説明

ワーク搬送方法およびワーク搬送装置

【課題】設備コストを抑制し、かつ、ハンドと固定治具との間におけるワークの双方向の受け渡しを確実に実施することが可能であるワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】固定治具110に配置され、ワーク10に配置される開口部に挿入自在であるロケートピン120、固定治具110に対して近接離間自在に配置されるワーク搬送用のハンド130、ハンド130に配置され、ワーク10の開口部に挿入自在であり、固定治具110のロケートピン120と同心となるよう位置決めされる伸縮自在のロケートピン140、および、ハンド130のロケートピン140が開口部に挿入されたワーク10を、ワーク10が引き渡される固定治具110に向かって押し出すノックアウト機構150を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送方法およびワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車車体を構成するパネル状のワークを、積層された状態でハンドと固定治具との間で搬送する場合、伸縮自在のハンド側ロケートピンを、ワークに配置されるロケート穴に挿入し、固定治具側ロケートピンと同心となるようにして位置決めした後、収縮(後退)させることによって、ワークが固定治具に受け渡される(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この構成では、ハンドと固定治具との間における双方向のワーク受け渡しが困難である。そのため、固定治具側ロケートピンとハンド側ロケートピンとを選択的に後退動させる選択手段を設けることで、ハンドと固定治具との間におけるワークの双方向の受け渡しを可能としている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2924322号公報
【特許文献2】特開2007−152473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、積層された状態のワークにズレあるいはバラツキがあり、例えば、ロケートピンとの間でカジリが生じる場合、ハンドと固定治具との間におけるワークの受け渡しが不可能となる虞がある。また、固定治具側ロケートピンとハンド側ロケートピンの両者が、伸縮自在に構成され、かつ、選択手段を設ける必要があるため、設備コストの抑制が困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、設備コストを抑制し、かつ、ハンドと固定治具との間におけるワークの双方向の受け渡しを確実に実施することが可能であるワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、固定治具に載置されるワークを、受け取って搬送するワーク受け取り工程と、受け取って搬送された前記ワークを、前記固定治具あるいは別の固定治具に引き渡すワーク引き渡し工程と、を有するワーク搬送方法である。そして、前記ワーク引き渡し工程において、ワーク搬送用のハンドに配置されかつ前記ワークの開口部に挿入されている伸縮自在のロケートピンを、前記ワークが引き渡される前記固定治具に配置されるロケートピンと同心となるよう位置決めし、当接させた後において、前記ワークを前記固定治具に向かって移動させ、前記ワークの開口部に前記固定治具のロケートピンを挿入する際、前記ハンドのロケートピンを収縮させながら、ノックアウト機構によって、前記ワークを、前記固定治具に向かって押し出す。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の別の一様相は、固定治具に載置されるワークを受け取って搬送し、前記固定治具あるいは別の固定治具に引き渡すワーク搬送装置である。当該ワーク搬送装置は、前記固定治具に配置され、前記ワークに配置される開口部に挿入自在であるロケートピン、前記固定治具に対して近接離間自在に配置されるワーク搬送用のハンド、前記ハンドに配置され、前記ワークの前記開口部に挿入自在であり、前記固定治具のロケートピンと同心となるよう位置決めされる伸縮自在のロケートピン、および、前記ハンドのロケートピンが前記開口部に挿入された前記ワークを、前記ワークが引き渡される前記固定治具に向かって押し出すノックアウト機構を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一様相に係るワーク搬送方法および別の一様相に係るワーク搬送装置によれば、ワークにバラツキがあり、例えば、ロケートピンとの間でカジリが生じる場合であっても、ノックアウト機構によって、ワークは固定治具に向かって押し出されるため、ハンドと固定治具との間におけるワークの受け渡しが不可能となる虞は、排除される。また、固定治具は、伸縮自在のロケートピンを必要としないため、安価とすることが可能である。つまり、設備コストを抑制し、かつ、ハンドと固定治具との間におけるワークの双方向の受け渡しを確実に実施することが可能であるワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るワーク搬送装置を説明するための斜視図である。
