説明

ワークの位置決め装置及び方法並びに突合せ溶接用ワークの位置決め装置

【課題】特殊な形状のワークであっても、ワークをストッパに対して正確に位置決めることができるワークの位置決め装置及び方法並びに突合せ溶接用ワークの位置決め装置を提供する。
【解決手段】ワーク(A)を吸着する吸着部(88)を有する支持部材(86)と、同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材(50)と、上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させる制御装置(48)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの位置決め装置及び方法並びに突合せ溶接用ワークの位置決め装置に係り、特には薄板のワークの突合せ溶接に先立って用いて好適なワークの位置決め装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状ワークの突合せ溶接においては、ワーク同士が突合せ部が不均一であると、部分的に弱い溶接部分が生じてしまうため、突合せ溶接の前段階としてワーク同士を正確に突き合わせる必要がある。一般的に知られているものとして、プッシャーによりワークを後方からストッパ(予め設定位置に固定された相手ワークがストッパとなる場合を含む)に向けて押圧し、ワークの正確な位置決めを行う方法がある。この方法はワークが概ね矩形である場合には問題が少ない。しかしながら、ワークにおける突合せ部分の端縁と反対側の端縁が、押圧方向に対して斜めに延びている場合、あるいは曲線状である場合、当該反対側の端縁をプッシャーで押すと、押点において分力が作用して上手に押すことができないという不具合が生じる。
【0003】
このため、特許文献1に示されるワークの位置決め装置おいては、ワークが載置される受け台の下方にアクチュエータにより駆動される往復動部材が設けられている。この往復動部材に吸着装置が上下動自在かつ傾動可能に支持されている。そして、受け台上に載置されたワークの下面を吸着装置により吸着し、次いでアクチュエータにより往復動部材を変位させ、ワークをストッパに向けて押圧させている。このような位置決め装置によれば、上記ワークの反対側の端縁が斜めに延びている場合、あるいは曲線状である場合でも、吸着装置によりワークの下面を吸着して該押圧を行うことができる。
【特許文献1】特開平8−206881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワークにおけるストッパに当接する端縁が、同ワーク全体の幅に関して一側に片寄っている部分にのみ存在する場合、ワークを吸着する吸着装置を移動させたときに、ワークがその片寄りのために、ワークがその突合せ部分の端縁の一方の角部を中心に倒れてしまう不具合がある。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、特殊な形状のワークであっても、ワークをストッパに対して正確に位置決めることができるワークの位置決め装置及び方法並びに突合せ溶接用ワークの位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、請求項1のワークの位置決め装置は、受け台上のワークの端縁をストッパに当接させることにより同ワークの受け台に対する位置決めを行う位置決め装置であって、板状のワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材と、上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記支持部材を変位させる制御装置とを備え、上記支持部材における上記軸線が、上記ワークの板面に平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、上記ワークの端縁の範囲内に位置されたことを特徴とする。
【0006】
請求項2のワークの位置決め装置は、請求項1において、上記支持部材が、上記軸線から上記ワークの板面と平行に延びており、少なくともその先端部に上記吸着部が設けられたことを特徴とする。
請求項3のワークの位置決め装置は、請求項1において、上記支持部材が、上記作動部材に対する上記軸線周りの回動が所定角度範囲に制限され、上記所定角度範囲は、上記突合せ面が上記ストッパに対して正しく当接するときに、上記支持部材が上記作動部材に対して同所定角度範囲内であるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4のワークの位置決め装置は、請求項1において、上記作動部材が、エアシリンダを有し、同エアシリンダにより上記ワークの端縁を上記ストッパに押圧せしめることを特徴とする。
請求項5のワークの位置決め装置は、請求項1において、上記ワークが正規位置にあるときに同ワークの側縁に当接するサイドストッパを備え、上記作動部材は、さらに上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させ、上記ワークの側縁を上記サイドストッパに当接させることを特徴とする。
【0008】
