一体化された容器を備えた顕微鏡スライドカバー
【課題】スライド上のサンプルに、いくつかの反応を行わせることができるスライド、及びカバーグラスを提供する。
【解決手段】基材のためのカバー10は、基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部18を画成している本体部12を含んでいる。さらに、カバー10は、本体部12から伸びて流体容器17を画成する突出部13を含んでいる。カバー10が基材に取り付けられているときに、流体容器14は空洞部18と流体通する。
【解決手段】基材のためのカバー10は、基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部18を画成している本体部12を含んでいる。さらに、カバー10は、本体部12から伸びて流体容器17を画成する突出部13を含んでいる。カバー10が基材に取り付けられているときに、流体容器14は空洞部18と流体通する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材用のカバーに関するものであり、ある形態においては顕微鏡スライドで用いるためのカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡スライド(microscope slide)は、一般に、顕微鏡で材料サンプルを観察するのに用いられる。このようなサンプルは、人間の組織(tissue)を含み、この場合はサンプルの特性を識別できるように染色(staining)などの処理を必要とするであろう。スライドの上には、DNA、RNA又はタンパク質などといったその他の材料も置かれるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スライド上のサンプルに、いくつかの反応を行わせるのが一般的である。このような反応が起こった後、スライドは顕微鏡で観察されるであろう。組織のサンプルは、注意深い準備を必要とし、かつある反応は注意深く制御された環境を必要とするので、スライド上での反応の実施は自動化するのが困難であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、基材(substrate)の上方に位置して反応室を形成するための空洞部(cavity)を画成している本体部(body)と、本体部から伸び、カバーが基材に取り付けられている(fitted)ときに空洞部と流体連通(fluid communication)する流体容器を画成する突出部(projection)とを含んでいる、基材のためのカバーが提供される。
【0005】
好ましい態様では、空洞部が、基材のサンプル保持領域の全幅にわたって伸びている。
【0006】
好ましい態様では、突出部から、容器(reservoir)内への流体のウィッキング流れ(wicking)を促進するための突出部(protrusion)が伸びている、
【0007】
好ましい態様では、容器は、基材から離間している突出部と、カバーの側部エッジ(edge)に位置決めされた脚部との間に画成されている。
【0008】
ある1つの態様では、突出部は2つの部分(section)で形成され、第1の部分は、空洞部に対して少なくとも実質的に60°の角度が付けられ、第2の部分は、少なくとも実質的に15°の角度が付けられている。
【0009】
ある1つの態様では、カバーは、さらに、該カバーの反対側の端部に第2の容器を含んでいる。
【0010】
好ましい態様では、カバーのエッジに、2つ又はこれより多いスライドの上の空洞部を取り囲む壁部が位置決めされている。
【0011】
ある態様では、脚部は、カバーの側部に沿って伸びて壁部を形成している。
【0012】
好ましい態様では、カバーは、該カバーを制御及び位置決めするためのロケータを含み、該ロケータは、カバーの突出部とは反対側の端部に配設されている。
【0013】
ある1つの態様では、空洞部は、ロケータと隣り合うカバーの端部エッジまで伸びている。
【0014】
ある1つの態様では、カバーは壁部によって基材上に担持されている(supported)。
【0015】
好ましい態様では、カバーは、ポリマ材料(polymer material)で形成されている。
【0016】
ある1つの態様では、空洞部は、ポリマ材料よりも表面粗度が小さい(reduced surface roughness)コーティング(coating:被覆)を含んでいる。
【0017】
もう1つの態様では、空洞部は、多孔度が小さい(reduced porosity)コーティングを含んでいる。
【0018】
もう1つの態様では、空洞部は、1つ又は複数のコーティングを有している。
【0019】
好ましい態様では、第1のコーティングは、スライドの材料と同様の物性(similar properties)を有する材料である。
【0020】
好ましい態様では、第1のコーティングは二酸化珪素である。
【0021】
好ましい態様では、第2のコーティングが、第1のコーティングの中間部に配置され(placed intermediate)、カバーと第1のコーティングとの間の接触特性(contact properties)を良くしている。
【0022】
好ましい態様では、カバーは、該カバーが基材に対して係合される(engaged)とともにピボット回転させられる(pivoted)のを可能にし、これにより反応室を開かせるとともにスライドが上記流体で除去される(cleared)のを可能にしている係合翼部構造(wing structure)を有している。
【0023】
もう1つの態様では、カバーの空洞部が基材と対向して反応室を形成するように構成されている上記のカバーと、基材とを備えた組み合わせ体(combination)が提供される。
【0024】
さらにもう1つの態様では、基材のサンプル保持領域上でサンプルを処理する方法であって、基材の上方に上記のカバーを位置決めし、カバーの空洞部を基材と対向させて、サンプル保持領域の上方に反応室を形成する過程と、必要なときに、流体を流体容器に落として(deposit)、流体が上記反応室内に引き入れられる(drawn)のを可能にする過程とを含む方法が提供される。
【0025】
好ましい態様では、上記方法は、さらに、カバーを基材に対して滑動(slide)させて、カバーとサンプル保持領域との間の重なり度合い(degree of overlap)を変化させ、この変化に対応する反応室の体積の変化を生じさせる過程を含んでいる。
【0026】
好ましい態様では、上記方法は、さらに、カバーと係合する(associated)翼構造が基材に対して係合させられるとともに持ち上げられてカバーを開かれた状態にピボット回転させるまで、基材に対して上記カバーを滑動させ、流体を反応室から排出する(drain)のを可能にする過程を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】顕微鏡スライドの一例を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ、スライドのためのカバーの第1の例を上面図、側面図及び下面図である。
【図3】図2に示すカバーの斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、それぞれ、図1に示すスライドの上に位置決めされた、図2に示すカバーのさらなる図である。
【図5】図4に示すスライド及びカバーの構造の斜視図であり、一部が切り欠かれたカバーの断面を示している。
【図6】図5に示すスライド及びカバーの模式的な断面図である。
【図7】スライド及びカバーを位置決めするようになっているトレーの斜視図である。
【図8】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図9】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図10】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図12】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図13】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図14】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、上側斜視図及び下側斜視図である。
【図15】カバーのノーズ部の模式的な側面図である。
【図16】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図17】カバーのノーズ部のもう1つの例の模式的な側面図である。
