説明

一体構造グタペルカ技術

一体構造粒子含浸グタペルカ芯材技術であって、加工グタペルカ芯材とともにガラス異性体セメントなどの封泥剤の薄層を用いており、プレパラートに精密に合致し、これにより漏出を低減しかつ気密シールを達成する。この気密シールはグタペルカ中のシラン化粒子と適宜な化学シーラントの間に起きる単一ブロック結合により一段と高められる。グタペルカ材料の選択的な超低温処理によりその分子量が変化し、より剛性となり、根管内に傾斜グタペルカ芯材を装備する別個のキャリア芯材なしに一体構造芯材を形成する。加えて、芯材の傾斜本体は若干三次元的に網覆されてその面積と保定とが増大される。選択的な線区画印も芯材上に配置できる。芯材のヘッドは施与ビヒクルクラスプで握持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は歯内療法に関するものであり、特に歯内の根管空間の閉塞(または根管の傾斜歯根尖中へのシール材料の使用による根管シールの形成)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歴史的に見ると、根管空間を充填または閉塞する多くの方法があった。歯が完全に成形されて罹病神経組織が創面切除された後、根管の上下部分(冠状、歯根尖)からの汚染物の進入を防止すべく空間の充填が必要となる。その目的は根管システムの気密シールである。
【0003】
根管不全の最も共通の原因はミクロ漏出によるバクテリア汚染か処理中の汚染である。シールが良く達成されるほど歯の予後も大きくなる。
【0004】
初期には根管空間の充填には銀ポイントが使われたが、その形状と材料自身に伴う漏出の問題の故に、この技術は使われなくなって、グタペルカポイントの強制濃縮による冷式横充填に取って代わられた。
【0005】
グタペルカは天然に得られるゴムのトランス異性体であって、ポイントに改変することが可能である。グタペルカは一般に傾斜円錐形状(0.02傾斜などのような)に形成され、歯の根管の歯根尖端部の傾斜円錐形状を帯びる。可鍛性であるので、グタペルカはしばしば閉塞子として挿入される。
【0006】
閉塞子は先端を鋭くした器具であって、傾斜した末端と他端の筒状のハンドルを有している。可鍛性のグタペルカは閉塞子器具の傾斜末端の周りに巻かれてハンドルを手で握持する。しかし閉塞子を手で握持すると根管部位への閉塞子の引渡し作業の視野を妨げることになる。
【0007】
周りに巻かれたグタペルカを導入するための別個の傾斜キャリアーの使用は閉塞子からの加熱グタペルカの引き剥がしをしばしば不均一にする結果となる。
【0008】
したがって、この発明のような一体構造グタペルカ芯材が必要となり、それ自身のキャリアーとして機能し、根管の内壁を塗布しているセメントの薄層と強固に結合する。この発明のグタペルカ芯材は室温で使用され(加熱されない)るので、剥離や収縮に曝されることがない。
【0009】
商業ブランドに応じてグタペルカ芯材は18〜23%の純粋グタペルカを含有している。商標名「グタペルカ」で知られている充填材料(コーン)の残りに含まれているのはワックス、樹脂、フィラー、酸化亜鉛および硫化バリウムである。
【0010】
冷式横濃縮充填法ではセメントの海中に置かれた連続して相互に絡み合ったグタペルカコーンを用いている。セメントの処方は当初は酸化亜鉛オイゲノールセメントであった。一般的ではあるが、この方法は片面濃縮充填に起因する隙間と根管壁への適合の不正確に直面した。片面濃縮充填では根管システムの三次元シールを達成するのは非常に困難である。
【0011】
濃縮充填プロセスにおける次なる試みは熱可塑性法の導入であって、根管の歯根尖への挿入前に手動器具でグタペルカを加熱した。この方法のバックにある理論は、加熱グタペルカが流動して根管システムの不規則状態により容易に適合するだろうというものである。残念にも、加熱グタペルカはほんの数ミリ流動するだけで冷却により収縮してしまい、根管空間を意図通りには充填しないのである。したがって熱可塑性法では封泥剤の使用が奨励される。
【0012】
一見魅力的ではあるが、加熱グタペルカはそれ自身の制約を有している。冷却による収縮と方法自体の敏感さとが二つの制約である。
【0013】
