説明

一定して高い曝露レベルを有するオクトレオチドのデポー製剤

本発明は、有効成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩および2つの異なる直鎖状ポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)を含む徐放性製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩および特定の直鎖状ポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)を含む徐放性製剤に関する。
【0002】
本発明による医薬組成物は、とりわけ先端巨大症患者における長期維持療法、ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍(vipoma tumor))に伴う重度の下痢および潮紅の治療に必要とされる。
【背景技術】
【0003】
ペプチド性薬物は通常、全身、例えば非経口的に投与される。しかし、非経口投与は、特に毎日の反復投与によって、疼痛を伴い、不快感を引き起こす場合がある。患者への注射の回数を最小限にするために、原薬(drug substance)はデポー製剤として投与されることが有利である。注射可能なデポー製剤の一般的な欠点は、放出期間全体にわたって血漿レベルが変動することである(例えば、ピークレベルは高いが血漿レベルがゼロに近いことなど)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一定して高い曝露レベル(constantly high exposure level)を提供する改善されたデポー製剤を提供する。さらに、本発明のデポー製剤はその曝露レベルに迅速に到達する、すなわち遅延期(lag phase)がごく短いか、または存在しない。本発明のデポー製剤は有効成分(原薬)としてオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を含む。オクトレオチドは下記式を有するソマトスタチン類似体である。
【0005】
【化1】

【0006】
有効成分は、例えば無機酸、高分子酸、または有機酸、例えば塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、アスパラギン酸、安息香酸、コハク酸、またはパモ(エンボン)酸との酸付加塩等の、オクトレオチドの医薬的に許容される塩の形態であってもよい。酸付加塩は、例えば1酸当量または2酸当量が添加されるかによって、一価または二価の塩として存在してもよい。好ましくはオクトレオチドのパモ酸単塩である。
【0007】
先端巨大症患者のhGHおよびIGF−1レベルを十分に制御するにあたり、少なくとも1.5ng/ml、1.8ng/ml、または2ng/mlという一定した高いオクトレオチド血漿レベルが、疾患を十分に制御するために必要である(治療的目標血漿濃度(therapeutic target plasma concentration))。こうした高い血漿レベルを長期間にわたって一定して達成することができるPLGAデポー製剤の開発は非常に難しいということが分かっている。今までのところ、文献に記載されているオクトレオチドのデポー製剤のうちいずれも、ウサギ(雄ニュージーランドホワイト種ウサギ(Hsdlf:NZW)、入手時約3kg±20%(Harlan Netherlands))において、50日を超える長期にわたって投薬量12mg/体重kgでは目標血漿レベルを満たすことができない。有効成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩およびポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)を含む徐放性製剤は、例えばGB2265311またはWO2007/071395に記載されている。しかし、先行技術の製剤は、図1に記載されるバッチ1−2のように低レベルの期間(「遅延期」)が長い、および/または拡散制御放出(diffusion controlled release)と浸食制御放出(erosion controlled release)との中間に、図1に記載されるバッチ1−2および1−3のように「谷(valley)」を示す。
【0008】
本発明により、驚くことに、ラクチド:グリコリドコモノマー(L:G)比が75:25であり異なる粘度を有する2つの異なる直鎖状PLGAポリマーを含む製剤が、特に遅延期または谷に関して、良好な放出プロファイルを提供するということが見いだされた。本発明の製剤は、例えば少なくとも50日といった長期間にわたって少なくとも1.5ng/ml、1.8ng/ml、または2ng/mLの持続性で高いオクトレオチド血漿レベルを提供することができるということが見いだされた。したがって、長期にわたるこの良好な放出プロファイルは、現在市販されており28日毎に投与される、Sandostatin(登録商標)LAR(登録商標)としても知られるオクトレオチドの徐放性製剤よりも長い期間にわたって適用することができる徐放性製剤にとって特に適切である。