請求項6のワークの位置決め方法は、受け台上のワークの端縁をストッパに当接させることにより同ワークの受け台に対する位置決めを行う位置決め方法であって、板状のワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材とを備え、上記支持部材により、同支持部材における軸線が、上記ワークに板面と平行な、かつ同ワークに端縁と垂直な方向に沿って見たときに、同ワークに端縁の範囲内に位置するように、上記作動部材を位置させると共に上記吸着部材により上記ワークを吸着するステップ;及び上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させるステップを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項7のワークの位置決め方法は、請求項6において、上記ワークの側縁に当接するサイドストッパを更に備え、上記作動部材は、更に上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させることができ、上記位置決め方法が、上記制御装置により、上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させる上記ステップの後、上記制御装置により、上記作動部材を作動させて、上記ワークの上記ストッパに対する押圧力を保持しながら、上記ワークの側縁が上記サイドストッパに当接するように上記ワークを同ワークの上記端縁と平行に変位させるステップを更に備えている。
【0010】
請求項8のワークの位置決め方法は、請求項7において、上記支持部材は少なくとも2つの吸着部材を有し、上記ワークを吸着するステップは、上記少なくとも2つの吸着部材が平面視における上記ワークの重心位置を挟んで互いに反対側に位置するように、上記ワークを吸着することを特徴とする。
請求項9の突合せ溶接用ワークの位置決め装置は、板状のワークが置かれる受け台と、上記受け台の一縁の外方近傍に位置する使用位置及び同使用位置よりも下方に後退した格納位置をとれるように支持され、上記使用位置にあるときに上記ワークにおける突合せ溶接される端縁が当接したときに、同ワークの端縁が上記受け台に対して正規位置に位置されるストッパと、上記ワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材と、上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させる制御装置と、上記受け台の上記一縁の内方近傍において、上記ワークを上記受け台の上面との間に挟圧するクランプ部材とを備え、上記支持部材は、同支持部材における上記軸線が、上記ワークの板面に平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、上記ワークの端縁の範囲内に位置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項10の突合せ溶接用ワークの位置決め装置は、請求項9において、上記ワークの同ワーク側縁に当接するサイドストッパを備え、上記作動部材は、さらに上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させることができることを特徴とする。
請求項11の突合せ用ワークの位置決め装置は、請求項9において、上記受け台及び上記クランプ部材は、同受け台及びクランプ部材の間に挟圧した状態で、上記ワークの板面と平行な、かつ同ワークの端縁と垂直な方向に、移動できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のワークの位置決め装置によれば、制御装置により作動部材を作動させて、ワークの端縁をストッパに押圧力をもって当接させることにより、該当接前においてワークの端縁がストッパに対して多少平行でない場合でも、ワークが支持部材と共に回動して同ワークの端縁がストッパに密着し、それによりストッパに平行となり、ワークの位置決めを達成することができる。しかも、支持部材が回動する軸線(すなわち平面視において押圧力が支持部材に作用する点)が、ワークの板面に平行なかつワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、ワークの端縁の範囲内に位置しているので、押圧力によってワークが端縁のどちらか一端の角部を中心とする回転モーメントは発生しないので、押圧によってワークが倒れてしまうような不具合を解消することができる。
【0013】
請求項2のワークの位置決め装置によれば、平面視において、支持部材が軸線から離れるように延びており、かつ少なくともその先端部に吸着部が設けられているので、該押圧力の作用点である軸線と吸着部材による吸着点を離すことができるので、特殊な形状のワークであっても、支持部材が回動する軸線が、ワークの板面に平行なかつワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、ワークの端縁の範囲内に位置させることが容易である。
【0014】
これにより、特殊な形状のワークであっても、不具合を生じることなく、位置決めを達成することができる。
