一体化シールを有する膜電極アセンブリ
電極の端部に取付けられたインボードパッドと、該パッドに隣接するフレキシブルカップリングと、該カップリングに隣接するシール要素とを有する、改善された一体化シールを備える膜電極アセンブリである。シール要素はパッドよりもはるかに厚く、フレキシブルカップリングが、シール要素において受けるストレスからパッドを隔離する。したがって、より大きな圧縮をシール要素に加えることができ、それによって、過度の圧縮を行ったり、取付けられたパッドを損傷したりせずに、より信頼性の高い、改善されたシールを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に一体化シール(integrated seal)を有する膜電極アセンブリ(membrane electrode assembly)に関し、同様に、このようなアセンブリを含む固体高分子電解質燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、現在、自動車や固定の発電所など、非常に多くの応用分野において電源として使用するために発展しつつある。このようなシステムは、環境およびその他の利益を伴い効率的に力を供給することを保証するものである。燃料電池は反応物、すなわち燃料および酸化剤を転化して電力および反応生成物を生じる。燃料電池は一般的に、2つの電極、すなわちカソード極およびアノード極の間に配置される電解質を用いている。一般的に、触媒が電極に所望の電気化学反応を誘導する。
【0003】
好ましい燃料電池のタイプには固体高分子(SPE)燃料電池があり、これは、固体高分子電解質を有し、比較的低温下で動作する。SPE燃料電池の通常の動作中、燃料はアノード触媒において電気化学的に酸化され、その結果、一般的には陽子と、電子と、あるいは、用いられる燃料によっては他の核種とを発生する。陽子は、発生した反応位置から電解質を介して運ばれ、カソード触媒において酸化剤と電気化学反応をする。触媒は、各電極と、それに接触する電解質との間の界面に位置することが好ましい。
【0004】
広範囲の流体反応体がSPE燃料電池に使用でき、気体または液体のいずれかの形状で
供給され得る。たとえば、酸化剤の流れは、実質的に純粋な酸素ガス、または空気のような希釈された酸素の流れであってもよい。燃料は、実質的に純粋な水素ガスか、気体状態の水素含有改質油の流れか、または直接メタノール燃料電池においては水を混ぜたメタノールの混合液であってもよい。反応体は燃料電池の電極に向かい、流体拡散層によってその中の触媒に分散する。
【0005】
SPE燃料電池は、2つの電極間に配置された固体高分子電解質またはイオン交換膜を有する膜電極アセンブリ(MEA)を用いている。各電極は、固体高分子電解質の隣に位置した、適切な触媒を含む触媒層を有する。触媒は、たとえば、メタルブラック(metal black)、合金、または、たとえば炭素上に白金を重ねた担持型金属触媒であってもよい。また、電極は一般的に、多孔性の基質(たとえば、多孔性の導電シート材)も有しており、これは、機械的支持および/または反応体の分散という目的のために使用することができ、流体分散層の働きをする。気体状態の反応体に対しては、流体分散層は気体分散層(GDL)として知られる。
【0006】
MEAは一般的に2枚のプレートの間に配置され、燃料電池アセンブリを形成する。プレートは集電装置として働き、隣接する電極の支えとなる。アセンブリは一般的に、プレートおよび電極の間の電気的接触を確保するためだけでなく、燃料電池の構成要素間をシールするために、圧縮される(たとえば全体に70psi程度)。複数の燃料電池アセンブリを直列または並列で組合せて、燃料電池スタックを形成し得る。燃料電池スタックにおいて、プレートは通常、2つの隣接するMEA間で共有されており、したがって、2つの隣接するMEAの流体の流れを流動的に隔離するセパレータとしても働く。
【0007】
フローフィールドは一般的に、反応体を電気化学的に反応性のある流体分散電極または電極基質の面を通るように向けるために、このようなプレートの両面に組み込まれる。フローフィールドは一般的に、ランディング(landing)から分離された流体の分散経路を有する。経路は、電極の表面へ反応体を分散するため、また、反応生成物および枯渇した反応体の流れを取り除くために、通過させる。ランディングは、MEA内の流体分散層を機械的に支持する働きをし、そこに電気接触を与える。出入口およびその他の流体分散の特徴は、一般的に、このようなフローフィールドプレートの外周面に形成される。燃料電池スタックの中に組立てられると、積み重ねられた出入口は、スタックを介して流体を分散させるための内部マニホールドを形成することができる。その他の分散の特徴は、一般的に出入口から適切なフローフィールドへ流体を分散させるために備わっている。
【0008】
代表的なSPE燃料電池スタックには、多くのシールが必要である。たとえば、一般的に、異なる流体をスタック内で適切に隔離したり、外部への漏れを防いだりするために、多数の出入口、MEA、およびフローフィールドの端部周辺にはシールが必要である。大型の電池スタックは数百個のセルと、したがって数百枚のシールとを含むこともある。したがって、非常に信頼性のあるシール設計を採用することが重要である。しかし、高信頼性のあるシールを得るということは挑戦を続けることである。さらに大きな電力密度を得るために、燃料電池スタック内にはできる限り薄いセルを用いる傾向である。その代わりに、これは用いられるシールがより薄くなり、それによって耐性の積み重ねの問題が深刻化するということである。すなわち、シールが薄くなればなるほど、与えられたいかなる積み重ね耐性に対しても、受ける圧縮の範囲は広くなるということである。したがって、シールがより大きな圧縮の範囲に耐えられなければならない(たとえば異なる圧縮の範囲に適応するように設計されたシールを多数用いることによって)、または、セルの構成要素の厚みには非常に狭い許容誤差が求められるかのいずれかである。
【0009】
米国特許6,057,054号に開示されたように、SPE燃料電池スタック内に求められるシールは、好都合なことにMEAアセンブリの中に集積されることができる。このようなアセンブリにおいて、シールは、多孔性の電極層の両面を充填することによってMEAの端部に集積される。シールは横方向へ伸張してMEAの端部を越え、その周縁部を包む。このようなシールは流体がMEAの端部の周辺に移動するのを防ぐことができ、また、隣接する双方のフローフィールドプレートに対して密着した流体のシールをするために用いられ得る。内部の出入口またはマニホールド用の付加的なシールは、適切な成型処理を用いることによって、MEA用のエッジシールと同時に組み込むこともできる。このような設計は、フラッシュカットされたMEA(そのMEAでは、膜および電極が、より大きな層から同時に切り取られる)の使用も見込んでおり、アセンブリの一体になったものが、アセンブリの目的にとって好都合である。しかし、上記したように、高信頼性のシールはSPE燃料電池にとって必要であり、電池の設計におけるその他の発展は、シールに関する付加的な要求に位置付けることができる。したがって、シール設計における改善は常に追求されているのである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
改善された一体化シールを有する膜電極アセンブリは、製造される要素の中で、厚みの変動に対し、より余裕があるということが開示された。以前の構造においては、セル設計が厚みを減少させた場合、一般的な耐性を有する構成要素を積み重ねると、シールがMEAに接着する領域(すなわち、シールが多孔性の電極中に充填されている部分)内の受けるストレスの超過につながる可能性があった。そうすると、シールは損傷し、電極から剥離し、それによって、MEAの端部の周辺に漏れの経路を作ってしまう可能性があった。このような過度のストレスは、直接的にはこの領域を過度に圧縮することから、または、間接的には、周囲のシールの領域が過度に圧縮された場合にシール材を介して伝わるストレスから生じ得るものであった。
【0011】
改善された一体化シールを有するMEAは、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有する膜電極サブアセンブリを含む。前記のサブアセンブリは平坦であり、かつ、2つの主要な面を有する。MEAは、圧縮面によってその見かけ(nominal)厚みにまで圧縮されるように設計されている(一般的に、圧縮面とはフローフィールドプレートである)。また、MEAは、シール材で形成した、改善されたエッジシールであって、a)膜電極の端部にある前記2つの主要面に隣接するインボードパッドと、b)インボードパッドおよび膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングと、c)フレキシブルカップリングに隣接するシール要素とを含む、エッジシールも有する。
【0012】
パッドは、膜電極サブアセンブリの外周に沿う電極の端部にある孔を満たし、膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚い。パッドは、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、シール材に対する電極の界面のストレスの限度よりもパッドへのストレスが小さくなるような厚みである。このため、見かけ厚みにまで圧縮された際に、パッドのストレスは、パッドが満たしている膜電極サブアセンブリからパッドを剪断(sheare)するには不十分である。インボードパッドの構造は、電極の界面におけるストレスがその破壊応力を上回らないようになっている。したがって、パッドが損傷を起こす程度まで直接的に圧縮されることはない。
【0013】
フレキシブルカップリングの厚みはインボードパッドよりも薄く、アセンブリがその見かけ厚みにまで圧縮された際に圧縮面およびカップリングの間に間隙が残るようになっている。このため、フレキシブルカップリングは、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、シール要素によって受けるあらゆるストレスからインボードパッドを隔離する。
【0014】
一方で、シール要素の厚みはインボードパッドよりもはるかに厚く、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際のシール要素に対する圧縮はインボードパッドに対する圧縮よりもはるかに大きいようになっている。(同一のプレート間で圧縮された場合、厚いほうのシール要素が薄いほうのパッドより圧縮されるように、実質的にシール要素がパッドよりも厚い。インボードパッドと異なり、結果としてシール要素に生じるストレスは、シール材に対する電極の界面のストレスの限度を上回ることもある。)したがって、セルの構成要素の厚みに比較的大きな変動がある場合でも、アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮すると、シール材は十分に圧縮され、シールすることができる。
