説明

一対の結合パートナーを同定する方法

本発明は複数のペプチド及び/又は蛋白質を始めとする複数の検体分子中の標的分子の結合パートナーの同定方法に関する。標的分子は特定のヌクレオチド配列を含んだ標的標識核酸分子と物理的に結合する。標的分子がペプチド/蛋白質の場合、この特定のヌクレオチド配列は標的分子をコードする配列を含んでもよい。複数の検体分子の各々は、選ばれたヌクレオチド配列を含んだ検体標識核酸分子と物理的に連結する。この特定のヌクレオチド配列は、それと結合するペプチド/蛋白質をコードする配列を含んでもよい。標的分子を検体分子と接触させて標的分子と検体分子の間で複合体を形成する。その混合物は複数の区画に分けられるが、各区画には最大で1つの標的分子が含まれるか、或いは標的分子と検体分子の複合体が最大で1つ含まれる。標的標識核酸分子と検体標識核酸分子を連結させ、区画を崩壊する。連結した核酸分子を回収し配列を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書は、2009年7月7日に米国特許商標局に出願され、シリアル番号として米国仮特許出願第61/223,524号が正式に割り当てられた「一対の結合パートナーを同定する方法(Methods Of Identifying A Pair Of Binding Partners)」の出願に言及して、優先権の利益を主張する。2009年7月7日に出願された前記出願の内容は、あらゆる目的のためにその内容全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一対の結合パートナーを同定する方法、特に1つ以上のタンパク質の結合パートナーを同定する方法に関する。片方または双方の結合パートナーは、選ばれた核酸分子に結合している。本発明はまた、本発明の方法を実施するのに使用し得るキット、ならびに本発明の方法に基づく構成要素を備えるキットも提供する。
【背景技術】
【0003】
利用可能な生体高分子のプールの中から所望の生体高分子をインビトロで選択することは、例えば分子相互作用の研究、診断をはじめとする医用イメージング、または組み換え抗体をはじめとするタンパク質ベースの生物薬剤の作成において、有用なツールとなっている。ペプチドおよびタンパク質を選択するためのインビトロディスプレイ技術は、ペプチドまたはタンパク質と、それをコードする核酸の間の物理的な連結に依存する。大きな一団の技術がこの目的のために確立されており、最も一般的に使用されるのは、ファージ/ウィルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、「ペプチド・オン・プラスミド」、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、cDNAディスプレイ、そして微小ビーズディスプレイをはじめとするインビトロ区画化である(例えばRothe, A., et al., FASEB J.(2006) 20, 1599-1610およびSergeeva, A., et al., Advanced Drug Delivery Reviews (2006) 58, 1622-1654を参照されたい)。
【0004】
ディスプレイ技術は、選ばれた標的分子に対して高親和性がある、改変抗体およびリガンドを作成できるようにする。したがって典型的に遺伝子操作の手段によって、ほんのわずか異なる一連のペプチドまたはタンパク質をディスプレイすることもまた可能である。その結果、相互作用特性および生物物理学的パラメーターの観点からスクリーニングして、引き続いてタンパク質またはペプチドを発生させることが可能である。変異および選択の繰り返しは、インビトロベースで適用し得る。
【0005】
タンパク質またはペプチドと、それぞれの核酸とを物理的に組み合わせる異なる手段が開示されている。細胞表面分子による細胞内発現、ウィルス性/ファージコートタンパク質との融合ポリペプチドとしての発現、RNA分子のインビトロ安定化複合体、リボソームとそれぞれのポリペプチド、ピューロマイシン分子を通じた、または微小ビーズを通じたインビトロ共有カップリングが、目下当該技術分野で使用されている、タンパク質/ペプチドと核酸を結合させる方法の実例である。
【0006】
物理的結合の形成を伴わない、タンパク質またはペプチドとそれぞれの核酸を結合させるさらなる技術は、油中水滴型エマルジョンに依存する。水小滴は、そのそれぞれの中で単一遺伝子が転写され翻訳される区画の役割を果たす(Tawfik, D. S., & Griffiths, A. D., Nature Biotech. (1998) 16, 652-656および米国特許出願公開第2007/0105117号明細書)。ペプチドまたはタンパク質と(それをコードする)核酸の間のこの物理的結合は、選択されるタンパク質またはペプチドをコードする核酸を回収する可能性を提供する。それぞれの遺伝子がある核酸、および対応するタンパク質が、クローン的に区画内に拘束される。したがって免疫沈降法などの技術と比較して、ディスプレイ技術では、選択された標的分子の結合パートナーが同定されまたは選択され得るだけでなく、この結合パートナーの核酸を回収してさらなる処理のために使用し得る。
【0007】
所望のタンパク質を選択するさらなる技術は、Lox部位を有するベクターとリコンビナーゼCreを用いた酵母ツーハイブリッドシステムの使用である(Hastie, A. R., & Pruitt, S. C., Nucleic Acids Research (2007) 35, 12, el41)。
【0008】
したがって現今のディスプレイ技術は、例えば標的発見、リード発見、およびリード最適化の手段を提供する。例えば抗体などのペプチドまたはタンパク質の大きなライブラリーは、潜在的に大規模にスクリーンし得る。しかしタンパク質またはペプチドと標的分子の間の複合体を単離して、低親和性バインダーを除去できるためには、2つの結合パートナーの片方の固定化が必要である。したがって現行のディスプレイ技術は、分析に先だって、典型的に、スクリーニング工程で使用されるマルチウェルプレート表面に、またはインビトロ区画化の場合は微小ビーズ表面に標的分子を固定化することに依存する。
【0009】
さらに現行のディスプレイ技術は一次元であり、それに対して広範囲の(潜在的に結合する)ペプチドまたはタンパク質が試験され得る、単一標的分子を提供する必要がある。異なる標的分子を同時に試験するには、それぞれの標的とその結合パートナーの双方を単離して分析する必要があり、したがって実際的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0105117号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Rothe, A., et al., FASEB J.(2006) 20, 1599-1610
【非特許文献2】Sergeeva, A., et al., Advanced Drug Delivery Reviews (2006) 58, 1622-1654
【非特許文献3】Tawfik, D. S., & Griffiths, A. D., Nature Biotech. (1998) 16, 652-656
【非特許文献4】Hastie, A. R., & Pruitt, S. C., Nucleic Acids Research (2007) 35, 12, el41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、固定化された検体および溶液中の検体の双方に適用することができる結合パートナーの同定方法を提供することである。上述のとおり、このような方法はまた、インビトロディスプレイ技術の適応性を大幅に改善するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では本発明は、複数の検体分子中の少なくとも1つの標的分子の結合パートナーを同定する方法を提供する。標的分子は、標的標識核酸分子と物理的に結合される。標的標識核酸分子はそれと結合する標的分子を同定するのに適した特定のヌクレオチド配列を含む。方法は、標的分子を複数の検体分子に接触させるステップを含む。それによって混合物が形成される。結合パートナーは、複数の検体分子の中のメンバーであると疑われる。複数の検体分子の中の各メンバーは、検体を標識する核酸分子と物理的に結合される。各検体標識核酸分子は、選ばれたヌクレオチド配列を含む。このヌクレオチド配列は、それと結合する検体分子を同定するのに適する。方法はまた、混合物内で標的分子とその結合パートナーとの間で複合体を形成させるステップも含む。さらなる方法は、混合物を複数の区画に分けるステップを含む。その結果、各区画は標的分子を最大でおよそ1つ、または標的分子と検体分子間の複合体を最大でおよそ1つ含む。混合物を複数の区画に分けることで、標的分子と検体分子間の複合体は、複数の検体分子の残りのメンバーから分離される。方法はまた、標的標識核酸分子と検体標識核酸分子を連結させるステップも含む。それによって複合核酸分子が形成する。複合核酸分子は、標的分子と検体分子間の複合体となおも物理的に結合されていてもよい。しかしこの物理的な結合はまた、混合物を複数の区画に分けた後に解いてもよい。方法は、複数の区画を崩壊するステップをさらに含む。方法はまた、複合核酸分子を回収することも含む。さらに方法は、検体標識核酸分子の配列を決定するステップを含む。したがって方法は、標的分子の結合パートナーを同定するステップを含む。
【0014】
いくつかの実施態様では、複合核酸分子を回収するステップは、一対の第1および第2のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップを含む。第1のプライマーは、標的標識核酸分子の配列の一部と相補的である。第2のプライマーは、ユニバーサルプライマーである。その結果、標的標識核酸分子と検体標識核酸分子を含む複合核酸分子が増幅される。
【0015】
いくつかの実施態様では、方法は、核酸分子の取り扱いに適した溶液を提供するステップを含む。これはまた、ペプチドおよび/またはタンパク質の取り扱いに適していてもよい。この関連で検体分子は、いくつかの実施態様では、ポリペプチド、および/またはタンパク質をはじめとするペプチドである。このような方法では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質を標的分子に接触させることで形成された混合物を複数の区画に分けるステップは、溶液を複数の区画に分けるステップを含んでもよい。検体分子と、それと結合する検体標識核酸分子との物理的な結合は、いくつかの実施態様では解くことが可能である。これらの実施態様のいくつかでは、検体分子とそれに結合する検体標識核酸分子との間の物理的結合は、本発明の方法の実施中に切断される。このような実施態様では、それによってメンバーコーディング核酸分子が遊離される。別の実施態様では、検体分子とそれと結合する検体標識核酸分子との物理的な結合は、原形を保ったままである。方法は、いくつかの実施態様では、遊離されたメンバーコーディング核酸分子の配列を決定するステップを含んでもよい。
【0016】
第2の態様では、本発明は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の第1および第2の結合パートナーからなるペアを同定する方法を提供する。典型的にこの方法では、結合パートナーの片方、例えば第1の結合パートナーのアイデンティティは既知である。第1および第2の結合パートナーは複合体を形成できる。方法は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質を提供するステップを含む。複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、メンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される。メンバーコーディング核酸分子は、それと結合するペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。方法はまた、複数のペプチドおよび/またはタンパク質を複数の区画に分けるステップも含む。その結果、各区画は、一対の結合パートナー同士の間で形成された複合体を最大でおよそ1つ含む。あるいは、区画は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーを最大でおよそ1つ含む。したがって複数のペプチドおよび/またはタンパク質を複数の区画に分けることで、第1の結合パートナーと第2の結合パートナーとの間の複合体は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の残りのペプチドおよび/またはタンパク質から分離される。さらに方法は、第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と、第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを結合させるステップを含む。それによって複合核酸分子が形成される。方法は、複数の区画を崩壊するステップをさらに含む。方法はまた、複合核酸分子を回収するステップも含む。さらに方法は、増幅された複合核酸分子の配列を決定するステップを含む。したがって方法は、第1および/または第2の結合パートナーを同定するステップを含む。
【0017】
いくつかの実施態様では方法はまた、捕捉プローブを追加するステップも含む。捕捉プローブは、前述の第1および第2の結合パートナー間の複合体に結合できる。さらに方法は、捕捉プローブを第1および第2の結合パートナー間の複合体に結合させるステップを含む。さらに方法は、捕捉プローブを回収するステップを含む。それによって複合核酸分子に結合している、第1および第2の結合パートナー間の複合体が回収される。
【0018】
いくつかの実施態様では、核酸分子とペプチドまたはタンパク質との間の物理的な結合は解くことが可能である。これらの実施態様のいくつかでは、方法はまた、第1の結合パートナーとそれと結合するメンバーコーディング核酸分子との間の物理的な結合を解くステップも含む。同様にいくつかの実施態様では、方法は、第2の結合パートナーとそれと結合するメンバーコーディング核酸分子との間の物理的結合を切断するステップを含む。いくつかの実施態様では、第1の結合パートナーと対応するメンバーコーディング核酸分子の間の物理的な結合は、第2の結合パートナーと対応するメンバーコーディング核酸分子の間の物理的な結合と同じである。これらの実施態様では、このようにして物理的な結合が同時に解かれる。したがって方法は、結合したメンバーをコードする2つの核酸分子を遊離させるステップを含む。この場合、方法は、1組の結合パートナーの遊離された、結合メンバーコーディング核酸分子の配列を決定するステップを含む。
【0019】
第3の態様では、本発明は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法を提供する。標的ペプチドまたはタンパク質は、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーの中に含まれる。結合パートナーは、第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーに含まれることが疑われる。第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、核酸分子をコードするメンバーと物理的に結合される。それぞれのメンバーコーディング核酸分子は、それと結合するペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。方法は、第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質を結合させるステップを含む。それによって混合物が形成される。方法は、標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーとの間で複合体を形成させるステップをさらに含む。方法はまた、混合物を複数の区画に分けるステップも含む。その結果、各区画は、結合させる複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーを最大でおよそ1つ含み、またはメンバー同士の間の複合体を最大でおよそ1つ含む。さらに方法は、標的ペプチドまたはタンパク質のメンバーコーディング核酸分子と、形成した複合体の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを結合させるステップを含む。したがって方法は、複合核酸分子を形成させるステップを含む。方法はまた、区画を崩壊するステップも含む。方法はまた、複合核酸分子を回収するステップも含む。さらに方法は、複合核酸分子の配列を決定するステップを含む。したがって方法は、結合パートナーを同定するステップを含む。
【0020】
第4の態様では、本発明は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の一対以上の第1および第2の結合パートナーを同定する方法を提供する。第1および第2の結合パートナーは、複合体を形成できる。方法は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子のライブラリーを提供するステップを含む。複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、一対以上の第1のおよび第2の結合パートナーを含むことが疑われる。さらに方法は、第1のベクター(例えば第1のプラスミド)の複数の分子、および第2のベクター(例えば第2のプラスミド)の複数の分子を提供するステップを含む。第1のベクターは第1の相補部分をコードする核酸配列を有し、第2のベクターは第2の相補部分をコードする核酸配列を有する。第1および第2の相補部分は、物理的に接近させると互いに補完する。これらの2つの部分は、レポーター因子を定めるように互いに補完する。方法はまた、2つの複数の第1および第2のベクターの中の各メンバーに1つの核酸分子を提供するステップも含む。核酸分子は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリーの核酸分子である。方法は、第1のベクターのメンバー(または検体)の1つと、第2のベクターのメンバー(または検体)を同一の適当な細胞に導入するステップをさらに含む。第1および第2のベクターの双方には、それぞれ核酸分子が提供される。この核酸分子は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の1つをコードする。方法はまた、細胞に導入されたベクターがそれと共に提供される、核酸によってコードされるペプチドおよび/またはタンパク質の対を細胞内で発現させるステップも含む。さらに方法は、その中でレポーター因子の形成が検出されたあらゆる細胞を収集、例えば単離するステップを含む。方法はまた、その中でレポーター因子の形成が検出されたあらゆる個々の収集された、例えば単離された細胞を複数の区画に分けるステップも含む。この区画への分割の結果として、各区画は細胞を最大でおよそ1つ含む。さらに方法は、第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と、第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを区画内で結合させるステップを含む。したがって方法は、複合核酸分子を形成させるステップを含む。方法はまた、区画を崩壊するステップも含む。方法はまた、複合核酸分子を回収するステップも含む。さらに方法は、複合核酸分子の配列を決定するステップを含む。したがって方法は、第2の結合パートナーを同定し、/または第1の結合パートナーを同定するステップを含む。
【0021】
第5の態様では、本発明は、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質中で、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の1つ以上の結合パートナーを同定する方法を提供する。標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーは、複合体を形成できる。方法は、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリーを提供するステップを含む。複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを含むことが疑われる。方法はまた、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を提供するステップも含む。さらに方法は、第1のベクターの複数のメンバーを提供するステップを含む。方法はまた、第2のベクター複数のメンバーを提供するステップも含む。第1のベクターは第1の相補部分をコードする核酸配列を有し、第2のベクターは第2の相補部分をコードする核酸配列を有する。第1および第2の相補部分は、物理的に接近させると互いに補完する。したがって第1および第2の相補部分は、一緒になってレポーター因子を定める。方法はまた、第1のベクターの複数のメンバーの中の各メンバーに、1つの核酸分子を提供するステップも含む。それぞれの第1のベクターに提供されるこの核酸分子は、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリーの核酸分子である。方法はまた、第2のベクターの複数の分子の中の各メンバーに、1つの核酸分子を提供するステップも含む。それぞれの第2のベクターに提供される核酸分子は、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子の核酸分子である。本発明の方法は、第1のベクターの分子の1つと、第2のベクターの複数の分子の1つを同一の適切な細胞に導入するステップを含む。本発明の方法はまた、それぞれのベクターに含まれる核酸によってコードされる、ペプチドおよび/またはタンパク質の対を細胞内で発現させるステップも含む。さらに方法は、その中でレポーター因子の形成が検出されるあらゆる細胞を収集、例えば単離するステップを含む。方法はまた、その中でレポーター因子の形成が検出されたあらゆる個々の収集された、例えば単離された細胞を複数の区画に分けるステップも含む。区画内へのこの分割の結果として、各区画は細胞を最大でおよそ1つ含む。さらに方法は、標的ペプチドまたはタンパク質のメンバーコーディング核酸分子と、その結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを区画内で結合させるステップを含む。したがって方法は、複合核酸分子を形成させるステップを含む。方法はまた、区画を崩壊するステップも含む。方法はまた、複合核酸分子を回収するステップも含む。さらに方法は、複合核酸分子の配列を決定するステップを含む。したがって方法は、標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定するステップを含む。
【0022】
第6の態様では、本発明は、標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する部品のキットを提供する。キットは、複数の複合核酸分子を含む。複数の複合核酸分子の各複合核酸分子は、第1のペプチドまたはタンパク質と第2のペプチドまたはタンパク質との一対の配列を含む。第1のペプチドまたはタンパク質および第2のペプチドまたはタンパク質は、その中でそれらが互いに複合体を形成できる結合パートナーを定義する。キットはまた、ユニバーサルプライマーも含む。典型的にキットは例えばバイアル、試験管などの複数の容器を含み、容器の1つは複数の複合核酸分子を含む。1つの容器は、ユニバーサルプライマーを含む。
【0023】
本発明は、詳細な説明を参照して、非限定的例および添付図面と併せて考察すれば、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施態様において、ペプチドまたはタンパク質(11)と、ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子とが、どのように互いに物理的に結合され得るかという実施例を描写する。A:ウィルスディスプレイ、B:DNAディスプレイ、C:mRNAディスプレイ、D:cDNAディスプレイ、E:リボソームディスプレイ、F:細胞ディスプレイ、G:細胞内発現(5:結合ペプチド、32:ウィルスベクター、33,34,39,333,334:コーディング核酸分子、35:DNA結合タンパク質、36:ピューロマイシン分子、37:リボソーム、38:mRNA、79:細胞、335:相補的cDNA)。
【図2A−1】結合部分(5)を通じてメンバーコーディング核酸分子(1、2、3)と物理的に結合している、複数のペプチドおよび/またはタンパク質(11、12、13)中の一対の第1(12)および第2の(13)結合パートナーが同定される、本発明に従った方法の実施態様の概略図を示す。区画(6)中では、因子(7)が核酸分子(2、3)を結合核酸分子(4)に結合し、次に捕捉プローブ(9)を通じてそれを回収し分析し得る。
【図2A−2】結合部分(5)を通じてメンバーコーディング核酸分子(1、2、3)と物理的に結合している、複数のペプチドおよび/またはタンパク質(11、12、13)中の一対の第1(12)および第2の(13)結合パートナーが同定される、本発明に従った方法の実施態様の概略図を示す。区画(6)中では、因子(7)が核酸分子(2、3)を結合核酸分子(4)に結合し、次に捕捉プローブ(9)を通じてそれを回収し分析し得る。
【図2A−3】結合部分(5)を通じてメンバーコーディング核酸分子(1、2、3)と物理的に結合している、複数のペプチドおよび/またはタンパク質(11、12、13)中の一対の第1(12)および第2の(13)結合パートナーが同定される、本発明に従った方法の実施態様の概略図を示す。区画(6)中では、因子(7)が核酸分子(2、3)を結合核酸分子(4)に結合し、次に捕捉プローブ(9)を通じてそれを回収し分析し得る。
【図2B】関心のある遺伝子を含有する結合パートナーの選択的増幅を例証する。
【図2C】オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)の手順の概略を描写する。
【図3】複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質(111、112、113)中で標的ペプチドまたはタンパク質(12)の結合パートナー(13)を同定する、本発明に従った方法の実施態様を描写する概略図である。ペプチドおよび/またはタンパク質は融合ペプチドおよび/またはタンパク質中に含まれ、それは結合ペプチドまたはタンパク質(5)もまた含む。区画(6)内では、因子(7)が核酸分子(2、3)を結合核酸分子(4)に結合し、次にそれをPCRを使用して増幅、精製して分析する。
【図4−1】可変的に標識されたcDNAライブラリーによってコードされる複数のペプチドおよび/またはタンパク質中の2つの結合パートナー(23、24)対が同定される、実施態様のさらなる概略図を描写する。インビトロ翻訳に続いて、各ペプチドおよび/またはタンパク質が、それをコードするcDNA分子にリンカー分子(25)を通じて結合する。区画(図5D)内では結合パートナーが結合され、区画崩壊後に増幅される。
【図4−2】可変的に標識されたcDNAライブラリーによってコードされる複数のペプチドおよび/またはタンパク質中の2つの結合パートナー(23、24)対が同定される、実施態様のさらなる概略図を描写する。インビトロ翻訳に続いて、各ペプチドおよび/またはタンパク質が、それをコードするcDNA分子にリンカー分子(25)を通じて結合する。区画(図5D)内では結合パートナーが結合され、区画崩壊後に増幅される。
【図4−3】可変的に標識されたcDNAライブラリーによってコードされる複数のペプチドおよび/またはタンパク質中の2つの結合パートナー(23、24)対が同定される、実施態様のさらなる概略図を描写する。インビトロ翻訳に続いて、各ペプチドおよび/またはタンパク質が、それをコードするcDNA分子にリンカー分子(25)を通じて結合する。区画(図5D)内では結合パートナーが結合され、区画崩壊後に増幅される。
【図5】本発明の方法を使用して形成された、結合核酸分子のライブラリーのゲル電気泳動法を描写する。複合核酸分子をプローブして、標的特異性オリゴヌクレオチドとユニバーサルプライマーを使用したPCRにより、特定の標的ペプチドまたはタンパク質分子の相互作用物を同定し得る。標的タンパク質1(レーン1)および標的タンパク質2(レーン2)に対する異なる複合核酸分子(相互作用タンパク質をコードする)がPCRによって増幅される、代表的なゲルを示す。
【図6A】本発明の方法への組み込みに適した、当該技術分野で使用される技術である、酵母ツーハイブリッドシステムを図示する。
【図6B−1】標的ペプチドまたはタンパク質(12)の結合パートナーを同定する方法の概略図を示す。複数のメンバーコーディング核酸分子(3、15、17)は、標的ペプチドまたはタンパク質(12)をコードする配列を有する核酸分子(2)を使用した、宿主細胞(79)内への導入によって、スクリーニングされる。メンバーコーディング核酸分子は、それぞれのペプチド/タンパク質(13、14)と第1の相補部分(76)との融合タンパク質をコードする。それに応じて、標的ペプチドまたはタンパク質(12)は、第2の相補部分(75)との融合ペプチド/タンパク質として発現される。その中で相補部分細胞がレポーターペプチドを形成する(81)を同定し得る。このような細胞を収集して、別々の区画に分散させる。結合パートナーをコードする核酸は、例えば図3に示される実施例と類似した様式で、結合され回収される。
【図6B−2】標的ペプチドまたはタンパク質(12)の結合パートナーを同定する方法の概略図を示す。複数のメンバーコーディング核酸分子(3、15、17)は、標的ペプチドまたはタンパク質(12)をコードする配列を有する核酸分子(2)を使用した、宿主細胞(79)内への導入によって、スクリーニングされる。メンバーコーディング核酸分子は、それぞれのペプチド/タンパク質(13、14)と第1の相補部分(76)との融合タンパク質をコードする。それに応じて、標的ペプチドまたはタンパク質(12)は、第2の相補部分(75)との融合ペプチド/タンパク質として発現される。その中で相補部分細胞がレポーターペプチドを形成する(81)を同定し得る。このような細胞を収集して、別々の区画に分散させる。結合パートナーをコードする核酸は、例えば図3に示される実施例と類似した様式で、結合され回収される。
【図6B−3】標的ペプチドまたはタンパク質(12)の結合パートナーを同定する方法の概略図を示す。複数のメンバーコーディング核酸分子(3、15、17)は、標的ペプチドまたはタンパク質(12)をコードする配列を有する核酸分子(2)を使用した、宿主細胞(79)内への導入によって、スクリーニングされる。メンバーコーディング核酸分子は、それぞれのペプチド/タンパク質(13、14)と第1の相補部分(76)との融合タンパク質をコードする。それに応じて、標的ペプチドまたはタンパク質(12)は、第2の相補部分(75)との融合ペプチド/タンパク質として発現される。その中で相補部分細胞がレポーターペプチドを形成する(81)を同定し得る。このような細胞を収集して、別々の区画に分散させる。結合パートナーをコードする核酸は、例えば図3に示される実施例と類似した様式で、結合され回収される。