請求項3のワークの位置決め装置によれば、支持部材の作動部材に対する当該軸線周りの回動が所定角度範囲に制限されているので、ワークをストッパに向けて変位させるときに、何かしらワークに対して回転モーメントが作用しても、ワークの姿勢が大きく変化することを防止できる。しかも、支持部材がストッパに正しく当接するときに、支持部材が作動部材に対して所定角度範囲内になるように、所定角度範囲が設定されているので、ワークの位置決めにはなんら支障が発生しない。
【0015】
請求項4のワークの位置決め装置によれば、エアシリンダにより、ワークの端縁をストッパに押圧するので、容易に該押圧力を適切な大きさに管理することができる。
請求項5のワークの位置決め装置によれば、作動部材を作動させて、ワークの端縁をストッパに当接させた状態でワークの側縁がサイドストッパに当接するようにワークを移動させることにより、ワークがその端縁と垂直な方向のみならず、その端縁と平行な方向において、正確に位置決めすることができる。
【0016】
請求項6のワークの位置決め方法によれば、ワークの端縁がストッパに押圧力をもって当接されるので、該当接前においてワークの端縁がストッパに対して多少平行でない場合でも、ワークが支持部材と共に回動して同ワークの端縁がストッパに密着し、それによりストッパに平行となり、ワークの位置決めを達成することができる。しかも、支持部材が回動する軸線(すなわち平面視において押圧力が支持部材に作用する点)が、ワークの板面に平行なかつワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、ワークの端縁の範囲内に位置するように、吸着部材がワークを吸着し、かつ作動部材が作動されるので、押圧力によってワークが端縁のどちらか一端の角部を中心とする回転モーメントは発生しないので、押圧によってワークが倒れてしまうような不具合を解消することができる。
【0017】
請求項7の位置決め方法によれば、作動部材を作動させて、ワークの端縁をストッパに当接させた状態でワークの側縁がサイドストッパに当接するように移動されるので、ワークがその端縁と垂直な方向のみならず、その端縁と平行な方向において、正確に位置決めすることができる。
請求項8の位置決め方法によれば、支持部材が少なくとも2つの吸着部材を有し、該少なくとも2つの吸着部材が平面視においてワークの重心位置を挟んで互いに反対側に位置するように、ワークを吸着するので、支持部材によりワークを移動させるときに、該ワークに回転モーメントが発生することを低減できる。
【0018】
請求項9の突合せ溶接用ワークの位置決め装置によれば、制御装置により作動部材を作動させて、ワークの端縁をストッパに押圧力をもって当接させることにより、該当接前においてワークの端縁がストッパに対して多少平行でない場合でも、ワークが支持部材と共に回動して同ワークの端縁がストッパに密着し、それによりストッパに平行となり、ワークがストッパに対して位置決めされる。そして、クランプ部材によりワークを受け台の上面との間に挟圧することにより、ワークが受け台に対して確実に位置決めされる。しかも、支持部材が回動する軸線が、ワークの板面に平行なかつワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、ワークの端縁の範囲内に位置しているので、押圧力によってワークが端縁のどちらか一端の角部を中心とする回転モーメントは発生しないので、押圧によってワークが倒れてしまうような不具合を解消することができる。
【0019】
請求項10の突合せ溶接用ワークの位置決め装置によれば、作動部材を作動させて、ワークの端縁をストッパに当接させた状態でワークの側縁がサイドストッパに当接するようにワークを移動させることにより、ワークがその端縁と垂直な方向のみならず、その端縁と平行な方向において、正確に位置決めすることができる。
請求項11の突合せ溶接用ワークの位置決め装置によれば、受け台に正確に位置決めされたワークを、クランプ部材により受け台との間に強固に固定し、そしてその状態でストッパを格納位置に変位させ、次いでワークを受け台と共に正規の溶接位置に移動させ、これにより突合せ溶接のためのワークの位置決めを完了することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明が適用されたワーク位置決め装置を含む突合せ溶接装置を示す平面図、図2は図1の矢印IIに沿う矢視図、図3は図1の部分拡大図、図4は図1のロボットを示す側面図、図5は図4の支持部材86及び第3アーム66の拡大平面図、図6は図5の側面図、図7はワークの位置決めの順序を示す平面図である。
【0021】
図1及び図2において、基台2上に設けられ図左右方向(便宜上、以後「長手方向」と称す)に延びたレール4に2つの移動台6が移動可能に支持されている。これら移動台6は、基台2に取り付けられた伸縮シリンダ8により、レール4上の任意の位置に移動され、その位置で停止されるものである。移動台6には、板状のワークA及びBを載置される受け台10、ワークA及びBに対するストッパ装置12、及びワークA及びBを受け台10との間に挟圧するクランプ装置14が設けられている。なお、ワークA及びBは、それぞれの端縁A1及びB1を互いに突合せ溶接されるものである。