【0015】
たとえば、アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮すると、インボードパッドは約25%未満の圧縮をされ得る。一方、他方のシール要素は30%を超えて圧縮され得る。
【0016】
適当なシール材としては、珪素樹脂など、ショアーA硬度が約40であること、および、40%のひずみ(strain)下における単軸(simple)張力係数が0.2PMaであることを特徴とするある種のエラストマーがある。従来の膜電極サブアセンブリ(たとえば多孔性のカソードおよびアノード電極が炭素繊維紙を含むもの)と組合わせて用いた場合、このようなエラストマーに対する電極の界面のストレスの限度は、約1.2MPaであり得る。その他の適当なエラストマーとしては、エチレン−プロピレン−ジアン ターポリマーまたはフルオロエラストマーがある。
【0017】
また、一体化エッジシールは、付加の好都合な特徴を有している。たとえば、シール要素の形状は、膜電極サブアセンブリの主要面に対して垂直に中心をずらして配置した2つの円で描くことができる。このような形状によって、負荷下における安定性に影響を及ぼさずに、シール要素へ微少な前圧縮を加えることができる。さらなる有用な特徴は、電極の表面に隣接したインボードパッド上にある、この界面における剪断応力(shear stress)の集中を低減するための面であり、それによって、この界面におけるシールの破損の危険性を低減する。このような面はまた、初めに燃料電池スタックを組立てる際、隣接するフローフィールドプレートの位置合わせをし、中央に揃えるのにも役立つ。さらに他に含まれる有用な特徴は、シール要素に隣接する絶縁タブであり、カソードおよびアノードの端部を互いに電気的に隔離しておくために役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記したように、膜電極アセンブリは改善された一体化シールを有すると開示される。図1を参照すると、SPE燃料電池スタック内の燃料電池アセンブリの横断面略図が示される。簡略化するために、一つのMEAのみを隣接するフローフィールドプレートと共に図示してある。代表的なスタックは共有されている二極性のフローフィールド板によって分離されたこのようなMEAを多数有し、この二極性フローフィールドプレートにおいて燃料フローフィールドおよび酸化体フローフィールドが共有板の各対向面に現れる。
【0019】
図1において、MEAは固体高分子電解質膜2を含み、これはカソード3およびアノード4に挟まれ、接着されている。フローフィールドプレート5および6は、カソード3およびアノード4に隣接して配置され、そのそれぞれに酸化剤および燃料を供給する。内部マニホールド7および8は、フローフィールドプレート5および6に対しての、またフローフィールドプレート5および6からの直接的な燃料および酸化剤である。シール1は1組のシールセットを表し、MEAの各面にある燃料および酸化剤の混合を防ぎ、内部マニホールド7および8の形成および隔離を促し、外部環境への漏れを防ぐ。(プレート5および6における個々のフローフィールドへマニホールドを結合する流体の分散の特徴はこの略図には図示していない。)シール1は一般的にプレート5および6の間で圧縮される。好都合にも、シール1によって表されるシールセットを、一体化シールを用いて単一のMEAを形成するためにカソード3およびアノード4に接着された膜2からなるサブアセンブリに結合し、取付けることができる。
【0020】
図2aは、改善された一体化シールを含む代表的なMEAの平面図を示す。この図において、MEAのカソードの面10は可視である。一体化シールはシングル成型処理において形成され、エッジシール11(カソードの全周に沿ってカソードの端部にある孔に充填される)および内部マニホールドシール12をMEAの各端部に含む。記述された実施形態においては、3つの内部マニホールド13(燃料、酸化剤、および冷却材用)が、MEAの各端部に存在する。(1組は流体の供給用、1組は流体の排出用である。)
エッジシール11の断面図は図2bに見られる。図2bは図2aのセクションA−Aに沿ったプロファイルを示す。エッジシール11の設計および特徴は後にさらに詳細に記述される。内部マニホールドシール12の断面図は図2cに見られる。図2cは図2aのセクションB−Bに沿ったプロファイルを示す。図示されるように、マニホールドシール12はエッジシール11に用いられるシール要素と類似した断面の形状を有する。ただし、所望であれば、その他の代替的な形状が採用されてもよい。
【0021】
図3cは、電池スタックの構造においてMEAに隣接して使用されるフローフィールドプレート25および26の部分に沿った図2bのエッジシールの拡大断面図を示す。図3cにおいて、エッジシール21cはプレート25および26間の圧縮前に図示されている。比較するため、2つの従来技術の、一体化シールを用いたMEA用エッジシール設計が図3aおよび図3bにそれぞれ示される。
【0022】
図3a、3b、および3cのそれぞれにおけるMEAサブアセンブリは同一であり、電解質膜22、カソード電極23、およびアノード電極24の層を含む。また、図3a、3b、および3cのそれぞれにおいて、エッジシールを形成するために用いられた材料は、領域27内の電極23および24の双方の孔の中に充填される。充填された材料は、孔を満たし、それによって電極23および24の端部にある電解質膜22の周辺にガスが洩れるのを防ぐ。さらに、充填された材料はエッジシール21a、21b、および21cをそれぞれのMEAサブアセンブリに固定する役割をする。MEAサブアセンブリにより強く接着するために、これらの各図に示されるように、成型されたエッジシールが電極の孔の外部へ伸張し、MEAサブアセンブリの端部全体を包むことは好都合である。
【0023】
図3a中の、第1の従来技術のエッジシール21aにおいて、シール要素28aはMEAサブアセンブリの各面に位置し、領域27内の孔へ充填された材料に結合される(孔の充填およびシール要素28aの形成はシングル成型処理において同時に達成される)。シール要素28aは、2枚のフローフィールドプレート(図示せず)の間で圧縮されると、電解質膜22およびフィールドプレートの間で圧迫され、それによって密封をする。この方法で満足なシールは形成され得るが、シール要素28aは一般的に過度に(たとえば30%を超えて)圧迫されると、結果的に必ず電極との界面における材料の破損を引き起こすストレスにつながる。(領域27を充填する材料にある微少な歪みと、電極23および24の外部にある材料における実質的な歪みに伴って、界面に大きな歪みの傾きが存在する。)これが起こると、シール要素28aは電極23、24から分離し、電解質膜22の周囲に漏れの経路を作る。
【0024】
図3b中の、第2の従来技術のエッジシール21bは、2つのシール要素28bおよび29bを有する。シール要素28bは図3a中のシール要素28aと同様に形成され、機能も類似している。シール要素29bはMEAサブアセンブリの端部に隣接して形成され、図示のように、シール要素28bとおよそ同じ厚みである。シール要素29bは、2枚のフローフィールドプレート(図示せず)の間で圧縮されると、2枚のフィールドプレートの間に第2のシールを作り、それによって燃料電池からの外部への漏れを防ぐ。シール要素29bは、適切に抑制されれば、実質的には圧縮されていても適当な第2のシールを維持し得る。ただし繰り返すが、シール要素28bが過度に圧縮されると、電極23および24との界面に破損が生じ、結果として電解質膜の周囲に漏れの経路が生じる。シール要素28bおよび29bのそれぞれにおける絶対的な圧縮は見かけ上は同様であるが(すなわち、厚みの減少は同様である)、シール要素28bの2つの離れた面の相対的な圧縮(すなわち厚みにおける減少のパーセンテージ)はシール要素29bにおける圧縮よりもはるかに大きい。
【0025】
しかしながら、図3cに示されるエッジシール21cは、充填された電極との界面に過度の歪みを伴わずにシール要素29cが実質的に圧縮され得るように設計される。エッジシール21cはインボードパッド28cを有する。インボードパッド28cは、先行する従来技術の設計と同様に電極の孔(領域27)に充填された材料に結合され、MEAサブアセンブリの端部を包む材料の一部である。インボードパッド28cはシールとして機能せず、エッジシール21cおよびMEAサブアセンブリ間の接着を強化する。また、インボードパッド28cには、アセンブリが大きく圧縮された場合におけるシール要素29cの圧縮を制限する働きもある。したがって、インボードパッド28cの厚みはMEAアセンブリよりも大きくなるが、その結果、アセンブリ全体がフローフィールドプレート25および26間で圧縮された場合にパッド28c内のストレスが、パッド28cの電極からの分離を引き起こすようなストレスよりも小さく、すなわち電極の界面における剪断応力の限度よりも小さくなるためにである。このことは、たとえば、アセンブリがその見かけ(nominal)の厚みであるときにちょうどフローフィールド25および26と隣接し接触しているような(すなわち圧縮ゼロ)インボードパッド28cを有することによって達成される。ただしアセンブリがこの見かけ厚みよりも小さく圧縮されると、インボードパッド28cは、シール要素29cの圧縮を制限する働きをするが、もちろんそのときいくらかの圧縮ストレスにかけられ始める。しかし当業者であれば、インボードパッド28cが、電極の界面における剪断応力の限度を超えずに、かなりの圧縮ストレスを取り除くことができる(そしてそれによってアセンブリは部品の厚みのかなりの変動に耐えることができる)ことを評価するであろう。
【0026】
しかしながら、シール要素29cは、実質的にはインボードパッド28cよりも厚く、アセンブリ全体が燃料電池スタック内の見かけ厚みまで圧縮されると、著しく圧縮される(たとえば一般的な工業用シールよりも大きい、30%を超える圧縮)。シール要素29cにおけるストレスは、インボードパッド28cに電極23および24からの分離を引き起こすと考えられるストレスよりもはるかに大きくなり得る。ただし、このストレスがインボードパッド28cへ伝達されない限りは、このような界面の破損が生じるはずはない。このため、インボードパッド28cをシール要素29cにおけるストレスから隔離するために、フレキシブルカップリング30cがインボードパッド28cおよびシール要素29c間に提供される。フレキシブルカップリング30cの厚みは、アセンブリ全体がその見かけ厚みまで圧縮されたときに、隣接するフローフィールドプレート25および26との間に間隙ができるように選択される。このようにして、アセンブリが見かけ厚みよりも小さく圧縮されたときに、フレキシブルカップリング30cを形成する材料はさらに変形することができ、その周囲には空き空間ができ、そこを通ってインボードパッド28cへストレスを移動する代わりに、そこに材料が流れ込む。
【0027】