【0009】
一態様において、本発明は、L:G比はいずれも75:25であるが固有粘度が異なる2つの異なるPLGAポリマーのブレンドから構成されるオクトレオチドのデポー製剤を提供する。異なるポリマーは、好ましくは異なる末端基、例えばエステルおよびカルボキシ末端基を有する。製剤は、i.m.注射後のウサギにおいて少なくとも50日、好ましくは少なくとも約2か月の間、一定して高い曝露を示す。さらに、本発明のデポー製剤は治療的目標レベルに到達するまでの遅延期が短い。単回注射の場合、初期バーストから本発明の製剤の治療的目標血漿濃度に到達するまでの典型的な遅延期は12日より短く、例えば4〜12日または6〜10日である。
【0010】
原薬の粒子径分布は、デポー形態からの薬物の放出プロファイルに影響を及ぼす。デポー製剤を調製するために使用される原薬は結晶性または非晶質粉体の形態である。好ましくは、約0.1ミクロン〜約15ミクロン(99%>0.1ミクロン、99%<15ミクロン)、好ましくは1〜約10ミクロン未満(90%>1ミクロン、90%<10ミクロン)のサイズの粒子を有する非晶質粉体である。原薬は、要求される粒子径分布を提示するために優先的に微粉化処理される。
【0011】
本発明はさらに、有効成分としてポリ(ラクチド−co−グリコリドポリマー)(PLGA)マトリックスにオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を組み込んで含む、例えば微粒子、インプラント、または半固体製剤の形態での徐放性医薬組成物(デポー剤)を提供する。
【0012】
本発明による医薬組成物は、必要とする患者(好ましくはヒト)における、少なくとも45日、少なくとも50日、少なくとも60日、少なくとも75日、または少なくとも90日の期間にわたっての有効成分の徐放を可能にする。本発明による医薬組成物は、60〜120日にわたっての有効成分の徐放を可能にする。有効成分を放出する間、オクトレオチドの血漿レベルは治療的範囲内である。オクトレオチドの厳密な用量は、治療される状態、治療される状態の重症度、被験体の体重、および治療の継続期間を含むいくつかの要因に依存することが理解される。本発明の良好な放出プロファイルは、本発明による医薬組成物の、先行技術の製剤よりも長い投与間隔を可能にする。今までのところ、投与間隔が28日毎より長いオクトレオチドのデポー製剤で治療用として承認されているものはない。本発明のデポー製剤は、現在、その良好な放出プロファイルのために、2か月毎(例えば8週間毎または60日毎)に1回から4か月毎(例えば16週間毎または120日毎)に1回までの投与に適切である。好ましい一実施形態において、本発明のデポー製剤は3か月毎(例えば12週間毎または90日毎)に1回投与される。
【0013】
驚くことに、本発明による医薬組成物に2つの異なる直鎖状PLGAの適切な組み合わせを使用することによって、血漿レベルにおける変動を顕著に低減することができる。
【0014】
原薬は、2つの異なる直鎖状ポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)からなる生分解性ポリマーマトリックスに組み込まれる。PLGAはラクチド:グリコリドモノマー比75:25を有する。
【0015】
本発明によるPLGAは、1,000〜500,000Da、好ましくは5,000〜100,000Daの範囲の分子量(Mw)を有する。ポリマーの構造は直鎖状である。
【0016】
本発明によるPLGAの固有粘度(IV)はCHCl中で0.9dl/g未満、優先的に0.8dl/g未満、好ましくは0.6dl/g未満、より好ましくはCHCl中で0.1dl/g〜0.5dl/gである。固有粘度は、例えば「Pharmacopoee Europeenne」、1997、17〜18頁(毛細管法)に記載されているような、従来の流動時間測定法によって測定することができる。特に提示のない限り、これらの粘度は、CHCl中で25℃において濃度0.1%にて測定している。
【0017】
本発明によるPLGAの末端基はヒドロキシ、カルボキシ、エステル等であり得るが、これらに限定されない。
【0018】
デポー製剤の原薬含有量(含量(loading))は、1%〜30%、好ましくは10%〜25%、より好ましくは15%〜20%の範囲である。含量は、遊離塩基としての原薬のPLGA製剤の総質量に対する重量比として定義される。
【0019】
適切なポリマーは一般に公知であるが、Boehringer Ingelheim Pharma GmbH & Co. KG、Ingelheim、ドイツのRESOMER(登録商標)、Durect Corp.、Pelham、AL、米国のLACTEL(登録商標)、Lakeshore,Inc.、Cambridge、MA、米国のMEDISORB(登録商標)、PURAC biochem BV、Gorinchem、オランダのPURASORB(登録商標)として市販されているものに限定されない。本発明の特に好ましいポリマーは、Resomer(登録商標)RG752HおよびResomer(登録商標)RG753Sである。