閉塞プロセスにおける次なる発展は根管内側へのキャリアー(プラスチックまたは金属)上のα相グタペルカの導入である。キャリアー上のグタペルカの組合せは閉塞子と呼ばれる。この方法の成功はプレパラートの成功により左右されるという制約がある。
【0014】
プレパラートの傾斜が充分でないと、歯の構造がグタペルカをキャリアーから剥離して方法の成功を低減する。部分的にグタペルカが剥離したキャリアーはバクテリア汚染の危険を増大し予後を減ずる。
【0015】
最近、歯内療法は全てが収縮の問題を有する多くの加熱グタペルカ方法の証人となってきた。加えて、いくつかの方法は技術的に敏感で一般の実務者には加熱方法は特に冒険的であった。
【0016】
また、グタペルカを利用しないで、全根管をセメントまたはペーストで充填するという考えがあった。この方法は材料制御の欠如、漏出とバクテリア汚染を招く激しい収縮などの多くの問題を抱えていた。根管方法を再処理するとなると更なる改善という試みがあった。
【0017】
加えてより最近になって、大量のセメントと一緒に使われるグタペルカ芯材の思想が商品ENDO−EZE(登録商標)およびENDO−REZ(登録商標)樹脂シーラーを使った関連解剖学的歯内療法(AET)(商標)方法とともにUltradent社により提唱された。
【0018】
しかし根管プレパラートとコーンとの同時性の欠如がセメントとともに問題である。つまりセメントがプレパラートの壁またはグタペルカそれ自身に適合せずよく結合しないのである。Ultra Dent ENDO−EZE(登録商標)プレパラートおよびENDO−REZ(登録商標)樹脂シーラーを用いたAET(商標)手法には根管プレパラートと根管空間を充填するのに使われたグタペルカとの間に不一致がある。
【0019】
したがって、プレパラートとグタペルカそれ自身との間の精密な合致の欠如は過剰セメント(収縮するであろう)を招くか、またはグタペルカコーンが根管の冠状部分に引っ掛かりグタペルカによりシールしたい根管プレパラートの端部まで到達しないのである。これは漏出とバクテリア汚染を招来し、予後を低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし1993年にKoch他は、ガラス異性体セメントはその当初の構造で根管中でグタペルカシールを正しい位置に保持する単一コーンセメントとしての可能性があることを、示した。しかし他の者はまだガラス異性体セメントのグタペルカへの結合に懸念を示していた。
【0021】
換言すると、象牙質へのガラス異性体の結合は他のシーラーより優れてはいるが、グタペルカへの結合はまあまあのものであった。他の懸念は単一コーン手法における厚い層としての多量のセメントは薄層よりも収縮するだろうということである。
【0022】
この潜在的な問題は根管プレパラートとグタペルカコーンとの間の同時性の欠如である。一例として、0.02傾斜グタペルカコーンを0.04傾斜プレパラート中に配置しても良い結果は期待でいないのである。コーンは根管の傾斜および/または湾曲形状プレパラートになるべく精密に合致しなければならないのである。
【0023】
さらに歯内療法処置された歯の回復は根管プレパラートと予成形された合釘との間の同時性の欠如という問題に遭遇した。この不一致の結果はより大きな次元または異なる形状の合釘が用いられたときの合釘の理想的な保定および根の弱化よりは小さく、その結果回復と歯の長期間に亘る成功との妥協を来した。
【0024】
歯内療法処置された歯のさらなる修復の懸念は適正な冠状シールの欠如である。三次元シール(根管内でのグタペルカの頂部)の欠如はバクテリア汚染の進入を招く。バクテリア汚染は根管の不全を来し最近の歯内療法に重大な懸念を残している。
【0025】
かくしてこの発明の目的は、グタペルカ芯材と根管の加工プレパラートとの間に同時性の概念を導入し、両者が精密に合致するようにすることにある。
【0026】
この結果次代ガラス異性体セメントに組み合わされたグタペルカ芯材の合致により漏出は低減し根管の気密シールが達成される。このセメントとグタペルカの性質と構造とは独特なものであって、それがこの方法を従来の方法とは区別しているのである。
【0027】
特にこの発明の提唱におけるグタペルカはシラン化ガラスおよび/または複合物粒子の含有により改質されている。これら粒子はサブミクロン範囲のものであるのが理想的である。