【図7】2つの細菌細胞系中に存在するプラスミド挿入断片の同族結合の交差試験を描写する。細胞は下述するように乳化され処理される。レーン1:非乳化水性対照。レーン2:エマルジョン反応からの上部画分。レーン3:エマルジョン反応からの中間画分。レーン4:エマルジョン反応からの下部画分。M:分子量マーカー。
【図8A】反応混合物中で乳化された異なる挿入断片(黒、斜線、点描、菱模様)を有する2つの異なるプラスミド(白色および格子縞ドーナツ)をそれぞれ含有する細胞を示す。乳化は、細胞の個々の区画への分離、およびプラスミド挿入断片(生成物AおよびB)の正確な(クローン)結合を確実にする。
【図8B】図示されるように、乳化の不在下では、細胞(そしてプラスミド)は結合手順中に自由に相互作用して、正確な結合生成物(AおよびB)と、不正確な結合生成物(CおよびD)の双方をもたらす。
【図9】本発明の方法におけるエマルジョン最適化を模式的に示す。A:図示される、様々な混合時間、および異なる界面活性剤濃度の2つの油相が使用された。エマルジョン分解は、試験管底の水相蓄積量を測定することでモニターした。B:酵母細胞(矢印)を含有する、最適化されたエマルジョンの代表的な画像である。C:酵母細胞(矢印)を含有する、最適化されたエマルジョンの代表的な画像である。
【図10】相互作用パートナーcDNAの結合分析を図示する。A:2、3:YC16_14とYc16_6間の同族対形成から生じた、正確にスプライスされた1350bpおよび1200bpのバンドである。1,4:(T=エマルジョンSOE−PCRの上部画分およびB=下部画分、B’=分解エマルジョン;M=分子量マーカー)。B:エマルジョン中のネステッド二次PCRである。
【図11】相互作用パートナーcDNAとの結合分析のさらなる実施例である。1:上部エマルジョン画分、2:中間エマルジョン画分、3:下部エマルジョン画分、4:分解エマルジョン画分、5:水性対照、M:分子量マーカー、1’〜5’:レーン1〜5のネステッド二次PCR。YC9(A)中の2つの挿入断片とYC3(B)中の2つの挿入断片の間の同族対形成から正確にスプライスされた1100bpおよび625bpのバンドを不正確な結合(C、D)と対比して示す。
【図12A】モデル選択および検出閾値である(T=エマルジョンSOE−PCRの上部画分およびB=下部画分、B’=分解エマルジョン、Aq=非乳化水性対照;M=分子量マーカー)。エマルジョンSOE−PCRと、引き続く250,000個のYC16ライブラリー細胞による、1000、100、10、および0個のYC8細胞の二次PCRである。
【図12B】モデル選択および検出閾値である(T=エマルジョンSOE−PCRの上部画分およびB=下部画分、B’=分解エマルジョン、Aq=非乳化水性対照;M=分子量マーカー)。エマルジョンSOE−PCRと、引き続く250,000個のYC16ライブラリー細胞による、500、300、200、100、および0個のYC8細胞の二次PCRである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
タンパク質−タンパク質相互作用は、全ての生物学的過程の基本的構成要素である。細胞内の包括的タンパク質−タンパク質相互作用ネットワークを明らかにする、多数の技術が開発されている。例えばツーハイブリッド法、特に全ゲノムでの酵母ツーハイブリッドスクリーニングは、全ての可能な二体相互作用の並行および生体内照合ができるので、それらはこの文脈で有望と見なされている。しかしこれらの努力は処理能力問題によって制限され、これらのスクリーニングの配列決定能力と一次情報内容は都合のよい形式でない。
【0026】
本発明は、一対の結合パートナーを同定する方法を提供する。したがっていくつかの実施態様では、方法はまた、標的分子が、複数の検体分子の中のいずれかのメンバーと相互作用するか、すなわちそれに結合するかまたはそれと複合体を形成するかどうかを判定する方法と定義されてもよい。本発明に従った方法は、ハイスループット法をはじめとするスクリーニング法として実施されてもよい。結合パートナーの1つが既知である場合、方法は既知のパートナーを提供し、それを複数の試験パートナー、すなわち検体分子に接触させるステップを含んでもよい。
【0027】
本発明に従った方法は、相互作用パートナーのインビトロ区画化連結(in vitro Compartmentalized Linkage of Interacting Partners)またはiCLIPと称し得る技術において、インビトロ区画化などの区画化を用いる。このような方法は、結合タンパク質をコードする遺伝子が、DNAの単一セグメントに結合できるようにする。その結果、例えば多様なツーハイブリッドアッセイからの情報を容易に保存、複製、および調査し得る。
【0028】
一態様では本発明は、2つまたは少なくとも2つ、3つまたは少なくとも3つ、4つまたは少なくとも4つ、5つまたは少なくとも5つ、6つまたは少なくとも6つ、7つまたは少なくとも7つ以上の検体分子などの複数の検体分子中で、少なくとも1つの標的分子の結合パートナーを同定する方法を提供する。標的分子は、標的標識核酸分子と物理的に結合され、例えば物理的に結合される。標的分子と、それに結合した標的標識核酸分子の間の物理的な結合は、あらゆる性質であってもよい。物理的な結合は、いくつかの実施態様では、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、リボソーム、およびあらゆるその組み合わせのうちの1つを含んでもよい。それぞれの細胞は、例えば原核または真核細胞であってもよい。使用してもよい3つの説明に役立つ真核細胞の実例は、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)などの酵母、Sf9細胞などの昆虫細胞、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などの真菌細胞である。2つの説明に役立つ原核細胞の実例は、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)である。
【0029】
標的分子は、例えばペプチド、タンパク質、ペプトイド、代謝産物、薬剤分子、薬剤候補分子、薬剤代謝産物、脂質、炭水化物、ビタミン、合成ポリマー、細胞、微生物、ウィルスまたはあらゆるその組み合わせのうちの1つを含んでもよい。標的標識核酸分子は、標的標識核酸分子と結合される、標的分子を同定するのに適した特定のヌクレオチド配列を有しまたは含む。いくつかの実施態様では、標的標識核酸分子は、DNAまたはRNAでありまたはそれを含む。標的分子が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および核酸の1つであるいくつかの実施態様では、標的標識核酸分子は、標的標識核酸分子と結合する標的分子をコードするヌクレオチド配列を含む。それぞれの核酸分子は、いくつかの実施態様ではアプタマーである。
【0030】
方法は、1つ以上の標的分子を提供するステップを含む。方法はまた、複数の検体分子を提供するステップも含む。典型的に標的分子および検体分子は、例えば水溶液のような極性溶媒などの適切な溶媒の溶液中に提供される(例えば下記も参照されたい)。いくつかの実施態様では、標的分子の物理的性質次第で、例えば水溶液などの極性溶媒であってもよい、核酸分子の取り扱い、および標的分子の取り扱いに適した液体中に、複数の検体分子が提供される。
【0031】
本方法は、標的分子を複数の検体分子に接触させるステップを含む。選ばれた標的分子に対する結合パートナーを定義しうるあらゆる検体分子が複数の検体分子に含まれていてもよい。検体分子は、例えばペプチド、タンパク質、ペプトイド、代謝産物、薬剤分子、薬剤候補分子、薬剤代謝産物、脂質、炭水化物、ビタミン、合成ポリマー、細胞、微生物、ウィルスまたはあらゆるその組み合わせのうちの1つを含んでもよい。
【0032】
少なくとも1つの標的分子の結合パートナーは、この複数の検体分子の中のメンバーであることが疑われる。複数の検体分子の中の各メンバーは、検体標識核酸分子と物理的に結合される。それぞれの検体標識核酸分子は、例えばDNAまたはRNAであってもまたはそれを含んでもよい。各検体標識核酸分子は、それぞれの検体標識核酸分子と結合する検体分子を同定するのに適した選ばれたヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、複数の検体分子のそれぞれはペプチドまたはタンパク質であり、検体分子をコードするヌクレオチド配列を含む検体標識核酸分子がそれと結合されている。これらの実施態様のいくつかでは、検体分子を同定するのに適した選ばれたヌクレオチド配列は、検体分子をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様では、検体標識核酸分子はtag配列をさらに含む。このtag配列は、ペプチドtagをコードしてもよい。
【0033】
したがっていくつかの実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質が複数の検体分子を定義する。このような複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、いくつかの実施態様では、複数のメンバーコーディング核酸分子を提供することによって形成される。メンバーコーディング核酸分子のそれぞれは、複数の検体分子を定義する、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の1つのメンバーをコードするヌクレオチド配列を有してもよい。メンバーコーディング核酸分子のヌクレオチド配列が発現されてもよく、それによってコードされたタンパク質またはペプチドが形成される。さらにメンバーコーディング核酸分子と、同核酸分子によってコードされるペプチドまたはタンパク質の間に物理的結合が形成されてもよい。メンバーコーディング核酸分子と、同核酸分子によってコードされるペプチドまたはタンパク質の間の物理的結合は、いくつかの実施態様ではcis結合である。メンバーコーディング核酸分子と、複数のペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーとの間に物理的結合を形成させることは、いくつかの実施態様では、ピューロマイシンに対する共有結合、リボソームとの複合体、バクテリオファージまたはウィルス粒子中の封入の1つを含んでもよい。いくつかの実施態様では、標的分子を同定するのに適した特定のヌクレオチド配列は、標的分子をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0034】
いくつかの実施態様では、メンバーをコードする複数の核酸分子の各1つが、例えばプラスミドである1つのベクターに含まれる。したがって個々のベクターは、メンバーコーディング核酸分子の各1つを保有してもよい。
【0035】
標的分子との複合体を形成できることが疑われる検体分子と、それと結合する検体標識核酸分子との物理的な結合は、どのような性質であってもよい。いくつかの実施態様では、検体分子と、それぞれの検体標識核酸分子の物理的な結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、リボソーム、およびあらゆるその組み合わせのうちの1つを含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施態様では、標的分子と標的標識核酸分子の間、および各検体分子と検体標識核酸分子の間の物理的な結合は細胞である。このような実施態様では、細胞は、標的分子、標的標識核酸分子、検体分子、および検体標識核酸分子を含んでもよい。標的分子は第1の相補部分と共役していてもよく、複数の検体分子の中の各メンバーは第2の相補部分と共役し、例えば共有結合していてもよい。さらにこのような実施態様では、第1および第2の相補部分は、物理的に接近させた際に互いに補完してもよい。それにより、それらは一緒になってレポーター因子を定めてもよい。
【0037】
それぞれのレポーター因子は、適切な宿主細胞の表現型に影響を及ぼすタンパク質発現を活性化できる因子であってもよい。第1および第2の相補部分は、いくつかの実施態様では2つのタンパク質断片であってもよい。2つの断片は、例えばタンパク質の2つのドメインを定めるものであってもよい。いくつかの実施態様では、第1および第2の相補部分を細胞内で発現させることができる。いくつかの実施態様では標的分子および第1の相補部分が、標的標識核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれる。いくつかの実施態様では、複数の検体分子の各1つと第2の相補部分が、検体標識核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれる。
【0038】
上で説明したように、標的分子は、標的標識核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれてもよい。このような実施態様では、検体分子は、例えば検体標識核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれてもよい。このような実施態様では、融合タンパク質は、例えば適切な条件下において、複数の細胞内で標的標識核酸分子および複数の検体標識核酸分子を発現させることで提供されてもよい。本発明の方法のいくつかの実施態様では、およそ1つの標的標識核酸分子とおよそ1つの検体標識核酸分子の一対のみの発現を複数の細胞のそれぞれの中で生じさせる。およそ1つの標的標識核酸分子とおよそ1つの検体標識核酸分子の対は、例えばツーハイブリッドシステムを使用して発現させてもよい。
【0039】
標的分子を複数の検体分子と接触させることで、混合物が形成される。いくつかの実施態様では、この混合物は、核酸分子の取り扱いならびに標的分子の取り扱いに適した液体に含まれる。この液体を第1の液体としてもよい(下記参照)。本発明の方法では、標的分子とその結合パートナー間の複合体の形成を混合物中で生じさせる。
【0040】
いくつかの実施態様では、本方法は、複数の検体分子中の少なくとも2つの標的分子の結合パートナーを同定する方法である。したがってこのような実施態様では、標的分子または標的分子群は、複数の検体分子に含まれることが疑われ、または含まれる。このような実施態様では、混合物の形成は、少なくとも2つの標的分子と複数の検体分子とを接触させることで実施される。
【0041】
さらに本発明の方法では、混合物は各区画が、標的分子を最大でおよそ1つ、または標的分子と検体分子間の複合体を最大でおよそ1つ含み、または有するように、複数の区画に分けられる。いくつかの実施態様では、複数の区画への混合物の分画は、各区画が標的分子を最大でおよそ1つ、標的分子と検体分子間の複合体を最大でおよそ1つ、または検体分子を最大でおよそ1つ含むように実施される。それが検体分子と少なくとも1つの標的分子とを複合体の形成が生じ得る程度に無傷に保ちさえすれば、混合物を複数の区画に分ける、当該技術分野で知られているあらゆる技術を用いてもよい。上述のように、いくつかの実施態様ではこの混合物は、核酸分子の取り扱いならびに標的分子の取り扱いに適した第1の液体に含まれる。このような実施態様では、複数の区画への混合物の分画は、第2の液体を添加するステップを含んでもよい。このような第2の液体は、第1の液体と非混和性であってもよい。いくつかの実施態様では、複数の区画への混合物の分画は、相分離させるステップを含む。相分離では2つの相が形成される。第1段階は第1の液体によって定義され、第2の相はそれに添加される第2の液体によって定義される。典型的に第1段階は第2の相内に複数の区画を形成する。
【0042】
いくつかの実施態様では、複数の区画への混合物の分画は乳化を含む。複数の区画への混合物の分画は、例えば油中水滴型エマルジョン、イオン液体中水エマルジョンまたは水中水エマルジョンを形成するステップを含んでもよい。複数の区画への混合物の分画は、いくつかの実施態様では、標的分子と結合パートナー間に複合体を形成させた後に実施される。
【0043】
混合物を複数の区画に分けることで、標的分子と検体分子間の複合体が、複数の検体分子の残りのメンバーから分離される。いくつかの実施態様では、混合物を複数の区画に分けた後に、標的分子の結合パートナーを定義する検体分子と、それと結合する検体標識核酸分子の間の物理的な結合が解かれる。それによって検体標識核酸分子が遊離される。本本発明の方法は、標的標識核酸分子と検体標識核酸分子とを結合させるステップをさらに含む。その結果、複合核酸分子が形成される。
【0044】
複数の区画は崩壊されて、複合核酸分子が回収される。複合核酸分子の回収は、いくつかの実施態様では、標的標識核酸分子配列の一部と相補的な少なくとも1つのプライマーを使用して、プライマーベースの核酸増幅を実施するステップを含んでもよい。説明に役立つプライマーベース核酸増幅の2つの例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法または等温増幅法を実施してもよい。等温増幅法は、例えば鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベース増幅法またはローリングサークル増幅法として実施してもよい。PCR法は、一対の第1および第2のプライマーを使用して実施してもよい。第1のプライマーは、標的標識核酸分子の配列の一部と相補的である。第2のプライマーは、ユニバーサルプライマーであってもよい。プライマーベースの核酸増幅を実施することで、複合核酸分子を増幅してもよい。複合核酸分子を回収するステップは、いくつかの実施態様では、混合物を捕捉プローブに添加するステップを(それに加えてまたはそれの代わりに)含んでもよい。このような捕捉プローブは、標的分子とその結合パートナー間の複合体に会合できてもよい。さらに捕捉プローブを回収してもよい。それによって標的分子とその結合パートナー間の複合体が回収される。
【0045】
いくつかの実施態様では本方法は、例えば増幅された複合核酸分子を抽出することによって、同物質を精製するステップをさらに含む。
以下において、その中で少なくとも1つの結合パートナーがペプチドおよび/またはタンパク質である実施態様の手段により、本発明の方法を説明し例証する。本発明の方法を使用して、複数対の結合パートナーが同様に同定され得るものと理解される。明確さのために、複数対の結合パートナーの適用性は説明全体を通じて常に述べず、時折言及するに留める。結合パートナーの双方があらゆる分子、細胞、ウィルスまたは微生物であってもよいが、ここで結合パートナーの片方または双方がペプチドまたはタンパク質である実施態様に着目する。結合パートナーの1つがペプチドまたはタンパク質と異なる実施態様では、この結合パートナーは標的分子と称されてもよい。したがってこのような実施態様では、方法はまた、標的分子の結合パートナーであるペプチドおよび/またはタンパク質を同定する方法ともみなし得る。標的分子は、ペプチドまたはタンパク質と複合体を形成できるあらゆる分子を含み、またはそれであってもよい。
【0046】
適切な標的分子の例としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプトイド、核酸分子、代謝産物、薬剤分子、薬剤候補分子、薬剤代謝産物、脂質、炭水化物、ビタミン、合成ポリマー、細胞、微生物、ウィルスまたはあらゆるその組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。標的分子は、複数の検体分子中の分子であってもよい。標的分子はまた、ペプチドまたはタンパク質と複合体を形成できる核酸であってもよい。この点において説明に役立つ実例は、オリゴ核酸であるアプタマーである。アプタマーは、抗体と比較し得る特性を有する。アプタマーは、自動化された様式で実施し得る工程である、系統立ったインビトロ選択によって典型的に改変される。したがっていくつかの実施態様では、本発明に従った方法はアプタマーをスクリーニングする方法である。本発明に従った方法の一実施態様では、複数の例えば標識されたアプタマーのライブラリーをペプチド/タンパク質のライブラリーと対照して、スクリーニングしてもよい。ペプチド/タンパク質のそれぞれは、ペプチド/タンパク質をコードする配列を含んでもよい、標識核酸分子と物理的に結合され、例えば物理的に結合される。それぞれの方法は、複合核酸のライブラリーを生じる(例えば作成する)方法であってもよい。これらの複合核酸はアプタマーの配列、およびアプタマーの結合パートナーを定義するタンパク質をコードする配列を有する。
【0047】
核酸分子とペプチド/タンパク質の相互作用の多数のその他の例が、知られている。説明に役立つ実例として、RNA結合タンパク質Musashi1とダブルコルチン遺伝子のmRNAの特異的相互作用が、mRNAディスプレイ技術の実施態様を使用して同定されている(Horisawa,K.,et al.,FEBS Lett.(2009)583,14,2429−2434)。本発明に従った方法を使用して、同様のスクリーニングを実施し得る。当業者は、さらに本発明に従った方法が、一度に1つの標的分子の結合パートナーを同定させるだけでなく、多数の個々のスクリーニングを並行して行う必要なしに、結合パートナーについてあらゆる所望の数の標的分子を分析してもよいことを理解するであろう。この利点のために、本発明はハイスループットスクリーニングアプローチに特に適する。
【0048】
標的分子は、あらゆる起源のあらゆるサンプルに含まれてもよい。それは例えばヒトまたは非ヒト動物、植物、細菌、ウィルス、胞子、真菌、または原生動物、または合成または生物学的起源の有機または無機材料に由来してもよいが、これに限定されるものではない。したがって土壌サンプル、空気サンプル、環境サンプル、細胞培養物サンプル、骨髄サンプル、降雨サンプル、放射性降下物サンプル、下水サンプル、地表水サンプル、擦傷サンプル、考古学サンプル、食品サンプル、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、尿サンプル、大便サンプル、精液サンプル、リンパ液サンプル、脳脊髄液サンプル、鼻咽頭洗浄サンプル、痰サンプル、口腔スワブサンプル、喉スワブサンプル、鼻腔スワブサンプル、気管支肺胞洗浄サンプル、気管支分泌物サンプル、乳サンプル、羊水サンプル、生検サンプル、がんサンプル、腫瘍サンプル、組織サンプル、細胞サンプル、細胞培養物サンプル、細胞溶解産物サンプル、ウィルス培養物サンプル、爪サンプル、毛髪サンプル、皮膚サンプル、法医学サンプル、感染症サンプル、院内感染症サンプル、製造サンプル、薬剤調製品サンプル、生体分子、製造サンプル、タンパク質調製品サンプル、脂質調製品サンプル、炭水化物調製品サンプル、空間サンプル、地球外サンプル、またはあらゆるその組み合わせからなる群から選択されるがこれに限定されるものではないサンプルが、本発明の方法で処理されてもよい。所望ならば、それぞれのサンプルは、任意の程度に前処理されていてもよい。説明に役立つ実例として、組織サンプルは、本発明の装置と共に使用する前に、消化、均質化または遠心分離されていてもよい。サンプルは、さらに溶液などの流体の形態に調製されていてもよい。例としては、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、タンパク質、生化学組成物、有機化学組成物、無機化学組成物、合成ポリマー、金属、脂質、炭水化物、コンビナトリアルケミストリー、薬剤候補分子、薬剤分子、薬剤代謝産物、またはあらゆるそれらの組み合わせの溶液またはスラリーが挙げられるがこれに限定されるものではない。さらなる例としては、金属懸濁液、金属合金懸濁液、および金属イオン溶液またはあらゆるその組み合わせ、ならびに細胞、ウィルス、微生物、病原体、放射性化合物またはあらゆるそれらの組み合わせの懸濁液が挙げられるが、これに限定されるものではない。サンプルは、前述の例のあらゆる組み合わせをさらに含むものと理解される。説明に役立つ実例としては、核酸分子である標的分子を含むサンプルは、例えば総mRNAサンプルなどのヒトまたはマウスサンプルなどの哺乳類サンプルであってもよい。
【0049】
「核酸分子」という用語は、本明細書での用法では、一本鎖、二本鎖またはその組み合わせなどのあらゆる可能な構造中のあらゆる核酸を指す。核酸としては、例えばDNA分子やRNA分子;ヌクレオチド類似体を使用して、または核酸化学、ロックド核酸分子(LNA)、タンパク質核酸分子(PNA)、およびtecto−RNA分子を使用して作成されるDNAまたはRNA類似体が挙げられる(例えばLiu,B.,et al.,J.Am.Chem.Soc.(2004)126,4076−4077)。PNA分子は、その中で主鎖が糖ではなく、擬ペプチドである核酸分子である。したがってPNAは一般に、例えばDNAまたはRNAとは対照的に、荷電中性主鎖を有する。それにもかかわらずPNAは、例えば(それに対してPNAが構造的な模倣物であると考えられる)DNAまたはRNAと全く同じように、少なくとも相補的であり実質的に相補的な核酸ストランドとハイブリッドできる。LNA分子は、修飾RNA主鎖を有して、C4’とO2’の間にメチレン橋があり、それはN型構造中でフラノース環をロックして、それぞれの分子により高い二本鎖安定性とヌクレアーゼ耐性を提供する。PNA分子とは異なり、LNA分子は荷電主鎖を有する。DNAまたはRNAはゲノム起源または合成起源であってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。このような核酸は、例えばmRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA合成DNA、DNAおよびRNA共重合体、オリゴヌクレオチドなどであり得る。それぞれの核酸はまた、非天然ヌクレオチド類似体をさらに含有してもよく、および/または親和性タグまたは標識に結合してもよい。
【0050】
多数のヌクレオチド類似体が知られており、本発明の方法で検出および/または使用し得る(下記参照)。ヌクレオチド類似体は、例えば塩基、糖、またはリン酸部分に修飾を含有するヌクレオチドである。説明に役立つ実例として、2’F、2’O−Meまたは2’H残基による、siRNAの2’−OH残基の置換は、それぞれのRNAの生体内安定性を改善することが知られている。塩基部分の修飾としては、A、C、G、およびT/U;ウラシル−5−イル、ヒポキサンチン−9−イル、および2−アミノアデニン−9−イルなどの異なるプリンまたはピリミジン塩基;ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド塩基の天然および合成修飾が挙げられる。その他のヌクレオチド類似体は、ユニバーサル塩基の役割を果たす。ユニバーサル塩基としては、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールが挙げられる。ユニバーサル塩基は、あらゆるその他の塩基と塩基対を形成できる。塩基修飾は、例えば二本鎖安定性の増大などのユニークな特性を達成するために、例えば2’−O−メトキシエチルなどの糖修飾と組み合わせ得ることが多い。
【0051】
いくつかの実施態様では、複数の標的分子の結合パートナーが同時に、すなわち方法をいくつも並行して実施することなしに同定される。したがって、方法は複数の検体分子中の少なくとも2つの標的分子の結合パートナーを同定する方法であってもよい。したがって結合パートナーを含むことが疑われる複数の検体分子に標的分子を添加する実施態様では、関心のある複数の標的分子、すなわち場合によっては2つ以上の標的分子が本発明の方法で使用される。
【0052】
上述のように、標的分子の結合パートナーは、ペプチドおよび/またはタンパク質であってもよく、またはそれを含んでもよい。「ペプチド」という用語は、本明細書での用法ではオリゴペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をはじめとするあらゆるペプチドを指す。アミノ酸鎖に加えて、「ペプチド」という用語はまた、グリコシル化、メチル化、アセチル化、リン酸化、硫酸化、脱アミド、ユビキチン化などのあらゆるその共翻訳および翻訳後修飾も含む。したがって「ペプチドおよび/またはタンパク質」という表現が本明細書で使用される場合、対応する分子はオリゴまたはポリペプチドだけでなく、タンパク質であってもよいことの明確化が意図される。結合パートナーがペプチド(タンパク質など)であり、またはそれを含む実施態様では、標的分子の結合パートナーは、複数のペプチドおよび/またはタンパク質に含まれることが疑われるかもしれない。この複数のペプチドおよび/またはタンパク質中で、それぞれの結合パートナーが同定される。したがって本発明の方法は、例えばペプチドおよび/またはタンパク質のライブラリーをスクリーニングするために、スクリーニング法として使用し得る(上記もまた参照)。典型的に本発明に従った方法は、標的分子の結合パートナーを含むことが疑われる複数のペプチドおよび/またはタンパク質を選択ならびに提供するステップを含む。いくつかの実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質はまた、標的分子も含む。いくつかの実施態様では、標的分子が複数のペプチドおよび/またはタンパク質に添加される。標的分子がペプチドまたはタンパク質である実施態様では、標的分子は、いくつかの実施態様では、標的分子の結合パートナーを含むことが疑われる複数のペプチドおよび/またはタンパク質に含まれる。標的分子が核酸分子である実施態様では、方法は、いくつかの実施態様では、核酸分子が複数のペプチドおよび/またはタンパク質のいずれかと複合体を形成するか、または相互作用するかどうかを判定するスクリーニング法である。
【0053】
提供されまたは形成される場合、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、いくつかの実施態様では、メンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される。いくつかの実施態様では、対応する物理的な結合はまた、本発明の方法を実施する途上で形成されてもよい。このような実施態様では、ペプチドおよび/またはタンパク質は、提供される際に、メンバーコーディング核酸分子とまだ物理的に結合されていない。しかしあらゆる場合で、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと、対応するメンバーコーディング核酸分子の物理的な結合は、ある時点において存在し、または確立されている。この時点は典型的に、一対の核酸分子を連結させることによって定義される。この核酸分子対は、標的分子とその結合パートナーが複合体を形成する場合、標的分子とその結合パートナーをコードする核酸分子であり、またはそれに相当する(下記もまた参照されたい)。2つの核酸分子の結合後、物理的な結合が解かれてもよい。いくつかの実施態様では、メンバーコーディング核酸分子によってコードされるペプチドまたはタンパク質が、変性、中断または破壊される。これは例えば標的標識および検体標識核酸分子(または場合によっては、メンバーコーディング核酸分子)の複合核酸分子が、PCR技術の手段によって形成される実施態様で起きる(下記参照)。それによって標的分子と検体分子間の複合体が、同様に中断されまたは消滅してもよい。このような実施態様では、それぞれの核酸分子と、標的および検体分子複合体の物理的な結合は、複合体標的および検体分子複合体の崩壊のために、および/または片方または双方の結合パートナーの破壊のために適宜に解かれてもよい。