【0020】
本発明による医薬組成物は、無菌的または非無菌的に製造することができ、最終段階でガンマ線照射によって滅菌することができる。最終段階でのガンマ線照射による滅菌が好ましく、これによって生成物の可能な限り高い無菌性が保証される。
【0021】
本発明による医薬組成物は、0.1%〜50%の量で放出挙動をモジュレートする1つ以上の医薬賦形剤をも含有してもよい。このような薬剤の例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリ(オキシエチレン−block−オキシプロピレン)としても知られるポロキサマー、商品名TWEEN(登録商標)(例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Tween65 Tween85、Tween21、Tween61、Tween81)で知られ市販されているポリ(オキシエチレン)−ソルビタン−脂肪酸エステル、例えば商品名SPANで知られ市販されている種類のソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の適切な界面活性剤、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機塩、またはプロタミン、例えばヒトプロタミンもしくはサケプロタミン、またはポリリシン等のアミン残基を有する天然もしくは合成ポリマーである。
【0022】
本発明による医薬組成物は、デポー剤混合物、または組成、分子量、および/もしくはポリマー構造の点で異なるポリマーのポリマーブレンドであり得る。ポリマーブレンドは本明細書において、1つのインプラントまたは微粒子における2つの異なる直鎖状ポリマーの固溶体または懸濁液と定義される。その一方、デポー剤の混合物は本明細書において、1つ以上のPLGAを各デポー剤に含む、組成の異なる2つのデポー剤、例えばインプラントまたは微粒子または半固体製剤、の混合物と定義される。好ましくは、2つのPLGAがポリマーブレンドとして存在する医薬組成物である。
【0023】
本発明による医薬組成物は、インプラント、半固体(ゲル)、注射後にin situで凝固する液体性溶液もしくは懸濁液、または微粒子の形態であり得る。好ましくは微粒子である。オクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を含む微粒子の製剤は公知であり、例えばUS5,445,832またはUS5,538,739に開示されている。
【0024】
本発明の以下の部分はポリマー微粒子に焦点を当てているが、説明はインプラント、半固体、および液体にも適用できる。
【0025】
本発明による微粒子は、数サブミクロン〜数ミリメートル、例えば約0.01ミクロン〜約2mm、例えば約0.1ミクロン〜約500ミクロンの直径を有していてもよい。医薬品用の微粒子の場合、最大約250ミクロン、例えば10〜200ミクロン、好ましくは10〜130ミクロン、より好ましくは10〜90ミクロンの直径。
【0026】
本発明による微粒子は、例えばプレフィルドシリンジまたはバイアル内において、抗凝集剤と混合もしくは抗凝集剤で被覆されていてもよい、または抗凝集剤の層で覆われていてもよい。適切な抗凝集剤は、例えば上述の特性を有する、例えばマンニトール、グルコース、デキストロース、スクロース、塩化ナトリウム、またはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、もしくはポリエチレングリコール等の水溶性ポリマーを含む。
【0027】
本発明のデポー製剤の製造プロセスを、微粒子について詳細に説明する。
【0028】
微粒子は、当技術分野で公知のいくつかのプロセス、例えば、コアセルベーションまたは相分離、スプレー乾燥、油中水型(W/O)または水中油中水型(W/O/W)または水中油中固体型(S/O/W)エマルション/懸濁液法に続いて溶媒抽出もしくは溶媒蒸発によって製造されてもよい。エマルション/懸濁液法は好ましいプロセスであり、以下の工程を含む:
(i)(ia)1つまたは複数のポリマーを適切な有機溶媒または溶媒混合物に溶解する工程、
必要に応じて、適切な添加物を溶解/分散させる工程、
(ib)工程(ia)で得られたポリマー溶液に原薬を溶解/懸濁/乳化する工程
を含む内側有機相(internal organic phase)を調製する工程、
(ii)安定剤、および必要に応じて、しかし好ましくは緩衝塩を含有する外側水相(external aqueous phase)を調製する工程、
(iii)例えばローター/ステーター式ミキサー(タービン)またはスタティックミキサーなどの高い剪断力を生じるデバイス等によって、内側有機相を外側水相と混合してエマルションを形成する工程、ならびに
