説明

ワーク搬送装置におけるハンド着脱機構

【課題】ハンドの着脱が簡単で、耐久性に優れたワーク搬送装置におけるハンド着脱機構を提供する。
【解決手段】ロボット先端部に、ハンド装脱着用の前後スライド溝21を設けたホルダイケール20を固定し、ホルダイケール20に内蔵した流体圧シリンダの駆動で、摺動ピストンが前後スライド溝21に挿入したハンドユニット40の基端部を押圧固定するワーク搬送装置におけるハンド着脱機構であって、先端係合用のV字ブロック24と、摺動ピストンに一体化したロックピン28とを前後スライド溝21内に前後に離間して設け、ハンド基端部の挿入端側にスリット44を設けて二股状端部43を構成し、二股の付け根側上面にロックピン28の先端のすり鉢状ブロック29と係合するテーパ状係合部45を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プレス機械に列設した金型にワークを順次搬送するために利用される産業ロボットであるワーク搬送装置に係り、特に、ワークを保持できるワーク保持ハンドの基端部が搬送装置のハンド支持部に取り外し可能に取着され、搬送装置を駆動して所定位置のワークを他の所定位置まで順次搬送する産業ロボットであるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構に関する。なお、搬送装置のハンド支持部に取着されるワーク保持ハンドとしては、負圧吸着ハンド,マグネットハンド,クランプハンド(チャッキングハンドともいう)等が知られている。
【背景技術】
【0002】
この種のワーク搬送装置の一例として、下記特許文献1が知られている。
【0003】
ここには、軸方向スライドおよび昇降動作できるように構成されたフィードバーの両端部に、ワークを保持できるワーク保持ハンドが固定されており、例えば、フィードバーが上昇,軸方向スライドおよび下降することで、ワークをある場所から他の場所に搬送する(例えば、プレス機械に列設した金型にワークを順次搬送する)産業ロボットであるワーク搬送装置が記載されている。
【0004】
そして、下記特許文献1には、形状や大きさの異なる種々のワークの搬送に効率よく対処できるように、ワークの種類に対応させた複数のワーク保持ハンド(例えば、先端側の負圧吸着パッドのレイアウト等を変えた複数種の負圧吸着ハンド)を予め用意しておき、フィードバーに対するワーク保持ハンドの交換をワンタッチで簡単にできるワーク保持ハンド交換装置(着脱機構)が開示されている。
【0005】
すなわち、前記特許文献1のワーク保持ハンド交換装置は、実際の装置を図示して説明すると、図13に示すように、左右溝4aおよび該左右溝4aに直交する縦溝4bを形成したハンド支持部であるホルダー4がフィードバー2の前面側に固定され、一方、ワークWを吸着保持できる負圧吸着パッド6を一体化したワーク保持ハンド(負圧吸着ハンド)5の基端部には、ホルダー4の縦溝4bに係合可能な、左右突起7a付き矩形状ブロック7がねじ固定により一体化されている。
【0006】
そして、ワーク保持ハンド5をホルダー4(フィードバー2)に装着するには、ハンド5基端部の矩形状ブロック7をホルダー4の縦溝4bに係合(左右突起7aを左右溝4aに係合)させることで、ホルダー4(フィードバー2)に対しブロック7(ワーク保持ハンド5)が位置決めされ、ホルダー4に内装されているエアシリンダのピストン8を前進(C方向に摺動)させて、矩形状ブロック7側面に設けた係合凹部7bにピストン8の先端部を係合させることで、フィードバー2にワーク保持ハンド5を固定一体化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−1260号公報(段落0011〜段落0018、図1、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このワーク保持ハンド交換装置では、第1には、ワーク保持ハンド5を装着する際には、ワーク保持ハンド5の基端部(ブロック7)を矢印A方向に押し込んだ後に、下方(矢印B方向)に押し下げる操作が必要となり、一方、ワーク保持ハンド5を脱着する際には、ワーク保持ハンド5の基端部(ブロック7)を上方(矢印Bと逆方向)に押し上げた後に、手前(矢印Aと逆方向)に抜き出す操作が必要となる。
【0009】
このため、ワーク保持ハンド5の交換がワンタッチでできるとはいっても、ワーク吸着ハンド5を前方に押してから下げる(上げてから手前に引き出す)という二段階の操作を伴うため、それだけ作業性が悪い(ワーク保持ハンドの交換が容易とはいい難い)という問題があった。
【0010】
また、第2には、ワーク保持ハンド5がワークWを保持する際は、ワーク保持ハンド5がフィードバー2と一体に下降して、例えば吸着パッド6がワークWに押し付けられることになり、この押し付け力はワーク保持ハンド5の締結部であるホルダー4との固定部(ピストン8の先端部)やブロック7とのねじ締結部に負荷として作用する。そして、ワークWを確実に保持(吸着)できるように、この押付力は、一般的に幾分強めに設定されている。
【0011】
このため、この押し付け力がワーク保持ハンド5基端部側の締結部に衝撃力として作用し、これが繰り返されることで、ワーク保持ハンド5やフィードバー2の破損につながるという第2の問題もあった。
【0012】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ワーク保持ハンドの基端部をハンド支持部に対し前後方向に進退動作させるだけで、ワーク保持ハンドを着脱できるとともに、ワーク保持ハンドやハンド支持部の耐久性の向上に有効なワーク搬送装置におけるハンド着脱機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するために、請求項1に係るワーク搬送装置におけるハンド着脱機構においては、ワークを保持できるワーク保持ハンドの基端部が搬送装置のハンド支持部に取り外し可能に取着され、搬送装置を駆動して所定位置のワークを他の所定位置まで順次搬送する産業ロボットであるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、
前記ハンド支持部は、前記ハンド基端部係合用のスライド溝と、前記スライド溝に係合した前記ハンド基端部を固定する流体圧シリンダとを備え、