図3c中のエッジシール21cの設計によって、結合される燃料電池の構成要素内に受け入れられるためのより強い耐性が、シールの信頼性を妥協することなく見込める。たとえば、代表的なMEAサブアセンブリは、見かけ上は厚みが400〜500マイクロメートルであり得る。可能な限り薄い電池へ向かう傾向に伴って、フローフィールドプレートの厚みと、またそれによってシール要素の厚みとが、徐々に減少している。(シール要素は一般的にフローフィールドプレート内の溝に取付けられ、当然この溝の可能な深さは板の厚みに従って減少していく。)要素29bのような代表的な従来技術のシール要素は、ここでは圧縮時には見かけ上の厚みが約900マイクロメートルであり得る。したがって、シール要素28aまたは28bは、圧縮時にはほんの約250マイクロメートルの厚み(電極の界面からフローフィールドプレートまで)になり得る。したがって、ほんのプラスマイナス50マイクロメートルという構成要素の厚みの許容誤差は、このような状況下では許容不可能であり得る。
【0028】
一例として、厚み約400マイクロメートルのMEAサブアセンブリ(MEAの圧縮は無視する)および、厚みが非圧縮時には約1200マイクロメートルであり、見かけ上の圧縮時(圧縮約25%)には約900マイクロメートルであるシール要素29bと共に図3bに示される実施形態を考慮されたい。このことは、シール材28bが非圧縮時および圧縮時(圧縮約38%)において、それぞれ厚み約400マイクロメートルおよび250マイクロメートルであることを意味する。ただし、フローフィールド2つの溝のそれぞれの深さにおいて、および、成型されたシール自体において、プラスマイナス50マイクロメートルの変動があるとすれば、シール要素28bにおける圧縮の考え得る範囲は約14〜56%であろう。上限において、シール要素28bはMEAサブアセンブリから分離する可能性があり、したがって許容不可能であろう。また、全体的な考え得る変動は、シール要素29bにとってはプラスマイナス200マイクロメートルであろう(各シール溝、モールドシールおよびMEAの厚さに対しては、プラスマイナス50マイクロメートル)。そしてその結果、約9〜40%という広範囲の圧縮範囲につながる。一方、近似した溝の深さの変動を伴うが、非圧縮時(約42%の圧縮)において約1850マイクロメートルであるシール要素29cおよび、厚み約340マイクロメートル(圧縮0%)のインボードパッド28cを採用した、図3cに示される実施形態を考慮されたい。ここでは、インボードパッド28cにおいての考え得る圧縮の範囲は、約0〜25%であり、一方、シール要素29cにおいては約32〜51%であろう。これらの範囲は、圧縮の上限がインボードパッド28cを破損するには不十分であり得るという点で、大きく改善されている。さらに、シール要素29cには高率の圧縮が求められるが、それが圧縮される範囲は、信頼性のあるシールに所望される範囲よりも比較的狭い。
【0029】
スタックの構成要素の厚みにおける変動に対してより裕度があるということとは別に、図3cの実施形態は、他にも様々の好都合な特徴を有する。面31cは、電極23および24との界面にある、インボードパッド28cの端部に提供される。これが、界面における剪断応力の集中を低減し、それによって材料の破損の危険性を低減する。インボードパッド28cはまた、電池スタックを組み立てる際の位置合わせの目印としても用いられる。たとえば、パッド28cは、組立の間、フローフィールド板25および26の面32および33に対して位置を調整されることができ、それによってMEAアセンブリをプレート間の中央に揃えることができる。
【0030】
さらに、図3c中のシール要素29cの断面の形状は、単純な円でなく、わずかに中心線を外して鉛直に配置された2つの円で描かれ、それによってその高さ/幅のアスペクト比が増大する。わずかな圧縮の下では、形状が変化するに従って、円は事実上同心になる。したがって、円形の断面を有するシール要素と比較すると、この中心をずらした配置が、シールの安定性に影響せず有効に、「前圧縮」負荷の余裕を与える。代わりに、シールによって占められる容積は減少し得る。
【0031】
エッジシール21cはまた、絶縁タブ34を含むことができ、これはフローフィールドプレート25を隣接するプレート26から電気絶縁したり、また、スタック組立中の損傷からシール要素29cを保護したりするのに役立つ。インボードパッド28cと同様に絶縁タブ34も、シール要素29cに与えられる圧縮を制限する働きをする。
【0032】
図3cにおいて、フローフィールドプレート25および26は、望ましくは支持壁35を含み、これはエッジシール21cが燃料電池スタックにおける過圧縮の際に膨張するのを防ぐために用いられる。スタックにおいて加圧状態が通常に戻ると、エッジシール21cは元の位置に戻り、それによって再び電池をシールする。
【0033】
図3cに示される、一体化シール21cを有する改善されたMEAは、多くの点で、上記した米国特許6,057,054号(全体を援用する)において開示されたものと同様の方法で製造されることができる。エッジシール21cは、1ステップにおいて、適当な寸法で、位置に配置され、MEAサブアセンブリは液体注入式塑造(LIM)の技術および適当な重合可能な液体シーラント材を用いてフラッシュカットされる。インボードパッド28cが枠組の中に占める空洞が、初めに、液体シーラント材が電極23および24における領域27を出入りし、かつ満たすための簡易経路を与えるため、エッジシールの設計におけるインボードパッド28cの存在がLIMの工程を助ける。
【0034】
たとえば30%を超えての著しい圧縮下でのシール機能に適したエラストマー材は、一般的にエッジシール21c用の材料として適当である。材料はまた、SPE燃料電池における環境と化学的に融和性がなければならない。たとえば、低粘着性の液体珪素樹脂エラストマーは、この適用に適した機械的特性を有し得る。ある種のこういった珪素樹脂は、重合されると、約40のショアーA硬度および、40%のひずみ(strain)において約0.2MPaの単軸張力係数によって特徴づけられる。しかし、化学的に融和性であり、かつ類似の機械的特性を有するその他のエラストマーが、代替的使用のために考慮され得る。たとえば、ある程度のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマー)またはフルオロエラストマーが、同様に適当であり得る。
【0035】
与えられたMEAサブアセンブリに適切な一体化エッジシールを設計する際に、決定すべき重要なパラメータは、使用されるシール材および電極の組合せに対する界面ストレスの限度である。(この界面ストレスの限度は、使用されるシール材の種類だけでなく、孔の機能および電極の表面構造である。)一度この限度が決定されると、与えられたMEAサブアセンブリに適応するために、シールを形成する多様な構造について、適切な体積が容易に計算され得る。燃料電池の多様な構成要素の許容誤差の中で、MEAアセンブリ全体が圧縮の上限におかれたときに、界面のストレスの限度を超えないようにインボードパッドの寸法を決めなければならない。シール要素は、著しく圧縮されても維持し、それによって、考えられる圧縮の範囲全体を通じて高い信頼性をもってシールするように寸法を決められる。
【0036】
界面のストレスの限界は、実験に基づいて容易に決定される。単純な方法は、既知の寸法の正方形の外観を有するエラストマーの「パッド」が、所望のMEAサブアセンブリ内に使用されているものと類似した電極に対してキャストされるようなエラストマー/電極のサンプルを準備することを含む。キャストされたエラストマーの「パッド」は、さらに、電極の孔に浸透し、完全に孔を満たす。そのとき、サンプル「パッド」は、平らなプレートユニットの間で、視覚的に電極から外れるまで圧縮される。(炭素繊維紙の電極上に低粘着性の珪素樹脂をおいた場合、それが剪断されるときに、黒色から銀色へと界面の外観が変化する。)この実験テストの値は、あらゆる形状のパッドの界面ストレスの限度および圧縮の限度を計算するために用いられる。
【0037】
以下の実施例は、本発明のある様態を説明するために与えられるものであり、いかなる場合においても本発明を限定するものではない。
【0038】
(実施例1)
以下において、従来のMEAサブアセンブリが使用されており、NAFION(登録商標)112の、TGP−60のガス分散層を含む電解質膜および電極と、Toray Industries社の製品である炭素繊維紙とを有する。上記の低粘着性珪素樹脂と類似した機械的特性を有するシール材としての使用のため、珪素樹脂エラストマー材が選択された。
【0039】
このシール材/電極の組合せに対する界面剪断応力の限度は、上記のように、実験に基づいて決定された。珪素樹脂のサンプル(断面で4mm平方、高さ2mm)が、TGP−60の、炭素繊維紙層に向かって/炭素繊維紙層の上へ、キャストされた。負荷下において、サンプルは、炭素繊維紙によって圧縮25%で界面を剪まれた。これは界面における最大ストレス(つまり界面の剪断応力の限度)の1.2MPaに一致した。
【0040】
続いて、これらの材料を使用した一体化エッジシールの設計を有する2つの異なるMEAは評価された。比較実施形態は、図3b中に描かれたものに類似していた。MEAサブアセンブリは、圧縮時には約440マイクロメートルの厚みであった。電極の外側にあるMEAサブアセンブリの各面のシール要素28bの高さは約390マイクロメートルであった。シール要素29bは、約1220マイクロメートルの厚みであった。発明の実施形態は、図3b中に描かれたものに類似していた。また、MEAサブアセンブリは、約440マイクロメートルの厚みであった。電極の外側のインボードパッド28cの各面の高さは、約340マイクロメートルの厚みであった。シール要素29cは、厚み約1850マイクロメートルであり、中心を0.35mmずらして鉛直に配置された2円によって描かれた断面の形状を有した。
【0041】
比較の、および発明のエッジシールそれぞれの負荷下における歪みのプロファイルは、測定可能な要素の分析およびAnsys/Multiphysicsソフトウェアを用いてモデル化された。図4aおよび4bは、見かけ上(nominally)圧縮された場合の、比較の、および発明のエッジシールの歪みのプロファイルをそれぞれ示す。比較実施例の場合(図4a)、エッジシール21bの圧縮時の見かけ上の厚みは、約920マイクロメートルであった。発明の実施例の場合(図4b)、エッジシール21cの圧縮時の見かけ上の厚みは、約1120マイクロメートルであった。図4aおよび4bにおいて、下にある帯グラフは、歪みの度合い(たとえば、暗く均一に塗りつぶしたものが最少の歪みとする)を示す。図4aから明らかであるように、シール要素29bがほんのわずかに歪んでいるのに対して、シール要素28bは実質的な歪みの下にある。しかし、図4bにおいて、シール要素29cが実質的な歪みの下にあるのに対し、インボードパッド28cは事実上は歪んでいない。これらの図は、発明のエッジシールの、シール/電極の界面における歪みの低減効率を示す。
【0042】