【0054】
物理的な結合は、空間的な結合、共通の規定相による結合、または化学結合をはじめとする引力を通じた結合などの多様な具現化をとってもよい。ペプチド/タンパク質は、例えばメンバーコーディング核酸分子に結合していてもよく、それはcis結合であってもよい。このメンバーコーディング核酸分子としては、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のそれぞれのメンバーをコードする配列が挙げられる。したがってその1つ以上が標的分子と複合体を形成できることが疑われるペプチドおよび/またはタンパク質のそれぞれは、核酸分子上でそれをコードする配列と共役される。
【0055】
複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、あらゆる所望の結合で、対応するメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合されてもよい。メンバーのそれぞれを対応するメンバーコーディング核酸分子と結合させる手段は、メンバーのそれぞれについて独立して選択されてもよい。いくつかの実施態様では、メンバーは全て同一の手段を通じて、それらのメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される。ペプチドおよび/またはタンパク質と、メンバーコーディング核酸分子の適切な物理的な結合の例としては、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームが挙げられるが、これに限定されるものではない(図1もまた参照されたい)。連結分子は、ペプチド、低分子量有機化合物、オリゴマー有機化合物、またはポリエチレングリコールなどの高分子有機化合物、核酸分子、脂質分子またはオリゴ糖類または多糖類などのあらゆる所望の分子であってもよい。
【0056】
細胞が物理的な結合を提供する場合、あらゆる細胞を本発明の方法で使用してもよい。細胞は、原核生物または真核生物であってもよい。原核生物宿主の適切な例としては、大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)(例えば枯草菌(B.subtilis))、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、およびセラチア(Serratia)などの細菌が挙げられるが、これに限定されるものではない。原核生物宿主は一般に非常に効率的であり、異種性ペプチド/タンパク質発現にとって都合がよい。しかし発現の観点から(下記もまた参照されたい)、グリコシル化などの特定の翻訳後修飾は、追加的因子の発現を必要とする。真核生物の宿主の例としては、酵母、真菌、昆虫細胞、例えば組織培養中の哺乳類細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。発現の観点から、酵母などの真核細胞はかなりの利点を提供し、それらは翻訳後修飾もまた行い得る。S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)などの酵母は、例えばクローン化哺乳類遺伝子上のリーダー配列を認識して、リーダー配列のあるペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。細胞はまた、体細胞であってもよい。体細胞は、例えば皮膚、腎臓、脾臓、副腎、肝臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、胃、大腸、小腸、脾臓、膀胱、前立腺、精巣の、胸線、筋肉、結合組織、骨、軟骨、脈管組織、心臓、眼または神経組織などのあらゆる組織細胞であってもよい。体細胞は、それぞれの組織から得られ、それに由来し、またはそれから単離されてもよい。細胞は、例えば生検または血液サンプルなどのサンプルの形態で、それぞれの宿主生物から直接採取されてもよい。それはまた宿主生物に由来して、引き続いて培養、増殖、形質転換され、または選ばれた処置に曝露されてもよい。それらはまた、細胞系の細胞であってもよい。例えば多種多様な哺乳類細胞系を当該技術分野で利用できる。例えば細胞が宿主細胞として使用され、および/または上で説明したような物理的な結合が提供される、本発明に従った方法は、一般に例えば細胞集団などの複数の適切な細胞を提供するステップを含む。また下でも説明されるように、いくつかの実施態様では、複数の細胞はまた、収集された(「採取された」)細胞コロニーであってもよい。上で詳述された物理的な結合を提供する複数の細胞はまた、本発明の方法ですぐに使用できる、細胞ライブラリーの形態で提供されてもよい。
【0057】
いくつかの実施態様では、例えば検体ペプチドおよび/またはタンパク質である、複数の検体分子の中の各メンバーは、空間的な結合の手段によって、メンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される。このような実施態様では、典型的に、明確な境界のある限定された円周空間が、それぞれの検体分子(例えばタンパク質/ペプチド)の双方を包含する。このような空間的な結合の説明に役立つ実例は、細胞である。適切な細胞内に核酸分子を導入し、核酸分子に含まれる配列によってコードされるペプチド/タンパク質を細胞内で発現させてもよい。
【0058】
上で既に指摘したように、ペプチドおよび/またはタンパク質は、例えば結合した核酸分子上にそれらをコードする配列があってもよい。物理的結合が提供されるこのような実施態様では、標的分子の可能な結合パートナーは、核酸部分とペプチドおよび/またはタンパク質部分の双方を含んだ複数のハイブリッド分子のメンバーの形態で提供されてもよい。このようなハイブリッド分子は、1つ以上のその他の核酸配列、ならびにさらなるペプチドおよび/またはタンパク質部分を含む1つ以上の追加的部分を含んでもよい。このようなさらなるペプチドおよび/またはタンパク質部分の一例は、ペプチドリンカーまたはタンパク質リンカーであり、それはメンバーコーディング核酸分子を複数の可能な標的分子の結合パートナーのメンバーであるペプチドまたはタンパク質に結合してもよい。
【0059】
いくつかの実施態様では、物理的結合は、ペプチド/タンパク質またはその他の検体分子と、対応するコード化をはじめとする標識する核酸分子との物理的な結合の役割を果たす。このような実施態様では、メンバーコーディング核酸分子と、ペプチドおよび/またはタンパク質の間に、共有結合が形成されてもよい。このような共有結合は、例えば5’−チオール化核酸分子などの一端に1つ以上の修飾塩基または核酸分子修飾がある核酸分子を使用することで得られてもよい。メンバーコーディング核酸分子の5’−末端(Olejnik,J.,et al.,Nucleic Acids Research(1999)27,23,4626−4631)またはその中のヌクレオチドの2’−位置(Zatsepin,T.S.,et al.,Tetrahedron Lett.(2005)46,3191−3195)もまた、選ばれた位置でホスホラミダイト部分に結合していてもよく、対応するペプチドまたはタンパク質と共有結合している反応性官能基を通じて結合していてもよい。このようにしてOlejnikら(1999年,前出)によって記載されるような光開裂性結合が提供され得る。ペプチドまたはタンパク質への共有結合のために使用してもよい修飾塩基のさらなる例は、Tetzlaffらによって記載されるようにチミジンおよびテトラクロロフタルイミドから得られてもよい、5’−アミノ−5’−デオキシチミジンである(Tetrahedron Lett.(1998)39,4215−4218)。それをその5’−メトキシトリチル保護3’ホスホラミダイトに転換することで、この塩基は、核酸分子へのカップリングのために利用できる1つの残基と、ペプチドまたはタンパク質へのカップリングのために利用できる1つの残基を有する(同節)。核酸分子はまた、「click反応」として当業者に知られている[3+2]付加環化反応中で、アルキン終結部分にも結合していてもよく、4−アジドプロリル基を有するペプチドまたはタンパク質と共有結合していてもよい。このアプローチはGogoiらによって、PNA分子へのペプチドのカップリングについて実証されている(Nucleic Acids Research(2007)35,21,el39)。
【0060】
メンバーコーディング核酸分子と、ペプチドおよび/またはタンパク質の間の共有結合はまた、核酸分子としてPNA分子を使用して得られてもよい。典型的にPNA分子は、反復するN−(2−アミノエチル)グリシン単位を含有する。塩基は、典型的にメチレンカルボニル結合基を通じて結合する。グリシン単位の1つ以上を例えば末端の単位を官能基があるアミノ酸で置換して、ペプチドまたはタンパク質鎖を結合させてもよい。
【0061】
別の例としては、ピューロマイシンまたはA201Aなどのアミノ−ヌクレオシド抗生物質と共有結合的に共役している核酸分子を提供してもよい。例えばその3’−末端にピューロマイシン群などのアミノヌクレオシド抗生物質がある、メンバーをコードするRNA分子は、例えばインビトロ翻訳中で形成されてもよい(例えばKurz,M.,et al.,ChemBioChem(2001)2, 666−672)。このペプチジル受容体抗生物質は、その結果、リボソーム粒子に成長するポリペプチド鎖と共有結合している。いくつかの実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーと、同物質をコードする核酸分子の間の共有結合形成において、大腸菌(E.coli)バクテリオファージP2からの複製イニシエータータンパク質を使用してもよい。複製イニシエーターは、典型的にP2Aタンパク質がそれ自身のDNAに付着することによって複製される。P2Aはウィルス性起源に結合するエンドヌクレアーゼであり、一本鎖切断「nick」を核酸分子に導入して、それからそれが発現されたDNA分子に付着する。したがってP2Aに結合しているペプチド/タンパク質の配列はインビトロ合成され得て、それ自身のコーディングDNAと共有結合的に付着するようになる。
【0062】
さらなる例として、ビオチン/(ストレプト)アビジン対などの一対の特異的に相互作用する部分を使用して、メンバーコーディング核酸分子とコードされたペプチドまたはタンパク質とを物理的に結合してもよい。ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジンの良く知られているシステムは、例えばWilchekらによって簡潔にレビューされている(Immunol.Lett.(2006)103,27−32)。一実施態様では、標準プロトコルを使用して、5’−チオール化したメンバーコーディング核酸分子をストレプトアビジンと共役させてもよい(例としてDoi et al.,Journal of Biotechnology(2007)131,231−239およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。対応するペプチドまたはタンパク質は、ビオチンと結合していてもよい。ストレプトアビジンと抱合したメンバーコーディング核酸分子、およびビオチンと抱合したペプチドまたはタンパク質を添加すると、ビオチンとストレプトアビジン間の複合体が形成し、それによってメンバーコーディング核酸分子と対応するペプチドまたはタンパク質が物理的に結合する。ビオチン化核酸分子は、例えばストレプトアビジンを含むタンパク質またはペプチドに結合してもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーは、例えば上で例証されたように、メンバーコーディング核酸分子ストランドの末端配列とハイブリッドするオリゴヌクレオチドと物理的結合し、例えば共有結合していてもよい。一本鎖のメンバーコーディング核酸分子を提供するのに続いて、次に対応するペプチドまたはタンパク質をそれにカップリングしてもよい。この点において、アミノグリコシド抗生物質などのその他の抗生物質もまた提供されてもよい。アミノヌクレオシド抗生物質の例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ネアミン、パロモマイシン、モノマイシン、ストレプトマイシン、リボスタマイシン、リビドマイシン、およびアプラマイシンが挙げられるが、これに限定されるものではない。しかしこのような抗生物質は、一般にアミノアシル化tRNAの3’末端と似ておらず、したがってリボソームで成長するペプチド鎖には転移されない。むしろそれらは、リボソームにおけるペプチジル−tRNAの転移を阻害する。それでもなお、それらはCharlesおよびArya(Journal of Carbohydrate Chemistry(2005)24,145−160)に記載されるように、例えばそれらのアミノ基を通じて核酸分子と共有結合していてもよい。さらなる官能基がアミノヌクレオシド抗生物質に導入される場合、それはこのさらなる官能基を通じてペプチドまたはタンパク質に結合してもよく、したがってリンカー分子の役割をする。
【0064】
いくつかの実施態様では、ペプチドまたはタンパク質は、メンバーコーディング核酸分子、例えばcDNA分子にハイブリダイズできる核酸分子と結合していてもよい。このような実施態様は、例えばメンバーコーディング核酸分子がRNA分子である場合など、典型的な実験室条件下でメンバーコーディング核酸分子が比較的低安定性である場合に有用かもしれない。この点において適切な技術の説明に役立つ実例が、Yamaguchiら(Nucleic Acids Research(2009),doi:10.1093/nar/gkp514)により開示されている。
【0065】
いくつかの実施態様では、ペプチドまたはタンパク質はアプタマーに結合していてもよい。アプタマーは、選ばれたその他の分子と結合するその能力に基づいて、ランダム核酸プールから選択され得る核酸分子である。いくつかの実施態様では、ペプチドまたはタンパク質は、リンカーペプチドまたはリンカータンパク質に結合していてもよい。このようなリンカーペプチドまたはリンカータンパク質は、アプタマーによって結合されたペプチドを含んでもよい。このようなリンカーペプチドまたはリンカータンパク質はまた、アプタマーに結合する抗体、その断片、または抗体様機能があるタンパク様連結分子を含んでもよく、またはそれらであってもよい。
【0066】
(組み換え)抗体断片の例は、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv断片(scFv)、二重特異性抗体、三重特異性抗体(Iliades,P.,et al.,FEBS Lett(1997)409,437−441)、十重特異性抗体(Stone,E.,et al.,Journal of Immunological Methods(2007)318,88−94)、およびその他のドメイン抗体(Holt,L.J.,et al.,Trends Biotechnol.(2003),21,11,484−490)である。一本鎖Fv断片は、例えば免疫グロブリン分子の1本の重鎖と1本の軽鎖からの可変部の融合物である。抗体様機能があるタンパク様連結分子の一例は、リポカリンファミリーのポリペプチドをベースとする突然変異タンパク質である。(国際公開第2003/029462号パンフレット;国際公開第2005/019254号パンフレット;国際公開第2005/019255号パンフレット;国際公開第2005/019256号パンフレット;Beste et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999)96,1898−1903)。ビリン結合タンパク質、ヒト好中球ゼラチナーゼ付随リポカリン、ヒトアポリポタンパク質D、ヒト涙リポカリン、またはグリコデリンなどのリポカリンは天然のリガンド結合部位を有し、それはそれらがハプテンとして知られている選ばれた小型タンパク質領域と結合するように修飾され得る。その他の非限定的例は、グルボディと称されるさらなるタンパク様連結分子(国際公開第96/23879号パンフレット参照)、アンキリン骨格ベースのタンパク質(Mosavi,L.K.,et al.,Protein Science(2004)13,6,1435−1448)、または結晶性骨格(国際公開第2001/04144号パンフレット)、Skerra(J.Mol.Recognit.(2000)13,167−187)によって記載されるタンパク質、アドネクチン、テトラネクチン、アビマー、およびペプトイドである。アビマーは、いくつかの細胞表面受容体中で複数のドメインのストリングとして生じる、いわゆるA−ドメインを含有する(Silverman,J,et al.,Nature Biotechnology(2005)23,1556−1561)。ヒトフィブロネクチンのドメインに由来するアデネクチンは、標的への免疫グロブリン様結合のために改変し得る3つのループを含有する(Gill,D.S. & Damle,N.K.,Current Opinion in Biotechnology(2006)17,653−658)。それぞれのヒトホモ三量体タンパク質に由来するテトラネクチンは、同様に所望の結合のために改変し得るループ領域をC−タイプレクチンドメイン中に含有する(同節)。タンパク質リガンドとして機能し得るペプトイドはペプチドとは異なるオリゴ(N−アルキル)グリシンであり、その中では側鎖がα炭素原子でなくアミド窒素に結合する。ペプトイドは典型的にプロテアーゼおよびその他の修飾酵素に対して抵抗性であり、ペプチドよりもはるかに高い細胞透過度を有し得る(例えばKwon,Y.−U.,and Kodadek,T.,J.Am.Chem.Soc.(2007)129,1508−1509参照)。所望ならば、あらゆるまたは特定の形態、クラスの標的物質に対する、それぞれの部分の親和性をさらに増大させる変性剤を使用してもよい。
【0067】
抗体様機能があるあらゆる形態の抗体、抗体断片またはタンパク様連結分子を選択して、メンバーコーディング核酸分子とペプチドまたはタンパク質とを物理的に結合させるリンカーペプチドを得てもよい。このような抗体、抗体断片またはタンパク様連結分子は、従来のディスプレイ技術(前出)を使用して作成してもよい。例えばLiら(Organic & Biomolecular Chemistry(2006),4,3420−3426)は、ファージディスプレイを使用して、選ばれたDNAアダプターと複合体を形成できる一本鎖Fv断片がどのように得られるかを実証した。
【0068】
いくつかの実施態様では、リンカーペプチドまたはリンカータンパク質は、ヘモフィルス・エジプチウス(Haemophilus aegyptius)のM.Hae III、ヘモフィルス・ヘモリチカス(Haemophilus haemolyticus)のM.Ha I、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)のM.Hpa I、モラクセラ(Moraxella)種のM.Msp I、アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)のAIu Iなどのメチルトランスフェラーゼ、または例えばM.Hae IIIなどのメチルトランスフェラーゼドメインを含んでもよく、またはそれらであってもよい。メチルトランスフェラーゼは、高い安定性で核酸分子にインビトロ結合することが知られている。
【0069】
Hae III DNAメチルトランスフェラーゼは、例えば配列5’−GGCC−3’または5’−GGFC−3’(F=5−フルオロ−2’−デオキシシチジン)を含む核酸分子と共有結合を形成できる。この酵素の配列特異性は、Cohenら(Protein Engineering,Design & Selection(2004)17,1,3−11)によって記載されるように、遺伝子操作および定方向進化の手段によって改変されてもよい。いくつかの実施態様では、リンカーペプチドまたはリンカータンパク質は、大腸菌(E.coli)バクテリオファージP2Aの複製イニシエータータンパク質を含んでもよく、またはそれであってもよい。この酵素はcis−nicking活性を有して、nicked核酸分子の5’末端に結合するようになる(Liu,J.,et al.,Journal of Molecular Biology(1993)231,2,361−374;Kurz, M.,et al.,ChemBioChem(2001)2,666−672でもまた示される)。
【0070】
メンバーコーディング核酸分子と、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーの間のこの物理的結合はまた、リボソームとの複合体の形成を通じて形成されてもよい(He,M.,& Taussig,M.J.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002)1,2,204−212;Yan,X.,& Xu,Z.,Drug Discovery Today(2006)11,19/20,911−916)。例えばRNA分子と、リボソームおよび新生ペプチドまたはタンパク質の複合体は、リファンピシン、クロラムフェニコールまたはシクロヘキシミドなどの抗生物質を使用した、リボソーム停止によって形成されてもよい。さらなる例として、RNA分子、リボソーム、およびペプチドまたはタンパク質の複合体を形成するために、RNA分子の停止コドンを除去してもよく、または免疫グロブリンCκドメインなどのスペーサーによって置換してもよい。(例示的手順については、Zhand,C,et al.,Nature Methods(2007)4,3,269−279,またはHe,M.,& Taussig,M.J.,Nature Methods(2007)4,3,281−288を参照されたい)。
【0071】
その形成は、例えばバクテリオファージ内への、またはレトロウィルス、バキュロウィルス、アデノ随伴ウィルスまたは肝炎ウィルスなどのウィルス粒子内への包含を含んでもよく、またはそれであってもよい。このような技術は、「ファージディスプレイ」および「ウィルスディスプレイ」の名称の下に当業者に良く知られている(概要については、Benhar,I.,Biotechnology Advances(2001)19,1−33またはDani,M.,J.of Receptor & Signal Transduction Research (2001)21,4,469−488を参照されたい)。それらは固定化免疫グロブリン上でランダムペプチド−ファージライブラリーをパニングすることで、抗体のエピトープ結合部位をマッピングする方法に由来する。例として大腸菌(E.coli)などの宿主細胞内で、同菌を死滅させることなく複製およびアセンブルする、繊維状ファージを使用してもよい。いくつかの実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、ファージコートタンパク質との融合タンパク質として発現される。したがって複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーは、ディスプレイされた融合タンパク質をコードする核酸分子と共に、ファージ粒子に組み込まれる。いくつかの実施態様では例えばファージタンパク質がその機能を維持するのには複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーが大きすぎる場合、ヘルパーファージを使用してもよい。それぞれのヘルパーファージは、使用されるファージの複製に必要とされる、全てをはじめとする1つ以上のタンパク質を提供してもよい。したがってこの技術は、「ファージレスキュー」としても当業者に知られている。
【0072】
メンバーコーディング核酸分子と、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーの間の対応する物理的結合はまた、その表面にそれぞれのペプチド/タンパク質が位置する細胞全体によって形成されてもよい。このような技術は、「細胞表面ディスプレイ」の名称の下で当業者に知られている(部分的概要については、例えばBenhar,I.,2001,前出を参照されたい)。説明に役立つ実例として、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーおよび細胞表面タンパク質(例えば受容体)を含む融合タンパク質をコードする核酸を細胞に形質移入してもよい。この目的のために、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞などのあらゆる細胞を使用してもよい。ウィルスディスプレイ技術(前出)のためにバキュロウィルスが使用される実施態様では、典型的にウィルスそれ自体と感染した昆虫細胞の双方が、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のそれぞれのメンバーを提示できるものと理解される。グラム陰性細菌が選択される実施態様では、例えば外膜タンパク質が、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーとの融合タンパク質の形成のために選択されてもよい。この点において、一般に物理的な連結でない物理的結合は、細胞内でタンパク質を発現することによってもまた提供され、タンパク質は細胞内に位置したままであることが注目される。
【0073】
核酸分子とペプチド/タンパク質の間に物理的結合を確立する上で選択される技術、ならびにその実施態様の考察のために有用かもしれない技術上の側面は、例えばGraddisら(Current Pharmaceutical Biotechnology(2002)3,285−297)によって当該技術分野で公開されている。さらなる分子の手段による物理的結合が選択される場合、このさらなる分子はまた、ナノ粒子または磁性ビーズをはじめとする粒子などの固相に結合していてもよい(例えばYamaguchi et al.,2009,前出;Horisawa et al.,2009,前出を参照されたい)。それぞれのさらなる分子はまた、染料などの検出可能な標識を有してもよい(同節)。
【0074】
メンバーコーディング核酸分子は、あらゆる所望の核酸であってもよく、またはそれを含んでもよい(前出)。例えばそれはDNA分子またはRNA分子であってもよい。適切なDNA分子の数例として、このような分子は、ゲノムDNA、cDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、人工染色体DNA、合成DNA、ファセミド(phasemid)DNAまたはファージミドDNAであってもよい。いくつかの実施態様では、メンバーコーディング核酸分子は、それにメンバーのペプチドまたはタンパク質が物理的に結合する位置から、メンバーのペプチドまたはタンパク質をコードする配列を分離する、間隔配列を含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施態様では、本発明に従った方法は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質を形成するステップを含む。典型的に複数のメンバーコーディング核酸分子が提供され、そのそれぞれは、提供される複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の1つのメンバーをコードするヌクレオチド配列を有する。上述のように、本発明の方法で使用するために、各ペプチドおよび/またはタンパク質は、対応するメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合していなくてはならない。したがっていくつかの実施態様では、メンバーコーディング核酸分子のヌクレオチド配列が発現されて、それらのそれぞれのタンパク質またはペプチドが生じる。メンバーコーディング核酸分子と、同核酸分子によってコードされるペプチドまたはタンパク質の間の物理的結合などの物理的な結合がさらに形成される。メンバーコーディング核酸分子と、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーとの間のこの物理的結合は、あらゆる所望の手段を通じて形成されてもよい。
【0076】
上から明らかなように、いくつかの実施態様では本発明で使用される核酸分子は、核酸分子によってコードされるペプチド/タンパク質を発現できる。「発現」および「発現される」という用語は、本明細書での用法では、それらの最も広い意味で使用されて、核酸分子に含まれてペプチド/タンパク質をコードする配列が、そのペプチド/タンパク質生成物に変換されることを表す。したがって核酸がDNAである場合、発現は、DNA配列のRNAへの転写と、RNAのタンパク質への翻訳を指す。核酸がRNAである場合、発現は、このRNAのさらなるRNAコピーへの複製、および/またはRNAのDNAへの逆転写、そして任意にこのDNAへのさらなるRNA分子への転写を含んでもよい。いかなる場合もRNAの発現は、タンパク質を提供/生成するRNA種のいずれかの翻訳を含む。したがって発現は翻訳によって実施され、転写、逆転写、および複製からなる群から選択される1つ以上のプロセスを含む。複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのタンパク質またはペプチドの発現は、インビトロ発現系を使用して実施されてもよい。このような発現系は、典型的に細菌、ウサギ網状赤血球または小麦胚芽からの細胞抽出物を含んでもよい。多数の適切な発現系が市販される。使用されるアミノ酸の混合物は、所望ならば合成アミノ酸を含んで、ライブラリー中で生成されるタンパク質の可能な数または多様性を増大させてもよい。これはtRNAに人工アミノ酸を装入し、これらのtRNAを選択されるタンパク質のインビトロ翻訳のために使用することで、達成され得る。DNAなどの核酸分子は、それが転写および翻訳制御情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、このような配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と作動的に結合するならば、ペプチド/タンパク質を「発現できる」とされている(下記参照)。発現目的のための適切な実施態様は、下でさらに詳しく述べるような発現ベクターの使用である。
【0077】
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリーを提供するステップを含む。ライブラリーは、例えばcDNAライブラリーであってもよい。ライブラリーの複数の核酸分子によってコードされる複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、本発明の方法によって同定され得る1つ対以上の結合パートナーを含むことが疑われる。いくつかの実施態様では、本発明の方法は、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリー(例えばacDNAライブラリー)を提供するステップを含む。複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、関心のある1つ以上の標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを含むことが疑われる。このような実施態様では、方法は、1つ以上の標的ペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の核酸分子を提供するステップをさらに含む。このようなあらゆる実施態様では、核酸分子ライブラリーの中のメンバーと、検体ペプチドおよび/またはタンパク質とを物理的に結合させることは、それぞれの核酸分子を適切な宿主細胞に導入することで達成し得る。宿主細胞内では、核酸分子によってコードされるそれぞれのペプチド/タンパク質が発現され得る。