(iv)溶媒蒸発または溶媒抽出によって微粒子を硬化させ、微粒子を例えば水で洗浄し、微粒子を回収および乾燥させ、例えば凍結乾燥または真空乾燥させ、微粒子を140μmのふるいにかける工程。
【0029】
ポリマーに対する適切な有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、アセトン、THF、アセトニトリル、またはハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、もしくはヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
【0030】
工程(iib)における安定剤の適切な例としては、0.1〜5%の量のポリ(ビニルアルコール)(PVA)、総量0.01〜5%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)および/またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゼラチン、好ましくはブタまたは魚ゼラチンが挙げられる。
【0031】
乾燥微粒子組成物は、最終段階で、必要に応じてバルクでまたは最終容器に充填した後で、ガンマ線照射によって滅菌することができ(オーバーキル滅菌)、これにより可能な限り高い無菌性を保証できる。あるいは、バルク滅菌した微粒子は適切なビヒクルに再懸濁し、懸濁液としてダブルチャンバーシリンジ等の適切なデバイスに充填し、続いて凍結乾燥することができる。
【0032】
微粒子を含有する本発明による医薬組成物は、再構成を容易にするためにビヒクルをも含有してもよい。
【0033】
投与する前に、微粒子は注射用の適切なビヒクルに懸濁される。好ましくは、前記ビヒクルは水性であって、等張性を確実にするために、および微粒子の湿潤性および沈降特性を改善するために、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、スクロース、またはグリセリン、非イオン性界面活性剤(例えばポロキサマー、ポリ(オキシエチレン)−ソルビタン−脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ソルビトール、ポリ(ビニルピロリドン)、またはモノステアリン酸アルミニウム等の医薬賦形剤を含有する。湿潤および増粘剤は0.01〜1%の量で存在してもよく、等張化剤は等張性の注射可能な懸濁液を確実にするのに適切な量で添加される。
【0034】
本発明はさらに、とりわけ先端巨大症患者における長期維持療法、ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および潮紅の治療のための本発明による医薬組成物の使用を提供する。
【0035】
本発明による医薬組成物の有用性は標準的な臨床または動物研究において示すことができる。
【0036】
本発明はさらに、アンプル、バイアル、もしくはプレフィルドシリンジ内の水性ビヒクルと共に、またはダブルチャンバーシリンジ内で分けられている微粒子およびビヒクルとして、必要に応じてトランスファーセットを備えた、バイアルにデポー製剤を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、例1−1、1−2、および1−3(比較のための製剤変形(formulation variant)C、B、およびAを示す。ウサギへの12mg/kgのi.m.投薬後の経時的オクトレオチド血清濃度。動物4匹に対する平均+SD。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実験部
以下の実施例は例示であるが、本明細書に記載された本発明の範囲を限定するものではない。実施例の目的は、本発明を実践する方法を示唆することのみである。
【実施例1】
【0039】
微粒子の調製
適切量のPLGAポリマーを適切量のジクロロメタンに溶解して、表2のカラム「PLGA濃度」に示される適切なポリマー濃度とする。得られる微粒子がカラム「薬物負荷(drug load)」に示される薬物負荷を有するように、適切量の原薬をガラスビーカーに計量して、ポリマー溶液を原薬の上に注ぐ。
【0040】
例えば薬物負荷20%およびポリマー濃度20%である微粒子の場合、数値は以下の通りである:PLGAポリマー3.547gをジクロロメタン17.7mlに溶解して、20%(w/v)のポリマー溶液を得る。遊離ペプチド含有量68.8%のパモ酸オクトレオチド1.453g(1.00g=20%オクトレオチド遊離塩基に相当)をガラスビーカーに計量して、ポリマー溶液を原薬の上に注ぐ。
【0041】
Ultra−Turraxローター/ステーター式ミキサーにより20,000rpmで1分間、氷/水混合物で冷却しながら懸濁液をホモジナイズする。この懸濁液をS/O懸濁液と称す。
【0042】
