分離する。
【0087】
それゆえ、これらのデータは、Vat遺伝子を遺伝的に識別することを可能にする。
【実施例2】
【0088】
Vat遺伝子配列のサブクローニングと検証
【0089】
Vat遺伝子のサブクローニングをベクターpGEM(登録商標)3Zf+(Promega)内で行った。このために、BACクローン3−18−9を制限酵素MscIによって消化した。それにより生じたそれぞれの断片をベクターpGEM(登録商標)3Zf+(Promega)内に連結させ、つぎにVat遺伝子を囲むまたはこの遺伝子の内部にあるマーカーでスクリーニングした。
【0090】
Vat遺伝子を含む18185bpのクローンが識別された(クローンC7.1)。酵素による切断のクローンC7.1の末端の配列決定、並びに表1のオリゴヌクレオチドによるVat遺伝子の配列決定によって、それが確かにVat遺伝子についてのものであることの検証が可能となった。このクローンの11097bpの部分の配列を、図1並びに添付の配列表に示す(SEQ ID NO:1)。
【実施例3】
【0091】
Vat遺伝子のcDNAを得る
【0092】
cDNAをMarathon(登録商標)cDNAクローン・キット(Clontech社)で得た。このcDNAを添付の配列表に、番号SEQ ID NO:2で示した。
【0093】
Vat遺伝子は4個のエクソンと3個のイントロンを有する。
第一のエクソンは2367bpであり、(SEQ ID NO:1の2344位に対応する)開始コドンATGの1番目の塩基から(SEQ ID NO:1の4710位に対応する)2367番目の塩基にまで伸びている。
第一のイントロンは、2368番目の塩基から2921番目の塩基(SEQ ID NO:1では4711から5264)まで伸びている。
第二のエクソンは、2922番目の塩基から4055番目の塩基(SEQ ID NO:1では5265から6398)まで伸びている。
第二のイントロンは、4056番目の塩基から4876番目の塩基(SEQ ID NO:1では6399から7219)まで伸びている。
第三のエクソンは、4877番目の塩基から5734番目の塩基(SEQ ID NO:1では7220から8077)まで伸びている。
第三のイントロンは、5735番目の塩基から5833番目の塩基(SEQ ID NO:1では8078から8176)まで伸びている。
第四のエクソンは、5834番目の塩基から5896番目の塩基(SEQ ID NO:1では8177から8239)まで伸びている。
【実施例4】
【0094】
Vat遺伝子とVat−like遺伝子の間の判別
【0095】
前述のスクリーニングの際に、Vat遺伝子のホモログ(Vat−like)を有するクローンを識別した(核レベルで93.8%、そしてタンパク質レベルで89.9%が一致する)。Vat−likeの配列を添付の配列表に番号SEQ ID NO:4で示す。
【0096】
Vat遺伝子とVat−like遺伝子は距離が17kbなので、遺伝的にも物理的にも結びついている。
【0097】
二つのマーカー(マーカーDおよびマーカーE)により、PI161375におけるVat−like遺伝子からVat遺伝子を判別することができる。
【0098】
マーカーEは、以下のプライマーによって規定される:
LRR1:CCTTAGAAGAAGATGAAGTCTCCC(SEQ ID NO:21)およびLRR842R:CTCCACTCAGAATTGGTAGGTGCC(SEQ ID NO:22)。
【0099】
このマーカーは、PI161375において、Vat遺伝子に対応する1722bpの断片とVat−like遺伝子に対応する1527bpの断片の増幅を可能にする。
【0100】
品種VedrantaisのゲノムDNAから得られる増幅産物の長さは、アガロースゲル上で約1.3kbである。
【0101】
マーカーDは以下のプライマーによって規定される:
LRR915:AACAACTTAGAACCATCTCCCAGC(SEQ ID NO:23)およびLRR1R:GTTGTTGAGAGCAATA GTGTACCC(SEQ ID NO:24)。
【0102】
このマーカーは、PI161375において、Vat遺伝子に対応する1549bpの断片とVat−like遺伝子に対応する1372bpの断片を増幅することを可能にする。Vedrantaisにおいては、このマーカーは、約750bp、900bp、1100bp、1300bpの4つのDNA断片の増幅を可能にする。
【0103】
マーカーL246およびM8は、Vat遺伝子とVat−like遺伝子との間の組換え体を解析し、そしてそれら二つの遺伝子を遺伝的に判別することを可能にする。
【0104】
マーカーM8は、以下のプライマーによって規定される:
M8:CCGACGCATCTCCCGACGCGTTGTTG(SEQ ID NO:19)およびM8R:TCGTGAAGGGTTTTGGAGAGTGAGAAA(SEQ ID NO:20)。
【0105】
