ワーク搬送用トレイ
【課題】段積みトレイの搬入出が容易になるワーク搬送用トレイを提供する。
【解決手段】ワーク搬送用トレイ1は、基板Sの搬送に用いられるものであって、桟4と矩形状の外枠2と支持部14bとを備えている。桟4は、基板Sを載置するワーク載置面を有する。支持部14bは、外枠2に設けられ、桟4を支持する。外枠2は、支持部14bから外方に向かって下り勾配であり下端部がワーク載置面より低い傾斜部13を有している。
【解決手段】ワーク搬送用トレイ1は、基板Sの搬送に用いられるものであって、桟4と矩形状の外枠2と支持部14bとを備えている。桟4は、基板Sを載置するワーク載置面を有する。支持部14bは、外枠2に設けられ、桟4を支持する。外枠2は、支持部14bから外方に向かって下り勾配であり下端部がワーク載置面より低い傾斜部13を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状のワークを載置して搬送するトレイに関し、特に、複数のトレイを積み重ねて保管することのできるワーク搬送用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄型表示装置の製造工程等において、ガラス基板に代表される薄板状の物品を搬送する技術が必要となっている。薄板状の物品は捻れや撓み等の変形が発生しやすく、搬送中に変形が原因で周囲に接触して、表面に傷が付いたり破損したりする恐れがある。このため搬送には、薄板状の物品を変形させずに載置できる専用の容器が用いられる。
薄板状の物品を、1枚ずつ個別の容器に載置して搬送することで、搬送中の物品の変形を防止することができる。しかし、個別の容器を用いると、搬送途中で一時保管を行う場合に、保管スペースを広く占めてしまうという問題があった。また、別の場所に容器をまとめて移送したい場合にも手間がかかるという問題があった。
そこで、薄板状の物品を個別に載置可能であり、しかも一時保管や別の場所への移送の際には容器同士を積み重ねることのできる容器が考案された。しかしながら、これらの容器には、容器内にダストが蓄積したり、積み重ねる際に自身からダストが発生して載置した物品を汚染したりするという問題が発生した。また、複数の容器を積み重ねた場合の全体の重量が重くなり、保管や運搬が不便であるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、4本の枠部材からなる矩形状の外枠と、枠部材間に掛け渡された複数の桟とからなるワーク搬送用トレイが考案された(例えば、特許文献1を参照。)。
図22に、そのようなトレイ201が段積みされた構造を示す(なお、以下、複数のトレイ201が積まれた状態を「段積みトレイ」という。)。トレイ201は、主に、枠202と複数の桟204とから構成されている。枠202は、複数の桟204を支持する複数の支持部212と、支持部212から外側に向かって高くなる傾斜部213と、傾斜部213の上部から外方に延びる外側平坦部211とを有している。桟204の上には、例えば、ガラス基板Sが載置される。外側平坦部211には、複数の樹脂ブロック208が設けられている。樹脂ブロック208は、外側平坦部211に形成された穴に下方から挿入された状態で固定され、積まれた他のトレイ201の樹脂ブロック208に係合するようになっている。複数のトレイ201が積み重ねられた状態で、各樹脂ブロック208は、自らが固定されたトレイ201の重量を支持するとともに、上側にある他のトレイ201の重量も支持する。樹脂ブロック208の高さを低く設定することで、各トレイ201同士のピッチを小さくできる。具体的には、トレイ201の傾斜部213の内側の収容空間内に、上側にある他のトレイ201の傾斜部213が入り込んでいる。
【特許文献1】特開2007−35761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトレイ201では、樹脂ブロック208は桟204より高い位置に配置されている。したがって、クレーンが段積みトレイを搬入出する際に、クレーンの爪301がトレイ201の外枠傾斜部213に接触しないように回避して、段積みトレイの下側に潜り込む必要があった。図22(a)は、クレーンのフォークの爪301が段積みトレイの下方に入り込んだ状態を示している。爪301の先端には、上側に延びる支持部301aが形成されている。図22(b)は爪301が上昇して樹脂ブロック208を支持している状態を示している。この状態では、爪301の支持部301aが樹脂ブロック208の下面を支持している。
以上の構造及び動作では、図から明らかなように、図22(a)のl(枠202の最下面と樹脂ブロック208の下面との上下方向間隔)以上のストロークLが必要になる。
【0005】
さらに、枠202の強度確保のために傾斜部213を高くすると、図のl、H(支持部301aの高さ)、Lがそれぞれ高くなる。つまり、ガラス基板Sが大型化すると、上記問題はより顕著になる。
また、2つの段積みトレイの間、あるいは段積みトレイとこれを上下動させるためのリフタ間にフォーク301が入る場合、Hが大きいと、より大きなスペースを確保する必要がある。
また、段積みトレイを床面に直置きする場合は、樹脂ブロックを支持するための置き台を用意しなければならなかった。
本発明の課題は、段積みトレイの搬入出が容易になるワーク搬送用トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のワーク搬送用トレイは、薄板状のワークの搬送に用いられるものであって、ワーク載置部と矩形状の枠と支持部を備えている。ワーク載置部は、ワークを載置するワーク載置面を有する。支持部は、枠に設けられ、ワーク載置部を支持する。枠は、支持部から外方に向かって下り勾配であり下端部がワーク載置面より低い傾斜部を有している。
このトレイでは、枠に傾斜部を設けることで枠の強度が十分に確保されている。さらに、枠の傾斜部が下り勾配であるため、傾斜部の下端部がワーク載置面より低い位置にあり、そのため段積みトレイの搬入出の際にクレーンのフォークが傾斜部との接触を容易に回避できる。そのため、段積みトレイの搬入出が容易になる。
なお、支持部は、枠と一体に形成されていても良いし、枠に固定された別部材でも良い。
【0007】
請求項2に記載のワーク搬送用トレイは、請求項1において、ワーク載置部のワーク載置面の周囲を覆う周囲より高い壁を有する囲い部材をさらに備えている。
従来のワーク搬送用トレイのように枠の傾斜部が外側向かって上り勾配の場合は、傾斜部がワーク載置部の周囲に配置されているため、ワークの飛び出しの問題が生じにくい。一方、請求項1に記載のワーク搬送用トレイのように枠の傾斜部が外方に向かって下り勾配である場合は、ワークの飛び出しの問題に対処する必要がある。そこで、このトレイでは、囲い部材を設けることで、例えば装置の急停止によってワークが移動しても、ワークのワーク搬送用トレイからの飛び出しを防止している。
【0008】
請求項3に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項2において、囲い部材は、枠の傾斜部と一体に形成されている。
このトレイでは、囲い部材が傾斜部と一体に形成されているため、部品点数を削減できる。
【0009】
請求項4に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項1〜3のいずれかにおいて、ワーク載置部は、枠に掛け渡されワーク載置面を上面に有する細長い複数の載置部材を有している。支持部は、枠に固定され載置部材の端部を支持する複数の支持部材を有する。
このトレイでは、複数の載置部材が複数の支持部材によって支持されているため、全体が軽量化される。
【0010】
請求項5に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項2または3において、枠は、傾斜部の下端部から外方に延びる延出部をさらに有している。トレイは、延出部に設けられ、他のワーク搬送用トレイに重ねられた状態で他のワーク搬送用トレイとの接触を避けるためスペースを確保するスペーサをさらに備えている。傾斜部の内方には、下に積まれた他のワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が収容される収容空間が形成されている。