【図2】図1に示されるノックアウト機構を説明するための側面図である。
【図3】図1に示されるノックアウト機構を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法におけるワーク受け取り工程を説明するための斜視図であり、ハンドの位置決めを示している。
【図5】本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法におけるワーク受け取り工程を説明するための断面図であり、ハンドの位置決めを示している。
【図6】ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための斜視図である。
【図7】ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための断面図である。
【図8】ハンドの降下に続く、ワークの把持を説明するための斜視図である。
【図9】ハンドの降下に続く、ワークの把持を説明するための断面図である。
【図10】ワークの把持に続く、ハンドの上昇を説明するための斜視図である。
【図11】ワークの把持に続く、ハンドの上昇を説明するための断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法におけるワーク引き渡し工程を説明するための斜視図であり、ハンドの位置決めを示している。
【図13】本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法におけるワーク引き渡し工程を説明するための断面図であり、ハンドの位置決めを示している。
【図14】ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための斜視図である。
【図15】ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための断面図である。
【図16】ハンドの降下に続く、ワークの把持解除を説明するための斜視図である。
【図17】ハンドの降下に続く、ワークの把持解除を説明するための断面図である。
【図18】ワークの把持解除に続く、ハンドの上昇を説明するための斜視図である。
【図19】ワークの把持解除に続く、ハンドの上昇を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るワーク搬送装置を説明するための斜視図、図2および図3は、図1に示されるノックアウト機構を説明するための側面図および断面図である。
【0012】
本発明の実施の形態に係るワーク搬送装置100は、パレット(固定治具)110、ワーク搬送用のハンド130およびロボットアーム190を有し、パレット110に載置されるワーク10を受け取って搬送し、同一あるいは別のパレット110に引き渡すために使用される。ワーク10は、薄いシート状の2次電池の積層体であり、四隅にロケート穴(開口部)16が配置されている。なお、ロボットアーム190は、多関節(多軸)式であり、ハンド130を移動させるために使用される。
【0013】
パレット110は、ワーク10が配置される略矩形の載置台112と、載置台112の四隅に配置されるロケートピン(パレット側ロケートピン)120とを有する。載置台112の幅Wは、図2に示されるように、ワーク10の側面が載置台112から食み出るように、ワーク10の幅Wより小さく設定される。パレット側ロケートピン120は、ワーク10のロケート穴16に挿入自在であり、また、上部端面に、凹部128が形成されている。
【0014】
ハンド130は、パレット110に対して近接離間自在に配置され、パレット110に載置されるワーク10と相対する略矩形の基部132と、基部132の四隅に配置されるロケートピン(ハンド側ロケートピン)140と、ノックアウト機構150と、ワーク把持機構170とを有する。
【0015】
ハンド側ロケートピン140は、縮径シャフト部142と、縮径シャフト部の両側に位置する拡径シャフト部141,143からなる。下方に位置する拡径シャフト部143は、ワーク10のロケート穴16に挿入自在であり、パレット側ロケートピン120と同心となるよう位置決めされ、また、その下部端面は、テーパー状の凸部148が形成されている。凸部148は、パレット側ロケートピン120の凹部128と、嵌合自在に設定されており、ハンド側ロケートピン140とパレット側ロケートピン120と同心となるよう位置決めし、当接させることが容易である。
【0016】
また、ハンド側ロケートピン140の縮径シャフト部142は、図3に示されるように、ハンド基部132に形成される開口部134にスライド自在に挿入され、かつ、スプリング(バネ部材)146が、周囲に配置されている。スプリング146は、ハンド側ロケートピン140がハンド基部132から離間する方向に付勢力が付与されるように設定される。したがって、ハンド側ロケートピン140は、スプリング146によって発生される付勢力によって、伸縮自在である。なお、ハンド基部132の開口部134の内径は、ハンド側ロケートピン140の拡径シャフト部141の外径より小さく設定されており、ハンド基部132からのハンド側ロケートピン140の脱落が抑制されている。
【0017】