前記スライド溝に係合して位置決めされた前記ハンド基端部が、前記流体圧シリンダの駆動により摺動するピストンによって前記スライド溝内所定位置に押圧固定されたワーク搬送装置におけるハンド着脱機構であって、
前記スライド溝を、ワーク搬送方向と直交する水平前後方向に延びて前方に開口するハンド挿着穴で構成し、該挿着穴の幅方向略中央部には、挿入された前記ハンド基端部の挿入端側が係合する位置決用のV字ブロックと、前記流体圧シリンダの上下摺動ピストンに一体化され、前記ハンド挿着穴に挿入された前記ハンド基端部の略中央部を上方から該挿着穴の底面に押圧固定するロックピンとを前後方向に離間して設け、
一方、前記ハンド基端部の挿入端側を前記V字ブロックに係合可能な二股に構成するとともに、該ハンド基端部上面の該二股の付け根側には、前記ロックピン先端部に設けた下方先細型すり鉢状ロックと係合するテーパ状係合部を設けるように構成した。
【0014】
(作用)ハンド基端部をハンド支持部の前面側からスライド溝(ハンド挿着穴)に挿入すると、ハンド基端部の二股状の挿入側端部がV字ブロックに係合することで、ハンド基端部の挿入端側が前後左右方向に位置決めされる。
【0015】
このとき、ロックピン先端部の下方先細型すり鉢状ロックは、ハンド基端部上面の二股付け根側のテーパ状係合部上方の対応する位置にあって、流体圧シリンダを駆動してロックピンを下降させると、ロックピンのすり鉢状ロックがハンド基端部側のテーパ状係合部と係合し、ハンド基端部が前後左右方向に正確に位置決めされた形態で、スライド溝(挿着穴)底面壁に押圧固定される。詳しくは、ハンド基端部は、その二股の挿入側端部がV字ブロック(の一対のV字端面)の二箇所に当接して係合するとともに、ハンド基端部のほぼ中央部上面の二股付け根側のテーパ状係合部がロックピンのすり鉢状ロックに係合することで、スライド溝(ハンド挿着穴)に対し前後左右方向に正確に位置決めされてハンド支持部に固定される。
【0016】
一方、流体圧シリンダを駆動してロックピンを上昇させると、ロックピン先端のすり鉢状ロックとハンド基端部側のテーパ状係合部との係合が外れて、ロックピンによるハンド基端部のハンド支持部への固定が解除される。
【0017】
即ち、スライド溝(ハンド挿着穴)内のV字ブロックにハンド基端部の二股状挿入側端部が係合するように、ハンド基端部をハンド支持部のスライド溝(ハンド挿着穴)に挿入し、流体圧シリンダを駆動してロックピンにより基端部側のテーパ状係合部をクランプすれば、ハンド基端部をハンド支持部(のハンド挿着穴)に位置決め固定できるし、ロックピンによるハンド基端部のクランプを解除するように流体圧シリンダを駆動すれば、ハンド基端部をスライド溝(挿着穴)から手前側に簡単に抜き出すことができる。
【0018】
このため、ハンド支持部に対しワーク保持ハンドを着脱するための操作としては、流体圧シリンダの駆動(ロックピンによるハンド基端部のクランプ・クランプ解除)を除けば、ワーク保持ハンド(ハンド基端部)をハンド支持部のスライド溝(ハンド挿着穴)に沿ってスライドさせるだけ、という非常に簡単な操作となる。
【0019】
また、ハンド基端部をスライド溝(ハンド挿着穴)の底面に押圧固定しているロックピンの押圧力(クランプ力)は、流体圧シリンダの流体圧であることから、ワーク保持ハンドの先端側に衝撃力等の過大負荷が作用した場合には、流体圧シリンダの流体圧に抗してハンド基端部がスライド溝(ハンド挿着穴)の底面に対して上下方向に揺動(流体圧シリンダのピストンが上下に摺動変位)することで、ハンド支持部に過大負荷がそのまま伝達されることが抑制される。
【0020】
即ち、ワーク保持ハンドがワークを保持する際は、例えばワーク保持ハンドが下降して、ハンド先端側のワーク保持部材(負圧吸着パッドやマグネット等)がワークWに押し付けられることになり、この押し付け力(ワークWとの衝突力)がハンド基端部をクランプ(押圧固定)しているロックピンに大きな負荷として作用(ハンドが長いほど大きな負荷として作用)する。しかるに、ロックピンに作用する衝撃力等の過大負荷は、流体圧シリンダのもつ緩衝作用(衝撃吸収作用)によって緩和されるので、ハンド支持部には衝撃力等の過大負荷が緩和されて伝達され、それだけワーク保持ハンドやハンド支持部が破損しにくい。
【0021】
請求項2においては、請求項1に記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、上方が開口する断面コ字型の前記スライド溝の左右一対の側壁に枠体状の蓋を固定して前記ハンド挿着穴を構成し、
前記流体圧シリンダを前記ハンド支持部に内装して、前記スライド溝の真下に配置し、前記ロックピンを上下摺動する平盤状の前記ピストンに垂設して、前記スライド溝の底面壁および前記蓋体を貫通して上方に突出するように構成するとともに、
前記ハンド基端部の二股の挿入側端部を構成する股部は、前記ハンド挿着穴(スライド溝)を上下に貫通する前記ロックピンと係合可能な位置まで少なくとも延在するように構成した。
(作用)流体圧シリンダをハンド支持部に内装し、しかもスライド溝の真下に設けたので、流体圧シリンダをハンド支持部に外装する場合に比べて、ハンド支持部周辺構造が簡潔かつ小型となる。
【0022】
また、ハンド挿着穴を構成する断面コ字型のスライド溝の上方は蓋で覆われているが、枠体状の蓋には開口部が設けられているので、枠体状の蓋(の開口部)を介してハンド挿着穴(スライド溝)内のロックピンやV字ブロックが作業者から見えるので、ハンド基端部の二股状挿入側端部をロックピンやV字ブロックに係合させ易い。
【0023】
請求項3においては、請求項1または2に記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、前記流体圧シリンダをエアシリンダで構成し、前記シリンダ内に前記ロックピンのクランプ力として作用する圧縮スプリングを収容するように構成した。
(作用)エアシリンダの作動圧力を高めることなく、ハンド基端部を押圧固定する押圧力を圧縮スプリングのばね力相当だけ増加できるので、大容量のエアシリンダではなく小型(小容量)のエアシリンダであっても、ハンド基端部を確実に固定保持できる。
【0024】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、前記ワーク保持ハンドを、ハンド先端側に複数の負圧吸着パッドを備えた負圧吸着ハンドで構成し、
