説明

ワーク供給装置

【課題】接触して並べることが難しいワークを、所定位置から取り出すことができ、経費が節減できて設備もコンパクト、しかも廃材の出ない、ワーク供給装置を提供する。
【解決手段】ワークを、少なくとも一次元状に配列担持してなる、可撓性のエンボスキャリア10と、このエンボスキャリア10を整列状態で、且つ積載収容する、可搬型キャリーケース11とをワーク供給のための手段として用いる。
可搬型キャリーケース11からエンボスキャリア10を取り出し、エンボスキャリア10を、担持されるワーク間隔で送り出して、エンボスキャリア10に担持されるワークを、所定の位置で取り出すようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付け等の加工を行う際、接触して並べることが難しいワークを供給するワーク供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、組付け加工に用いられる、接触して並べることが難しいワークの供給装置としては、図6に示すように、トレイチェンジャー1上のトレイマガジン2に複数のワークWを2次元的に配列し、トレイマガジン2単位でロボット近傍にワークWを配置しつつ、それぞれのワークWの位置までロボット3が縦横上下に移動して取り出すものが採用されてきた。
しかしながら、このような方式では、トレイチェンジゃー1とロボット3を用いてワークWを搭載したトレイマガジン2からワークWを供給し、排出を行うため、設備のコンパクト化は困難であった。
【0003】
それを解決するものとして、特許文献1が開示するように、エンボステープおよびカバーテープによって電子部品を封止したものから電子部品を供給する装置がある。この装置であれば、ワークの取出し位置を特定して、その取出し位置からのみ電子部品を取り出すということが可能となり、設備が比較的コンパクトになる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−33163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された装置では、エンボステープに搭載した電子部品を供給するためには、カバーテープを外すという工程が必要となり、製造コストが増大してしまうという問題があった。
このため本発明では、設備をコンパクトにしつつ、製造コストを極力抑えることが可能なワーク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、少なくとも一次元状にワークを配列担持してなる可撓性のエンボスキャリア(10)と、このエンボスキャリア(10)を整列状態で積載収容可能なキャリーケース(11)と、このキャリーケース(11)からエンボスキャリア(10)を取り出すエンボスキャリア取出手段(13)と、このエンボスキャリア取出手段(13)によりキャリアケース(11)から取り出されたエンボスキャリア(10)より、ワークが所定の位置で取り出された後、エンボスキャリア(10)を反転搬送して回収する回収手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、ワークを、一次元状に配列担持してなる、可撓性のエンボスキャリア(10)を、整列状態で積載収容する可搬型キャリーケース(11)から、エンボスキャリア(10)を取り出すと共に、担持されるワーク間隔で送り出して、所定の位置に至ったワークを取り出すことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、回収手段は、エンボスキャリア(10)を反転搬送する反転搬送手段(160)と、この反転搬送手段(160)にて搬送されたエンボスキャリア(10)を、整列し積上げ回収する積上げ回収手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、ワークを取り出した後に、エンボスキャリア(10)を反転搬送することで、エンボスキャリア(10)を元の位置に空の状態で戻すことができる。反転搬送されたエンボスキャリア(10)を整列し積上げ回収することで、繰り返し、ワークをエンボスキャリア(10)に搭載して、ワーク供給に供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、反転搬送手段(160)は、エンボスキャリア(10)の進行方向を反転する円弧状外側ガイド(16a)、ローラ状内側ガイド(16b)、および両側面ガイド(16c)を有する反転搬送ガイド手段(16)を備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、これにより、エンボスキャリア(10)は、円弧状外側ガイド(16a)と、ローラ状内側ガイド(16b)との間に挟まれた状態で進行し、これにより、進行方向を、180度反転して、元の位置に、逆さまの状態で戻すことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、エンボスキャリア取出手段(13)により取り出されたエンボスキャリア(10)を、担持された間隔で所定の位置へと送り出すエンボスキャリア送出手段(14)を備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、エンボスキャリア(10)を、エンボスキャリア送出手段(14)により担持された間隔で所定の位置へと送り出すことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、エンボスキャリア(10)は短冊状に形成されると共に、一次元状に配列形成したワークを担持するワーク受入用ポケット(12)と、長手側両側縁部の近傍に沿って、ワーク受入用ポケット(12)の間に設けられたピッチ送り穴(10h)とを備えるものであり、エンボスキャリア送出手段(14)は、ピッチ送り穴(10h)を利用して、エンボスキャリア(10)を、担持された間隔で所定の位置へ直線状に送り込むようにしたことを特徴とする。
【0015】
これにより、ピッチ送り穴(10h)を介して、エンボスキャリア(10)を直線状に押込む際に利用することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、キャリーケース(11)は、底部寄りの側壁に、エンボスキャリア(10)を取り出すための開口部(11a)を設けたことを特徴とする。
【0017】
これにより、エンボスキャリア(10)を、可搬型キャリーケース(11)の底部寄りの開口部(11a)から取り出すことができる。
【0018】
さらに請求項7に記載の発明では、前記エンボスキャリア取出手段(13)は、積載された前記エンボスキャリア(10)のうち、最下段のエンボスキャリア(10)を前記開口部(11a)から長手方向に取り出すようにしたことを特徴とする。
【0019】
これにより、積重ねられた状態でも、長手方向にエンボスキャリア(10)をずらして取り出すことができ、最上部に、ワークを担持した新しいエンボスキャリア(10)を補充することができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に、本発明にかかるワーク供給装置の要部を模式的に示し、以下、詳細に説明する。
このワーク供給装置は、ワーク(図示省略)を、少なくとも一次元状に配列担持してなる、可撓性短冊型エンボスキャリア10と、このエンボスキャリア10を整列状態で、且つ積載収容する、可搬型キャリーケース11とを備えている。
そしてこのワーク供給装置では、かかるワーク供給のための手段としてのエンボスキャリア10と可搬型キャリーケース11とを用いて、後述するエンボスキャリア取出手段により、可搬型キャリーケース11からエンボスキャリア10を取り出すと共に、エンボスキャリア10を、担持されるワーク間隔で送り出し、エンボスキャリア10に担持されるワークを、所定の位置で取り出し、ワーク取出し後に、エンボスキャリア10を反転搬送して、反転搬送されたエンボスキャリア10を整列し積上げ回収するようにしている。
【0022】
エンボスキャリア10は、周知の可撓性素材を用いた、長尺状の短冊部材であり、後述するように、長手方向に送り出す際、容易に長手方向に反転搬送を可能としている。
かかるエンボスキャリア10には、図2に示すように、一次元状に配列形成した、所定深さと形状の凹部である、ワーク受入用ポケット12を具備している。
【0023】
可搬型キャリーケース11は、多数のエンボスキャリア10を整列状態で、積上げ、積載収容する容積を有する。
かかる可搬型キャリーケース11の底部寄りの側壁には、積載したエンボスキャリア10をエンボスキャリア取出手段13により、最下段から長手方向に取り出すための開口部11aを設けている(図3参照)。
【0024】
次に、ワーク供給のための手段としてのエンボスキャリア10と可搬型キャリーケース11とを用いて実行されるワーク供給手順について説明する。
先ず、ワークをワーク受入用ポケット12に詰めた状態のエンボスキャリア10を、エンボスキャリア取出手段13によって、可搬型キャリーケース11の底部寄りの側壁に設けた開口部11aから、多数積載されたエンボスキャリア10のうち、最下段のエンボスキャリア10を長手方向に沿って取り出す。
なお、エンボスキャリア取出手段13は、例えば、スライドガイド13aと、このスライドガイド13a上を往復動可能に設けたプッシャー13bとからなる。かかるエンボスキャリア取出手段13のスライドガイド13aを、キャリーケース11の底部の開口部11aに向けて、キャリーケース11の背後開口部11bから装入して、プッシャー13bをスライドガイド13aに沿って開口部11aに向けて移動させることで、積載されたエンボスキャリア10のうち、最下段のエンボスキャリア10を開口部11aから長手方向に取り出すようにしている。勿論、エンボスキャリア取出手段13は一例であり、その構成、手段は適宜である。