品種VedrantaisとPI161375のゲノムDNAから得られた増幅産物の長さは、228bpである。品種PI161375の増幅産物は、それぞれ195bpと33bpの二つの断片を得ることを可能にする酵素AatIIの制限部位を有する。
【0106】
実際、Vat遺伝子とVat−like遺伝子との間の組換え植物を、戻し交配による個体群〔F1(Vedrantais×PI161375)×Vedrantais〕の中で識別した。Vat−like遺伝子だけを有する植物はワタアブラムシに感受性が高く、それは例えば(表2の)植物848である。逆に、Vat−like遺伝子を有さない植物はワタアブラムシに耐性があり、それは例えば(表2の)植物P4940である。
【実施例5】
【0107】
Vat遺伝子を含む発現ベクターの構成
【0108】
特にキメラNOS/NPTII遺伝子、カナマイシン耐性を選択するマーカー、およびプロモーターp35Sを含む、バイナリーベクターpBin61(BENDAHMANE et al.,The Plant Journal 32,195−204,2002;http://www.sainsbury−laboratory.ac.uk/davidbaulcombe/Services/pBin61.docでも配列が入手可能)に、自身のプロモーターがないVat遺伝子のゲノムDNAを導入する。センス方向のVat遺伝子はp35Sプロモーターの後に導入する。ベクターpBin61は、根頭癌腫病菌(Agrobacterium tumefaciens)の様々な株(LBA4404,C58C1−pch32)に導入する。
【0109】
他の方法としては、Vat遺伝子の上流と下流を含んだ約2.5kbの長さの完全なゲノムDNAを、プロモーターと調節配列の存在を確実に存在させるために、ベクターSLJ7292(JONES et al.,Transgenic Research,1,285−30297,1992)とpBin 19(BEVAN et al.,Nucleic Acids Res12:8711‐8721,1984)の平滑末端に導入する。Vat遺伝子を含むバイナリーベクターSLJ7292とpBin 19を、根頭癌腫病菌の様々な株(LBA4404、C58C1‐pch32、C58C1‐pMP90)(SCHWEITZER et al.,Plasmid,4(2),196−204,1980;GOODNER et al.,Science,294(5550),2323−2328,2001)、またはC58pGV2260(DEBLAERE.et al.,Nucleic Acids Res.13,4777−4788,1985)に導入する。
【0110】
表3は植物に応じて用いる構成を示す。
【0111】
【表3】

【実施例6】
【0112】
メロンにおける機能的有効性の検証
【0113】
・遺伝子的形質転換したメロンの植物体を得る
【0114】
一連の手順は、GUIS et al.(Scientia Horticulturae,84,91−99,2000)のものを用いた。
【0115】
品種Vedrantais(VILMORIN)の感受性のあるメロンの葉の若い外植体を、根頭癌腫病菌(106から108細胞/mL)の懸濁液の中で30分間、攪拌しながらインキュベートする。例5で説明した構成で形質転換を行う。
【0116】
それから、形質転換されている可能性のある外植体を、続いてワットマン紙No.1の上に10分間移し、つぎに、1μMの6−ベンジルアミノプリン(BAP)、1μMの6−(g,g−ジメチルアリルアミノ)−プリン(2iP)、0.2mMのアセトシリンゴン、そして0.7g・L-1の寒天を含む共培養培地で、27℃の暗所で2日間インキュベートする。
【0117】
いくつかの修正を加え、KATHAL et al.(Plant Cell Reports,7,449−451,1988)が説明する条件を用いて葉の植体を再生させる。葉の外植体は、1μMの6−ベンジルアミノプリン(BAP)、1μMの6−(g,g−ジメチルアリルアミノ)−プリン(2iP)を加え、100mg・L-1のカナマイシンと225mg・L-1のtimentinを含む、寒天0.7g・L-1の中で固化させた、MURASHIGE&SKOOG(MS)培地(Physiol.Plant,15,473−497,1962)で構成される再生培地の上に移す。
【0118】
3週間の培養の後、葉状の外植体に形成された芽を切除し、1μMのBAPと0.3μMのジベレリン酸(GA3)を加え、100mg・L-1のカナマイシンと225mg・L-1のtimentinを含む、寒天0.7g・L-1の中で固化させた、MS培地で構成される成長培地の上でインキュベートする。
【0119】
それから、芽を、成長調整剤を含まず、同量の抗生物質と寒天を含むMS培地で構成される発根培地の中に置く。
【0120】
発根が現れるとすぐに、それらの幼植物をGUIS et al.(Scientia Horticulturae,69,199−206,1997)に従って順化させ、AYUB et al.(Nature Biotechnology,14,862−866,1996)が説明している培養手順により温室に移す。