【0028】
ガラス/複合物含浸グタペルカは同じガラスおよび/または複合物の粒子で表面処理でき、グタペルカそれ自身は有機シラン(例えば3−メトキシ−プロピル−トリメトキシ−シラン)などの結合剤で被覆できる。シラン化粒子含有の目的は、処理グタペルカのシラン化粒子と適宜な化学シーラーとの間の密接な化学結合を可能とすることにある。加えてグタペルカ芯材の歯への施与にはTRANSPORTER(商標)施与ビヒクルが使われて、歯内療法での使用が容易となる。
【0029】
この発明の他の目的は、歯内療法プレパラートの精密な合致を行なう合釘システムを有することにあり、これにより合釘とそれに伴う修復の成功が確実になる。
【0030】
この発明のさらなる目的は、根管の頂部にプラグを構築するシステム(キット)を有することにあり、これにより根管のシールが確実となる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
これら目的のためにこの発明においては、基本的なグタペルカコーンを得て、これを傾斜充填コーンおよびそれ自身キャリア芯材として機能するグタペルカ芯材に改質するものである。
【0032】
グタペルカなどの物質の分子量を選択的に変更することにより、該物質の性質を改変することが可能である。このグタペルカの分子量はそれ自身の構造的な芯材として機能するより剛性のコーンを生じるように改変された。
【0033】
プラスチックまたは金属製の別個の内部キャリアの必要なしに、グタペルカ芯材は、それ自身と歯の象牙質壁との間の封泥剤の超薄層は別として、準備された根管の全空間を占めるのである。
【0034】
加えて、芯の歯根尖16mmは好ましくは格子(若干三次元)フレームなどの組織で網覆され、面積ひいては保定を増加するのである。格子の他にも、組織化は波形、引剥し、不規則または平行マークなどの表面中断構造であってもよい。さらに網覆化は酸化アルミニウムなどの粒状物質を用いたサンドブラステイングによってもよい。
【0035】
さらなる選択としては、シラン化ガラスおよび/または複合物粒子の含有でグタペルカを改質させるものがある。これらの粒子は理想的にはサブミクロンの範囲にある。ガラス/複合物含浸グタペルカは同じガラスおよび/または複合物粒子で表面処理でき、グタペルカそれ自身は有機シラン(例えば3−メトキシープロピルートリメトキシーシラン)などの結合剤で被覆できる。
【0036】
シラン化粒子含有の目的は、処理されたグタペルカのシラン化粒子と適宜な化学シーラーントとの間の密接な化学結合を可能とすることにある。シレート(silate)被覆のメタクリレート基が重合反応により種々の樹脂と共有結合を形成した場合にこれが達成される。このシーラー材料は根管の歯面に密接な化学および/またはミクロ機械的結合を形成するのが理想的である。この結合象牙質・シーラーグタペルカ錯体は不浸透性の単一ブロックを形成して、充填された根管を気密シールするのである。
【0037】
処理粒子の他の有利な点は、より剛性でより精密に成形されたコーンを形成することである。この品質により単一芯材の閉塞(または充填)中の取扱いが非常に容易となる。充填粒子はコロイド状シリカとアルミノケイ酸塩粘土とカルシウム・フルロアルミノケイ酸塩ガラスとの組合せからなっており、重金属を含んでも含まなくてもよい。またこれらの粒子は粉砕されたシリカ・ガラス・樹脂複合物のコロイド状錯体を含んでいる。全ての処理材料の粒子寸法はサブミクロン範囲内であるのが理想的である。
【0038】
使用されるシーラーはガラス異性体セメント(ポリアルケノート酸セメント)、樹脂改質ガラス異性体セメントまたはUDMAおよびBIS−GMAを含んだ(限定されるものではないが)ポリメチル・メタクリレートに属する樹脂セメントである。これら材料の全ては上記したシラン化粒子と反応してシーラーと処理グタペルカの含浸粒子間の化学錯体を形成して所望の単一ブロック効果を結果することが知られている。
【0039】
光学的線境界長さ(mmで)も芯材上に配置される。これらの線境界は厚薄を交互にするか数値的に異なるものとする。一例としては厚線は奇数を薄線は偶数線を示す(または逆でもある)。
【0040】