【図18】図7に示すトレーに取り付けられた、図2に示すカバーを示す図である。
【図19】(a)〜(c)は、それぞれ、図1に示すスライドの上方の種々の位置における、図2に示すカバーを示す図である。
【図20】(a)及び(b)は、それぞれ、修正されたカバーの下側斜視図及び拡大された部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しつつ、非制限的な単なる例として、本発明を説明する。
図1は、サンプル3を収容している(contain)上表面2(upper surface)を含んでいる顕微鏡スライド1を示している。スライド1は、固有のバーコード4(unique bar code)によって識別される。薄くスライスされた組織の切片(section)などのサンプル3は、スライド1上のサンプル保持領域5に配置されている(located)。ここで、サンプル保持領域5は、この後に試験流体(test fluid)などを供給するために、図2に示すようなカバーで覆う必要がある。
【0029】
図2(a)〜(c)及び図3は、本体部12と、流体受け入れゾーン14と、位置決め手段16(locating means)と、下面19(underside face)に形成された空洞部18とを有するカバー10を示している。壁部20(wall portion)は、両側部で、空洞部18を取り囲んでいる。カバー10の一方の端部で、壁部20は、下面19から上向きに(upwardly)離れるように伸びる脚部21と結合している(join)。両脚部21を橋渡しする(span)突出部13(projection)が設けられ、この突出部13は、該突出部13の下側と脚部21との間に流体容器17を画成している(define)。
【0030】
図4及び図5は、スライド1に取り付けられた(fitted)カバー10を示している。図4(c)には、流体容器17が最も明瞭に示されている。なお、図4(c)は、カバー10及びスライド1と交差するA−A断面の一部を示す詳細な図である。いずれかの端部に脚部21を備えた突出部13は、スライド1に対して上昇させられ(raised)、スライド1上に分配された(dispensed)流体を保持することができる容積部(volume)を形成している。このようにして、流体容器17は、スライド1上に分配された流体をスライド1のエッジからこぼれさせることなく、要求を受けるまで(until required)、保持することを可能にする。さらに、突出部13は、空洞部18の全幅にわたって流体が広がるのを促進する。
【0031】
図6に示すように、空洞部18とスライド1との重なり(overlap)は、反応室と称されるであろうものを形成する。空洞部18の高さは、典型的には、応用形態(application)に応じて、20〜200ミクロンの範囲で変えることができる。壁部20は、スライド1上でカバー10を担持するようになっている。空洞化された(cavityed)表面22と、壁部20と、スライド1のサンプル保持領域5は、カバー10がサンプル保持領域5の上方に少なくとも部分的に配置されたときに、反応室24を形成する。
【0032】
流体容器17は、典型的には、反応室24の体積より大きいサイズ、例えば反応室の体積の150%のサイズを有している。これは、反応室24に十分な体積の流体を完全に充填する(fill)一方、いくらか過剰の流体で反応室24を洗い流し、かつある量の流体を流体容器内に保持して蒸発のための容器(reservoir)を形成することを可能にする。
【0033】
スライド1上にロード(load:搭載)された後、カバー10にクランプ力(挟みつけ力)が加えられてもよい。これらの力は、壁部20と、スライド1の上面との間をシールするようになっている。これは、カバー10の側部からの流体の漏れを抑制する。ある1つの例(図示せず)では、壁部20は、スライド1の上面2と壁部20とのシールを促進するための追加の部材を有していてもよい。この追加の部材は、比較的軟らかいポリマ材料又はゴム材料からなるものであってもよい。
【0034】
カバー10はまた、翼部26(wing)の形態の係合表面を含んでいる。図7に示すように、翼部26は、トレー25の傾斜部28(ramp)と係合し、これによりカバー10を、スライド1の表面から持ち上げるようになっている。図18には、カバーを自由に持ち上げる翼部26の一例がより明瞭に示されている。カバー10は、位置決め手段16を移動させるアーム(図示せず)によって制御することができる。図19にスライド1に対するカバー10の位置が例示されているように、カバー10は、スライド1の上方で複数の位置に配置することができる。図19(a)においては、カバー10は、サンプルが露出されて開放される、スライド1に対して開かれた位置にある。図19(b)は、部分的に閉じられた位置にあるカバー10を示している。そして、図19(c)は、完全に閉じられた位置にあるカバー10を示している。この場合、サンプル3はカバー10によって完全に閉じられ、それゆえ反応室24内に全面的に収容される。図5に示すように、カバー10と空洞部18とによって形成された反応室24は、スライド1の大半にわたって伸びている。しかしながら、サンプル3はバーコード4から遠い方のスライドの端部に向かってより多く配置され、したがって、より小さい反応室24を要求することが可能である。反応室24の寸法の低減は、反応室24を充填するために必要な流体の量を低減し、これは高価又は希少な(scare)流体が用いられる場合には重要なことであろう。スライド1の一部をカバー10で覆うことのみにより、カバー10でより小さい反応室24を形成することが可能である。この位置は、図19(b)に示されている。
【0035】
図8〜図17には、カバー10の構造の変形例が模式的に示されている。図8〜図17では、カバー10の前側部分だけが示され、位置決め手段16は、図の明瞭化のため省略され、同一の部分(部材)には同一の参照番号が付けられている。
【0036】
図8(a)に示すカバー10は、本体部12と、突出脚部21(protruding leg)と、突出部13(protruding section)とインデント30(indent:切り欠き)とを有している。突出脚部21は、本体部12の一方の側部で、流体受け入れゾーン14を形成している。スライド1の上に配置されたときに、流体を、流体受け入れゾーン14内に分配することができる。ここで、それは円形の態様で広がり、突出部13に接触する。インデント30は、突出部13の前側エッジが直線状である場合(図9参照)に比べて、流体が突出部13のより広い部分と接触することができる。流体が突出部13と接触した後、流体は空洞部18を幅方向に横切ってウィックする(wick:流れる)。空洞部18の後部が吸引された場合、又はカバー10がスライド1に沿って開かれた位置から、より閉じられた位置に移動させられた場合、流体は空洞部18を充填しはじめる。空洞部18がサンプル3を横切って移動したときに、それは反応室24を形成し、流体はサンプル3と反応する。
【0037】
図9(a)及び図9(b)は、ある環境で用いることができるカバー10のより単純な構成を示している。カバー10の動作は、図8(a)及び図8(b)におけるカバー10の動作と同一である。
【0038】
図10(a)及び図10(b)は、突出脚部21を備えた本体部12を有するカバー10を示している。突出部13及びバー31(bar)は、流体を受け入れるための流体受け入れゾーン14を囲んでいる。流体は突出部13の上に分配され、ここでスライド表面2上に流下する。突出部13及びバー31は、空洞部18を幅方向に横切るように流体を広がらせ、空洞部18に流体が充填されるのを可能にする。
【0039】
図11、図12及び図16に示すカバー10は、上記の場合と同様に動作する。
【0040】
上記のすべてのカバー10において、カバー幅は一般に25mmであり、空洞部18の高さは典型的にはわずか20〜200マイクロメートルであるということが理解されるべきである。かくして、全体の流体の分配体積は、20〜300マイクロリットルのオーダーであろう。
【0041】
図13(a)は、本体部12と、脚部21と、スライド1上に流体102を分配する流体ディスペンサ100とを有しているもう1つのカバー10を示している。図13(a)においては、流体102はすでに分配され、流体容器17内に流体容器(fluid reservoir)を形成している。この模式的な図は、カバー10に接触する流体によって形成された定型的なウィッキングパターン(wicking pattern:流れパターン)を示している。図13(b)においては、流体は、ちょうど突出部13上に分配されている。分配された体積(volume)においては、流体は、カバー10の形態と同程度の(comparable)寸法の液たまりを形成している。流体は、図13(a)に示すように前向きに流れるだけでなく、カバー10の下でも流れて空洞部18を少なくとも部分的に充填する。上記のとおり、流体は、さらにスライド1の上方のカバー10の移動によって、又は空洞部18の後部にかけられる吸引力によって、空洞部内に引き込まれることができる。