ポリビニルアルコールPVA18−88 10.00g、KHPO 3.62g、およびNaHPO 15.14gを脱イオン水2.00Lに溶解して、pH7.4に緩衝された0.5%PVA18−88溶液を形成する。
【0043】
可撓性チューブポンプ(Perpex、Vitonチューブ)を用いて速度10ml/分でS/O懸濁液をタービンにポンピングすることによって、および歯車ポンプ(ポンプヘッドP140を備えたIsmatec MV−Z/B)によって速度200ml/分で水溶液を同一タービンにポンピングすることによって、S/O懸濁液を0.5%PVA18−88溶液と混合する。2つの溶液を、表2に記載されているようにタービン内で混合する。ホモジナイズされたS/O/Wエマルションを、緩衝PVA溶液200mlで予め満たされた2Lガラスビーカーに回収する。
【0044】
次いでS/O/Wエマルションを5時間かけて45℃まで加熱する。バッチが再度室温に冷却されるまでさらに2時間 分間(2 h min)、温度を45℃に保持する。このプロセスの間、漏れ出すジクロロメタンを真空除去し、4翼プロペラ式撹拌機により250rpmでバッチを撹拌する。
【0045】
結果として、S/O/Wエマルションから微粒子が形成される。微粒子をろ過(5μm)によって回収する。微粒子を水200mlで5回洗浄し、36時間20℃および0.030mbarで乾燥する。乾燥した微粒子を140μmのふるいにかけ、窒素下においてガラスバイアルに充填する。このように調製した微粒子を線量30kGyのガンマ線照射によって滅菌する。
【0046】
微粒子の粒径をレーザー回折によって測定する。超音波を使用して微粒子をホワイトスピリットに再懸濁する。表2は、120秒間の超音波処理後の直径x90(全粒子の90%がこの値より小さくなる)を示す。
【0047】
微粒子をアセトニトリルとメタノールとの3:2混合物に超音波によって溶解し、さらに酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)によって1:1で希釈した後、HPLCによって微粒子のアッセイを決定する。溶液に残留する粒子状物質を遠心分離によって除去する。
【0048】
【表1】

【実施例2】
【0049】
ビヒクル組成物A〜G
表3に示された量のCMC−Na、マンニトール、およびプルロニックF68を、温度約90℃の高温の脱イオン水約15mlに、マグネティックスターラーにより強く撹拌しながら溶解する。得られる透明な溶液を20℃に冷却し、脱イオン水で20.0mlに増量する。
【0050】
【表2】

【実施例3】
【0051】
微粒子懸濁液
実施例1−1、1−2、または1−3の微粒子180mgを6Rバイアル内の組成D(表3)のビヒクル1.0mlに懸濁する。懸濁液を手で約30秒間振盪することによってホモジナイズする。再構成された懸濁液は20ゲージの針を使用して注射してもよく、何ら問題はない。
【実施例4】
【0052】
微粒子の凍結乾燥
実施例1−1、1−2、または1−3の微粒子180mgをビヒクル組成F(表3)の1mlに再構成し、1〜12時間撹拌することによってホモジナイズし、次いで凍結乾燥機(lyophilisator)内で凍結乾燥させる。凍結乾燥させた微粒子を純水(aqua ad injectabilia)1mlによって再構成した結果、微粒子は迅速かつ良好な湿潤性を示すため、20ゲージの針を使用して注射してもよく、何ら問題はない。
【実施例5】
【0053】
in vivo(ウサギ)における放出プロファイル
オクトレオチドを含有する微粒子を適切な水性ビヒクル1mlに懸濁し、得られる懸濁液を、雄ニュージーランドホワイト種ウサギの筋肉内(i.m.)に用量12mg/kgで注射する。各投与形態(試験群)に対して動物4匹を使用する。定義された期間(表4に示される)後、血漿試料を採取し、放射免疫測定(RIA)によってオクトレオチド濃度を分析する。
【0054】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの異なる直鎖状ポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)および有効成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を含む徐放性医薬組成物であって、ウサギにおける投薬量12mg/kgによる有効成分の血漿濃度が少なくとも50日間、一定して1.5ng/mlより高い、徐放性医薬組成物。
【請求項2】
有効成分の血漿濃度が1.8ng/mlより高い、請求項1に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項3】
治療的目標血漿濃度が6〜12日後に到達される、請求項1または2に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項4】
2つの異なるポリラクチド−co−グリコリドポリマー(PLGA)はともにラクチド:グリコリド比が75:25である、請求項1、2、または3に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項5】