【0121】
再生し発根した植物体をフローサイトメトリーによって分析する。二倍体の植物体だけを保存し、導入遺伝子の存在を検証するためにPCRにより分子レベルで研究する。
【0122】
Vat遺伝子の存在を明らかにするために、実施例1で説明したような、Vatのプロモーターのところに位置する一対のV1684プライマー(SEQ ID NO.13および14)とVat遺伝子の中央に位置する一対のプライマーD(SEQ ID NO.23および24)を用いる。
【0123】
PCRの条件は以下の通りである:
反応混合物:qsp水10μL;10×緩衝剤1μL;dNTP’s(4mM)0.6μL;プライマー1(10pM)0.4μLおよびプライマー2(10pM)0.4μL;Takara Taq(5U/μL)0.08μL;DNA1.2μL。
・用いたPCR条件:
手順1:94℃で2分
手順2変性:94℃で30秒
手順3対合:60℃で45秒
手順4伸長:72℃で2分
手順5:手順2から手順4までを30回繰り返す
手順6:72℃で10分
【0124】
b−カナマイシン耐性遺伝子nptIIの存在を明らかにするために、プライマー
Kana II:5’−CCGGCTACCTGCCCATTC−3’(SEQ ID NO:25)および
Kana III:5’−GCGATAGAAGGCGATGCG−3’(SEQ ID NO:26)
を、以下の条件で用いた。
反応混合物:qsp水10μL;10×緩衝剤1μL;MgCl2(25mM)0.6μL;dNTP’s(4mM)0.2μL;プライマー1(10pM)0.4μLおよびプライマー2(10pM)0.4μL;Promega Taq(5U/μL)0.04μL;DNA1.2μL。
・用いたPCR条件:
手順1:94℃で2分
手順2変性:94℃で30秒
手順3対合:53℃で1分
手順4伸長:72℃で1分
手順5:手順2から手順4までを30回繰り返す
手順6:72℃で10分
【0125】
c−研究対象の組織中に残った細菌の存在による増幅は一切発生していないことを検証するために、根頭癌腫病菌のC58株の染色体DNAに特有のPicA+プライマー(ATGCGCATGAGGCTCGTCTTCGAG;SEQ ID NO:27)およびPicA-プライマー(GACGCAACGCATCCTCGATCAGCT;SEQ ID NO:28)を用いてPCRで植物体も試験する。反応混合物とPCR条件は、nptII遺伝子に対して使用したものと同一である。
【0126】
例5に示した様々な構成から、メロンでいく通りもの形質転換を行う。そのような形質転換の結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
遺伝子型VedrantaisのVat遺伝子をもつ二つの形質転換体は、最初の手順によって得られた。
【0129】
発根した二倍体の植物体を抗生物質を除いた培地の上でin vitroで発根させ、つぎに分離して、環境制御した部屋(18℃で8時間の夜‐24℃で16時間の昼)で4週間、生物学的試験の前に順化させる。
【0130】
他の方法として、欧州特許第0412912号明細書(LIMAGRAIN)に記載されている子葉を有する外植体の遺伝的形質転換方法にも従った。C1Tz1のメロン遺伝子型の約10000の外植体を、構成pVat−Vat遺伝子の構成を有する細菌C58C1pmp90で感染させた。100mg・L-1のカナマイシンを与えた培地上で再生し発根した植物体をPCRで分析して、導入遺伝子nptIIおよびVatの存在を検証した。用いたプライマーとPCR条件は上記に説明した通りのものである。27の形質転換の事象を、nptII遺伝子をもつものとして識別した。
【0131】
結局のところ、遺伝子型VedrantaisのVat遺伝子をもつ2つの形質転換体が最初の手順により得られ、27の形質転換体がその第二の手順により得られた。
【0132】
・ワタアブラムシによるコロニー形成に対する耐性の測定
【0133】
メロンの上で収集され(G.LABONNE,INRA,Montpellier)、クローン13と記載された(LUPOLI et al.,Entomologia Experimentalis et Applicata,65,291−300,1992)、Nmlクローンを用いる。ワタアブラムシを培養室(24℃で16時間の昼そして18℃で8時間の夜)内のメロンVedrantaisの上で育てる。
【0134】
遺伝的形質転換の実験により、および比較対照用の植物体をin vitroで発芽させることにより生じた、in vitroの植物体を、in vivoで10日間、順化させた。
【0135】
