説明

一体型吸気口設計

【課題】ナセルアセンブリ及びその組立方法を提供する。
【解決手段】ナセルアセンブリは、内側バレルと、ハイライト部分及び外側後方部分から成る外部構造とを含んでおり、このハイライト部分は、外部構造の前端によって画定され、この外側後方部分は、ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントを含んでいる。少なくともこのハイライト部分とポイントとの間に、ナセルアセンブリは延在する。外部構造は、連続繊維強化熱可塑性材料及び連続繊維強化熱硬化性材料の少なくとも一方から作製されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してガスタービンエンジンナセルアセンブリに関し、より具体的には、ナセルアセンブリ用の一体型吸気口設計に関する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンに適用される一部の既知のナセルアセンブリは、部品どうしの間に複数の円周方向及び軸方向の隙間及び段が画定された複数の構成部品を含むが、これら複数の構成部品は、ナセルアセンブリの空気力学的な流れを妨げる。例えば、少なくとも1つの既知のナセルアセンブリは、吸気口リップ、吸気口外側バレル、及びファンカウルを含んでおり、これらはナセルアセンブリの外流面を画定する。更に、一部のナセルアセンブリ内の、一部の既知の構成部品は、外流面上に更なる隙間及び段を画定する複数のセグメントを含む。例えば、大型の高バイパス比エンジンに使用される少なくとも1つの既知のナセルアセンブリは、複数の半径方向セグメントによって画定された吸気口リップを含む。
【0003】
一部のタービンエンジン内では、ナセルアセンブリに使用される構成部品の少なくとも一部及び構成部品の少なくとも一部のセグメントが、複数の機械的な締結具によってナセルアセンブリ内の適当な位置に連結される。例えば、機械的な締結具で、吸気口リップの内部に配置された隔壁を固定できる。機械的な締結具は更に、その配向によっては、ナセルアセンブリの空気力学的な流れを妨げる。より具体的に、隔壁の例では、機械的な締結具の頭部が、ナセルアセンブリの外面に露出し、外側流路内に直接配置される。機械的な締結具の露出した頭部に加えて、ナセルアセンブリ内のその他の隙間及び/又は段が、ナセルアセンブリの外流面上の層流を妨げ、空気力学的な抵抗を増加させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】フランス特許第2906568A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増加した空気力学的な抵抗下でタービンエンジンを運転することで、燃料の燃焼効率が減少することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、ナセルアセンブリの組立方法を提供する。この方法は、外部構造を準備するステップであって、この外部構造が、少なくとも外部構造の前端によって画定されたハイライト部分と、ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントとの間に延在しているステップと、この外部構造を内側バレルに連結するステップとを含む。
【0007】
別の態様において、ナセルアセンブリの外部構造を提供する。この外部構造は、外部構造の前端によって画定されたハイライト部分と、ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントを含む外側後方部分と、を含んでおり、少なくともこのハイライト部分とポイントの間に、ナセルアセンブリは延在する。
【0008】
更に別の態様において、ナセルアセンブリを提供する。ナセルアセンブリは、内側バレルと、ハイライト部分及び外側後方部分から成る外部構造とを含んでおり、ハイライト部分は外部構造の前端によって画定され、外側後方部分はナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントを含み、少なくともこのハイライト部分とポイントとの間に、ナセルアセンブリは延在している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な航空機の斜視図である。
【図2】図1に示す航空機に適用される、例示的なタービンエンジンの一部の断面図である。
【図3】図2に示すタービンエンジンに適用されるナセルアセンブリの概略図である。
【図4】図3に示すナセルアセンブリの別の概略図である。
