説明

ワッシャ型ロードセルおよびスラスト荷重検出機構

【課題】低スラスト荷重を精度良く検出可能なワッシャ型ロードセルおよびスラスト荷重検出機構を提供する。
【解決手段】ワッシャ型ロードセル1を、環状を成し、片面でスラスト荷重を受けるロードセル本体11と、このロードセル本体11の他方の片面において円周方向に複数形成される突部16,17,18,19と、ロードセル本体11に作用する荷重に応じて当該突部16,17,18,19を支点として歪むロードセル本体11の歪みを検出する歪み検出手段25,26,27,28とから構成することで課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に作用するスラスト荷重を検出するためのワッシャ型ロードセルおよびスラスト荷重検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸に作用するスラスト荷重を測定する機構としては、特許文献1に示すものがある。このスラスト荷重検出機構においては、回転軸が円錐ころ軸受けを介して回転自在に保持されている。また、当該回転軸にはスライドリングが円錐ころ軸受けの片面と連接するように挿入されている。さらに、当該回転軸にはワッシャ型ロードセルが挿入されており、その片面はスライドリングの片面と連接する一方、他方の片面はハウジングに接触するように介在している。これにより、回転軸に作用したスラスト荷重が、円錐ころ軸受けおよびスライドリングを介してワッシャ型ロードセルに伝達され、ロードセル本体(起歪体)に歪みを生じさせる。この歪みを歪みゲージが電気信号として検出することにより、回転軸に作用したスラスト荷重を検出することができる。
【0003】
ここで、前記ワッシャ型ロードセルにおいて、そのロードセル本体(起歪体)の形状には、低荷重でも歪みを大きく生じさせるための工夫が施されているものがある。その代表的なものとしては、特許文献2に示すワッシャ型ロードセルがある。このワッシャ型ロードセルのロードセル本体においては、その側面が湾曲している。これにより、円筒形状のロードセル本体に比べて、低荷重でも歪みを生じさせることができる。他にも、特許文献3に示すワッシャ型ロードセルにおいては、ロードセル本体の側面に貫通孔が穿設されており、これにより、前記ワッシャ型ロードセルと同様、低荷重でも比較的大きく歪みを生じさせることができる。これらワッシャ型ロードセルを、上記スラスト荷重検出構造に用いれば、回転軸に作用するスラスト荷重が比較的低い場合でも、これを検出することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90525号公報
【特許文献2】特開2000−146718号公報
【特許文献3】特開昭56−629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ワッシャ型ロードセルであってもまだ低スラスト荷重に対する歪み量は不十分であった。そのため、このワッシャ型ロードセルを上記スラスト荷重検出機構に用いても、低スラスト荷重を精度良く検出することができなかった。しかも、上記ワッシャ型ロードセルのロードセル本体は、特殊な形状を成している。そのため、困難な加工が要求され、コスト面においても問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、低スラスト荷重を精度良く検出可能なワッシャ型ロードセルおよびスラスト荷重検出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のワッシャ型ロードセルは、環状を成し、片面でスラスト荷重を受けるロードセル本体と、前記ロードセル本体の他方の片面において円周方向に複数形成される突部と、前記ロードセル本体に作用する荷重に応じて前記突部を支点として歪むロードセル本体の歪みを検出する歪み検出手段とから構成されることを特徴とする。
【0008】
なお、前記ロードセル本体において突部が形成されている片面には、当該突部よりも厚みの薄い第2の突部が形成されていることが望ましい。
【0009】
なお、前記ロードセル本体においてスラスト荷重を受ける片面には、円周方向に支持部が複数形成され、この支持部で荷重を受けるように構成されていることが望ましい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明のスラスト荷重検出機構は、回転軸に挿入され、スラスト荷重に応じて歪むロードセル本体の歪み量からスラスト荷重を検出可能なワッシャ型ロードセルと、回転軸を回転自在に支持する軸受けと、これらワッシャ型ロードセルと軸受けの間に介在して回転軸に作用するスラスト荷重を軸受けからワッシャ型ロードセルへ伝達する伝達部材とから構成されるスラスト荷重検出機構において、前記伝達部材が回転軸を回転自在に支持するとともに背面を組み合わせて配置される一対のアンギュラ玉軸受けであり、また前記ワッシャ型ロードセルのロードセル本体においてスラスト荷重を受ける片面には、円周方向に支持部が複数形成され、当該支持部とアンギュラ玉軸受けの外輪の片面とを接触配置することにより、回転軸に作用するスラスト荷重を軸受けからワッシャ型ロードセルへ伝達可能とし、一方ワッシャ型ロードセルのロードセル本体の他方の片面には円周方向に突部が複数形成され、スラスト荷重を受けると当該突部を支点として歪むロードセル本体の歪み量からスラスト荷重を検出するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワッシャ型ロードセル及びスラスト荷重検出機構においては、ロードセル本体の片面に突部を形成するだけの簡単な加工でよく、反対の片面にスラスト荷重が作用すると、当該突部が支点となり、ロードセル本体に歪みが生じる。しかも、スラスト荷重に対する歪み量も大きく、低スラスト荷重の検出精度に優れたものとなる。