ワタアブラムシによるコロニー形成に対する耐性の試験を、PITRATおよびLECOQに適応させた(Phytopathology,70,958−961,1980)。無翅成虫を細いピンセットで採取し、ペトリ皿の中で1時間絶食させる。試験対象のそれぞれの植物体の広げた二枚の葉の上に十匹のアブラムシを置く。置いてから48時間後に、葉の上に定着したアブラムシの数を適合できるようにする。48時間目で、感受性のある植物の上に置かれた10匹のアブラムシが定着しているのに対し、耐性のある植物の上には、(一般的には5を下回る数の)数匹しか葉の上に残っていない。つぎに蔓延させてから7日後に、成虫と幼虫のアブラムシの数、並びにそれらの成育段階を観察する。感受性のある植物では、この期間が経過した後、新しい世代のアブラムシが(平均して100匹を越える数)発生し、数多くの幼虫が(同じく100を越える数)存在している。耐性のある植物では、(一般的には5未満の数の)数匹の成虫が葉の上に残っており、余り成長していない幼虫が(30を下回る数の)数匹だけ存在している。それぞれの試験において、感受性のあるものとして比較対照に用いるのは品種Vedrantaisであり、耐性のあるものとして比較対照用に用いるのは、Vat遺伝子座についてのホモ接合体である品種Margotである。
【0136】
得られた結果を表5と6に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
他の方法として、試験対象の各植物の葉に10匹ではなく3匹のアブラムシを置いてもよい。それらのアブラムシはケージに入れてもいれなくてもよい。アブラムシを置いてから七日後に、植物の上にいるアブラムシの成虫と幼虫の数を数える。
【0140】
そうして得られた結果を表7に示す。
【0141】
【表7】

【0142】
これらの結果により明らかなように、クローンM1、M4、V2.15、V3.1、V3.6、V4.18およびV7.19は、アブラムシに対して耐性がある。
【0143】
・ワタアブラムシによるウイルス感染に対する耐性の測定
【0144】
ウイルス感染の試験は、主にPITRATとLECOQが説明しているように行う(Phytopathology,70,958−961,1980)。CMV(Cucumber Mosaic Virus)のI17F株を、形質転換植物ならびに比較対照用のVedrantais系統およびMargot系統におけるワタアブラムシによる伝搬の試験に用いてもよい。ウイルスを機械的に接種することにより、メロンVedrantaisで増殖させる。1時間の絶食の後に、ウイルスに感染させてペトリ皿に置いた葉の上にアブラムの成虫を5分間置いて、ウイルスを付着させる。それからそれらのアブラムシを試験対象の植物の上に移す。病原体を有するアブラムシを置いて約15分経過後に、そのアブラムシ達をピンセットで取り除き、植物を殺虫剤で処理して、培養室(24℃で12時間の昼そして18℃で12時間の夜)に置く。接種から十五日後、ワタアブラムシによるCMVの感染に感受性のある植物は重篤なモザイク症状を進行している。耐性のある植物は何の症状も示しておらず、そのような植物でELISAを行ってもウイルスは検出されない。ELISA試験は、CLARKおよびADAMSが記述した手順(J.Gen.Virol,34,475−483,1977)に従って、CMVのキャプシドタンパク質に対する抗体(フランス、ボルドーのLCA社提供のADGEN)を用いて行う。
【実施例7】
【0145】
トマトにおける機能的有効性の確認
【0146】
トマトの形質転換
【0147】
形質転換の手順は、Ferum(INRA系統)およびMontfavet 63.5(F1雑種)の複数の遺伝子型の子葉に基づき、P.Rousselle(INRA,Montfavet,France)がHAMZAおよびCHUPEAU(J.Exp.Bot.,44,1837−1845,1993)のものを適合させたものである。
【0148】
形質転換のために用いる株は例5で説明されているものである。再生させて発根させた植物体をフローサイトメトリーで分析し、二倍体の植物体だけを保存する。
【0149】
nptII遺伝子とVat遺伝子を含むインサートが存在すること、並びに再生した植物体のゲノムの中でそれが発現していることを検証するための分子分析を、PCRとRT−PCRで行う。用いたPCR条件は例6で説明されているものと同様である。四対のプライマーを用いた:Vatプロモーターのところに位置するV1684(SEQ ID No.13およびSEQ ID No.14)、Vat遺伝子の中央に位置するマーカーD(SEQ ID No.23とSEQ ID No.24)およびマーカーE(SEQ ID No.21とSEQ ID No.22)のプライマー対、およびその遺伝子の3’に位置する断片を増幅するプライマーV632。プライマーV632の配列は以下の通りである:
Vat632R:CTGGTGATGACATTCATATCTTCC(SEQ ID NO:29)
Vat632F:CCCAGCAACATACTGATTCCAAGC(SEQ ID NO:30)。
【0150】
トマトについて、(表8のような)様々な構成に基づいて、そして二つの異なる遺伝子型FerumおよびMontfavet(INRA)について、複数の形質転換を行う。
【0151】
【表8】