【0042】
図14(a)及び図14(b)は、カバー10のさらにもう1つの実施の形態を示している。ここでも、同一の参照番号は、同一の部分(部材)を示している。このカバー10は、流体容器17と、突出部13と、ニブ15(nib)の形態の突出部(protrusion)とを有している。流体は、ニブ15上に直接落ちる(deposit)ことができ、これにより流体は突出部13を巡って容器14に入り、必要に応じて空洞部18に入る。流体がカバー10の前方に非常に離れて配置された場合、流体が空洞部18を幅方向に横切ってウィッキングする前に、スライド1のエッジに到達させる状況(circumstance)が存在する。突出部13の使用は、分配された流体を、コンバーチル(convertile)と接触させ、コンバーチル及び流体の積極的な(positive)引力により空洞部18の全幅に沿って広がらせるということが見出された。空洞部内の毛管力は、流体を広がらせ、容器は十分な流体を保持して、スライド上に分配された流体が少なくとも空洞部18を充填することを確実にする。ニブ15は、ピペットが流体をスライド1の上に正確に分配するように配置されていない場合、例えば突出部の前に数ミリメートルそれてニブ15が流体に接触し、流体が突出部及び容器内に引き込まれる可能性がある場合に有用である。これは、空洞部内における泡又は空洞(void)の形成の低減を助勢する。ニブ15は、突出部13からほぼ1〜5mm伸びていてもよい。
【0043】
図17は、流体がカバー50の前に落とされたときに、どのようにスライド1を横切って広がるかの一例を示している。突出部15の下側についての種々の形態(profile)が用いられる。
【0044】
図4、図5及び図6に示すように、使用時には、カバー10はスライド1の上に配置されてサンプル3を覆う。図7に示すように、スライド1は、典型的には、トレー25内に存在する。トレー25は、例示されているとおり、例えば10個のスライド1及びカバー10を保持することができる。この後、トレー25は、2002年6月20日に出願され、「反応室を設けるための方法及び装置」と題された、本願出願人に係るオーストラリア仮特許出願第PS3114/02号と、2003年6月20日に出願された前記仮出願と関連する国際特許出願とに開示されているような生物反応装置に配置することができる。上記出願の内容は、参照としてここに編入されている。
【0045】
トレー25が装置(図示せず)内にロードされた後、スライド1は、所定の位置(position)に、典型的には、図13(b)、図15又は図17に模式的に示されているように、水平方向に対して15度の角度で保持される。この後、カバー10は、アーム(図示せず)によって移動させられ、位置決め手段16と係合する。典型的には、「開放充填(open fill)」と称される手順(sequence)の実施時に、カバー10は、サンプル3が露出されるまで、スライド1の表面に沿って縦方向(長手方向)に移動させられる。この後、流体は、ポンプに取り付けられたプローブ(probe)などの分配手段100によって、流体受け入れゾーン13(図13(b)参照)の上に分配される。分配された流体の量は、典型的には、反応室24を充填するのに十分なものである。この充填機構又は充填手法とともにカバー10を使用すれば、小体積の流体を、反応室24を横切って均一に分布させることができる。泡又は空気空間(air space)を伴うことなく、均一に反応室24を横切って流体を分布させることは、反応がより高い一貫性(consistency)でもってサンプル3上で起こることを可能にする。また、反応室24がすでに流体を収容している空の受け入れゾーンに流体を分配することは、反応室内の流体が受け入れゾーン内の流体によって置換され(replaced)、反応室内の流体と新たに分配された流体との混合が最小となる。この反応室24の寸法(dimensions)は、流体の混合がほとんど存在しないように、反応室24からの流体の円滑な流れを生じさせる。これは、先行する流体を、残留して後の流体又は反応を汚染する元の流体を最小にしつつ正確に置換することを可能にするので、有利である。これは、反応室24を清浄化するのに必要な洗浄の回数を低減する。
【0046】
反応室24内の流体の体積は、反応室24の寸法及び利用形態に応じて変化するであろうが、例えば150マイクロリットル又はこれより小さいであろう。
【0047】
反応室24は、追加の流体が流体受け入れゾーンに追加されない限り、又は流体受け入れゾーンとは反対側のスライドの端部に吸引力がかけられない限り(典型的には低減された空気圧により)、流体の表面張力により流体を保持することができる。反応室24は、スライド1の表面に沿って移動させられ、サンプル保持領域52を覆っているカバー10によって形成されるので、流体を充填することができる。あるいは、反応室24は、分配された流体の反応室24への毛管ウィッキングプロセス(process of capillary wicking)により、カバー10をスライド1に対して移動させることなく充填してもよい。
【0048】
この具体例では、カバー10は、移動していないとき、又は最初の充填に対して待避させられた(retracted)ときにクランプすることができる。クランプ機構(図示せず)は、例えば、壁部20と隣り合っているカバー10のエッジ付近に力をかけて(place force)、反応時にカバー10をスライド1に対して位置決めする。
【0049】
スライド1からのカバー10の引き下げ(withdrawal)時に、カバー10のスライド1との接触を除去するのが望ましい場合もある。これを実現するために、翼部26は、傾斜部28と係合してカバー10を、スライド1から持ち上げて離間させる。これは、カバー10がスライド1から持ち上げられて、スライド1とカバー10との間での流体の接触を防止する。このようにして、スライド1は事実上すべての流体が除去される。
【0050】
カバー10の一部分は、典型的にはプラスチックであるカバー本体部12の材料の物性とは異なる材料物性を有していてもよい。ある1つの具体例(図示せず)においては、空洞部18は、反応室24にある材料物性を与えるために、異なる材料物性を有していてもよい。透明なプラスチック材料は、カバー10の本体部12について適切であり、合理的な強度及び剛性などの物性適切な機械的物性を与えるということが見出された。カバー10は、クランプ力をカバー10にかけつつ移動させるのに十分な強度を有することが必要である。なぜなら、クランプ力は、カバー10の壁部20とスライド1の上表面との間にシール表面を形成するのを助勢するからである。カバー10は、反応室24を空にし又は充填するために移動させることができ、また反応室内の流体移動を促進して反応を助勢するために移動させることができる。
【0051】
カバー10は、クランプの際に空洞化された面がいくらかゆがむのが望ましいので、理想的には、ある程度の柔軟性(flexibility)をもつべきである。これは、反応室内で流体を移動させるのを助勢し、それゆえ流体へのサンプルの露出を増加させるということが見出された。
【0052】
カバー10のその他の物性は、スライド1の表面からの熱損失を抑制する能力を含んでいる。典型的には、スライド1は、加熱されたブロック(block)に取り付けられ、カバー10はスライド上のサンプル3の上方に配置されるであろう。スライド1の加熱は、反応室内の流体及びサンプル3を加熱する。カバー10からの過剰な熱損失が存在する場合、スライド1を加熱することにより流体の温度を調整(制御)することは困難である。さらに、反応室24を横切る望ましくない過剰な温度勾配が存在するであろう。
【0053】
図2に示すように、空洞化された面19は、カバー10の残部とは異なる表面特性を有していてもよい。空洞部18及びスライド1の上表面2に対して同様の(similar)材料物性を有するのが望ましいということが見出された。ある1つの具体例では、二酸化珪素などの材料で空洞部18を表面コートすることが可能である。このコーティングは、ほぼ110nmの厚さであってもよい。このコーティングは、ガラススライドのそれと同様の(similar)材料物性を備えた表面を生成する。二酸化珪素層を形成する前に、酸化クロム(Cr2O3)の薄い層(例えば、0.5〜6nm)を空洞部18に形成することが有利であるということが見出された。このように二酸化珪素とプラスチックとの間に中間層を形成することは、空洞部18に対して、より良好な熱膨張特性及びより良好な接着性を与える。さらに、一般に、コーティングは、空洞部18の平坦性を改善するのにも用いることができる(これは、核生成位置(nucleation sites)、ひいては高温での泡の形成を低減する。)。このコーティングは、反応室内での流体の毛管流れ特性を修正し、反応室内の流体とカバーとの間に液体又は気体の不浸透性のバリア(impermeable barrier)を生成し、又は化学的に不活性な表面を生成するために用いることができる。
【0054】
もう1つの具体例では、空洞化された面19を、カバー10のプラスチックの本体部12によって担持されたガラスインサート(glass insert)で置き換えることが可能である。プラズマ放電により、プラスチックの表面物性を変えることも可能である。
【0055】
具体例で示されたカバーは、とくに原位置交配反応(in-situ hybridisation reaction)に用いるときには、セ氏100度ないしこれに近い温度で用いることができる。高温では、流体は蒸発し、泡が生成される。加熱はまた、カバーに曲がりも生じさせる。空洞部18の表面は、カバー10の頂部より高温であり、より大きく膨張し、空洞部表面に、スライドに向かう「たるみ(sag)」を生じさせる。これは、流体が泡に比べてより小さい空間を占めようとするので、泡の除去を助勢する。泡は、空洞部18の端部に集まり、排出することが可能でなければならない。
【0056】
実験は、空洞部18の端部の面取り部(chamfer)は、泡が大気中に脱出する(escape)のを確実に可能にするということを示している。実在する容器17は、図20に示すように、デザイン変更することができる。ここでは、図14に示すものと同様の修正されたカバー60が、空洞部18を通る流体の均一な流れに影響を及ぼすことなく、泡を開放するのを助勢するための面取り部64を備えて示されている。この面取り部は、空洞部18及びスライド表面に対して、約60°をなす第1の角度付け部62(angled section)を形成している。
【0057】
しかしながら、流体の蒸発速度は、大気に露出された流体の表面領域に直接関連している(linked)。大きい表面積がより速い蒸発を生じさせ、より頻繁な流体の補充を必要とする。泡脱出角(bubble escape angle)が急峻な場合、蒸発速度は増加するであろう。
【0058】
この問題は、2つの角度を用いることにより克服することができる。すなわち、例えば空洞部と面取り部の間が15°である浅い角度付け部は、蒸発を最小にし、ひいて、泡の解放のための急峻な角度は、容器の体積を増加させるのに役立つ。
【0059】
カバー60にはまた、その反対側の端部に、第2の等しい形状の容器63が設けられている。第2の容器63もまた、加熱時に空洞部内に流体を補充するのに用いることができ、泡が脱出するのを可能にする。これにより、第2の容器63は、反応室内における流体の状態をより大きく制御することを可能にする。
【0060】
図14及び図20に示す実施の形態は、本発明に係るカバーの態様を実施するための現時点では最良の既知の方法であると確信されるものをあらわしていると考えられる。
【0061】
以下、本発明の好ましい態様を示す。
(態様1)
基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部を画成している本体部と、
上記本体部から伸び、上記カバーが上記基材に取り付けられているときに上記空洞部と流体連通する流体容器を画成する突出部とを含んでいる、基材のためのカバー。
(態様2)
上記空洞部が、上記基材のサンプル保持領域の全幅にわたって伸びている、態様1に係るカバー。
(態様3)
上記突出部から、上記容器内への流体のウィッキング流れを促進するための突出部が伸びている、態様1又は態様2に係るカバー。
(態様4)
上記容器が、上記空洞部に対して少なくとも実質的に60°の角度が付けられた第1の部分と、
上記空洞部と上記第1の部分との間に配置され、上記第1の部分に比べて、上記空洞部に対して小さい角度で方向付けられている第2の部分とによって画成されている、態様3に係るカバー。
(態様5)
上記第2の部分が、少なくとも実質的に15°の角度が付けられている、態様4に係るカバー。
(態様6)
該カバーが、ポリマ材料で形成されている、態様1〜5のいずれか1つに係るカバー。
(態様7)
上記空洞部が、上記ポリマ材料よりも表面粗度が小さいコーティングを含んでいる、態様1〜6のいずれか1つに係るカバー。
(態様8)
上記空洞部が、多孔度が小さいコーティングを含んでいる、態様7に係るカバー。
(態様9)
上記空洞部が、1つ又は複数のコーティングを有している、態様7又は8に係るカバー。
(態様10)
第1のコーティングが、スライドの材料と同様の物性を有する材料である、態様9に係るカバー。
(態様11)
上記第1のコーティングが二酸化珪素からなる、態様10に係るカバー。
(態様12)
第2のコーティングが、第1のコーティングの中間部に配置され、上記カバーと上記第1のコーティングとの間の接触特性を良くしている、態様11に係るカバー。
(態様13)
該カバーの空洞部の幅が、顕微鏡スライドの幅より長くない、態様1〜12のいずれか1つに係るカバー。
(態様14)
上記空洞部が実質的に平面状である、態様1〜13のいずれか1つに係るカバー。
(態様15)
さらに、該カバーを制御及び位置決めするためのロケータを含み、該ロケータが、該カバーの上記突出部とは反対側の端部に配設されている、態様1〜14のいずれか1つに係るカバー。
(態様16)
さらに、該カバーの反対側の端部に第2の容器を含んでいる、態様1〜15のいずれか1つに係るカバー。
(態様17)
該カバーのエッジに、2つ又はこれより多いスライドの上の空洞部を取り囲む壁部が配置されている、態様1〜16のいずれか1つに係るカバー。
(態様18)
上記容器が、上記突出部と、該カバーのいずれかの側部に配置された脚部との間に画成されている、態様17に係るカバー。
(態様19)
上記脚部が、上記空洞部の側部に沿って伸びて上記壁部を形成している、態様18に係るカバー。
(態様20)
該カバーが、上記壁部の上の基材の上に担持されている、態様18に係るカバー。
(態様21)
上記空洞部が、上記ロケータと隣り合うカバーの端部エッジまで伸びている、態様15に係るカバー。
(態様22)
該カバーが、該カバーが上記基材に対して係合されるとともにピボット回転させられるのを可能にし、これにより反応室を開かせるとともに上記スライドが上記流体で除去されるのを可能にしている係合翼部構造を有している、態様1〜21のいずれか1つに係るカバー。
(態様23)
該カバーの空洞部が上記基材と対向して反応室を形成するように構成されている態様1〜21のいずれか1つに係るカバーと、基材とを備えた組み合わせ体。
(態様24)
基材のサンプル保持領域上でサンプルを処理する方法であって、
基材の上方に態様1〜22のいずれか1つに係るカバーを位置決めし、上記カバーの空洞部を上記基材と対向させて、上記サンプル保持領域の上方に反応室を形成する過程と、
必要なときに、流体を上記流体容器に落として、上記流体が上記反応室内に引き入れられるのを可能にする過程とを含む方法。
(態様25)
さらに、上記カバーを上記基材に対して滑動させて、上記カバーと上記サンプル保持領域との間の重なり度合いを変化させ、この変化に対応する反応室の体積の変化を生じさせる過程を含んでいる、態様24に係る方法。
(態様26)
さらに、上記カバーと係合する翼構造が上記基材に対して係合させられるとともに持ち上げられて上記カバーを開かれた状態にピボット回転させるまで、上記基材に対して上記カバーを滑動させ、流体を上記反応室から排出するのを可能にする過程を含んでいる、態様24又は25に係る方法。
【符号の説明】
【0062】
