説明

一塩基多型を含む乳癌に関連したポリヌクレオチド、それを含むマイクロアレイ及び診断キット、並びにそれを利用した乳癌の診断方法

本発明は、配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含み、前記ヌクレオチド配列のうち101番目の塩基を含むポリヌクレオチド、またはその相補的ポリヌクレオチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、乳癌に関連したポリヌクレオチド、それを含むマイクロアレイ及び診断キット、並びに乳癌の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
全ての生物のゲノムは、自然発生的突然変異を経験してきており、継続的進化の過程で祖先の核酸配列の変異形態を発生させる(Gusella,Ann.Rev.Biochem.55,831−854(1986))。変異形態は、先祖の形態に比べて、進化的に利益または不利益を与えるか、またはその中間の場合もありうる。ある場合には、変異形態が致死的な不利益を与えて子孫に受け継がれない。他の場合では、変異形態が種に進化上の利益を与え、ついには、その種のほとんどの個体のDNAに変異形態が組み込まれ、有利な先祖形態となる。多くの場合、この先祖形態及び変異形態は共に生き残って、種の集団の中で共存する。複数形態の配列の共存によって、多型が発生する。
【0003】
このような多型には、制限断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism:RFLP)、マイクロサテライト(Short Tandem Repeats:STR)、ミニサテライト(Variable Number Tandem Repeat:VNTR)、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)が知られている。このうち、SNPは一塩基多型であって、同じ種の個体における単一ヌクレオチドの変異形態を取る。一塩基多型がコーディング領域の配列中に発生すると、多型形態のいずれによっても欠損蛋白質または変異蛋白質が発現しうる。一方、非コーディング領域の配列に一塩基多型が発生することもある。これらの中には、欠損蛋白質または変異蛋白質の発現を招くものもある(例えば、欠陥のあるスプライシングの結果として)。また、一塩基多型の中には、表現型に何らの影響を及ぼさないものもある。
【0004】
一塩基多型は、人間の場合、約300−1,000bpごとに1回の頻度で発生するものと知られている。これらの一塩基多型が疾病のような表現型に影響を及ぼす場合、前記一塩基多型を含むポリヌクレオチドは、このような疾病の診断にプライマーまたはプローブとして利用できる。前記一塩基多型に特異的に結合するモノクローナル抗体もやはり、疾病の診断に使われる。現在、色々な研究機関で一塩基多型の分析及びその機能の分析に関する研究が行われている。このようにして発見された一塩基多型の塩基配列及びその他の実験結果がデータベース化して公開されており、誰でも研究に利用できる。
【0005】
しかし、このような一塩基多型により、単に人間のゲノムまたはcDNA上に一塩基多型が存在するということが発見されただけであって、これらが表現型に及ぼす影響を明らかにしたものではなかった。発見された一塩基多型のうちほんの一部についてはその機能が明らかにされているが、ほとんどについてはその機能が明らかにされていない。
【0006】
乳癌は、従来技術においては、X線、超音波診断、生化学的及び分子生物学的方法によって診断可能である。このうち、分子生物学的方法は早期診断の目的で利用できていない。現在、乳癌に関連するSNPについては、Myriad社により、BRCA1及びBRCA2遺伝子における約3ないし30個のSNP部位が確認されている。しかし、これらの部位のほとんどは、既に乳癌と診断された患者の遺伝子型を確認するために使われており、確認に要するコストも高い。したがって、新たな乳癌に関連したSNP部位を発見することが強く要求されている。
【発明の開示】
【0007】
発明の開示
発明が解決しようとする課題
本発明は、乳癌に関連する一塩基多型(SNP)を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
本発明はまた、前記乳癌に関連する一塩基多型を含むポリヌクレオチドを含む、マイクロアレイまたは乳癌診断用キットを提供する。
【0009】
本発明はまた、乳癌の診断方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含み、前記ヌクレオチド配列のうち101番目の塩基を含むポリヌクレオチド、またはその相補的ポリヌクレオチドが提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、本発明のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、本発明のポリヌクレオチドを含むキットが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、検体から核酸試料を得る段階と、配列番号1ないし5のポリヌクレオチドまたはそれらの相補的ポリヌクレオチドのうち一以上の多型部位(101番目の塩基)のヌクレオチド配列を決定する段階と、を含む乳癌の診断方法が提供される。