【0152】
(例6で説明した条件で)マーカーDのプライマー対を用いてT7植物体と比較対照用のFerumについてRT−PCRにより分子分析を行うことにより、形質転換をした植物体(T7)におけるVat遺伝子の発現を明らかにすることができた。
【0153】
遺伝子型Montfavetの形質転換をした植物体について用いた全てのプライマーにより、その導入遺伝子の全体が組み込まれた様々な外植体から生じる14の植物体を決定することができる。
【0154】
結局のところ、遺伝子型Ferumの植物体2つと遺伝子型Montfavet63.5の植物体14個にVat遺伝子が組み込まれた。
【0155】
形質転換をした植物体のみを発根させ、分離して、環境制御した部屋(夜は18℃で8時間−昼は24℃で16時間)で4週間、生物学的試験の前に順化する。今日までのところ分析したのはFerumの植物体二つのみである。
【0156】
・ウイルス感染の測定
【0157】
ワタアブラムシの系統(Nml)とワタアブラムシによる感染の手順は、メロンでのウイルス感染に対する耐性の試験と同一のものを用いる。選択したウイルスは、メロンとトマトに感染するI17F株であるCMV(キュウリモザイクウイルス)である。この株は、機械的に接種するか、モモアカアブラムシによって媒介される場合に(JACQUEMOND et al.,Molecular Breeding,8(1),85−94,2001)、効率的にトマトに感染させることができる。このウイルスをメロンVedrantaisの幼植物の上で増殖させる。ワタアブラムシによるCMVの付着を、感染したメロンの幼植物の上で行う。伝搬は病原体を有する10匹のアブラムシを、in vitroで得られた5葉期のトマトの幼植物の上に、または苗床から得られた2葉期の幼植物(播種の約5週間後)の上に置くことで行われる。それぞれの遺伝子型(比較対照用トマトと形質転換トマト)についての伝搬率は、20の植物体に少なくとも2回繰り返すことで評価する。感受性のある比較対照用の品種は、品種Ferumである。
【0158】
ELISAテストは、CLARKおよびADAMSが記述した手順(J.Gen.Virol.,34,475−483,1977)に従って、CMVのキャプシドタンパク質に対する抗体(フランス、ボルドーのLCA社提供のADGEN)を用いて行う。
【0159】
少数の植物体について得られた最初の結果を表9に示す。
【0160】
【表9】

【0161】
一部が欠けたVat遺伝子を有する符号T1の植物体と感受性のある比較対照用の植物体は、100%感染した。符号T2およびT7の形質転換した幾つかの植物体でウイルスは伝搬されておらず、このことは、Vatを組み込んだトランスジェニックトマトにおいて、Vat遺伝子がワタアブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性の効果を有すること暗示する。
【実施例8】
【0162】
綿花における機能的有効性の確認
【0163】
綿花の形質転換
【0164】
綿花(Gossypium hirsutum L.)の遺伝的形質転換は、SHOEMAKER et al.(Plant Cell Reports,3,178−181,1986)およびTROLINDERおよびGOODIN(Plant Cell Reports,6,231−234,1987)によって発表された体細胞胚形成法による形質転換体の再生に基づいて行う。この形質転換方法で形質転換ベクターとして用いる根頭癌腫病菌は、UMBECK et al.(Biotechnology,5,263−266,1987)およびFIROOZABADY et al.(Plant Molecular Biology,10,105−116,1987)によるものに、上記の出版物との関係で幾つかの修正を加えて適合させたものである。その形質転換に用いるアグロバクテリアの株は、例5で説明したものと同様であり、そして特にLBA4404株、C58C1pGV2260株およびC58C1pMP90株である。最初の株は、Nosプロモーターの制御下にあるカナマイシン耐性遺伝子および自身のプロモーターの制御下にあるVat遺伝子でとりわけ構成されたpSLJ7292プラスミド、あるいは35Sプロモーターの制御下にあるVat遺伝子を含むpBin61プラスミドを含む。他の二つの株は、Nosプロモーターの制御下にあるカナマイシン耐性遺伝子および自身のプロモーターの制御下にあるVat遺伝子でとりわけ構成されたpBin19プラスミドを有する。
【0165】
・綿花の再生
【0166】
