説明

一体型ベアリング

【課題】本発明は、ラジアルベアリングとスラストベアリングとの双方の着脱に伴う作業が効率よく行える一体型ベアリングを提供する。
【解決手段】本発明の一体型ベアリングは、筒状のラジアルベアリング31と盤状のスラストベアリング32とを一体にした。同構成によると、一度の作業で、ラジアルベアリング30およびスラストベアリング31の双方の着脱が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアル方向の荷重とスラスト方向の荷重とを受ける一体型ベアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
車両など各種装置を構成する回転軸や可動式のピン部材などでは、スムーズに動くよう、ラジアルベアリングを用いて回転自在に支えることが行われている。例えば車両では、リーフスプリングを用いたサスペンション装置において、特許文献1に開示されているようにラジアルベアリングを用いて、リーフスプリングの目玉部(リーフスプリング端)を回転自在に支持することが行われている。
【0003】
ところで、リーフスプリング端の支持のように、回転軸やピン部材を介してブラケットに支持させる場合、回転軸の軸心方向から加わる荷重、すなわちスラスト方向の荷重からの磨耗を考慮することがある。このような場合、ラジアル方向からの荷重を受けるラジアルベアリングとは別に、回転軸の端面とブラケット間にスラストベアリングを設けて、スラスト方向からの荷重を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平4−506855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このようにラジアルベアリング、スラストベアリングを別々に取付ける構造は、各々着脱作業が別となるため、ベアリングの組付け、取り外しの作業が面倒である。特にベアリングが点検部品に指定され、ラジアルベアリングとスラストベアリングの双方の交換を必要とすることが多いときは、面倒な作業が強いられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ラジアルベアリングとスラストベアリングとの双方の着脱に伴う作業が効率よく行える一体型ベアリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、筒状のラジアルベアリングと盤状のスラストベアリングとを一体にした一体型ベアリングとした。
【0008】
同構成によると、一体型ベアリングは、ラジアルベアリングとスラストベアリングとが一体なので、ラジアルベアリングを回転軸やピン部材の外周面に嵌めると、スラストベアリングも一緒に回転軸やピン部材の端面に配置される。これにより、ラジアルベアリングは、回転軸やピン部材の外周面に組み付き、スラストベアリングは、回転軸やピン部材の端面に組み付く。取り外すときは、組み付いたスラストベアリングを回転軸やピン部材などの端面から取り外すと、ラジアルベアリングも回転軸やピン部材の外周面から外せる。つまり、一度の作業で、ラジアルベアリングおよびスラストベアリングの双方の着脱が行える。
【0009】
請求項2の発明は、前記ラジアルベアリングは、内輪と、前記内輪の外側に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装された複数のラジアル転動子とを有して筒形に構成され、スラストベアリングは、外輪の一端部から径方向外側に張り出るように設けられた円盤状の軌道盤と、前記軌道盤の側面に周方向に沿って環状に組み付けられた複数のスラスト転動子とを有して盤形に構成されるものとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、一体型ベアリングは、ラジアルベアリングとスラストベアリングとが一体なので、一度の作業で、ラジアルベアリングとスラストベアリングとの双方の着脱ができる。
したがって、効率良くラジアルベアリングおよびスラストベアリングの着脱作業を行うことができる。
請求項2の発明によれば、一体型ベアリングは、ラジアル転動子の回転により、設置された部材や部品に加わる垂直方向または水平方向の力を吸収することができるので、抵抗係数を減少し、部品の磨耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る一体型ベアリングを適用したサスペンション装置を示す正面図。
【図2】同じく斜視図。
【図3】同サスペンション装置の一体型ベアリングが有る付近を拡大して示す斜視図。
【図4】図3中のA−A線に沿う一体型ベアリングの半断面図。
【図5】同一体型ベアリングが装着される部位を分解した斜視図。
【図6】同一体型ベアリングを拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1ないし図6に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、車両、例えばトラックのリヤ側のサスペンション装置1の正面図、図2は同サスペンション装置1の斜視図をそれぞれ示している。図1,2中の矢印Fは車両前方を示している。