【0015】
課題を解決するための手段
本発明は、配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含み、前記ヌクレオチド配列のうち101番目の塩基を含むポリヌクレオチド、またはその相補的ポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号1ないし5のヌクレオチド配列からなり、多型部位を含む群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含む。前記ポリヌクレオチドの長さは、配列番号1ないし5の多型部位を含む10個以上のヌクレオチドを含む。前記長さは、10ないし400ヌクレオチド、好ましくは、10ないし100ヌクレオチド、さらに好ましくは、10ないし50ヌクレオチドである。ここで、前記多型部位は、各配列の101番目の位置である。
【0017】
前記配列番号1ないし5のポリヌクレオチドは、多型配列である。多型配列とは、ヌクレオチド配列中に一塩基多型(SNP)を有する多型部位を含む配列を意味する。前記多型部位とは、SNPが前記多型配列中に発生する部位を意味する。前記ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAがありうる。
【0018】
本発明において、前記配列番号1ないし5の多型配列における多型部位(101番目の塩基)は、乳癌との関連性がある。このことは、乳癌患者及び正常者の血液試料から得られたDNAを配列分析することにより確認することができる。本発明において、患者群及び正常群はそれぞれ300人を含むが、この300人は、閉経期前後を勘案して、40歳以下と55歳以上との年齢層に分けられる。遺伝子型分析に用いられた群(集団)の規模は、次の表の通りである。
【0019】
【表1】

【0020】
表2及び表3は、配列番号1ないし5の多型配列の乳癌との関連性、及び前記多型配列の特徴を表したものである。
【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
表2及び表3で、SMBC_025は、40歳以下の年齢層で発見されたマーカーであり、SMBC_048は、55歳以上の年齢層で発見されたマーカーである。
【0026】
表2及び表3において、各カラムが意味するところは、次の通りである。
【0027】
SNPは、SNP多型部位の塩基である。ここで、A1及びA2は、均質的MassEXTENTION(登録商標)(hME)技術(シーケノム社)による実験的設計の結果として、それぞれ質量の小さい対立遺伝子及び質量の大きい対立遺伝子を表しており、実験の便宜上任意に命名したものである。
【0028】
SNP配列は、SNP部位を含む配列、すなわち101番目の位置にA1またはA2対立遺伝子を含む配列を表したものである。
【0029】
対立遺伝子頻度の欄でcas_A2、con_A2及びデルタは、それぞれ疾病群におけるA2対立遺伝子の頻度、正常群におけるA2対立遺伝子の頻度、及び前記cas_A2とcon_A2との差の絶対値を表すものである。ここで、cas_A2は、(A2A2遺伝子型の頻度×2+A1A2遺伝子型の頻度)/(疾病群のサンプル数×2)であり、con_A2は、(A2A2遺伝子型の頻度×2+A1A2遺伝子型の頻度)/(正常群のサンプル数×2)である。
【0030】
遺伝子型の頻度は、各遺伝子型の頻度を表すものであって、cas_A1A1、cas_A1A2及びcas_A2A2、並びにcon_A1A1、con_A1A2及びcon_A2A2は、それぞれ疾病群と正常群とでA1A1、A1A2及びA2A2の遺伝子型を有する人間の数を表す。
【0031】
カイ二乗(df=2)は、自由度が2であるカイ二乗値を表したものであって、chi−valueはカイ二乗の値であり、p−valueは前記chi−valueに基づいて算出される。chi−exact−p−valueは、カイ二乗検定についてのフィッシャーの正確確率検定のp−valueを表す。遺伝子型の数が5より小さい場合、一般的なカイ二乗検定の結果が不正確となりうる。このように、chi−exact−p−valueは、フィッシャーの正確確率検定においてさらに正確な統計的有意性(p−value)を検定するのに用いられる変数である。本発明では、p−value≦0.05である場合、疾病群と正常群との遺伝子型は同一ではなく、すなわち、疾病群と正常群との間に有意差があると判断される。
【0032】
リスク対立遺伝子では、基準とする対立遺伝子がA2の場合、疾病群におけるA2の頻度が正常群におけるA2の頻度より大きければ(すなわち、cas_A2>con_A2)、A2をリスク対立遺伝子とし、逆の場合、すなわち疾病群におけるA1の頻度が正常群におけるA1の頻度より大きければ(すなわち、cas_A1>con_A1)、A1をリスク対立遺伝子とする。
【0033】
オッズ比は、正常群におけるリスク対立遺伝子を有する確率に対する、疾病群におけるリスク対立遺伝子を有する確率の比を表す。本発明では、マンテル−ヘンツェルオッズ比法を用いる。CIは、(下限信頼区間、上限信頼区間)という形態での、オッズ比の95%の信頼区間を表す。1が前記信頼区間に該当すると、リスク対立遺伝子と疾病との有意な関連性はないと判断される。