無菌状態で栽培された若い植物体から採取した胚軸(品種Coker 310)の外植体を用いる。それらをアグロバクテリアの存在の下に20分間置き、つぎにMURASHIGE&SKOOG(MS)の無機元素、30gL-1のグルコース、MOREL&WETMORE(Am.J.Bot.38,141−143,1951)のビタミン、0.1から0.05mgL-1の2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、そして0.1から0.01mgL-1のカイネチンから構成される培養培地(基礎培地)で、48時間培養する。この培地は、細菌の成育を止めるための選択剤も抗生物質も含まない。この共培養期間の後、同一の培地に濃度が25mgL-1のカナマイシンと濃度が500mgL-1のセフォタキシムを加えたものに、外植体を移植する。続いて、15日ごとに同様の培地に外植体を移植する。3から5週間培養した後、形質転換細胞の増殖に由来するカルスが現れる。それらの大きさが直径約0.5cmに達すると、それらを単離して、セフォタキシムの濃度を半分にし、成長物質(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸およびカイネチン)の濃度も減らした同様の培地に移植する。それからそのような移植を、胚組織が現れるまで、2週間毎に行う。カルスの状態に応じて、成長物質の濃度が変わる一続きの培地を用いてもよい。胚組織を、成長物質を加えない基礎培地で単離する。この培地で、一定割合の前胚を幼植物に成長させる。このような幼植物を、成長物質を除いてグルコースの代わりにショ糖を入れた、液状の基礎培地によって「湿らせた」バーミキュライトの担体の上に移す。それらが約4−6cmに達すると、それらをS2型の温室に直接移す。
【0167】
再生した植物体のゲノムにおいてVat遺伝子が存在し、またそれが発現していることを検証するために、PCRによって分子解析を行う。nptII遺伝子を増幅するために、一対のプライマーを用いる。Vat遺伝子には二対のプライマーを用いた:遺伝子の3’に位置するVat断片を増幅する第一の対は632と呼ばれ、遺伝子の中央に位置する断片を増幅する第二の対はLRRと呼ばれる。
【0168】
nptII遺伝子を増幅するために用いるプライマー対の配列は、以下の通りである:
Kana III:GCGATAGAAGGCGATGCG(SEQ ID NO:26)
kana R:CCGGCTACCTGCCATTCG(SEQ ID NO:31)
【0169】
プライマー対632の配列は以下の通りである:
Vat632F:CCCAGCAACATACTGATTCCAAGC(SEQ ID NO:30)
Vat632R:CTGGTGATGACATTCATATCTTCC(SEQ ID NO:29)
【0170】
プライマー対LRRの配列は以下の通りである:
LRRF:GTTGTTGAGAGCAATAGTGTAC(SEQ ID NO:32)
LRRR:CCTTAGAGAAGAATGAAGTCTC(SEQ ID NO:33)
【0171】
どのようなプライマーを用いるにせよ、PCRの条件は以下の通りである:
25μLの反応培地に、
水9.5μL
10×緩衝剤:2.5μL
dNTP(2.5mM):2μL
オリゴ1(10μM):2.5μL
オリゴ2(10μM)2.5μL
Taq(5u/μL):0.25μL
DNA:5μL
スケジュール:
94℃で3分
つぎに、94℃で30秒−59℃で45秒−72℃で45秒を35回繰り返す。
【0172】
最終的には8カ月後、形質転換された12本の植物体を温室に移した:それらの植物体は、5つの異なる胚形成系統に由来するものである。それらのうちの2本は、上記に示したPCR条件でVat遺伝子の増幅が得られた2つの異なる系統に由来するものである。他のものは、遺伝子nptIIの増幅が得られた系統に由来するものではあるが、Vat遺伝子の増幅が得られた系統に由来するものではない。基質の量を変化させることで、前もって陰性であることが判明している抽出物によって適度な大きさの増幅を実現することが可能であったという限りにおいて、それらが偽陰性を示しているということはあり得ないことではない。
【0173】
ワタアブラムシによる感染に対する耐性の測定
【0174】
(レユニオン島原産の)綿花で採取したワタアブラムシのクローンを用いて、綿花の上に維持する。実際、明らかになっているところによると、ワタアブラムシの個体群は、宿主となる植物に応じて遺伝的な構造が強化されるということである(VANLERBERGHE−MASUTTI et CHAVIGNY,Molecular Ecology,7,905−914,1998)。試験はメロンについてのものと同様の手順に従って行うが、植物体の培養条件は綿花のものに適合させる。綿花を維持する温室のタイプは、28℃から30℃の温度であるS2であり、補助照明の強度と継続時間は12−12の光周期に合わせる。
【0175】
メロンの試験と同じように行った耐性の評価に加え、形質転換した植物体における(幼虫の様々な段階の長さ、成虫の生存期間、本来の成長率などの)アブラムシの一生にわたる記録(XIA et al.Entomologia Experimentalis et Applicata,90,25−35,1999)の更なる精確な評価も、ヘテロログの状態の、ワタアブラムシに対するVat遺伝子の、場合によっては弱い効果を検出するために、行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】クローンC7.1の配列。