【0013】
サスペンション装置1には、車両の前後方向に延びるサイドフレーム2に、同車両前後方向に沿ってリーフスプリング3を組み付けたリーフスプリング式構造が用いられている。このリヤ側のサスペンション装置1は、リヤデファレンシャル4やアクスルシャフト5が組み付いたアクスルケース6を支持するものである。片側しか図示していないが、車両の左右共、同じ構造である。
【0014】
図1,2を参照してサスペンション装置1を説明すると、リーフスプリング3は、両端部に支持部をなす目玉部3a、3bを有している。このリーフスプリング3の中央に、Uボルト7aなどの固定具7を用いて、アクスルケース6の端側を構成する筒部6aが固定してある。ちなみに図中8は、アクスルシャフト5に組み付く車輪(後輪)を示している。
【0015】
一方、サイドフレーム2のリーフスプリング端と対応する前後二個所のフレーム部分2a、2bには、スプリング支持用のブラケット10a,10bが設置されている。ブラケット10a,10bは、いずれも締結具、例えばボルト部材10cを用いてフレーム部分2a,2bに固定されている。
【0016】
前側のブラケット10aには、ピン部材11を介して、リーフスプリング3の前側の目玉部3aが回動自在に連結される。後側のブラケット10bには、リーフスプリング3の撓みを吸収する撓み吸収部13を介して、リーフスプリング3の後側の目玉部3bが変位自在に連結され、車輪8を懸架している。
【0017】
撓み吸収部13は、例えば図3〜図5に示されるようにブラケット13に形成した車両前後方向に延びるスロット19と、同スロット19内を車両前後にスライド可能に貫通して目玉部3bに固定されるピン部材21とを組み合わせたスライド式の構造が用いられている。図3には拡大した撓み吸収部13、図4には同撓み吸収部13の断面、図5には同撓み吸収部13を分解した図をそれぞれ示している。
【0018】
撓み吸収部13を説明すると、ブラケット10bは、フレーム部分2bに固定された取付座15と、同取付座15の下部に形成されフレーム部分2bの下側へ突き出るスプリング取付部16とを有している。このうちスプリング取付部16は、車両前後方向に延びる一対の相対向する壁部17から形成されている。車幅方向に向き合う壁部17は、目玉部3bの幅寸法に応じた間隔で配置される。そして、同壁部17間にリーフスプリング端(目玉部3b)が配置されている。
【0019】
各壁部17には、図5に示されるように前後方向に延びる一対のスロット19が形成されている。このスロット19は、車両前後方向に所定に延びた長孔から形成される。同スロット19の孔幅は、目玉部3bの内径より小さい。これら長孔が、壁部17間に配置された目玉部3bの各端面と向き合う。
【0020】
一方、ピン部材21は、例えば図5に示されるように軸心方向中央に、目玉部3bの内径に応じた外形の圧入部22を有し、同圧入部22の両側に、スロット幅より若干小さな外形をもつスロット貫通部23を有し、両端部にそれぞれおねじ部24を有して棒状に形成される。図4に示されるようにピン部材21の圧入部22は、目玉部3b内に圧入される(固定)。また各スロット貫通部23は、目玉部3bの両側に配置される各スロット19内にスライド可能に貫通される。
【0021】
そして、ピン部材21の両端の各おねじ部24には、固定部材、例えばワッシャ部材25、ナット部材26が組み合わさり、ピン部材21を両側の壁部17cに摺動自在に固定している。
【0022】
またピン部材21が円滑に動けるよう、ピン部材21の各端部には、本発明の要部となる、ピン部材21から伝わるラジアル方向の荷重とスラスト方向の荷重とを支えるベアリング30が設けられている。ベアリング30には、ラジアル方向の荷重を受ける筒状のラジアルベアリング31と、スラスト方向の荷重を受ける盤状のベアリング32とを一体化にした一体型のベアリング30(一体型ベアリング)が採用されている。
【0023】
図6には、このベアリング30の全体が示されている。
図6の斜視図および図4に示す断面図およびを参照して、ベアリング30を説明すると、ラジアルベアリング31は、例えば短筒形の内輪35と、同内輪35の外側に配置された短筒形の外輪36と、これら内輪35と外輪36との間に介装された複数のころ部材37(本願のラジアル転動子に相当)とを有して、筒形に構成されている。さらに述べれば、ラジルベアリング31は、スロット貫通部23とスロット19との間隙に挿脱可能な筒形に形成してある。
【0024】
このラジアルベアリング31が、図4に示されるようにピン部材21の各端側からスロット貫通部23の外周面(ピン部材の外周面)とスロット19の内面との間に介挿され、ころ部材37の回転の動きで、ピン部材21がスロット19内をスムーズにスライドできるようにしている。
【0025】
本実施形態では、ころ部材37はスロット19に加わる垂直方向の力を主に吸収するが、ころ部材37が設置される部品に加わる力がいずれの周方向からのものであっても回転の力として吸収する。例えば、一体型ベアリング39が設置される部品に水平方向や斜め方向から力が加わる場合であっても、ころ部材37は当該力を吸収する。
【0026】