【0034】
HWE状態は、ハーディ−ワインベルグ平衡(HWE)の状態を表すものであって、con_HWE及びcas_HWEはそれぞれ、正常群及び疾病群におけるHWEの存在を示す。カイ二乗(df=1)検定で、chi−value=6.63(p−value=0.01、df=1)を基準として、chi−valueが6.63より大きい場合にはハーディ−ワインベルグ非平衡(HWD)と判断され、chi−valueが6.63より小さい場合にはHWEと判断される。
【0035】
表2及び表3に示したように、本発明の配列番号1ないし5の多型マーカーは、対立遺伝子出現頻度の期待値と観察値との間でのカイ二乗分析の結果として、95%の信頼区間で0.025〜0.921のchi−exact−p−valueを有し、多型マーカーが全て対照群と有意に異なることを示しており、また、多型マーカーは1.06〜4.06のオッズ比を有し、乳癌との相関性があることを示している。
【0036】
本発明の配列番号1ないし5のSNPは、患者群と正常群とで有意な出現頻度の差を示している。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、乳癌の診断や治療、または遺伝子のフィンガープリント解析に効果的に利用できる。具体的には、乳癌診断用のプライマーまたはプローブとして、さらには乳癌治療用のアンチセンスDNAまたは組成物として利用できる。
【0037】
本発明はまた、配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含み、多型部位のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドとハイブリダイズする、乳癌診断用の対立遺伝子特異的ポリヌクレオチドを提供する。
【0038】
前記対立遺伝子特異的ポリヌクレオチドとは、各対立遺伝子と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを意味する。すなわち、配列番号1ないし5の多型配列のうち、多型部位の塩基が特異的に区別できるように、前記対立遺伝子特異的ポリヌクレオチドはハイブリダイズされる。ここで、ハイブリダイゼーションとは、厳格な条件、例えば、1M以下の塩濃度及び25℃以上の条件で通常行うことができる。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mM リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH7.4)及び25〜30℃という条件が、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションに適しうる。
【0039】
本発明において、前記対立遺伝子特異的ポリヌクレオチドはプライマーでありうる。ここで、プライマーとは、適切な温度での適当な条件(例えば、4つの異なるヌクレオシド三リン酸、及びDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合剤の存在)の下、適当なバッファ中で鋳型特異的DNA合成を開始可能な一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。前記プライマーの長さは、使用目的によって変わりうるが、通常、15ないし30ヌクレオチドである。短いプライマー分子は一般的に、鋳型と安定にハイブリダイズするために低温を要求する。プライマー配列は、必ずしも鋳型と完全に相補的である必要はないが、鋳型とハイブリダイズできる程度に相補的でなければならない。前記プライマーは、配列番号1ないし5の多型部位(101番目の塩基)と対応するように、その3’末端が配列されることが好ましい。前記プライマーは、多型部位を含む標的DNAとハイブリダイズし、前記プライマーと完全な相同性を示す対立遺伝子の増幅を開始する。このプライマーは、反対側でハイブリダイズするもう一方のプライマーと対をなして用いられる。増幅は上記した二つのプライマーを起点として行われるが、これは、特定対立遺伝子が存在するということを示すものである。本実施形態のプライマーには、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction:LCR)で用いられるポリヌクレオチド断片を含む。
【0040】
本発明において、前記対立遺伝子特異的ポリヌクレオチドはプローブであってもよい。ここで、プローブとはハイブリダイゼーションプローブを意味しており、核酸の相補鎖に配列特異的に結合できるオリゴヌクレオチドのことである。このようなプローブには、NielsenらによるScience 254,1497−1500(1991)で開示されたペプチド核酸が含まれる。本発明のプローブは、対立遺伝子特異的プローブである。同種の二つのメンバーに由来するDNA断片中に多型部位が存在し、前記対立遺伝子特異的プローブは一つのメンバーに由来するDNA断片とはハイブリダイズするが、他者に由来するDNA断片とはハイブリダイズしない。この場合、ハイブリダイゼーションの条件は、対立遺伝子間のハイブリダイゼーション強度の点で有意な差を示することによって、対立遺伝子のうち一つのみとハイブリダイズするよう十分に厳しいものでなければならない。本発明のプローブは、中央部位(すなわち、15ヌクレオチドからなるプローブにおける7番目の位置、または16ヌクレオチドからなるプローブにおける8番目若しくは9番目の位置)が上記配列の多型部位を有するように配列されることが好ましい。このようにして、対立遺伝子間のハイブリダイゼーションの差が生じうる。本発明のプローブは、対立遺伝子等を検出するための診断方法に使用できる。前記診断方法には、サザンブロットのような核酸のハイブリダイゼーションに基づく検出方法が含まれる。DNAチップを利用した方法では、前記プローブをDNAチップの基板にあらかじめ結合させておくことができる。