加えて、芯材のヘッドは閉塞子により支持されたグタペルカを根管内に配置するためのアメリカ特許第6,371,764号に開示されたようなTRANSPORTER(商標)施与ビヒクルの握持部を受容するように成形されてきた。該特許においては、閉塞子の延在握持ハンドルの端部のクラスプがグタペルカを支持している閉塞子芯の上側筒状ハンドルを握持している。この発明においては、クラスプはグタペルカの単一片芯材の基端を握持して根管内へ挿入する。これにより根管内への芯材の配置が容易となる。
【特許文献1】アメリカ特許第6,371,764号
【0041】
グタペルカは選択的に超低温凍結処理にするのが望ましく、これにより芯材の面積を若干増加し、かつそのガラス異性体セメントへの保定を増加する。グタペルカの分子構造は超低温処理により改変されて、ガラス異性体セメントとグタペルカ芯材との間の接触をより密接にすることが可能となる。加えて超低温処理はグタペルカ芯材に剛性を付与して湾曲管中への配置を容易とする。
【0042】
この発明の技術思想に加えて、グタペルカ芯材は個別にシール中に包装するのが望ましく、これにより無菌状態が確実となりバクテリア汚染の潜在性が低減される。
【0043】
この単一芯材システムの他の思想としては封泥剤として機能する異なるセメントの選択がある。ポリメチル・ビニル・シロキサンなどのシロキサンやメタクリレートおよび他の樹脂型セメントは全てこの方法に用いることができる。前記のセメント、エポキシ樹脂およびガラス異性体もこの方法の要求に沿うものである。
【0044】
例えば合成または化学的に改質された天然樹脂シーラーも使用できる。一実施例では第2世代ガラス異性体セメントを用いるが、これは象牙質への決定的な結合とグタペルカ芯材との親和性を呈するものである。さらにこの特別セメントは亜鉛成分を含んでもよく、該亜鉛成分は封泥剤(シーラーとして機能する)の抗バクテリア効果を増大する。
【0045】
要約すると、この発明は歯内療法一体構造グタペルカ芯材を有するものであり、該芯材は適宜な封泥剤と組み合わされて根管プレパラート空間を三次元的にシールする。横管はより効果的にシーラーにより充填され、冷却により収縮を呈する熱可塑性閉塞方法より、収縮が少ないかまたは皆無である。他にもメチルアクリレートなどの歯内療法に使えるシーラーがあり、これは収縮するよりもむしろ膨脹して、熱可塑性グタペルカよりも成功裡に根管の横管を充填できる。
【0046】
グタペルカ芯材はハンドルを有しており、これが手または施与ビヒクルクラスプによる握持に適している。長さ決定部分がハンドルに結合しており、付随する深さマークは芯材が完全に根管内に挿入されたときを表示する。芯材の本体は長さ決定部分に結合した円錐部分を有している。
【0047】
傾斜円錐部分は網覆されて面積を増加するのが望ましく、円錐部分の表面を被覆するガラス異性体などのセメントとともに根管内に挿入される。網覆はいかなる組織化であってもよく、例えば長手方向に交差延在する凹凸を有したクロスハッチングまたは複数の個別に突出するバンプ、凹設された波形、酸化アルミニウムなどの物質によるサンドブラストなどの形であってもよい。
【0048】
選択的にグタペルカ芯材は超低温深凍結されてもよく、これにより傾斜コーンの表面への結合が増す。またグタペルカ芯材はシールに包装されるのが望ましい。芯材は一定の寸法で種々の傾斜の、または種々の寸法で一定の寸法の一連の芯材で提供されてもよい。
【0049】
芯材に合致する合釘システムは特定寸法で0.06傾斜プレパラートに完全に適合するように設計される。合釘は内小根部分と根管開口部への冠状である「ヘッド」成分とを有している。合釘はステンレス、チタン、チタン合金、繊維成分、セラミックなどいかなる一般の合釘材料から形成してもよい。
【0050】
三次元冠状シールの形成はこの発明のさらなる目的であって、自己制御ドリル(多寸法)とガラス異性体または樹脂充填剤などの充填材料の組合せで形成される。
【発明の効果】
【0051】
グタペルカ芯材技術は歯内療法のひとつの進歩であって、根管空間の閉塞を容易とするものである。根管2の加工完全傾斜0.03〜0.08(好ましくは0.04または0.06)プレパラート間の同時性とグタペルカ芯材10の精密な合致とにより歯内療法においての産業におけるような精密な適合を可能とする。この結果、根管2を迅速に充填できるのみならず(これにより治療時間を省き)、真の三次元的態様で充填できる。