【図5】図3に示すナセルアセンブリに適用される外部構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載のシステム及び方法は、空気力学的ナセルアセンブリ設計を画定する、例示的な一体型吸気口設計を提供する。当該記述により、当業者は、本開示を作製及び使用できるようになるはずであり、当該記述は、現時点で本開示を実施する最良の形態と考えられるものを含む、本開示の実施例、適応形態、変形形態、代替形態、及び使用形態を説明する。本開示は、好適な実施例、即ち、一体型吸気口設計に適用されるものとして本明細書に記載される。
【0011】
図1は、例示的な航空機8の概略図であり、航空機8に揚力を与えるべく使用される少なくとも1つのタービンエンジン10を含んでいる。本実施例において、タービンエンジン10は、主翼11に連結されている。より具体的には、タービンエンジン10は、主翼11の主翼パイロン(図示せず)に連結されている。代替的実施例では、タービンエンジン10は、尾部13に連結されている。より具体的には、タービンエンジン10は、尾部13の胴体(図示せず)に連結されている。
【0012】
図2は、タービンエンジン10の一部の断面図である。本実施例では、タービンエンジン10は、縦中心線軸32の周囲に回転可能に連結されたファンアセンブリ16を含む。本実施例において、ファンアセンブリ16は、タービンエンジン10の前端33に配置されている。代替的実施例において、ファンアセンブリ16は、タービンエンジン10の後端35に配置されている。ファンアセンブリ16は、ナセルアセンブリ12内に配置された複数のファンブレード列19を含む。一実施例において、ナセルアセンブリ12は、タービンエンジン10の様々な作動部品(図示せず)を収容している。
【0013】
本実施例において、タービンエンジン10はまた、ファンアセンブリ16の下流に配置されたコアエンジン17を含む。コアエンジン17は、圧縮機18と、燃焼器20と、コアロータ軸26を介して圧縮機18に連結されたタービン22とを含む。
【0014】
運転時、コアエンジン17は燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスは、タービン24に向かって下流へと運ばれ、タービン24は、ガスからエネルギーを抽出して、シャフト28を介してファンアセンブリ16に動力を供給する。
【0015】
図3及び4は、ナセルアセンブリ12の概略図である。図3に示す実施例において、ナセルアセンブリ12は、ほぼ環状であり、ナセルアセンブリ12を通じて空気を運ぶように寸法決め及び構成された開口部32が画成されている。ナセルアセンブリ12は、内面43に対して測定された前端33の直径34を有しており、この直径は、ナセルアセンブリ12の外面の最大直径36よりも小さい。
【0016】
ナセルアセンブリ12は、内側バレル38及び外部構造40を含む。本実施例において、外部構造40は、連続繊維強化熱可塑性材料から作製されている。代替的に、外部構造40は、連続繊維強化熱硬化性材料から作製されていてもよい。一実施例において、外部構造40は、ナセルアセンブリ12を落雷から保護できるように、一体表面フィルムを組み込んでいる。
【0017】
外部構造40は、外部構造40の前端33によって画定されたハイライト部分42と、ハイライト部分42によって画定された外側後方部分44と、ハイライト部分42によって画定された内側後方部分46とを含む。外側後方部分44は、ナセルアセンブリ12の最大直径36によって画定された外面47上のポイント45を含む。別の実施例において、外部構造40は、ファンカウル54に近接した外側後方部分44の後端35のフープフレーム(図示せず)に連結されているが、このフープフレームによって、外部構造40がファンカウル54に連結し易くなっている。
【0018】
図4に示す実施例において、内側後方部分46は、外部構造40を内側バレル38に連結するべく使用される第1フランジ48を含む。別の実施例において、外部構造40は、外部構造40をファンケース53に連結するべく使用される第2フランジ50を含む。
【0019】
本実施例において、ナセルアセンブリ12は、ナセルアセンブリ12を構造的に支持し易くする複数の隔壁57、58、及び59を含む。隔壁57、58、及び59はまた、例えばバードストライクの際に生じるような、外部構造40の外面47にもたらされるあらゆる後方への力を吸収し易くする。本実施例において、隔壁57は、外側後方部分44及び内側後方部分46に連結され、隔壁58は、外側後方部分44及び内側バレル38に連結され、隔壁59は、外側後方部分44及びファンケース53に連結されている。本実施例において、隔壁59は、外側後方部分44の後端35に連結されており、この隔壁59によって、外部構造40がファンカウル54に連結し易くなっている。機械的締結工程、熱可塑性溶接工程、及び接着剤結合工程等の複数の連結工程によって、隔壁57、58、及び59を連結できる。