前記ハンド基端部の底面には、負圧被伝達側管路を開口させ、一方、前記ハンド支持部の前記挿着穴の底面には、負圧発生側管路を座ぐり部を介して開口させるとともに、前記座ぐり部には、前記負圧被伝達側管路の開口周縁部および前記負圧発生側管路の開口周縁部にそれぞれ圧接して両管路を連通状態に保持する蛇腹型シールリングを装填するように構成した。
(作用)ロックピンにより、ハンド基端部がハンド支持部の挿着穴(スライド溝)に押圧固定された形態では、座ぐり部に装填された蛇腹型シールリングの上下の端部が、座ぐり部底面の負圧発生側管路の開口周縁部および基端部底面の負圧被伝達側管路の開口周縁部にそれぞれ圧接して両管路を連通状態に保持するので、負圧吸着ハンドの負圧吸着パッドには、前記した両管路を介してワークを負圧吸着保持できる適正な負圧が作用する。
【0025】
特に、負圧吸着ハンドが下降して負圧吸着パッドがワークに押し付けられる際に、押し付け時の衝撃が負圧吸着ハンドに負荷として作用するが、押し付け力(衝撃)が大きいと、流体圧シリンダの圧力でクランプされているハンド基端部は、その衝撃力を緩和するために、ロックピンの押圧力(クランプ力)である流体圧シリンダの圧力に抗してハンド挿着穴(スライド溝)の底面に対して上下に揺動する。このため、ハンド基端部の底面(の負圧被伝達側管路の開口周縁部)とハンド支持部のハンド挿着穴底面の座ぐり部底面(の負圧発生側管路の開口周縁部)が互いに揺動して、それぞれの管路の開口周縁部とシールリングとの圧接面に隙間が発生して、適正な負圧が負圧吸着パッドに作用しなくなるおそれがある。
【0026】
然るに、シールリングの蛇腹部がハンド基端部のスライド溝に対する揺動を吸収して、シールリングの上端部はハンド基端部底面に追随して揺動する(シールリングは、ハンド基端部底面の負圧被伝達側管路の開口周縁部およびハンド支持部の座ぐり部底面の負圧発生側管路の開口周縁部にそれぞれ圧接した形態に保持される)ので、負圧吸着ハンドが下降して負圧吸着パッドがワークに押し付けられる際の衝撃によってハンド基端部が上下に揺動する場合であっても、負圧発生側管路とシールリングと負圧被伝達側管路間の接続部において、負圧吸着パットの吸着力(負圧力)低下の原因となる隙間が発生しない。
【0027】
また、ハンド支持部のハンド挿着穴(スライド溝)にハンド基端部を挿入する際は、蛇腹型シールリングの上端部がハンド挿着穴(スライド溝)の底面より上方に位置するため、シールリングの上端部は、ハンド挿着穴(スライド溝)に挿入されるハンド基端部挿入端側と干渉するものの、ハンド基端部の挿着穴(スライド溝)への挿入に伴って蛇腹部が縮んでハンド基端部の底面に沿って滑動するので、ハンド基端部を挿着穴(スライド溝)に挿入したり挿着穴(スライド溝)から抜き出す際に、シールリングがめくれたり、ハンド基端部の挿着穴(スライド溝)への挿入・逸脱がシールリングによって妨げられることはない。
【0028】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、前記ワーク搬送装置は、少なくとも軸方向水平に往復動作するフィードバーを備え、前記フィードバーには、前記ハンド支持部であるホルダフレームを長手方向所定間隔に設けるように構成した。
(作用)フィードバーにはハンド支持部であるホルダフレームが複数設けられているので、各ホルダフレームにそれぞれワーク保持ハンドを取着することで、複数の位置のワークを同時に次の工程に対応する所定位置まで搬送することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る搬送装置におけるワーク保持ハンド着脱機構によれば、ハンド支持部に対しワーク保持ハンドを着脱するための操作がハンド基端部をスライド溝(ハンド挿着穴)に沿ってスライドさせるだけという非常に簡単な操作で済むので、ワーク保持ハンドのハンド支持部への着脱をワンタッチで行うことができる。
【0030】
また、ワーク保持ハンドがワークを保持する際に、ワーク保持ハンドやハンド支持部に作用するおそれのある過大負荷や衝撃力は、ハンド基端部を押圧固定(クランプ)する流体圧シリンダの緩衝作用(衝撃吸収作用)によって緩和されるので、ワーク保持ハンドやハンド支持部の破損が抑制されるとともに、ワーク搬送装置を構成するワーク保持ハンドやハンド支持部の耐久性が保証される。
【0031】
請求項2によれば、ハンド支持部周辺構造が簡潔かつ小型となるので、それだけワーク保持ハンドを装着したハンド支持部を移動させるための重量負荷が少なく、スムーズにワークを搬送させることができる。
【0032】
また、作業者は、ハンド挿着穴(スライド溝)内のロックピンやV字ブロックの位置を目で確認しつつ、ハンド基端部の二股状挿入側端部の挿入や抜き出しを行うことができるので、ワーク保持ハンドの着脱作業がいっそう簡単となる。
【0033】
請求項3によれば、大容量のエアシリンダではなく小型のエアシリンダを採用することで、搬送装置のコストを低減できる。
【0034】
請求項4によれば、負圧吸着パッドがワークを吸着保持する際の衝撃によってハンド基端部がハンド挿着穴(スライド溝)に対し上下に揺動するような場合であっても、負圧被伝達側管路と負圧発生側管路間に介装されている蛇腹型シールリングが伸縮することで両管路の開口部周縁部の上下揺動を吸収して、両管路間の連通状態が確保されるので、負圧吸着パッドには、ワークを吸着保持できる適正な負圧が常に作用することとなって、ワークを確実に吸着保持して所定位置まで落下させることなく搬送することができる。
【0035】
また、ハンド挿着穴(スライド溝)に対しハンド基端部の挿入・逸脱をスムーズに行うことができるので、負圧吸着ハンドの着脱作業がさらにいっそう簡単となる。
請求項5によれば、複数の位置のワークを同時に次の工程に対応する所定位置まで搬送することができるので、ワークを効率的に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例であるワーク搬送装置全体の正面図である。
【図2】同搬送装置におけるハンド着脱機構の要部縦断面図で、(a)はハンド基端部をクランプした状態、(b)はハンド基端部のクランプを解除した状態を示す。
【図3】同搬送装置におけるハンド着脱機構の斜視図で、ハンド基端部をロックピンでクランプした状態を示す。
【図4】同搬送装置におけるハンド着脱機構の斜視図で、ハンド挿着穴からハンド基端部を抜き出した状態を示す。
【図5】ハンド基端部の平面図である。
【図6】ハンド基端部の縦断面図(図5に示す線VI−VIに沿う断面図)である。