【0025】
次いで取り出されたエンボスキャリア10は、エンボスキャリア10に設けられた、長手側両側縁部の近傍に沿って、エンボスキャリア送出手段14としての直動押込み手段により(以下、直動押込み手段14)、ワークのピッチ毎、すなわち、ワーク受入用ポケット12の間に設けられたピッチ送り穴10hを利用して、直線状に送り込むようにしている。
この場合、直動押込み手段14は、詳細は図示しないが、例えば直動駆動源により、押込み方向に進退動する直動軸15に直角状に突設する送りピン15aと位置決めピン15bとを備えている(図5参照)。送りピン15aは、上記ピッチ送り穴10hに嵌入することで、エンボスキャリア10を押込むことができる。また、送りピン15aに対し、所定間隔おいて形成した、位置決めピン15bは、後続して可搬型キャリーケース11から取り出されたエンボスキャリア10の位置決めを行っている。
【0026】
次に、エンボスキャリア10に担持されるワークを、所定の位置で取り出すに当たり、図示しない、ワーク取出し手段として例えば二次元動作取出し機構により、一定の定まった取出し位置で、ピックアップする構成である。かかる取出し位置は、後述する反転搬送するガイド手段の直前となるように設定されている。
【0027】
次に、ワーク取出し後に、エンボスキャリア10を反転搬送するために、反転搬送手段160として、エンボスキャリア10の送り出す方向先端に配置した、反転搬送ガイド手段16を備えている(図4参照)。反転搬送ガイド手段16は、詳細は示さないが直動押込み手段14によって押込まれるエンボスキャリア10の進行方向を、180度反転する円弧状外側ガイド16aと、ローラ状内側ガイド16bと、両側面ガイド16cとを備えている。
【0028】
そして、反転搬送されたエンボスキャリア10を整列し積上げ回収するにあたり、エンボスキャリア10は、裏返しの状態で、例えば適宜な回収ケース(図示省略)に、順次、積重ねられるようになっている。
【0029】
本発明にかかるワーク供給装置では、以上のような短冊型エンボスキャリア10と、可搬型キャリーケース11とを、ワーク供給のための手段として採用しているので、以下のような手順でワークの供給を実行することができる。
【0030】
先ず、短冊型エンボスキャリア10のポケット12に、ワークを詰めた状態で、可搬型キャリーケース11の中に、積重ねた状態で部品供給したい設備にセットする(図1参照)。
【0031】
次いで、セットされた可搬型キャリーケース11の最下段にあるエンボスキャリア10を開口部11aからエンボスキャリア10の長手方向に取り出すことができる。この場合、エンボスキャリア取出手段13のスライドガイド13aを、キャリーケース11の底部の開口部11aに向けて、キャリーケース11の背後開口部11bから装入して、プッシャー13bをスライドガイド13aに沿って開口部11aに向けて移動させることで、積載されたエンボスキャリア10のうち、最下段のエンボスキャリア10を開口部11aから長手方向に取り出すことができる。これにより、積重ねられた状態でも、長手方向にエンボスキャリア10をずらして取り出すことができ、最上部に、順次、ワークを担持した新しいエンボスキャリア10を補充することができる。
【0032】
エンボスキャリア10が可搬型キャリーケース11の開口部11aから取り出されると、エンボスキャリア10を、エンボスキャリア10に設けられた、長手方側両側縁部の近傍に沿って、ワークのピッチ毎、すなわち、ワーク受入用ポケット12の間に設けられたピッチ送り穴10hを利用して、直動押込み手段14により、直線状に送り込むようにする(図5参照)。
この場合、直動押込み手段14の直動駆動源により直動軸15をエンボスキャリア10の長手方向に伸長駆動することで、直動軸15に突設する送りピン15aは、ピッチ送り穴10hを介して、エンボスキャリア10を押込むことができる。
また、送りピン15aに対し、所定間隔おいて形成した、位置決めピン15bは、後続して可搬型キャリーケース11から取り出されたエンボスキャリア10の位置決めを行う。
【0033】
そして、エンボスキャリア10が直動押込み手段14によって押込まれ、エンボスキャリア10の送り出す方向先端に配置した、反転搬送ガイド手段16の直前に達すると、二次元動作取出し機構により、定まった取出し位置で、ピックアップすることができる。このように、定まった取出し位置からのみワークをピックアップするようにしているので、これまでのような3軸のロボットに比較して、限定された動作機能の二次元動作取出し機構を用いることができる。
【0034】
以上のように、二次元動作取出し機構により、定まった取出し位置でワークが取り出され、直動押込み手段14によって、エンボスキャリア10がさらに押込まれていくと、エンボスキャリア10は、円弧状外側ガイド16aと、ローラ状内側ガイド16bとの間に挟まれた状態で進行し、これにより、進行方向を、180度反転して、元の位置に、逆さまの状態で戻すことができる。