【0052】
適合が精密なので、芯材10と歯構造1(根管2の内壁)との間の封泥剤シーラー8のセメント層が非常に薄くなる。封泥剤シーラー8の薄セメント層は冷却により顕著に収縮する加熱グタペルカに比べて遥かに収縮傾向が少なくなる。加えて、根管内部がETDAなどのキレート化剤などで条件付けされた場合には、象牙質管と横管とが充分に開かれてシーラー(封泥剤)が空間を充填できる。
【0053】
この結果、グタペルカと象牙質壁との間の結合(保定)がよりよくなり、横管もより効果的に閉塞され得る。また封泥剤の同じ粒子に結合するシラン化粒子によるグタペルカの改質は収縮の減少を招来する。この結果、他の従来方法に比べて、グタペルカ芯材技術により真の気密シールの達成が近くなる。芯材10の特有な性質が芯材10の超低温処理と相俟って種々の利点を齎すのである。
【0054】
芯材10のハンドルのデザインは特有であって、歯1の準備された根管2内への芯材10の配置を容易とする。またハンドル12は同じグタペルカ材料(芯材10の残りの部分と同じである)から形成され、したがって不安定に粘着するグタペルカを使った別個の固体芯が不要となる。シーラーの粘度の故にこれは重要である。
【0055】
組織化された網覆表面20(例えば格子構造または波形化など)は面積を増大しセメントなどの封泥剤シーラー8の芯材10への保定を増大する。これにより封泥剤シーラー8(セメントなど)と芯材10との間の結合を高め、機械的なロックをも形成する。
【0056】
芯材材料(グタペルカ)の選択的な超低温処理は従来のグタペルカでは見られない利点を作る。グタペルカをより剛性とすることにより、超低温処理は芯材10をしてこの方法と結合してシーラー(セメント)の粘度とよく作用させる。剛性の高いグタペルカは、別個の剛性キャリア芯なしに、芯材10に予成形することを可能とする。これにより根管の「閉塞」が容易となる。また剛性グタペルカは取扱いが容易であり、根管空間への挿入も容易となり、この結果芯材10の一体性を保つ。
【0057】
芯材10上の選択的な長さマーク14は根管2内への芯材10の配置を容易とし、処置を成功に導く。パッケージ6への各芯材10の包装は根管空間2の閉塞作業中でのバクテリア汚染を低減する助けとなる。この殺菌方法の結果閉塞作業は予後がよくなる。
【0058】
この発明においては以上の他にも種々の実施例が採用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
図1〜9に示すように、芯材10は3つの異なった構造構成要素を有しており、これらは全てグタペルカなどの同じ材料から形成されている。
【0060】
芯材10の頂部(基端)はハンドル12を有しており、該ハンドル12は図5Bに示すように芯材TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプ4に精密に適合するように加工されている。この精密な適合により、準備された歯1の根管2に挿入されるときに、ハンドル12ひいては芯材10が回転または変位することが防止されている。
【0061】
芯材10は根管2内に挿入されて上側開口部2aの下の全部をシールする。その上には歯1の上房室2bがあり、これは歯着色樹脂およびクラウン合釘(図示せず)により充填されている。
【0062】
ハンドル12によりTRANSPOTER(商標)施与ビヒクル4はその機能を発揮でき、誤挿入の危険なしに芯材10の歯1の根管2内への配置を容易としている。
【0063】
長さ決定部分14(深さマーク14aを具えた)は芯材10の他構成要素であって、この深さマーク14aは奇数長さを示す太線や偶数長さを示す細線、またはその逆に、などの測定印を有しているのが望ましい。長さは最初の太線14においての16mmから芯材10のハンドル12に当接する最後の太線14aの27mmまで及んでいる。
【0064】
マーク14aを芯材10の円錐形コーン18の基端における円筒形ハンドル12の肩部16まで延在させることにより追加の2mmを得ることができる。
【0065】
グタペルカ芯材の第3の構成要素は網覆フレーム20であって、最も末端(芯材10の歯根尖22)から16mm線区画点24まで延在している。このフレーム20には種々の組織20aが施されており、これは一般に根管2そのものであり、その表面は網覆されて表面が増大しガラス異性体セメントなどの封泥剤シーラー8の芯材10への保定を増大している。