【0078】
核酸分子ライブラリーが提供される実施態様では、ベクターがそれぞれの核酸と共に提供されてもよい。「ベクター」という用語は、それがそれと共に提供される、例えばそれがそれに結合される、核酸分子を輸送できる、ナノ粒子などの分子または粒子などの単位を指す。一般に単位は、核酸分子を細胞内に輸送できる。ベクターは、いくつかの実施態様では核酸分子であってもよく、またはそれを含んでもよい。いくつかの実施態様では、それは一本鎖または二本鎖環状核酸分子である。いくつかの実施態様ではベクターはウィルスである。いくつかの実施態様では、ベクターは発現ベクターであり、1つ以上の制御配列を含んで、それが作動的に結合する核酸の発現を指示できてもよい。作動可能結合は、その中で、発現が求められるヌクレオチド配列の発現が許されるように、関心のあるコードヌクレオチド配列が、1つ以上の制御配列に結合している結合である。したがってコード配列と作動的に結合する制御配列は、例えばインビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが細胞内に導入される場合は細胞内で、コード配列の発現をもたらし得る。それぞれの制御配列は、それが機能してその発現を指示しさえすれば、コード配列と必ずしも隣接する必要はない。したがって例えば介在性非翻訳未転写配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在してもよく、プロモーター配列は、なおもコード配列と「作動的に結合する」と見なし得る。
【0079】
「制御配列」という用語は、制御可能な転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、サイレンサー、転写ターミネーター、宿主細胞タンパク質と反応して転写および翻訳を実施する5’および3’非翻訳領域、および開始および終止コドンをはじめとする遺伝子発現を制御してもよいその他の要素を含む。制御配列は、使用される細胞および/またはヌクレオチド配列に天然(相同的)であり得て、または外来性(異種性)であり得る。遺伝子配列発現に必要な制御配列の正確な性質は、生物毎に変動してもよいが、一般にプロモーター領域を含むべきであり、それは原核生物ではプロモーター(RNA転写の開始を指示する)、ならびにRNAに転写されると合成開始をシグナルするDNA配列の双方を含有する。このような領域は、常態では、TATA box、キャッピング配列、CAAT配列などの転写および翻訳開始に関与する5’−非コード配列を含む。これらの制御配列は、一般に特定の実施態様について、例えば使用される特定の細胞について個々に選択される。当業者は、原核細胞内の適切な発現が、遺伝子配列コード配列上流のリボソーム結合部位の存在もまた必要とすることを承知している。
【0080】
ベクターが核酸分子である場合、それは例えば天然または合成の一本または二本鎖原核生物ベクターであってもまたはそれを含んでもよい。原核生物ベクターの説明に役立つ実例は、プラスミドまたはウィルス性核酸分子、または例えばYAC、BAC、バクテリオファージ由来人工染色体(BBPAC)、コスミドまたはP1由来人工染色体(PAC)などのあらゆるその他の核酸分子であり、それらは細胞に形質移入または形質転換され得て、宿主細胞ゲノムとは独立して、またはその中で複製される。大腸菌(E.coli)ウィルスベクターの説明に役立つ実例としては、λベクターシステムgt11、gt WES.tB、Charon 4、大腸菌(E.coli)プラスミドベクターの説明に役立つ実例としては、pBR322、pBR325、Co1E1、pSC101、pACYC177、pACYC1084、πVX、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV 40、pBluescript II SK+/−またはKS+/−、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ、およびそれらのあらゆる誘導体が挙げられる。説明に役立つバチルス(Bacillus)プラスミドの3つの実例は、pC194、pC221、およびpT127である。適切なストレプトミセス(Streptomyces)プラスミドは、pi1101、およびストレプトミセスバクテリオファージφC31である。真核生物のプラスミドの例としては、BPV、ワクシニア、SV40、2−micron circle、またはそれらの誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0081】
環状二本鎖ベクターは、ベクターのヌクレオチド配列に基づいて、適切な制限酵素を用いた処置によって直線化し得る。核酸は、ベクターを制限酵素によって切断し、引き続いて断片を共にライゲーションすることでベクターに挿入し得る。一般にベクターは、細胞内で自律的に複製され得て(例えばエピソームベクター)、または細胞ゲノムに組み込まれて、宿主ゲノムと共に複製され得る(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)。組み込み型ベクターは、例えば細菌である宿主と相同的な少なくとも1つの配列、ベクター中の相同DNA間で遺伝子組み換えができるようにする染色体、および宿主染色体を有してもよい。組み込み型ベクターはまた、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列も含み得る。プラスミドなどのエピソームベクターは、その中に追加的DNAセグメントをライゲーションし得る環状二本鎖DNAループである。
【0082】
本発明に従った方法の実施態様で使用されるベクターは、一対の相補部分のうちの1つのメンバーをコードする核酸配列と共に提供される。対の2つの相補部分は、密接に物理的に近接させると、すなわち互いに結合させることなく、互いに補完する。「密接な物理的近接」という用語は、2つのそれぞれの部分のより小さな方の三次元の幅の4分の1以下、8分の1以下をはじめとする、半分以下である、2つの相補部分間の距離を指す。典型的に密接な物理的近接とは、化学官能基の寸法以下の距離をはじめとする、ナノスケール寸法以下の距離を指す。
【0083】
2つの相補部分は、一緒になってレポーター因子を形成する。レポーター因子は、一般に、その中でレポーター因子が形成されている事例または細胞をレポーター因子が形成されていない事例または細胞から識別する情報を提供する。いくつかの実施態様ではタンパク質であってもよいレポーター因子は、例えば検出可能なシグナルをもたらし、細胞表現型をもたらし、または細胞生存に影響を及ぼしてもよい。いくつかの実施態様では、レポーター因子はタンパク質発現を活性化できる因子である。次にタンパク質はシグナルをもたらし、および/またはそれぞれの主細胞の表現型に影響を及ぼしてもよい。いくつかの実施態様では、第1および第2の相補部分は、例えばレポーター因子の2つのドメインを定めうる2つの断片である。検出可能なシグナルは、色、蛍光、ルミネセンス、マーカー発現、細胞生存度、細胞栄養性の解放、細胞成長または薬剤耐性であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0084】
説明に役立つさらなる実例として、酵素ジヒドロ葉酸レダクターゼベースのタンパク質断片補完を用いてもよい。このタンパク質断片補完では、可能な結合パートナーである2つのペプチド/タンパク質をジヒドロ葉酸レダクターゼの相補的断片に融合させて、細胞内で発現させる。2つの相補部分が互いに補完して、ジヒドロ葉酸レダクターゼを形成する場合、細胞は選択培地中で生存して成長する(Pelletier,J.N.,et al.,Proc.Natl Acad. Sci USA(1998)95,12141−12146)。さらなる例は酵素、百日咳菌(Bordetella pertussis)アデニル酸シクラーゼの触媒領域の相補的断片の使用である(Karimova,G.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95,5752−5756)。一対の結合パートナーを定義することが疑われる2つのペプチド/タンパク質をアデニル酸シクラーゼ断片に融合させる。補完はcAMP合成をもたらし、それは特定の識別可能な表現型を生じさせる。米国特許第6,270,964号明細書に記載されるなおもさらなる適切な例は、β−ガラクトシダーゼ補完である。
【0085】
したがって本発明に従った方法で、それぞれのレポーター因子が形成される場合、2つのベクターが使用される。第1のベクターは、第1の相補部分をコードする核酸配列を有し、例えばそれを含有し、それと共役しており、またはそれを含む。第2のベクターは、第2の相補部分をコードする核酸配列を有する。レポーター因子形成は、ベクターによってコードされる2つのペプチド/タンパク質が形成された際に起こりえる。この場合には、レポーター因子形成は、2つの相補部分が密接に物理的に近接されると起こりえる。2つの相補部分が互いに複合体を形成する一対の結合パートナーと共役すれば、これが当てはまるかもしれない。この点において、上述のとおり、本実施態様で使用されるベクターは、本発明の方法を実施する過程で、結合パートナー対を含むことが疑われる、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の1つをコードする核酸配列と共に提供される。
【0086】
その中で一対の結合パートナーが疑われる複数のペプチド/タンパク質をコードする核酸分子ライブラリーが提供される実施態様では、本発明に従った方法で提供される2つのベクターは、複数のペプチド/タンパク質の1つをコードする核酸配列をそれぞれ有する。したがって第1のベクターは、第1の相補部分をコードする核酸配列と、複数のペプチド/タンパク質の1つをコードする核酸を有する。その中に標的ペプチド/タンパク質の結合パートナーが疑われる複数の検体ペプチド/タンパク質をコードする核酸分子ライブラリーが提供される実施態様では、第1のベクターは複数の検体ペプチド/タンパク質の1つをコードする核酸配列を有する。第1のベクターは、さらに第1の相補部分をコードする核酸配列を有する。第2のベクターは、標的ペプチド/タンパク質をコードする核酸配列を有する。第2のベクターは、さらに第2の相補部分をコードする核酸配列を有する。
【0087】
その中に一対の結合パートナーが疑われる複数のペプチド/タンパク質をコードする核酸分子ライブラリーが提供されるいくつかの実施態様では、第1のプラスミドの複数の分子および第2のプラスミドの複数の分子が提供される。第1のプラスミドは第1の相補部分をコードし、第2のプラスミドは第2の相補部分をコードする。密接に物理的に近接させると、発現された第1および第2の相補部分は、一緒になってレポーター因子を形成する(前出)。第1および第2のプラスミドの2つの複数の分子の各プラスミド分子に、核酸分子ライブラリーの単一核酸分子、すなわち複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子の1つの分子が挿入される。
【0088】
その中に標的ペプチド/タンパク質の結合パートナーが疑われる、複数の検体ペプチド/タンパク質をコードする核酸分子ライブラリーが提供されるいくつかの実施態様では、第1のプラスミドの複数の分子および第2のプラスミドの複数の分子が同様に提供される。この場合も、第1のプラスミドは第1の相補部分をコードし、第2のプラスミドは第2の相補部分をコードする。これらの実施態様では、第1のプラスミドの複数の分子の各プラスミド分子中に、複数の検体ペプチド/タンパク質をコードする核酸分子ライブラリーの単一核酸分子が挿入される。したがって第1のプラスミドのそれぞれは、検体ペプチド/タンパク質の1つをコードする配列を保有する。それは第1の相補部分をコードする配列もまた保有する。第2のプラスミドの複数の分子の各プラスミド分子中に、ペプチド/タンパク質をコードし、またはそれを標的とする分子である、1つの核酸分子が挿入される。したがって第2のプラスミドのそれぞれは、標的ペプチド/タンパク質をコードする配列ならびに第2の相補部分をコードする配列を保有する。
【0089】
次にベクターが、上の実施態様の双方で適切な宿主細胞に導入される。これは当該技術分野で知られているあらゆる技術を使用して達成されてもよい。ベクターは、例えば形質転換、特に形質導入、接合、形質移入、動員または電気穿孔を通じて、細胞に導入されてもよい。説明に役立つ実例として、ベクターを植物細胞に安定して導入する適切な技術は、それに植物細胞が感染するベクターとしてのアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の使用である。植物細胞への導入のさらなる説明に役立つ実例は、ミニセル、細胞、リソソームまたはその他の融合性脂質表面体のいずれかであるその他の実体と、プロトプラストの融合である。
【0090】
上述のように、いくつかの実施態様では、本発明に従った方法は、1つ以上のペプチドおよび/またはタンパク質の結合パートナーを同定する役割を果たす。同ペプチド/タンパク質をコードする核酸分子に結合している複数のペプチド/タンパク質を、結合パートナーに、または結合パートナーを含有することが疑われる媒体などのサンプル(前出)に接触させる。複数のペプチド/タンパク質と結合パートナー/標的分子の双方を含む混合物が、それによって形成される。方法が、(ペプチド/タンパク質を含む)複数の検体分子中の少なくとも2つの標的分子の結合パートナーを同定する方法である実施態様では、複数のペプチド/タンパク質と結合パートナー/標的分子の双方を含む混合物が形成される。方法において、それぞれの混合物が既に提供されている(または結合パートナーが複数の検体分子/ペプチド中で同定される予定である)場合を除き、混合物を形成することは、少なくとも2つの標的分子を複数の検体分子と接触させることで実施される。上述のようにいくつかの実施態様では、方法は複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質中で、少なくとも2つの標的分子結合パートナーを同定する方法である。したがってこのような実施態様では、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を提供することは、少なくとも2つの核酸分子を提供することによって実施される。これらの核酸分子のそれぞれは、少なくとも2つの標的ペプチドまたはタンパク質の1つをコードする。
【0091】
別の実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質が、一対以上の結合パートナーを含むことが疑われる。したがってこのような実施態様では、結合パートナーはどちらもペプチドおよび/またはタンパク質である。このような実施態様では、結合パートナー間の複合体は、本発明の方法に先だって既に形成されていてもよい。一実施態様では、複合体を本発明の方法中に形成させる。
【0092】
添加されてもよいシステムのその他の構成要素は、例えば核酸分子の配列転写および/または翻訳に必要なものを含んでもよい。これらは特定系の要件について、以下から選択されてもよい。適切な緩衝液、必要な成分の全てを含有するインビトロ転写/複製系および/またはインビトロ翻訳系、酵素、補助因子、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、(天然または合成)核酸、転写RNA分子、リボソーム、およびアミノ酸。
【0093】
適切な緩衝液は、その中で生体系の所望の構成要素の全てが活性なものである。したがってその選択は、各特定の反応系の要件に左右される。生物学および/または化学反応に適した緩衝液は当該技術分野で知られており、大体において市販される。
【0094】
混合物が形成される、または一対の結合パートナーが複数のペプチド/タンパク質中で同定される実施態様では、複数のペプチド/タンパク質は、マイクロカプセルなどの区画に分割される。典型的な実施態では、エマルジョンなどのコロイド系中の水性環境の相分割に基づく、非膜形成性微小区画化/カプセル封入系が使用される。したがって相の1つが顕微鏡的またはコロイドサイズの小滴として別の相に分散する、2つの非混和性液相の多相系を使用してもよい。混合物または複数のペプチド/タンパク質を区画に分割すると、個々の区画の間の核酸分子の交換は少なくとも本質的に妨げられる。これはこの点において、その他の区画からの区画の単離を確実にする。同時に、区画の形成および組成は、結合パートナー間に形成された複合体を分解してはならない。さらにそれは、PCRまたは捕捉プローブへの結合などの区画内での実施が所望されるプロセスを妨害または防止することができない(下記参照)。これらの要件を満たす多様な区画化技術が利用できる(例えば国際公開第2005/049787号パンフレットを参照されたい)。
【0095】
説明に役立つ実例として、非混和性液体のあらゆる適切な組み合わせからエマルジョンが形成されてもよい。典型的にペプチド/タンパク質ならびにその他の生化学的構成要素が水溶液中で提供され、このような実施態様では、非混和性液体の1つが水性である。適切な区画化の説明に役立つ実例は、油中水滴型エマルジョンの形成である。このようなエマルジョンでは、水は、分散相、内相または不連続相、すなわち超微粒子小滴形態で存在する相である。疎水性で典型的に非極性の非混和性液体は、その中でこれらの小滴が懸濁するマトリックス、すなわち非分散性連続または外相である。このようなエマルジョンは、「油中水滴型」(W/O)と称される。これは生化学的構成要素を含有する水相全体が、目立たない小滴に区画化される(内相)利点を有する。疎水性油である外相は一般に生化学的構成要素の1つを含有し、したがって不活性である。
【0096】
水相と非混和性の液体の多数の例が知られている。このような液体は、典型的に非極性液体である。このような液体の例としては、鉱物油、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルイソブチレート、二酢酸エチレングリコール、および非極性イオン液体が挙げられるが、これに限定されるものではない。非極性イオン液体の例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[(トリ−フルオロメチル)スルホニル]アミドビス(トリフリル)アミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロ−メチル)スルホニル]アミドトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス[オキザレート(2−)]ボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムtris(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、tris(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N”−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジウム、1−ブチル−1−メチルピロールジニウムtris(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロ−メチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられるがこれに限定されるものではない。修飾イミダゾリウム化合物ベースの追加的イオン液体をもたらす最近のアプローチについては、Giernoth(Angew Chemie Int Edition(2010),49,DOI:10.1002/anie.201002393)によって簡潔に要約されている。
【0097】
したがって適切な区画化のさらなる例は、イオン液体中水滴型エマルジョンの形成である。いくつかの実施態様では、エチル硝酸アンモニウムまたはリン酸二水素イオン液体などのイオン液体中に、ペプチド/タンパク質ならびにその他の生化学的構成要素が提供される。本発明の方法を実施する溶媒としての適合性について、様々なプロトン性イオン液体を試験してもよい。プロトン性イオン液体は、ブレンステッド酸とブレンステッド塩基の組み合わせを通じて形成される(Greaves,T.L.,& Drummond,C.J.,Chem.Rev.(2008)108,206−237を参照されたい)。
【0098】
油中水滴型エマルジョンは、1つ以上の界面活性剤の添加によって安定化させてもよい。これらの界面活性剤は乳化剤と称され、水/油境界面で機能して相分離を防止し(または少なくとも遅延させ)得る。多数の油および多数の乳化剤が、油中水滴型エマルジョンの作成に適する。適切な油の説明に役立つ実例は、白色軽油と、ソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの非イオン性界面活性剤である。界面活性剤のさらなる例は、コール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤である。例えば0.5%w/v以下の濃度で、デオキシコール酸ナトリウムを使用してもよい。このような界面活性剤の包含は、場合によってはペプチド/タンパク質の発現および/またはその活性を増大し得る。非乳化反応混合物へのいくつかのアニオン性界面活性剤の添加は、翻訳を完全に無効にする。しかし乳化中は、界面活性剤が水相から境界面に転移して、活性が復元する。所望される場合、乳化させる混合物へのアニオン性界面活性剤の添加は、反応が区画化されてはじめて進行することを確実にする。
【0099】
その中で一対の結合パートナーが同定される混合物、または複数のペプチド/タンパク質を複数の区画に分けるステップ、つまり典型的には同物質を含む液体を複数の区画に分けるステップは、さらなる液体を添加するステップを含んでもよい。典型的な実施態様では、その中で一対の結合パートナーが同定される混合物または複数のペプチド/タンパク質は、核酸分子およびペプチドおよび/またはタンパク質の取り扱いに適した第1の液体に含まれる。複数のペプチド/タンパク質と標的分子の混合物が形成される実施態様では、複数のペプチド/タンパク質はこの第1の液体に既に含まれていてもよい。次に第1の液体と非混和性の第2の液体を添加してもよい。相分離を生じさせてもよい。その結果、第1の液体によって定義される第1の相内に、2つの相が形成されてもよく、第2の相は第2の液体によって定義される。第1の相は、第2の相内に複数の区画を形成してもよい。これは当該技術分野で知られているあらゆるプロトコルに従って達成されてもよい。2つの相の混合は、例えばもう1つの相を撹拌しながら、1つの相を滴下して添加することで実施される。1つの相のもう1つの相への添加を達成した後に、選択された速度で選択された時間にわたり、撹拌を継続してもよい。それによって区画の所望のサイズを達成してもよい。
【0100】
エマルジョンの作成は、一般に、相を一緒に合わせる機械的エネルギーの適用を必要とする。撹拌機(磁気撹拌棒、プロペラおよびタービン撹拌機、パドル装置、および泡立て器など)、ホモジナイザー(ロータステータホモジナイザー、高圧バルブホモジナイザー、およびジェットホモジナイザーをはじめとする)、コロイドミル、超音波、および膜乳化装置をはじめとする多様な機械的装置を用いる多数の技術が、この点において当該技術分野で利用できる。区画サイズは、本発明に従って実施される、あらゆる個々の選択プロセスの正確な要件に応じて変動する。いかなる場合でも、所望のプロセスを実施するために、ペプチド/タンパク質の数、個々のマイクロカプセル中の構成要素の必要とされる濃縮および必要とされる濃度の間に最適バランスがある(下記参照)。
【0101】
それぞれのエマルジョンの小滴は、小滴の微小環境中で実施されるプロセスを助け、促進し、可能にしおよび/または増強してもよい様々な物質を含有してもよい。この能力のために、このような小滴は以前に「微小反応器」と称された(Nakano,M.,et al.,Journal of Bioscience & Bioengineering(2005)99,3,293−295を参照されたい)。
【0102】
実施されるプロセスを助け、促進し、可能にしおよび/または増強してもよい物質の2つの説明に役立つ実例は、捕捉プローブとライゲーション因子である。捕捉プローブは、例えば標的分子とその結合パートナーなどの2つの結合パートナーの間に形成された複合体と(例えば上記参照)、または一対の結合パートナーを定義する2つのペプチド/タンパク質と、結合できる抗体、その断片、または抗体様機能があるタンパク様連結分子であっても、またはそれを含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施態様では、混合物を複数の区画に分けた際、各区画は複数のペプチドおよび/またはタンパク質の分子を最大でおよそ1つ含む。いくつかの実施態様では、各区画は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーまたは分子を最大でおよそ1つ含み、または複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー/分子間の複合体を最大で1つ含んでもよい。したがってこのような実施態様では、結合パートナーの間に形成されるあらゆる複合体は、それが標的分子と複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーとの間であるか、またはそれぞれが複数の2つのペプチド/タンパク質との間であるかにかかわらず、残りのペプチドおよび/またはタンパク質から分離される。
【0104】
いくつかの実施態様では、検体分子と検体標識核酸分子の間、および標的分子と標的標識核酸分子の間の物理的な結合が細胞によって提供される。したがって同じことが、そのそれぞれがメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される、複数のペプチドおよび/またはタンパク質にも当てはまる。それぞれの各細胞は、1つの検体分子と1つの検体標識核酸分子、ならびに1つの標的分子と1つの標的標識核酸分子を有する(上記参照)。複数のペプチドおよび/またはタンパク質中の一対の第1のおよび第2の結合パートナーが同定される実施態様では、それぞれの細胞は、複数のペプチド/タンパク質の第1のメンバーを最大でおよそ1つ、および複数のペプチド/タンパク質の第2のメンバーを最大で1つ、ならびに複数のペプチド/タンパク質の第1および第2のメンバーをコードする、対応するメンバーコーディング核酸分子を有する。したがって各細胞は、一対の結合パートナー間で形成された複合体を最大で1つ有してもよい。このような実施態様では、対応する複数の細胞は複数の区画に分けられる。いくつかの実施態様では、各区画は細胞を最大で1つ含んでもよく、それは対応する検体と、例えばペプチド/タンパク質、および核酸分子などの標的分子とを有する。
【0105】
本明細書での用法では「最大でおよそ1つ」という用語は、検体分子、標的分子、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー、対応する標識核酸分子、および細胞の文脈で、このような分子または細胞の分布がガウス分布であるという事実背景に基づくものと理解される。したがって例えば区画あたり最大でも1つの細胞の分布は理想的仮説であるが、しかしそれは統計学的分布の観点からのみから実現する。したがって複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの複合体を最大でおよそ1つとは、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの複合体が平均して最大で1つ各区画内に存在し得るように、ペプチド/タンパク質の分布が選択されることを定義する。それでもなおいくつかの区画はまた、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの複合体を1個を超えて有する。いくつかの実施態様では、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの複合体が平均して1個未満各区画内に存在し得る。同様に区画あたり最大でおよそ1つの細胞とは、各区画内に平均して最大で1つの細胞が存在し得るように、細胞分布が選択されることを定義する。それでもなおいくつかの区画はまた、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの複合体を1個を超えて有する。いくつかの実施態様では、各区画内に平均して1個未満の細胞が存在し得る。
【0106】
それぞれの個々の区画/マイクロカプセル中で、プロセスを生じさせる。いくつかの実施態様では、それぞれの個々の区画/マイクロカプセル内で生じさせるプロセスは、捕捉プローブを一対の結合パートナー間の複合体に、または標的分子とその結合パートナー間の複合体に結合させるステップを含む。いくつかの実施態様では、プロセスは、一対の結合パートナーの間でメンバーコーディング核酸分子間の結合を形成させるステップを含む。このようなプロセスに加えて、インビトロ転写および共役転写翻訳などの1つ以上のさらなるプロセスを生じさせてもよい。さらに区画/マイクロカプセル中に存在する分子の有効濃度を当業者に良く知られている様々な方法によって、人工的に増大させてもよい。これらとしては、ポリエチレングリコール(PEG)などの体積排除剤の添加;および大腸菌(E.coli)などの細菌、真核生物またはバクテリオファージからのRNAポリメラーゼを使用した転写をはじめとする多様な遺伝子増幅法;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法;ローリングサークル増幅(RCA)法;核酸配列ベースの増幅(NASBA)法;リガーゼ連鎖反応(LCR)法;QBレプリカーゼ連鎖反応法;ループ仲介等温増幅(LAMP)法;ゲノム鎖置換増幅(WGSDA)法、複数の鎖置換増幅(MSDA)法、および遺伝子特異的鎖置換増幅(GS−MSDA)法をはじめとする転写仲介増幅(TMA)法および鎖置換増幅(SDA)法などの技術が挙げられるが、これに限定されるものではない。遺伝子増幅技術はPCRなどの熱サイクルを要し、エマルジョンおよびインビトロ転写または共役転写−翻訳系が熱安定性であれば、LCRを使用してもよい(共役転写翻訳系は、例えばサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)などの熱安定性生物に由来しても、またはそれが起源であってもよい)。
【0107】
いくつかの実施態様では、同一区画内に包含される関心のある2つの核酸分子、すなわち2つのメンバーコーディング核酸分子または標的分子と対応する結合パートナーとを結合させるステップは、核酸分子のライゲーションを含む。いくつかの実施態様では、それぞれの結合は、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応によって達成される。オーバーラップ伸長PCRは、より小さな断片から単一ポリヌクレオチド分子を形成させる技術である。少なくとも本質的に互いに相補的なヌクレオチド配列を有するプライマーを用いて、関心のある2つの核酸分子を増幅することは、少なくとも本質的に相補的配列中でアニールする核酸分子を生じる。通常、2つのプライマーのそれぞれは、それに結合される核酸分子の3’末端と同一である、5’付加配列を有する。したがって適切なポリメラーゼの存在下で、2つの核酸分子は、関心のある2つの核酸分子の結合生成物に相当する核酸分子に完成される。したがって2つの核酸分子は、事実上互いに結合している。