【0035】
そして、エンボスキャリア10は、裏返しの状態で、回収ケースに順次、積重ねられ、再度、空のエンボスキャリア10にワークを詰めて、次のワーク供給に供することができる。
【0036】
このように、接触して並べることが難しいワークを、所定位置から取り出すことができ、経費が節減できて設備もコンパクト、しかも廃材の出ない、ワーク供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るワーク供給装置を、ワーク供給のための手段を用いて示した、模式図である。
【図2】図1に示すワーク供給のための手段のうち、エンボスキャリアの拡大的斜視説明図である。
【図3】エンボスキャリア取出手段の一例を示した、概略斜視説明図である。
【図4】本発明に係るワーク供給装置のうち、ワーク取出し後に、エンボスキャリアを反転搬送するために用いられる反転搬送手段の概略斜視説明図である。
【図5】図4に示した反転搬送手段の、断面説明図である。
【図6】従来のワーク供給装置の一例を示す、模式的な斜視説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10 エンボスキャリア
10h ピッチ送り穴
11 可搬型キャリーケース
11a 開口部
12 ポケット
13 エンボスキャリア取出手段
13a スライドガイド
13b プッシャー
14 直動押込み手段
15 直動軸
15a 送りピン
15b 位置決めピン
160 反転搬送手段
16 反転搬送ガイド手段
16a 外側ガイド
16b 内側ガイド
16c 側面ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一次元状にワークを配列担持してなる可撓性のエンボスキャリア(10)と、
このエンボスキャリア(10)を整列状態で積載収容可能なキャリーケース(11)と、
このキャリーケース(11)から前記エンボスキャリア(10)を取り出すエンボスキャリア取出手段(13)と、
このエンボスキャリア取出手段(13)により前記キャリアケース(11)から取り出された前記エンボスキャリア(10)より、前記ワークが所定の位置で取り出された後、前記エンボスキャリア(10)を反転搬送して回収する回収手段と、
を備えることを特徴とするワーク供給装置。
【請求項2】
前記回収手段は、
前記エンボスキャリア(10)を反転搬送する反転搬送手段(160)と、
この反転搬送手段(160)にて搬送された前記エンボスキャリア(10)を、整列し積上げ回収する積上げ回収手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク供給装置。
【請求項3】
前記反転搬送手段(160)は、
前記エンボスキャリア(10)の進行方向を反転する円弧状外側ガイド(16a)、ローラ状内側ガイド(16b)、および両側面ガイド(16c)を有する反転搬送ガイド手段(16)を備えることを特徴とする請求項2記載のワーク供給装置。
【請求項4】
前記エンボスキャリア取出手段(13)により取り出された前記エンボスキャリア(10)を、担持された間隔で前記所定の位置へと送り出すエンボスキャリア送出手段(14)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク供給装置。
【請求項5】
前記エンボスキャリア(10)は短冊状に形成されると共に、
一次元状に配列形成した前記ワークを担持するワーク受入用ポケット(12)と、
長手側両側縁部の近傍に沿って、前記ワーク受入用ポケット(12)の間に設けられたピッチ送り穴(10h)と、を備えるものであり、
前記エンボスキャリア送出手段(14)は、前記ピッチ送り穴(10h)を利用して、前記エンボスキャリア(10)を、担持された間隔で前記所定の位置へ直線状に送り込むようにしたことを特徴とする請求項4に記載のワーク供給装置。
【請求項6】
前記キャリーケース(11)は、底部寄りの側壁に、エンボスキャリア(10)を取り出すための開口部(11a)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワーク供給装置。
【請求項7】
前記エンボスキャリア取出手段(13)は、積載された前記エンボスキャリア(10)のうち、最下段のエンボスキャリア(10)を前記開口部(11a)から長手方向に取り出すようにしたことを特徴とする請求項6に記載のワーク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−143685(P2010−143685A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321186(P2008−321186)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】