このトレイでは、複数のワーク搬送用トレイが積まれた状態で、スペーサを介して各ワーク搬送用トレイは互いにスペースを確保した状態が保持される。この場合は、下に積まれたワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が、上に積まれたワーク搬送用トレイの傾斜部の内方にある収容空間に収容される。したがって、積み上げられたトレイ間のピッチが小さくなり、段積みトレイの高さが低くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るワーク搬送用トレイでは、枠の傾斜部が外方に向かって下り勾配であるため、段積みトレイの搬入出が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.第1実施形態
以下、本発明を適用したワーク搬送用トレイの実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(1)ワーク搬送用トレイの全体構造
図1は本発明に係るワーク搬送用トレイ1(以下、「トレイ1」とする)の一実施形態の構成を示す斜視図であり、図2はトレイ1の上面図である。
トレイ1は、薄板状の物品が載置され、物品を搬送するために用いられる。トレイ1は、主に、矩形状の外枠2と、外枠2の対向する長辺枠部材2aの間に掛け渡された複数の桟4(ワーク載置部)とを備えている。なお、この実施例では、薄板状の物品としてガラス基板Sを用いて説明する。
(2)外枠の構造
外枠2は、2本の長辺枠部材2aと2本の短辺枠部材2bとから構成される。本実施例における枠部材2a,2bには一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されている。
【0013】
図3及び図4は段積みされたトレイ1の部分斜視図であり、図5は段積みされたトレイ1の部分縦断面図である。
枠部材2a,2bは、図5の断面形状から明らかなように、外側平坦部11と、外側平坦部11よりも高い位置に形成される内側平坦部12を備えており、外側平坦部11と内側平坦部12の間に傾斜部13が設けられている。内側平坦部12は傾斜部13の上端部から内方に延出しており、外側平坦部11は傾斜部13の下端部から外方に延出している。外側平坦部11には、樹脂ブロック8(後述)を取り付けるためのブロック取付孔17が複数箇所設けられている。傾斜部13は、外枠2が形成されたときに下方に向けて広がった形状となるように角度が付けられている。
傾斜部13の高さは、枠部材2a,2b同士が長方形の外枠2として組み合わされた場合に、外枠2の平面度を所定量以内に維持するために必要な強度を保てる高さに設定される。このため、傾斜部13の高さが、1枚の基板Sを安全に収容するために必要な収容高さを越えた高さになる場合がある。ここで、「安全に収容する」とは、トレイが段積みされた状態において、ガラス基板が全て、あるいは一部のトレイに搭載されており、全体が所定の移動により振動を加えられても、ガラス基板や桟の上面が上側の桟に接触することがない、ことを意味する。外枠2の形状が大型化された場合には要求される強度が大きくなり、外枠2を強化するために傾斜部13の高さはより高くなる。小型の外枠2で要求される強度が低い場合には、傾斜部13を低くすることができる。
【0014】
枠部材2a,2b同士を接合することにより、本実施例の外枠2が形成される。本実施例の外枠2は、その断面形状が、上述したように、外側平坦部11、外側平坦部11の内側端から連続して上昇する傾斜部13、この傾斜部13の上端部から連続する内側平坦部12とで形成される。形成された外枠2の単体としての高さは傾斜部13の高さで決定されるが、複数のトレイ1を積み重ねる場合には、傾斜部13で囲まれた部分の一部が、別のトレイが入り込むための収容空間13a(図5)として機能するために、より小さいピッチで積み重ねることが可能となる。
長辺枠部材2aと短辺枠部材2bは、両端同士が、図12に示すように、第1接合部材28と第2接合部材29によって接合される。第1接合部材28は、L字形状のプレートであって、枠部材2a,2bの内側平坦部12同士をリベットを介して固定している。第2接合部材29は、L字形状のプレートであって、枠部材2a,2bの外側平坦部11同士をリベットを介して固定している。
(3)桟の構造
外枠2の対向する長辺枠部材2aの間に、複数の桟4が掛け渡されて、ガラス基板Sの載置部を構成している。桟4には一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されている。
【0015】
外枠2の長辺枠部材2aには、桟4を支持するための複数の支持部材14が固定されている。支持部材14は、図5に示すように、プレート部材であって、外枠2の傾斜部13の内側に接して図示しないリベットによって固定される固定部14aと、その上端から内側に延びる支持部14bとを有している。
桟4の一端部の拡大図を図10に示す。桟4は、ワーク載置面としての平坦部41と、その両側に形成され断面コの字形状を構成する一対の側壁部42と、各側壁部42から外側に延びる一対のフランジ43とから構成されている。以上の形状によって、桟4は、平板の部材を用いた場合よりも梁強度が向上しており、このため、桟4にはより板厚の薄い素材を用いることが可能となっており、桟4の軽量化が図られている。平坦部41の上面には、ガラス基板Sを支持するための複数の載置ピン44が固定されている。載置ピン44は耐磨耗性の高いポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK(登録商標))や超高分子量ポリエチレン(UPE)等で形成されており、ガラス基板Sを繰り返し搭載しても、磨耗によるダストがほとんど発生せず、ガラス基板Sを汚染しない。平坦部41の両端には、断面コの字形状内に支持部材14の支持部14bが配置されており、両者は図示しないリベットによって固定されている。このようにして、平坦部41は、支持部材14を介して外枠2に支持されている。
【0016】
このトレイ1では、外枠2の枠部材2a,2bの傾斜部13の上部と内側平坦部12が、桟4の平坦部41の周囲を覆う囲い部材として機能している。具体的には、囲い部材は、桟4の平坦部41より高い壁となっている。したがって、ガラス基板Sの外周部が外部から保護されている。また、例えば装置の急停止によってガラス基板Sが移動しても、ガラス基板Sがトレイ1から飛び出したり、あるいは、万一破損した場合でも破片が周囲に飛散しにくい構造となっている。
(4)樹脂ブロックの構造
樹脂ブロック8は、枠部材2a,2bの外側平坦部11に取りつけられた部材であり、各トレイ1同士の高さ方向のスペースを確保するためのスペーサであり、さらに各トレイ1同士の位置ずれを防止するためのトレイ位置規制部材である。
【0017】
樹脂ブロック8は、上下に積み重ねられるトレイ1との接触部となるために、ダストの発生が抑えられた素材で形成されることが好ましい。本実施例における樹脂ブロック8は、耐磨耗性が高く、機械的な強度に優れたPEEKやUPEで形成されている。樹脂ブロック8は、ブロック同士が接触しても摩耗が極めて少なく、ダストが発生したとしても落下しにくいために、搬送するガラス基板Sを汚染しにくい。
(5)第1樹脂ブロックと第2樹脂ブロックの構造および配置
樹脂ブロック8は、2種類のブロック、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bを有している。以下、各ブロックの構造を説明し、次に配置を説明する。
(a)共通構造
図6(a)は第1樹脂ブロック8Aの上面図であり、図6(b)は第1樹脂ブロック8Aの正面図であり、図6(c)は第1樹脂ブロック8Aの底面図であり、図6(d)は第1樹脂ブロック8Aの側面図である。図8(a)は第2樹脂ブロック8Bの正面図であり、図8(b)第2樹脂ブロック8Bの底面図であり、図8(c)は第2樹脂ブロック8Bの側面図である。
【0018】
最初に、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの共通構造について説明する。
樹脂ブロック8A,8Bは、主に、略直方体の本体部20を有している。本体部20は、図左右方向に長くなっている。本体部20の高さは、1枚の基板Sを安全に収容するための収容高さH1(図5を参照)と等しくなるように形成されている。本体部20の上面には凸部21が設けられている。凸部21は、概ね円錐形または円錐台形状に形成されている。
本体部20の両側部には、トレイを段積み、段ばらしする際に支持するための接触部となる被支持部23が延びている。被支持部23には、枠部材2a,2bに樹脂ブロック8を固定するための外枠取付孔24が貫通しており、樹脂ブロック8A,8Bは、外枠2に、取付孔24を貫通するボルト・ナット19(図13)もしくはリベットによって固定される。図3と図4は、樹脂ブロック8A,8Bが枠部材2a,2bにボルト・ナットもしくはリベットによって固定された状態を示す斜視図である。樹脂ブロック8A,8Bは、被支持部23の上面が枠部材2a,2bの外側平坦部11の下面に突き当てられて、ブロック取付孔17から凸部21と本体部20の上部が突出した状態で固定されている。樹脂ブロック8A,8Bは、本体部20の上面が、枠部材2a,2bの外側平坦部11よりも高くなっている。また、本体部20の下面(後述する凸部25の下面)は、外側平坦部11の下面よりも低くなっている。