【0022】
受け台10は、図上下方向(便宜上、以後「幅方向」と称す)に延びており、移動台6に強固に取り付けられている。
ストッパ装置12は、移動台6の幅方向両端部に固定された支持部材16に回転自在に支持されたアーム状の回動部材18と、左右の同回動部材18,18間に橋設されると共に上面に複数のストッパ20が直線上に配置されたストッパ支持部材22を有している。ストッパ支持部材22は、中央部が変形しないように、回動部材18と同心的に設けられた図示しない回動部材により、中央部の適当箇所も支持されている。左右の各回動部材18と移動台6との間には伸縮シリンダ24が設けられており、同伸縮シリンダ24により、ストッパ20が使用位置(図2の右側のストッパ20)と格納位置(図2の左側のストッパ20)とに移動することができる。
【0023】
クランプ装置14は、移動台6の幅方向両端部に固定された支持部材26に回転自在に支持され、2つのアーム部28aと28bを有する回動部材28と、左右の同回動部材28のアーム部28a、28a間に橋設されると共に上述の受け台10の上方に位置されたクランプ支持部材30を有している。クランプ支持部材30には、図2及び図3に示されるように、クランプ支持部材30の長手方向に沿って配列された複数の押圧パッド32が設けられている。なお、各押圧パッド32とクランプ支持部材30との間には強いばね34が介装されている。また各アーム部28bと移動台6との間には、伸縮シリンダ36が設けられており、同伸縮シリンダ36により、押圧パッド32がワークAを受け台10との間に挟圧するクランプ位置(図2の右側のクランプ装置14)と、押圧パッド32が受け台10の上方へ退避した非クランプ位置(図2の左側のクランプ装置14)とに移動することができる。
【0024】
ところで、受け台10と同じ高さの受け台38及び40が、受け台10と並ぶように配置されている。これら受け台38及び40は基台2に強固に固定されている。なお、受け台38及び40は、図において平板状に示されているが、図1の長手方向に延びた複数の幅狭の部材により、すのこ状に構成されたものも採用できる。受け台10と38の間及び受け台38と40の間には、それぞれ図示しないが、幅方向に延びたガイド部材が設けられており、各ガイド部材には、それぞれ2つのサイドストッパ42及び補助サイドストッパ43が移動可能に取り付けられている。これらサイドストッパ42は図示しないアクチュエータにより任意の位置に移動させることができる。
【0025】
基台2の側方には、ワークA及びBにそれぞれ対応し、それぞれ制御装置48により制御される作動部材としての、いわゆる水平多関節式のロボット50が配置されている。図4に明らかなように、各ロボット50は、本体52に鉛直方向に延びた第1軸54を介して回動するように取り付けられた第1アーム56と、同第1アーム56の先端に鉛直方向に延びた第2軸58を介して回動するように取り付けられた第2アーム60とを備えている。更に第2アーム60の先端には、鉛直方向に延びた第3軸62を介して回動するように、かつ昇降装置64を介して昇降するように第3アーム66が取り付けられている。
【0026】
図5及び図6に明らかなように、第3アーム66は、第2アーム60に回動かつ昇降可能に取り付けられた基部68と、同基部に固定された第1腕部70と、同第1腕部70に長手方向に摺動できるよう係合された第2腕部72とを有している。第2腕部72の先端にはスリーブ状の基体74が固定されている。第1腕部70に取り付けられたエアシリンダ76は、その作動軸78を基体74に係合されている。第2腕部72の第1腕部70に対する最大摺動量は図示しないストッパにより規制されていると共に、エアシリンダ76は常時伸長する方向にエア圧がかけられている。これにより、第2腕部72は、外力が作用しない限り、第1腕部70に対して最大に摺動した状態を保持される。
【0027】
基体74にはベアリングを介して回動軸80が鉛直軸を中心として回動可能に支持されている。図示しないが、回動軸80の外周の一部にキー部材が突出しており、同キー部材は基体74の一部に係合して、回動軸80の基体74に対する回動範囲を所定角度(例えば10度)に制限されている。さらに、回動軸80と基体74との間には、図示しないが、回動軸80が基体74に対して上記回動範囲の中立位置に位置するように付勢するばね等の弾性部材が設けられている。
【0028】
軸80の下端部には、軸82及びブラケット84を介して支持部材86が取り付けられている。支持部材86は、平面視において基体74から離れるように延びており、基体74に近い部分と先端部にそれぞれ真空式の吸着部材88が設けられている。吸着部材88は、電磁式の吸着部材も採用することができる。なお、軸82は、回動軸80に対して回転方向において任意の角度でもってかつ着脱自在に固定されるものである。
【0029】
溶接用トーチ90は、図2に明らかなように、2つの移動台6の中心位置に配置されており、同位置にて互いに付き合わされたワークA及びBの、突合せ線に沿って移動することができる。また突合せ線の下方には、上に向けて開放した溝部材92が、同突合せ線に沿って延びるように設けられている。