比較の、および発明のエッジシールの周期的な圧縮および回復の特性も測定され、図5に示される。(図5において、比較のエッジシールの最初の5周期が示され、C1、C2等の記号で示されている。発明のエッジシールについては10周期が示されるが、周期は本質的にオーバーラップするため、これらは簡潔に「I」と表される。エッジシールIは、与えられた圧縮に対して、線形応答特性を示し、また、エッジシールCよりも大きな力を要した。したがって、エッジシールIはエッジシールCよりも高圧を持つことができるはずである。さらに、エッジシールCとは異なり、エッジシールIはこのテストの間、周期に伴って劣化する徴候は全く示さなかった。(すなわち、周期に伴って、応答の際に履歴現象は生じない。)
最後に、2つの10セルの燃料電池スタックが組立てられ、高レート放電、および、シールの破損までの期間を決定するための一定の状態条件の下で作動された。1つの電池スタックは、「C」と表され、一体化シールを有する上記の比較のMEAを用いて組立てられ、一方、他の電池スタックは、「I」と表され、一体化シールを有する上記の発明のMEAを用いて組立てられる。全体の反応物の(すなわち、双方の反応物の)漏れレートは、期間を通し各スタックに対して測定され、結果は、作動時間に対するセル毎の平均漏れレートとして、図6に示される。スタックI内のセルについて、背景となる初期の漏れレートは、スタックC内のセルよりもはるかに低い。約1200時間連続して高レート作動した後、スタックC内の1つまたは複数のシールが破損し、スタックCは実質的に漏れを生じた。しかし、スタックIは同様の漏れを生じるまでにその2倍を超えて(2400時間を超えて)稼動した。
【0043】
先に述べた実施例においても説明したように、一体化エッジシールIを有するMEAは、エッジシールCを有するMEAを上回り、著しい改善を示す。
【0044】
本発明の特定の要素、実施態様および応用について図示し、説明したが、本発明はこれに限定されず、また、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって修正が行われてもよいということは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】固体高分子電解質燃料電池スタック内の燃料電池アセンブリの断面略図である。
【図2a】一体化シールがエッジシールおよびスタック内の内部マニホールド用のシールを含む、本発明の改善された一体化シールを有するMEAの平面図である。
【図2b】図2aのMEAの、A−Aの部分に沿った断面図である。
【図2c】図2aのMEAの、B−Bの部分に沿った断面図である。
【図3a】第1の従来技術による、一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図3b】第2の従来技術による、一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図3c】本発明の、改善された一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図4a】わずかな圧縮下における、第2の従来技術によるMEAのエッジシールの歪みのプロファイルを示す。
【図4b】わずかな圧縮下における、本発明によるMEAのエッジシールの歪みのプロファイルを示す。
【図5】図3bの第2の従来技術によるMEAのエッジシールの、周期的な圧縮・回復の特性を、図3cの本発明のエッジシールのものと比較したものである。
【図6】図3bの第2の従来技術によるMEAのエッジシールの、作動時間に対する漏れレートの特性を、図3cの本発明のエッジシールのものと比較したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に一体化シール(integrated seal)を有する膜電極アセンブリ(membrane electrode assembly)に関し、同様に、このようなアセンブリを含む固体高分子電解質燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、現在、自動車や固定の発電所など、非常に多くの応用分野において電源として使用するために発展しつつある。このようなシステムは、環境およびその他の利益を伴い効率的に力を供給することを保証するものである。燃料電池は反応物、すなわち燃料および酸化剤を転化して電力および反応生成物を生じる。燃料電池は一般的に、2つの電極、すなわちカソード極およびアノード極の間に配置される電解質を用いている。一般的に、触媒が電極に所望の電気化学反応を誘導する。
【0003】
好ましい燃料電池のタイプには固体高分子(SPE)燃料電池があり、これは、固体高分子電解質を有し、比較的低温下で動作する。SPE燃料電池の通常の動作中、燃料はアノード触媒において電気化学的に酸化され、その結果、一般的には陽子と、電子と、あるいは、用いられる燃料によっては他の核種とを発生する。陽子は、発生した反応位置から電解質を介して運ばれ、カソード触媒において酸化剤と電気化学反応をする。触媒は、各電極と、それに接触する電解質との間の界面に位置することが好ましい。
【0004】
広範囲の流体反応体がSPE燃料電池に使用でき、気体または液体のいずれかの形状で
供給され得る。たとえば、酸化剤の流れは、実質的に純粋な酸素ガス、または空気のような希釈された酸素の流れであってもよい。燃料は、実質的に純粋な水素ガスか、気体状態の水素含有改質油の流れか、または直接メタノール燃料電池においては水を混ぜたメタノールの混合液であってもよい。反応体は燃料電池の電極に向かい、流体拡散層によってその中の触媒に分散する。
【0005】
SPE燃料電池は、2つの電極間に配置された固体高分子電解質またはイオン交換膜を有する膜電極アセンブリ(MEA)を用いている。各電極は、固体高分子電解質の隣に位置した、適切な触媒を含む触媒層を有する。触媒は、たとえば、メタルブラック(metal black)、合金、または、たとえば炭素上に白金を重ねた担持型金属触媒であってもよい。また、電極は一般的に、多孔性の基質(たとえば、多孔性の導電シート材)も有しており、これは、機械的支持および/または反応体の分散という目的のために使用することができ、流体分散層の働きをする。気体状態の反応体に対しては、流体分散層は気体分散層(GDL)として知られる。
【0006】
MEAは一般的に2枚のプレートの間に配置され、燃料電池アセンブリを形成する。プレートは集電装置として働き、隣接する電極の支えとなる。アセンブリは一般的に、プレートおよび電極の間の電気的接触を確保するためだけでなく、燃料電池の構成要素間をシールするために、圧縮される(たとえば全体に70psi程度)。複数の燃料電池アセンブリを直列または並列で組合せて、燃料電池スタックを形成し得る。燃料電池スタックにおいて、プレートは通常、2つの隣接するMEA間で共有されており、したがって、2つの隣接するMEAの流体の流れを流動的に隔離するセパレータとしても働く。
【0007】
フローフィールドは一般的に、反応体を電気化学的に反応性のある流体分散電極または電極基質の面を通るように向けるために、このようなプレートの両面に組み込まれる。フローフィールドは一般的に、ランディング(landing)から分離された流体の分散経路を有する。経路は、電極の表面へ反応体を分散するため、また、反応生成物および枯渇した反応体の流れを取り除くために、通過させる。ランディングは、MEA内の流体分散層を機械的に支持する働きをし、そこに電気接触を与える。出入口およびその他の流体分散の特徴は、一般的に、このようなフローフィールドプレートの外周面に形成される。燃料電池スタックの中に組立てられると、積み重ねられた出入口は、スタックを介して流体を分散させるための内部マニホールドを形成することができる。その他の分散の特徴は、一般的に出入口から適切なフローフィールドへ流体を分散させるために備わっている。
【0008】
代表的なSPE燃料電池スタックには、多くのシールが必要である。たとえば、一般的に、異なる流体をスタック内で適切に隔離したり、外部への漏れを防いだりするために、多数の出入口、MEA、およびフローフィールドの端部周辺にはシールが必要である。大型の電池スタックは数百個のセルと、したがって数百枚のシールとを含むこともある。したがって、非常に信頼性のあるシール設計を採用することが重要である。しかし、高信頼性のあるシールを得るということは挑戦を続けることである。さらに大きな電力密度を得るために、燃料電池スタック内にはできる限り薄いセルを用いる傾向である。その代わりに、これは用いられるシールがより薄くなり、それによって耐性の積み重ねの問題が深刻化するということである。すなわち、シールが薄くなればなるほど、与えられたいかなる積み重ね耐性に対しても、受ける圧縮の範囲は広くなるということである。したがって、シールがより大きな圧縮の範囲に耐えられなければならない(たとえば異なる圧縮の範囲に適応するように設計されたシールを多数用いることによって)、または、セルの構成要素の厚みには非常に狭い許容誤差が求められるかのいずれかである。
【0009】
米国特許6,057,054号に開示されたように、SPE燃料電池スタック内に求められるシールは、好都合なことにMEAアセンブリの中に集積されることができる。このようなアセンブリにおいて、シールは、多孔性の電極層の両面を充填することによってMEAの端部に集積される。シールは横方向へ伸張してMEAの端部を越え、その周縁部を包む。このようなシールは流体がMEAの端部の周辺に移動するのを防ぐことができ、また、隣接する双方のフローフィールドプレートに対して密着した流体のシールをするために用いられ得る。内部の出入口またはマニホールド用の付加的なシールは、適切な成型処理を用いることによって、MEA用のエッジシールと同時に組み込むこともできる。このような設計は、フラッシュカットされたMEA(そのMEAでは、膜および電極が、より大きな層から同時に切り取られる)の使用も見込んでおり、アセンブリの一体になったものが、アセンブリの目的にとって好都合である。しかし、上記したように、高信頼性のシールはSPE燃料電池にとって必要であり、電池の設計におけるその他の発展は、シールに関する付加的な要求に位置付けることができる。したがって、シール設計における改善は常に追求されているのである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
改善された一体化シールを有する膜電極アセンブリは、製造される要素の中で、厚みの変動に対し、より余裕があるということが開示された。以前の構造においては、セル設計が厚みを減少させた場合、一般的な耐性を有する構成要素を積み重ねると、シールがMEAに接着する領域(すなわち、シールが多孔性の電極中に充填されている部分)内の受けるストレスの超過につながる可能性があった。そうすると、シールは損傷し、電極から剥離し、それによって、MEAの端部の周辺に漏れの経路を作ってしまう可能性があった。このような過度のストレスは、直接的にはこの領域を過度に圧縮することから、または、間接的には、周囲のシールの領域が過度に圧縮された場合にシール材を介して伝わるストレスから生じ得るものであった。
【0011】