【0066】
これに関連して図8に示すように、封泥剤8は芯材10の傾斜部分の外側と歯管空間を画定している象牙質材料との間の超薄層として施与するのが望ましい。例えば、封泥剤8は一般に該空間を充填するために施与され、約0.01〜1.0mmである。この寸法から偏倚している天然解剖学的不規則部分は別であるが、該不規則部分も封泥剤8により充填される。芯材10の超低温処理によりさらなる粘着性が得られる。
【0067】
施与ビヒクル4は根管2内への芯材10の正確な挿入を容易とする保持装置である。正確さが増加するのに加えて、施与ビヒクル4は歯の根管2への芯材10の挿入の手助けとなり、誤方向付けひいては芯材10からセメントなどの封泥剤シーラー8の剥離の危険をなくする。
【0068】
このシステムのさらなる特徴は芯材10の製造に用いられるグタペルカの超低温処理である。深凍結プロセスにより、超低温処理はグタペルカに剛性を付与し、芯材10の面積が増大し、これにより封泥剤シーラー8(ガラス異性体セメントなど)と芯材10との間の接触が密接となる。この結果保定も大きくなる。
【0069】
超低温は化合物の分子構造を改変し、オーステナイト状態よりはマルテンサイト状態にする。したがって封泥剤シーラー8などの被覆はオーステナイト状態よりマルテンサイト状態に親和性を有している。これにより芯材10の封泥剤シーラー8への結合が増大する。
【0070】
この手法の医療への応用は根管空間2内における加工完全傾斜0.03〜0.08(好ましくは0.04〜0.06)プレパラートの形成を結果する。加工準備は回転ファイルシーケンスの使用により達成され、該ファイルは管を予測・適合状に準備し、完全傾斜のプレパラート(0.03〜0.08mm)を形成する。
【0071】
完全傾斜プレパラートを生じるファイルの例としては、Dentsply Tulsa Dental社のPROFILEとSybronEndo社のK−3がある。機器の完全な準備とデブリードマンに続いて、適宜な寸法の芯材10が選択される。一例を挙げると、完全傾斜0.06プレパラート、歯根尖寸法"20"(ISO)の最終的なプレパラートが加工される場合、"20/0.06"グタペルカ芯材が選択される。
【0072】
芯材の選択に続いて、セメントなどの適宜な封泥剤シーラー8が混合され(ガラス異性体)、根管2内に挿入されて封泥剤シーラー8(セメント)の薄層が形成される。ついで選択された芯材10がそのシールパッケージ6中に部分的に露出され施与ビヒクル4により握持され、ついで施与ビヒクル4により無菌状態を保ったままで消毒パッケージから完全に取り出される。
【0073】
ついで選択された封泥剤(根管シーラー8)が芯材10上、特に芯材10の網覆領域20上に配置される(歯根尖16mm)。芯材10はシーラー8(セメント)で穏やかに拭くことにより混合シーラー8で被覆するのが望ましい。
【0074】
芯材10は歯に持ってこられて準備された根管2内に適宜な深さマークまで挿入される。数分後芯材10の下側傾斜部分が管2の開口部2aで加熱装置により円筒状ハンドル12と長さマーク部分14とから切断され、軽い垂直濃縮圧力が芯材10に印加される。
【0075】
図6D、6Eに冠状シールの他の実施例を示す。これは結合回復材料のカバー32によるものであって、これには例えば"ENDO−KAP"(商標)または"ENDO−SEAL"(商標)などが用いられ、これらは歯回復材料であってガラス異性体や結合樹脂であり、切断芯材10により占められた充填根管空間の頂部上の冠状態からのグタペルカ芯材除去により、準備された凹部30内に配置される。これにより漏出と根管充填の冠状態のバクテリア汚染が防止されるとともに、二次バクテリア進入に起因する再処理が不要となる。
【0076】
さらに図6Fに示す歯3の充分な回復のために合釘/芯が必要とされる場合には、この発明は図6Hに示す合釘40を具えた合釘システムを有しており、これが歯3の完全傾斜歯内療法プレパラートに合致する。これにより根管4のプレパラートと合釘40との間に同時性(例えば0.06傾斜合釘が0.06傾斜歯内療法プレパラートに合致する)が保たれる。