ロボット50の近くには、図1に明らかなように、ストックされたワークAを置いておくストック台94が設けられている。同ストック台94は、当然のことながら、ロボット50により操作される支持部材86がストック台94上のワークAに届く範囲に配置される。なお、図1において示されていないが、左側のロボット50にも対応してストック台94と同様のストック台が設けられている。
【0030】
次に、以上説明した本発明が適用されたワーク位置決め装置を含む突合せ溶接装置により、ワークA及びBを突合せ溶接するプロセスについて説明する。
図1において、制御装置48は以下のとおりロボット50を制御する。先ず、図1に2点鎖線で示されるように、ストック台94上のワークAに対応する位置に支持部材86が位置するように各アーム56、60及び66を作動する。次いで、昇降装置64により基体74を第3アーム66と共に下降させ、吸着部材88によりワークAを吸着する。そして昇降装置64により第3アーム66と共に上昇させ、ワークAを受け台38及び40上に搬入し、昇降装置64によりワークAを受け台38及び40上に載置する。このとき、図7に二点鎖線96で示されるように、ワークAの突合せ溶接される端縁A1が上記使用位置にあるストッパ20と概ね平行になるように載置される。次いで、図7に二点鎖線98で示されるように、各アーム56、60及び66を作動させてワークAの当該端縁A1をストッパ20に当接させ、更にエアシリンダにより最大長に伸長されている第3アーム66が若干量(例えば10〜20ミリメートル)縮小するようにワークAをストッパ20に押し付ける。なお、このとき、ワークAにおける端縁A1の近傍部分は受け台10上に位置されている。これにより、二点鎖線98で示されるように、ワークAの当該端縁が幅方向に直線状に並べられたストッパ20に密に当接される。
【0031】
さらに各アーム56、60及び66を作動させ、幅方向(図7の上下方向)においてあらかじめ正規の位置に配備されたストッパ42に当接するように、ワークAをストッパ20に押圧したまま、幅方向(図7において下方)に移動させる。これにより、図7において実線で示されるように、ワークAは、長手方向においてストッパ20に密に当接し、かつ幅方向においてサイドストッパ42に当接し、移動台6上の受け台10に対して正規の姿勢をもって位置される。
【0032】
なお、サイド補助ストッパ43は、ワークAがサイドストッパ42に当接した状態において、ワークAに対して若干量の隙間(例えば5ミリメートル)がある位置にあらかじめ位置されている。これは、支持部材86により、ワークAが図7において二点鎖線98で示される位置から実線で示される位置に高速で移動されたときに、ワークAとストッパ20あるいは受け台10との摩擦によりワークAが倒れようとすることが稀にあり、それを防ぐ役目を果たしている。
【0033】
続いて、クランプ装置14のパッド32が上記クランプ位置に移動される。すなわち、クランプ装置14の伸縮シリンダ36を伸長させてクランプ32を下降させ、同クランプ32のパッド32と受け台10との間にワークAを挟圧させる。これにより、ワークAは、上記正規の姿勢をもって、受け台10にしっかりと固定される。
次に、この状態において、ストッパ装置12の伸縮シリンダ24を縮小させ、ストッパ20がストッパ支持部材22と共に上記格納位置に移動される。ついで、ワークAの端縁A1が溶接用トーチ90の下方の所定位置に位置するように、移動台6が、クランプ装置14によりワークAを固定したまま、伸縮シリンダ8の伸長により前進される。
【0034】
同様に、線対称の配置となっている装置構成であるため、ワークBも図1の左側のロボットにより受け台10に対して位置決めされ、左側の移動台6と共に伸縮シリンダ8の伸長により前進し、ワークBの端縁B1が溶接用トーチ90の下方の所定位置に位置される。これにより、ワークAとワークBとを高い突合せ精度をもって互いに突合せることができるという効果がある。
【0035】
ここで上述の位置決め装置及びプロセスにおける特徴及び作用効果について更に説明する。
まず、ワークAの端縁A1と、同ワークAを支持する支持部材86の回動中心との関係である。図7に従って説明すると、ワークAは、ロボット50により、その端面A1がストッパ20に当接するように押圧される。その押圧力の作用点は、支持部材86の回動中心、すなわち第3アーム66の回動中心である第3軸62である。その押圧力はベクトルとしてとらえると、図7に矢印Vで示したとおり、ワークAの板面と平行かつその端縁A1と直角方向に沿うものである。そして、当該ベクトルVに沿って見たときに、押圧力の作用点である支持部材86の回動中心(つまり第3軸62の中心)が、ワークAの端縁A1の範囲内にあるように、吸着部材88によるワークの吸着点が選定されている。
【0036】
この構成により、ワークAをロボット50により押圧したときに、ワークAにはその端縁A1のどちらか一端の角部を中心とする回転モーメントは発生しないので、押圧によってワークAが倒れてしまうような不具合を解消することができる。
また、支持部材88とワークAの吸着点の関係において、2つの吸着部材88が平面視におけるワークAの重心を挟んで反対側に位置するように選定されている。これにより、ワークAをストック台94から搬入する際にワークAのふらつきを最小限に抑えることができる。またワークAを図7に二点鎖線98で示す位置から実線Aで示される位置移動するときに支持部材86が平行移動しても、ワークAに回転モーメントの発生することを低減できる。