【0041】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。前記マイクロアレイは、DNAまたはRNAのポリヌクレオチドを含むものがありうる。前記マイクロアレイは、本発明のポリヌクレオチドを含むことを除いては、従来のマイクロアレイと同じ構成を有する。
【0042】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むキットを提供する。前記キットには、本発明のポリヌクレオチドだけでなく、重合反応に必要な試薬、例えば、dNTP、各種の重合酵素、発色剤等を含まれうる。このようなキットは、乳癌の診断に使用できる。
【0043】
また、本発明は、検体から核酸試料を得る段階と、配列番号1ないし5のポリヌクレオチドまたはそれらの相補的ポリヌクレオチドのうち一以上のポリヌクレオチドの多型部位(101番目の塩基)のヌクレオチド配列を決定する段階と、を含む乳癌の診断方法を提供する。ここで、前記乳癌の診断方法は、前記多型部位のヌクレオチド配列が前記表2及び表3に表したようなリスク対立遺伝子の一以上と同じである場合、乳癌の危険が高いと判断する段階を更に含みうる。
【0044】
前記方法のうち、まず、検体から核酸を得る段階は、従来のDNA分離方法によって行われる。例えば、核酸は、ポリメラーゼ鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)を通じて標的核酸を増幅し、増幅産物を精製して得られる。その他、LCR(Wu及びWallace、Genomics 4,560(1989)、Landegrenら、Science 241,1077(1988))、転写増幅(Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,1173(1989))、自家維持配列複製(Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1874(1990))及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)を用いることができる。最後の2つの方法は、等温転写に基づく等温反応に関連しており、30倍または100倍の一本鎖RNA及び二重鎖DNAを生成する。
【0045】
本発明の方法の一実施形態では、前記多型部位のヌクレオチド配列を決定する段階は、本発明の配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択される10個以上の連続ヌクレオチドを含み、前記多型部位(101番目の塩基)のヌクレオチドを含む乳癌の診断用または治療用ポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドが固定化されているマイクロアレイに前記核酸試料をハイブリダイズさせる段階と、前記ハイブリダイゼーションの結果を検出する段階とを含む。
【0046】
プローブポリヌクレオチドを基板上に固定化してマイクロアレイを製造する方法は、本技術分野において公知である。乳癌に関連する、本発明のプローブポリヌクレオチドを基板上に固定化する段階もまた、従来技術を用いて容易に製造しうる。また、マイクロアレイ上での核酸のハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション結果の検出は、本技術分野において公知である。例えば、核酸試料を蛍光物質、例えば、Cy3及びCy5を含む検出可能な信号を発生可能な標識物質で標識した後、マイクロアレイ上でハイブリダイズし、続いて、前記標識物質から発生する信号を検出することによって、ハイブリダイゼーションの結果を検出できる。
【0047】
本発明の方法の他の実施形態では、決定のなされた前記多型部位のヌクレオチドが、101番目の多型部位のヌクレオチドがそれぞれA、C、A、G及びAである配列番号1ないし5からなる群から選択された一以上の多型部位に対応する場合、前記検体は乳癌にかかる確率の高い危険群に属すると判定される段階をさらに含みうる。前記リスク対立遺伝子を有する核酸配列が一つの検体から多く検出される場合、危険群に属する確率は高いと判断できる。
【0048】
発明の効果
本発明のポリヌクレオチドは、乳癌の診断及び治療、並びに遺伝子のフィンガープリント解析に用いることができる。
【0049】
また、前記ポリヌクレオチドを含むマイクロアレイまたはキットによれば、乳癌を効果的に診断できる。
【0050】
本発明の乳癌の診断方法によれば、乳癌の存在または危険(おそれ)の有無を効果的に診断できる。