【0020】
図5は、外部構造40の概略図である。本実施例において、外部構造40は、円周方向及び/又は長手方向に配向された少なくとも1つの補強材56を含み、外側後方部分44を構造的に支持し易くなっている。本実施例において、補強材56は、例えば、熱可塑性溶接及び/又は接着剤結合によって、外部構造40の内面43に連結された独立構成部品である。代替実施例では、補強材56を外部構造40と一体的に形成してもよい。
【0021】
本実施例において、ナセルアセンブリ12は、例えばバードストライクの際に生じるような、外部構造40の外面47にもたらされるあらゆる後方への力を吸収し易くするように配向及び配置された、構造用フォーム60を含む。本実施例において、構造用フォーム60は、熱可塑性溶接工程及び接着剤結合工程の少なくとも1つを用いて、外部構造40の内面43に当接するように、ハイライト部分42の下流側35に連結される。
【0022】
運転時、空気は、ナセルアセンブリ12の前端33から後端35へと流れる。外部構造40は、外面47上に空気力学的表面を画成し、ハイライト部分42から最大直径36によって画定されたポイント45への、外面47上の層流を維持し易くする。外面47によって、抗力が削減されると共に、空気力学的な効率及び燃料効率が上昇する。更に、外部構造40では、既知のナセルアセンブリに比べて、ナセルアセンブリ12の組立時間及び構成部品数が削減され、これによって、製造コストが削減されると共に製造サイクルタイムが改善する。部品点数の削減と、熱可塑性物質又はグラファイト等の先端材料の使用によって、既知のナセルアセンブリに比べて、ナセルアセンブリ12の重量削減がし易くなる。
【0023】
一体型吸気口設計に関して本明細書に記載した方法、装置、及びシステムは、本明細書に記載の特定の実施例に限定されるものではない。本明細書に記載の一体型吸気口設計は、抗力を削減すると共に燃料効率を向上させ易くする、より空気力学的な設計を提供する。本明細書に記載又は例示した方法、装置、又はシステムの実施は、ナセルアセンブリに限定されるものではない。むしろ、本明細書に記載又は例示した方法、装置、及びシステムを、本明細書に記載した他の構成部品及び/又はステップとは別個独立に使用してもよい。
【0024】
本明細書は、実施例を用いて、最良の形態を含めて本発明を開示しているが、これによって、当業者には、任意の装置又はシステムの製作及び使用、並びに任意の付随の方法の実行を含めた本発明の実施が可能になる。本発明の特許性のある技術的範囲は、特許請求の範囲に定められているが、これには、当業者に想到可能なその他の例も含まれ得る。そのようなその他の例は、特許請求の範囲の文言と相違ない構成要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する同等の構成要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することを意図している。
【0025】
本発明を様々な特定の実施例に関して説明してきたが、本発明を、特許請求の範囲の技術的思想及び技術的範囲内の変更を伴って実施できることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナセルアセンブリの組立方法であって、
外部構造を準備するステップであって、前記外部構造は、少なくとも前記外部構造の前端によって画定されたハイライト部分と、ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントとの間に延在している、ステップと、
前記外部構造を内側バレルに連結するステップとを含む、ナセルアセンブリの組立方法。
【請求項2】
外部構造を準備する前記ステップは、
連続繊維強化熱可塑性材料及び連続繊維強化熱硬化性材料の少なくとも一方から作製された外部構造を準備するステップを更に含む、請求項1に記載のナセルアセンブリの組立方法。
【請求項3】
外部構造を連結する前記ステップは、
前記外部構造を内側バレルに連結するステップであって、前記外部構造は、前記外部構造の内側後方部分に配置された第1フランジを含み、前記第1フランジは、前記外部構造を前記内側バレルに連結するように構成されているステップを更に含む、請求項1に記載のナセルアセンブリの組立方法。
【請求項4】
前記外部構造をファンケースに連結するステップであって、前記外部構造は、前記外部構造の内側後方部分に配置された第2フランジを含み、前記第2フランジは、前記外部構造を前記ファンケースに連結するように構成されているステップを更に含む、請求項1に記載のナセルアセンブリの組立方法。
【請求項5】
外部構造を準備する前記ステップは、
前記外側後方部分の内面に配置された補強材を含む外部構造を準備するステップであって、前記補強材は、前記外部構造を構造的に支持するように構成されているステップを更に含む、請求項1に記載のナセルアセンブリの組立方法。