ノックアウト機構150は、ハンド側ロケートピン140がロケート穴16に挿入されたワーク10を、ワーク10が引き渡されるパレット110に向かって押し出すために使用され、図3に示されるように、カラー部(環状部材)152と、基部154と、スプリング(バネ部材)156とを有する。
【0018】
これにより、積層されているワーク10にバラツキがあり、例えば、ハンド側ロケートピン140との間でカジリが生じる場合であっても、ノックアウト機構150によって、ワーク10はパレット110に向かって押し出されるため、ハンド130とパレット110との間におけるワーク10の受け渡しが不可能となる虞は、排除される。また、パレット110は、伸縮自在のロケートピンを必要としないため、安価とすることが可能である。したがって、設備コストを抑制し、かつ、ハンド130とパレット110の間におけるワーク10の双方向の受け渡しを確実に実施することが可能である。
【0019】
カラー部152は、中空円筒状であり、ハンド側ロケートピン140の外周にスライド自在に配置され、ハンド側ロケートピン140がロケート穴16に挿入されたワーク10と、当接するように設定される。つまり、ハンド側ロケートピン140は、カラー部152に対して入れ子式となっている。また、カラー部152は、ハンド基部132に面する上部端部に配置されるフランジ153を有する。
【0020】
ノックアウト機構基部154は、中空円筒状であり、カラー部152を入れ子式に収容自在に設定されており、また、ワーク10に面する下部端部に配置される縮径部155を有する。縮径部155の内径は、カラー部152のフランジ153の外径より小さく設定されており、ノックアウト機構基部154からのカラー部152の脱落が抑制されている。
【0021】
スプリング156は、ハンド側ロケートピン140の周囲に配置されており、カラー部152がハンド基部132から離間する方向に付勢力が付与されるように設定されており、付勢力は、カラー部152に当接しているワーク10を、パレット110に向かって押し出し得るように設定されている。
【0022】
ワーク10をパレット110に向かって押し出すためのカラー部152の駆動源は、付勢力であり、複雑な機構を必要としないため、設備コストの上昇を抑制することが可能である。また、カラー部152は、弾性的に付勢されるため、カラー部152が当接するワーク10の厚みや積層数が変化する場合であっても、適用が容易である。なお、スプリング156の径は、ハンド側ロケートピン140に付与される付勢力を発生させるためのスプリング146の径より大きく設定されており、スプリング146との干渉を避けている。つまり、ノックアウト機構用スプリング156は、ハンド側ロケートピン用スプリング146の外周に配置されており、スプリング二重構造を形成している。
【0023】
ワーク把持機構170は、アクチュエータ172と、アクチュエータ172によって駆動される支持プレート(受け部材)178と、カラー部152とから構成される。アクチュエータ172は、ハンド基部132に固定される基部173と、可動ブロック174と、可動シャフト175とを有する。可動ブロック174は、基部173に対してX方向に近接離間自在である。可動シャフト175は、可動ブロック174に配置されており、Y方向にスライド自在である。アクチュエータ172の駆動源は、例えば、サーボモータである。なお、X方向は、パレット載置台112に配置されるワーク10の側面と直交する方向であり、Y方向は、ワーク10の表面12と直交する方向である。
【0024】
支持プレート178は、略矩形の平板であり、可動シャフト175の下部端部に固定されている。したがって、支持プレート178を、アクチュエータ172によってX方向およびY方向に駆動することで、カラー部152が当接するワーク10と干渉することなく、載置台112から食み出ているワーク10の背面(カラー部152が当接する表面12の反対側に位置する面)14に位置決めし、当該背面14を支持することが可能である。
【0025】
カラー部152は、上記のように、ハンド側ロケートピン140がロケート穴16に挿入されたワーク10と、当接するように設定される。したがって、ワーク表面12にカラー部152を当接させた状態で、ワーク背面14を支持プレート178によって支持する場合、ワーク10が把持されることになる。つまり、ノックアウト機構150のカラー部152が、ワーク把持機構170の一部を構成しているため、設備を簡略化し、設備コストの上昇を抑制することが可能である。なお、ワーク把持機構170は、ノックアウト機構150のカラー部152を利用する形態に限定されず、例えば、ノックアウト機構150から独立したクランプ機構や、バキュームカップを適用することも可能である。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法を説明する。
【0027】
本ワーク搬送方法は、概して、パレット110に載置されるワーク10を、受け取って搬送するワーク受け取り工程と、受け取って搬送されたワーク10を、同一あるいは別のパレット110に引き渡すワーク引き渡し工程と、を有する。
【0028】