1 顕微鏡スライド、2 上面、3 サンプル、4 固有のバーコード、5 サンプル保持領域、10 カバー、12 本体部、13 突出部、14 流体受け入れゾーン、16 位置決め手段、17 流体容器、18 空洞部、19 下面、20壁部、21 脚部、24 反応室、26 翼部、28 傾斜部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材用のカバーに関するものであり、ある形態においては顕微鏡スライドで用いるためのカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡スライド(microscope slide)は、一般に、顕微鏡で材料サンプルを観察するのに用いられる。このようなサンプルは、人間の組織(tissue)を含み、この場合はサンプルの特性を識別できるように染色(staining)などの処理を必要とするであろう。スライドの上には、DNA、RNA又はタンパク質などといったその他の材料も置かれるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スライド上のサンプルに、いくつかの反応を行わせるのが一般的である。このような反応が起こった後、スライドは顕微鏡で観察されるであろう。組織のサンプルは、注意深い準備を必要とし、かつある反応は注意深く制御された環境を必要とするので、スライド上での反応の実施は自動化するのが困難であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、基材(substrate)の上方に位置して反応室を形成するための空洞部(cavity)を画成している本体部(body)と、本体部から伸び、カバーが基材に取り付けられている(fitted)ときに空洞部と流体連通(fluid communication)する流体容器を画成する突出部(projection)とを含んでいる、基材のためのカバーが提供される。
【0005】
好ましい態様では、空洞部が、基材のサンプル保持領域の全幅にわたって伸びている。
【0006】
好ましい態様では、突出部から、容器(reservoir)内への流体のウィッキング流れ(wicking)を促進するための突出部(protrusion)が伸びている、
【0007】
好ましい態様では、容器は、基材から離間している突出部と、カバーの側部エッジ(edge)に位置決めされた脚部との間に画成されている。
【0008】
ある1つの態様では、突出部は2つの部分(section)で形成され、第1の部分は、空洞部に対して少なくとも実質的に60°の角度が付けられ、第2の部分は、少なくとも実質的に15°の角度が付けられている。
【0009】
ある1つの態様では、カバーは、さらに、該カバーの反対側の端部に第2の容器を含んでいる。
【0010】
好ましい態様では、カバーのエッジに、2つ又はこれより多いスライドの上の空洞部を取り囲む壁部が位置決めされている。
【0011】
ある態様では、脚部は、カバーの側部に沿って伸びて壁部を形成している。
【0012】
好ましい態様では、カバーは、該カバーを制御及び位置決めするためのロケータを含み、該ロケータは、カバーの突出部とは反対側の端部に配設されている。
【0013】
ある1つの態様では、空洞部は、ロケータと隣り合うカバーの端部エッジまで伸びている。
【0014】
ある1つの態様では、カバーは壁部によって基材上に担持されている(supported)。
【0015】
好ましい態様では、カバーは、ポリマ材料(polymer material)で形成されている。
【0016】
ある1つの態様では、空洞部は、ポリマ材料よりも表面粗度が小さい(reduced surface roughness)コーティング(coating:被覆)を含んでいる。
【0017】
もう1つの態様では、空洞部は、多孔度が小さい(reduced porosity)コーティングを含んでいる。
【0018】
もう1つの態様では、空洞部は、1つ又は複数のコーティングを有している。
【0019】
好ましい態様では、第1のコーティングは、スライドの材料と同様の物性(similar properties)を有する材料である。
【0020】
好ましい態様では、第1のコーティングは二酸化珪素である。
【0021】
好ましい態様では、第2のコーティングが、第1のコーティングの中間部に配置され(placed intermediate)、カバーと第1のコーティングとの間の接触特性(contact properties)を良くしている。
【0022】
好ましい態様では、カバーは、該カバーが基材に対して係合される(engaged)とともにピボット回転させられる(pivoted)のを可能にし、これにより反応室を開かせるとともにスライドが上記流体で除去される(cleared)のを可能にしている係合翼部構造(wing structure)を有している。
【0023】
もう1つの態様では、カバーの空洞部が基材と対向して反応室を形成するように構成されている上記のカバーと、基材とを備えた組み合わせ体(combination)が提供される。
【0024】
さらにもう1つの態様では、基材のサンプル保持領域上でサンプルを処理する方法であって、基材の上方に上記のカバーを位置決めし、カバーの空洞部を基材と対向させて、サンプル保持領域の上方に反応室を形成する過程と、必要なときに、流体を流体容器に落として(deposit)、流体が上記反応室内に引き入れられる(drawn)のを可能にする過程とを含む方法が提供される。
【0025】
好ましい態様では、上記方法は、さらに、カバーを基材に対して滑動(slide)させて、カバーとサンプル保持領域との間の重なり度合い(degree of overlap)を変化させ、この変化に対応する反応室の体積の変化を生じさせる過程を含んでいる。
【0026】
好ましい態様では、上記方法は、さらに、カバーと係合する(associated)翼構造が基材に対して係合させられるとともに持ち上げられてカバーを開かれた状態にピボット回転させるまで、基材に対して上記カバーを滑動させ、流体を反応室から排出する(drain)のを可能にする過程を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】顕微鏡スライドの一例を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ、スライドのためのカバーの第1の例を上面図、側面図及び下面図である。
【図3】図2に示すカバーの斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、それぞれ、図1に示すスライドの上に位置決めされた、図2に示すカバーのさらなる図である。
【図5】図4に示すスライド及びカバーの構造の斜視図であり、一部が切り欠かれたカバーの断面を示している。
【図6】図5に示すスライド及びカバーの模式的な断面図である。
【図7】スライド及びカバーを位置決めするようになっているトレーの斜視図である。
【図8】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図9】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図10】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図12】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図13】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図14】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、上側斜視図及び下側斜視図である。
【図15】カバーのノーズ部の模式的な側面図である。
【図16】(a)及び(b)は、それぞれ、カバーのさらにもう1つの例の、模式的な上面図及び側面断面図である。
【図17】カバーのノーズ部のもう1つの例の模式的な側面図である。
【図18】図7に示すトレーに取り付けられた、図2に示すカバーを示す図である。
【図19】(a)〜(c)は、それぞれ、図1に示すスライドの上方の種々の位置における、図2に示すカバーを示す図である。
【図20】(a)及び(b)は、それぞれ、修正されたカバーの下側斜視図及び拡大された部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しつつ、非制限的な単なる例として、本発明を説明する。
図1は、サンプル3を収容している(contain)上表面2(upper surface)を含んでいる顕微鏡スライド1を示している。スライド1は、固有のバーコード4(unique bar code)によって識別される。薄くスライスされた組織の切片(section)などのサンプル3は、スライド1上のサンプル保持領域5に配置されている(located)。ここで、サンプル保持領域5は、この後に試験流体(test fluid)などを供給するために、図2に示すようなカバーで覆う必要がある。
【0029】
図2(a)〜(c)及び図3は、本体部12と、流体受け入れゾーン14と、位置決め手段16(locating means)と、下面19(underside face)に形成された空洞部18とを有するカバー10を示している。壁部20(wall portion)は、両側部で、空洞部18を取り囲んでいる。カバー10の一方の端部で、壁部20は、下面19から上向きに(upwardly)離れるように伸びる脚部21と結合している(join)。両脚部21を橋渡しする(span)突出部13(projection)が設けられ、この突出部13は、該突出部13の下側と脚部21との間に流体容器17を画成している(define)。