【0037】
また、支持部材86が基体74に対する回動範囲が規制されている。これにより、ワークAを受け台10、またワークAをストック台94から搬入する際にワークAが大きくふらつくようなことを防止できる。
さらに、支持部材86に固定された軸82は、回動軸80に対して回動方向において任意の角度でもってかつ着脱自在に固定することができる。他方、第3アーム66の長手方向は、実質的にワークAに対する押圧力の向きに等しい。したがって、軸82の回動軸80に対する回動方向の角度を変えて固定することにより、ワークAに対する押圧力の向きと支持部材86の長手方向との成す角度を容易に変えることができる。これにより、異なる形状のワークに対しても、ワークに対する押圧力に沿って見たときに、該押圧力の作用点が、ストッパに突合せられる端縁の範囲内にあるように、該ワークを吸着することができるという効果がある。特に、支持部材86が平面視において基体74から離れるように延び、かつその先端部に吸着部材88が取り付けられているので、該押圧力の作用点である基体74と吸着部材88による吸着点を離すことができ、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0038】
なお、異なる形状のワークに応じて、予め大きさあるいは形状の異なる支持部材86を用意しておき、ロボット50の近くに配備しておき、異なる形状のワークの位置決めを行うときには、支持部材86を異なる支持部材に交換することにより、迅速に位置決め作業を進めることができる。
さらに、ロボット50が各アーム56,60及び66を作動させ、吸着部材88によりストック台94上のワークAを吸着し、受け台38及び40上に搬入している。したがって、受け台10,38または40上にワークAを運び込むための専用の装置を必要とせず、設備コストを低減することができる。
【0039】
以上で本発明に係る一実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、上記実施形態では、ロボット50がワークAを受け台38及び40上に搬入しているが、代わりに、別途専用ローダによりワークAを受け台38及び40上に搬入するように構成することも可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、軸82の回動軸80に対する回動方向の角度を変えて固定することにより、ワークAに対する押圧力の向きと支持部材86の長手方向とを容易に変えることができ、これにより、異なる形状のワークに対しても、ワークに対する押圧力に沿って見たときに、該押圧力の作用点が、ストッパに突合せられる端縁の範囲内にあるように、該ワークを吸着することができるようにしている。その代わりに、アクチュエータにより支持部材86を第3アーム66に対して任意の角度に回動できるように構成することによって、異なる形状のワークに対して同様に対応することができる。
【0041】
更に、上記実施形態では、ワークAをストッパ20に当接させてワークAの位置決めを行うように構成されているが、例えば突合せ溶接において予め相手側ワークが正規の位置に固定させ、相手側ワークにおける端縁をストッパの代わりに用いることも可能である。
なお、上記実施形態は突合せ溶接装置に適用されたものであるが、本発明に係る位置決め装置は、言うまでもなく、突合せ溶接装置以外にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明が適用されたワーク位置決め装置を含む突合せ溶接装置を示す平面図である。
【図2】図1の矢印IIに沿う矢視図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図1のロボットを示す側面図である。
【図5】図4の支持部材86及び第3アーム66の拡大平面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】ワークの位置決めの順序を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 基台
6 移動台
10,38,40 受け台
14 クランプ装置
20 ストッパ
42 サイドストッパ
50 ロボット
86 支持部材
88 吸着部材
A,B ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け台上の板状のワークの端縁をストッパに当接させることにより同ワークの受け台に対する位置決めを行う位置決め装置であって、
ワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、
同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材と、
上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記支持部材を変位させる制御装置とを備え、
上記支持部材における上記軸線が、上記ワークの板面に平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、上記ワークの端縁の範囲内に位置されることを特徴とするワークの位置決め装置。