ワーク受け取り工程において、ハンド側ロケートピン140を、ワーク10のロケート穴16に挿入されているパレット側ロケートピン120と、同心となるよう位置決めし、当接させながら収縮させた後において、ワーク10を、パレット110から離間させながら、ハンド側ロケートピン140を伸長させることにより、ワーク10のロケート穴16に、ハンド側ロケートピン140を挿入する。ワーク引き渡し工程において、ハンド側ロケートピン140を、ワーク10が引き渡されるパレット110のロケートピン120と同心となるよう位置決めし、当接させた後において、ワーク10をパレット110に向かって移動させ、ワーク10のロケート穴16にパレット側ロケートピン120を挿入する際、ハンド側ロケートピン140を収縮させながら、ノックアウト機構によって、ワーク10を、パレット110に向かって押し出す。
【0029】
したがって、積層されているワーク10にバラツキがあり、例えば、ハンド側ロケートピン140との間でカジリが生じる場合であっても、ノックアウト機構150によって、ワーク10はパレット110に向かって押し出されるため、ハンド130とパレット110との間におけるワーク10の受け渡しが不可能となる虞は、排除される。また、パレット110は、伸縮自在のロケートピンを必要としないため、安価とすることが可能である。つまり、設備コストを抑制し、かつ、ハンド130とパレット110の間におけるワーク10の双方向の受け渡しを確実に実施することが可能である。
【0030】
次に、ワーク受け取り工程を詳述する。
【0031】
図4および図5は、ワーク受け取り工程におけるハンドの位置決めを説明するための斜視図および断面図、図6および図7は、ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための斜視図および断面図、図8および図9は、ハンドの降下に続く、ワークの把持を説明するための斜視図および断面図、図10および図11は、ワークの把持に続く、ハンドの上昇を説明するための斜視図および断面図である。
【0032】
まず、図4および図5に示されるように、ハンド130が、ロボットアームによって駆動され、パレット110の載置台112の上方に配置され、ハンド側ロケートピン140がパレット側ロケートピン120と、同心となるよう位置決めされる。この際、載置台112に配置されるパレット側ロケートピン120は、積層されているワーク10のロケート穴16に挿入されている。
【0033】
ワーク把持機構170の可動ブロック174は、ハンド基部132に固定される基部173から離間しており、可動ブロック174に配置される可動シャフト175の下部端部に固定されている支持プレート178は、ワーク10と干渉しない位置に退避している。ハンド側ロケートピン140およびノックアウト機構150のカラー部152は、パレット側ロケートピン120およびワーク10に当接していないため、スプリング146,156(図3参照)によって付勢され、ワーク10に向かって伸長している。
【0034】
そして、図6および図7に示されるように、ハンド130がY方向に降下し、ハンド側ロケートピン140がパレット側ロケートピン120と当接する。この際、ハンド側ロケートピン140の凸部148とパレット側ロケートピン120の凹部128とが嵌合するため、同心となるよう位置決めし当接させることが、容易である。
【0035】
ハンド側ロケートピン140は、その外周にスライド自在に配置されるノックアウト機構150のカラー部152に対して入れ子式であり、かつ、伸縮自在であるため、パレット側ロケートピン120と当接することで、カラー部152の内部に向かって収縮する。これにより、カラー部152が、相対的に突出し、ハンド側ロケートピン140がロケート穴16に挿入されたワーク10と、当接する。
【0036】
カラー部152は、ノックアウト機構基部154に対して入れ子式であり、かつ、スプリング156を弾性変形させることにより発生させた勢力が付与されている。つまり、カラー部152は、弾性的に付勢されかつ伸縮自在であるため、ワーク10の厚みや積層数が変化する場合であっても、適用が容易である。
【0037】
その後、図8および図9に示されるように、ワーク把持機構170の可動ブロック174を、X方向に移動させ、基部173に向かって近接させると共に、可動ブロック174に配置される可動シャフト175を、Y方向に上昇させる。これにより、可動シャフト175の下部端部に固定されている支持プレート178を、パレット110の載置台112から食み出ている最下層のワーク10の背面14に位置決めし、ワーク10を下方から支持する。
【0038】
この結果、ノックアウト機構150のカラー部152と、ワーク把持機構170の支持プレート178とによって、ワーク10が把持されることになる。つまり、ノックアウト機構150のカラー部152が、ワーク把持機構170の一部を構成するため、設備を簡略化し、設備コストの上昇を抑制することが可能である。
【0039】
そして、図10および図11に示されるように、ハンド130は、ロボットアームによって駆動され、受け取ったワーク10を搬送するため、上昇する。
【0040】
次に、ワーク引き渡し工程を詳述する。
【0041】
図12および図13は、ワーク引き渡し工程におけるハンドの位置決めを説明するための斜視図および断面図、図14および図15は、ハンドの位置決めに続く、ハンドの降下を説明するための斜視図および断面図、図16および図17は、ハンドの降下に続く、ワークの把持解除を説明するための斜視図および断面図、図18および図19は、ワークの把持解除に続く、ハンドの上昇を説明するための斜視図および断面図である。