【実施例】
【0051】
最良の形態
以下、本発明を、実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例
実施例1
本実施例では、表1に表したような集団の規模を有する、300人の乳癌患者を含む患者群及び正常群の血液からDNAを分離し、特定の一塩基多型(SNP)の出現頻度を分析した。本実施例のSNPは、公開されたデータベース(NCBI dbSNP:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)またはシーケノム社のrealsnp.com(http:://www.realsnp.com/)から選択されたものである。このようにして選択されたSNPに近接したプライマーを利用して、試料中の単一ヌクレオチド配列を分析した。
【0053】
1.DNA試料の調製
乳癌患者及び正常者より採取した血液からDNAを抽出した。DNA抽出は、公知の抽出方法(Molecular cloning:A Laboratory Manual,p392,Sambrook,Fritsch and Maniatis,2nd edition,Cold Spring Harbor Press,1989)及び商業用キット(Gentrasystem)の説明書に従ってなされた。UV(260/280nm)を用いて測定された、1.7以上の純度を有するDNAだけを抽出されたDNAから選抜し、使用した。
【0054】
2.標的DNAの増幅
分析しようとするSNPを含む一定のDNA領域を有する標的DNAを、PCRを利用して増幅した。PCRは一般的な方法で行われ、その条件は次の通りであった。まず、標的ゲノムDNAを2.5ng/mlに調製した。次いで、以下のPCR反応液を調製した。
水(HPLCグレード) 2.24μl
10×バッファ(15mM MgCl、2,25mM MgCl含有) 0.5μl
dNTPミックス(GIBCO)(25mM/各) 0.04μl
Taq pol(HotStar)(5U/μl) 0.02μl
フォワード/リバースプライマーミックス(1μM/各) 0.02μl
DNA 1.00μl
総反応体積 5.00μl
ここで、前記フォワード及びリバースプライマーは、公知のデータベースのSNPの上流及び下流から、適当な位置で選択された。前記プライマーを表4に挙げた。
【0055】
サーマルサイクル反応は、95℃で15分間維持し、続いて95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で1分を45回反復し、続いて72℃で3分間維持した後、4℃に保管した。その結果、200ヌクレオチド以下の長さを有する標的DNA断片を得た。
【0056】
3.増幅した標的DNAについてのSNP分析
標的DNA断片についてのSNP分析は、シーケノム社の均質的MassExtension(hME)技術を利用して行った。hMEの原理は、次の通りである。まず、標的DNA断片についてのSNP直前までの塩基に相補的なプライマー(伸長プライマー)を調製した。次いで、前記プライマーを標的DNA断片にハイブリダイズさせ、DNAの重合を行わせた。このとき、対象SNP対立遺伝子のうち、第1対立遺伝子塩基(例えば、A対立遺伝子)に相補的な塩基を反応液中に添加した後、重合を停止させる試薬(例えば、ddTTP)を添加した。その結果、標的DNA断片に第1対立遺伝子(例えば、A対立遺伝子)が存在する場合には、前記第1対立遺伝子に相補的な塩基(例えば、T)のみが付加された産物を得た。一方、標的DNA断片に第2対立遺伝子(例えば、G対立遺伝子)が存在する場合には、前記第2対立遺伝子に相補的な塩基(例えば、C)が付加され、最も近接した第1対立遺伝子塩基(例えば、A)まで伸長した産物を得た。前記プライマーから伸長した産物の長さを質量分析を通じて決定することによって、標的DNAに存在する対立遺伝子の種類を決定した。具体的な実験条件は、次の通りであった。
【0057】
まず、前記PCR産物から遊離dNTPを除去した。このために純水1.53μl、HMEバッファ0.17μl、SAP(Shrimp Alkaline Phosphatase)0.30μlを1.5ml容チューブに入れて混合して、SAP酵素溶液を調製した。前記チューブを5,000rpmで10秒間遠心分離した。その後、PCR産物を前記SAP溶液のチューブに入れて密封した後、37℃で20分、85℃で5分間維持した後、4℃に保管した。
【0058】
次いで、前記標的DNA産物を鋳型として均質的伸長反応を行った。反応液は、次の通りであった。
水(nanopureグレード) 1.728μl
hME伸長反応ミックス(2.25mM d/ddNTPs含有10×バッファ) 0.200μl
伸長プライマー(各100μM) 0.054μl
Thermosequenase(32U/μl) 0.018μl
総体積 2.00μl
前記反応液をよく混合した後、スピンダウン遠心分離した。前記反応液が含まれたチューブまたはプレートを密封した後、94℃で2分間維持し、続いて94℃で5秒、52℃で5秒、72℃で5秒を40回反復した後、4℃に保管した。このようにして得られた均質的伸長反応産物を樹脂(SpectroCLEAN(登録商標))を用いて洗浄した。均質的伸長反応に使われた伸長プライマーを表4に示した。
【0059】