【図7】同搬送装置におけるハンド着脱機構の斜視図で、ハンド基端部をハンド挿着穴(スライド溝)に挿入する様子を示す。
【図8】同搬送装置におけるハンド着脱機構の斜視図で、ハンド挿着穴(スライド溝)に挿入されたハンド基端部がロックピンでクランプされた状態を示す。
【図9】ホルダフレームに設けた負圧発生側管路とハンド基端部に設けた負圧被伝達側管路との接続部における断面図である。
【図10】ホルダフレームのスライド溝底面に開口する負圧発生器側管路とハンド基端部の底面に開口する負圧被伝達側管路間に介装された蛇腹型シールリングの一部破断斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例である搬送装置におけるハンド着脱機構の要部縦断面図である。
【図12】本発明の第3の実施例である搬送装置におけるハンド着脱機構の要部縦断面図である。
【図13】従来のワーク保持ハンド交換装置の要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0038】
図1〜図10は、本発明の一実施例であるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構を示し、図1は、ワーク搬送装置全体の正面図、図2〜図8は、同搬送装置におけるハンド着脱機構を示している。
【0039】
図1において、ワーク搬送装置10は、前述した従来例と同様に、例えば、一対のプレス加工機(図示せず)の中間位置に設置され、一方(たとえば、図1左側)のプレス加工機のワーク載置台(図示せず)からワークを受承して、他方(たとえば、図1右側)のプレス加工機のワーク載置台(図示せず)にワークを送り込む産業ロボットとして構成されている。
【0040】
具体的には、ワーク搬送装置10は、フィードバー駆動架台11に対し昇降動作可能な水平に延びるホルダベース12と、ホルダベース12に長手方向(図1の左右方向)スライド可能に組み付けられた長尺状のフィードバー14と、フィードバー14の両端部に設けたホルダフレーム18,18と、ホルダフレーム18,18それぞれに取着された一対のワーク保持ハンドユニットである負圧吸着ハンドユニット40,40とを備えている。
【0041】
そして、フィードバー駆動架台11に内蔵されている駆動機構(図示せず)を駆動して、ホルダベース12と一体にフィードバー14を上昇・下降動作させ、ホルダベース12に対しフィードバー14を長手方向水平送り動作させ、負圧吸着ハンドユニット40(先端側の負圧吸着パッド48)を介してワークWの吸着・脱着動作をさせることで、ワークWを一方のワーク載置台から他方のワーク載置台に順次搬送するように構成されている。符号16は、搬送装置における各駆動機構の駆動を操作するためのスイッチ等が設けられた操作パネルである。
【0042】
このようなワーク搬送装置10としての基本的な構成(フィードバー14に上昇・下降動作,長手方向水平送り動作,負圧吸着ハンドユニット40を介したワークWの吸着・脱着動作をさせる構成)は、特開平7―80576号や特開平8―1260号等のこの種の従来装置(搬送装置)と同じであるので、公知技術であるワーク搬送装置としての基本的な構成についての説明は省略し、本実施例のワーク搬送装置10における特徴となる構成であるハンド着脱機構について説明する。
【0043】
図1〜4において、縦断面T字型の長尺状のフィードバー14の両端部に設けられているホルダフレーム18は、フィードバー14の下面に固定され、中央が矩形状に開口する正面視矩形枠形状のホルダフレーム本体19と、タッピングスクリュー20cによって、ホルダフレーム本体19の前面側にホルダフレーム本体19と交差するように水平に固定された平坦な矩形ブロック形状の、ハンド支持部であるホルダイケール20とで構成されている。
【0044】
ホルダイケール20には、図3,4,7,8に示すように、上下に延びる長孔20bを設けた左右一対のブラケット20aが形成されており、タッピングスクリュー20c(図3,4参照)を緩めることで、ホルダフレーム本体19に対するホルダイケール20の固定位置(後述する前後スライド溝21の位置)を上下方向に調整できる。
【0045】
ホルダイケール20の上面には、左右一対の側壁20d,20dで挟まれて、フィードバー14の延在方向(図2の紙面と垂直な方向)と直交する前後方向(図2の左右方向)に延びる前後スライド溝21が設けられている。さらに、左右一対の側壁20d,20dには、前後スライド溝21の上方を覆う平板枠体状の蓋23が取着されて、ハンド基端部42を挿入できる前方側が開口するハンド挿着穴Hが構成されている。蓋23には、開口部23aが四箇所設けられており、これらの開口部23aからハンド挿着穴H(前後スライド溝21)の内部を視認(確認)できる。
【0046】
前後スライド溝21の幅方向略中央部には、図2,7に示すように、スライド溝21に挿入されたハンド基端部42の挿入端側が係合する位置決用のV字ブロック24と、ハンド基端部42の挿入側端部から所定距離離間した位置を上方からハンド挿着穴H(スライド溝21)の底面に押圧固定するロックピン28とが前後方向に離間して設けられている。
【0047】
V字ブロック24は、図5,7に示すように、ホルダイケール20の背面壁20eにねじ固定されて、その前後スライド溝21に望む側がハンド基端部42挿入端側(の二股状端部43,43)と係合するV字型に形成されている。
【0048】
また、図2(a),(b)に示すように、ホルダイケール20の前後スライド溝21の真下には、上下方向に摺動可能な円盤状ピストン26を備えた円筒形状のエアシリンダ25が内装されている。
【0049】
シリンダ25に収容されているピストン26には、ロックピン28が垂設されており、該ロックピン28は前後スライド溝21の底面壁21aおよび蓋23を上方に貫通して、V字ブロック24と前後方向所定距離だけ離間する所定位置に突出している。そして、ロックピン28の突出先端部には、ハンド基端部42に設けたテーパ状係合部45と係合する下方先細型すり鉢状ブロック29が設けられている。
【0050】
また、ホルダイケール20の右側面壁には、シリンダ室上部に連通するエアポート(図示せず)が、ホルダイケール20の下面壁には、シリンダ室下部に連通するエアポート25a(図2参照)がそれぞれ設けられ、これらのエアポートを介してシリンダ25内にエアの給排を行うことで、図2(a),(b)に示すように、エアシリンダ25が駆動(ピストン26が上下方向に摺動)する。符号27は、シリンダ室上部に収容された圧縮コイルスプリングで、そのばね力は、エアシリンダ25の空気圧とともに、ピストン26(ロックピン28)を介してハンド基端部42をクランプする力として作用(図2(a)参照)する。