【0077】
根管4内には合釘40の下側にグタペルカの可変部分42が残っており、これが合釘40に歯根尖に配置されている。これにより歯根尖シールを確実にし、歯3の歯根尖からの汚染を防止する。合釘40はガラス異性体または樹脂型シーラーなどの封泥剤で塗り固められ、図6Hに示す合釘40の冠状部分は冠状構築材料44により被覆される。合釘40と芯材構築44の合釘/芯回復はクラウンの適正な保定を確実にし、かつミクロ漏出への冠状シールとして機能する。
【0078】
さらなる選択としては、図6Fの根管内の湾曲などの顕著な表面不規則部分がある場合には、プラニング(planing)装置があり、0.06プレパラートなどのプレパラートを精製する。例えば図6Gに示すような傾斜非可撓性合釘40を受容できるようにする。これにより根管4のプレパラートとセメント合釘40との間の同時性を有効または確実にする。
【0079】
図9に示すように、芯材10は適宜な封泥剤8と一緒に歯5の根管6のプレパラート空間およびそこから延在する横管7を三次元的な方法で適宜シールする。これらの横管7はシーラー8により効果的に充填され冷却による収縮を呈する熱可塑性閉塞方法よりも収縮を全んど呈さないか全く呈さない。メチルアクリレートなどのシーラー8は収縮よりも若干膨張して熱可塑性グタペルカよりも成功裡に根管6の横管7を充填する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の円錐状グタペルカ芯材の前面図であり、頂部と筒状ハンドルと線マークと下側傾斜網覆管部分を示している。
【図1A】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図1B】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図1C】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図1D】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図1E】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図1F】この発明の6個のグタペルカ芯材であって、各芯材は選択的なISO色マークにより芯材のハンドル頂部と側面に個別にマークされている。
【図2】この発明のグタペルカ芯材の図1の鏡像である側面図であり、ハンドルの形状、長さ(深さ)領域、傾斜内管を示している。
【図2A】この発明のグタペルカ芯材の断面平面図であり、図2中線「2A−2A」に沿って取ってあり、上部の冠状端部から下部の歯根尖までの芯材の直径の減少を示している。
【図2B】この発明のグタペルカ芯材の断面平面図であり、図2中線「2B−2B」に沿って取ってあり、上部の冠状端部から下部の歯根尖までの芯材の直径の減少を示している。
【図2C】この発明のグタペルカ芯材の断面平面図であり、図2中線「2C−2C」に沿って取ってあり、上部の冠状端部から下部の歯根尖までの芯材の直径の減少を示している。
【図2D】この発明のグタペルカ芯材の断面平面図であり、図2中線「2D−2D」に沿って取ってあり、上部の冠状端部から下部の歯根尖までの芯材の直径の減少を示している。
【図3】この発明のグタペルカ芯材の挿入に具えた完全傾斜0.06根管プレパラートの部分断面図である。
【図3A】この発明のグタペルカ芯材の図3中における根管の端部からの同じ長さにおける斜視図である。
【図4】この発明のグタペルカ芯材上の長さ決定マーク(16〜27mm)の斜視図である。
【図4A】この発明のグタペルカ芯材の傾斜本体の頂部に取り付けられたハンドル上の肩から決定できる追加長さ2mmの斜視図である。
【図5】この発明のグタペルカ芯材のハンドルの側面図である。
【図5A】芯材TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプを示す図である。
【図5B】芯材TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプの平面図である。
【図5C】この発明の芯材の平面図である。
【図6】芯材TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプの一部断面側面図である。