【0012】
また、ロードセル本体において突部が形成されている片面には、当該突部よりも厚みの薄い第2の突部が形成されている。そのため、ロードセル本体に所定以上のスラスト荷重がかかったとき、当該第2の突部が、ロードセル本体を受ける何らかの部材に接触する。したがって、この接触時点以上の歪みがロードセル本体には生じず、スラスト荷重の過負荷によりロードセル本体が損傷してしまう危険性が皆無となる。
【0013】
さらに、ロードセル本体に形成された支持部でスラスト荷重を受けるように構成されている。そのため、ロードセル本体の片面全面でスラスト荷重を受ける構成よりも、当該支持部でスラスト荷重を受けたほうが、ロードセル本体に作用する曲げモーメントが大きくなり、ロードセル本体の歪み量も大きくなる。したがって、より低スラスト荷重の検出精度に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スラスト荷重検出機構を示す縦断面図である。
【図2】ワッシャ型ロードセルを示す底面視斜視図である。
【図3】ワッシャ型ロードセルを示す平面視斜視図である。なお、便宜上、ロードセル本体と、受け部材とを離して図示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はスラスト荷重検出機構である。このスラスト荷重検出機構1においては、特許請求の範囲に記載の軸受けの一例であってラジアル荷重に対して負荷能力を有する一対の円筒ころ軸受け2,3によって回転軸4が回転自在に支持されている。
【0016】
また、前記一対の円筒ころ軸受け2,3の間には、スラスト荷重の伝達部材の一例であって背面を組み合わせて配置される一対のアンギュラ玉軸受け5,6が回転軸4を回転自在に支持するように介在している。さらに、一方の円筒ころ軸受け2と、一方のアンギュラ玉軸受け5との間には、ワッシャ型ロードセル10がカラー7を介して回転軸4に挿入されて介在している。
【0017】
前記ワッシャ型ロードセル10は、図2および図3に示す構成であり、環状を成すロードセル本体11を有している。このロードセル本体11の片面において大径の円周縁の近傍には、図2に示すように、軸線方向に延びる支持部12,13,14,15が円周方向に4箇所に形成されている。また、この支持部12,13.14.15には段付き部12a,13a,14a,15aが形成されており、ここに前記アンギュラ玉軸受け5の外輪の円周縁が嵌め合わされ、スラスト荷重を受けるように構成されている。
【0018】
一方、ロードセル本体11の他方の片面には、図3に示すように、突部16,17,18,19が円周方向に4箇所に形成されており、この突部16,17,18,19は前記支持部12,13,14,15に対して円周方向における位相が異なるようにして配置されている。また、この突部16,17,18,19に接触するようにして、回転軸には環状の受け部材20が挿入されている。この受け部材20は、スラスト荷重を受けて軸線方向に移動しようとするロードセル本体11を受けるためのものであり、その片面は前述の通り、突部16,17,18,19と接触する一方、他方の片面は円筒ころ軸受け2の片面と接触するようにして配置されている。
【0019】
また、ロードセル本体11において突部16,17,18,19が形成された片面には、これよりも厚みの薄い第2の突部21,22,23,24が円周方向に4箇所に形成されている。この第2の突部21,22,23,24は、前記支持部12,13,14,15に対して円周方向における位相が同一となるように配置されている。
【0020】
また、前記突部16と第2の突部21との間には歪み検出手段の一例である歪みゲージ25が貼付けられており、その裏面にも歪みゲージ26が貼付けられている。さらに、この歪みゲージ25,26が貼付けられた位置から回転軸の中心軸を介して対向する位置にも、歪みゲージ27,28がロードセル本体11の両面に貼付けられている。これら歪みゲージ25,26,27,28をブリッジ回路に組み込んで荷重センサを構成し、ロードセル本体11の微小変化量である歪みが電気信号として検出される。
【0021】
また、一方のアンギュラ玉軸受け6と、一方の円筒ころ軸受け3との間には弾性部材の一例であるウェーブワッシャ29が介在している。このウェーブワッシャ29が回転軸4に挿入される前述の各構成部品に予圧を与える。当該部品間に隙間が生じることがないようになっている。ここで、このウェーブワッシャ29は、その両面がウェーブ形状を成しており、円筒ころ軸受け3あるいはアンギュラ玉軸受け6に押圧されて弾性変形可能に構成されている。なお、このウェーブワッシャ29に代えて、弾性変形可能な部品の一例としてゴム製のパッキンを用いてもよい。
【0022】