【0108】
いくつかの実施態様では、区画/マイクロカプセルの内部環境は、エマルジョンの非混和性の第2の相、例えば油相への1つ以上の試薬の添加によって改変されてもよい。このような試薬は非混和性相を通じて、水性区画に拡散してもよい。その一部が非混和性相から水性マイクロカプセル環境に分布するように、少なくとも部分的に水溶性の試薬を使用することが所望されるかもしれない。非混和性の第2の相内で少なくとも実質的に不溶性の試薬を選択することが、さらに有利かもしれない。第2の非混和性相にこのような試薬を添加することは、混合を誘発するプロセスによって、例えばボルテックスなどの機械的撹拌によって達成されてもよい。油相を通じて添加されてもよい試薬の例としては、基質、緩衝液構成要素、イオン、およびキレート剤が挙げられる。区画/マイクロカプセルの内部pHもまた、酸性または塩基性構成要素を油相に添加することにより、原位置で改変してもよい。同様にイオン液体のpH値に対応するイオン液体プロトン活性を改変してもよい。
【0109】
いくつかの実施態様では、区画/マイクロカプセルの内部環境は、混合物が曝露される温度などの一般条件を変更することによって改変される。区画/マイクロカプセルの内部環境の前述の変更のいずれでも、所望のプロセスを生じさせるかもしれない。pHまたは温度の変更は、例えば捕捉プローブと、2つの結合パートナーの間に形成された複合体との間に複合体を形成させてもよく、それが標的分子と複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーの間であるか、またはそれぞれ複数の2つのペプチド/タンパク質の間であるかにかかわらず、残りのペプチドおよび/またはタンパク質から分離される。
【0110】
複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーの結合パートナーである、ペプチドまたはタンパク質が同定される、または複数のペプチド/タンパク質中の一対の結合パートナーが同定される実施態様では、双方の結合パートナーが、それぞれのペプチド/タンパク質をコードする核酸分子と物理的に結合していてもよい(上記参照)。このような実施態様では、区画/マイクロカプセル内で生じさせるプロセスは、2つの核酸分子に関わってもよい。2つの核酸分子は共役されてもよく、特に連結されて結合核酸分子にされてもよい。上述のとおり、実施されるプロセスを助け、促進し、可能にしおよび/または増強してもよい物質は、ライゲーション因子であってもよい。このようなライゲーション因子、例えばリガーゼとして知られている酵素は、混合物を複数の区画に分ける前にまたはそれに際して、混合物に添加されてもよい。その結果、各区画は少なくとも1つのライゲーション因子を含有してもよい。区画内に1つを超える核酸分子が存在する場合、リガーゼはそれぞれの核酸分子に結合されてもよい。上述のように、いくつかの実施態様では、各区画は、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーを最大でおよそ1つ含み、またはこのようなペプチド/タンパク質と結合パートナーの間に形成された複合体を最大で1つ含む。このような実施態様において、それらによってコードされるペプチド/タンパク質に物理的に付着するもの以外の核酸分子が混合物中に存在しないのであれば、(前出)1つを超える核酸分子は、どちらも核酸分子に結合している2つのペプチド間のまたは2つのタンパク質間のまたはペプチドとタンパク質間の複合体が形成される場合にのみ、区画内に存在し得る。したがってこのような実施態様では、それに結合されたペプチド/タンパク質間の複合体の形成によって一緒にされた核酸分子のみが、ライゲーション因子によって結合され得る。ペプチド/タンパク質に結合しているその他の核酸は、区画の形成のために分離される。
【0111】
リガーゼは、核酸分子断片ならびにストランド中断およびギャップを連結または「ライゲート」する酵素として、当該技術分野で良く知られている。様々なリガーゼ酵素が当該技術分野で知られている。典型的にリガーゼ反応は、補助因子としてATP(哺乳類およびウィルス酵素)またはNAD(細菌酵素)の存在に依存する。このような場合リガーゼ反応は、一般に酵素−アデニル酸複合体の形成と、AMPからの連結させる核酸への転写を伴う。
【0112】
本発明の方法は、区画を崩壊するステップをさらに含む。エマルジョンが形成される場合、それは例えば化学的にまたは電気化学的に乳化されてもよく、またはマイクロ波の手段によってもよい。乳化中に、例えば界面活性剤または塩などの乳化破壊剤を添加することで、複数の区画が少なくとも大部分は単相に結合する。説明に役立つ実例として、水中油エマルジョンの化学および電気化学破壊と、加水分解アルミニウム塩が最近Canizaresら(Journal of Hazardous Materials(2008)151,44−51)によって比較されている。油中水小滴などの区画はまた、その中で区画が可溶性である相を添加することによって崩壊させてもよい。油中水小滴は、例えば外部水相を添加することにより崩壊させてもよい。例えば油相であってもよい、標的分子/結合パートナーと共に形成するあらゆる複合体をはじめとする複数のペプチドを含有しない相は、不必要になるかもしれない。所望ならばこの相は除去してもよい。さらに所望ならば、この同じ相を崩壊させることにより、以前の区画の内容物から形成された混合物を引き続いて再度区画に分割してもよい。
【0113】
区画を崩壊させる前に、いくつかの実施態様では、生じたプロセス(前出)がもはや起こり得ない条件に、区画/マイクロカプセルの内部環境を変化させることが、所望されるかもしれない。説明に役立つ2つの実例として、温度を変化させまたはpHを転換させてもよい。この区画の内部環境の変化は、ひとたび区画が崩壊させてその内容物がその他の以前の区画の内容物と接触した際に、制御されない様式でそれぞれのプロセスが起きるのを避けるために選択されもよい。プロセスが起きるのを妨げるその他の手段を選択してもよい。いくつかの実施態様では、ライゲーション因子または捕捉プローブの阻害剤が導入されてもよい。いくつかの実施態様では、区画を崩壊した際に、例えば特定温度またはpHの溶液、または区画内で生じさせたプロセスが起きるのを妨げる阻害剤を含有する溶液が添加されてもよい。
【0114】
上で説明したように、一対の第1および第2の結合パートナーを同定する方法のいくつかの実施態様では、区画を崩壊させる際、または区画を崩壊させた後に、捕捉プローブが添加される。捕捉プローブは、第1および第2の結合パートナー間の複合体に結合できる。これらの実施態様のいくつかでは、複合核酸分子を回収するステップは、捕捉プローブを第1および第2の結合パートナー間の複合体に結合させるステップを含む。複合核酸分子を回収するステップはまた、捕捉プローブを回収するステップも含んでもよい。それによって複合核酸分子と結合させられた第1および第2の結合パートナー間の複合体が回収される。典型的に捕捉プローブは、第1および第2の結合パートナー間の複合体に結合された後に回収される。
【0115】
複数の区画を崩壊させた後に、阻害剤などの添加されていてもよいあらゆる物質と共に、複数の区画の以前の内容物を単一相中に含む混合物が形成される。いくつかの実施態様では、複数の区画の以前の内容物は、ライゲーション因子、または非結合捕捉プローブ、すなわち結合パートナー間の複合体などの標的分子と複合体を形成しなかった捕捉プローブなどの選択された因子が取り除かれていてもよい(前出)。このような選択された因子を除去するステップは、例えばそれぞれの因子と、その他の以前の区画から放出された構成要素のあらゆる望まれない反応を妨げるために、複数の区画を崩壊させるステップと同時に実施されてもよい。いくつかの実施態様では、複数の区画の以前の内容物を含む混合物は、例えば前述の因子の望まれない反応を妨げることが知られているpHまたは温度などの条件下で形成されてもよい。説明に役立つ実例として、核酸分子と結合できるライゲーション因子は、約25℃〜約40℃の作動温度範囲を有してもよい。このライゲーション因子は、形成された区画内に存在してもよい。それは結合パートナーを定義して、それぞれの結合パートナーをコードする核酸分子と物理的に結合している、ペプチド/タンパク質複合体を含有する区画内で、核酸分子を連結するのに使用されてもよい。このようなライゲーション因子が、以前の区画から放出された核酸分子と非特異的に結合するのを妨げるため、区画を崩壊させる前に、区画の温度を25℃未満の値にしてもよい。その後に温度は、区画崩壊によって形成される混合物からライゲーション因子が除去されるまで、同じ目的のために25℃以下に保たれてもよい。
【0116】
上述のように、いくつかの実施態様では、複数の検体分子中で、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバー同士の間の複合体に、または複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーと標的分子などの結合パートナーとの間の複合体に、捕捉プローブを結合させる。このような複合体を回収するために、捕捉プローブが回収される。いくつかの実施態様では、次に捕捉プローブに結合するあらゆる複合体を分析のために遊離させてもよい。いくつかの実施態様では分析は、このような複合体を捕捉プローブから遊離させずに実施される。どちらの場合にも、1つのメンバーコーディング核酸分子が、または一対の結合パートナーで各付着核酸分子が同定される場合は2つのメンバーコーディング核酸分子が、それに捕捉プローブが結合する複合体に結合してもよい。
【0117】
いくつかの実施態様では、複数のペプチド/タンパク質の中のメンバー同士の間の複合体に、または複数のペプチド/タンパク質の中のメンバーと結合パートナーである別のペプチド/タンパク質との間の複合体に結合する核酸分子を連結させて、複合核酸分子を形成する。次にこの複合核酸分子が回収され、例えば同定目的で収集される。複合核酸分子を回収するステップは、プライマーベースの核酸増幅を実施するステップを含んでもよい。プライマーベースの核酸増幅は、標的標識核酸分子配列の一部と相補的なプライマーを使用して実施されてもよい。それによって複合核酸分子が増幅される。
【0118】
複合核酸分子を回収するステップはまた、混合物(前出)に捕捉プローブを添加するステップも含んでもよい。捕捉プローブは、標的分子とその結合パートナー間の複合体に結合できる。次に捕捉プローブは回収される。その結果、標的分子とその結合パートナー間の複合体が回収される。
【0119】
これらの実施態様のいくつかでは、プライマーベースの核酸増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法または等温増幅法である。ポリメラーゼ連鎖反応の例としては、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、および増幅抵抗変異特異的(ARMS)PCR(対立遺伝子特異的PCR(AS−PCR)とも称される)が挙げられるが、これに限定されるものではない。PCR法は、一対の第1および第2のプライマーの手段によって実施される。第1のプライマーは、結合パートナーの1つ、例えば第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子配列の一部と相補的である。第2のプライマーはユニバーサルプライマーである。その結果、複合核酸分子は増幅される。使用してもよい等温増幅、すなわち熱サイクル装置を必要としない増幅の例としては、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、ローリングサークル増幅法、ループ仲介等温増幅法、ヘリカーゼ−依存増幅法、および環状ヘリカーゼ−依存増幅法が挙げられるが、これに限定されるものではない(これについても上記参照)。
【0120】
いくつかの実施態様では、増幅された複合核酸分子は精製される。核酸分子は、例えばフェノールおよび/またはクロロホルムなどの溶媒を使用した、従来の抽出を受けてもよい。複合核酸分子を精製するその他の例としては、磁性ビーズまたはスピン/真空−カラムが挙げられるが、これに限定されるものではない。核酸分子を精製するための市販の試薬および/またはキットを使用してもよい(例えばPromega、Invitrogen、Qiagen、Zymo Research、Genomed)。核酸分子はまた、ゲル電気泳動法などの電気泳動法技術を使用して精製してもよい。所望される場合、エタノールなどの溶媒を使用した従来の沈殿によって、精製された核酸分子を濃縮してもよい。
【0121】
同定される結合パートナーの核酸配列、例えば標的分子の結合パートナーであるペプチド/タンパク質の核酸配列は、決定される。双方の結合パートナーが核酸分子に結合しており、これらの核酸分子が結合されている実施態様では、典型的に双方の結合パートナーの核酸配列が同定される。結合パートナーの1つが既知であれば、例えば1つの既知の標的ペプチド/タンパク質だけが使用されるならば、それに応じて同定されるもう1つの結合パートナーの配列だけを決定する必要がある。しかし1つを超える結合パートナー対が同時に同定される実施態様では、複合核酸分子全体の核酸配列を決定することが一般に必要とされる。このようにして結合対の双方の結合パートナーが同定され、一対の結合パートナーを定義するとして割り当て得る。それによって結合パートナー対が、存在してもよい他の結合パートナー対から区別され得る。
【0122】
既に上で示したように、本発明の方法は、核酸分子と物理的に連結しておらず、単にそれと組み合わせられた、例えばペプチド/タンパク質である結合パートナーが使用される実施態様もまた包含する。別の実施態様では、結合パートナー(例えばペプチド/タンパク質)は核酸分子に結合しているが、この核酸分子はそれに結合している結合パートナーをコードしない。この点においてあらゆる核酸分子は、それが付着するそれぞれの結合パートナーを明解に同定するのに適切でありさえすれば、結合パートナーの片方または双方に結合し得る。このような実施態様では上の説明が同様に当てはまり、唯一の違いは、それぞれの結合パートナーに付着する核酸分子が、そのパートナーをコードしないことである。説明に役立つ実例として、本発明に従った方法におけるその/それらの使用について、既知の配列がある1つ以上の合成されたまたは単離された核酸分子を選択してもよい。核酸分子は既知の配列を有し、またはその配列はその使用前に決定される。次に核酸分子または選択された複数の核酸分子の中のメンバーをそれについて結合パートナーが同定される標的ペプチド/タンパク質に付着させてもよい。標的ペプチド/タンパク質などの標的分子の結合パートナーを含むことが疑われる複数の検体ペプチド/タンパク質は、対応する様式で核酸分子に結合させてもよい。複数の検体ペプチド/タンパク質の中の各メンバーについて、核酸分子を選択してもよい。各核酸分子の配列は、既に知られており、または決定される。次にそれぞれの選択された核酸分子を、選択されたペプチド/タンパク質に結合させる。次にこのようにしてペプチド/タンパク質を同定するのに適した核酸分子で標識された複数のペプチド/タンパク質が、本発明の方法で使用されてもよい。いくつかの実施態様では、標的ペプチド/タンパク質との混合物で形成された区画内において、例えばライゲーション因子の手段によって核酸分子を連結させてもよい。上述のように、複数の区画を崩壊させてもよい。標的ペプチド/タンパク質に付着した核酸配列に対して特異的なプライマーを使用したPCRに続いて、結合した核酸分子を増幅し配列決定してもよい。それによって結合パートナーに付着した核酸分子配列が同定され、したがってそれぞれの結合パートナーが同定される。
【0123】
同一様式で、ペプチド/タンパク質の混合物中の結合パートナーを同定してもよい。説明に役立つ実例として、複数のペプチド/タンパク質の中の各メンバーを選択された核酸分子に結合させてもよい。ペプチド/タンパク質を同定するのに適する核酸分子でこのようにして標識されたペプチド/タンパク質を結合させて、ペプチド/タンパク質の複合体を形成させる。使用される核酸分子が既知の配列を有し、またはその/それらの使用前に配列決定され、このような核酸分子および各核酸分子が疑われる結合パートナーの1つのみに付着しさえすれば、そのヌクレオチド配列はそれぞれの結合パートナーを同定するのに適する。結合パートナー間で形成されたあらゆる複合体は、上で定義される区画を形成することによって、そして上述のように形成された区画内で核酸分子をライゲーションすることによって同定され得る。
【0124】
本発明の方法のあらゆる部分は、手動でまたは自動的に、またはその組み合わせで実施してもよい。いくつかの実施態様では、半自動または自動化された様式で本発明の方法全体が実施され、例えばハイスループットスクリーニング法として使用してもよい。例えば分子または細胞の1つ以上のライブラリーの形態のまたはそれから選択される複数の結合パートナーを提供してもよい。説明に役立つ実例として、このようなライブラリーは、モデル化合物として化学的に合成される様々な小型有機分子のコレクションであってもよい。化合物、液体、および試薬の自動化された分配、ならびに例えば自動化された恒温器は、当該技術分野で既に確立されている。
【0125】
本発明の方法はまた、ペプチドまたはタンパク質のどちらでもない結合パートナーに適用し得る。この点において結合パートナーは、ペプトイド、代謝産物、薬剤分子、薬剤候補分子、薬剤代謝産物、脂質、炭水化物、ビタミン、合成ポリマー、細胞、微生物、ウィルスまたはあらゆるその組み合わせなどの核酸分子に結合し得るあらゆる物質であってもよい。
【0126】
「単離する」および「単離」という用語は、本明細書での用法では、単離プロセス前に存在した少なくとも1つの物質を含まないように、実体部分を例えば混合物などの不均一集団から分離するプロセスを指す。典型的な実施態様では、単離は、実体を精製して少なくとも本質的に均質にすることを指す。
【0127】
当業者は本発明が、その中で、例えばタンパク質/ペプチドと標的分子である双方の結合パートナーが示される、実施態様を可能にする選択肢を提供することを理解するであろう。これは核酸と、例えばタンパク質/ペプチドである結合パートナーとの物理的結合の形態で実施し得る。このような選択肢は、標的分子それ自体がタンパク質またはペプチドである場合に、特に興味深いかもしれない。
【0128】
ペプチドまたはタンパク質である結合パートナーを同定する方法に関する先の説明は、上で要約したように本発明の方法の関連実施態様のいずれかに当てはまる。このような方法は、複数のペプチドおよび/またはタンパク質中で一対の第1および第2の結合パートナーを同定する方法、複数のペプチドおよび/またはタンパク質中で標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法、複数のペプチドおよび/またはタンパク質中で一対以上の第1および第2の結合パートナーを同定する方法、および複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質中で少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法であってもよい(前出)。
【0129】
いくつかの実施態様では、本発明に従った方法は、例えば複数のペプチドおよび/またはタンパク質中で、標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法である。上記は、変更すべきところは変更してこのような実施態様に当てはまる。標的ペプチドまたはタンパク質は、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーに含まれてもよい。結合パートナーは、第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質構成員に含まれることが疑われる。第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、メンバーコーディング核酸分子と物理的に結合される(前出)。それぞれのメンバーコーディング核酸分子は、それと結合するペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。方法は、第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質を結合させるステップを含む。それによって混合物が形成される(前出)。
【0130】
この実施態様は、標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーの間に複合体を形成させるステップをさらに含む。方法はまた、混合物を複数の区画に分けるステップも含む。その結果、各区画は、結合した複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーを最大でおよそ1つ、またはメンバー同士の間の複合体を最大でおよそ1つ含む。さらに方法は、標的ペプチドまたはタンパク質のメンバーコーディング核酸分子と、形成された複合体の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを結合させるステップを含む。したがって方法は、複合核酸分子を形成させるステップを含む。方法はまた、区画を崩壊するステップも含む。
【0131】
本実施態様はまた、複合核酸分子を回収するステップも含む。複合核酸分子を回収するステップは、プライマーベースの核酸増幅を実施するステップを含んでもよい。プライマーベースの核酸増幅は、いくつかの実施態様では、標的ペプチドまたはタンパク質をコードするメンバーコーディング核酸分子配列の一部と相補的である、プライマーを使用して実施される。それによって複合核酸分子が増幅される。捕捉プローブが、混合物に添加されてもよい。この捕捉プローブは、標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーの間の複合体に結合できてもよい。このような実施態様では、捕捉プローブが回収されてもよい。それによって標的ペプチドまたはタンパク質と、その結合パートナーの間の複合体が回収されてもよい。
【0132】
上で説明したように、プライマーベースの核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法および等温増幅法のうちの1つであってもよい。等温増幅法は、いくつかの実施態様では、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、およびローリングサークル増幅法の1つであってもよい。PCR法は、例えば一対の第1および第2のプライマーを使用して実施してもよい。第1のプライマーは、標的ペプチドまたはタンパク質をコードするメンバーコーディング核酸分子の配列の一部と相補的である。第2のプライマーは、例えばユニバーサルプライマーであってもよい。
【0133】
さらに方法は、複合核酸分子の配列を決定するステップを含む。それによって方法は、結合パートナーを同定するステップを含む。本実施態様の方法は、増幅された複合核酸分子を精製するステップをさらに含んでもよい。増幅された複合核酸分子を精製するステップは、例えば同分子を抽出するステップを含む。
【0134】
物理的な結合に関する上の説明は、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーと、メンバーコーディング核酸分子の間の物理的な結合に同様に当てはまる。したがってこの物理的の結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームのうちの1つを含んでもよい。それぞれの細胞は、例えば原核または真核細胞であってもよい。適切な真核細胞の説明に役立つ実例は、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)などの酵母である。適切な真核細胞の2つのさらなる説明に役立つ実例は、Sf9細胞などの昆虫細胞、またアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などの真菌細胞である。それぞれの原核細胞は、例えば大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)の1つであってもよい。
【0135】
本発明はまた、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質中の少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定するためのパーツのキットも提供する。キットは、本発明に従った方法で使用し得る、上述の分子または構成要素の1つ以上で充填される1つ以上の容器を含む。このような容器に付随して、いくつかの実施態様では、本発明に従った方法を実施するためにキットをどのように使用するかについての説明の形態の注意書きが提供される。したがってキットは、典型的に、上で詳述した1つ以上の方法を実施するためのキットである。
【0136】
キットは、標的ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む。第1のプライマーは、標的ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子配列の一部と相補的である。第2のプライマーは、ユニバーサルプライマーである。標的ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子は、いくつかの実施態様ではベクターに含まれる。ベクターは、一対の第1および第2の相補部分の第1の相補部分をコードする核酸配列を有してもよい。ベクターは、核酸分子であってもよい(前出)。それはいくつかの実施態様では発現ベクターであってもよい。これらの第1および第2の相補部分は、物理的に接近させるとそれらが互いに補完するようにデザインされる。互いに補完すると、それらは一緒になってレポーター因子を形成する。キットは第2のベクターをさらに含んでもよい。第2のベクターは、一対の第1および第2の相補部分の第2の相補部分をコードする核酸配列を有する。キットはまた、複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子ライブラリー形成する手段も含む。いくつかの実施態様では、キットはまた宿主細胞も含む。宿主細胞は、例えば発現ベクターなどのベクター中に、またはそれと共に、含まれる配列を発現するのに適していてもよい。
【0137】
本発明は、標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定するパーツのキットをさらに提供する。キットは複数の複合核酸分子を含む。複数の複合核酸分子の各複合核酸分子は、第1のペプチドまたはタンパク質配列、および第2のペプチドまたはタンパク質配列を含む。第1のペプチドまたはタンパク質および第2のペプチドまたはタンパク質は、互いに複合体を形成できる一対の結合パートナーを定義する。上述の方法の1つを実施することにより、複数の複合核酸分子が一般に得られる。いくつかの実施態様では、それはそれぞれの方法によって得られる。複数の複合核酸分子は、あらゆる数を有してもよい。それは例えば少なくとも1011、少なくとも1012または少なくとも1013個をはじめとする、少なくとも100000、少なくとも10、少なくとも10、10、10、または1010個の核酸分子のライブラリーであってもよい。
【0138】
キットを使用して、PCRなどのプライマーベースの核酸増幅を実施し得る(前出)。この目的でキットは、ユニバーサルプライマーを含む。キットに含まれない第2のプライマーは、関心のある標的ペプチドまたはタンパク質に応じて選択され得る。第2のプライマーは、標的ペプチドまたはタンパク質をコードする配列の一部と少なくとも本質的に相補的である必要がある。核酸増幅を実施すると、関心のある標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーをコードする複合核酸分子が増幅される。この点においてキットは、核酸増幅を実施するために、キットをどのように使用するかについての説明の形態の注意書きを含んでもよく、場合により標的ペプチドまたはタンパク質配列の一部に合致する配列を有する、第2のプライマーの選択に関する推奨事項を含む(前出)。典型的に複数の複合核酸分子およびユニバーサルプライマーは、キット中の別個の容器に含まれる。
【0139】
本発明が容易に理解されて実用化されるために、以下の非限定的例を手段として特定の実施態様をここで記載する。本発明の範囲を逸脱することなく、細部の修飾を実施してもよいものと理解される。
【0140】
本発明の典型的な実施形態
特定の生体系中のタンパク質−タンパク質相互作用ネットワーク(インタラクトームとしてもまた知られている)の詳細な知識は、それを完全に理解するために重要である。様々なゲノムの可用性と相俟って、既知のまたは予測されるタンパク質の数は指数関数的に増えている。しかしこれらのタンパク質の機能注解は、ゲノムデータの増大に後れを取っている。この状況を是正する努力の一環として、複数のグループが、以下を用いた全ゲノムでのスクリーニングを実施している。酵母ツーハイブリッド(Bartel,P.L.,et al.,Nat Genet(1996)12,1,72−77;Giot,L,et al.,Science(2003)302,5651,1727−1736;La Count,DJ,et al.,Nature(2005)438,7064,103−107;Li,S,et al.,Science(2004)303,5657,540−543;Rain,JC,et al.,Nature(2001)409,6817,211−215;Titz,B,et al.,PLoS One(2008)3,5,.e2292;Uetz,P,et al.,Science(2006)311,5758,239−242;Parrish,JR,et al.,Genome Biol(2007)8,7,R130;Rual,JF,et al.,Nature(2005)437,7062,1173−1178;Stelzl,U,et al.,Cell(2005)122,6,957−968;Ito,T,et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2001)98,8,4569−4574;Uetz,P,et al.,Nature(2000)403,6770,623−627)、タンパク質チップ(Zhu,H.,et al.,Science(2001)293,5537,2101−2105)、および親和性プルダウンとそれに続く質量分析法(Ho,Y.,et al.,Nature(2002)415,6868,180−183;Gavin,AC,et al.,Nature(2002)415,6868,141−147;Krogan,NJ,et al.,Nature(2006)440,7084,637−643)。ゲノムレベルでタンパク質相互作用を研究するために一般に使用される技術の中で、ツーハイブリッド系は、ハイスループット用途に特に適する。典型的に、活性化ドメインに融合したORF配列またはプールライブラリーが、DNA−結合領域に融合したORFを含有する細胞と合わされる。配列法では、個々の餌タンパク質が、所定の活性化ドメイン−ORF融合配列のあらゆる構成部分と並行して合わされる(Uetz et al.,2000,前出)。次に単に陽性二倍体の位置を記録することによって、相互作用が同定される。しかしこの方法は、各餌タンパク質を活性化ドメイン−ORF融合配列に1つずつ合わせるステップを伴うので、かなり骨が折れる。