【図6A】芯材TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプの一部断面側面図である。
【図6B】TRANSPORTER(商標)施与ビヒクルクラスプの一部断面側面図である。
【図6C】ハンドルと頂部の一部断面側面図である。
【図6D】ハンドルと頂部の他の実施例の一部断面側面図である。
【図6E】図6Dの他の実施例の一部断面側面図である。
【図6F】同じく他の実施例の一部断面拡大図である。
【図6G】さらに他の実施例の一部断面側面図である。
【図6H】合釘の側面図である。
【図6J】合釘の側面図である。
【図7】この発明のグタペルカ芯材のパッケージを示す図である。
【図8】この発明の顕微鏡的部分のシミュレーション走査電子顕微鏡(SEM)断面図である。
【図9】多くの横管を有した歯の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1: 歯
2: 根管
4: 施与ビヒクル
8: シーラー
10: 芯材
12: ハンドル
14: マーク部分
20: 網覆フレーム
22: 歯根尖
40: 合釘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根管プレパラートをシール可能であって、グタペルカ円錐体を有しており、該円錐体はグタペルカと少なくとも1個のシラン化ガラスおよび/または複合物粒子を有していることを特徴とする歯内療法一体構造グタペルカ芯材。
【請求項2】
粒子がコロイド状シリカ、アルミノケイ酸塩粘土およびカルシウム・フルロアルミノケイ酸塩ガラスからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の芯材。
【請求項3】
さらにガラス異性体セメントを含んだシーラーを有していることを特徴とする請求項1に記載の芯材。
【請求項4】
ガラス異性体セメントがポリアルケノート酸ガラス異性体セメントであることを特徴とする請求項3に記載の芯材。
【請求項5】
セメントが改質樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の芯材。
【請求項6】
セメントがポリメチル・メタクリレートであることを特徴とする請求項3に記載の芯材。
【請求項7】
メチル・メタクリレートがウレタン・ジメタクリレート(UDMA)であることを特徴とする請求項6に記載の芯材。
【請求項8】
メチル・メタクリレートがビスグリシジル・メタクリレート(BIS−GMA)であることを特徴とする請求項6に記載の芯材。
【請求項9】
グタペルカと少なくとも1個のシラン化ガラスおよび/または複合物粒子とを有していることを特徴とする歯科シーラント混合物。
【請求項10】
粒子がコロイド状シリカ、アルミノケイ酸塩粘土およびカルシウム・フルロアルミノケイ酸塩ガラスからなる群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の歯科シーラント混合物。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図5】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図6F】
image rotate

【図6G】
image rotate

【図6H】
image rotate

【図6J】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2006−512162(P2006−512162A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565693(P2004−565693)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041237
【国際公開番号】WO2004/060190
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505243227)
【出願人】(505243238)
【出願人】(505243249)
【Fターム(参考)】