以下、回転軸4に作用するスラスト荷重の伝達経路を説明する。図1に示す1点鎖線の矢印は、スラスト荷重の伝達経路を示すものであり、まず、回転軸4にスラスト荷重が作用すると、回転軸4のフランジ部4aが円筒ころ軸受け3の内輪を押圧する。この内輪からウェーブワッシャ29を介して隣接するアンギュラ玉軸受け6の内輪にスラスト荷重が伝達される。ここで、アンギュラ玉軸受け5,6おいては、玉と、内輪および外輪とは接触角を有している。そのため、二個のアンギュラ玉軸受け5,6の背面を組合わせて配置することにより、内輪に伝達されたスラスト荷重は、玉を介して確実に外輪へ伝達される。
【0023】
続いて、前記アンギュラ玉軸受け5の外輪に伝達されたスラスト荷重は、ロードセル本体11の支持部12,13,14,15に伝達される。これを受け、ロードセル本体11に形成された突部16,17,18,19が受け部材20を押圧する。そのため、当該突部16,17,18,19を支点としてロードセル本体11には歪みが生じる。すなわち、ロードセル本体11において、隣接する突部16と突部17、突部17と突部18及び突部18と突部19は梁として機能し、この梁に歪みが生じる。ここで、ロードセル本体11の片面上には、前記第2の突部21,22,23,24が形成されている。これにより、所定の歪みが生じると、当該第2の突部21,22,23,24が受け部材に接触する。そのため、ロードセル本体11がスラスト荷重の過負荷により損傷することがないよう保護されている。
【0024】
以上のように本発明のスラスト荷重検出機構1においては、回転軸4が一対の円筒ころ軸受け2,3によって回転自在に支持されている。この円筒ころ玉軸受け2,3は、回転軸4に作用するラジアル荷重に対して負荷能力を有するものである。しかも、アンギュラ玉軸受け5,6の背面を組み合わせて配置することにより、スラスト荷重がその外輪へ確実に伝達される。そのため、ワッシャ型ロードセル10がラジアル荷重の影響を受け、誤って歪むことが皆無となるとともに、ワッシャ型ロードセル10へスラスト荷重が確実に伝達されるため、回転軸に作用するスラスト荷重を精度良く検出することができる。
【0025】
また、ロードセル本体11においては、その片面がスラスト荷重を受けると、反対の片面に形成された突部16,17,18,19が支点となり、ロードセル本体11に歪みが生じる。しかも、この突部16,17,18,19から円周方向に所定の間隔をおいた位置の裏面に支持部12,13,14,15が形成され、この支持部12,13,14,15の段付き部12a,13a,14a,15aにスラスト荷重が作用する。これにより、ロードセル本体11に作用する曲げモーメントが大きくなり、低スラスト荷重でも大きな歪みを生じさせることができる。そのため、スラスト荷重の検出精度に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 スラスト荷重検出機構
2,3 円筒ころ軸受け
4 回転軸
5,6 アンギュラ玉軸受け
7 カラー
10 ワッシャ型ロードセル
11 ロードセル本体
12,13,14,15 支持部
12a,13a,14a,15a 段付き部
16,17,18,19 突部
20 受け部材
21,22,23,24 第2の突部
25,26,27,28 歪みゲージ
29 ウェーブワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状を成し、片面でスラスト荷重を受けるロードセル本体と、
前記ロードセル本体の他方の片面において円周方向に複数形成される突部と、
前記ロードセル本体に作用する荷重に応じて前記突部を支点として歪むロードセル本体の歪みを検出する歪み検出手段と
から構成されることを特徴とするワッシャ型ロードセル。
【請求項2】
前記ロードセル本体において突部が形成されている片面には、当該突部よりも厚みの薄い第2の突部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワッシャ型ロードセル。
【請求項3】
前記ロードセル本体においてスラスト荷重を受ける片面には、円周方向に支持部が複数形成され、この支持部で荷重を受けるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワッシャ型ロードセル。
【請求項4】
回転軸に挿入され、スラスト荷重に応じて歪むロードセル本体の歪み量からスラスト荷重を検出可能なワッシャ型ロードセルと、回転軸を回転自在に支持する軸受けと、これらワッシャ型ロードセルと軸受けの間に介在して回転軸に作用するスラスト荷重を軸受けからワッシャ型ロードセルへ伝達する伝達部材とから構成されるスラスト荷重検出機構において、
前記伝達部材が回転軸を回転自在に支持するとともに背面を組み合わせて配置される一対のアンギュラ玉軸受けであり、また前記ワッシャ型ロードセルのロードセル本体においてスラスト荷重を受ける片面には、円周方向に支持部が複数形成され、当該支持部とアンギュラ玉軸受けの外輪の片面とを接触配置することにより、回転軸に作用するスラスト荷重を軸受けからワッシャ型ロードセルへ伝達可能とし、一方ワッシャ型ロードセルのロードセル本体の他方の片面には円周方向に突部が複数形成され、スラスト荷重を受けると当該突部を支点として歪むロードセル本体の歪み量からスラスト荷重を検出するよう構成されていることを特徴とするスラスト荷重検出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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