【0030】
図4及び図5は、スライド1に取り付けられた(fitted)カバー10を示している。図4(c)には、流体容器17が最も明瞭に示されている。なお、図4(c)は、カバー10及びスライド1と交差するA−A断面の一部を示す詳細な図である。いずれかの端部に脚部21を備えた突出部13は、スライド1に対して上昇させられ(raised)、スライド1上に分配された(dispensed)流体を保持することができる容積部(volume)を形成している。このようにして、流体容器17は、スライド1上に分配された流体をスライド1のエッジからこぼれさせることなく、要求を受けるまで(until required)、保持することを可能にする。さらに、突出部13は、空洞部18の全幅にわたって流体が広がるのを促進する。
【0031】
図6に示すように、空洞部18とスライド1との重なり(overlap)は、反応室と称されるであろうものを形成する。空洞部18の高さは、典型的には、応用形態(application)に応じて、20〜200ミクロンの範囲で変えることができる。壁部20は、スライド1上でカバー10を担持するようになっている。空洞化された(cavityed)表面22と、壁部20と、スライド1のサンプル保持領域5は、カバー10がサンプル保持領域5の上方に少なくとも部分的に配置されたときに、反応室24を形成する。
【0032】
流体容器17は、典型的には、反応室24の体積より大きいサイズ、例えば反応室の体積の150%のサイズを有している。これは、反応室24に十分な体積の流体を完全に充填する(fill)一方、いくらか過剰の流体で反応室24を洗い流し、かつある量の流体を流体容器内に保持して蒸発のための容器(reservoir)を形成することを可能にする。
【0033】
スライド1上にロード(load:搭載)された後、カバー10にクランプ力(挟みつけ力)が加えられてもよい。これらの力は、壁部20と、スライド1の上面との間をシールするようになっている。これは、カバー10の側部からの流体の漏れを抑制する。ある1つの例(図示せず)では、壁部20は、スライド1の上面2と壁部20とのシールを促進するための追加の部材を有していてもよい。この追加の部材は、比較的軟らかいポリマ材料又はゴム材料からなるものであってもよい。
【0034】
カバー10はまた、翼部26(wing)の形態の係合表面を含んでいる。図7に示すように、翼部26は、トレー25の傾斜部28(ramp)と係合し、これによりカバー10を、スライド1の表面から持ち上げるようになっている。図18には、カバーを自由に持ち上げる翼部26の一例がより明瞭に示されている。カバー10は、位置決め手段16を移動させるアーム(図示せず)によって制御することができる。図19にスライド1に対するカバー10の位置が例示されているように、カバー10は、スライド1の上方で複数の位置に配置することができる。図19(a)においては、カバー10は、サンプルが露出されて開放される、スライド1に対して開かれた位置にある。図19(b)は、部分的に閉じられた位置にあるカバー10を示している。そして、図19(c)は、完全に閉じられた位置にあるカバー10を示している。この場合、サンプル3はカバー10によって完全に閉じられ、それゆえ反応室24内に全面的に収容される。図5に示すように、カバー10と空洞部18とによって形成された反応室24は、スライド1の大半にわたって伸びている。しかしながら、サンプル3はバーコード4から遠い方のスライドの端部に向かってより多く配置され、したがって、より小さい反応室24を要求することが可能である。反応室24の寸法の低減は、反応室24を充填するために必要な流体の量を低減し、これは高価又は希少な(scare)流体が用いられる場合には重要なことであろう。スライド1の一部をカバー10で覆うことのみにより、カバー10でより小さい反応室24を形成することが可能である。この位置は、図19(b)に示されている。
【0035】
図8〜図17には、カバー10の構造の変形例が模式的に示されている。図8〜図17では、カバー10の前側部分だけが示され、位置決め手段16は、図の明瞭化のため省略され、同一の部分(部材)には同一の参照番号が付けられている。
【0036】
図8(a)に示すカバー10は、本体部12と、突出脚部21(protruding leg)と、突出部13(protruding section)とインデント30(indent:切り欠き)とを有している。突出脚部21は、本体部12の一方の側部で、流体受け入れゾーン14を形成している。スライド1の上に配置されたときに、流体を、流体受け入れゾーン14内に分配することができる。ここで、それは円形の態様で広がり、突出部13に接触する。インデント30は、突出部13の前側エッジが直線状である場合(図9参照)に比べて、流体が突出部13のより広い部分と接触することができる。流体が突出部13と接触した後、流体は空洞部18を幅方向に横切ってウィックする(wick:流れる)。空洞部18の後部が吸引された場合、又はカバー10がスライド1に沿って開かれた位置から、より閉じられた位置に移動させられた場合、流体は空洞部18を充填しはじめる。空洞部18がサンプル3を横切って移動したときに、それは反応室24を形成し、流体はサンプル3と反応する。
【0037】
図9(a)及び図9(b)は、ある環境で用いることができるカバー10のより単純な構成を示している。カバー10の動作は、図8(a)及び図8(b)におけるカバー10の動作と同一である。
【0038】
図10(a)及び図10(b)は、突出脚部21を備えた本体部12を有するカバー10を示している。突出部13及びバー31(bar)は、流体を受け入れるための流体受け入れゾーン14を囲んでいる。流体は突出部13の上に分配され、ここでスライド表面2上に流下する。突出部13及びバー31は、空洞部18を幅方向に横切るように流体を広がらせ、空洞部18に流体が充填されるのを可能にする。
【0039】
図11、図12及び図16に示すカバー10は、上記の場合と同様に動作する。
【0040】
上記のすべてのカバー10において、カバー幅は一般に25mmであり、空洞部18の高さは典型的にはわずか20〜200マイクロメートルであるということが理解されるべきである。かくして、全体の流体の分配体積は、20〜300マイクロリットルのオーダーであろう。
【0041】
図13(a)は、本体部12と、脚部21と、スライド1上に流体102を分配する流体ディスペンサ100とを有しているもう1つのカバー10を示している。図13(a)においては、流体102はすでに分配され、流体容器17内に流体容器(fluid reservoir)を形成している。この模式的な図は、カバー10に接触する流体によって形成された定型的なウィッキングパターン(wicking pattern:流れパターン)を示している。図13(b)においては、流体は、ちょうど突出部13上に分配されている。分配された体積(volume)においては、流体は、カバー10の形態と同程度の(comparable)寸法の液たまりを形成している。流体は、図13(a)に示すように前向きに流れるだけでなく、カバー10の下でも流れて空洞部18を少なくとも部分的に充填する。上記のとおり、流体は、さらにスライド1の上方のカバー10の移動によって、又は空洞部18の後部にかけられる吸引力によって、空洞部内に引き込まれることができる。
【0042】
図14(a)及び図14(b)は、カバー10のさらにもう1つの実施の形態を示している。ここでも、同一の参照番号は、同一の部分(部材)を示している。このカバー10は、流体容器17と、突出部13と、ニブ15(nib)の形態の突出部(protrusion)とを有している。流体は、ニブ15上に直接落ちる(deposit)ことができ、これにより流体は突出部13を巡って容器14に入り、必要に応じて空洞部18に入る。流体がカバー10の前方に非常に離れて配置された場合、流体が空洞部18を幅方向に横切ってウィッキングする前に、スライド1のエッジに到達させる状況(circumstance)が存在する。突出部13の使用は、分配された流体を、コンバーチル(convertile)と接触させ、コンバーチル及び流体の積極的な(positive)引力により空洞部18の全幅に沿って広がらせるということが見出された。空洞部内の毛管力は、流体を広がらせ、容器は十分な流体を保持して、スライド上に分配された流体が少なくとも空洞部18を充填することを確実にする。ニブ15は、ピペットが流体をスライド1の上に正確に分配するように配置されていない場合、例えば突出部の前に数ミリメートルそれてニブ15が流体に接触し、流体が突出部及び容器内に引き込まれる可能性がある場合に有用である。これは、空洞部内における泡又は空洞(void)の形成の低減を助勢する。ニブ15は、突出部13からほぼ1〜5mm伸びていてもよい。