【0051】
一方、負圧吸着ハンドユニット40は、図1,図2(a)に示されるように、ユニットホルダと称される平面視T字型のハンド基端部42に、複数の吸着パッド48を先端側に設けたバキュームホルダと称される細長い支持部材49がボルト・ナット締結により一体化されて構成されている。符号49aは支持部材49に設けた長孔で、ハンド基端部42から延出する支持部材49の延出方向および延出長を調節することで、負圧吸着パッド48の配置(レイアウト)を搬送するワークWに合わせて調整できる。
【0052】
ハンド基端部42は、図3〜8に示されるように、ホルダイケール20の前後スライド溝21の幅に整合する幅に形成されるとともに、ハンド基端部42の挿入端側は、ロックピン28と係合して該ハンド基端部42のハンド挿着穴H(スライド溝21)への挿入およびロックピン28の上下方向の摺動を許容する二股に構成されている。即ち、ハンド基端部42の挿入端側には、ロックピン28の外径より僅かに大きい幅で前後方向に延びるスリット44が設けられている。そして、ハンド基端部42上面の、V字ブロック24とロックピン28間の距離に対応する該スリット44の前後方向所定位置(実施例では、スリット44の付け根側)には、ロックピン28先端のすり鉢状ブロック29と係合するテーパ状係合部45が設けられている。
【0053】
そして、エアシリンダ25の駆動により摺動するピストン26に一体化されたロックピン28は、挿入端側の二股状端部43,43がV字ブロック24に係合して前後左右方向に位置決めされたハンド基端部42のほぼ中央部をクランプして、スライド溝21内所定位置に固定するハンド基端部固定機構を構成している。
【0054】
詳しくは、ハンド基端部42の二股状端部43,43がV字ブロック24と係合することで、ハンド基端部42がスライド溝21に対し前後左右方向に概略位置決めされ、その後、ロックピン28先端のすり鉢状ブロック29がテーパ状係合部45に係合することで、ハンド基端部42の先端部43,43がV字ブロック24とが圧接し、かつすり鉢状ブロック29とテーパ状係合部45が圧接して、ハンド基端部42がスライド溝21に対し前後左右方向に正確に位置決めされた形態で、ロックピン28によってハンド基端部42がクランプ(スライド溝21の底面に押圧固定)されている。
【0055】
また、スライド溝21の上方を覆う蓋23には、ハンド挿着穴H(スライド溝21)に挿入されたハンド基端部42の逸脱を防止する機能がある。すなわち、ハンドユニット40は、その先端側に負圧吸着パッド48が設けられているため、先端側に重心がある。このため、スライド溝21に蓋23を設けないと、スライド溝21にハンド基端部42を挿入した段階で、ハンドユニット40(ハンド基端部42)は重い先端側が下降する方向に揺動(図2右回りに回動)して、ハンド基端部42がスライド溝21から勝手に逸脱してしまう。
【0056】
そこで、ハンドユニット40(ハンド基端部42)が揺動(回動)しようとするときに、ハンド基端部42挿入端側と干渉してハンドユニット40(ハンド基端部42)の揺動(回動)を阻止する部材として機能する蓋23をスライド溝21上に設けて、ハンドユニット40(ハンド基端部42)の脱落を防止するようになっている。
【0057】
次に、ハンドユニット40(ハンド基端部42)をホルダイケール20のハンド挿着穴H(スライド溝21)に着脱する手順を説明する。
【0058】
ハンド基端部42をホルダイケール20の前面側からハンド挿着穴H(スライド溝21)に挿入すると、ハンド基端部42挿入端側の二股状端部43,43(スリット44)は、スライド溝21の上方に突出するロックピン28に係合し、さらにはV字ブロック24とも係合して、ハンド基端部42の挿入端側が前後左右方向に位置決めされる(図2(b),図7参照)。
【0059】
このとき、ロックピン28先端部の下方先細型すり鉢状ロック29は、挿入されたハンド基端部42上面の二股付け根側のテーパ状係合部45上方の対応する位置にあって、エアシリンダ25を駆動してロックピン28を下降させると、ロックピン28のすり鉢状ロック29がハンド基端部42側のテーパ状係合部45と係合して、ハンド基端部42は、スライド溝21(ハンド挿着穴H)に対し前後左右方向に正確に位置決めされた形態で、スライド溝21(ハンド挿着穴H)底面壁21aに押圧固定される(図2(a),図3,図8参照)。
【0060】
詳しくは、エアシリンダ25を駆動し、ロックピン28がハンド基端部42をスライド溝21(ハンド挿着穴H)底面壁21aにクランプ(押圧固定)すると、ハンド基端部42の二股の挿入側端部43,43がV字ブロック24(の一対のV字端面24a,24a)の二箇所に圧接し、かつロックピン28のすり鉢状ロック29がハンド基端部42のほぼ中央部上面のテーパ状係合部45に圧接して、ハンド基端部42は、スライド溝21(ハンド挿着穴H)に対し前後左右方向に正確に位置決めされた形態に保持されて、ハンドユニット40(ハンド基端部42)のホルダイケール20のハンド挿着穴H(スライド溝21)への装着が完了する。
【0061】
一方、ハンドユニット40(ハンド基端部42)をホルダイケール20のハンド挿着穴H(スライド溝21)から抜き出す場合は、エアシリンダ25を駆動してロックピン28を上昇させると、ロックピン28先端のすり鉢状ブロック29とハンド基端部42側のテーパ状係合部45との係合が外れて、ロックピン28によるハンド基端部42のクランプ(固定)が解除されるので、図4に示すように、ハンドユニット40(ハンド基端部42)をホルダイケール20のハンド挿着穴H(スライド溝21)から手前側に抜き出すことができる。
【0062】
このように、本実施例では、ホルダイケール20のハンド挿着穴H(スライド溝21)に対しハンドユニット40(ハンド基端部42)を着脱するための操作としては、エアシリンダ25の駆動(ロックピン28によるハンド基端部42のクランプ・クランプ解除)操作を除けば、ハンドユニット40(ハンド基端部42)をハンド挿着穴H(スライド溝21)に沿って前後方向にのみスライドさせるだけ、というという非常に簡単な操作で済むので、ハンドユニット40(ハンド基端部42)の着脱をワンタッチで行うことができる。
【0063】
特に、作業者は、ハンド基端部42をハンド挿着穴H(スライド溝21)に挿入する際に、ハンド挿着穴Hの上面壁を構成する蓋23に設けられている開口部23aを介して、ハンド挿着穴H(スライド溝21)内のロックピン28や位置決めブロック24を確認(視認)しつつハンド基端部42をハンド挿着穴H(スライド溝21)に挿入できるので、ハンドユニット40(ハンド基端部42)の装着作業をよりスムーズかつ確実に遂行できる。
【0064】
また、ハンド基端部42をスライド溝21(ハンド挿着穴H)の底面に押圧固定しているロックピン28の押圧力(クランプ力)は、エアシリンダ25の空気圧および内蔵スプリング27のばね力であることから、ハンドユニット40の先端側に衝撃力等の過大負荷が作用した場合には、エアシリンダ25の空気圧に抗してハンド基端部42がスライド溝21(ハンド挿着穴H)の底面21aに対して上下方向に揺動(エアシリンダ25のピストン26が上下に摺動変位)することで、ホルダフレーム本体19やホルダイケルール20やフィードバー14に過大負荷が弱められて伝達される。
【0065】
即ち、ハンドユニット40がワークWを吸着保持する際は、フィードバー14と一体にハンドユニット40が下降して、ハンド先端側の負圧吸着パッド48がワークWを押し付けることになり、この押し付け力(ワークWとの衝突力)がハンド基端部42をクランプ(押圧固定)しているロックピン28に大きな負荷として作用(ハンドユニット40が長いほど大きな負荷として作用)する。しかし、ロックピン28に作用する衝撃力等の過大負荷は、エアシリンダ25のもつ緩衝作用(衝撃吸収作用)によって緩和されて、ホルダフレーム18やフィードバー14には、衝撃力等の過大負荷が緩和されて伝達されるので、ホルダフレーム18やフィードバー14がそれだけ破損しにくい。
【0066】
図1,3,4において、符号56は、ホルダフレーム本体19の側方にブラケット55を介して取着された真空発生器で、この真空発生器56で発生した負圧(真空)は、真空発生器56からホルダイケール20に延びるフレキシブルホース57,ホルダイケール20に穿設された負圧発生側管路52(図2参照),ハンド基端部42に穿設された負圧被伝達側管路46(図2参照),ハンド基端部42から延びるフレキシブルホース47を介して、ハンドユニット40先端側の負圧吸着パッド48に作用するように構成されている。
【0067】
すなわち、ホルダイケール20の前後スライド溝21にハンドユニット40(ハンド基端部42)を装着することで、ホルダイケール20側の負圧発生側管路52とハンドユニット40(ハンド基端部42)側の負圧被伝達側管路46とが接続されるようになっている。なお、真空発生器56,フレキシブルホース57,ホルダイケール20側の負圧発生側管路52は、フィードバー14に設けられた左右一対のホルダフレーム18(ホルダフレーム本体19)に対し左右対称となるように設けられている。
【0068】
ここでは、図1の左側のホルダフレーム本体19(ホルダイケール20)と真空発生器56との接続について詳しく説明する。
【0069】
ホルダイケール20には、図9に示すように、一端側がホルダイケール20の右側面に設けたポート52a(図2参照)において開口し、他端側がスライド溝21の底面に設けた座ぐり部50の底面に開口(ポート52b)する負圧発生側管路52が設けられている。一方、ハンド基端部42には、一端側がハンド基端部42の底面に設けたポート46aにおいて開口し、他端側が基端部42の左右の側面に設けた4個の分岐ポート46b(図3,4,7,8参照)において開口する負圧被伝達側管路46が設けられている。
【0070】
そして、ホルダイケール20の前後スライド溝21にハンド基端部42が装着されると、図9に拡大して示すように、前後スライド溝21側の座ぐり部50(ポート52b)とハンド基端部42側のポート46aがほぼ正対して、負圧発生側管路52と負圧被伝達側管路46とが連通する。
【0071】
また、前後スライド溝21の座ぐり部50には、負圧発生側管路52の開口周縁部(ポート52bの周縁部)および負圧被伝達側管路46の開口周縁部(ポート46aの周縁部)にそれぞれ圧接して両管路46,52を連通状態に保持(接続)する蛇腹型シールリング54が装填されている。
【0072】
蛇腹型シールリング54は、図10に拡大して示すように、座ぐり部50の内周に整合する外径をもつ厚肉の円盤状基端部54aと、円盤状基端部54aの内周縁から垂直に立ち上がる薄肉の筒型蛇腹部54bとが樹脂またはゴムによって一体的に形成されている。
【0073】
そして、蛇腹型シールリング54の全長(上下高さ)は、座ぐり部50の深さh(図9参照)よりも幾分大きく(長く)設定されて、ハンドユニット40(ハンド基端部42)が前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に挿着された形態では、座ぐり部50に装填された蛇腹型シールリング54の円盤状基端部54aが座ぐり部50底面のポート52bの周縁部に、蛇腹型シールリング54の筒型蛇腹部54b上端部が基端部42底面のポート46aの周縁部にそれぞれ圧接して、負圧発生側管路52と負圧被伝達側管路46の連通状態が保持されるので、ハンドユニット40の負圧吸着パッド48には、管路46,フレキシブルホース47を介してワークWを吸着保持できる適正な負圧が常時作用する。
【0074】
特に、本実施例では、前記したように、フィードバー14が下降してハンドユニット40(の負圧吸着パッド48)のワークWを押し付ける力(衝撃)が大きい場合には、シリンダ溝21に対しハンド基端部42が積極的に上下に揺動することで、ハンド基端部42を介してホルダフレーム18に伝達される衝撃が緩和されるようになっているので、ハンド基端部42の底面とシールリング54と前後スライド溝21底面間にはそれだけ隙間が発生しやすい。
【0075】
然るに、本実施例では、シールリング54の筒型蛇腹部54aがワーク吸着ハンドユニット40の基端部42の前後スライド溝21に対する揺動を吸収して、シールリング54の上端部はハンド基端部42底面に追随して揺動する(シールリング54は基端部42底面のポート46aの周縁部および座ぐり部50底面のポート52bの周縁部にそれぞれ圧接された形態に保持される)ので、ハンドユニット40(負圧吸着パッド48)がワークWを押し付ける際の衝撃によって、ハンド基端部42が上下に揺動する場合であっても、負圧発生側管路52と負圧被伝達側管路46間の接続部に負圧吸着パット48の吸着力(負圧力)低下の原因となる隙間が発生することがない。
【0076】
したがって、本実施例では、負圧吸着パッド48には、ワークWを吸着保持できる適正な負圧が常に作用することとなって、ワークWを確実に吸着保持して所定位置まで落下させることなく搬送することができる。
【0077】
また、前後スライド溝21にハンド基端部42が挿入される前は、図9仮想線で示すように、蛇腹型シールリング54の上端部が前後スライド溝21の底面より上方に位置するため、ハンド基端部42を前後スライド溝21に挿入するときに、シールリング54の上端部が前後スライド溝21に挿入されるハンド基端部42先端側(挿入端側)と干渉するおそれがある。
【0078】
然るに、本実施例では、図2符号43aで示すように、ハンド基端部42の挿入側端部43,43の下側縁が丸く面取りされるとともに、図10に示すように、蛇腹型シールリング54の上端部外周縁が縦断面円弧形状に形成されているので、ハンド基端部42の挿入側端部43,43の挿入(前進)に伴ってシールリング54の上端部がハンド基端部42の面取り部43aによって下方に押し込まれ、さらにハンド基端部42が挿入される(前進する)と蛇腹部54bが縮んでシールリング54の上端部が基端部42の底面に沿って滑動する。
【0079】
このため、ハンド基端部42を前後スライド溝21に挿入したり前後スライド溝21から抜き出す際に、シールリング54がめくれたり、ハンド基端部42の前後スライド溝21への挿入や逸脱がシールリング54によって妨げられることはない。
【0080】
このように、本実施例では、前後スライド溝21に対しハンド基端部42の挿入および逸脱をスムーズに行うことができるので、ハンドユニット40の前後スライド溝21への装着作業が非常に簡単となる。
【0081】
図11は、本発明の第2の実施例であるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構の要部縦断面図である。
【0082】
前記した第1の実施例では、ホルダイケール20の背面壁20eにV字ブロック24がねじ固定されているが、この第2の実施例では、V字ブロック24Aが中空に形成されるとともに、ホルダイケール20の背面壁20eとの間に介装した圧縮コイルスプリング24bによって、V字ブロック24Aは前後スライド溝21の開口側に向けて付勢保持されている。符号24cは、V字ブロック24Aの摺動ガイドとして機能するガイドピンである。
【0083】
すなわち、ロックピン28がハンド基端部42をクランプ(ロックピン28先端のすり鉢状ブロック29がハンド基端部42側のテーパ状係合部45に係合)する際に、ハンド基端部42が圧縮コイルスプリング24bの付勢力に抗して、ホルダイケール20の背面壁20eに接近する方向に押込まれるので、ハンド基端部42は、圧縮コイルスプリング24bの付勢力が作用した形態に位置決め保持される。
【0084】
本実施例では、ハンド基端部42に設けるテーパ状係合部45の形成位置がスリット44の長手方向に多少ずれていたとしても、圧縮コイルスプリング24bの付勢力によってこのズレを吸収できるので、それだけハンド基端部42におけるテーパ状係合部45の加工が容易となる(テーパ状係合部45形成位置の加工精度が緩和される)。
【0085】
その他は、前記した第1の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、重複した説明は省略する。
【0086】
図12は、本発明の第3の実施例であるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構の要部分解斜視図である。
【0087】
前記した第1,第2の実施例では、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に挿入されたハンド基端部42をロックピン28を介して押圧固定(クランプ)するエアシリンダ25が、ホルダイケール20に内装されて、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)の真下に設けられていたが、この図3に示す第3の実施例では、ハンド基端部42を押圧固定(クランプ)するためのエアシリンダ25Aが、ホルダイケール20に外装されて、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)の真上に設けられている。
【0088】
エアシリンダ25Aは、前後スライド溝21の左右の側壁20d,20dに取着されて、エアシリンダ25Aの底部25aが前記第1の実施例の蓋23としての機能(ハンドユニット40の回動を阻止してハンド基端部42の前後スライド溝21からの脱落を防止する機能)を発揮する。
【0089】
また、エアシリンダ25Aのピストン26Aに垂設されたロックピン28Aは、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)のシリンダ下面壁25aを貫通して下方に突出し、ロックピン28Aの先端部には、ハンド基端部42の上面に形成されているテーパ状係合部45と係合する下方先細型のすり鉢状ロック29が設けられている。
【0090】
その他は、前記した第1,2の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、重複した説明は省略する。
【0091】
なお、前記した第1〜第3の実施例では、ホルダイケール20に内装されたエアシリンダ25,25Aの空気圧によって、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に挿入されたハンド基端部42を押圧固定(クランプ)しているが、エアシリンダ25,25Aに代えて、ホルダイケール20に内装した油圧シリンダの油圧によって、前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に挿入されたハンド基端部42を押圧固定(クランプ)するように構成してもよい。
【0092】
また、前記した第1〜第3の実施例では、ホルダイケール20に設けた前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に、ワーク保持ハンドユニットである負圧吸着ハンドユニット40のハンド基端部42が取り外し可能に装着されているが、負圧吸着ハンドユニット40以外のワーク保持ハンドユニットとしては、ハンド先端側に複数のマグネットやチャックを備えたマグネットハンドユニットやクランプハンド(チャッキングハンドともいう)ユニットが知られており、マグネットハンドユニットやクランプハンドユニットのハンド基端部がホルダイケール20の前後スライド溝21(ハンド挿着穴H)に取り外し可能に装着されていてもよい。