またスラストベアリング部32は、外輪36の一端部に、径方向外側へ張り出るように円盤状の軌道盤38を形成し、この軌道盤38の内面(外輪36が突き出る側の側面)に、環状の保持器40で、複数の玉39(本願のスラスト転動子に相当)を組み付けて構成される。むろん、玉39は、軌道盤38の周方向に沿って環状に配置される。
【0027】
スラストベアリング32は、ラジアルベアリング31が、スロット貫通部23の外周面とスロット19の内面間に介在されるにしたがい、図4に示されるように環状に配置された玉39が、スロット19の開口縁部19aと当接、すなわち回転可能に転接して、ピン部材21の軸心方向から加わるスラスト荷重を受ける。
【0028】
ちなみにベアリング30は、上記ワッシャ部材25、ナット部材26にて、それぞれ壁部17に挟み付けられることによって着脱可能に固定され、目玉部3bから加わる荷重(ピン部材21の軸心方向や直径方向から作用する荷重)に十分に耐えながら、ピン部材21のスライドを許す構造にしている。
【0029】
このようにして組み付けられたラジアルベアリング31、スラストベアリング32において、例えば点検などにより、それぞれ交換が求められたときは、ピン部材21から、ワッシャ部材25やナット部材26を外した後、図示しない工具を用いて、ベアリング30全体をピン部材21の端側へ抜き出せば、スラストベアリング32はピン部材21や壁部17から外れる。と共にラジアルベアリング31も、スラストベアリング32と一緒にピン部材21の外周面から抜き出せる。
【0030】
磨耗したベアリングに代えて、新規のベアリング30をピン部材21に嵌め、ワッシャ部材25、ナット部材26で締結すると、新規のラジアルベアリング31は、スロット貫通部23とスロット19間に介在される。と共に新規のスラストベアリング32は、スロット19の開口縁部19aに配置され、両者のベアリング31,32の組み付けを終える。
【0031】
つまり、ラジアルベアリング31とスラストベアリング32は、いずれも一度の作業で着脱が行える。
それ故、一体型のベアリング39を用いると、ラジアルベアリング31とスラストベアリング32の取付作業や離脱作業は、効率よく行える。
【0032】
したがって、一体型ベアリング30は、効率良い作業で、ラジアルベアリング31とスラストベアリング32の装着および離脱を可能とする。しかも、ベアリング30は、内・外輪35,36およびころ部材37(ラジアル転動子)を組み合わせたラジアルベアリング31に、盤状の軌道盤38および玉39(スラスト転動子)を組み合わせたスラストベアリング32を一体に組み付けただけの構造なので、簡単な構造である。
【0033】
また、一体型ベアリング30は、ころ部材37によりいずれの周方向からの力も回転の力に吸収するので、一体型ベアリング39が設置される部品にいずれの周方向から力が加わる場合であっても、一体型ベアリング30およびこれが設置される部品の耐久性を向上することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変えて実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、一体型ベアリングには、ころ部材や玉を用いたベアリングを組み合わせた構造を用いた例を挙げたが、これに限らず、他の転動子を用いた構造でもよい。また一実施形態では、リーフスプリング式のサスペンション装置に一体型ベアリングを適用した例を挙げたが、これに限らず、他の車両の部位でも、車両に限らず他の装置の回転軸やピン部材など、ラジアル方向やスラスト方向の荷重を受ける部分に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
30 ベアリング(一体型ベアリング)
31 ラジアルベアリング
32 スラストベアリング
35 内輪
36 外輪
37 ころ部材(ラジアル転動子)
38 軌道盤
39 玉(スラスト転動子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のラジアルベアリングと、
前記ラジアルベアリングの一端部に一体に設けられた盤状のスラストベアリングと
を具備してなる一体型ベアリング。
【請求項2】
前記ラジアルベアリングは、
内輪と、前記内輪の外側に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装された複数のラジアル転動子とを有して筒形に構成され、
前記スラストベアリングは、
前記外輪の一端部から径方向外側に張り出るように設けられた盤状の軌道盤と、前記軌道盤の側面に周方向に沿って環状に組み付けられた複数のスラスト転動子とを有して盤形に構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の一体型ベアリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−50190(P2013−50190A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189068(P2011−189068)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】