【0042】
まず、図12および図13に示されるように、ハンド130が、ロボットアームによって駆動され、パレット110の載置台112の上方に配置され、ハンド側ロケートピン140がパレット側ロケートピン120と、同心となるよう位置決めされる。なお、ハンド側ロケートピン140は、積層されているワーク10のロケート穴16に挿入されている。ワーク把持機構170の可動ブロック174は、基部173に近接しており、可動ブロック174に配置される可動シャフト175の下部端部に固定されている支持プレート178は、最下層のワーク10の背面14に位置決めされ、ワーク10を下方から支持している。
【0043】
その後、図14および図15に示されるように、ハンド130がY方向に降下し、ハンド側ロケートピン140がパレット側ロケートピン120と当接する。この際、ハンド側ロケートピン140の凸部148とパレット側ロケートピン120の凹部128とが嵌合するため、同心となるよう位置決めし当接させることが、容易である。
【0044】
ハンド130の降下を継続させ、ワーク10を、パレット110に向かって移動させながら、ハンド側ロケートピン140を収縮させることにより、ワーク10のロケート穴16に、パレット側ロケートピン120が挿入される。この際、ハンド側ロケートピン140は、ノックアウト機構150のカラー部152の内部に向かって後退するため、カラー部152が、相対的に突出し、ハンド側ロケートピン140がロケート穴16に挿入されたワーク10と、当接する。カラー部152は、付勢力が付与されているため、当該付勢力に基づき、カラー部152に当接しているワーク10を、パレット110に向かって押し出す。
【0045】
したがって、積層されているワーク10にバラツキがあり、例えば、ハンド側ロケートピン140との間でカジリが生じる場合であっても、ノックアウト機構150によって、ワーク10はパレット110に向かって確実に押し出される。
【0046】
ワーク10をパレット110に向かって押し出すためのカラー部152の駆動源は、付勢力であり、複雑な機構を必要としないため、設備コストの上昇を抑制することが可能である。また、付勢力は、スプリング156を弾性変形させることにより発生させており、カラー部152は、弾性的に付勢されるため、カラー部152が当接するワーク10の厚みや積層数が変化する場合であっても、適用が容易である。
【0047】
そして、図16および図17に示されるように、ワーク把持機構170の可動シャフト175をY方向に降下させると共に、可動ブロック174をX方向に移動させ、基部173から離間させる。これにより、可動シャフト175の下部端部に固定されている支持プレート178は、ワーク10の支持から開放され、ワーク10と干渉しない位置に退避する。なお、ノックアウト機構150のカラー部152は、ワーク10の把持が解除された時点においても、パレット110に引き渡されたワーク10の表面12の押圧を継続している。
【0048】
その後、図18および図19に示されるように、ハンド130は、ロボットアームによって駆動され、次のワーク10を搬送するため、上昇する。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態に係るワーク搬送方法およびワーク搬送装置によれば、積層されているワークにバラツキがあり、例えば、ハンド側ロケートピンとの間でカジリが生じる場合であっても、ノックアウト機構によって、ワークはパレットに向かって押し出されるため、ハンドとパレットとの間におけるワークの受け渡しが不可能となる虞は、排除される。また、パレットは、伸縮自在のロケートピンを必要としないため、安価とすることが可能である。したがって、設備コストを抑制し、かつ、ハンドとパレットの間におけるワークの双方向の受け渡しを確実に実施することが可能である。つまり、本発明の実施の形態は、設備コストを抑制し、かつ、ハンドと固定治具との間におけるワークの双方向の受け渡しを確実に実施することが可能であるワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供することが可能である。
【0050】
ワークをパレットに向かって押し出すためのノックアウト機構のカラー部の駆動源は、付勢力であり、複雑な機構を必要としないため、設備コストの上昇を抑制することが可能である。
【0051】
カラー部は、弾性的に付勢されるため、カラー部が当接するワークの厚みや積層数が変化する場合であっても、適用が容易である。
【0052】
カラー部は、ワーク把持機構の一部を構成するため、設備を簡略化し、設備コストの上昇を抑制することが可能である。
【0053】
ハンド側ロケートピンの凸部は、パレット側ロケートピンの凹部と、嵌合自在に設定されている。したがって、ハンド側ロケートピンとパレット側ロケートピンと同心となるよう位置決めし、当接させることが容易である。