【0043】
図17は、流体がカバー50の前に落とされたときに、どのようにスライド1を横切って広がるかの一例を示している。突出部15の下側についての種々の形態(profile)が用いられる。
【0044】
図4、図5及び図6に示すように、使用時には、カバー10はスライド1の上に配置されてサンプル3を覆う。図7に示すように、スライド1は、典型的には、トレー25内に存在する。トレー25は、例示されているとおり、例えば10個のスライド1及びカバー10を保持することができる。この後、トレー25は、2002年6月20日に出願され、「反応室を設けるための方法及び装置」と題された、本願出願人に係るオーストラリア仮特許出願第PS3114/02号と、2003年6月20日に出願された前記仮出願と関連する国際特許出願とに開示されているような生物反応装置に配置することができる。上記出願の内容は、参照としてここに編入されている。
【0045】
トレー25が装置(図示せず)内にロードされた後、スライド1は、所定の位置(position)に、典型的には、図13(b)、図15又は図17に模式的に示されているように、水平方向に対して15度の角度で保持される。この後、カバー10は、アーム(図示せず)によって移動させられ、位置決め手段16と係合する。典型的には、「開放充填(open fill)」と称される手順(sequence)の実施時に、カバー10は、サンプル3が露出されるまで、スライド1の表面に沿って縦方向(長手方向)に移動させられる。この後、流体は、ポンプに取り付けられたプローブ(probe)などの分配手段100によって、流体受け入れゾーン13(図13(b)参照)の上に分配される。分配された流体の量は、典型的には、反応室24を充填するのに十分なものである。この充填機構又は充填手法とともにカバー10を使用すれば、小体積の流体を、反応室24を横切って均一に分布させることができる。泡又は空気空間(air space)を伴うことなく、均一に反応室24を横切って流体を分布させることは、反応がより高い一貫性(consistency)でもってサンプル3上で起こることを可能にする。また、反応室24がすでに流体を収容している空の受け入れゾーンに流体を分配することは、反応室内の流体が受け入れゾーン内の流体によって置換され(replaced)、反応室内の流体と新たに分配された流体との混合が最小となる。この反応室24の寸法(dimensions)は、流体の混合がほとんど存在しないように、反応室24からの流体の円滑な流れを生じさせる。これは、先行する流体を、残留して後の流体又は反応を汚染する元の流体を最小にしつつ正確に置換することを可能にするので、有利である。これは、反応室24を清浄化するのに必要な洗浄の回数を低減する。
【0046】
反応室24内の流体の体積は、反応室24の寸法及び利用形態に応じて変化するであろうが、例えば150マイクロリットル又はこれより小さいであろう。
【0047】
反応室24は、追加の流体が流体受け入れゾーンに追加されない限り、又は流体受け入れゾーンとは反対側のスライドの端部に吸引力がかけられない限り(典型的には低減された空気圧により)、流体の表面張力により流体を保持することができる。反応室24は、スライド1の表面に沿って移動させられ、サンプル保持領域52を覆っているカバー10によって形成されるので、流体を充填することができる。あるいは、反応室24は、分配された流体の反応室24への毛管ウィッキングプロセス(process of capillary wicking)により、カバー10をスライド1に対して移動させることなく充填してもよい。
【0048】
この具体例では、カバー10は、移動していないとき、又は最初の充填に対して待避させられた(retracted)ときにクランプすることができる。クランプ機構(図示せず)は、例えば、壁部20と隣り合っているカバー10のエッジ付近に力をかけて(place force)、反応時にカバー10をスライド1に対して位置決めする。
【0049】
スライド1からのカバー10の引き下げ(withdrawal)時に、カバー10のスライド1との接触を除去するのが望ましい場合もある。これを実現するために、翼部26は、傾斜部28と係合してカバー10を、スライド1から持ち上げて離間させる。これは、カバー10がスライド1から持ち上げられて、スライド1とカバー10との間での流体の接触を防止する。このようにして、スライド1は事実上すべての流体が除去される。
【0050】
カバー10の一部分は、典型的にはプラスチックであるカバー本体部12の材料の物性とは異なる材料物性を有していてもよい。ある1つの具体例(図示せず)においては、空洞部18は、反応室24にある材料物性を与えるために、異なる材料物性を有していてもよい。透明なプラスチック材料は、カバー10の本体部12について適切であり、合理的な強度及び剛性などの物性適切な機械的物性を与えるということが見出された。カバー10は、クランプ力をカバー10にかけつつ移動させるのに十分な強度を有することが必要である。なぜなら、クランプ力は、カバー10の壁部20とスライド1の上表面との間にシール表面を形成するのを助勢するからである。カバー10は、反応室24を空にし又は充填するために移動させることができ、また反応室内の流体移動を促進して反応を助勢するために移動させることができる。
【0051】
カバー10は、クランプの際に空洞化された面がいくらかゆがむのが望ましいので、理想的には、ある程度の柔軟性(flexibility)をもつべきである。これは、反応室内で流体を移動させるのを助勢し、それゆえ流体へのサンプルの露出を増加させるということが見出された。
【0052】
カバー10のその他の物性は、スライド1の表面からの熱損失を抑制する能力を含んでいる。典型的には、スライド1は、加熱されたブロック(block)に取り付けられ、カバー10はスライド上のサンプル3の上方に配置されるであろう。スライド1の加熱は、反応室内の流体及びサンプル3を加熱する。カバー10からの過剰な熱損失が存在する場合、スライド1を加熱することにより流体の温度を調整(制御)することは困難である。さらに、反応室24を横切る望ましくない過剰な温度勾配が存在するであろう。
【0053】
図2に示すように、空洞化された面19は、カバー10の残部とは異なる表面特性を有していてもよい。空洞部18及びスライド1の上表面2に対して同様の(similar)材料物性を有するのが望ましいということが見出された。ある1つの具体例では、二酸化珪素などの材料で空洞部18を表面コートすることが可能である。このコーティングは、ほぼ110nmの厚さであってもよい。このコーティングは、ガラススライドのそれと同様の(similar)材料物性を備えた表面を生成する。二酸化珪素層を形成する前に、酸化クロム(Cr2O3)の薄い層(例えば、0.5〜6nm)を空洞部18に形成することが有利であるということが見出された。このように二酸化珪素とプラスチックとの間に中間層を形成することは、空洞部18に対して、より良好な熱膨張特性及びより良好な接着性を与える。さらに、一般に、コーティングは、空洞部18の平坦性を改善するのにも用いることができる(これは、核生成位置(nucleation sites)、ひいては高温での泡の形成を低減する。)。このコーティングは、反応室内での流体の毛管流れ特性を修正し、反応室内の流体とカバーとの間に液体又は気体の不浸透性のバリア(impermeable barrier)を生成し、又は化学的に不活性な表面を生成するために用いることができる。
【0054】
もう1つの具体例では、空洞化された面19を、カバー10のプラスチックの本体部12によって担持されたガラスインサート(glass insert)で置き換えることが可能である。プラズマ放電により、プラスチックの表面物性を変えることも可能である。
【0055】
具体例で示されたカバーは、とくに原位置交配反応(in-situ hybridisation reaction)に用いるときには、セ氏100度ないしこれに近い温度で用いることができる。高温では、流体は蒸発し、泡が生成される。加熱はまた、カバーに曲がりも生じさせる。空洞部18の表面は、カバー10の頂部より高温であり、より大きく膨張し、空洞部表面に、スライドに向かう「たるみ(sag)」を生じさせる。これは、流体が泡に比べてより小さい空間を占めようとするので、泡の除去を助勢する。泡は、空洞部18の端部に集まり、排出することが可能でなければならない。
【0056】