【0019】
このような配置により、上下方向にトレイ1を多段で積み重ねると、各々のトレイ1の樹脂ブロック8A,8Bの本体部20の上面と下面が互いに接することとなり、トレイ1は、樹脂ブロック8A,8Bの本体部20の高さをピッチとして積み重ねられる。
以上に述べたように、本実施例のトレイ1は、接触部である樹脂ブロック8A,8Bと外枠2を異なる素材で別々に形成してから固定する構成となっている。このことにより、接触部だけにダストの発生を抑えられた素材を適用することが可能となり、接触部を容易に加工し、形成することができる。一方、外枠2の他の部分は、他のトレイ1や設備等とほとんど接触しないため、ダストの抑制よりも強度を重視した素材を適用することが可能となり、外枠2の素材を選択する自由度を広げることができる。
【0020】
(b)異なる構造
次に、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの異なる構造について説明する。
図6に示すように、第1樹脂ブロック8Aの本体部20の下面には、凹部22が設けられている。凹部22は、本体部20の長手方向に延びる一対の凸部25の間に形成されており、両端が開放された溝である。凹部22は、上面の凸部21に対応した断面形状を有している。図7は2つの第1樹脂ブロック8Aが互いに係合した状態を示す側面図である。この状態で、第1樹脂ブロック8Aは本体部20の長手方向に相対移動可能である。また、第1樹脂ブロック8Aは凸部21の中心軸回りに相対回転可能である。
図8に示すように、第2樹脂ブロック8Bの本体部20の下面には、凹部26が設けられている。凹部26は、本体部20の長手方向に離れた一対の凸部27の間に形成されており、本体部20の短手方向に開放されている。図9は2つの第2樹脂ブロック8Bが互いに係合した状態を示す部分正面図である。この状態で、凸部21は、凹部26に対して左右・前後に隙間を確保している。以上より、第2樹脂ブロック8Bは、上側にあるトレイ1の重量は支持するが、トレイ1同士を位置決めしていない。
【0021】
(c)配置
第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの配置について説明する。図2に示すように、樹脂ブロック8A、8Bは、各枠部材2a,2bに三カ所ずつ合計12カ所に設けられている。
第1樹脂ブロック8Aは、図2のA位置,B位置,C位置の三カ所に配置されている。A位置,B位置は、図下側の短辺枠部材2bの両端側である。C位置は、図左側の長辺枠部材2a上の図下側の短辺枠部材2bから離れた側である。このように、A位置の第1樹脂ブロック8AとB位置の第1樹脂ブロック8Aは同じ短辺枠部材2bに配置されており、凹部22の向きも同じである。それに対して、C位置の第1樹脂ブロック8Aは、A位置の第1樹脂ブロック8AとB位置の第1樹脂ブロック8Aを結ぶ直線上に配置されておらず、さらに凹部22の向きが両者の凹部22の向きと異なる。残りの9カ所には、第2樹脂ブロック8Bが配置されている。
【0022】
以上に述べた構造によって、部品精度や組立精度のバラツキにも影響を受けずに段積みが可能になる。さらに段積み後にも最小限の隙間で第1樹脂ブロック8A同士が互いの移動を規制している。したがって、段積み状態で搬送中に急制動が作用した場合でも、トレイ1のずれの累積を最小限に抑えることができる。
なお、トレイ1の寸法が大きく、しかも軽量化のために外枠2の強度を十分にとれない場合は、図2の位置Dの第2樹脂ブロック8Bは、第1樹脂ブロック8Aに置き換えても良い。D位置は、図左側の長辺枠部材2a上の図下側の短辺枠部材2bに近い側である。その場合は、外枠の弾性変形による樹脂ブロック8間の位置変化を効果的に制限することができる。
(6)基板位置決め部材の構造
次に、トレイ1に搭載されるガラス基板Sを位置決めするための基板位置決め部材30を説明する。
【0023】
図11は基板位置決め部材30の斜視図であり、図12は外枠2の枠部材2a,2bの角部分の部分上面図であり、図13は基板位置決め部材30を含む外枠2周辺のトレイ1の断面図である。
基板位置決め部材30は、外枠2の角部に固定され、ガラス基板Sの平面方向への移動を防止するための部材である。基板位置決め部材30は、樹脂製であり、平坦部31と、そこから下方に延びる柱部32と、平坦部31の一端から上方に延びる壁部34と、その上端からなだらかに続いて直線状に延びる傾斜部35と、その下端部からさらに伸びる平坦部36とを有している。平坦部36には、球形凸状の基板載置部37が形成されている。平坦部31および柱部32にはネジ穴33が形成されている。
基板位置決め部材30は、図12に示すように、外枠2の各角部の二カ所に設けられており、より具体的には、各枠部材2a,2bの両端位置から枠部材の長手方向に直角に延びて配置されている。基板位置決め部材30の平坦部31の上面は、外枠2の内側平坦部12の下面に当接しており、壁部34は内側平坦部12の先端面に当接している。この状態で、例えばボルトがネジ穴33に螺合することによって、基板位置決め部材30は内側平坦部12に固定されている。この結果、平坦部36は内側平坦部12より内側下方に位置しており、基板載置部37にはガラス基板Sが載置されている。この状態で、傾斜部35が基板Sの位置決めを行っている。傾斜部35は、実際のガラス基板Sの寸法に対して片側で例えば1〜3mmのクリアランスを確保できるように配置されている。
【0024】
また、ガラス基板Sをトレイ1上に搭載する際、傾斜部35によりガラス基板S端面が誘い込まれ、位置ずれを補正する。
基板位置決め部材30が従来の脱落防止部材と載置ピンとを一体化した構造であるため、ガラス基板Sと外枠2との間の隙間が従来より小さくなっている。この結果、従来のトレイに比べて外枠の小型化が達成されている。
なお、基板位置決め部材30は、耐磨耗性の高いPEEKやUPEで形成されており、基板Sが位置決めのために繰り返し接触しても、磨耗によるダストがほとんど発生せず、基板Sが汚染されにくい。
(7)段積みトレイの構造
図3および図4に、トレイ1を上下方向に複数枚重ね合わせた状態を示す。また、図5に、5枚重ねられたトレイ1の断面図を示す。図5から明らかなように、上から載せられた別のトレイ1の傾斜部13が下側のトレイ1の傾斜部13を覆って積み重ねられる。言い換えると、上側のトレイ1の傾斜部13の内側の収容空間13a内に下側のトレイ1の囲い部材(外枠2の枠部材2a,2bの傾斜部13の上部と内側平坦部12)が入り込む。そのため、積み重ねたときに小さなスペースで多くのトレイ1を保管することが可能となっている。
【0025】
本実施例のトレイ1は、外枠2に固定された樹脂ブロック8の本体部20の上面と下面だけが互いに接した状態で積み重ねられる。樹脂ブロック8の高さが、1枚のガラス基板Sを安全に収容する為の収容高さH1となっており、トレイ1の外枠2の他の部分及び桟4は、積み重ねたときに上下のトレイ1とは接触しない。このことから、トレイ1は、樹脂ブロック8によって規定される高さ、即ち収容高さH1をピッチとして積み重ねられる。
トレイ1が樹脂ブロック8によって規定される収容高さH1のピッチで積み重ねられるとき、上側のトレイ1の外枠2内に、下側のトレイ1の外枠2が入り込む。たとえ、外枠2の強度を高くするために傾斜部13の高さを高くしたトレイ1を積み重ねたとしても、傾斜部13が上側のトレイ1の傾斜部13の収容空間13a内に納められている限り、全体の高さに対する影響は無い。このように、本実施例のトレイ1は、上側のトレイ1の傾斜部13に、下側の別のトレイ1の傾斜部13が入り込む収容空間13aが設けられることで、たとえ傾斜部13の高さを変更した場合であっても、常により小さいピッチで積み重ねることが可能となっている。
【0026】
上述したように、本実施例のトレイ1が上下方向に積み重ねられているとき、上下のトレイ1の間では、樹脂ブロック8だけが接触しており、外枠2と桟4は他のトレイ1と全く接触しない。樹脂ブロック8はPEEKやUPEで形成されているために接触によってもダストがほとんど発生しない。また外枠2と桟4は他のトレイ1と接触しないためにダストを発生させない。このように、本実施例のトレイ1は積み重ねてもダストがほとんど発生せず、基板Sの汚染が極めて小さい。
更に、本実施例のトレイ1は、上積みされたトレイ1の重量を、樹脂ブロック8が支持する構成となっており、外枠2には、上側のトレイ1の重量が加えられることがない。このために、外枠2は、自らの重量と、載置した基板Sの重量を支持できる強度を備えていればよく、外枠2によって上積みされたトレイ1を支持する構成を採用した場合と比較すると、要求される強度は小さい。このため、外枠2に要求される強度を容易に得ることができ、軽量化を図ることができる。
(8)段積みトレイを搬送する動作
次に、段積みトレイをフォークで搬送する際の動作について説明する。図14は、段積みトレイの下部にフォーク101の一対の爪部101aが配置された状態を示す斜視図、図15は側面図、図16は正面図である。なお、図17は図15の部分拡大図である。
【0027】
フォーク101の一対の爪部101aは、一方向に長く延びており、それぞれ先端と根元に支持部101bを有している。支持部101bは、各枠部材2a,2bの両端側に設けられた樹脂ブロック8を支持可能に配置されている。支持部101bは、樹脂ブロック8の下端部の外周を支持可能な二対の斜面と、樹脂ブロック8の下面に接して荷重を受ける平坦部とを有している。
このトレイ1では、樹脂ブロック8は桟4の平坦部41(ワーク載置面)より低い位置に配置されている。したがって、従来とは異なり、支持部101bの高さを低くできるし、また爪部の上方向へのストロークを大きくとる必要がない。さらには、クレーンのフォークの操作が容易になり、具体的には、従来の問題(例えば外枠下面にフォークの爪301が衝突するおそれ)が少なくなり、作業効率が向上する。
【0028】
さらに、トレイ1からなる段積みトレイの専用の置き台が不要になる。
2.他の実施形態
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(1)各部材の接合
外枠の辺部材同士の接合方法や接合箇所、外枠と桟の接合方法や接合箇所は、搭載する薄板状の物品の大きさや重量に合わせて、適宜変更が可能である。
(2)各部材の構造
外枠の形状や、樹脂ブロックの形状や配置を、作用効果を損なわない範囲において、変更することが可能である。
(3)外枠の変形例
図18は、他の実施形態における外枠の断面形状である。外枠2’は、前記実施形態の構造に加えて、外側平坦部11の外側縁から下方に延びる延長部15と、その下端部から外方に延びるフランジ16とを有している。このような断面二次モーメントを有する構造により、外枠2’の剛性は前記実施形態の外枠2の剛性より高くなっている。
(4)樹脂ブロックの変形例
図19(a)は他の実施形態の第3樹脂ブロック108の上面図であり、図19(b)は第3樹脂ブロック108の縦断面図である。図20は第3樹脂ブロック108の側面図である。
【0029】
第3樹脂ブロック108は、主に、略直方体の本体部120を有している。本体部120の高さは、1枚の基板Sを安全に収容する為の収容高さH1と等しくなるように形成されている。本体部120の上面には凸部121が設けられている。凸部121は、円錐台形状に形成されている。本体部120の両側部には、トレイを段積み、段ばらしする際に支持するための接触部となる被支持部123が延びている。被支持部123には、枠部材に樹脂ブロック8を固定するための外枠取付孔124が貫通している。
第3樹脂ブロック108は、外枠に、リベット若しくはネジによって固定される。第3樹脂ブロック108は、被支持部123の上面が枠部材の外側平坦部の下面に突き当てられて、ブロック取付孔から凸部121と本体部120の上部が突出した状態で固定されている。
【0030】
このような配置により、上下方向にワーク搬送用トレイを多段で積み重ねると、各々のトレイの第3樹脂ブロック108の本体部120の上面と下面が互いに接することとなり、ワーク搬送用トレイは、第3樹脂ブロック108の本体部120の高さをピッチとして積み重ねられる。
第3樹脂ブロック108の本体部120の下面には凹部122が設けられている。凹部122は、凸部121とほぼ同じ形状及び寸法の孔であり、凹部と凸部の隙間は必要最小限確保されている図21は2つの第3樹脂ブロック108が互いに係合する関係を示す側面図である。この状態で、第3樹脂ブロック108は左右・前後方向にはほとんど移動不能であるが、回転方向に制限なく移動できる。
第3樹脂ブロック108は、トレイの全ての箇所に取りつけられていても良いし、前記実施形態における第1樹脂ブロック8Aや第2樹脂ブロック8Bと適宜組み合わせられても良い。
(5)囲い部材の変形例
前記実施形態では桟4の周囲を囲む囲い部材は枠部材2a,2bの傾斜部13と一体に形成されていたが、別部材であっても良いし、枠部材2a,2bではなく樹脂ブロック8に固定されていても良い。また、前記実施形態では囲い部材は内側に延びる内側平坦部を有していたが、必ずしもそのように内側に延びる部分を有する必要はない。
(6)外枠および桟の材料の変形例
前記実施形態では枠部材はアルミの押出加工形成されていたが、一定の板厚の鋼材(例えば、SUS304)を板金加工によって同一の断面形状となるように加工しても良い。
(7)支持部材の変形例
前記実施形態では支持部材は枠部材に固定されていたが、支持部材は、内側平坦部と同様に、傾斜部に一体に形成されていても良い。
【0031】
また、支持部材と桟とを固定するリベットの数は1個に限定されない。つまり、リベットは複数個でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態としてのワーク搬送用トレイの斜視図。
【図2】ワーク搬送用トレイの平面図。
【図3】段積みトレイの角部の斜視図。
【図4】段積みトレイの角部の斜視図。
【図5】段積みトレイの部分断面図。
【図6】第1樹脂ブロックの各図。
【図7】第1樹脂ブロック同士の載置を示すための側面図。
【図8】第2樹脂ブロックの各図。
【図9】第2樹脂ブロック同士の載置を示すための側面図。
【図10】桟の部分斜視図。
【図11】位置決め部材の斜視図。
【図12】ワーク搬送用トレイの部分平面図。
【図13】位置決め部材の断面図。
【図14】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す斜視図。
【図15】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す側面図。
【図16】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す正面図。
【図17】図15の部分拡大図。
【図18】他の実施形態における外枠の断面図。
【図19】他の実施形態における樹脂ブロックの各図。
【図20】他の実施形態における樹脂ブロックの側面図。
【図21】他の実施形態における樹脂ブロック同士の係合を示すための部分断面図。
【図22】従来技術の段積みトレイをフォークの爪で持ち上げる際の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0033】
1 ワーク搬送用トレイ
2 外枠
2a 長辺枠部材
2b 短辺枠部材
4 桟
8 樹脂ブロック
11 外側平坦部
12 内側平坦部
13 傾斜部
13a 収容空間
20 本体部
21 凸部
22 凹部
23 被支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状のワークを載置して搬送するトレイに関し、特に、複数のトレイを積み重ねて保管することのできるワーク搬送用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄型表示装置の製造工程等において、ガラス基板に代表される薄板状の物品を搬送する技術が必要となっている。薄板状の物品は捻れや撓み等の変形が発生しやすく、搬送中に変形が原因で周囲に接触して、表面に傷が付いたり破損したりする恐れがある。このため搬送には、薄板状の物品を変形させずに載置できる専用の容器が用いられる。
薄板状の物品を、1枚ずつ個別の容器に載置して搬送することで、搬送中の物品の変形を防止することができる。しかし、個別の容器を用いると、搬送途中で一時保管を行う場合に、保管スペースを広く占めてしまうという問題があった。また、別の場所に容器をまとめて移送したい場合にも手間がかかるという問題があった。
そこで、薄板状の物品を個別に載置可能であり、しかも一時保管や別の場所への移送の際には容器同士を積み重ねることのできる容器が考案された。しかしながら、これらの容器には、容器内にダストが蓄積したり、積み重ねる際に自身からダストが発生して載置した物品を汚染したりするという問題が発生した。また、複数の容器を積み重ねた場合の全体の重量が重くなり、保管や運搬が不便であるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、4本の枠部材からなる矩形状の外枠と、枠部材間に掛け渡された複数の桟とからなるワーク搬送用トレイが考案された(例えば、特許文献1を参照。)。
図22に、そのようなトレイ201が段積みされた構造を示す(なお、以下、複数のトレイ201が積まれた状態を「段積みトレイ」という。)。トレイ201は、主に、枠202と複数の桟204とから構成されている。枠202は、複数の桟204を支持する複数の支持部212と、支持部212から外側に向かって高くなる傾斜部213と、傾斜部213の上部から外方に延びる外側平坦部211とを有している。桟204の上には、例えば、ガラス基板Sが載置される。外側平坦部211には、複数の樹脂ブロック208が設けられている。樹脂ブロック208は、外側平坦部211に形成された穴に下方から挿入された状態で固定され、積まれた他のトレイ201の樹脂ブロック208に係合するようになっている。複数のトレイ201が積み重ねられた状態で、各樹脂ブロック208は、自らが固定されたトレイ201の重量を支持するとともに、上側にある他のトレイ201の重量も支持する。樹脂ブロック208の高さを低く設定することで、各トレイ201同士のピッチを小さくできる。具体的には、トレイ201の傾斜部213の内側の収容空間内に、上側にある他のトレイ201の傾斜部213が入り込んでいる。
【特許文献1】特開2007−35761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトレイ201では、樹脂ブロック208は桟204より高い位置に配置されている。したがって、クレーンが段積みトレイを搬入出する際に、クレーンの爪301がトレイ201の外枠傾斜部213に接触しないように回避して、段積みトレイの下側に潜り込む必要があった。図22(a)は、クレーンのフォークの爪301が段積みトレイの下方に入り込んだ状態を示している。爪301の先端には、上側に延びる支持部301aが形成されている。図22(b)は爪301が上昇して樹脂ブロック208を支持している状態を示している。この状態では、爪301の支持部301aが樹脂ブロック208の下面を支持している。
以上の構造及び動作では、図から明らかなように、図22(a)のl(枠202の最下面と樹脂ブロック208の下面との上下方向間隔)以上のストロークLが必要になる。
【0005】
さらに、枠202の強度確保のために傾斜部213を高くすると、図のl、H(支持部301aの高さ)、Lがそれぞれ高くなる。つまり、ガラス基板Sが大型化すると、上記問題はより顕著になる。
また、2つの段積みトレイの間、あるいは段積みトレイとこれを上下動させるためのリフタ間にフォーク301が入る場合、Hが大きいと、より大きなスペースを確保する必要がある。
また、段積みトレイを床面に直置きする場合は、樹脂ブロックを支持するための置き台を用意しなければならなかった。
本発明の課題は、段積みトレイの搬入出が容易になるワーク搬送用トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のワーク搬送用トレイは、薄板状のワークの搬送に用いられるものであって、ワーク載置部と矩形状の枠と支持部を備えている。ワーク載置部は、ワークを載置するワーク載置面を有する。支持部は、枠に設けられ、ワーク載置部を支持する。枠は、支持部から外方に向かって下り勾配であり下端部がワーク載置面より低い傾斜部を有している。
このトレイでは、枠に傾斜部を設けることで枠の強度が十分に確保されている。さらに、枠の傾斜部が下り勾配であるため、傾斜部の下端部がワーク載置面より低い位置にあり、そのため段積みトレイの搬入出の際にクレーンのフォークが傾斜部との接触を容易に回避できる。そのため、段積みトレイの搬入出が容易になる。
なお、支持部は、枠と一体に形成されていても良いし、枠に固定された別部材でも良い。
【0007】
請求項2に記載のワーク搬送用トレイは、請求項1において、ワーク載置部のワーク載置面の周囲を覆う周囲より高い壁を有する囲い部材をさらに備えている。
従来のワーク搬送用トレイのように枠の傾斜部が外側向かって上り勾配の場合は、傾斜部がワーク載置部の周囲に配置されているため、ワークの飛び出しの問題が生じにくい。一方、請求項1に記載のワーク搬送用トレイのように枠の傾斜部が外方に向かって下り勾配である場合は、ワークの飛び出しの問題に対処する必要がある。そこで、このトレイでは、囲い部材を設けることで、例えば装置の急停止によってワークが移動しても、ワークのワーク搬送用トレイからの飛び出しを防止している。
【0008】
請求項3に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項2において、囲い部材は、枠の傾斜部と一体に形成されている。
このトレイでは、囲い部材が傾斜部と一体に形成されているため、部品点数を削減できる。
【0009】
請求項4に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項1〜3のいずれかにおいて、ワーク載置部は、枠に掛け渡されワーク載置面を上面に有する細長い複数の載置部材を有している。支持部は、枠に固定され載置部材の端部を支持する複数の支持部材を有する。
このトレイでは、複数の載置部材が複数の支持部材によって支持されているため、全体が軽量化される。
【0010】
請求項5に記載のワーク搬送用トレイでは、請求項2または3において、枠は、傾斜部の下端部から外方に延びる延出部をさらに有している。トレイは、延出部に設けられ、他のワーク搬送用トレイに重ねられた状態で他のワーク搬送用トレイとの接触を避けるためスペースを確保するスペーサをさらに備えている。傾斜部の内方には、下に積まれた他のワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が収容される収容空間が形成されている。
このトレイでは、複数のワーク搬送用トレイが積まれた状態で、スペーサを介して各ワーク搬送用トレイは互いにスペースを確保した状態が保持される。この場合は、下に積まれたワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が、上に積まれたワーク搬送用トレイの傾斜部の内方にある収容空間に収容される。したがって、積み上げられたトレイ間のピッチが小さくなり、段積みトレイの高さが低くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るワーク搬送用トレイでは、枠の傾斜部が外方に向かって下り勾配であるため、段積みトレイの搬入出が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.第1実施形態
以下、本発明を適用したワーク搬送用トレイの実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(1)ワーク搬送用トレイの全体構造
図1は本発明に係るワーク搬送用トレイ1(以下、「トレイ1」とする)の一実施形態の構成を示す斜視図であり、図2はトレイ1の上面図である。
トレイ1は、薄板状の物品が載置され、物品を搬送するために用いられる。トレイ1は、主に、矩形状の外枠2と、外枠2の対向する長辺枠部材2aの間に掛け渡された複数の桟4(ワーク載置部)とを備えている。なお、この実施例では、薄板状の物品としてガラス基板Sを用いて説明する。
(2)外枠の構造
外枠2は、2本の長辺枠部材2aと2本の短辺枠部材2bとから構成される。本実施例における枠部材2a,2bには一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されている。
【0013】
図3及び図4は段積みされたトレイ1の部分斜視図であり、図5は段積みされたトレイ1の部分縦断面図である。
枠部材2a,2bは、図5の断面形状から明らかなように、外側平坦部11と、外側平坦部11よりも高い位置に形成される内側平坦部12を備えており、外側平坦部11と内側平坦部12の間に傾斜部13が設けられている。内側平坦部12は傾斜部13の上端部から内方に延出しており、外側平坦部11は傾斜部13の下端部から外方に延出している。外側平坦部11には、樹脂ブロック8(後述)を取り付けるためのブロック取付孔17が複数箇所設けられている。傾斜部13は、外枠2が形成されたときに下方に向けて広がった形状となるように角度が付けられている。
傾斜部13の高さは、枠部材2a,2b同士が長方形の外枠2として組み合わされた場合に、外枠2の平面度を所定量以内に維持するために必要な強度を保てる高さに設定される。このため、傾斜部13の高さが、1枚の基板Sを安全に収容するために必要な収容高さを越えた高さになる場合がある。ここで、「安全に収容する」とは、トレイが段積みされた状態において、ガラス基板が全て、あるいは一部のトレイに搭載されており、全体が所定の移動により振動を加えられても、ガラス基板や桟の上面が上側の桟に接触することがない、ことを意味する。外枠2の形状が大型化された場合には要求される強度が大きくなり、外枠2を強化するために傾斜部13の高さはより高くなる。小型の外枠2で要求される強度が低い場合には、傾斜部13を低くすることができる。
【0014】
枠部材2a,2b同士を接合することにより、本実施例の外枠2が形成される。本実施例の外枠2は、その断面形状が、上述したように、外側平坦部11、外側平坦部11の内側端から連続して上昇する傾斜部13、この傾斜部13の上端部から連続する内側平坦部12とで形成される。形成された外枠2の単体としての高さは傾斜部13の高さで決定されるが、複数のトレイ1を積み重ねる場合には、傾斜部13で囲まれた部分の一部が、別のトレイが入り込むための収容空間13a(図5)として機能するために、より小さいピッチで積み重ねることが可能となる。
長辺枠部材2aと短辺枠部材2bは、両端同士が、図12に示すように、第1接合部材28と第2接合部材29によって接合される。第1接合部材28は、L字形状のプレートであって、枠部材2a,2bの内側平坦部12同士をリベットを介して固定している。第2接合部材29は、L字形状のプレートであって、枠部材2a,2bの外側平坦部11同士をリベットを介して固定している。
(3)桟の構造
外枠2の対向する長辺枠部材2aの間に、複数の桟4が掛け渡されて、ガラス基板Sの載置部を構成している。桟4には一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されている。
【0015】
外枠2の長辺枠部材2aには、桟4を支持するための複数の支持部材14が固定されている。支持部材14は、図5に示すように、プレート部材であって、外枠2の傾斜部13の内側に接して図示しないリベットによって固定される固定部14aと、その上端から内側に延びる支持部14bとを有している。
桟4の一端部の拡大図を図10に示す。桟4は、ワーク載置面としての平坦部41と、その両側に形成され断面コの字形状を構成する一対の側壁部42と、各側壁部42から外側に延びる一対のフランジ43とから構成されている。以上の形状によって、桟4は、平板の部材を用いた場合よりも梁強度が向上しており、このため、桟4にはより板厚の薄い素材を用いることが可能となっており、桟4の軽量化が図られている。平坦部41の上面には、ガラス基板Sを支持するための複数の載置ピン44が固定されている。載置ピン44は耐磨耗性の高いポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK(登録商標))や超高分子量ポリエチレン(UPE)等で形成されており、ガラス基板Sを繰り返し搭載しても、磨耗によるダストがほとんど発生せず、ガラス基板Sを汚染しない。平坦部41の両端には、断面コの字形状内に支持部材14の支持部14bが配置されており、両者は図示しないリベットによって固定されている。このようにして、平坦部41は、支持部材14を介して外枠2に支持されている。
【0016】
このトレイ1では、外枠2の枠部材2a,2bの傾斜部13の上部と内側平坦部12が、桟4の平坦部41の周囲を覆う囲い部材として機能している。具体的には、囲い部材は、桟4の平坦部41より高い壁となっている。したがって、ガラス基板Sの外周部が外部から保護されている。また、例えば装置の急停止によってガラス基板Sが移動しても、ガラス基板Sがトレイ1から飛び出したり、あるいは、万一破損した場合でも破片が周囲に飛散しにくい構造となっている。
(4)樹脂ブロックの構造
樹脂ブロック8は、枠部材2a,2bの外側平坦部11に取りつけられた部材であり、各トレイ1同士の高さ方向のスペースを確保するためのスペーサであり、さらに各トレイ1同士の位置ずれを防止するためのトレイ位置規制部材である。
【0017】
樹脂ブロック8は、上下に積み重ねられるトレイ1との接触部となるために、ダストの発生が抑えられた素材で形成されることが好ましい。本実施例における樹脂ブロック8は、耐磨耗性が高く、機械的な強度に優れたPEEKやUPEで形成されている。樹脂ブロック8は、ブロック同士が接触しても摩耗が極めて少なく、ダストが発生したとしても落下しにくいために、搬送するガラス基板Sを汚染しにくい。
(5)第1樹脂ブロックと第2樹脂ブロックの構造および配置
樹脂ブロック8は、2種類のブロック、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bを有している。以下、各ブロックの構造を説明し、次に配置を説明する。
(a)共通構造
図6(a)は第1樹脂ブロック8Aの上面図であり、図6(b)は第1樹脂ブロック8Aの正面図であり、図6(c)は第1樹脂ブロック8Aの底面図であり、図6(d)は第1樹脂ブロック8Aの側面図である。図8(a)は第2樹脂ブロック8Bの正面図であり、図8(b)第2樹脂ブロック8Bの底面図であり、図8(c)は第2樹脂ブロック8Bの側面図である。
【0018】
最初に、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの共通構造について説明する。
樹脂ブロック8A,8Bは、主に、略直方体の本体部20を有している。本体部20は、図左右方向に長くなっている。本体部20の高さは、1枚の基板Sを安全に収容するための収容高さH1(図5を参照)と等しくなるように形成されている。本体部20の上面には凸部21が設けられている。凸部21は、概ね円錐形または円錐台形状に形成されている。
本体部20の両側部には、トレイを段積み、段ばらしする際に支持するための接触部となる被支持部23が延びている。被支持部23には、枠部材2a,2bに樹脂ブロック8を固定するための外枠取付孔24が貫通しており、樹脂ブロック8A,8Bは、外枠2に、取付孔24を貫通するボルト・ナット19(図13)もしくはリベットによって固定される。図3と図4は、樹脂ブロック8A,8Bが枠部材2a,2bにボルト・ナットもしくはリベットによって固定された状態を示す斜視図である。樹脂ブロック8A,8Bは、被支持部23の上面が枠部材2a,2bの外側平坦部11の下面に突き当てられて、ブロック取付孔17から凸部21と本体部20の上部が突出した状態で固定されている。樹脂ブロック8A,8Bは、本体部20の上面が、枠部材2a,2bの外側平坦部11よりも高くなっている。また、本体部20の下面(後述する凸部25の下面)は、外側平坦部11の下面よりも低くなっている。
【0019】
このような配置により、上下方向にトレイ1を多段で積み重ねると、各々のトレイ1の樹脂ブロック8A,8Bの本体部20の上面と下面が互いに接することとなり、トレイ1は、樹脂ブロック8A,8Bの本体部20の高さをピッチとして積み重ねられる。
以上に述べたように、本実施例のトレイ1は、接触部である樹脂ブロック8A,8Bと外枠2を異なる素材で別々に形成してから固定する構成となっている。このことにより、接触部だけにダストの発生を抑えられた素材を適用することが可能となり、接触部を容易に加工し、形成することができる。一方、外枠2の他の部分は、他のトレイ1や設備等とほとんど接触しないため、ダストの抑制よりも強度を重視した素材を適用することが可能となり、外枠2の素材を選択する自由度を広げることができる。
【0020】
(b)異なる構造
次に、第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの異なる構造について説明する。
図6に示すように、第1樹脂ブロック8Aの本体部20の下面には、凹部22が設けられている。凹部22は、本体部20の長手方向に延びる一対の凸部25の間に形成されており、両端が開放された溝である。凹部22は、上面の凸部21に対応した断面形状を有している。図7は2つの第1樹脂ブロック8Aが互いに係合した状態を示す側面図である。この状態で、第1樹脂ブロック8Aは本体部20の長手方向に相対移動可能である。また、第1樹脂ブロック8Aは凸部21の中心軸回りに相対回転可能である。
図8に示すように、第2樹脂ブロック8Bの本体部20の下面には、凹部26が設けられている。凹部26は、本体部20の長手方向に離れた一対の凸部27の間に形成されており、本体部20の短手方向に開放されている。図9は2つの第2樹脂ブロック8Bが互いに係合した状態を示す部分正面図である。この状態で、凸部21は、凹部26に対して左右・前後に隙間を確保している。以上より、第2樹脂ブロック8Bは、上側にあるトレイ1の重量は支持するが、トレイ1同士を位置決めしていない。
【0021】
(c)配置
第1樹脂ブロック8Aと第2樹脂ブロック8Bの配置について説明する。図2に示すように、樹脂ブロック8A、8Bは、各枠部材2a,2bに三カ所ずつ合計12カ所に設けられている。
第1樹脂ブロック8Aは、図2のA位置,B位置,C位置の三カ所に配置されている。A位置,B位置は、図下側の短辺枠部材2bの両端側である。C位置は、図左側の長辺枠部材2a上の図下側の短辺枠部材2bから離れた側である。このように、A位置の第1樹脂ブロック8AとB位置の第1樹脂ブロック8Aは同じ短辺枠部材2bに配置されており、凹部22の向きも同じである。それに対して、C位置の第1樹脂ブロック8Aは、A位置の第1樹脂ブロック8AとB位置の第1樹脂ブロック8Aを結ぶ直線上に配置されておらず、さらに凹部22の向きが両者の凹部22の向きと異なる。残りの9カ所には、第2樹脂ブロック8Bが配置されている。
【0022】
以上に述べた構造によって、部品精度や組立精度のバラツキにも影響を受けずに段積みが可能になる。さらに段積み後にも最小限の隙間で第1樹脂ブロック8A同士が互いの移動を規制している。したがって、段積み状態で搬送中に急制動が作用した場合でも、トレイ1のずれの累積を最小限に抑えることができる。
なお、トレイ1の寸法が大きく、しかも軽量化のために外枠2の強度を十分にとれない場合は、図2の位置Dの第2樹脂ブロック8Bは、第1樹脂ブロック8Aに置き換えても良い。D位置は、図左側の長辺枠部材2a上の図下側の短辺枠部材2bに近い側である。その場合は、外枠の弾性変形による樹脂ブロック8間の位置変化を効果的に制限することができる。
(6)基板位置決め部材の構造
次に、トレイ1に搭載されるガラス基板Sを位置決めするための基板位置決め部材30を説明する。
【0023】
図11は基板位置決め部材30の斜視図であり、図12は外枠2の枠部材2a,2bの角部分の部分上面図であり、図13は基板位置決め部材30を含む外枠2周辺のトレイ1の断面図である。
基板位置決め部材30は、外枠2の角部に固定され、ガラス基板Sの平面方向への移動を防止するための部材である。基板位置決め部材30は、樹脂製であり、平坦部31と、そこから下方に延びる柱部32と、平坦部31の一端から上方に延びる壁部34と、その上端からなだらかに続いて直線状に延びる傾斜部35と、その下端部からさらに伸びる平坦部36とを有している。平坦部36には、球形凸状の基板載置部37が形成されている。平坦部31および柱部32にはネジ穴33が形成されている。
基板位置決め部材30は、図12に示すように、外枠2の各角部の二カ所に設けられており、より具体的には、各枠部材2a,2bの両端位置から枠部材の長手方向に直角に延びて配置されている。基板位置決め部材30の平坦部31の上面は、外枠2の内側平坦部12の下面に当接しており、壁部34は内側平坦部12の先端面に当接している。この状態で、例えばボルトがネジ穴33に螺合することによって、基板位置決め部材30は内側平坦部12に固定されている。この結果、平坦部36は内側平坦部12より内側下方に位置しており、基板載置部37にはガラス基板Sが載置されている。この状態で、傾斜部35が基板Sの位置決めを行っている。傾斜部35は、実際のガラス基板Sの寸法に対して片側で例えば1〜3mmのクリアランスを確保できるように配置されている。
【0024】
また、ガラス基板Sをトレイ1上に搭載する際、傾斜部35によりガラス基板S端面が誘い込まれ、位置ずれを補正する。
基板位置決め部材30が従来の脱落防止部材と載置ピンとを一体化した構造であるため、ガラス基板Sと外枠2との間の隙間が従来より小さくなっている。この結果、従来のトレイに比べて外枠の小型化が達成されている。
なお、基板位置決め部材30は、耐磨耗性の高いPEEKやUPEで形成されており、基板Sが位置決めのために繰り返し接触しても、磨耗によるダストがほとんど発生せず、基板Sが汚染されにくい。
(7)段積みトレイの構造
図3および図4に、トレイ1を上下方向に複数枚重ね合わせた状態を示す。また、図5に、5枚重ねられたトレイ1の断面図を示す。図5から明らかなように、上から載せられた別のトレイ1の傾斜部13が下側のトレイ1の傾斜部13を覆って積み重ねられる。言い換えると、上側のトレイ1の傾斜部13の内側の収容空間13a内に下側のトレイ1の囲い部材(外枠2の枠部材2a,2bの傾斜部13の上部と内側平坦部12)が入り込む。そのため、積み重ねたときに小さなスペースで多くのトレイ1を保管することが可能となっている。
【0025】
本実施例のトレイ1は、外枠2に固定された樹脂ブロック8の本体部20の上面と下面だけが互いに接した状態で積み重ねられる。樹脂ブロック8の高さが、1枚のガラス基板Sを安全に収容する為の収容高さH1となっており、トレイ1の外枠2の他の部分及び桟4は、積み重ねたときに上下のトレイ1とは接触しない。このことから、トレイ1は、樹脂ブロック8によって規定される高さ、即ち収容高さH1をピッチとして積み重ねられる。
トレイ1が樹脂ブロック8によって規定される収容高さH1のピッチで積み重ねられるとき、上側のトレイ1の外枠2内に、下側のトレイ1の外枠2が入り込む。たとえ、外枠2の強度を高くするために傾斜部13の高さを高くしたトレイ1を積み重ねたとしても、傾斜部13が上側のトレイ1の傾斜部13の収容空間13a内に納められている限り、全体の高さに対する影響は無い。このように、本実施例のトレイ1は、上側のトレイ1の傾斜部13に、下側の別のトレイ1の傾斜部13が入り込む収容空間13aが設けられることで、たとえ傾斜部13の高さを変更した場合であっても、常により小さいピッチで積み重ねることが可能となっている。
【0026】
上述したように、本実施例のトレイ1が上下方向に積み重ねられているとき、上下のトレイ1の間では、樹脂ブロック8だけが接触しており、外枠2と桟4は他のトレイ1と全く接触しない。樹脂ブロック8はPEEKやUPEで形成されているために接触によってもダストがほとんど発生しない。また外枠2と桟4は他のトレイ1と接触しないためにダストを発生させない。このように、本実施例のトレイ1は積み重ねてもダストがほとんど発生せず、基板Sの汚染が極めて小さい。
更に、本実施例のトレイ1は、上積みされたトレイ1の重量を、樹脂ブロック8が支持する構成となっており、外枠2には、上側のトレイ1の重量が加えられることがない。このために、外枠2は、自らの重量と、載置した基板Sの重量を支持できる強度を備えていればよく、外枠2によって上積みされたトレイ1を支持する構成を採用した場合と比較すると、要求される強度は小さい。このため、外枠2に要求される強度を容易に得ることができ、軽量化を図ることができる。
(8)段積みトレイを搬送する動作
次に、段積みトレイをフォークで搬送する際の動作について説明する。図14は、段積みトレイの下部にフォーク101の一対の爪部101aが配置された状態を示す斜視図、図15は側面図、図16は正面図である。なお、図17は図15の部分拡大図である。
【0027】
フォーク101の一対の爪部101aは、一方向に長く延びており、それぞれ先端と根元に支持部101bを有している。支持部101bは、各枠部材2a,2bの両端側に設けられた樹脂ブロック8を支持可能に配置されている。支持部101bは、樹脂ブロック8の下端部の外周を支持可能な二対の斜面と、樹脂ブロック8の下面に接して荷重を受ける平坦部とを有している。
このトレイ1では、樹脂ブロック8は桟4の平坦部41(ワーク載置面)より低い位置に配置されている。したがって、従来とは異なり、支持部101bの高さを低くできるし、また爪部の上方向へのストロークを大きくとる必要がない。さらには、クレーンのフォークの操作が容易になり、具体的には、従来の問題(例えば外枠下面にフォークの爪301が衝突するおそれ)が少なくなり、作業効率が向上する。
【0028】
さらに、トレイ1からなる段積みトレイの専用の置き台が不要になる。
2.他の実施形態
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(1)各部材の接合
外枠の辺部材同士の接合方法や接合箇所、外枠と桟の接合方法や接合箇所は、搭載する薄板状の物品の大きさや重量に合わせて、適宜変更が可能である。
(2)各部材の構造
外枠の形状や、樹脂ブロックの形状や配置を、作用効果を損なわない範囲において、変更することが可能である。
(3)外枠の変形例
図18は、他の実施形態における外枠の断面形状である。外枠2’は、前記実施形態の構造に加えて、外側平坦部11の外側縁から下方に延びる延長部15と、その下端部から外方に延びるフランジ16とを有している。このような断面二次モーメントを有する構造により、外枠2’の剛性は前記実施形態の外枠2の剛性より高くなっている。
(4)樹脂ブロックの変形例
図19(a)は他の実施形態の第3樹脂ブロック108の上面図であり、図19(b)は第3樹脂ブロック108の縦断面図である。図20は第3樹脂ブロック108の側面図である。
【0029】
第3樹脂ブロック108は、主に、略直方体の本体部120を有している。本体部120の高さは、1枚の基板Sを安全に収容する為の収容高さH1と等しくなるように形成されている。本体部120の上面には凸部121が設けられている。凸部121は、円錐台形状に形成されている。本体部120の両側部には、トレイを段積み、段ばらしする際に支持するための接触部となる被支持部123が延びている。被支持部123には、枠部材に樹脂ブロック8を固定するための外枠取付孔124が貫通している。
第3樹脂ブロック108は、外枠に、リベット若しくはネジによって固定される。第3樹脂ブロック108は、被支持部123の上面が枠部材の外側平坦部の下面に突き当てられて、ブロック取付孔から凸部121と本体部120の上部が突出した状態で固定されている。
【0030】
このような配置により、上下方向にワーク搬送用トレイを多段で積み重ねると、各々のトレイの第3樹脂ブロック108の本体部120の上面と下面が互いに接することとなり、ワーク搬送用トレイは、第3樹脂ブロック108の本体部120の高さをピッチとして積み重ねられる。
第3樹脂ブロック108の本体部120の下面には凹部122が設けられている。凹部122は、凸部121とほぼ同じ形状及び寸法の孔であり、凹部と凸部の隙間は必要最小限確保されている図21は2つの第3樹脂ブロック108が互いに係合する関係を示す側面図である。この状態で、第3樹脂ブロック108は左右・前後方向にはほとんど移動不能であるが、回転方向に制限なく移動できる。
第3樹脂ブロック108は、トレイの全ての箇所に取りつけられていても良いし、前記実施形態における第1樹脂ブロック8Aや第2樹脂ブロック8Bと適宜組み合わせられても良い。
(5)囲い部材の変形例
前記実施形態では桟4の周囲を囲む囲い部材は枠部材2a,2bの傾斜部13と一体に形成されていたが、別部材であっても良いし、枠部材2a,2bではなく樹脂ブロック8に固定されていても良い。また、前記実施形態では囲い部材は内側に延びる内側平坦部を有していたが、必ずしもそのように内側に延びる部分を有する必要はない。
(6)外枠および桟の材料の変形例
前記実施形態では枠部材はアルミの押出加工形成されていたが、一定の板厚の鋼材(例えば、SUS304)を板金加工によって同一の断面形状となるように加工しても良い。
(7)支持部材の変形例
前記実施形態では支持部材は枠部材に固定されていたが、支持部材は、内側平坦部と同様に、傾斜部に一体に形成されていても良い。
【0031】
また、支持部材と桟とを固定するリベットの数は1個に限定されない。つまり、リベットは複数個でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態としてのワーク搬送用トレイの斜視図。
【図2】ワーク搬送用トレイの平面図。
【図3】段積みトレイの角部の斜視図。
【図4】段積みトレイの角部の斜視図。
【図5】段積みトレイの部分断面図。
【図6】第1樹脂ブロックの各図。
【図7】第1樹脂ブロック同士の載置を示すための側面図。
【図8】第2樹脂ブロックの各図。
【図9】第2樹脂ブロック同士の載置を示すための側面図。
【図10】桟の部分斜視図。
【図11】位置決め部材の斜視図。
【図12】ワーク搬送用トレイの部分平面図。
【図13】位置決め部材の断面図。
【図14】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す斜視図。
【図15】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す側面図。
【図16】段積みトレイを下部にフォークの爪部が配置された状態を示す正面図。
【図17】図15の部分拡大図。
【図18】他の実施形態における外枠の断面図。
【図19】他の実施形態における樹脂ブロックの各図。
【図20】他の実施形態における樹脂ブロックの側面図。
【図21】他の実施形態における樹脂ブロック同士の係合を示すための部分断面図。
【図22】従来技術の段積みトレイをフォークの爪で持ち上げる際の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0033】
1 ワーク搬送用トレイ
2 外枠
2a 長辺枠部材
2b 短辺枠部材
4 桟
8 樹脂ブロック
11 外側平坦部
12 内側平坦部
13 傾斜部
13a 収容空間
20 本体部
21 凸部
22 凹部
23 被支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークの搬送に用いられるワーク搬送用トレイであって、
前記ワークを載置するワーク載置面を有するワーク載置部と、
矩形状の枠と、
前記枠に設けられ、前記ワーク載置部を支持する支持部とを備え、
前記枠は、前記支持部から外方に向かって下り勾配であり下端部が前記ワーク載置面より低い傾斜部を有している、
ワーク搬送用トレイ。
【請求項2】
前記ワーク載置部の前記ワーク載置面の周囲を覆う前記周囲より高い壁を有する囲い部材をさらに備えている、請求項1に記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項3】
前記囲い部材は、前記枠の前記傾斜部と一体に形成されている、請求項2に記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項4】
前記ワーク載置部は、前記枠に掛け渡され前記ワーク載置面を上面に有する細長い複数の載置部材を有し、
前記支持部は、前記枠に固定され前記載置部材の端部を支持する複数の支持部材を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項5】
前記枠は、前記傾斜部の前記下端部から外方に延びる延出部をさらに有しており、
前記延出部に設けられ、他のワーク搬送用トレイに重ねられた状態で他のワーク搬送用トレイとの接触を避けるためのスペースを確保するスペーサをさらに備え、
前記傾斜部の内方には、下に積まれた他のワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が収容される収容空間が形成されている、請求項2または3に記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項1】
薄板状のワークの搬送に用いられるワーク搬送用トレイであって、
前記ワークを載置するワーク載置面を有するワーク載置部と、
矩形状の枠と、
前記枠に設けられ、前記ワーク載置部を支持する支持部とを備え、
前記枠は、前記支持部から外方に向かって下り勾配であり下端部が前記ワーク載置面より低い傾斜部を有している、
ワーク搬送用トレイ。
【請求項2】
前記ワーク載置部の前記ワーク載置面の周囲を覆う前記周囲より高い壁を有する囲い部材をさらに備えている、請求項1に記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項3】
前記囲い部材は、前記枠の前記傾斜部と一体に形成されている、請求項2に記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項4】
前記ワーク載置部は、前記枠に掛け渡され前記ワーク載置面を上面に有する細長い複数の載置部材を有し、
前記支持部は、前記枠に固定され前記載置部材の端部を支持する複数の支持部材を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送用トレイ。
【請求項5】
前記枠は、前記傾斜部の前記下端部から外方に延びる延出部をさらに有しており、
前記延出部に設けられ、他のワーク搬送用トレイに重ねられた状態で他のワーク搬送用トレイとの接触を避けるためのスペースを確保するスペーサをさらに備え、
前記傾斜部の内方には、下に積まれた他のワーク搬送用トレイの囲い部材の少なくとも一部が収容される収容空間が形成されている、請求項2または3に記載のワーク搬送用トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−184687(P2009−184687A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24434(P2008−24434)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]