【0054】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、ワークは、薄いシート状の二次電池の積層体に限定されず、厚いシート状の単一部材や、自動車車体を構成するパネルの積層体を適用することも可能である。また、ワークのロケート穴およびパレットのロケートピンは、四隅に配置する形態に限定されない。さらに、ワークのロケート穴は、ワークに配置される他の用途の穴を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 ワーク、
12 表面、
14 背面、
16 ロケート穴(開口部)、
100 ワーク搬送装置、
110 パレット(固定治具)、
112 載置台、
120 パレット側ロケートピン、
128 凹部、
130 ハンド、
132 基部、
134 開口部、
140 ハンド側ロケートピン、
141,143 拡径シャフト部、
142 縮径シャフト部、
146 スプリング(バネ部材)、
148 凸部、
150 ノックアウト機構、
152 カラー部(環状部材)、
153 フランジ、
154 基部、
155 縮径部、
156 スプリング(バネ部材)、
170 ワーク把持機構、
172 アクチュエータ、
173 基部、
174 可動ブロック、
175 可動シャフト、
178 支持プレート(受け部材)、
190 ロボットアーム、
X 方向、
Y 方向、
載置台の幅、
ワークの幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定治具に載置されるワークを、受け取って搬送するワーク受け取り工程と、
受け取って搬送された前記ワークを、前記固定治具あるいは別の固定治具に引き渡すワーク引き渡し工程と、を有しており、
前記ワーク引き渡し工程において、
ワーク搬送用のハンドに配置されかつ前記ワークの開口部に挿入されている伸縮自在のロケートピンを、前記ワークが引き渡される前記固定治具に配置されるロケートピンと同心となるよう位置決めし、当接させた後において、前記ワークを前記固定治具に向かって移動させ、前記ワークの開口部に前記固定治具のロケートピンを挿入する際、前記ハンドのロケートピンを収縮させながら、ノックアウト機構によって、前記ワークを、前記固定治具に向かって押し出す
ことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項2】
前記ワーク引き渡し工程において、
前記ハンドのロケートピンを収縮させる際、前記ハンドのロケートピンの外周にスライド自在に配置される前記ノックアウト機構の環状部材に付与される付勢力に基づき、前記環状部材に当接している前記ワークを、前記固定治具に向かって押し出す
ことを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送方法。
【請求項3】
前記ノックアウト機構の環状部材に付与される前記付勢力を、バネ部材を弾性変形させることにより発生させることを特徴とする請求項2に記載のワーク搬送方法。
【請求項4】
前記ワーク受け取り工程および前記ワーク引き渡し工程において、
前記ハンドのロケートピンの外周にスライド自在に配置される前記ノックアウト機構の環状部材と、前記環状部材が当接する前記ワークの表面の反対側に位置する背面に相対する受け部材とによって、前記ワークを把持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のワーク搬送方法。
【請求項5】
固定治具に載置されるワークを受け取って搬送し、前記固定治具あるいは別の固定治具に引き渡すワーク搬送装置であって、
前記固定治具に配置され、前記ワークに配置される開口部に挿入自在であるロケートピン、
前記固定治具に対して近接離間自在に配置されるワーク搬送用のハンド、
前記ハンドに配置され、前記ワークの前記開口部に挿入自在であり、前記固定治具のロケートピンと同心となるよう位置決めされる伸縮自在のロケートピン、および、
前記ハンドのロケートピンが前記開口部に挿入された前記ワークを、前記ワークが引き渡される前記固定治具に向かって押し出すノックアウト機構、
を有することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
前記ノックアウト機構は、前記ハンドのロケートピンの外周にスライド自在に配置される環状部材を有し、
前記環状部材は、前記ハンドのロケートピンが前記開口部に挿入された前記ワークと当接するように配置され、かつ、前記ハンドから離間する方向に付勢力が付与されており、
前記付勢力は、前記環状部材に当接している前記ワークを、前記固定治具に向かって押し出し得るように設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載のワーク搬送装置。
【請求項7】
前記ノックアウト機構は、前記環状部材に付与される付勢力を発生させるためのバネ部材を有することを特徴とする請求項6に記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
前記環状部材が当接する前記ワークの表面の反対側に位置する背面を支持自在である受け部材を有するワーク把持機構を有し、
前記ワーク把持機構は、前記環状部材と前記受け部材とによって、前記ワークを把持することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のワーク搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate