説明

一体な乱流挿入材

【課題】一層良好な熱力学的効率を可能とする乱流挿入材を提供する。
【解決手段】熱交換器(1)用の乱流挿入材、特に自動車冷却器用の、実質波形の断面を有する一体な乱流挿入材において、乱流挿入材(24;70)が、同じ波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域(41〜45;84〜86)を有し、これらの区域が波延設方向を横切って互いにずらして配置されていて、乱流挿入材(24;70)が、異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域(27〜32、41〜45;75〜80、84〜86)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用の乱流挿入材、特に自動車冷却器用の、実質波形の断面を有する一体な乱流挿入材であって、乱流挿入材が、同じ波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域を有し、これらの区域が波延設方向を横切って互いにずらして配置されている乱流挿入材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乱流挿入材は圧延によって製造される。特許文献1により公知の油/冷却材冷却器は上下に平行に配置される複数の板からなる。各板は相反する2つの縁に熱交換媒体用の各1つの流入口と流出口とを有する。板は板間にそれぞれ中空室を形成し、熱伝達を高めるために波形乱流薄板が中空室内に設けられており、熱伝達に関与する各1つの媒体が中空室を貫流する。乱流薄板は、さまざまに整列した波形推移の存在する諸区域に区分されている。諸区域は斜めに延びる分離切断部によって相互に区切られている。乱流薄板は圧延されており、隣接する区域において圧延方向はそれぞれ、設定可能な角度だけ、隣接区域の圧延方向に対して捩じられている。熱交換媒体の各流入口または流出口が区域内に設けられており、流入口から流出口の方向に直接向かう流れには、これを横切る方向よりも大きな抵抗が加わり、付設された中空室内で流れの均一分布がもたらされている。公知の乱流薄板は、さまざまな波延設方向を有する区域を提供するために複数の圧延部品から組立てられている。圧延方向を横切って門状口が生じるが、しかしこれらの口は隣接した列では異なる幅であり、隣接した門の間に周知の如くにそれぞれ条溝状口が生じ、これらの口は門を横切る流通だけでなく、これに垂直な方向での流通も可能とする。
【特許文献1】独国特許発明第19709601号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、熱交換器用、特に自動車冷却器用の、実質波形の断面を有する一体な乱流挿入材であって、乱流挿入材が、同じ波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域を有し、これらの区域が波延設方向を横切って互いにずらして配置されているものにおいて、一層良好な熱力学的効率を可能とする乱流挿入材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、熱交換器用、特に自動車冷却器用の、実質波形の断面を有する一体な乱流挿入材であって、乱流挿入材が、同じ波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域を有し、これらの区域が波延設方向を横切って互いにずらして配置されているものにおいて、乱流挿入材が、異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域を有することによって解決されている。
【発明の実施の形態】
【0005】
本発明に係る乱流挿入材によって、1つの流れ通路の内部で媒体の適切な分布が、および/または負荷状態が局所的に異なる場合局所的負荷テンソルに相応して熱交換器の適切な補強が、および/または熱交換器の個々の流れ通路またはすべての流れ通路内の好適に成形されたフィン構造による熱力学的出力の最適化が可能となる。本発明に係る乱流挿入材は打抜き‐深絞り複合プロセスにおいて全体または切片ごとのいずれかで成形される。乱流挿入材の構造は、密閉構造として成形しておくこともできる。その場合、打抜きプロセスは省くことができる。
【0006】
乱流挿入材の好ましい1実施例は、乱流挿入材が、異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の長方形区域を有することを特徴としている。これにより、異なる方向で流れ通路の流通が可能となる。
【0007】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、乱流挿入材が実質長方形の板によって形成され、この板が、板長手方向を横切って延設される波形断面を備えた複数の区域を有する1つの中央領域と、板の長辺側に対して0〜90度の角度で延設される波形断面を備えた複数の区域を有する2つの外側領域とを含むことを特徴としている。外側領域は主に媒体入口もしくは媒体出口に配置されている。それゆえに外側領域は入口領域もしくは出口領域とも称される。主に、入口および出口で流れは板長手方向を横切って推移する。入口領域および出口領域の本発明に係る造形によって、入口領域もしくは出口領域と中央領域との間で流れを流体工学的および熱工学的に最適に誘導することが可能となる。
【0008】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、外側領域の中央領域近傍に配置される区域において波形断面が板の長辺側に対して、外側に配置される区域におけるよりも大きな角度で延設されることを特徴としている。板の末端で波形断面は主に、板の付属する長辺側に対して50〜80度の角度に配置されている。中央領域の近傍で波形断面は主に、板の付属する長辺側に対して10〜40度の角度に配置されている。これにより、板の長辺側から中央領域へと流れの穏やかな方向転換が可能となる。
【0009】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、板の長辺側に対する、板の外側領域の波形断面を延設する角度が、中央領域から外方にかけて減少することを特徴としている。これにより、板の長辺側から中央領域へと流れの穏やかな方向転換が可能となる。
【0010】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、乱流挿入材が実質長方形の板によって形成され、この板が、板長手方向を横切って延設される波形断面を備えた複数の区域を有する1つの中央領域と、板長手方向に延設される波形断面を備えた複数の区域を有する2つの外側領域とを含むことを特徴としている。波長手整列を横切って、隣接領域で幅の異なる門状口が構成されており、隣接した門の間にそれぞれ条溝状口が生じ、これらの口は門を横切る流通だけでなく、これに垂直な方向での流通も可能とする。
【0011】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、横方向および縦方向に延設される波形断面区域の間に方向転換区域が構成されていることを特徴としている。方向転換区域において流れは90度方向転換される。
【0012】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、方向転換区域が板の外側領域で対角線上に配置されていることを特徴としている。これにより、死水領域の形成が低減される。
【0013】
乱流挿入材の他の好ましい実施例は、波延設方向が方向転換区域において90度変化することを特徴としている。移行領域は主に丸めて構成されている。
【0014】
自動車冷却器、特に商用車の排気冷却器において、前記課題は上記乱流挿入材を使用することによって解決されている。
【0015】
本発明のその他の利点、特徴および細部は、図面を参考にさまざまな実施例を詳しく述べる以下の明細書から明らかとなる。特許請求の範囲および明細書で触れられた特徴はそれぞれ個々にそれ自体として、または任意に組合せて、本発明にとって本質的たり得る。
【実施例】
【0016】
図1に商用車の排気冷却器1が斜視図で示してある。排気冷却器1は、実質的に縦長直方体形状の冷却器ハウジング2を含む。冷却器ハウジング2の上面に冷却材入口短管3と冷却材出口短管4が取付けられている。冷却器ハウジング2の正面に排気入口短管6と排気出口短管7が取付けられている。排気入口短管6を通して排気は冷却器ハウジング2に流入でき、冷却器ハウジング2の長手方向で多数の排気流れ通路を通して排気出口短管7へと送られる。実質板状の2つの排気流れ通路の間にそれぞれ1つの実質板状の冷却材流れ通路が配置されている。冷却器ハウジング2内の冷却材流れ通路の推移が矢印11〜14で示唆されている。冷却材は、冷却器ハウジング2を通して送られる商用車の排気を冷却するのに役立つ。流れが実質長手方向で冷却器ハウジング2内を推移する領域は中央領域とも称される。中央領域は外側が入口領域と出口領域とによって限定される。入口領域で流れは矢印18で示唆されたように90度方向転換されねばならない。同様に、流れは出口領域で、矢印19で示唆されたように90度方向転換されねばならない。図1の2箇所22で、死水領域の生じる危険が高まる。なかんずくこのような死水領域の形成を防止するために、流れ通路中に乱流挿入材が配置されている。
【0017】
図2と図3に第1実施例による本発明に係る乱流挿入材24が斜視図と断面図で示してある。乱流挿入材24はアルミニウム薄板片に長方形の板から形成されている。乱流挿入材24の一方の末端に実質三角形の入口領域25が構成されている。入口領域25には6つの長方形波形断面区域27〜32が並べて配置されている。波形断面区域34〜38は乱流挿入材24の長手方向で波付されている。波形断面区域27は、互いに等間隔に配置される5つの波頭34〜38を含む。波形断面区域28は、波形断面区域27の波頭に対してずらして配置される5つの波頭を含む。波形断面区域29は、波形断面区域28の波頭に対してずらして配置される3つの波頭を含む。波形断面区域30は、波形断面区域29の波頭に対してずらして配置される3つの波頭を含む。波形断面区域31、32は、単数または複数の隣接する波頭に対してずらして配置される各1つの波頭を含む。波形断面区域27〜32の波形断面は両方の側面が開口しており、板長手方向を横切って流通させることができる。
【0018】
板の中央に設けられている中央領域40に多数の長方形波形断面区域41〜45が板長手方向を横切って配置されている。波形断面区域41〜45の波形断面は板長手方向を横切って延設され、互いにずらして配置されている。切断線47は、中央領域40が図2、図3に示したよりもかなり大きいことを示唆している。中央領域40は実質的に等辺台形の形状である。
【0019】
入口領域25と中央領域40との間に、実質対角線状に配置される方向転換領域50が設けられている。方向転換領域50が多数の方向転換区域52〜55を含み、それらのなかで流れは入口領域25から中央領域40へと90度方向転換される。
【0020】
入口領域25とは反対側の乱流挿入材24の末端に出口領域60が設けられており、この出口領域は入口領域25に対して対称に構成されている。出口領域60と中央領域40との間に設けられる方向転換領域65は多数の方向転換区域66〜68を有し、方向転換領域50に対して対称に構成されている。付属する対称軸線は乱流挿入材24の中心を横切って延びている。
【0021】
図4と図5には乱流挿入材70が2つの異なる図で示してある。乱流挿入材70はアルミニウム薄板片から形成され、長方形の形状である。乱流挿入材70は入口領域71と中央領域72と出口領域73とに区分されている。入口領域71は、長方形の形状を有する多数の波形断面区域75〜80を含む。波形断面区域75〜80は、互いに距離82を置いて配置される各2つの波頭を含む。波形断面区域75の波形は乱流挿入材70の長辺側に対して約65度の角度で延設されている。波形断面区域80の波形は乱流挿入材70の付属する長辺側に対して約30度の角度で延設されている。その間で、乱流挿入材70の長辺側に対する波延設方向の角度は外側から中央領域72にかけて減少する。
【0022】
中央領域72は、長方形に構成される3つの波形断面区域84〜86を含む。波形は波形断面区域84〜86内で板長手方向を横切って延設されている。波形断面区域84〜86の波頭は互いにずらして配置されている。乱流挿入材70は、対称軸線に関して、乱流挿入材70の中心を横切って対称に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】商用車の排気冷却器の斜視図である。
【図2】第1実施例による乱流挿入材の斜視図である。
【図3】図2の乱流挿入材を半分の高さで示す断面図である。
【図4】他の実施例による乱流挿入材の平面図である。
【図5】図4の乱流挿入材を半分の高さで示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)用の乱流挿入材、特に自動車冷却器用の、実質波形の断面を有する一体な乱流挿入材であって、乱流挿入材(24;70)が、同じ波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域(41〜45;84〜86)を有し、これらの区域が波延設方向を横切って互いにずらして配置されているものにおいて、乱流挿入材(24;70)が、異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の区域(27〜32、41〜45;75〜80、84〜86)を有することを特徴とする乱流挿入材。
【請求項2】
乱流挿入材(70)が、異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた複数の長方形区域(75〜80、84〜86)を有することを特徴とする、請求項1記載の乱流挿入材。
【請求項3】
乱流挿入材(70)が実質長方形の板によって形成され、この板が、板長手方向を横切って延設される波形断面を備えた複数の区域(84〜86)を有する1つの中央領域(72)と、板の長辺側に対して0〜90度の角度で延設される波形断面を備えた複数の区域(75〜80)を有する2つの外側領域(71、73)とを含むことを特徴とする、請求項2記載の乱流挿入材。
【請求項4】
外側領域(71、73)の中央領域(72)近傍に配置される区域(79、80)において波形断面が板の長辺側に対して、外側に配置される区域(75、76)におけるよりも大きな角度で延設されることを特徴とする、請求項3記載の乱流挿入材。
【請求項5】
板の長辺側に対する、板の外側領域(71、73)の波形断面を延設する角度が、中央領域(72)から外方にかけて減少することを特徴とする、請求項4記載の乱流挿入材。
【請求項6】
乱流挿入材(24)が実質長方形の板によって形成され、この板が、板長手方向を横切って延設される波形断面を備えた複数の区域(41〜45)を有する1つの中央領域(40)と、板長手方向に延設される波形断面を備えた複数の区域(27〜32)を有する2つの外側領域(25、60)とを含むことを特徴とする、請求項1または2記載の乱流挿入材。
【請求項7】
横方向および縦方向に延設される波形断面区域(27〜32、41〜45)の間に方向転換区域(66〜68)が構成されていることを特徴とする、請求項6記載の乱流挿入材。
【請求項8】
方向転換区域(52〜55、66〜68)が板の外側領域で対角線上に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の乱流挿入材。
【請求項9】
波延設方向が方向転換区域(52〜55、66〜68)において70〜110度、好ましくは85〜95度、特別好ましくは90度変化することを特徴とする、請求項8記載の乱流挿入材。
【請求項10】
異なる波延設方向に延設される波形断面を備えた区域を1つの流体が順次流通可能であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載の乱流挿入材。
【請求項11】
1区域の内部で波延設方向がこの区域の1境界に対して、特にすべての境界に対して鋭角を成すことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載の乱流挿入材。
【請求項12】
前記鋭角が第1区域から隣接する第2区域へとその前置符号を変えることを特徴とする、請求項11記載の乱流挿入材。
【請求項13】
少なくとも1つの波形断面が、隣接する2つの区域の境界を越えて設けられており、特に湾曲側面を有することを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載の乱流挿入材。
【請求項14】
先行請求項のいずれか1項記載の乱流挿入材(24;70)を有する自動車用熱交換器、特に給気冷却器、排気冷却器、冷媒蒸発器、または冷媒凝縮器。
【請求項15】
乱流挿入材が流れ通路内で形状嵌合式に固定されていることを特徴とする、請求項14記載の自動車冷却器。
【請求項16】
乱流挿入材が流れ通路内で蝋付、溶接または接着されていることを特徴とする、請求項14または15記載の自動車冷却器。
【請求項17】
1つの管によって、または上下に設けまたは積み重ねた2つの円板によって、または2つの管の間に、流れ通路が形成されていることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項記載の自動車冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−508496(P2008−508496A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523030(P2007−523030)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008307
【国際公開番号】WO2006/013075
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】