実験は、空洞部18の端部の面取り部(chamfer)は、泡が大気中に脱出する(escape)のを確実に可能にするということを示している。実在する容器17は、図20に示すように、デザイン変更することができる。ここでは、図14に示すものと同様の修正されたカバー60が、空洞部18を通る流体の均一な流れに影響を及ぼすことなく、泡を開放するのを助勢するための面取り部64を備えて示されている。この面取り部は、空洞部18及びスライド表面に対して、約60°をなす第1の角度付け部62(angled section)を形成している。
【0057】
しかしながら、流体の蒸発速度は、大気に露出された流体の表面領域に直接関連している(linked)。大きい表面積がより速い蒸発を生じさせ、より頻繁な流体の補充を必要とする。泡脱出角(bubble escape angle)が急峻な場合、蒸発速度は増加するであろう。
【0058】
この問題は、2つの角度を用いることにより克服することができる。すなわち、例えば空洞部と面取り部の間が15°である浅い角度付け部は、蒸発を最小にし、ひいて、泡の解放のための急峻な角度は、容器の体積を増加させるのに役立つ。
【0059】
カバー60にはまた、その反対側の端部に、第2の等しい形状の容器63が設けられている。第2の容器63もまた、加熱時に空洞部内に流体を補充するのに用いることができ、泡が脱出するのを可能にする。これにより、第2の容器63は、反応室内における流体の状態をより大きく制御することを可能にする。
【0060】
図14及び図20に示す実施の形態は、本発明に係るカバーの態様を実施するための現時点では最良の既知の方法であると確信されるものをあらわしていると考えられる。
【0061】
以下、本発明の好ましい態様を示す。
(態様1)
基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部を画成している本体部と、
上記本体部から伸び、上記カバーが上記基材に取り付けられているときに上記空洞部と流体連通する流体容器を画成する突出部とを含んでいる、基材のためのカバー。
(態様2)
上記空洞部が、上記基材のサンプル保持領域の全幅にわたって伸びている、態様1に係るカバー。
(態様3)
上記突出部から、上記容器内への流体のウィッキング流れを促進するための突出部が伸びている、態様1又は態様2に係るカバー。
(態様4)
上記容器が、上記空洞部に対して少なくとも実質的に60°の角度が付けられた第1の部分と、
上記空洞部と上記第1の部分との間に配置され、上記第1の部分に比べて、上記空洞部に対して小さい角度で方向付けられている第2の部分とによって画成されている、態様3に係るカバー。
(態様5)
上記第2の部分が、少なくとも実質的に15°の角度が付けられている、態様4に係るカバー。
(態様6)
該カバーが、ポリマ材料で形成されている、態様1〜5のいずれか1つに係るカバー。
(態様7)
上記空洞部が、上記ポリマ材料よりも表面粗度が小さいコーティングを含んでいる、態様1〜6のいずれか1つに係るカバー。
(態様8)
上記空洞部が、多孔度が小さいコーティングを含んでいる、態様7に係るカバー。
(態様9)
上記空洞部が、1つ又は複数のコーティングを有している、態様7又は8に係るカバー。
(態様10)
第1のコーティングが、スライドの材料と同様の物性を有する材料である、態様9に係るカバー。
(態様11)
上記第1のコーティングが二酸化珪素からなる、態様10に係るカバー。
(態様12)
第2のコーティングが、第1のコーティングの中間部に配置され、上記カバーと上記第1のコーティングとの間の接触特性を良くしている、態様11に係るカバー。
(態様13)
該カバーの空洞部の幅が、顕微鏡スライドの幅より長くない、態様1〜12のいずれか1つに係るカバー。
(態様14)
上記空洞部が実質的に平面状である、態様1〜13のいずれか1つに係るカバー。
(態様15)
さらに、該カバーを制御及び位置決めするためのロケータを含み、該ロケータが、該カバーの上記突出部とは反対側の端部に配設されている、態様1〜14のいずれか1つに係るカバー。
(態様16)
さらに、該カバーの反対側の端部に第2の容器を含んでいる、態様1〜15のいずれか1つに係るカバー。
(態様17)
該カバーのエッジに、2つ又はこれより多いスライドの上の空洞部を取り囲む壁部が配置されている、態様1〜16のいずれか1つに係るカバー。
(態様18)
上記容器が、上記突出部と、該カバーのいずれかの側部に配置された脚部との間に画成されている、態様17に係るカバー。
(態様19)
上記脚部が、上記空洞部の側部に沿って伸びて上記壁部を形成している、態様18に係るカバー。
(態様20)
該カバーが、上記壁部の上の基材の上に担持されている、態様18に係るカバー。
(態様21)
上記空洞部が、上記ロケータと隣り合うカバーの端部エッジまで伸びている、態様15に係るカバー。
(態様22)
該カバーが、該カバーが上記基材に対して係合されるとともにピボット回転させられるのを可能にし、これにより反応室を開かせるとともに上記スライドが上記流体で除去されるのを可能にしている係合翼部構造を有している、態様1〜21のいずれか1つに係るカバー。
(態様23)
該カバーの空洞部が上記基材と対向して反応室を形成するように構成されている態様1〜21のいずれか1つに係るカバーと、基材とを備えた組み合わせ体。
(態様24)
基材のサンプル保持領域上でサンプルを処理する方法であって、
基材の上方に態様1〜22のいずれか1つに係るカバーを位置決めし、上記カバーの空洞部を上記基材と対向させて、上記サンプル保持領域の上方に反応室を形成する過程と、
必要なときに、流体を上記流体容器に落として、上記流体が上記反応室内に引き入れられるのを可能にする過程とを含む方法。
(態様25)
さらに、上記カバーを上記基材に対して滑動させて、上記カバーと上記サンプル保持領域との間の重なり度合いを変化させ、この変化に対応する反応室の体積の変化を生じさせる過程を含んでいる、態様24に係る方法。
(態様26)
さらに、上記カバーと係合する翼構造が上記基材に対して係合させられるとともに持ち上げられて上記カバーを開かれた状態にピボット回転させるまで、上記基材に対して上記カバーを滑動させ、流体を上記反応室から排出するのを可能にする過程を含んでいる、態様24又は25に係る方法。
【符号の説明】
【0062】
1 顕微鏡スライド、2 上面、3 サンプル、4 固有のバーコード、5 サンプル保持領域、10 カバー、12 本体部、13 突出部、14 流体受け入れゾーン、16 位置決め手段、17 流体容器、18 空洞部、19 下面、20壁部、21 脚部、24 反応室、26 翼部、28 傾斜部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部を画成している本体部と、
上記本体部から伸び、上記カバーが上記基材に取り付けられているときに上記空洞部と流体連通する流体容器を画成する突出部とを含んでいる、基材のためのカバー。
【請求項1】
基材の上方に位置して反応室を形成するための空洞部を画成している本体部と、
上記本体部から伸び、上記カバーが上記基材に取り付けられているときに上記空洞部と流体連通する流体容器を画成する突出部とを含んでいる、基材のためのカバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−160505(P2010−160505A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43895(P2010−43895)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2004−514434(P2004−514434)の分割
【原出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【出願人】(504466373)ビジョン・バイオシステムズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VISION BIOSYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2004−514434(P2004−514434)の分割
【原出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【出願人】(504466373)ビジョン・バイオシステムズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VISION BIOSYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】
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