2つのポリマーが異なる固有粘度を有する、請求項4に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項6】
PLGAがポリマーブレンドとして存在する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
PLGAが異なる末端基を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
1つのPLGAがエステル末端基を有し、1つのPLGAが酸性末端基を有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
PLGAの固有粘度が、CHCl中で25℃において0.1および0.5dL/g未満である、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
オクトレオチドのパモ酸塩を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
患者における有効成分の放出が60と120日の間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
微粒子、半固体、またはインプラントの形態である、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
微粒子の形態である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
微粒子が10μmと90μmの間の直径を有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
微粒子が抗凝集剤でさらに覆われているまたは被覆されている、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ガンマ線照射によって滅菌された、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
先端巨大症患者における長期維持療法、ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸ペプチド腫瘍(ピボーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および潮紅の治療のための請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
医薬組成物が2か月毎に約1回から2〜3か月毎に約1回投与される、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
先端巨大症患者における長期維持療法、ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および潮紅の治療のためにオクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を投与する方法であって、オクトレオチドまたは医薬的に許容されるその塩を必要とする患者に請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項20】
医薬組成物が2か月毎に約1回から2〜3か月毎に約1回で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(i)(ia)ポリマーを適切な有機溶媒または溶媒混合物に溶解する工程、
(ib)工程(ia)で得られたポリマー溶液に原薬を溶解/懸濁/乳化する工程
を含む内側有機相を調製する工程、
(ii)安定剤を含有する外側水相を調製する工程、
(iii)内側有機相を外側水相と混合してエマルションを形成する工程、および
(iv)溶媒蒸発または溶媒抽出によって微粒子を硬化させ、微粒子を洗浄し、微粒子を乾燥させ、微粒子を140μmのふるいにかける工程
を含む請求項13または14に記載の微粒子を製造するプロセス。
【請求項22】
アンプル、バイアル、もしくはプレフィルドシリンジ内の水性ビヒクルと共に、またはダブルチャンバーシリンジ内で分けられている微粒子およびビヒクルとして、バイアルに請求項1〜17のいずれかに記載の医薬組成物を含む投与キット。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512147(P2012−512147A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540134(P2011−540134)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067049
【国際公開番号】WO2010/079047
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】