【請求項2】
上記支持部材は、上記軸線から上記ワークの板面と平行に延びており、少なくともその先端部に上記吸着部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のワークの位置決め装置。
【請求項3】
上記支持部材は、上記作動部材に対する上記軸線周りの回動が所定角度範囲に制限され、上記所定角度範囲は、上記突合せ面が上記ストッパに対して正しく当接するときに、上記支持部材が上記作動部材に対して同所定角度範囲内であるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のワークの位置決め装置。
【請求項4】
上記作動部材は、エアシリンダを有し、同エアシリンダにより上記ワークの端縁を上記ストッパに押圧せしめることを特徴とする請求項1記載のワークの位置決め装置。
【請求項5】
上記ワークが正規位置にあるときに同ワークの側縁に当接するサイドストッパを備え、
上記作動部材は、さらに上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させ、上記ワークの側縁を上記サイドストッパに当接させることを特徴とする請求項1に記載のワークの位置決め装置。
【請求項6】
受け台上のワークの端縁をストッパに当接させることにより同ワークの受け台に対する位置決めを行う位置決め方法であって、
板状のワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、
同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材とを備え、
上記支持部材により、同支持部材における軸線が、上記ワークに板面と平行な、かつ同ワークに端縁と垂直な方向に沿って見たときに、同ワークに端縁の範囲内に位置するように、上記作動部材を位置させると共に上記吸着部材により上記ワークを吸着するステップ;及び
上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させるステップを備えたことを特徴とするワークの位置決め方法。
【請求項7】
上記ワークの側縁に当接するサイドストッパを更に備え、
上記作動部材は、更に上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させることができ、
上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させる上記ステップの後、
上記作動部材を作動させて、上記ワークの上記ストッパに対する押圧力を保持しながら、上記ワークの側縁が上記サイドストッパに当接するように上記ワークを同ワークの上記端縁と平行に変位させるステップを更に備えたことを特徴とする請求項6に記載のワークの位置決め方法。
【請求項8】
上記支持部材は少なくとも2つの吸着部材を有し、
上記ワークを吸着するステップは、上記少なくとも2つの吸着部材が平面視における上記ワークの重心位置を挟んで互いに反対側に位置するように、上記ワークを吸着することを特徴とする請求項7に記載のワークの位置決め方法。
【請求項9】
突合せ溶接用ワークの位置決め装置であって、以下を備えている:
板状のワークが置かれる受け台と、
上記受け台の一縁の外方近傍に位置する使用位置及び同使用位置よりも下方に後退した格納位置をとれるように支持され、上記使用位置にあるときに上記ワークにおける突合せ溶接される端縁が当接したときに、同ワークの端縁が上記受け台に対して正規位置に位置されるストッパと、
上記ワークを吸着する吸着部を有する支持部材と、
同支持部材を上記ワークの板面に垂直な軸線周りに回動可能に支持すると共に、上記ワークの板面と平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に変位させることができる作動部材と、
上記作動部材を作動させて、上記ワークの端縁が上記ストッパに押圧力をもって当接するように上記ワークを変位させる制御装置と、
上記受け台の上記一縁の内方近傍において、上記ワークを上記受け台の上面との間に挟圧するクランプ部材とを備え、
上記支持部材は、同支持部材における上記軸線が、上記ワークの板面に平行な、かつ上記ワークの端縁と垂直な方向に沿って見たときに、上記ワークの端縁の範囲内に位置されたことを特徴とする突合せ溶接用ワークの位置決め装置。
【請求項10】
上記ワークの同ワーク側縁に当接するサイドストッパを備え、
上記作動部材は、さらに上記支持部材を上記ワークの端縁と平行な方向に変位させることができることを特徴とする請求項9に記載の突合せ溶接用ワークの位置決め装置。
【請求項11】
上記受け台及び上記クランプ部材は、同受け台及びクランプ部材の間に挟圧した状態で、上記ワークの板面と平行な、かつ同ワークの端縁と垂直な方向に、移動できることを特徴とする請求項9に記載の突合せ溶接用ワークの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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