【0093】
また、前記した実施例では、上下方向昇降動作および軸方向(長手方向)スライド可能に構成されているフィードバー14にホルダフレーム18(ホルダフレーム本体19,ホルダイケール20)が固定され、ホルダフレーム18のホルダイケール20に設けた前後スライド溝21にワーク保持ハンドユニットのハンド基端部42が装着された搬送装置10におけるハンド着脱機構について説明したが、フィードバー14は上下方向昇降動作することなく軸方向(長手方向)にのみスライド可能で、フィードバー14に固定されたホルダフレーム本体19に対し、ホルダイケール20が例えばボールねじ機構を介して昇降動作可能に組み付けられ、ハンド支持部であるホルダイケール20に設けた前後スライド溝21にワーク保持ハンドユニットのハンド基端部42が装着された構造のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構にも適用できる。
【0094】
また、前記した実施例では、少なくとも軸方向(長手方向)スライド可能なフィードバー14を備えたワーク搬送装置におけるハンド着脱機構について説明したが、所定の往復動作ができるように構成された多軸制御ロボットのアームにハンド支持部であるホルダイケール20が設けられ、ホルダイケール20に設けた前後スライド溝21にワーク保持ハンドユニットのハンド基端部42が装着された構造のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構にも適用できる。
【符号の説明】
【0095】
10 搬送装置
11 フィードバー駆動架台
12 ホルダベース
14 フィードバー
W ワーク
18 ホルダフレーム
19 ホルダフレーム本体
20 ホルダイケール
H ハンド挿着穴
21 スライド溝
21a スライド溝の底面壁
25a シリンダ下面壁
23 前後スライド溝の上方を覆う枠体状の蓋
24,24A 前後左右方向位置決用のV字ブロック
25,25A エアシリンダ
26,26A ピストン
28,28A 左右方向位置決用のロックピン
29,29A すり鉢状ブロック
40 負圧吸着ハンドユニット
42 ハンド基端部
43 ハンド基端部の挿入側二股状端部
44 二股部を構成する前後に延びるスリット
45 テーパ状係合部
46 負圧被伝達側管路
48 負圧吸着パッド
50 座ぐり部
52 負圧発生側管路
54 蛇腹型シールリング
54b 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持できるワーク保持ハンドの基端部が搬送装置のハンド支持部に取り外し可能に取着され、搬送装置を駆動して所定位置のワークを他の所定位置まで順次搬送する産業ロボットであるワーク搬送装置におけるハンド着脱機構において、
前記ハンド支持部は、前記ハンド基端部係合用のスライド溝と、前記スライド溝に係合した前記ハンド基端部を固定する流体圧シリンダとを備え、
前記スライド溝に係合して位置決めされた前記ハンド基端部が、前記流体圧シリンダの駆動により摺動するピストンによって前記スライド溝内所定位置に押圧固定されたワーク搬送装置におけるハンド着脱機構であって、
前記スライド溝は、ワーク搬送方向と直交する水平前後方向に延びて前方に開口するハンド挿着穴で構成され、該挿着穴の幅方向略中央部には、挿入された前記ハンド基端部の挿入端側が係合する位置決用のV字ブロックと、前記流体圧シリンダの上下摺動ピストンに一体化され、前記ハンド挿着穴に挿入された前記ハンド基端部の略中央部を上方から該挿着穴の底面に押圧固定するロックピンとが前後方向に離間して設けられ、
一方、前記ハンド基端部の挿入端側が前記V字ブロックに係合可能な二股に構成されるとともに、該ハンド基端部上面の該二股の付け根側には、前記ロックピン先端部に設けた下方先細型すり鉢状ロックと係合するテーパ状係合部が設けられたことを特徴とするワーク搬送装置におけるハンド着脱機構。
【請求項2】
前記ハンド挿着穴は、上方が開口する断面コ字型スライド溝の左右一対の側壁に枠体状の蓋を固定して構成され、
前記流体圧シリンダは、ハンド支持部に内装されて、前記スライド溝の真下に配置され、前記ロックピンは、上下摺動する平盤状の前記ピストンに垂設されて、前記スライド溝の底面壁および前記蓋体を貫通して上方に突出するとともに、
前記ハンド基端部の二股の挿入側端部を構成する股部は、前記ハンド挿着穴(スライド溝)を上下に貫通する前記ロックピンと係合可能な位置まで少なくとも延在することを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構。
【請求項3】
前記流体圧シリンダは、エアシリンダで構成され、前記シリンダ内には、前記ロックピンのクランプ力として作用する圧縮スプリングが収容されたことを特徴とする請求項1または2に記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構。
【請求項4】
前記ワーク保持ハンドは、ハンド先端側に複数の負圧吸着パッドを備えた負圧吸着ハンドで構成され、
前記ハンド基端部の底面には、負圧被伝達側管路が開口し、一方、前記ハンド支持部の前記挿着穴の底面には、負圧発生側管路が座ぐり部を介して開口するとともに、前記座ぐり部には、前記負圧被伝達側管路の開口周縁部および前記負圧発生側管路の開口周縁部にそれぞれ圧接して両管路を連通状態に保持する蛇腹型シールリングが装填されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構。
【請求項5】
前記ハンド支持部は、少なくとも水平に往復動作するフィードバーの下方に固定され、その前面側にワーク保持ハンド着脱用のスライド溝を設けたホルダフレームで構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワーク搬送装置におけるハンド着脱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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