改善された一体化シールを有するMEAは、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有する膜電極サブアセンブリを含む。前記のサブアセンブリは平坦であり、かつ、2つの主要な面を有する。MEAは、圧縮面によってその見かけ(nominal)厚みにまで圧縮されるように設計されている(一般的に、圧縮面とはフローフィールドプレートである)。また、MEAは、シール材で形成した、改善されたエッジシールであって、a)膜電極の端部にある前記2つの主要面に隣接するインボードパッドと、b)インボードパッドおよび膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングと、c)フレキシブルカップリングに隣接するシール要素とを含む、エッジシールも有する。
【0012】
パッドは、膜電極サブアセンブリの外周に沿う電極の端部にある孔を満たし、膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚い。パッドは、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、シール材に対する電極の界面のストレスの限度よりもパッドへのストレスが小さくなるような厚みである。このため、見かけ厚みにまで圧縮された際に、パッドのストレスは、パッドが満たしている膜電極サブアセンブリからパッドを剪断(sheare)するには不十分である。インボードパッドの構造は、電極の界面におけるストレスがその破壊応力を上回らないようになっている。したがって、パッドが損傷を起こす程度まで直接的に圧縮されることはない。
【0013】
フレキシブルカップリングの厚みはインボードパッドよりも薄く、アセンブリがその見かけ厚みにまで圧縮された際に圧縮面およびカップリングの間に間隙が残るようになっている。このため、フレキシブルカップリングは、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、シール要素によって受けるあらゆるストレスからインボードパッドを隔離する。
【0014】
一方で、シール要素の厚みはインボードパッドよりもはるかに厚く、アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際のシール要素に対する圧縮はインボードパッドに対する圧縮よりもはるかに大きいようになっている。(同一のプレート間で圧縮された場合、厚いほうのシール要素が薄いほうのパッドより圧縮されるように、実質的にシール要素がパッドよりも厚い。インボードパッドと異なり、結果としてシール要素に生じるストレスは、シール材に対する電極の界面のストレスの限度を上回ることもある。)したがって、セルの構成要素の厚みに比較的大きな変動がある場合でも、アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮すると、シール材は十分に圧縮され、シールすることができる。
【0015】
たとえば、アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮すると、インボードパッドは約25%未満の圧縮をされ得る。一方、他方のシール要素は30%を超えて圧縮され得る。
【0016】
適当なシール材としては、珪素樹脂など、ショアーA硬度が約40であること、および、40%のひずみ(strain)下における単軸(simple)張力係数が0.2PMaであることを特徴とするある種のエラストマーがある。従来の膜電極サブアセンブリ(たとえば多孔性のカソードおよびアノード電極が炭素繊維紙を含むもの)と組合わせて用いた場合、このようなエラストマーに対する電極の界面のストレスの限度は、約1.2MPaであり得る。その他の適当なエラストマーとしては、エチレン−プロピレン−ジアン ターポリマーまたはフルオロエラストマーがある。
【0017】
また、一体化エッジシールは、付加の好都合な特徴を有している。たとえば、シール要素の形状は、膜電極サブアセンブリの主要面に対して垂直に中心をずらして配置した2つの円で描くことができる。このような形状によって、負荷下における安定性に影響を及ぼさずに、シール要素へ微少な前圧縮を加えることができる。さらなる有用な特徴は、電極の表面に隣接したインボードパッド上にある、この界面における剪断応力(shear stress)の集中を低減するための面であり、それによって、この界面におけるシールの破損の危険性を低減する。このような面はまた、初めに燃料電池スタックを組立てる際、隣接するフローフィールドプレートの位置合わせをし、中央に揃えるのにも役立つ。さらに他に含まれる有用な特徴は、シール要素に隣接する絶縁タブであり、カソードおよびアノードの端部を互いに電気的に隔離しておくために役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記したように、膜電極アセンブリは改善された一体化シールを有すると開示される。図1を参照すると、SPE燃料電池スタック内の燃料電池アセンブリの横断面略図が示される。簡略化するために、一つのMEAのみを隣接するフローフィールドプレートと共に図示してある。代表的なスタックは共有されている二極性のフローフィールド板によって分離されたこのようなMEAを多数有し、この二極性フローフィールドプレートにおいて燃料フローフィールドおよび酸化体フローフィールドが共有板の各対向面に現れる。
【0019】
図1において、MEAは固体高分子電解質膜2を含み、これはカソード3およびアノード4に挟まれ、接着されている。フローフィールドプレート5および6は、カソード3およびアノード4に隣接して配置され、そのそれぞれに酸化剤および燃料を供給する。内部マニホールド7および8は、フローフィールドプレート5および6に対しての、またフローフィールドプレート5および6からの直接的な燃料および酸化剤である。シール1は1組のシールセットを表し、MEAの各面にある燃料および酸化剤の混合を防ぎ、内部マニホールド7および8の形成および隔離を促し、外部環境への漏れを防ぐ。(プレート5および6における個々のフローフィールドへマニホールドを結合する流体の分散の特徴はこの略図には図示していない。)シール1は一般的にプレート5および6の間で圧縮される。好都合にも、シール1によって表されるシールセットを、一体化シールを用いて単一のMEAを形成するためにカソード3およびアノード4に接着された膜2からなるサブアセンブリに結合し、取付けることができる。
【0020】
図2aは、改善された一体化シールを含む代表的なMEAの平面図を示す。この図において、MEAのカソードの面10は可視である。一体化シールはシングル成型処理において形成され、エッジシール11(カソードの全周に沿ってカソードの端部にある孔に充填される)および内部マニホールドシール12をMEAの各端部に含む。記述された実施形態においては、3つの内部マニホールド13(燃料、酸化剤、および冷却材用)が、MEAの各端部に存在する。(1組は流体の供給用、1組は流体の排出用である。)
エッジシール11の断面図は図2bに見られる。図2bは図2aのセクションA−Aに沿ったプロファイルを示す。エッジシール11の設計および特徴は後にさらに詳細に記述される。内部マニホールドシール12の断面図は図2cに見られる。図2cは図2aのセクションB−Bに沿ったプロファイルを示す。図示されるように、マニホールドシール12はエッジシール11に用いられるシール要素と類似した断面の形状を有する。ただし、所望であれば、その他の代替的な形状が採用されてもよい。
【0021】
図3cは、電池スタックの構造においてMEAに隣接して使用されるフローフィールドプレート25および26の部分に沿った図2bのエッジシールの拡大断面図を示す。図3cにおいて、エッジシール21cはプレート25および26間の圧縮前に図示されている。比較するため、2つの従来技術の、一体化シールを用いたMEA用エッジシール設計が図3aおよび図3bにそれぞれ示される。
【0022】
図3a、3b、および3cのそれぞれにおけるMEAサブアセンブリは同一であり、電解質膜22、カソード電極23、およびアノード電極24の層を含む。また、図3a、3b、および3cのそれぞれにおいて、エッジシールを形成するために用いられた材料は、領域27内の電極23および24の双方の孔の中に充填される。充填された材料は、孔を満たし、それによって電極23および24の端部にある電解質膜22の周辺にガスが洩れるのを防ぐ。さらに、充填された材料はエッジシール21a、21b、および21cをそれぞれのMEAサブアセンブリに固定する役割をする。MEAサブアセンブリにより強く接着するために、これらの各図に示されるように、成型されたエッジシールが電極の孔の外部へ伸張し、MEAサブアセンブリの端部全体を包むことは好都合である。
【0023】
図3a中の、第1の従来技術のエッジシール21aにおいて、シール要素28aはMEAサブアセンブリの各面に位置し、領域27内の孔へ充填された材料に結合される(孔の充填およびシール要素28aの形成はシングル成型処理において同時に達成される)。シール要素28aは、2枚のフローフィールドプレート(図示せず)の間で圧縮されると、電解質膜22およびフィールドプレートの間で圧迫され、それによって密封をする。この方法で満足なシールは形成され得るが、シール要素28aは一般的に過度に(たとえば30%を超えて)圧迫されると、結果的に必ず電極との界面における材料の破損を引き起こすストレスにつながる。(領域27を充填する材料にある微少な歪みと、電極23および24の外部にある材料における実質的な歪みに伴って、界面に大きな歪みの傾きが存在する。)これが起こると、シール要素28aは電極23、24から分離し、電解質膜22の周囲に漏れの経路を作る。
【0024】
図3b中の、第2の従来技術のエッジシール21bは、2つのシール要素28bおよび29bを有する。シール要素28bは図3a中のシール要素28aと同様に形成され、機能も類似している。シール要素29bはMEAサブアセンブリの端部に隣接して形成され、図示のように、シール要素28bとおよそ同じ厚みである。シール要素29bは、2枚のフローフィールドプレート(図示せず)の間で圧縮されると、2枚のフィールドプレートの間に第2のシールを作り、それによって燃料電池からの外部への漏れを防ぐ。シール要素29bは、適切に抑制されれば、実質的には圧縮されていても適当な第2のシールを維持し得る。ただし繰り返すが、シール要素28bが過度に圧縮されると、電極23および24との界面に破損が生じ、結果として電解質膜の周囲に漏れの経路が生じる。シール要素28bおよび29bのそれぞれにおける絶対的な圧縮は見かけ上は同様であるが(すなわち、厚みの減少は同様である)、シール要素28bの2つの離れた面の相対的な圧縮(すなわち厚みにおける減少のパーセンテージ)はシール要素29bにおける圧縮よりもはるかに大きい。
【0025】