【0141】
ライブラリーベースのアプローチでは、プールされた活性化ドメイン−ORF融合物をDNA結合領域−ORF融合物と合わせ、選択プレート上での成長によって相互作用二倍体を選択する。次にPCR増幅と配列決定によって、相互作用パートナーのアイデンティティを判定する。1回目に同定された可能な相互作の再現性はかなり変わりやすく、配列では20%からライブラリーでは60%以上の範囲である(Rual et al.,2005,前出;.Stelzl et al.,2005,前出;Uetz et al.,2000,前出;Terradot,L,et al.,Mol Cell Proteomics(2004)3,8,809−819)。
【0142】
ゲノムの相互作用マップを発見するために、様々なモデル生物中で複数の酵母ツーハイブリッドスクリーニングが実施されており、最初はT7バクテリオファージに適用された(Bartel et al.,1996,前出)。Uetzら(2000,前出)およびItoら(2001,前出)は、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)ゲノム中の約6000個の遺伝子の大部分に対してハイスループット実験を実施し、それぞれ957および4549の相互作用を発見した。意外にも、これらのインタラクトーム間には限定的オーバーラップのみが見られ(Ito et al.,2001,前出)、恐らくは全ての可能な二体相互作用の不完全なクエリー、ならびに経済的に配列決定できる潜在的陽性数の制限に起因する(Uetz et al.,2000,前出)。
【0143】
引き続いて同様のスクリーニングが、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)(Giot et al.,2003,前出)、H.ピロリ(H.pylori)(Rain et al.,2001,前出)、C.エレガンス(C.elegans)(Li et al.,2004,前出)、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(LaCount et al.,2005,前出)に対して、および2つの別々のグループによってヒトに対して(Rual et al.,2005,前出;Stelzl et al.,2005,前出)、その他の生物に加えて実施されている。酵母ツーハイブリッド法と同様に、インタラクトーム間には、それらのライブラリー中の約1000個のタンパク質のオーバーラップにもかかわらず、意外にも2つのヒト研究によって明らかにされたわずかなオーバーラップ(17の相互作用)のみが存在する(Rual et al.,2005,前出;Stelzl et al.,2005,前出;Ratushny,V,& Golemis,E,Biotechniques(2008)44,5,655−662)。この理由は、遺伝子対の全ての可能な組み合わせの不十分なカバレッジ(各研究はヒトゲノム中の可能な遺伝子総数のごく一部にのみ関与する)、一例では経費検討の理由から設定された配列決定される陽性二倍体数の制限(Uetz et al.,2000,前出)、酵母ツーハイブリッド技術で起きることが知られている汚染擬陽性ならびに偽陰性(Huang,H,et al.,PLoS Comput Biol(2007)3,11,e214)と考えられる。これらの問題の解決策は、各遺伝子の複数コピーを含んで、恐らく個々のドメインに分割された、特により大きなゲノム(ヒトゲノムなどの)に対して、より広範囲なスクリーニングを実施して、配列決定される陽性二倍体の数を増やすことである。このような努力は、個々の研究所の資源にとって大きな負担になる可能性が高い。
【0144】
利用できるゲノムデータ量の迅速な増大の別の帰結は、予測されたプロテオームを調査するための抗体などの適切な分析的試薬の不在である。これは従来の抗体開発プロトコルの低い処理能力のためである。数多くのグループが、タンパク質断片相補アッセイ(PCA)、選択的感染型ファージおよびコンビナトリアル酵母−ファージディスプレイ(Bartel et al.,1996,前出;Rual et al.,2005,前出;Uetz et al.,2000,前出;Jung,S,et al.,J Immunol Methods(1999)231,1−2,93−104;Bowley,DR,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A(2009)106,5,1380−1385;Secco,P,et al.,Protein Eng Des Sel(2009)22,3,149−58)をはじめとする、この状況に対処するための新規技術を開発している。これらの技術は、抗原および抗体ライブラリーの同時のコンビナトリアル発現、および同族対選択のための条件的酵素活性または蛍光活性化細胞選別(FACS)に依存する。これらは抗体を以前可能であったよりも迅速に作り出せる一方で、これらの方法もまた、その中で発生した情報を保存および伝達する簡易手段を欠いているようであり、代わりに抗原−抗体対の共通表記法に依存している(Bowley et al.,2009,前出)。
【0145】
この支障を単純化するために、Hastieおよび(Hastie,A.R,&Pruitt,SC,Nucleic Acids Res(2007)35,21,el41)は、生体内における相互作用遺伝子のCreリコンビナーゼ仲介結合を伴う革新的な技術を開発した。DNAの単一セグメントを形成するための相互作用遺伝子の結合は、必然的に相互作用データを維持する。次にこれらの融合遺伝子を情報の損失なしにプールし、並行して処理し、二体相互作用タグ(BI−tags)と称される短い配列タグを生じ得る。しかしこの方法は、既存のプラスミドライブラリーと株の修飾を必要とし、コンビナトリアル酵母−ファージディスプレイなどのその他の方法に容易に適用し得ない(Bowley et al.,2009,前出)。
【0146】
上で説明したように、本発明に従った方法は、結合タンパク質をコードする遺伝子をDNAの単一セグメントに結合できるようにする。その結果、例えば多様なツーハイブリッドアッセイからの情報を容易に保存、複写、調査し得る。以下の実施例では、この技術が、細菌ツーハイブリッド系などのその他の関連構成、およびコンビナトリアル酵母−ファージディスプレイなどの新規形態に適用可能であることもまた実証される。
【0147】
図1は、ペプチドまたはタンパク質と、ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子を互いに物理的に結合させる例示的実施態様を描写する。典型的に、ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子が提供される。核酸は細胞に導入される。そこでそれは発現され、すなわちアミノ酸に翻訳されてペプチドまたはタンパク質が形成される。したがって物理的な結合を提供する簡単な方法は、コードされたペプチドまたはタンパク質(11)を細胞内で形成するための、適切な細胞(79)中における核酸分子(39)の発現(G)である。さらなる例は、適切な細胞(79)の細胞表面における、核酸分子(39)によってコードされるペプチドまたはタンパク質(11)の発現(F)であり、それによってそれぞれの細胞外で、可能な結合パートナーのある複合体の形成が起こりえる。その中に核酸分子が含まれるウィルスベクター(32)(例えば細菌ファージまたはファージミド)を使用する場合、それは容易に単離し得る。例えば結合ペプチド(5)を通じて、ウィルス外被のタンパク質が関心のあるペプチドまたはタンパク質(11)に融合する場合、物理的結合が形成される(A)。共有結合DNAディスプレイ(B)では、例えばDNA結合タンパク質P2A(35)を使用して、コードされたペプチドまたはタンパク質(11)とコードされた核酸分子(33)の間に共有結合が形成される。DNA結合した関心のあるタンパク質とペプチドまたはタンパク質(11)によって、例えば結合ペプチド(5)を通じて、融合タンパク質が再度形成される。mRNAディスプレイ(C)では、ピューロマイシン分子(36)の手段によって、例えば結合ペプチド(5)を通じて、コードされた核酸分子(34)とコードされたペプチド/タンパク質(11)の間の共有結合が形成され得る。さらにcDNAディスプレイ(D)においては、コードする核酸分子(334)が、少なくとも本質的に相補的なcDNA(333)とハイブリッド形成してもよい。cDNAは、ピューロマイシン分子(36)、コードされるペプチド/タンパク質(11)、および任意に結合ペプチド(5)を保有する。リボソームディスプレイ(E)では、例えばクロラムフェニコールの手段によって、恐らくは結合ペプチド(5)を含む、リボソーム(37)、mRNA(38)、およびコードされるペプチド/タンパク質(11)の間の複合体を安定化することにより、物理的結合が形成される。
【0148】
図2Aは、本発明の実施態様の概略図を示す。この方法では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質中の一対の第1(12)および第2の結合パートナー(13)が同定される。そのアイデンティティが既知である第1の結合パートナー(12)を含む複数のペプチドおよび/またはタンパク質が提供される(I)。複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、第2の結合パートナー(13)を含むことがさらに疑われる。この場合、第2の結合パートナー(13)は第1の結合パートナー(12)と共に複合体を形成する(II)。複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバー(11、12、13)は、結合部分(5)を通じてメンバーコーディング核酸分子(1、2、3)と物理的に結合している。これらの核酸分子(例えば(2)および(3))は、それがそれらに結合する、対応するペプチド(例えばそれぞれ(12)および(13))をコードするヌクレオチド配列を有する。この因子が不活性である条件下で、例えば因子が活性である温度範囲未満の温度で、核酸分子と結合できる因子(7)が複数のペプチドおよび/またはタンパク質に添加される(III)。各区画(6)が、一対の結合パートナー間に形成された複合体を最大でおよそ1つ含んでなるように、複数のペプチドおよび/またはタンパク質を複数の区画に分ける(IV)。温度変化、さらなる因子の添加など1つ以上の条件が変化すると、因子(7)は活性を取り戻す。それによって第1の結合パートナー(12)のメンバーコーディング核酸分子(2)と、第2の結合パートナー(13)のメンバーコーディング核酸分子(3)を結合させる(V)。その結果、結合した核酸分子(4)が形成される(次のステップで描写される)。区画を崩壊させる(VI)。
【0149】
2つの結合パートナーの複合体に結合できる捕捉プローブ(9)を添加して、捕捉プローブをそれぞれの複合体に結合させる(VII)。捕捉分子、ひいては第1および第2の結合パートナー間の複合体もまた回収される(VIII)。結合核酸分子(4)が遊離されるように、結合部分(5)と、2つのメンバーコーディング核酸分子(2、3)の結合核酸分子(4)の間の物理的結合を切断する(IX)。結合核酸分子(4)を増幅し(XI)、配列決定のために、例えばSanger法に従って、核酸分子(41、42)の2つのストランドを分離する(XII)。
【0150】
図1で描写される方法の一実施態様では、複数のペプチドおよび/またはタンパク質が混合物の形態で提供される。この混合物は、例えば第1の結合パートナーまたは第2の結合パートナーなどの標的分子と、原料が複数のまたは起源が複数のペプチドおよび/またはタンパク質と定義されてもよい、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質とを接触させることによって得られる。
【0151】
図2Bは、相互作用対とされてもよい、結合パートナーをコードする2つのメンバーコーディング核酸分子の結合核酸分子の選択的増幅を模式的に示す。オリゴヌクレオチドによって規定される遺伝子を含有するテンプレートのみが増幅されるように、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドが使用される。この遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの添加は、結合パートナーをコードしそれによって関心のある遺伝子を含む、融合核酸分子のみが増幅されることを確実にする。増幅生成物の配列を決定して、結合パートナーを同定し得る。
【0152】
図2Cは、オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)手順を模式的に示す。I:過剰な外部オリゴヌクレオチドと共に、数サイクルの非対称性PCRを実施する。II:重複する3’末端のアニーリングおよび延長を実施する。III:最終SOE産物が得られる。
【0153】
図3は、本発明の実施態様の別の概略図を示す。この方法では、複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質(111、112、113)が提供される(I)。複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは、結合ペプチドまたはタンパク質(5)(HaeIIIメチラーゼなどの)およびさらなるペプチドまたはタンパク質(11、12、13)を含む。複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーの結合ペプチドまたはタンパク質(5)は、メンバーコーディング核酸分子(1、2、3)と物理的に結合している。メンバーコーディング核酸分子のそれぞれは、それに結合した融合ペプチドまたはタンパク質(111、112、113)をコードするヌクレオチド配列を含む。複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質に含まれるさらなるペプチドまたはタンパク質の1つは、標的ペプチドまたはタンパク質(12)である。さらにその他のさらなるペプチドおよび/またはタンパク質(11、13)は、標的ペプチドまたはタンパク質(12)と複合体を形成できる結合パートナーを含むことが疑われる。標的ペプチドまたはタンパク質(12)と結合パートナー(13)の間の複合体を形成させてもよい(II)。あるいは、この複合体はまた、本発明の方法実施する前に形成されていてもよい。核酸分子末端をライゲーションできる因子(7)が添加され、複数のペプチドおよび/またはタンパク質が複数の区画(6)に分けられる(III)。形成された区画のそれぞれは、メンバーを1つ以下、または複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー同士の間の複合体を1つ以下含む。したがってそのそれぞれが対応するメンバーコーディング核酸分子(2、3)に結合している、標的ペプチドまたはタンパク質(12)と結合パートナー(13)の間の複合体は、残りのさらなるペプチドまたはタンパク質から分離される。因子(7)は、標的ペプチドまたはタンパク質(2)のメンバーコーディング核酸分子と、結合パートナー(3)のメンバーコーディング核酸分子を連結させる(IV)。したがって標的ペプチドまたはタンパク質(12)と、そして結合パートナー(13)(次のステップで描写される)と、物理的に結合している複合核酸分子(4)が形成される。区画(6)を崩壊させる(V)。このようにして複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質の混合物が、再度形成される。一対の第1および第2のプライマーを使用して、PCRを実施する。第1のプライマーは、標的ペプチドまたはタンパク質をコードする、メンバーコーディング核酸分子配列の一部と相補的である(図示せず)。第2のプライマーはユニバーサルプライマーである(図示せず)。したがって複合核酸分子(4)が増幅される(VI)。結合されたメンバーコーディング核酸分子がある複数の融合ペプチドおよび/またはタンパク質が少なくとも本質的に除去されるように、複合核酸分子(4)を精製する(VII)。自動配列決定装置(50)の手段によって、複合核酸分子配列を決定する(VIII、IX)。
【0154】
図4は、本発明の実施態様のさらなる概略図を描写する。可変的に標識されたcDNAライブラリーが提供される(I)。標識されたヌクレオチド配列を参照数字97、98、および99で表示する。cDNA分子によってコードされるタンパク質および/またはペプチドが、インビトロ翻訳によって形成される(II)。それによって形成された各タンパク質/ペプチドをコーディング遺伝子があるcDNAのみに結合させる。形成した各タンパク質/ペプチドは、リンカー分子(25)を通じて対応するcDNA分子に結合している。複数のペプチドおよび/またはタンパク質(22、23、24)中で、第1(23)および第2の(24)結合パートナー間の複合体を形成させる(III)。複数のペプチドおよび/またはタンパク質を複数の区画(6)に分ける(IV)。形成された区画のそれぞれは、複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー(22)を1つ以下、または複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー(23、24)同士の間の複合体を1つ以下含む。第1および第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子(「A」および「C」)を結合させて、区画を分解させる(V)。この方法を使用して、複合核酸分子(44)の核酸ライブラリーを形成し得て(VI)、特に例えば1011、1012または1013を超えるなど、10000、100000を超え、10、10、10、10、または1010を超える、複数のタンパク質/ペプチドをコードする大きな標識cDNAライブラリーが提供される(代表的な数は図4Iにも示される)。この点において本発明はまた、対応する複数の複合核酸分子(44)を含むキットも提供する。次に複合核酸分子(44)ライブラリーを使用して、標的特異性オリゴヌクレオチドプライマーとユニバーサルプライマーを使用したPCRによって、特定の標的タンパク質の相互作用物をプローブし得る(図5参照)。
【0155】
図5は、本発明に従った方法で形成されてもよい複合核酸分子を分離する、追加的ステップの一例を描写する。本発明に従った方法を使用して形成された結合核酸ライブラリーを標的特異性オリゴヌクレオチドとユニバーサルプライマーを使用したPCRによってプローブし、標的分子/ペプチドの相互作用物を同定し得る。描写されたゲルを分析するために、異なる複合核酸分子をPCRによって増幅した。核酸分子は、標的タンパク質1(レーン1)および標的タンパク質2(レーン2)に対する相互作用物タンパク質をコードする配列を含んだ。複数のペプチドおよび/またはタンパク質が、例えば第1の結合パートナーならびに第2の結合パートナー、第3の結合パートナー、および第4の結合パートナーを含むかもしれない場合、複合核酸分子の分離が所望されるかもしれない。あるいは、例えば、第2、第3、および第4結合パートナーのそれぞれが、既知の第1の結合パートナーと複合体を形成できてもよい。さらにいくつかの実施態様では、本発明に従った方法で少なくとも2つの標的分子を使用してもよい。各標的分子は、1つ以上の結合パートナーと複合体を形成してもよい。これらの複合体を分離するために、ゲル電気泳動法を使用してもよい(バンドを複数の既知のマーカー核酸(M)と、2つのレーン(1)および(2)について記号で表す)。
【0156】
図6Aは、本発明の方法を含んでもよく、またはそれと組み合わせられてもよい酵母ツーハイブリッドシステムの使用を示す。餌(「X」で示される)と称される第1のペプチドまたはタンパク質は、転写因子のDNA−結合領域(DBD)に結合している。転写因子は、レポーター遺伝子のプロモーターなどの上流活性化配列(UAS)に結合できる。餌食(「Y」で示される)と称される第2のペプチドまたはタンパク質は、同一転写因子の活性化ドメイン(AD)に結合している。餌と餌食が複合体を形成すれば、DNA−結合領域と活性化ドメインの間の物理的接触が確立される。その結果、上流活性化配列が活性化されて、典型的にレポーター遺伝子が発現される。標準プロトコル当該技術分野では、酵母は、選択の不在下でプレート上に播種される(図の下部分)。使用される酵母は、例えば必要とされる転写因子の欠如のために、レポーター酵素を形成する能力を欠く。レポーター酵素の活性は視覚化し得る。欠損因子のDNA−結合領域の融合タンパク質/ペプチドをコードする配列と第1のタンパク質を含む第1のプラスミド、および欠損因子の活性化ドメインの融合タンパク質/ペプチドをコードする配列と第2のタンパク質を含む第2のプラスミドを使用する。成長させると、酵母はコロニーを形成する。それからコロニーが形成された酵母細胞内で、第1および第2のタンパク質の間の相互作用が起きたならば、コロニー細胞(81)をレポーター酵素による発色によって同定し得る。このような相互作用のないコロニー(80)は、対応する色を生じ得ない。
【0157】
図6Bは、本発明の方法に従って、標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法の概略図を描写する。複数のメンバーコーディング核酸分子(3、15、17)が提供される(I)。メンバーコーディング核酸分子のそれぞれは、標的ペプチドまたはタンパク質と複合体を形成するその能力について分析されるペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む。標的ペプチドの結合パートナーをコードすることが疑われる分子について、複数のメンバーコーディング核酸分子をスクリーニングする。各メンバーコーディング核酸分子は異なる宿主細胞(79)に導入される(II)。さらなる核酸分子(2)が、標的ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む各宿主細胞(79)に導入される(III)。複数の異なる標的ペプチド(またはタンパク質)をコードする複数の異なる核酸分子を使用してもよい。このような実施態様では、1つの標的ペプチドコーディング核酸分子のみが各細胞に導入される。メンバーコーディング核酸分子のそれぞれは、第1の相補部分をコードする配列をさらに含む(詳細については説明参照)。標的ペプチドまたはタンパク質の配列を含む核酸分子は、第2の相補部分をコードする配列をさらに含む。第1および第2の相補部分は一緒になって機能的に活性な因子を形成し、それは例えば宿主細胞(79)のレポーター遺伝子発現を調節することによって、シグナルを提供する。細胞はペプチドを発現する。標的ペプチド/タンパク質と対応するその結合パートナーが一緒になって発現される細胞内では、2つの相互作用する結合パートナーの複合体が形成する。このような細胞内では、第1および第2の相補部分は一緒になって機能的に活性な因子を形成する。その中で相補部分間の相互作用が起きた宿主細胞(81)は、例えばレポーター遺伝子(IV)の作用に基づいて、このような相互作用が起きなかった宿主細胞(80)と区別され得る。このようにして同定された宿主細胞(81)は、さらなる処理のために分別される。核酸分子末端をライゲーションできる因子(7)が添加されてもよく、複数の細胞が複数の区画(6)に分けられる(V)。形成された区画のそれぞれは、細胞(81)を1つ以下含む。細胞を崩壊させて、2つの結合パートナーをコードする区画内の2つの核酸分子を例えば因子7によって結合させる(VI)。これは結合核酸を形成させる、適切な核酸増幅のためのプライマーであってもよい。その結果複合核酸分子(4)が形成される(次のステップで描写される)。区画(6)を崩壊させる(VII)。得られる複合核酸分子コピーをさらに増幅してもよい(VIII)。
【0158】
図7は、クロマトグラフィー分析における、細菌系での本発明に従った方法の実施を例証する。2つの細菌細胞系中に存在するプラスミド挿入断片の同族結合が描写される。細胞を下述するように乳化して処理する。BC165およびBC166それぞれの10個の細胞を乳化して、SOE−PCRを実施する。BC165中に存在する2つのプラスミド挿入断片の同族結合は、1150bpのバンド(A)をもたらす。BC166中に存在する2つのプラスミド挿入断片の同族結合は、480bpのバンド(C)をもたらす。BC165およびBC166からのプラスミド挿入断片の不正(非同族)結合は、1000bp(D)および640bp(B)に相当するバンドをもたらす。レーン1は非乳化水性対照を示し、MはDNAラダーを示す。レーン2がエマルジョンSOE−PCRの上部画分を示し、レーン3が中間画分を示すのに対し、レーン4は分解エマルジョン小滴もまた含有する下部画分を示す。
【0159】
以上のように、乳化(特に上部および中間画分、レーン2および3)は、正しく結合されたプラスミド挿入断片(AおよびB)の優勢な単離をもたらし、単一細菌細胞の個々のエマルジョン区画への分離が示唆される。乳化の不在下では、全ての4つの可能な結合組み合わせが見られ、所望の生成物AおよびBに明らかな濃縮が見られない(レーン1)。
【0160】
図8Aは、そのそれぞれが異なる挿入断片(黒色、斜線、斑点、菱形)を保有する、2つの異なるプラスミド(白色および網掛けドーナツ)を含有する細胞(79)を模式的に示す。細胞は反応混合物中で乳化される。乳化は細胞の個々の区画への分離、プラスミド挿入断片の正確な(クローン)結合(生成物AおよびB)を確実にする。図8Bが示すように、区画の形成なしでは、細胞(およびプラスミド)は結合処置中に無作為に相互作用する。それによって双方の正しい結合生成物(AおよびB)、および不正確な結合生成物(CおよびD)が形成される。
【0161】
図10は、エマルジョン形成がどのように最適化され得るかを示す。A:レーンTがエマルジョンSOE−PCRの上部画分を示し、レーンBが下部画分を示すのに対し、B’は分解エマルジョンを示す。レーンMはDNAラダーを示す。正確にスプライスされた1350bpおよび1200bpのバンドがYC16_14から生じ、Yc16_6は、それぞれ2および3と番号づけられる。不正なスプライシングは、それぞれ4および1と番号づけられる990bpおよび1560bpのバンドをもたらす。薄い下方のバンドは、YC16_14およびYc16_6からの未分割の個々の単位複製配列である。不正なバンド4は、エマルジョンが無傷でないレーンB’では非常に優勢になることに留意されたい;対応してバンド3はより薄くなる。B:レーンTおよびBからのテンプレートを100倍に希釈して、この1μlをエマルジョン中でネステッドオリゴAおよびDを使用して、二次PCRのためのテンプレートとして使用した。結果は相対組成に影響を及ぼすことなく、一次エマルジョンSOE−PCRから得られるライブラリーを一貫して再増幅することが可能であることを示す。
【0162】
図11は、エマルジョンを形成することで本発明に従った方法を実施する、さらなる例を描写するレーン1は上部エマルジョン画分;レーン2は中間エマルジョン画分;レーン3は下部エマルジョン画分;レーン4は分解エマルジョン画分;レーン5は水性対照を示し、レーンMはDNAラダーを示す。YC9中に存在する2つのプラスミド挿入断片同族の結合は、1100bpのバンド(A)をもたらす。YC3中に存在する2つのプラスミド挿入断片同族の結合は、625bpのバンド(B)をもたらす。YC9およびYC3からのプラスミド挿入断片の不正な(非同族の)結合は、1150bp(C)および575bp(D)に相当するバンドをもたらす。図から分かるように、エマルジョン中では所望の生成物AおよびBが誤対合バンドCおよびDと比較して強く濃縮されており、エマルジョンPCRプロセス中にほとんどの細胞が単離されたままであることが示唆される。
【0163】
図12は、エマルジョンSOEを使用した、混合物からの所望のSOE配列の回収を示し、モデル選択もまた示して検出閾値の決定を示す。レーンTがエマルジョンSOE−PCRの上部画分を示し、レーンBが下部画分を示すのに対して、レーンBは分解エマルジョンを示す。レーンAqは非乳化水性対照を示し、MはDNAラダーを示す。正確なサイズのバンドが強調表示される。分解エマルジョンレーン(レーン3)中にも生成物が見られることに留意されたい.これは恐らくpGBKおよびpACT2挿入断片のスプライシング後に分解が起きたかもしれないという事実、ならびに下部画分からの真性のスプライスされたYC8 DNAの持ち越し汚染のためである。図のように、(A)1000、100、10、および0個のYC8細胞を250,000YC16ライブラリー細胞と混合し、エマルジョンSOE−PCRを実施した。SOE−PCRの完了後にエマルジョンを分解し、1μlの抽出物をネステッドオリゴAおよびp53rev3を使用した二次PCRのためのテンプレートとして使用し、それは正確にスプライスされたYC8 SOE生成物を増幅した。結果を上記のアガロースゲル上で分析した。(B)それぞれ500、300、200、100、および0個の細胞を250,000個のYC16ライブラリー細胞と混合することよって、検出閾値のさらなる改良を試みた。(A)に記載されるのと同一手順を実施した。現行の実施態様の検出限界は、250,000個の細胞中に500個程度である。これはこの技術を酵母ツーハイブリッドライブラリー対ライブラリー実験に適用するのに適する。
【0164】
本明細書で例証される実施例中では、油中水滴型エマルジョン中の細胞のインビトロ区画化を用いる。各エマルジョン小滴内で、単細胞からの相互作用遺伝子対(または酵母−ファージディスプレイの場合は細胞ファージ対(Bowley et al.,2009,前出)が、オーバーラップ伸長PCR(SOE−PCR)によるスプライシングを使用して結合される。相互作用対がDNAの単一セグメントとして結合されたならば、それらをプールして増幅し、より大きなコミュニティに広め、遺伝子特異的プライマーを使用して、関心のある遺伝子が関わる相互作用について調査し得る。
【0165】
2つの細菌細胞系に存在するプラスミド挿入断片の同族結合の交叉試験を以下で例証する。細胞を次のように乳化して処理した。
材料
油相:
Span 80(Sigma Aldrich)、Tween 80(Sigma Aldrich)、およびTriton X−100(BDH)を軽油(Sigma Aldrich)に、それぞれ最終濃度4.5%、0.4%、および0.05%に添加した。通常、磁気撹拌機を使用して構成要素を混合し、4℃で保存した。油相は調製の2週間以内に使用した。
【0166】
引き続く実験では、Ghadessyら(Proc Natl Acad Sci U.S.A.(2001)98,8,4552−4557)によって使用された界面活性剤濃度を倍にすることで、軽油(Sigma)中に9%v/vのSPAN 80(Sigma)、0.8%v/vのTWEEN 80(Sigma)、および0.1%のTRITON X−100(BDH)を含有する、変性鉱物油と界面活性剤混合物(9%CSR混合物と称する)を調製した。9%CSR混合物は4℃で保存し、使用直前に完全に混合した。
【0167】
水相:
PCR試薬はBiolineからのものであった。
大腸菌(E.coli)株:
XL−1 Blue(Stratagene)細胞をpet22bおよびDsRedベクターの双方で形質転換した。この株をBC166と命名した。pet22bベクターが550bpの白血病抑制因子(Lif)挿入断片を含有するのに対し、DsRedベクターは150bpΔ−fos挿入断片を有することを除いては、BC165は、同一ベクターを有保するXL−1 Blue株である。対数期のBC165およびBC166細胞を使用前に1mlのPBSで3回洗浄した。
【0168】
プライマー:
以下のプライマーを使用して、オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)および二次PCRを実施した。
PetF2:5’−CATCGGTGATGTCGGCGAT−3’(配列番号:1)、
PetF3:5’−ATAGGCGCCAGCAACCGCACCTG−3’(配列番号:2)、
Pet22−RSOE:5’−GGCGCGCCATGGGAATAGCTAGGTTAGCAGCCGGATCTCAGTG−3’(配列番号:3)、
DsRed−FSOE:5’−CTAGCTATTCCCATGGCGCGCCTAGCGCTACCGGACTCAGATCTC−3’(配列番号:4)、
pDS−R:5’−CACCTTGAAGCGCATGAACTCC−3’(配列番号:5)、
DSR−nest:5’−CTCGGAGGCCATGGTG−3’(配列番号:6)
方法
エマルジョン調製:
250μlの1×SOE PCR水相混合物は、MgCl(1.5mM)、dNTPs(200μM)、PetF2(500nM)、Pet22−RSOE(20nM)、DsRed−FSOE(20nM)、p−DSR(500nM)、Taqポリメラーゼ(10単位)、BC165細胞(1×10)、BC166細胞(1×10)、BSA(100μg/ml)を含んでなった。
【0169】
NUNC Cryotubeバイアル内で、200μlの上記水相を400μlの油相に添加した。接着テープを使用して、バイアルをIKA MS2ミニ振盪機にしっかりと固定した。次に管を2350rpmで6分30秒間振盪した。その後、35μlのエマルジョンを複数の200μl PCRストリップに等分して、PCRを実施した。残りの50μLの水相は、非乳化PCR対照として使用した。
【0170】
9%CSR混合物を使用する際は、乳化中に、約550rpmの磁気撹拌機(Corning PC−620D)上で、400μlの9%CSR混合物を8mm×3mmの小型磁気旋回式撹拌棒と共にCryoTube(Nunc)に入れた。次に200μlの氷冷水性PCR混合物を5秒あたり1滴の速度で、合計約70秒間にわたり上記に添加した。混合物の撹拌をさらに120秒間継続して、磁気撹拌機から取り出した。35μlのエマルジョンを2つの8本管ストリップからの15本の管に等分し、最後の管は対照として非乳化PCR混合物を含有した。次にストリップを熱サイクルのためにPCRブロックに入れた。
【0171】
エマルジョン分画:
一般に、SOE−PCR完了後に少量の水相がエマルジョンの底に見られる。これは融合小滴に相当し、複数のテンプレート混合に起因する高濃度の不正融合遺伝子(誤った同族バンド)を含有する。この分解エマルジョン画分を注意深いピペット操作によって各管から除去し、プールする。次に10μlのエマルジョンを8本管ストリップの各管の底から抜き出して、プールする。この画分は下部画分と称され、底に沈む傾向がある比較的大型の小滴に相当する。次に上部画分と称されるエマルジョン残部をプールして、全ての画分を下述するように抽出する。特定のエマルジョンを含有する全ての管で、この手順を繰り返す。
【0172】
エマルジョン抽出:
PCRプロトコル完了後に、管を室温で上向のままさらに1〜2時間置いて大型水滴を管の底に沈めた。その後、各管の底から10μlを取り出した。エマルジョンのこの部分をプールして、下部画分とラベルした。残りのエマルジョンを別の管にプールして、上部画分と称した。双方の管を卓上型遠心機(エッペンドルフ)上で800×gで2分間遠沈した。これによって、恐らく複数の小滴の融合生成物であるより大きな水滴が生じ、それを管の底に沈めた。この水性画分を上下画分の双方から注意深く取り出して別の管にプールし、分解エマルジョン画分とラベルした。次に900μlのジエチルエーテルを上下管からの残りのエマルジョンに添加して、内容物をボルテックスして卓上遠心機上で16100×gで2分間遠沈した。これはエマルジョン分解と水性および疎水性相の分離を引き起こし、水相は管の底にあった。疎水性相をピペットで注意深く取り出した。別の900μlのジエチルエーテルを水相に添加して上記手順を繰り返し、エマルジョンPCR生成物を得た。
【0173】
PCR:
特に断りのない限り、エマルジョンのために以下の熱サイクルプロトコルを使用した。94℃で5分間、94℃で10秒間、60℃で45秒間、72℃で90秒間を合計30サイクル。
【0174】
二次PCR:
特に断りのない限り、二次PCR反応物は、1μlの抽出エマルジョンPCRテンプレート、MgCl(1.5mM)、dNTPs(200uM)、PetF3(200nM)、DSR−nest(200nM)、Taqポリメラーゼ(制限)を最終容積30μL中に含んでなる。
【0175】
PCRプロトコルは次のとおりであった。94℃で5分間、94℃で10秒間、55℃で20秒間、72℃で90秒間を合計25サイクル。
オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)−PCR手順およびオリゴヌクレオチド:
典型的なエマルジョンSOE−PCR反応は総容積250μlを有し、以下を含んだ。1×Biotaq NH緩衝液(Bioline)、200nM Gal4ADF順方向オリゴヌクレオチド(5’AATACCACTACAATGGATGATG3’、配列番号7)、200nM逆方向オリゴヌクレオチドD(5’CCCGGAATTAGCTTGGCTGCAAC3’、配列番号8)、およびそれぞれ20nMのSOEオリゴヌクレオチドH2HB2(5’CCGCCGCTACCACCACCGCCAAGATGGTGCACGATGCACAGTTG3’、配列番号9)、およびH2HC2(5’GGCGGTGGTGGTAGCGGCGGAGTGCGACATCATCATCGGAAGAGAGTAG3’、配列番号10)。アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)からのリチカーゼ(Sigma)を最終濃度約350単位/mlに添加した。10単位のImmolase DNAポリメラーゼ(Bioline)を使用した。酵母細胞を1ml PBSに懸濁して5回洗浄し、次に血球計数版(Brightline)を使用して計数した。次に乳化処置の直前に、典型的に250,000個の細胞を5μlのPBSに懸濁し、氷冷PCR混合物に添加した。PTC−200(MJ Research)装置上で熱サイクルを実施した。エマルジョンSOE−PCRのためのプロトコルは次のとおりであった。37℃で1時間(リチカーゼ消化)、95℃で10分間(イモレースの活性化)、続いて95℃で10秒間、57℃で30秒間、および72℃で2分間を35サイクル。最後に72℃で5分間の延長ステップを含めた。
【0176】
レスキューPCRオリゴヌクレオチドおよび手順:
二次PCRのために、最終反応の典型的な容積は30μlであり、1×Biotaq NH緩衝液、200nMオリゴヌクレオチドA(5’CTATTCGATGATGAAGATACCCCACCAAACC3’、配列番号:11)および200nMのオリゴヌクレオチドp53rev4(5’GGAACTGTTACACATGTAGTTGTAG3’、配列番号:12)を含有する。テンプレートとして、一般に1μlの一次抽出PCR産物を使用した。Biotaq DNAポリメラーゼを使用した。熱サイクル手順は、特に断りのない限り次のとおりである。95℃で5分間、続いて95℃で10秒間、57℃で10秒間、および72℃で2分間を35サイクル。
【0177】
細菌エマルジョンSOE−PCRで使用されるオリゴヌクレオチドおよびプロトコル:
petF2(配列番号:1)およびDsRev(5’CACCTTGAAGCGCATGAACTCC3’,配列番号:5)を外部プライマーとして使用した。内部SOEプライマーは、petRSOE(配列番号:3)、およびDsFSOE(配列番号:4)である。二次レスキューPCRオリゴヌクレオチドは、petF3(配列番号:2)およびDsR−rev(5’CTCGGAGGAGGCCATGGTG3’、配列番号:13)であった。熱サイクルプロトコルは、95℃で5分間の最初の加熱ステップ、続いて95℃で10秒間、60℃で45秒か、および72℃で90秒間を30サイクルである。
【0178】
結果
基礎的操作スキーム:
2つの相互作用遺伝子を含有することが知られている各細胞は、タンパク質−タンパク質相互作用データのレポジトリーである。しかしこの情報には、容易にアクセスできない。この問題を是正するために、本発明では、図2Cに示すように、オーバーラップ延長によるスプライシング−PCR(SOE−PCR)(Horton,RM,et al.,Methods Enzymol(1993)217,270−9)によって、2つの相互作用遺伝子を1つのDNAセグメントに結合することが選ばれ、それは次に一般的なDNA操作技術を使用して単離、増幅させ、調査し得る。これを異なる細胞からの非同族の遺伝子を結合させることなく、多数の細胞で同時に達成するために、細胞混合物を乳化してそれらを互いに分離した。(Tawfik & Griffiths,1998,前出;Griffiths,AD,& Tawfik,DS,Trends Biotechnol(2006)24,9,395−402)。さらにリチカーゼを添加して酵母細胞壁を消化し、PCR試薬が相互作用遺伝子を利用できるようにした。
【0179】
使用されたSOE手順のための外部プライマーは、プラスミドpACT2中のGAL4活性化ドメインに相補的であるGAL4ADFと、マルチクローニングサイト(MCS)の後でpGBKT7ベクターに相補的なDである。内部プライマーはH2HB2およびH2HC2であり、それは相補的5’halfと、pACT2およびpGBKT7ベクターにそれぞれ相補的である3’末端を有する。ホットスタートDNAポリメラーゼイモレース(Bioline)を使用して、リチカーゼ消化ステップ中にプライマーの二量体化が起きるのを妨げる。SOE−PCR混合物が構成された後に適切な数の細胞を添加して、即座に乳化が続く(材料と方法参照)。細胞数は、エマルジョン中の各水滴が1つを超える細胞を含有する可能性が極めて低いように選択される。次にエマルジョンをPCRブロックにのせる。最初のステップはリチカーゼに細胞壁を消化させる、37℃で1時間のインキュベーションである。次のステップは、イモレース酵素を活性化して、リチカーゼ処理細胞からプラスミドを放出させる、95℃で10分間のインキュベーションである。引き続くステップは、SOE−PCRに典型的である(材料と方法参照)。
【0180】
エマルジョン中でのSOE−PCR完了後、エマルジョンをエーテル処理によって分解し、各細胞からの結合遺伝子を回収してプールし、相互作用遺伝子ライブラリーを形成する。次にこのライブラリーを単純なPCR増幅によって増殖し得る。引き続いて、遺伝子特異的プライマーをデザインし、反対側のベクターに相補的なプライマーと併せてそれを使用することで、このライブラリーを関心のある遺伝子の相互作用について調査し得る(例えば図2Bまたは図8A参照)。
【0181】
エマルジョン条件最適化:
PCR中に遭遇する高温において最小限の分解を受けるエマルジョンを有することが必要である。これは通常、水滴をより小さくし、ひいては融合可能性を低くする、より強い撹拌によって達成されてもよい。しかし細胞は特定の最小をサイズを有し、小滴はまたPCR試薬のための余地も有さねばならないので、小滴がどれほど小さくできるかの閾値がある。理想的には小滴は、PCRサイクル中に熱安定性であり得る最大サイズよりも小さくあるべきである。最適条件を判定するために、同様の状況で使用されるCSR混合物(Ghadessy et al.,Proc Natl Acad Sci U S A(2001)98,8,4552−4557)と、CSR混合物の2倍の濃度の界面活性剤を含有する組成物(2×CSR混合物と称される)の2つの異なる油相組成物を試験した。これらの組成物の400μlを小型磁気撹拌棒と共にNUNC Cryotubeに入れて、200μlの水相を添加した。Corning PC−620D磁気撹拌機上で30、60、および120秒間にわたり約550rpmで撹拌して、2つの相を混合した。より高速の撹拌は、非常に小さな水滴が形成するので望ましくない。それぞれのエマルジョンを8ウェルストリップ管に等分し、PCR熱サイクルを実施した。結果を図9Aに示す。熱分解抵抗性で十分に大きな小滴径を提供することから、現行の用途では、550rpmで約120秒間撹拌した2×CSR混合物が最適であることが明らかである(図9B、図9C)。それにもかかわらず少量のエマルジョン分解が起きる。これは上述のようにエマルジョンを分画することで対抗した。
【0182】
概念実証実験
この方法が有用であるための基礎的要件は、異なる細胞からの遺伝子の偶発性結合を最小限にすることである。乳化がこれをいかに良好に助けるかを試験するために、2つの酵母株YC16_6およびYC16_14からなる単純な実験を考案した。各株の250,000個の細胞を上述のSOE−PCR混合物に添加して、2×CSR混合物中で即座に乳化し、上述のSOE−PCRプロトコルを実施した。YC16_6およびYC16_14からのSOE結合生成物のサイズは、1210bpおよび1350bpであった。YC16_6からのpACT2挿入断片、およびYC16_14からのpGBKT7挿入断片の誤った同族SOE結合は990bpの生成物をもたらす一方、YC16_14からのpACT2挿入断片とYC16_6からのpGBKT7挿入断片の誤った同族結合は、1570bpの生成物をもたらす(図8B)。
【0183】
YC16_6およびYC16_14からのpACT2およびpGBKT7挿入断片が、乳化の結果、同族様式で結合した場合、正確な1210bpおよび1350bpのバンドが不正な990bpおよび1570bpのバンドに優るべきである。概念実証実験(図10A)の結果は、この予測と一致する。乳化レーンが大部分正確なサイズのSOEバンドであるのに対し、非乳化対照は非常に高濃度の990bpのバンドを示す。正確なSOEバンドの相対濃縮は、乳化対非乳化実験において、正確なバンドと不正なバンドの比率を比較することで判定されてもよい。ネステッドオリゴヌクレオチドを使用して、エマルジョンPCRからの抽出生成物をさらに増幅した。二次増幅はエマルジョン中で実施して、より大きな断片がより小さなものによって打ち負かされるのを妨げた(Ghadessy et al.,2001,前出)。この二次PCRの結果は、この方法によって得られるインタラクトームライブラリーが、より大きなSOE−結合生成物の百分率を低下させることなく、増幅され得ることを実証する(図10B)。
【0184】
検出閾値/モデル選択:
引き続く二次PCRにおける相互作用を確実に検出するのには、各相互作用を代表する最小数の細胞の存在が必要である可能性が高い。これは、より豊富なテンプレート上のミスプライミング、いくつかの細胞のリチカーゼによる消化の失敗、および同一小滴内の2つの細胞の存在などの複数の理由のためである。この閾値が何であるか検出するために、以下の実験を行った。pACT2ベクター上のヒトp53遺伝子、およびpGBKベクター上のケラチン5遺伝を保有するよく特徴付けられた株YC8からの1000、100、10、および0個の細胞と、(多様な相互作用遺伝子のライブラリーをシミュレートするための)YC16ライブラリーと称されるランダム挿入断片を含有する、pACT2およびpGBKベクターの双方をそれぞれ保有する250,000個の細胞とを混合し、上述のようにエマルジョンSOE−PCRを実施した。SOE−PCRの後、エマルジョンをエーテルで抽出し、YC8中のp53遺伝子に特異的であるプライマーp53rev3と、SOE PCR反応で使用されるそれぞれのGal4ADFと共にネステッドされたプライマーAとを用いたPCRのためのテンプレートとして、1μlの抽出物を使用した(説明図については例えば図2および図8参照)。1000個の細胞が、成功したYC8 SOE−PCRに相当するより透明な生成物をもたらすのに対し(図12A)、より低い希釈では検出され得ない。YC16ライブラリーの250,000個の細胞中に希釈された、500、300、200、および100個のYC8細胞でさらなる分析を実施した。結果は、250,000個のライブラリー細胞のバックグラウンド中の500個の標的細胞が、検出閾値であることを示す(図12B)。
【0185】
細菌ツーハイブリッド系の適用:
一般的な酵母ツーハイブリッド系の他に、大腸菌(E.coli)系(Karimova,G, et al.,Proc Natl Acad Sci U S A(1998)95,10,5752−5756)および哺乳類系(Lee,JW,& Lee,SK,Methods Mol Biol(2004)261,327−336;Fu,L,& Liang,JJ,J Biol Chem(2002)277,6,4255−4260;Luo,Y.,et al.,Biotechniques(1997)22,2,350−352)の2つのハイブリッド技術が存在する。いくつかのグループが小規模細菌ツーハイブリッド実験を行って、限定的相互作用ネットワーク発見している(Di Lallo,G.,et al.,Microbiology(2003)149,Pt 12,3353−3359;Maggi,S,et al.,Microbiology(2008)154,10,3042−3052;Marbouty,M.,et al.,J Bacteriol(2009)191,16,5123−5133;Karimova,G,et al.,J Bacteriol(2005)187,7,2233−2243)。大腸菌(E.coli)ツーハイブリッドが、エマルジョンSOE−PCRに適するかどうかを試験するために、2つの細菌株BC165およびBC166を用いた単純な概念実証実験を実施した。双方の株は、pet22bおよびpDsRedの2つのベクターを含有する。BC165は、pet22bベクター中の600bpの白血病抑制因子(Lif)挿入断片、およびpDSRedベクター中の180bpのc−fos断片を含有する。BC166はいかなる挿入断片もなしにベクターのみを保有する。petF2およびDsRevを外部プライマーとして使用する一方、petRSOEおよびDsFSOEは相補的5’末端がある内部プライマーであった。酵母ツーハイブリッド実験と同様に、同族SOE−PCRは、それぞれBC165およびBC166からの1150bpおよび480bpのバンドを生じた。2つの株の単位複製配列pet22bおよびDsRedの間の非同族SOEは、1000bpおよび650bpのバンドをもたらす(図7参照)。各株の106個の細胞をSOE−PCR混合物に添加して即座に乳化し、上述のようにSOE−PCRを実施した。エマルジョンを上部、中間、下部、および分解画分に分画し、エーテルを使用して抽出した。ネステッドオリゴヌクレオチドpetF3およびDsR−revを使用したPCRのためのテンプレートとして、少量の抽出物を使用した。アガロースゲル上で二次PCRを実施した(図7)。結果は、エマルジョンSOE−PCRが同族対形成を保存し、正確にスプライスされた生成物の優勢をもたらす一方、水性対照反応が様々なSOE組み合わせの確率論的分布をもたらすことを明らかに示す。エマルジョンSOE−PCR技術は、細菌ツーハイブリッド系にも拡張し得ると結論される。
【0186】
考察
ゲノム配列データの入手可能性によって多数の予測されたタンパク質が同定されたが、それらは機能注解されず、またそれらに対する抗体のような試薬がない。この状況を是正するために、ライブラリー対ライブラリー酵母ツーハイブリッド、コンビナトリアルPCA、または酵母−ファージディスプレイのようなハイスループット方法が開発されている。しかしこれらの技術から生じる情報は、細胞中の遺伝子の同族対、または相補的酵母細胞およびファージの形態である。この情報は容易に保存、複製または広められない。また情報を生物学的形態からデジタル形態に転換するために、多数の個々のクローンを配列決定することは、ほとんどの研究所にとって大きな負担になる。HastieおよびPruitt(2007,前出)は、Creリコンビナーゼと、Cre組み換え部位を保有するベクターを使用して、相互作用遺伝子を単一DNA配列に物理的に結合する方法を提案した。したがって相互作用情報は、2つの遺伝子を保有する細胞が破裂した後であっても保存される。さらに彼らは結合遺伝子から短い配列タグを作り出し、配列決定に必要とされる量を低下させる革新的な手段を提案した。
【0187】
しかしこの方法は既存の株、ベクター、およびライブラリーの修正を必要とし、相互作用対が同一細胞中にないコンビナトリアル酵母−ファージディスプレイのようないくつかのハイスループット法には適さない(Bowley et al.,2009,前出)。我々が記載するiCLIP方法は、完全にインビトロであり、ほとんどの現行のハイスループット相互作用検出技術に適合するはずである。この方法を使用して、我々は、結合タンパク質をコードする遺伝子を結合させる能力を実証する。現行の全ゲノムでの酵母ツーハイブリッドのためのインタラクトームライブラリーサイズは、酵母で約1000〜約4500、およびヒトインタラクトームスクリーニングで約3000の範囲である(Rual et al.,2005,前出;Stelzl et al.,2005,前出;Ito et al.,2001,前出;Uetz,et al.,2000,前出)。インタラクトームの合計サイズは、酵母で約37000〜75000、ヒトで約300,000の範囲であると考えられる(Rual et al.,2005,前出; Grigoriev,A,Nucleic Acids Res(2003)31,14,4157−4161;Hart,GT,et al.,Genome Biol(2006)7,11,120)。さらなる最適化によってより低い閾値値が明らかになるかもしれないが、本発明者らの結果に基づいて、各相互作用は可検出性(図3)を確実にするために、約500個の細胞によって代表されると目下想定し得る。理論的な全てのヒトインタラクトームでは、これは約1.5×10個の細胞に等しい。1回のiCLIP反応で250,000個の細胞が処理されることを考えると、完全なカバレッジのためには、この細胞数は約600回の反応を必要とする。発明者らの経験は、これが十分に実用的な制限の範囲内であると示唆する。必然的に、全インタラクトームのほんの一部を包含する現行のスクリーニングは、容易にカバーされるはずである。同時に、多数の改善が望ましい。均一で容易に操作される小滴を作り出す自動化された乳化機(例えばwww.raindancetechnologies.comで明らかにされるように)の使用は、標準化を可能にして、特定のインタラクトームを処理するのにかかる時間を短縮するはずである。細胞が非常に小さな液滴にカプセル化される可能性が排除されるので、これはiCLIPプロセスの感度を改善するのもまた助けるかもしれない。生物情報学ツールを使用して、レスキュープライマー配列および修飾高特異性オリゴを注意深くデザインする(Moreau,V,et al.,Nucleic Acids Res(2009)37,19,e130)などのさらなる改良が考察される。
【0188】
我々の方法によって可能になるかもしれない新規技術を推測することは興味深い。例えばリボソームディスプレイは、ライブラリーサイズおよびサイクル時間の観点から競争相手がない(Schaffitzel,C,et al.,J Immunol Methods(1999)231,1−2,119−135)。リボソームディスプレイを使用して発現される遺伝子の非常に大きなライブラリーを視覚化し、それぞれのタンパク質を相互作用させることは魅力的である。次にこれらの結合タンパク質対を乳化して、逆転写−SOE PCRを使用して相互作用を捕捉する。この提案には、濃度および動態学的制限などのいくつかの但し書きが当てはまるかもしれないが、これは我々が提案する方法によって可能になる有望な手段であるように見える。細菌またはファージ表面にタンパク質をディスプレイして、相互作用させ、それに続いてエマルジョンSOE−PCRを実施することは、同じ趣旨の可能性である。同様に、ユニークなオリゴヌクレオチド「バーコード」で標識した小分子のライブラリーをmRNAまたは細菌表面にディスプレイされたタンパク質と反応させ得る。これらの相互作用対の乳化およびSOEは、タンパク質−小分子インタラクトームの解読を可能にして、創薬のための有益な資源を形成するであろう。
【0189】
本明細書における以前に公開された文献の列挙または考察は、過去の文献が現状技術の一部でありまたは一般常識であることを必ずしも認めるものではない。
本明細書に例証的に記載される本発明は、本明細書で具体的に開示されない任意の単数または複数の要素、または任意の単数または複数の制限の不在下で適切に実施されてもよい。したがって例えば「含んでなる」、「含む」、「含有する」などの用語は、拡張的かつ制限なしに解釈すべきである。さらに本明細書で用いられる用語および表現は説明用語として使用されて限定的ではなく、このような用語および表現の使用において、提示され記載された特徴の任意の同等物、またはその一部を排除する意図はなく、請求された発明の範囲内で各種の修正が可能であるものと認識される。したがって本発明を例示的実施態様および任意の特徴によって具体的に開示したが、本明細書で開示されるその中で具体化される本発明の修正および変更が当業者によって採用されてもよく、このような修正および変更は本発明の範囲内と見なされるものと理解すべきである。
【0190】
本発明は、本明細書において広汎かつ総称的に記載される。一般的開示内に含まれるより狭い種および亜属のグループのそれぞれもまた、本発明の一部を形成している。これには除かれた材料が本明細書で具体的に言及されたかどうかにかかわらず、属からの任意の対象を取り出すという前提または消極的な限定を伴って、本発明の一般的記述を含む。
【0191】
他の実施形態は、以下の特許請求項に含まれる。さらに本発明の特徴もしくは態様がマーカッシュグループの観点で記述されている場合、当業者は、本発明が、それによって、マーカッシュグループのあらゆる個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点でも説明されていることを認識するであろう。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体分子の中の少なくとも1つの標的分子の結合パートナーを同定する方法であって、前記標的分子は標的標識核酸分子と物理的に結合し、前記標的標識核酸分子はそれと結合する前記標的分子を同定するための特定のヌクレオチド配列を含んでなり、
・前記標的分子を前記複数の検体分子と接触させて、それによって混合物を形成するステップであって、前記結合パートナーは前記複数の検体分子の中のメンバーであることが疑われ、前記複数の検体分子の中の各メンバーは検体標識核酸分子と結合し、各検体標識核酸分子はそれと結合する前記検体分子を同定するための選ばれたヌクレオチド配列を含んでなることと、
・前記混合物中で前記標的分子とその結合パートナーとの間で複合体を形成させるステップと、
・(i)1つの標的分子、および
(ii)標的分子と検体分子との間の1つの複合体
からなる群のうち最大でおよそ1つが各区画に含まれるように、前記混合物を複数の区画に分けるステップであって、それによって標的分子と検体分子との間の複合体を前記複数の検体分子の残りのメンバーから分離することと、
・前記標的標識核酸分子と前記検体標識核酸分子を連結させて、それによって複合核酸分子を形成するステップと、
・前記複数の区画を崩壊するステップと、
・前記複合核酸分子を回収するステップと、
・前記検体標識核酸分子の配列を決定し、それによって前記標的分子の結合パートナーを同定するステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記複合核酸分子を回収するステップは、
(i)前記標的標識核酸分子の配列の一部と相補的な少なくとも1つのプライマーを使用したプライマーベースの核酸増幅を行い、それによって前記複合核酸分子を増幅するステップ、および
(ii)・前記標的分子とその結合パートナーとの間の前記複合体に結合できる捕捉プローブを前記混合物中に加え、
・前記捕捉プローブを回収し、それによって前記標的分子とその結合パートナーとの間の前記複合体を回収するステップ
の少なくとも1つを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物を複数の区画に分けるステップは、
(i)1つの標的分子、
(ii)標的分子と検体分子との間の1つの複合体、および
(iii)1つの検体分子
からなる群のうち最大でおよそ1つが各区画に含まれるように行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的分子と複合体を形成できることが疑われる前記検体分子と、それと結合する前記検体標識核酸分子との間の物理的な結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームのうちの1つを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を複数の区画に分けるステップの後に、前記標的分子の結合パートナーを定義する前記検体分子と、それと結合する前記検体標識核酸分子との間の物理的な結合を解き、それによって前記検体標識核酸分子を解放するステップをさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の、複合体を形成することができる第1の結合パートナーおよび第2の結合パートナーからなるペアを同定する方法であって、
・複数のペプチドおよび/またはタンパク質を提供するステップであって、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーはメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合し、前記メンバーコーディング核酸分子はそれと結合するペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなることと、
・前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのうちの最大でおよそ1つのメンバーが各区画に含まれるように、あるいは前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー同士の間の複合体が各区画に最大でおよそ1つ含まれるように、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質を複数の区画に分けるステップであって、それによって前記第1の結合パートナーと前記第2の結合パートナーとの間の複合体を残りのペプチドおよび/またはタンパク質から分離することと、
・前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と前記第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子を連結させるステップであって、それによって複合核酸分子を形成することと、
・前記区画を崩壊するステップと、
・前記複合核酸分子を回収するステップと、