【請求項6】
前記外部構造を構造的に支持するように構成された補強材、隔壁、及び構造用フォームの少なくとも1つを準備するステップと、
熱可塑性溶接及び接着剤結合の少なくとも1つを介して、補強材、隔壁、及び構造用フォームの少なくとも1つを前記外側後方部分の内面に連結するステップとを更に含む、請求項1に記載のナセルアセンブリの組立方法。
【請求項7】
外部構造の前端によって画定されたハイライト部分と、
ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントを含む外側後方部分と、を含む、ナセルアセンブリの外部構造であって、
少なくとも前記ハイライト部分と前記ポイントとの間に前記ナセルアセンブリが延在している、ナセルアセンブリの外部構造。
【請求項8】
連続繊維強化熱可塑性材料及び連続繊維強化熱硬化性材料の少なくとも一方から作製された、請求項7に記載の外部構造。
【請求項9】
前記外部構造の内側後方部分に配置された第1フランジを更に含み、前記第1フランジは、前記外部構造を内側バレルに連結するように構成されている、請求項7に記載の外部構造。
【請求項10】
前記外部構造の内側後方部分に配置された第2フランジを更に含み、前記第2フランジは、前記外部構造をファンケースに連結するように構成されている、請求項7に記載の外部構造。
【請求項11】
前記外側後方部分の内面に配置され、前記外側後方部分を構造的に支持するように構成された補強材を更に含む、請求項7に記載の外部構造。
【請求項12】
前記外部構造を構造的に支持するように構成され、熱可塑性溶接及び接着剤結合の少なくとも1つを介して前記外側後方部分の内面に連結された、補強材、隔壁、及び構造用フォームの少なくとも1つを更に含む、請求項7に記載の外部構造。
【請求項13】
内側バレルと、
ハイライト部分及び外側後方部分から成る外部構造と、を含むナセルアセンブリであって、
前記ハイライト部分は、前記外部構造の前端によって画定され、前記外側後方部分は、前記ナセルアセンブリの最大直径によって画定されたポイントを含み、前記ナセルアセンブリは、少なくとも前記ハイライト部分と前記ポイントとの間に延在している、ナセルアセンブリ。
【請求項14】
前記外部構造は、連続繊維強化熱可塑性材料及び連続繊維強化熱硬化性材料の少なくとも一方から作製される、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項15】
前記外部構造の内側後方部分に配置され、前記外部構造を内側バレルに連結するように構成された第1フランジを更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項16】
前記外部構造の内側後方部分に配置され、前記外部構造をファンケースに連結するように構成された第2フランジを更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項17】
前記外部構造は、前記外側後方部分の内面に配置され、前記外側後方部分を構造的に支持するように構成された補強材を更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項18】
前記外部構造を構造的に支持するように構成され、熱可塑性溶接及び接着剤結合の少なくとも1つを介して前記外側後方部分の内面に連結された補強材を更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項19】
前記外部構造を構造的に支持するように構成され、機械的締結工程、熱可塑性溶接工程、及び接着剤結合工程の少なくとも1つを介して前記外側後方部分の内面に連結された隔壁を更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。
【請求項20】
前記外部構造を構造的に支持するように構成され、熱可塑性溶接及び接着剤結合の少なくとも1つを介して前記外側後方部分の内面に連結された構造用フォームを更に含む、請求項13に記載のナセルアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509440(P2012−509440A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537450(P2011−537450)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059996
【国際公開番号】WO2010/059301
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)