しかしながら、図3cに示されるエッジシール21cは、充填された電極との界面に過度の歪みを伴わずにシール要素29cが実質的に圧縮され得るように設計される。エッジシール21cはインボードパッド28cを有する。インボードパッド28cは、先行する従来技術の設計と同様に電極の孔(領域27)に充填された材料に結合され、MEAサブアセンブリの端部を包む材料の一部である。インボードパッド28cはシールとして機能せず、エッジシール21cおよびMEAサブアセンブリ間の接着を強化する。また、インボードパッド28cには、アセンブリが大きく圧縮された場合におけるシール要素29cの圧縮を制限する働きもある。したがって、インボードパッド28cの厚みはMEAアセンブリよりも大きくなるが、その結果、アセンブリ全体がフローフィールドプレート25および26間で圧縮された場合にパッド28c内のストレスが、パッド28cの電極からの分離を引き起こすようなストレスよりも小さく、すなわち電極の界面における剪断応力の限度よりも小さくなるためにである。このことは、たとえば、アセンブリがその見かけ(nominal)の厚みであるときにちょうどフローフィールド25および26と隣接し接触しているような(すなわち圧縮ゼロ)インボードパッド28cを有することによって達成される。ただしアセンブリがこの見かけ厚みよりも小さく圧縮されると、インボードパッド28cは、シール要素29cの圧縮を制限する働きをするが、もちろんそのときいくらかの圧縮ストレスにかけられ始める。しかし当業者であれば、インボードパッド28cが、電極の界面における剪断応力の限度を超えずに、かなりの圧縮ストレスを取り除くことができる(そしてそれによってアセンブリは部品の厚みのかなりの変動に耐えることができる)ことを評価するであろう。
【0026】
しかしながら、シール要素29cは、実質的にはインボードパッド28cよりも厚く、アセンブリ全体が燃料電池スタック内の見かけ厚みまで圧縮されると、著しく圧縮される(たとえば一般的な工業用シールよりも大きい、30%を超える圧縮)。シール要素29cにおけるストレスは、インボードパッド28cに電極23および24からの分離を引き起こすと考えられるストレスよりもはるかに大きくなり得る。ただし、このストレスがインボードパッド28cへ伝達されない限りは、このような界面の破損が生じるはずはない。このため、インボードパッド28cをシール要素29cにおけるストレスから隔離するために、フレキシブルカップリング30cがインボードパッド28cおよびシール要素29c間に提供される。フレキシブルカップリング30cの厚みは、アセンブリ全体がその見かけ厚みまで圧縮されたときに、隣接するフローフィールドプレート25および26との間に間隙ができるように選択される。このようにして、アセンブリが見かけ厚みよりも小さく圧縮されたときに、フレキシブルカップリング30cを形成する材料はさらに変形することができ、その周囲には空き空間ができ、そこを通ってインボードパッド28cへストレスを移動する代わりに、そこに材料が流れ込む。
【0027】
図3c中のエッジシール21cの設計によって、結合される燃料電池の構成要素内に受け入れられるためのより強い耐性が、シールの信頼性を妥協することなく見込める。たとえば、代表的なMEAサブアセンブリは、見かけ上は厚みが400〜500マイクロメートルであり得る。可能な限り薄い電池へ向かう傾向に伴って、フローフィールドプレートの厚みと、またそれによってシール要素の厚みとが、徐々に減少している。(シール要素は一般的にフローフィールドプレート内の溝に取付けられ、当然この溝の可能な深さは板の厚みに従って減少していく。)要素29bのような代表的な従来技術のシール要素は、ここでは圧縮時には見かけ上の厚みが約900マイクロメートルであり得る。したがって、シール要素28aまたは28bは、圧縮時にはほんの約250マイクロメートルの厚み(電極の界面からフローフィールドプレートまで)になり得る。したがって、ほんのプラスマイナス50マイクロメートルという構成要素の厚みの許容誤差は、このような状況下では許容不可能であり得る。
【0028】
一例として、厚み約400マイクロメートルのMEAサブアセンブリ(MEAの圧縮は無視する)および、厚みが非圧縮時には約1200マイクロメートルであり、見かけ上の圧縮時(圧縮約25%)には約900マイクロメートルであるシール要素29bと共に図3bに示される実施形態を考慮されたい。このことは、シール材28bが非圧縮時および圧縮時(圧縮約38%)において、それぞれ厚み約400マイクロメートルおよび250マイクロメートルであることを意味する。ただし、フローフィールド2つの溝のそれぞれの深さにおいて、および、成型されたシール自体において、プラスマイナス50マイクロメートルの変動があるとすれば、シール要素28bにおける圧縮の考え得る範囲は約14〜56%であろう。上限において、シール要素28bはMEAサブアセンブリから分離する可能性があり、したがって許容不可能であろう。また、全体的な考え得る変動は、シール要素29bにとってはプラスマイナス200マイクロメートルであろう(各シール溝、モールドシールおよびMEAの厚さに対しては、プラスマイナス50マイクロメートル)。そしてその結果、約9〜40%という広範囲の圧縮範囲につながる。一方、近似した溝の深さの変動を伴うが、非圧縮時(約42%の圧縮)において約1850マイクロメートルであるシール要素29cおよび、厚み約340マイクロメートル(圧縮0%)のインボードパッド28cを採用した、図3cに示される実施形態を考慮されたい。ここでは、インボードパッド28cにおいての考え得る圧縮の範囲は、約0〜25%であり、一方、シール要素29cにおいては約32〜51%であろう。これらの範囲は、圧縮の上限がインボードパッド28cを破損するには不十分であり得るという点で、大きく改善されている。さらに、シール要素29cには高率の圧縮が求められるが、それが圧縮される範囲は、信頼性のあるシールに所望される範囲よりも比較的狭い。
【0029】
スタックの構成要素の厚みにおける変動に対してより裕度があるということとは別に、図3cの実施形態は、他にも様々の好都合な特徴を有する。面31cは、電極23および24との界面にある、インボードパッド28cの端部に提供される。これが、界面における剪断応力の集中を低減し、それによって材料の破損の危険性を低減する。インボードパッド28cはまた、電池スタックを組み立てる際の位置合わせの目印としても用いられる。たとえば、パッド28cは、組立の間、フローフィールド板25および26の面32および33に対して位置を調整されることができ、それによってMEAアセンブリをプレート間の中央に揃えることができる。
【0030】
さらに、図3c中のシール要素29cの断面の形状は、単純な円でなく、わずかに中心線を外して鉛直に配置された2つの円で描かれ、それによってその高さ/幅のアスペクト比が増大する。わずかな圧縮の下では、形状が変化するに従って、円は事実上同心になる。したがって、円形の断面を有するシール要素と比較すると、この中心をずらした配置が、シールの安定性に影響せず有効に、「前圧縮」負荷の余裕を与える。代わりに、シールによって占められる容積は減少し得る。
【0031】
エッジシール21cはまた、絶縁タブ34を含むことができ、これはフローフィールドプレート25を隣接するプレート26から電気絶縁したり、また、スタック組立中の損傷からシール要素29cを保護したりするのに役立つ。インボードパッド28cと同様に絶縁タブ34も、シール要素29cに与えられる圧縮を制限する働きをする。
【0032】
図3cにおいて、フローフィールドプレート25および26は、望ましくは支持壁35を含み、これはエッジシール21cが燃料電池スタックにおける過圧縮の際に膨張するのを防ぐために用いられる。スタックにおいて加圧状態が通常に戻ると、エッジシール21cは元の位置に戻り、それによって再び電池をシールする。
【0033】
図3cに示される、一体化シール21cを有する改善されたMEAは、多くの点で、上記した米国特許6,057,054号(全体を援用する)において開示されたものと同様の方法で製造されることができる。エッジシール21cは、1ステップにおいて、適当な寸法で、位置に配置され、MEAサブアセンブリは液体注入式塑造(LIM)の技術および適当な重合可能な液体シーラント材を用いてフラッシュカットされる。インボードパッド28cが枠組の中に占める空洞が、初めに、液体シーラント材が電極23および24における領域27を出入りし、かつ満たすための簡易経路を与えるため、エッジシールの設計におけるインボードパッド28cの存在がLIMの工程を助ける。
【0034】
たとえば30%を超えての著しい圧縮下でのシール機能に適したエラストマー材は、一般的にエッジシール21c用の材料として適当である。材料はまた、SPE燃料電池における環境と化学的に融和性がなければならない。たとえば、低粘着性の液体珪素樹脂エラストマーは、この適用に適した機械的特性を有し得る。ある種のこういった珪素樹脂は、重合されると、約40のショアーA硬度および、40%のひずみ(strain)において約0.2MPaの単軸張力係数によって特徴づけられる。しかし、化学的に融和性であり、かつ類似の機械的特性を有するその他のエラストマーが、代替的使用のために考慮され得る。たとえば、ある程度のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマー)またはフルオロエラストマーが、同様に適当であり得る。
【0035】
与えられたMEAサブアセンブリに適切な一体化エッジシールを設計する際に、決定すべき重要なパラメータは、使用されるシール材および電極の組合せに対する界面ストレスの限度である。(この界面ストレスの限度は、使用されるシール材の種類だけでなく、孔の機能および電極の表面構造である。)一度この限度が決定されると、与えられたMEAサブアセンブリに適応するために、シールを形成する多様な構造について、適切な体積が容易に計算され得る。燃料電池の多様な構成要素の許容誤差の中で、MEAアセンブリ全体が圧縮の上限におかれたときに、界面のストレスの限度を超えないようにインボードパッドの寸法を決めなければならない。シール要素は、著しく圧縮されても維持し、それによって、考えられる圧縮の範囲全体を通じて高い信頼性をもってシールするように寸法を決められる。
【0036】
界面のストレスの限界は、実験に基づいて容易に決定される。単純な方法は、既知の寸法の正方形の外観を有するエラストマーの「パッド」が、所望のMEAサブアセンブリ内に使用されているものと類似した電極に対してキャストされるようなエラストマー/電極のサンプルを準備することを含む。キャストされたエラストマーの「パッド」は、さらに、電極の孔に浸透し、完全に孔を満たす。そのとき、サンプル「パッド」は、平らなプレートユニットの間で、視覚的に電極から外れるまで圧縮される。(炭素繊維紙の電極上に低粘着性の珪素樹脂をおいた場合、それが剪断されるときに、黒色から銀色へと界面の外観が変化する。)この実験テストの値は、あらゆる形状のパッドの界面ストレスの限度および圧縮の限度を計算するために用いられる。
【0037】
以下の実施例は、本発明のある様態を説明するために与えられるものであり、いかなる場合においても本発明を限定するものではない。
【0038】
(実施例1)