・前記複合核酸分子の配列を決定し、それによって前記第1の結合パートナーおよび前記第2の結合パートナーの少なくとも一方を同定するステップと
を含んでなる方法。
【請求項7】
前記複合核酸分子を回収するステップは、
・前記メンバーコーディング核酸分子の配列の一部と相補的なプライマーを使用したプライマーベースの核酸増幅を行い、それによって前記複合核酸分子を増幅するステップ
を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマーベースの核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法および等温増幅法のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記等温増幅法は、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、およびローリングサークル増幅法のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PCR法は、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなるペアを使用して行われ、前記第1のプライマーは標的標識核酸分子の配列の一部と相補的であり、前記第2のプライマーはユニバーサルプライマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、前記第2の結合パートナーを含んでなることが疑われる複数のペプチドおよび/またはタンパク質に前記第1の結合パートナーを接触させることによって形成される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の結合パートナーは、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーであり、前記第2の結合パートナーは、第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーであることが疑われ、第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質を第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質と結合し、それによって前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質が形成される、請求項55に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と前記第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子との連結によって形成される前記複合核酸分子は、前記第1の結合パートナーと前記第2の結合パートナーとの間の前記複合体と物理的に結合する、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の区画に混合物を分けるステップの後に、前記メンバーコーディング核酸分子と前記結合パートナーとの間の物理的な結合を解くステップをさらに含んでなる、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーと、メンバーコーディング核酸分子との間の物理的な結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームのうちの1つを含んでなる、請求項6〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記物理的な結合は細胞であり、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは第1の相補部分および第2の相補部分のうちの1つと共有結合し、前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は物理的に近接させると互いに補完し、それによって一緒になってレポーター因子を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記レポーター因子は、適当な宿主細胞の表現型に影響を及ぼすタンパク質の発現を活性化できる因子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は前記タンパク質の2つの断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記2つの断片は前記タンパク質の2つのドメインを定める、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の相補部分および前記第2の相補部分が前記細胞内で発現可能である、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと前記相補部分は、メンバーコーディング核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、適当な条件下で複数のメンバーコーディング核酸分子を複数の細胞内で発現させることによって用意され、各メンバーコーディング核酸分子は単一の融合タンパク質をコードし、各融合タンパク質は、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の1つのメンバーと、前記第1の相補部分および前記第2の相補部分のうちの1つを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の細胞のそれぞれにおいて第1のメンバーコーディング核酸分子および第2のメンバーコーディング核酸分子からなる1つのペアのみを発現させるステップを含んでなり、第1の核酸分子は前記第1の相補部分を有する融合タンパク質をコードし、第2の核酸分子は前記第2の相補部分を有する融合タンパク質をコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質はツーハイブリッドシステムを使用して発現される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
増幅した前記複合核酸分子を精製するステップをさらに含んでなる、請求項6〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、核酸分子およびペプチドおよび/またはタンパク質の取り扱いに適した液体中に提供される、請求項6〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
複数の区画に混合物を分けるステップの後に、前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と、前記第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを連結させる、請求項6〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
複数の区画に混合物を分けることにより得られる区画の中において前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と前記第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを連結させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記メンバーコーディング核酸分子を連結させるステップは、核酸分子のライゲーションまたはオーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応を含んでなる、請求項6〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記複数のペプチドの中の前記第1の結合パートナーと前記第2の結合パートナーとの間で複合体を形成させるステップをさらに含んでなる、請求項6〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法であって、前記標的ペプチドまたはタンパク質は第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーに含まれており、前記結合パートナーは第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーに含まれることが疑われ、前記第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーはメンバーコーディング核酸分子と物理的に結合し、前記メンバーコーディング核酸分子はそれと結合するペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、
・前記第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質を結合し、それによって混合物を形成するステップと、
・前記標的ペプチドまたはタンパク質と前記結合パートナーとの間で複合体を形成させるステップと、
・結合させた前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのうちの最大でおよそ1つのメンバーが各区画に含まれるように、あるいはメンバー同士の間の複合体が各区画に最大でおよそ1つ含まれるように、前記混合物を複数の区画に分けるステップと、
・形成された前記複合体の前記標的ペプチドまたはタンパク質のメンバーコーディング核酸分子と前記結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを連結させて、それによって複合核酸分子を形成するステップと、
・前記区画を崩壊するステップと、
・前記複合核酸分子を回収するステップと、
・前記複合核酸分子の配列を決定し、それによって前記結合パートナーを同定するステップと
を含んでなる方法。
【請求項32】
前記複合核酸分子を回収するステップは、
(i)前記標的ペプチドまたはタンパク質をコードするメンバーコーディング核酸分子の配列の一部と相補的なプライマーを使用したプライマーベースの核酸増幅を行い、それによって前記複合核酸分子を増幅するステップ、および
(ii)・前記標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーとの間の前記複合体に結合できる捕捉プローブを前記混合物中に加え、
・前記捕捉プローブを回収し、それによって前記標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーとの間の前記複合体を回収するステップ
のうちの1つを含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記プライマーベースの核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法および等温増幅法のうちの1つである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記等温増幅法は、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、およびローリングサークル増幅法のうちの1つである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記PCR法は、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなるペアを使用して行われ、前記第1のプライマーは、前記標的ペプチドまたはタンパク質をコードするメンバーコーディング核酸分子の配列の一部と相補的であり、前記第2のプライマーはユニバーサルプライマーである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
増幅した前記複合核酸分子を精製するステップをさらに含んでなる、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
増幅した前記複合核酸分子を精製するステップは、同分子を抽出するステップを含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーと、メンバーコーディング核酸分子との間の物理的な結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームのうちの1つを含んでなる、請求項31〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーと、メンバーコーディング核酸分子との間の物理的な結合は、共有結合、非共有結合、連結分子、細胞、ウィルス、ファージ、およびリボソームのうちの1つを含んでなる、請求項31〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバー同士の間の物理的な結合は細胞であり、前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは第1の相補部分と共有結合し、前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーは第2の相補部分と共有結合し、前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は物理的に近接させると互いに補完し、それによって一緒になってレポーター因子を形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記レポーター因子は、適当な宿主細胞の表現型に影響を及ぼすタンパク質の発現を活性化できる因子である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は前記タンパク質の2つの断片である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記2つの断片は前記タンパク質の2つのドメインである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の相補部分および前記第2の相補部分が前記細胞内で発現可能である、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと前記第1の相補部分は、前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのメンバーコーディング核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと前記第2の相補部分は、前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのメンバーコーディング核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれる、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと前記第1の相補部分は、前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのメンバーコーディング核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれ、前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の各メンバーと前記第2の相補部分は、前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中のメンバーのメンバーコーディング核酸分子によってコードされる融合タンパク質に含まれ、前記融合タンパク質は、前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質のうちの複数のメンバーコーディング核酸分子と、前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質のうちの複数のメンバーコーディング核酸分子とを適当な条件下で発現させることによって提供される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の複数のペプチドおよび/またはタンパク質のうちのおよそ1つのメンバーコーディング核酸分子と前記第2の複数のペプチドおよび/またはタンパク質のうちのおよそ1つのメンバーコーディング核酸分子とからなる1つのペアのみを複数の細胞のそれぞれにおいて発現させるステップを含んでなる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の、複合体を形成することができる第1の結合パートナーおよび第2の結合パートナーからなる1つ以上のペアを同定する方法であって、
・複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子のライブラリーを提供するステップであって、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、第1の結合パートナーおよび第2の結合パートナーからなる1つ以上のペアを含んでなることが疑われることと、
・第1のベクターの複数のメンバーと第2のベクターの複数のメンバーとを提供するステップであって、前記第1のベクターは第1の相補部分をコードする核酸配列を有し、前記第2のベクターは第2の相補部分をコードする核酸配列を有し、前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は物理的に近接させると互いに補完し、それによって一緒になってレポーター因子を形成することと、
・第1および第2のベクターの前記2つの複数のメンバーの中の各メンバーに、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子のライブラリーの中の1つの核酸分子を与えるステップと、
・前記第1のベクターのメンバーの中の1つと前記第2のベクターのメンバーの中の1つとを同一の適当な細胞に導入するステップであって、前記第1のベクターおよび前記第2のベクターは両方とも、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質の中の1つをコードする1つの核酸分子をそれぞれ有することと、
・前記細胞内において前記ベクターと共に与えられる前記核酸によってコードされる一対のペプチドおよび/またはタンパク質を発現させるステップと、
・前記レポーター因子の形成が検出されるすべての細胞を収集するステップと、
・各区画に最大でおよそ1つの細胞が含まれるように、前記レポーター因子の形成が検出される収集した個々の細胞を複数の区画に分けるステップと、
・前記区画の中において前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と前記第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを連結させて、それによって複合核酸分子を形成するステップと、
・前記区画を崩壊するステップと、
・前記複合核酸分子を回収するステップと、
・前記複合核酸分子の配列を決定し、それによって前記第1の結合パートナーおよび前記第2の結合パートナーの少なくとも一方を同定するステップと
を含んでなる方法。
【請求項50】
前記第1のベクターは前記第1の相補部分をコードするプラスミドであり、前記第1のベクターの複数のメンバーは第1のプラスミドの複数の分子であり、前記第1のベクターの各メンバーに1つの核酸分子を与えるステップは、前記第1のプラスミドの複数の分子の中の各メンバーに1つの核酸分子を挿入するステップである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2のベクターは前記第2の相補部分をコードするプラスミドであり、前記第2のベクターの複数のメンバーは第2のプラスミドの複数の分子であり、前記第2のベクターの各メンバーに1つの核酸分子を与えるステップは、前記第2のプラスミドの複数の分子の中の各メンバーに1つの核酸分子を挿入するステップである、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記レポーター因子は、適当な細胞の表現型に影響を及ぼすタンパク質の発現を活性化できる因子である、請求項49〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は前記タンパク質の2つの断片である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記2つの断片は前記タンパク質の2つのドメインである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記複合核酸分子を回収するステップは、
(i)前記第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子の配列の一部と相補的なプライマーを使用したプライマーベースの核酸増幅を行い、それによって前記複合核酸分子を増幅するステップ、および
(ii)・前記第1の結合パートナーと前記第2の結合パートナーとの間の前記複合体に結合できる捕捉プローブを混合物中に加え、
・前記捕捉プローブを回収し、それによって前記第1の結合パートナーと前記第2の結合パートナーとの間の前記複合体を回収するステップ
の少なくとも1つを含んでなる、請求項49〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記プライマーベースの核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法および等温増幅法のうちの1つである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記等温増幅法は、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、およびローリングサークル増幅法のうちの1つである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記PCR法は、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなるペアを使用して行われ、前記第1のプライマーは標的標識核酸分子の配列の一部と相補的であり、前記第2のプライマーはユニバーサルプライマーである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質の中の少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定する方法であって、前記標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーは複合体を形成でき、
・前記複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子のライブラリーを提供するステップであって、前記複数のペプチドおよび/またはタンパク質は、前記少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを含んでなることが疑われることと、
・前記少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を提供するステップと、
・第1のベクターの複数のメンバーと第2のベクターの複数のメンバーとを提供するステップであって、前記第1のベクターは第1の相補部分をコードする核酸配列を有し、前記第2のベクターは第2の相補部分をコードする核酸配列を有し、前記第1の相補部分および前記第2の相補部分は物理的に近接させると互いに補完し、それによって一緒になってレポーター因子を形成することと、
・前記第1のベクターの複数のメンバーの中の各メンバーに、前記複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質をコードする核酸分子のライブラリーの中の1つの核酸分子を与えるステップと、
・前記第2のベクターの複数の分子の中の各メンバーに、前記少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする前記少なくとも1つの核酸分子のうちの1つの核酸分子を提供するステップと、
・前記第1のベクターのメンバーの中の1つと前記第2のベクターのメンバーの中の1つとを同一の適当な細胞に導入するステップと、
・前記細胞内において前記ベクターと共に与えられる前記核酸によってコードされる一対のペプチドおよび/またはタンパク質を発現させるステップと、
・前記レポーター因子の形成が検出されるすべての細胞を収集するステップと、
・各区画に最大でおよそ1つの細胞が含まれるように、前記レポーター因子の形成が検出される収集した個々の細胞を複数の区画に分けるステップと、
・前記区画の中において第1の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子と第2の結合パートナーのメンバーコーディング核酸分子とを連結させて、それによって複合核酸分子を形成するステップと、
・前記区画を崩壊するステップと、
・前記複合核酸分子を回収するステップと、
・前記複合核酸分子の配列を決定し、それによって前記標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定するステップと
を含んでなる方法。
【請求項60】
前記レポーター因子は、前記適当な細胞の表現型に影響を及ぼすタンパク質の発現を活性化できる因子である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1のベクターは前記第1の相補部分をコードするプラスミドであり、前記第1のベクターの複数のメンバーは第1のプラスミドの複数の分子であり、前記第1のベクターの各メンバーに1つの核酸分子を与えるステップは、前記第1のプラスミドの複数の分子の中の各メンバーに1つの核酸分子を挿入するステップである、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記第2のベクターは前記第2の相補部分をコードするプラスミドであり、前記第2のベクターの複数のメンバーは第2のプラスミドの複数の分子であり、前記第2のベクターの各メンバーに1つの核酸分子を与えるステップは、前記第2のプラスミドの複数の分子の中の各メンバーに1つの核酸分子を挿入するステップである、請求項59または61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記複合核酸分子を回収するステップは、
(i)前記標的ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子の配列の一部と相補的なプライマーを使用したプライマーベースの核酸増幅を行い、それによって前記複合核酸分子を増幅するステップ、および
(ii)・前記標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーとの間の前記複合体に結合できる捕捉プローブを混合物中に加え、
・前記捕捉プローブを回収し、それによって前記標的ペプチドまたはタンパク質とその結合パートナーとの間の前記複合体を回収するステップ
の少なくとも1つを含んでなる、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記プライマーベースの核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法および等温増幅法のうちの1つである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記等温増幅法は、鎖置換増幅(SDA)法、ヘリカーゼベースの増幅法、およびローリングサークル増幅法のうちの1つである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記PCR法は、第1のプライマーおよび第2のプライマーからなるペアを使用して行われ、前記第1のプライマーは前記標的ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子の配列の一部と相補的であり、前記第2のプライマーはユニバーサルプライマーである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
複数の検体ペプチドおよび/またはタンパク質の中の少なくとも2つの標的分子の結合パートナーを同定する方法であり、少なくとも1つの標的ペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を提供するステップは、少なくとも2つの核酸分子を提供することにより行われ、各核酸分子が少なくとも2つの標的ペプチドまたはタンパク質のうちの1つをコードする、請求項59〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
標的ペプチドまたはタンパク質の結合パートナーを同定するためのパーツからなるキットであって、
・複数の複合核酸分子、および
・ユニバーサルプライマー
を含んでなり、各複合核酸分子は、第1のペプチドおよび/またはタンパク質および第2のペプチドおよび/またはタンパク質からなるペアの配列を含んでなり、前記第1および第2のペプチドおよび/またはタンパク質は、互いに複合体を形成できる結合パートナーを定義する、キット。
【請求項69】
前記複数の複合核酸分子は、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、または少なくとも10個の核酸分子からなるライブラリーである、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記複数の複合核酸分子は、請求項1,48,80,101および111のいずれか一項に記載の方法を行うことによって得られる、請求項68または69に記載のキット。

【図2B】
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【図2C】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図7】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B−1】
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【図6B−2】
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【図6B−3】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−532607(P2012−532607A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519519(P2012−519519)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000258
【国際公開番号】WO2011/005221
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】