【図2】VatのcDNAとVat−likeのcDNAとの間の配列のアラインメント。
【図3】Vatタンパク質配列とVat−likeタンパク質配列のアラインメント。
【図4】各植物体で生じた組換えの位置を示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択された単離したポリヌクレオチド:
a)ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドであり、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%そして更に好ましくは少なくとも95%がSEQ ID NO:3のポリペプチドと一致しているポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
b)ポリヌクレオチドa)に相補的なポリヌクレオチド、
c)ポリヌクレオチドa)またはポリヌクレオチドb)と、ストリンジェントな条件の下で、選択的にハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド。
【請求項2】
a)配列SEQ ID NO:1のポリヌクレオチド、
b)配列SEQ ID NO:2のポリヌクレオチド、
c)ポリヌクレオチドa)またはポリヌクレオチドb)の相補的ポリヌクレオチド、
d)ポリヌクレオチドa)、b)またはc)のいずれか一つと、ストリンジェントな条件の下で、選択的にハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド、
のいずれかから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
少なくとも10bpのポリヌクレオチド断片で構成されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載されているポリヌクレオチド。
【請求項4】
ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチドであって、少なくとも一つの核酸プローブおよび/または請求項1から3のいずれか一つのポリヌクレオチドから得られる少なくとも一対の増幅プライマーを用いて、植物のゲノムDNAバンクまたはcDNAバンクをスクリーニングすることによって得ることができるポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
それぞれが以下のプライマー、即ち
L273:
F2−B2:GGAGAGAGAATCCGGGACTAAGTGACT(SEQ ID NO:7)
F2−Br:TAACCACCTTTTCCGATCAAATTTCGTAC(SEQ ID NO:8)
L246:
F2−B2 Eco:ATTGATGAATCTACACTCCTCGATCTCTTC(SEQ ID NO:9)
F2 Eco:GAGTTCAATCCATTTCAATGATTTAAGATA(SEQ ID NO:10)
V681:
V681:GGAATCTTGTTGAGGCCGAGAGGG(SEQ ID NO:11)
V681R:GTTGTATATGGCTTCCCTGTAGCC(SEQID NO:12)
V1684:
V588:CAACAGGCTCAACAGTGTATTCGG(SEQ ID NO:13)
V551R:GAAGAAGGTGACGAGAGAGATGCC(SEQ ID NO:14)
V432:
V432:AACTTCTCCAACTCCCTCCACTGC(SEQ ID NO:15)
V432R:TTAGAGTGGCAAAGGGAAGATGGG(SEQ ID NO:16)
GRP805:
GRP805:ATCCCCTGTTTCCTTCAACAACCC(SEQ ID NO:17)
GRP805R:AACCCCCAAGAAGAAGAACAACCC(SEQ ID NO:18)
M8:
M8:CCGACGCATCTCCCGACGCGTTGTTG(SEQ ID NO:19)
M8R:TCGTGAAGGGTTTTGGAGAGTGAGAAA(SEQ ID NO:20)
マーカーE:
LRR1:CCTTAGAAGAAGATGAAGTCTCCC(SEQ ID NO:21)
LRR842R:CTCCACTCAGAATTGGTAGGTGCC(SEQ ID NO:22)
マーカーD:
LRR915:AACAACTTAGAACCATCTCCCAGC(SEQ ID NO:23)
LRR1R:GTTGTTGAGAGCAATAGTGTACCC(SEQ ID NO:24)、
によって規定されるマーカー、L273、L246、V681、V1684、V432、GRP805、M8、マーカーEあるいはマーカーDのうちから選択されることを特徴とする、ワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子の存在の有無を検出することのできる、遺伝子マーカー。