以下において、従来のMEAサブアセンブリが使用されており、NAFION(登録商標)112の、TGP−60のガス分散層を含む電解質膜および電極と、Toray Industries社の製品である炭素繊維紙とを有する。上記の低粘着性珪素樹脂と類似した機械的特性を有するシール材としての使用のため、珪素樹脂エラストマー材が選択された。
【0039】
このシール材/電極の組合せに対する界面剪断応力の限度は、上記のように、実験に基づいて決定された。珪素樹脂のサンプル(断面で4mm平方、高さ2mm)が、TGP−60の、炭素繊維紙層に向かって/炭素繊維紙層の上へ、キャストされた。負荷下において、サンプルは、炭素繊維紙によって圧縮25%で界面を剪まれた。これは界面における最大ストレス(つまり界面の剪断応力の限度)の1.2MPaに一致した。
【0040】
続いて、これらの材料を使用した一体化エッジシールの設計を有する2つの異なるMEAは評価された。比較実施形態は、図3b中に描かれたものに類似していた。MEAサブアセンブリは、圧縮時には約440マイクロメートルの厚みであった。電極の外側にあるMEAサブアセンブリの各面のシール要素28bの高さは約390マイクロメートルであった。シール要素29bは、約1220マイクロメートルの厚みであった。発明の実施形態は、図3b中に描かれたものに類似していた。また、MEAサブアセンブリは、約440マイクロメートルの厚みであった。電極の外側のインボードパッド28cの各面の高さは、約340マイクロメートルの厚みであった。シール要素29cは、厚み約1850マイクロメートルであり、中心を0.35mmずらして鉛直に配置された2円によって描かれた断面の形状を有した。
【0041】
比較の、および発明のエッジシールそれぞれの負荷下における歪みのプロファイルは、測定可能な要素の分析およびAnsys/Multiphysicsソフトウェアを用いてモデル化された。図4aおよび4bは、見かけ上(nominally)圧縮された場合の、比較の、および発明のエッジシールの歪みのプロファイルをそれぞれ示す。比較実施例の場合(図4a)、エッジシール21bの圧縮時の見かけ上の厚みは、約920マイクロメートルであった。発明の実施例の場合(図4b)、エッジシール21cの圧縮時の見かけ上の厚みは、約1120マイクロメートルであった。図4aおよび4bにおいて、下にある帯グラフは、歪みの度合い(たとえば、暗く均一に塗りつぶしたものが最少の歪みとする)を示す。図4aから明らかであるように、シール要素29bがほんのわずかに歪んでいるのに対して、シール要素28bは実質的な歪みの下にある。しかし、図4bにおいて、シール要素29cが実質的な歪みの下にあるのに対し、インボードパッド28cは事実上は歪んでいない。これらの図は、発明のエッジシールの、シール/電極の界面における歪みの低減効率を示す。
【0042】
比較の、および発明のエッジシールの周期的な圧縮および回復の特性も測定され、図5に示される。(図5において、比較のエッジシールの最初の5周期が示され、C1、C2等の記号で示されている。発明のエッジシールについては10周期が示されるが、周期は本質的にオーバーラップするため、これらは簡潔に「I」と表される。エッジシールIは、与えられた圧縮に対して、線形応答特性を示し、また、エッジシールCよりも大きな力を要した。したがって、エッジシールIはエッジシールCよりも高圧を持つことができるはずである。さらに、エッジシールCとは異なり、エッジシールIはこのテストの間、周期に伴って劣化する徴候は全く示さなかった。(すなわち、周期に伴って、応答の際に履歴現象は生じない。)
最後に、2つの10セルの燃料電池スタックが組立てられ、高レート放電、および、シールの破損までの期間を決定するための一定の状態条件の下で作動された。1つの電池スタックは、「C」と表され、一体化シールを有する上記の比較のMEAを用いて組立てられ、一方、他の電池スタックは、「I」と表され、一体化シールを有する上記の発明のMEAを用いて組立てられる。全体の反応物の(すなわち、双方の反応物の)漏れレートは、期間を通し各スタックに対して測定され、結果は、作動時間に対するセル毎の平均漏れレートとして、図6に示される。スタックI内のセルについて、背景となる初期の漏れレートは、スタックC内のセルよりもはるかに低い。約1200時間連続して高レート作動した後、スタックC内の1つまたは複数のシールが破損し、スタックCは実質的に漏れを生じた。しかし、スタックIは同様の漏れを生じるまでにその2倍を超えて(2400時間を超えて)稼動した。
【0043】
先に述べた実施例においても説明したように、一体化エッジシールIを有するMEAは、エッジシールCを有するMEAを上回り、著しい改善を示す。
【0044】
本発明の特定の要素、実施態様および応用について図示し、説明したが、本発明はこれに限定されず、また、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって修正が行われてもよいということは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】固体高分子電解質燃料電池スタック内の燃料電池アセンブリの断面略図である。
【図2a】一体化シールがエッジシールおよびスタック内の内部マニホールド用のシールを含む、本発明の改善された一体化シールを有するMEAの平面図である。
【図2b】図2aのMEAの、A−Aの部分に沿った断面図である。
【図2c】図2aのMEAの、B−Bの部分に沿った断面図である。
【図3a】第1の従来技術による、一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図3b】第2の従来技術による、一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図3c】本発明の、改善された一体化シールを有するMEAの端部の断面図である。
【図4a】わずかな圧縮下における、第2の従来技術によるMEAのエッジシールの歪みのプロファイルを示す。
【図4b】わずかな圧縮下における、本発明によるMEAのエッジシールの歪みのプロファイルを示す。
【図5】図3bの第2の従来技術によるMEAのエッジシールの、周期的な圧縮・回復の特性を、図3cの本発明のエッジシールのものと比較したものである。
【図6】図3bの第2の従来技術によるMEAのエッジシールの、作動時間に対する漏れレートの特性を、図3cの本発明のエッジシールのものと比較したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体化シールを有し、圧縮面によってその見かけ厚みまで圧縮されるようになっている、固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリであって、該膜電極アセンブリは、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを含み、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリと、
シール材で形成したエッジシールとを備え、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが該シール材に対する該電極の界面のストレスの限度よりも少なくなるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該パッドよりも薄く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該圧縮面および前記カップリングの間に間隙が残るような厚みである、フレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該インボードパッドよりも圧縮されるような厚みである、シール要素と
を有する、膜電極アセンブリ。
【請求項2】
前記アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、前記インボードパッドが約25%未満圧縮される、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項3】
前記アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、前記シール要素が30%を超えて圧縮される、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項4】
前記シール材がエラストマーである、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項5】
前記エラストマーが、ショアーA硬度約40であること、および、40%のひずみ下における単軸張力係数が0.2MPaであることを特徴とする、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項6】
前記電極の界面のストレスの限度が1.2MPaである、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項7】
前記エラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマーである、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項8】
前記エラストマーがフルオロエラストマーである、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項9】
前記多孔性カソードおよびアノード電極が炭素繊維紙を有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項10】
前記シール要素の形状が、中心をずらして前記膜電極アセンブリの主要面に対して垂直に配置される2つの円で描かれる、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項11】
前記インボードパッドが前記電極面に隣接して面を有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項12】
前記シール要素に隣接した絶縁タブを有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項13】
一体化シールを有し、圧縮面によって圧縮されるようになっている、固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリであって、該膜電極アセンブリは、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有し、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリと、