【表6】

【0060】
得られた伸長反応産物を、質量分析法のうちMALDI−TOF(Matrix Assisted Laser Desorption and Ionization−Time of Flight)を利用して、多型部位の配列を分析した。前記MALDI−TOFでは、分析しようとする物質がレーザビームを受けると、真空状態で、イオン化したマトリックスと共に、反対側にある検出器まで浮遊した。検出器に到達するまでの浮遊時間を計算して、質量を分析した。例えば、質量の小さい物質は、検出器に迅速に到達し、質量の大きな物質は、検出器に迅速に到達できない。このようにして得られる前記DNA断片と、前記SNPを有する公知のヌクレオチド配列との間の質量の差に基づいて、一個体に由来するSNPのヌクレオチドを算出し、決定する。
【0061】
前記MALDI−TOFを用いて、個体由来のSNPを決定した結果を表2及び3に表す。このとき、各対立遺伝子は、各個体におけるホモ接合体またはヘテロ接合体の形態がありうる。メンデルの遺伝法則及びハーディ−ワインベルグ法則によれば、集団を構成する対立遺伝子の組成比は一定頻度に維持され、統計的に有意な場合には生物学的機能上の意味を付与しうる。本発明のSNPは、表2及び表3に示したように、統計学的に有意なレベルで乳癌患者に現れ、従って乳癌の診断等に使用できる。
【0062】
本発明は、例示的な実施形態を参照することによって詳細に説明してきたが、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、以下に規定された本発明の特許請求の範囲から実質的に離れることなく、本発明を見て実施形態や詳細を多様に変形することができるということが理解されなければならない。
【0063】
産業上の利用可能性
本発明のポリヌクレオチドは、乳癌の診断及び治療、並びに遺伝子フィンガープリント解析に好適に利用できる。
【0064】
前記ポリヌクレオチドを含むマイクロアレイ及びキットは、乳癌を効果的に診断できる。
【0065】
本発明における乳癌の診断方法は、乳癌の存在または危険を効果的に診断できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1ないし5のヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列が10個以上の連続ヌクレオチドを含み、前記ヌクレオチド配列のうち101番目の塩基を含むポリヌクレオチド、またはその相補的ポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドとハイブリダイズされてなる、ポリヌクレオチド。
【請求項3】
長さが10ないし100ヌクレオチドである、請求項1または2に記載のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチド。
【請求項4】
プライマーまたはプローブである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1に記載のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドを含む、マイクロアレイ。
【請求項6】
請求項1に記載のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドを含む、キット。
【請求項7】
検体から核酸試料を得る段階と、
配列番号1ないし5のポリヌクレオチドまたはそれらの相補的ポリヌクレオチドのうち一以上のポリヌクレオチドのうち多型部位(101番目の塩基)のヌクレオチド配列を決定する段階と、
を含む、乳癌の診断方法。
【請求項8】
前記多型部位のヌクレオチド配列を決定する段階は、請求項1に記載のポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドが固定化されているマイクロアレイ上に前記核酸試料をハイブリダイズさせる段階と、
ハイブリダイゼーションの結果を検出する段階と、を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
決定のなされた前記多型部位のヌクレオチド配列が、101番目の多型部位のヌクレオチドがそれぞれA、C、A、G及びAである配列番号1ないし5よりなる群から選択された一以上に該当する場合、前記検体が乳癌にかかる確率の高い危険群に属するものと判定する段階を含む、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2008−529523(P2008−529523A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555027(P2007−555027)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000505
【国際公開番号】WO2006/085733
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(503447036)サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド (2,221)
【Fターム(参考)】