【請求項6】
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:7とSEQ ID NO:8で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:9とSEQ ID NO:10で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:11とSEQ ID NO:12で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:13とSEQ ID NO:14で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:15とSEQ ID NO:16で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:17とSEQ ID NO:18で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:19とSEQ ID NO:20で構成される一対のプライマー、
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:21とSEQ ID NO:22で構成される一対のプライマー、そして
・ポリヌクレオチドSEQ ID NO:23とSEQ ID NO:24で構成される一対のプライマー、
の中から選ばれることを特徴とする、請求項5において規定されるようなマーカーのうちの一つの増幅を可能にする一対のプライマー。
【請求項7】
請求項6で規定されているようなプライマーを少なくとも一対含むことを特徴とする、ワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子が植物に存在することを検出するためのキット。
【請求項8】
ワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子が植物に存在することを検出するための、請求項1から3のいずれか一つに記載の少なくとも一つのポリヌクレオチドの使用法。
【請求項9】
ワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に有利なVat遺伝子の対立遺伝子が植物に存在することを検出するための、請求項5に記載の少なくとも一つの遺伝子マーカーの使用法。
【請求項10】
前記植物が瓜科植物であることを特徴とする、請求項8または9のいずれかに記載の使用法。
【請求項11】
植物に存在するVat遺伝子の対立遺伝子型を決定することを含むことを特徴とする、植物のワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性もしくは感受性を検出する方法。
【請求項12】
適切なプロモーターの転写制御の下に置かれた状態の、請求項1から3のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む発現カセット。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドまたは請求項12に記載の発現カセットを含む、組換えベクター。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドによって遺伝的に形質転換された細胞。
【請求項15】
ワタアブラムシに対する耐性および/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性を有するトランスジェニック植物を作成するための、請求項1または2に記載のポリヌクレオチドの使用法。
【請求項16】
請求項1または2のいずれかに記載のポリヌクレオチドによって遺伝的に形質転換されたトランスジェニック植物。
【請求項17】
瓜科、アオイ科そしてナス科のうちから選択される、請求項16に記載のトランスジェニック植物。
【請求項18】
ポリペプチドSEQ ID NO:3と80%一致することを特徴とする、ワタアブラムシおよび/または前記アブラムシによるウイルス伝搬に対する耐性に関与するポリペプチド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527694(P2007−527694A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502094(P2006−502094)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000050
【国際公開番号】WO2004/072109
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(504301258)
【氏名又は名称原語表記】GENOPLANTE−VALOR
【Fターム(参考)】