シール材で形成したエッジシールとを備え、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが、充填された膜電極サブアセンブリから該パッドを剪断するのには不十分であるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該インボードパッドよりも厚みが薄いフレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際にシール材が十分圧縮されるような厚みである、シール要素と
を有する、膜電極アセンブリ。
【請求項14】
請求項1に記載の膜電極アセンブリを含む固体高分子電解質燃料電池。
【請求項15】
前記圧縮面がフローフィールドプレートである、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記インボードパッドが、前記電極の面に隣接して面を有し、前記フローフィールドプレートが、前記インボードパッド上の前記面を揃える位置合わせの目印を有する、請求項15に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記フローフィールドプレートが、前記シール要素を保つための壁を保有する、請求項15に記載の燃料電池。
【請求項18】
圧縮面によって見かけ厚みにまで圧縮されるようになっている、一体化シールを有する固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリを製造する方法であって、該方法は、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有し、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリを提供することと、
シール材で形成したエッジシールを前記膜電極サブアセンブリの端部に対して形成することとを包含し、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが該シール材に対する該電極の界面のストレスの限度よりも少なくなるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該圧縮面および該カップリングの間に間隙が残るような厚みである、フレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、該インボードパッドよりも圧縮されるようになっている、シール要素と
を備える、膜電極アセンブリ製造方法。
【請求項1】
一体化シールを有し、圧縮面によってその見かけ厚みまで圧縮されるようになっている、固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリであって、該膜電極アセンブリは、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを含み、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリと、
シール材で形成したエッジシールとを備え、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが該シール材に対する該電極の界面のストレスの限度よりも少なくなるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該パッドよりも薄く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該圧縮面および前記カップリングの間に間隙が残るような厚みである、フレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該インボードパッドよりも圧縮されるような厚みである、シール要素と
を有する、膜電極アセンブリ。
【請求項2】
前記アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、前記インボードパッドが約25%未満圧縮される、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項3】
前記アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、前記シール要素が30%を超えて圧縮される、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項4】
前記シール材がエラストマーである、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項5】
前記エラストマーが、ショアーA硬度約40であること、および、40%のひずみ下における単軸張力係数が0.2MPaであることを特徴とする、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項6】
前記電極の界面のストレスの限度が1.2MPaである、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項7】
前記エラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマーである、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項8】
前記エラストマーがフルオロエラストマーである、請求項4に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項9】
前記多孔性カソードおよびアノード電極が炭素繊維紙を有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項10】
前記シール要素の形状が、中心をずらして前記膜電極アセンブリの主要面に対して垂直に配置される2つの円で描かれる、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項11】
前記インボードパッドが前記電極面に隣接して面を有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項12】
前記シール要素に隣接した絶縁タブを有する、請求項1に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項13】
一体化シールを有し、圧縮面によって圧縮されるようになっている、固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリであって、該膜電極アセンブリは、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有し、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリと、
シール材で形成したエッジシールとを備え、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリを見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが、充填された膜電極サブアセンブリから該パッドを剪断するのには不十分であるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該インボードパッドよりも厚みが薄いフレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際にシール材が十分圧縮されるような厚みである、シール要素と
を有する、膜電極アセンブリ。
【請求項14】
請求項1に記載の膜電極アセンブリを含む固体高分子電解質燃料電池。
【請求項15】
前記圧縮面がフローフィールドプレートである、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記インボードパッドが、前記電極の面に隣接して面を有し、前記フローフィールドプレートが、前記インボードパッド上の前記面を揃える位置合わせの目印を有する、請求項15に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記フローフィールドプレートが、前記シール要素を保つための壁を保有する、請求項15に記載の燃料電池。
【請求項18】
圧縮面によって見かけ厚みにまで圧縮されるようになっている、一体化シールを有する固体高分子電解質燃料電池用膜電極アセンブリを製造する方法であって、該方法は、
膜電極サブアセンブリであって、膜電解質と、多孔性のカソード電極と、多孔性のアノード電極とを有し、平坦であり、かつ、2つの主要面を有する膜電極サブアセンブリを提供することと、
シール材で形成したエッジシールを前記膜電極サブアセンブリの端部に対して形成することとを包含し、
該エッジシールが、
a)該膜電極サブアセンブリの端部にある該2つの主要面に隣接するインボードパッドであって、該膜電極サブアセンブリの外周に沿う該電極の端部にある該孔を満たし、該膜電極サブアセンブリの少なくとも端部よりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際の該パッドのストレスが該シール材に対する該電極の界面のストレスの限度よりも少なくなるような厚みである、インボードパッドと、
b)該インボードパッドおよび該膜電極サブアセンブリの端部に隣接するフレキシブルカップリングであって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に該圧縮面および該カップリングの間に間隙が残るような厚みである、フレキシブルカップリングと、
c)該フレキシブルカップリングに隣接するシール要素であって、該インボードパッドよりも厚く、かつ、該アセンブリをその見かけ厚みにまで圧縮した際に、該インボードパッドよりも圧縮されるようになっている、シール要素と
を備える、膜電極アセンブリ製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2006−529049(P2006−529049A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529481(P2006−529481)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000388
【国際公開番号】WO2004/102721
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303026556)バラード パワー システムズ インコーポレイティド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000388
【国際公開番号】WO2004/102721
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303026556)バラード パワー システムズ インコーポレイティド (28)
【Fターム(参考)】
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